説明

マウンド形成用材料の投入方法

【課題】マウンド形成用材料を土運船から水中に投入し水底にマウンドを形成するとき、マウンド形成用材料の拡散を抑制し、マウンド形成用材料のロス率を極力低減可能なマウンド形成用材料の投入方法を提供する。
【解決手段】このマウンド形成用材料の投入方法は、マウンド形成用材料を底開式の土運船10から水中に直接投入するものであって、土運船の土倉11内にその長手方向Lの一部を除いて前側と後側の一方または両方にシートS1,S2を敷設し、土倉内にマウンド形成用材料を積載し、土倉を開き、シートが敷設されていない長手方向の一部に形成された開口からシート上のマウンド形成用材料を水中に投入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウンド形成用材料を土運船から水中に直接投入するマウンド形成用材料の投入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
底開式の土運船等を利用して、運搬したブロックや石や土砂等の材料を水中に直投し、自然落下により水底に魚礁等のマウンドを築造することが行われている。従来、底開式の土運船でブロックや石や土砂等の材料を運搬し、そのまま底部を開口して、材料を水中に投入していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の方法では、特に土運船の延長方向が長いため、材料の水中での拡散が大きくなり、目標となるマウンド形状を正確に築造することが困難であった。この対策として土運船の長さ方向の拡散を防ぐために土倉内を改造して土倉の長さを短くする方法があるが、そうすると、土運船の積載可能量が減少してしまい、材料運搬回数、投入回数が増加し、結果的に、マウンド築造コストが嵩んでしまう。
【0004】
特に、水深の深い海域において土運船から土砂、石、ブロック等の材料を水中に投入してマウンドを形成する場合、従来の方法によれば、投入した材料の拡散が大きく、目標となるマウンド形状からはずれて着底してしまい、投入した材料のロス率が大きくなってしまい、コストが増大してしまう。
【0005】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、マウンド形成用材料を土運船から水中に投入し水底にマウンドを形成するとき、マウンド形成用材料の拡散を抑制し、マウンド形成用材料のロス率を極力低減可能なマウンド形成用材料の投入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本実施形態によるマウンド形成用材料の投入方法は、マウンド形成用材料を底開式の土運船から水中に直接投入する投入方法であって、前記土運船の土倉内にその長手方向の一部を除いて前側と後側の一方または両方にシートを敷設し、前記土倉内にマウンド形成用材料を積載し、前記土倉を開き、前記シートが敷設されていない長手方向の一部に形成された開口から前記マウンド形成用材料を水中に投入することを特徴とする。
【0007】
このマウンド形成用材料の投入方法によれば、土運船の土倉内にその長手方向の一部を除いて前側と後側の一方または両方にシートを敷設してからマウンド形成用材料を積載し、投入目標位置で土倉を開くと、シートが敷設された土倉内の前側と後側の一方または両方からはマウンド形成用材料が投入されず、シートが敷設されていない長手方向の一部に形成された開口から水中に投入されるので、マウンド形成用材料が土倉の長手方向全体にわたって投入されずに一部から水中に投入される。このため、マウンド形成用材料の水中投入により水底にマウンドを形成するとき、マウンド形成用材料の拡散を抑制でき、マウンド形成用材料のロス率を極力低減できる。
【0008】
上記マウンド形成用材料の投入方法において前記シートを、前記土倉の底面、前面と後面の一方または両方に敷設し、両側面には敷設しないことが好ましい。なお、シートは、土倉の前面と後面の一方または両方の上端に固定することが好ましい。
【0009】
また、前記シートを複数枚重ねて敷設することが好ましい。マウンド形成用材料の投入時に生じる摩擦等でシートが破断しても、上述のシートによる拡散抑制機能を維持できる。
【0010】
また、前記シートの先端に浮子を設け、前記水中投入の後に前記シートが水面に浮くようにすることが好ましい。これにより、マウンド形成用材料の投入後におけるシート回収を省力化できる。なお、上述のシートは、柔軟性のあるものが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のマウンド形成用材料の投入方法によれば、マウンド形成用材料を土運船から水中に投入し水底にマウンドを形成するとき、マウンド形成用材料の拡散を抑制し、マウンド形成用材料のロス率を極力低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0013】
図1は本実施の形態によるマウンド形成用材料の投入方法に使用可能な土運船の側面図(a)及び上面図(b)である。図2は、図1の土運船の土倉にシートを部分的に敷設してからマウンド形成用材料を積載した様子を概略的に示す側面図(a)、土倉を開きマウンド形成用材料が投入される様子を概略的に示す側面図(b)、及び従来の土倉を開きマウンド形成用材料が投入される様子を概略的に示す側面図(c)である。図3は図1の土運船の土倉を中央から船尾側(後側)に向かう透視図(a)及び側面からみた要部透視図(b)である。図4は図3の土倉が開きマウンド形成用材料が投入される状態を概略的に示す図3と同様の透視図である。
【0014】
図1(a)、(b)に示すように、土運船10は、船体のほぼ中央に船体の長手方向Lに延びた土倉11を有し、土倉11は、底面12と、船首側(前側)の前壁面13と、船尾側(後側)の後壁面14と、側舷側の側壁面15,16により包囲されるようにして形成され、上部が開放されており、図2(a)のように内部にブロックや石や土砂等のマウンド形成用材料Mが積載される。
【0015】
土運船10は、土倉11が底面12において開口線17に沿って開口するように底開式に構成され、図3のように底面12が中央の開口線17に向けて傾斜している。図4のように、土倉11がその両側で回動することで底面12が開口線17を中心にして2つに割れて開き、底面12に開口18が形成されるようになっている。
【0016】
土倉11内には、図1(a)の破線のように、前側に柔軟性のあるシートS1が敷設され、後側に柔軟性のあるシートS2が敷設される。すなわち、土倉11の底面12には図1(b)のハッチングで示す範囲に柔軟性のあるシートS1,S2が敷設され、ハッチングのない底面12の中央の一部12aにはシートが敷設されない。
【0017】
シートS1は、図1(a)、(b)、図2(a)のように、前壁面13の上端に固定され、前壁面13に沿って底面12に達し、底面12で長手方向Lに延び、同様に、シートS2は、後壁面14の上端に固定され、後壁面14に沿って底面12に達し、底面12で長手方向Lに延びているが、それぞれ、底面12の中央の一部12aまでは延びていない。
【0018】
また、シートS1,S2は、土倉11の両側壁面15,16には延びていない。シートS1,S2は両側壁面15,16に敷設されないので、シートの両側壁面15,16部分がマウンド形成用材料の落下の障害にならない。
【0019】
また、シートS2の固定は、図3(a)、(b)に示すように、後壁面14の上端14aにおいて、シートS2の上端部が上端14aを覆うようにして一対のあて木19を図3(b)のように両側に配置し、シートS2をあて木19と後壁面14との間に挟んだ状態でクランプ19aを用いてあて木19をクランプ留めすることで行っている。なお、あて木19は、図3(a)のように後壁面14の上端14aの横方向2箇所に配置されている。また、シートS1もその上端部が前壁面13の上端で同様にして固定される。
【0020】
シートS1,S2の幅は、土倉11の幅に概ね一致している。シートS1,S2の各長さAは、土倉11の深さD(前壁面13,後壁面14の高さ)と土倉11の全体長さBの1/2との和よりも短く設定する。すなわち、次式(1)を満足するように設定する。シートS1,S2の各長さAを設定することで、シートが敷設されない一部12aの長さ方向Lの長さが決まる。
A<D+B/2 (1)
【0021】
図5は、図2(b)、図4のように土倉11内のマウンド形成用材料を水中に投入した後のシート及びマウンド形成用材料の様子を概略的に示す図である。図5のように、シートS1,S2の先端には浮子20が取り付けてあり、マウンド形成用材料Mが図2(b)のように水中に投入されたとき、破線のように水中に沈んだシートS1,S2が浮子20により、実線のように水面Hに浮くようになっている。これにより、マウンド形成用材料の投入後におけるシートS1,S2の回収を省力化できる。
【0022】
次に、本実施の形態によるマウンド形成用材料の投入方法の各工程S01〜S07について図6のフローチャート及び図7(a)〜(c)をさらに参照して説明する。
【0023】
図7は、図1(a)、(b)の土運船の土倉を船尾側上方から概略的にみた斜視図であり、土倉内にシートを敷設した様子を示す図(a)、シートを敷設した土倉内にマウンド形成用材料を積載した様子を示す図(b)、及び土倉を開きマウンド形成用材料を水中に投入する様子を示し、図4と対応する図(c)である。
【0024】
まず、土運船10の土倉11内にシートS1,S2を図7(a)のように敷設する(S01)。このとき、図1(a)、(b)のように、シートS1,S2は前側と後側に分かれて敷設され、中央の一部12aには敷設されない。シートS1,S2の上端部がそれぞれ前壁面13の上端、後壁面14の上端14aに、図3(a)、(b)のように固定される。
【0025】
次に、コンクリートブロックや石や土砂等のマウンド形成用材料Mを図7(b)のように土運船10の土倉11内に積み込む(S02)。これにより、図2(a)のようにマウンド形成用材料Mが土倉11内に満載される。
【0026】
次に、マウンド形成用材料Mを積載した土運船10を操縦してマウンド築造水域の投入目標位置まで移動する(S03)。
【0027】
次に、図4のように土運船10の土倉11を図7(c)のように開く(S04)。これにより、底面12が開口線17を中心にして開き、底面12に開口18が形成され、開口18から土倉11内のマウンド形成用材料Mが水中に投入される(S05)。
【0028】
上述の水中投入のとき、図2(b),図4,図7(c)のように、底面12が開き2つに割れて開口18が形成されると、シートS1,S2は中央の一部12a側の開放縁端がマウンド形成用材料Mの重さで開口18から水面へと落下して、上端部が固定されたシートS1,S2全体が水面に向けて傾斜した状態となって、シートS1,S2上のマウンド形成用材料MがシートS1,S2上を落下して底面12の中央の一部12aに形成された開口18近傍に集まって水中へ投入される。
【0029】
次に、マウンド形成用材料Mが水中に投入された後のシートS1,S2は、図5の破線のように水中に沈むが、シートS1,S2の先端の浮子20により実線のように水面H近くに浮くので、水面Hに浮いてからシートS1,S2を回収する(S06)。このように、投入後はシートS1,S2が浮くのでシート回収を省力化できる。
【0030】
一方、水中に投入されたマウンド形成用材料Mは、図5のように水中で自然落下し、水底Gに到達して積み重なってマウンドFを形成する(S07)。マウンドが目標形状に築造されるまで、必要に応じて上述の各工程を繰り返す。
【0031】
上述のように、本実施の形態によるマウンド形成用材料の投入方法によれば、土運船10の土倉11内に底面12の中央の一部12aを除いて前側(前壁面13)と後側(後壁面14)に柔軟性のあるシートS1,S2を敷設してから、土倉11内に土砂、石、ブロック等のマウンド形成用材料Mを積載しマウンド築造水域の投入目標位置まで運搬し、投入目標位置で土倉11を開くと、シートS1,S2が敷設された土倉11の前側と後側からはマウンド形成用材料が投入されず、シートが敷設されていない底面12の一部12aに形成された開口18に集まってから水中に投入される。このように、マウンド形成用材料Mが土倉11の長手方向Lの全体にわたって投入されずに一部12aに集まって水中に投入されるので、マウンド形成用材料Mの水中投入により水底Gにマウンドを形成するとき、マウンド形成用材料Mの拡散を抑制でき、マウンド形成用材料Mのロス率を極力低減できる。
【0032】
以上のように、土運船10の土倉11内に底面12の中央の一部12aを除いて前側と後側に柔軟性のあるシートS1,S2を敷設することで、土倉11を開いたとき、マウンド形成用材料Mはシートのない一部12aに形成された開口18の近傍に集まって水中に落下するので、マウンド形成用材料Mの水中における拡散が抑制される。したがって、従来のような土倉の長さを短くする土倉の改造が必要ないため、土運船の積載量の低下はなく、材料運搬回数・投入回数が増加することがないく、マウンド築造コストが嵩むことがない。
【0033】
また、上述のように、マウンド形成用材料Mの投入のとき、土倉11内でマウンド形成用材料MとシートS1,S2との間に生じる摩擦によってシートS1,S2が破断して目的とする拡散抑制機能が失われる可能性を防ぐため、2枚以上のシートを重ねて敷設するようにしてもよい。
【0034】
また、柔軟性のあるシートとして、例えば、ジオテキスタイル(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の材質)シート、ポリ塩化ビニルシート、またはゴム製シート等を使用できる。
【0035】
以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、本実施の形態では、図1(a)、(b)のように、土倉内の前側及び後側の両方にシートを敷設したが、本発明はこれに限定されず、前側(船首側)または後側(船尾側)のいずれか一方に敷設するようにしてもよい。この場合、シートの全体長さを調整することで、シートが敷設されない一部の長手方向長さを変えることができる。
【0036】
また、本実施の形態では、各シートS1,S2を固定する箇所は、図3(a)、(b)のように、それぞれ船首側の前壁面13,船尾側の後壁面14のみとし、側舷側の側壁面15,16には固定していないが、本発明はこれに限定されず、側壁面15,16側にも固定するようにしてもよい。この場合は、シートの開放縁端が中央の開口線17の方向に傾斜するような形状に成形したシートを用いることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施の形態によるマウンド形成用材料の投入方法に使用可能な土運船の側面図(a)及び上面図(b)である。
【図2】図1の土運船の土倉にシートを部分的に敷設してからマウンド形成用材料を積載した様子を概略的に示す側面図(a)、土倉を開きマウンド形成用材料が投入される様子を概略的に示す側面図(b)、及び従来の土倉を開きマウンド形成用材料が投入される様子を概略的に示す側面図(c)である。
【図3】図1の土運船の土倉を中央から船尾側(後側)に向かう透視図である。
【図4】図3の土倉が開きマウンド形成用材料が投入される状態を概略的に示す図3と同様の透視図である。
【図5】図2(b)、図4のように土倉11内のマウンド形成用材料を水中に投入した後のシート及びマウンド形成用材料の様子を概略的に示す図である。
【図6】本実施の形態によるマウンド形成用材料の投入方法の各工程S01〜S07を説明するためのフローチャートである。
【図7】図1(a)、(b)の土運船の土倉を船尾側上方から概略的にみた斜視図であり、土倉内にシートを敷設した様子を示す図(a)、シートを敷設した土倉内にマウンド形成用材料を積載した様子を示す図(b)、及び土倉を開きマウンド形成用材料を水中に投入する様子を示し図4と対応する図(c)である。
【符号の説明】
【0038】
10 土運船
11 土倉
12 底面
12a 一部
13 前壁面
14 後壁面
14a 上端面
15,16 側壁面
18 開口
19 あて木
19a クランプ
20 浮子
F マウンド
L 長手方向
M マウンド形成用材料
S1,S2 シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウンド形成用材料を底開式の土運船から水中に直接投入する投入方法であって、
前記土運船の土倉内にその長手方向の一部を除いて前側と後側の一方または両方にシートを敷設し、
前記土倉内にマウンド形成用材料を積載し、
前記土倉を開き、前記シートが敷設されていない長手方向の一部に形成された開口から前記マウンド形成用材料を水中に投入することを特徴とするマウンド形成用材料の投入方法。
【請求項2】
前記シートを、前記土倉の底面、前面と後面の一方または両方に敷設し、両側面には敷設しない請求項1に記載のマウンド形成用材料の投入方法。
【請求項3】
前記シートを複数枚重ねて敷設する請求項1または2に記載のマウンド形成用材料の投入方法。
【請求項4】
前記シートの先端に浮子を設け、前記水中投入の後に前記シートが水面に浮くようにした請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマウンド形成用材料の投入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−57787(P2009−57787A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227492(P2007−227492)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】