マクラギの移動防止具
【課題】バラストで保持されていないマクラギが長手方向(レールの延伸方向に対し直角な方向)へ移動するのを防止する。
【解決手段】バラスト止めEの凹部Gに設置したマクラギM端部tにL字形固定部1を釘40で固定する。ボルト20に回転操作部としての固定ナット21・当接部材23としてのナット・ワッシャ24.25・締結ナット26・ロックナット22・支持部10の高ナット12を螺合させる。ボルト20の一端部のワッシャ24,25間に固定部10のボルト受け部3を挟持させ、固定ナット21を回転操作して、固定部1と支持部10との距離を拡大する。当接部材23は当接面に摩擦抵抗低減化手段が講じられ、緩み止め機構を有するから、押圧力を及ぼしながらボルト20と一体に回転する。ボルト20の回転が困難になったなら、固定ナット21を押さえながら締結ナット26を締め付ける。マクラギM両端部に移動防止具Xを装着することで、マクラギMの移動を確実に阻止できる。
【解決手段】バラスト止めEの凹部Gに設置したマクラギM端部tにL字形固定部1を釘40で固定する。ボルト20に回転操作部としての固定ナット21・当接部材23としてのナット・ワッシャ24.25・締結ナット26・ロックナット22・支持部10の高ナット12を螺合させる。ボルト20の一端部のワッシャ24,25間に固定部10のボルト受け部3を挟持させ、固定ナット21を回転操作して、固定部1と支持部10との距離を拡大する。当接部材23は当接面に摩擦抵抗低減化手段が講じられ、緩み止め機構を有するから、押圧力を及ぼしながらボルト20と一体に回転する。ボルト20の回転が困難になったなら、固定ナット21を押さえながら締結ナット26を締め付ける。マクラギM両端部に移動防止具Xを装着することで、マクラギMの移動を確実に阻止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクラギが長手方向(レールの延伸方向に対し直角な方向)へ移動するのを阻止するための手段に関し、特に、バラストで保持されていないマクラギを主たる適用対象とするものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両が走る軌道は、主として道床・マクラギ・レールで構成される。レールは寒暖差により伸縮して、レールの延伸方向とは直角な方向に座屈する等の変形を生じることがある。このレール変形は、スラブ軌道に比べてバラスト軌道において起こりやすい。バラスト軌道におけるレール変形を阻止する技術は、例えば特許文献1及び2に記載されている。
【0003】
特許文献1は、マクラギの端部に座屈防止板を装着し、座屈防止板の下面に突設した係止板を、バラストに食い込ませることで、マクラギが長手方向(レール延伸方向に対し直角な方向)に移動するのに抵抗力を与え、それによりレールの座屈変形を防止するというものである。
【0004】
特許文献2は、道床を挟む土留め壁に引っ張り部材を設け、この引っ張り部材をマクラギの両端部それぞれに取り付けることで、マクラギが長手方向へ移動するのを拘束し、レールの変位を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−42103号公報
【特許文献2】特開2003−247201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図17(A)(B)に示すように、レールRが下水渠の如き溝Cを超える場合、道床D部分と橋梁F部分との境界に位置するマクラギMは、特殊な設置構造となる。すなわち、溝Cに面する岸上に構築されたコンクリート製のバラスト止めEに凹部Gを形成し、この凹部G内にマクラギMが配置される。このマクラギMの周囲はバラストが充填されず、その両端部t,tとコンクリート製バラスト止めEとの間に隙間が形成される。従って、当該マクラギMは長手方向の移動に対する拘束力が弱いため、当該マクラギM位置でレールRの座屈を招く可能性があった。前記特許文献1,2に記載するマクラギの移動防止技術は、道床のバラストを利用するものであるから、上述したような溝Cに面した位置のマクラギMに対しては適用することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題を解決するために本発明が創案したマクラギの移動防止具の特徴は、マクラギの長手方向の端部に固定される固定部、マクラギ端部の近傍に位置する固定構造物に当接される支持部、及び、固定部と支持部とを連結するボルトを備え、固定部にはボルトの一端部が回転可能に装着されるボルト受け部を設け、支持部にはボルトの他端部を螺合させるナットを設け、ボルトの中間部に当該ボルトを回転させるための回転操作部を設けると共に、前記ボルトにおける前記固定部のボルト受け部に装着される側の一端部と前記回転操作部との間に、前記固定部のボルト受け部に直接又は間接的に当接し且つ当該ボルトと一体に回転可能になされた当接部材を設けたところにある。
【0008】
また本発明に係るマクラギの移動防止具の構成をより具体化すると、前記固定部はL形状プレートから成り、前記支持部は前記ボルトの他端部を螺合させる高ナットを固定した平板状プレートから成り、前記ボルトは少なくとも両端部から所定範囲にネジが形成されたボルトから成り、前記固定部のボルト受け部は、前記ボルトの一端部を挿入させる切欠を形成したコ字形部材から成り、前記ボルトの一端部と回転操作部との間に設けられる当接部材は、ボルトに螺合される緩み止め構造を有するナットであって、ボルト受け部との当接部分に摩擦抵抗を低減化する手段が講じられており、前記ボルトの一端部に、前記当接部材としてのナットと協働して前記ボルト受け部としてのコ字形部材を挟持する締結ナットを螺合した構成とすることが考えられる。
【0009】
さらに、前記当接部材としてのナットに講じられる摩擦抵抗低減化手段について、より具体的な構成を述べれば、当該ナットにおける前記ボルト受け部に対する当接面に凹部又は溝を形成し、当該凹部又は溝内に配置した球状部材から構成することが考えられる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載したマクラギの移動防止具によれば、固定部をマクラギの長手方向の端部に固定し、支持部をマクラギ端部の近傍に位置する固定構造物に当接させ、固定部と支持部とを連結するボルトを、回転操作部で所定の方向へ回転操作する。すなわち、ボルトの一端部は固定部に対しボルト受け部において自由回転させ、ボルトの他端部は支持部に設けたナットに対して後退させる。これにより、固定部と支持部との距離が拡大し、支持部が固定構造物を押圧すると共に、ボルトの一端部と回転操作部との間に設けた当接部材が、ボルト受け部を介して、固定部をマクラギ端面へ押しつける。従って、マクラギの両端部に当該移動防止具を配設することにより、マクラギが長手方向へ移動するのを確実に防止することができる。
【0011】
請求項2に記載したマクラギの移動防止具によれば、固定部をL形状プレートとしたので、マクラギ端部への位置決め及び固定が容易になる。
支持部を高ナットを固定した平板状プレートで構成したので、ボルトの螺合状態が安定すると共に、大きな圧縮強度が得られる。
固定部のボルト受け部を切欠を形成したコ字形部材から成るものとしたから、ボルトの一端部を装着するのが容易である。
ボルトの一端部と回転操作部との間に設けられる当接部材を、緩み止め構造を有するナットであって、ボルト受け部との当接部分に摩擦抵抗の低減化手段を講じたものとしたので、ボルトを回転させて固定部と支持部との距離を拡大するときに、当接部材がボルト受け部に当接した状態でも、ボルトの回転操作を円滑に継続できる。しかも、その際、緩み止め構造により、当接部材としてのナットをボルトと一体回転させることが可能である。
ボルトの一端部に締結ナットを螺合したので、ボルトの回転操作が終了したあと、この締結ナットを締め付けることにより、当接部材としてのナットと協働してボルト受け部としてのコ字形部材を挟持するから、ボルト一端部を、固定部へ強固に固定することができる。
【0012】
請求項3に記載するように、当接部材としてのナットにおける摩擦抵抗低減化手段を、ボルト受け部に対する当接面に凹部又は溝を形成し、当該凹部又は溝内に球状部材を配置する構成とすることにより、当接部材をボルト受け部に当接させた状態で、ボルトと一体回転させる際の抵抗を非常に小さくできるから、ボルトの回転操作が容易となり、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る移動防止具の斜視図である。
【図2】本発明に係る移動防止具の構成部材を分解して示す斜視図である。
【図3】本発明に係る移動防止具の固定部を示すものであって、図(A)は平面図、図(B)は正面図、図(C)は左側面図である。
【図4】本発明に係る移動防止具の支持部を示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は平面図、図(C)は底面図である。
【図5】本発明に係る移動防止具のボルトを示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は図(A)のイ−イ線における断面図である。
【図6】本発明に係る移動防止具の当接部材を示すものであって、図(A)は平面図、図(B)は側面図、図(C)は底面図である。
【図7】本発明に係る移動防止具のボルトの異なる態様を示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は図(A)のロ−ロ線における断面図である。
【図8】本発明に係る移動防止具のボルトの異なる態様を示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は図(A)のハ−ハ線における断面図である。
【図9】本発明に係る移動防止具の施工手順を説明するものであって、図(A)は、マクラギ端部へ、固定部を固定する要領を示す側面図、図(B)は固定部以外の部材を示す側面図である。
【図10】本発明に係る移動防止具の施工手順を説明するものであって、マクラギ端部に固定した固定部と、固定部以外の部材を組み付けた状態を示す側面図である。
【図11】本発明に係る移動防止具をマクラギとバラスト止めとの間に装着した状況を示す側面図である。
【図12】本発明に係る移動防止具をマクラギの両端部とバラスト止めとの間に装着した状況を示す断面図である。
【図13】本発明に係る移動防止具をマクラギとバラスト止めとの間に装着した状況を示す平面図であって、図(A)はマクラギとバラスト止めとの間隔が広い状態、図(B)はマクラギとバラスト止めとの間隔が狭い状態を示すものである。
【図14】本発明の第2の実施形態に係るものであって、図(A)は移動防止具をマクラギとバラスト止めとの間に装着した状況を示す平面図、図(B)はテーパワッシャの正面図、図(C)〜(E)はそれぞれ勾配の異なるテーパワッシャの側面図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係るものであって、図(A)は移動防止具の支持部とボルトとを分解して示す斜視図、図(B)はボルトを支持部に組み付けたものと固定部とを示す斜視図である。
【図16】本発明の第4の実施形態に係るものであって、図(A)は移動防止具の支持部とボルトとを分解して示す斜視図、図(B)は支持部の側面断面図、図(C)はボルトを支持部に組み付けたものと固定部とを示す斜視図である。
【図17】本発明に係る移動防止具の適用対象を例示するものであって、図(A)はレールが溝(下水渠)を跨いでいる状況を示す斜視図、図(B)は、バラスト止めの凹部に配設されているマクラギを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
本発明を、溝(図17参照)に面して構築したバラスト止めに配置されるマクラギに適用する場合の実施形態について説明する。なお、マクラギ端部に位置する固定構造物がバラスト止め以外であっても、本発明は、当然、適用可能である。
図1及び図2に示すように、本発明に係る移動防止具Xは、マクラギMの端部に固定される固定部1、固定構造物としてのバラスト止めに当接される支持部10、及び、固定部1と支持部10とを連結するボルト20を主たる構成部材としている。
【0015】
固定部1は、図3に示すように、水平部1aと起立部1bとから成る断面L形のプレートが用いられ、起立部1bの表面に、切欠4を形成したコ字形部材を固定して、これをボルト受け部3と成している。水平部1aには、これをマクラギMに固定する釘を挿通させるための開孔2が形成されている。
【0016】
支持部10は、図4に示すように、平板状のプレート11に、ボルト20を螺合させる高ナット12を固定したものである。
【0017】
固定部1と支持部10とを連結するボルト20は、本例では、図5に示すような頭部を持たず全長にネジを形成したいわゆる寸切ボルトを用いた。そして、このボルト20の中間部に螺合したナット21をピン21aで固定することにより、ボルト20の回転操作部となしている。なお、ボルト20に回転操作部を形成する手段は、上記の固定ナット21のほか、図7に示すように、適当な六角棒の両端からネジを形成し、中間部にネジの未形成部20aを残存させることにより、これを回転操作部とする態様や、図8に示す如く、十分な太さを有する寸切ボルト20の中間部に、二つの面取部20b、20bを対向させて形成することにより、これを回転操作部とする態様が考えられる。なお、ネジ部の長さは、移動防止具Xを適用しようとするマクラギとバラスト止めとの隙間寸法に応じて適宜設定すればよい。
【0018】
ボルト20における回転操作部としての固定ナット21より固定部1側の部分には、ボルト受け部3に直接又は間接的に当接してボルト20と一体に回転可能になされた当接部材として、バネなどによる緩み止め構造を有するナット23が螺合され、必要に応じワッシャ24,25が配置され、さらに一端部近くに締結ナット26が螺合される。従ってナット23は、ワッシャ24を省略した場合はボルト受け部3に直接当接し、ワッシャ24を使用した場合は間接的に当接することになる。またボルト20における回転操作部21よりも支持部10側の部分には、所望により、ボルト20の高ナット12への螺合状態が緩むのを防止するためのロックナット22が配置される。
【0019】
当接部材として機能するナット23は、例えば図6に示すような、バネ23aによる緩み止め構造を有し、ボルト20へ螺合させたときに、一方向への回転は許可するが、反対方向への回転は阻止するようになされている。具体的には、回転操作部21からボルト受け部3側へ進行する方向へのみ回転可能になされている。当該ナット23におけるボルト受け部3と対向する側の当接面に講じる摩擦抵抗低減化手段としては、グリースのような潤滑剤を塗布することが考えられる。その他、ナット23における当接面に、図6(C)に示す如き環状溝23cまたは複数の凹部を形成し、当該環状溝23cまたは複数の凹部内に複数の鋼球23bを配置して、ボールベアリングと同様の構造を設けることが考えられる。
【0020】
なお当接部材に上記の緩み止め構造を有するナット23を用い、回転操作部を図5に示す固定ナット21で構成する場合は、ナット23が一方向にしか回転(進行)できないことを考慮すると、当接部材であるナット23をあらかじめボルト20へ螺合させてから、固定ナット21をボルト20に螺合させて固定する必要がある。また、ボルト20の回転操作部を図7に示す構造とした場合、上記緩み止め構造を有するナット23はボルト20に螺合させるのが困難になる。そこで、この場合は、例えば通常のナットを2つ組み合わせ、一方をロックナットとして機能させることにより緩み止め機能を持たせることが考えられる。
【0021】
前記締結ナット26にも、バネ等による緩み止め構造を有するものを使用するのが望ましい。この場合、当該締結ナット26は、ボルト20の一端部から回転操作部21の方へ向かって進行する方向へのみ回転可能とする。
【0022】
前記移動防止具Xの各構成部材は、強度に優れ、且つ、容易に錆びないことが要求される。そのような材質としては、例えば、鉄製あるいは鋼製の部材に、亜鉛溶融メッキを施したものが考えられる。また、固定部1の起立部1bに対するコ字形のボルト受け部3の固定や、支持部10における平板状プレート11に対する高ナット12の固定を、溶接で行なう場合は、溶接後にメッキを施すことが望ましい。
【0023】
前記の如く構成された移動防止具Xの施工手順を、次に説明する。図9に示す如く、固定構造物であるバラスト止めEの凹部GにマクラギMが設置されている状況下で、まず、このマクラギMのバラスト止めEに面した端部t(マクラギMの長手方向の端部)に、L字形の固定部1を装着する。そして、固定部1の水平部1aを釘40で固定する。
【0024】
次に、図10に示す如く、回転操作部となる固定ナット21及び当接部材であるナット23をあらかじめ装着したボルト20の一端部側に、ワッシャ24.25を介して、締結ナット26を螺合させる。他方、ボルト20の他端側には、ロックナット22を介して、支持部10の高ナット12を螺合させる。当接部材23と締結ナット26との間隔は、ワッシャ24,25間に、ボルト受け部4をできるだけ隙間なく挟持できるような寸法に設定する。そして、ボルトの一端部から支持部10の平板状プレート11までの長さが、マクラギMとバラスト止めEとの隙間寸法より若干短くなるように、ボルト20の高ナット12に対する螺合状態を調節する。
【0025】
続いて、図11に示す如く、ボルト20の一端部を、固定部1のボルト受け部3に形成した切欠4に挿入すると共に、ワッシャ24,25間に、ボルト受け部3を挟持させる。そして、支持部10を保持した状態で、ボルト20中間部に設けた回転操作部(固定ナット21)を適当な道具(スパナ・モンキーレンチ・プライヤ・ペンチなど)で操作して、ボルト20が高ナット12に対し後退する方向へ、当該ボルト20を回転させる。これにより、固定部1と支持部10との距離が拡大するので、支持部10の平板状プレート11がバラスト止めEへ押しつけられると同時に、当接部材23がワッシャ24を介して、ボルト受け部3の表面を押圧する。当接部材23におけるボルト受け部3側の当接面には摩擦抵抗低減化手段が講じられており、また、ボルト受け部3から後退する方向への回転を阻止する緩み止め機構が設けられていることにより、当接部材23は、ボルト受け部3に対し押圧力を及ぼしながら、ボルト20と一体に回転することができる。
【0026】
上述のようにして、回転操作部の固定ナット21を操作してボルト20の回転を続けると、やがて固定部1と支持部10との距離がマクラギMとバラスト止めEとの間隔寸法に到達し、それ以上、ボルト20を回転させるのが困難になる。このような状態になったならば、適当な道具でボルト20の回転操作部(固定ナット21)を押さえ、ボルト20が回転しないように保持する。そして締結ナット26を回転させ、次いで必要に応じ当接部材23も回転させ、ワッシャ24,25間でボルト受け部3を挟持する。これにより、ボルト20の一端部がボルト受け部3へ強固に固定される。
【0027】
前述した工程をマクラギMの両端部において行い、図12に示すように、マクラギMの両端部に移動防止具Xを装着することにより、マクラギMの長手方向の移動を確実に阻止することができる。図13(A)(B)に示す如く、マクラギMとバラスト止めEとの間隔寸法の違いは、ボルト20の高ナット12に対する螺合度合によって対応することが可能である。また、ボルト20及び高ナット12の長さを適当に設計することで、移動防止具Xにおける固定部1から支持部10までの長さの最大寸法及び最小寸法を所望の値とすることが可能である。なお、まくらぎMとバラスト止めEとの距離が、移動防止具Xの最大長さより大きいときは、支持部10の平板状プレート11とバラスト止めEとの間に適当な補助部材(例えば軌道パッドなど)を配置して、隙間を充填するようにしてもよい。
【0028】
[第2の実施形態]
図14(A)に示すように、マクラギMの端部tに対し、バラスト止めE等の固定構造物の表面が明確に傾斜している場合、移動防止具Xのボルト20を、固定部1に対し、傾斜させた姿勢で取り付けることが望ましい。そのためには、ボルト20に装着される当接部材23と締結ナット26との間に配置するワッシャを、同図(B)乃至(E)に示す如き、厚み方向の断面を台形状に形成したテーパワッシャ27,28とすればよい。なお、テーパワッシャ27(28)には、断面の勾配(表裏面の成す角度θ)が異なる(例えば5,8,13度)ものを用意することが好ましい。このようにすれば、当接部材23と締結ナット26との間に配置するテーパワッシャ27,28の種類を適宜選択することで、マクラギMの端部tとバラスト止めE表面との傾斜に応じて、ボルト20を固定部1に対し最適な傾斜姿勢で固定することができる。
【0029】
[第3の実施形態]
図15(A)に示すように、固定部1と支持部10との連結を、頭部を有する通常のボルト30で行なうことも可能である。この場合、固定ナット21で回転操作部を構成するときは、ワッシャ23,24を、固定ナット21の螺合に先立って、ボルト30に装着しておく必要が生じるが、それ以外の態様は、前記第1の実施形態とほぼ共通である。
【0030】
[第4の実施形態]
図16は、支持部10に関する異なる態様を例示するものである。本例では、高ナットに代えて、平板状プレート11に貫通孔を設けたコ字形部材13を固定し、このコ字形部材13に通常のナット14を固定したものである。かかる構成の支持部10であっても、前記第1の実施形態と、ほぼ同様の機能を発揮することができる。
【符号の説明】
【0031】
X…移動防止具 1…固定部 3…ボルト受け部 4…切欠 10…支持部 11…平板状プレート 12…高ナット 20…ボルト 21…固定ナット(回転操作部) 23…当接部材 26…締結ナット E…バラスト止め(固定構造物) G…凹部 M…マクラギ t…マクラギ端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクラギが長手方向(レールの延伸方向に対し直角な方向)へ移動するのを阻止するための手段に関し、特に、バラストで保持されていないマクラギを主たる適用対象とするものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両が走る軌道は、主として道床・マクラギ・レールで構成される。レールは寒暖差により伸縮して、レールの延伸方向とは直角な方向に座屈する等の変形を生じることがある。このレール変形は、スラブ軌道に比べてバラスト軌道において起こりやすい。バラスト軌道におけるレール変形を阻止する技術は、例えば特許文献1及び2に記載されている。
【0003】
特許文献1は、マクラギの端部に座屈防止板を装着し、座屈防止板の下面に突設した係止板を、バラストに食い込ませることで、マクラギが長手方向(レール延伸方向に対し直角な方向)に移動するのに抵抗力を与え、それによりレールの座屈変形を防止するというものである。
【0004】
特許文献2は、道床を挟む土留め壁に引っ張り部材を設け、この引っ張り部材をマクラギの両端部それぞれに取り付けることで、マクラギが長手方向へ移動するのを拘束し、レールの変位を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−42103号公報
【特許文献2】特開2003−247201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図17(A)(B)に示すように、レールRが下水渠の如き溝Cを超える場合、道床D部分と橋梁F部分との境界に位置するマクラギMは、特殊な設置構造となる。すなわち、溝Cに面する岸上に構築されたコンクリート製のバラスト止めEに凹部Gを形成し、この凹部G内にマクラギMが配置される。このマクラギMの周囲はバラストが充填されず、その両端部t,tとコンクリート製バラスト止めEとの間に隙間が形成される。従って、当該マクラギMは長手方向の移動に対する拘束力が弱いため、当該マクラギM位置でレールRの座屈を招く可能性があった。前記特許文献1,2に記載するマクラギの移動防止技術は、道床のバラストを利用するものであるから、上述したような溝Cに面した位置のマクラギMに対しては適用することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題を解決するために本発明が創案したマクラギの移動防止具の特徴は、マクラギの長手方向の端部に固定される固定部、マクラギ端部の近傍に位置する固定構造物に当接される支持部、及び、固定部と支持部とを連結するボルトを備え、固定部にはボルトの一端部が回転可能に装着されるボルト受け部を設け、支持部にはボルトの他端部を螺合させるナットを設け、ボルトの中間部に当該ボルトを回転させるための回転操作部を設けると共に、前記ボルトにおける前記固定部のボルト受け部に装着される側の一端部と前記回転操作部との間に、前記固定部のボルト受け部に直接又は間接的に当接し且つ当該ボルトと一体に回転可能になされた当接部材を設けたところにある。
【0008】
また本発明に係るマクラギの移動防止具の構成をより具体化すると、前記固定部はL形状プレートから成り、前記支持部は前記ボルトの他端部を螺合させる高ナットを固定した平板状プレートから成り、前記ボルトは少なくとも両端部から所定範囲にネジが形成されたボルトから成り、前記固定部のボルト受け部は、前記ボルトの一端部を挿入させる切欠を形成したコ字形部材から成り、前記ボルトの一端部と回転操作部との間に設けられる当接部材は、ボルトに螺合される緩み止め構造を有するナットであって、ボルト受け部との当接部分に摩擦抵抗を低減化する手段が講じられており、前記ボルトの一端部に、前記当接部材としてのナットと協働して前記ボルト受け部としてのコ字形部材を挟持する締結ナットを螺合した構成とすることが考えられる。
【0009】
さらに、前記当接部材としてのナットに講じられる摩擦抵抗低減化手段について、より具体的な構成を述べれば、当該ナットにおける前記ボルト受け部に対する当接面に凹部又は溝を形成し、当該凹部又は溝内に配置した球状部材から構成することが考えられる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載したマクラギの移動防止具によれば、固定部をマクラギの長手方向の端部に固定し、支持部をマクラギ端部の近傍に位置する固定構造物に当接させ、固定部と支持部とを連結するボルトを、回転操作部で所定の方向へ回転操作する。すなわち、ボルトの一端部は固定部に対しボルト受け部において自由回転させ、ボルトの他端部は支持部に設けたナットに対して後退させる。これにより、固定部と支持部との距離が拡大し、支持部が固定構造物を押圧すると共に、ボルトの一端部と回転操作部との間に設けた当接部材が、ボルト受け部を介して、固定部をマクラギ端面へ押しつける。従って、マクラギの両端部に当該移動防止具を配設することにより、マクラギが長手方向へ移動するのを確実に防止することができる。
【0011】
請求項2に記載したマクラギの移動防止具によれば、固定部をL形状プレートとしたので、マクラギ端部への位置決め及び固定が容易になる。
支持部を高ナットを固定した平板状プレートで構成したので、ボルトの螺合状態が安定すると共に、大きな圧縮強度が得られる。
固定部のボルト受け部を切欠を形成したコ字形部材から成るものとしたから、ボルトの一端部を装着するのが容易である。
ボルトの一端部と回転操作部との間に設けられる当接部材を、緩み止め構造を有するナットであって、ボルト受け部との当接部分に摩擦抵抗の低減化手段を講じたものとしたので、ボルトを回転させて固定部と支持部との距離を拡大するときに、当接部材がボルト受け部に当接した状態でも、ボルトの回転操作を円滑に継続できる。しかも、その際、緩み止め構造により、当接部材としてのナットをボルトと一体回転させることが可能である。
ボルトの一端部に締結ナットを螺合したので、ボルトの回転操作が終了したあと、この締結ナットを締め付けることにより、当接部材としてのナットと協働してボルト受け部としてのコ字形部材を挟持するから、ボルト一端部を、固定部へ強固に固定することができる。
【0012】
請求項3に記載するように、当接部材としてのナットにおける摩擦抵抗低減化手段を、ボルト受け部に対する当接面に凹部又は溝を形成し、当該凹部又は溝内に球状部材を配置する構成とすることにより、当接部材をボルト受け部に当接させた状態で、ボルトと一体回転させる際の抵抗を非常に小さくできるから、ボルトの回転操作が容易となり、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る移動防止具の斜視図である。
【図2】本発明に係る移動防止具の構成部材を分解して示す斜視図である。
【図3】本発明に係る移動防止具の固定部を示すものであって、図(A)は平面図、図(B)は正面図、図(C)は左側面図である。
【図4】本発明に係る移動防止具の支持部を示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は平面図、図(C)は底面図である。
【図5】本発明に係る移動防止具のボルトを示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は図(A)のイ−イ線における断面図である。
【図6】本発明に係る移動防止具の当接部材を示すものであって、図(A)は平面図、図(B)は側面図、図(C)は底面図である。
【図7】本発明に係る移動防止具のボルトの異なる態様を示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は図(A)のロ−ロ線における断面図である。
【図8】本発明に係る移動防止具のボルトの異なる態様を示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は図(A)のハ−ハ線における断面図である。
【図9】本発明に係る移動防止具の施工手順を説明するものであって、図(A)は、マクラギ端部へ、固定部を固定する要領を示す側面図、図(B)は固定部以外の部材を示す側面図である。
【図10】本発明に係る移動防止具の施工手順を説明するものであって、マクラギ端部に固定した固定部と、固定部以外の部材を組み付けた状態を示す側面図である。
【図11】本発明に係る移動防止具をマクラギとバラスト止めとの間に装着した状況を示す側面図である。
【図12】本発明に係る移動防止具をマクラギの両端部とバラスト止めとの間に装着した状況を示す断面図である。
【図13】本発明に係る移動防止具をマクラギとバラスト止めとの間に装着した状況を示す平面図であって、図(A)はマクラギとバラスト止めとの間隔が広い状態、図(B)はマクラギとバラスト止めとの間隔が狭い状態を示すものである。
【図14】本発明の第2の実施形態に係るものであって、図(A)は移動防止具をマクラギとバラスト止めとの間に装着した状況を示す平面図、図(B)はテーパワッシャの正面図、図(C)〜(E)はそれぞれ勾配の異なるテーパワッシャの側面図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係るものであって、図(A)は移動防止具の支持部とボルトとを分解して示す斜視図、図(B)はボルトを支持部に組み付けたものと固定部とを示す斜視図である。
【図16】本発明の第4の実施形態に係るものであって、図(A)は移動防止具の支持部とボルトとを分解して示す斜視図、図(B)は支持部の側面断面図、図(C)はボルトを支持部に組み付けたものと固定部とを示す斜視図である。
【図17】本発明に係る移動防止具の適用対象を例示するものであって、図(A)はレールが溝(下水渠)を跨いでいる状況を示す斜視図、図(B)は、バラスト止めの凹部に配設されているマクラギを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
本発明を、溝(図17参照)に面して構築したバラスト止めに配置されるマクラギに適用する場合の実施形態について説明する。なお、マクラギ端部に位置する固定構造物がバラスト止め以外であっても、本発明は、当然、適用可能である。
図1及び図2に示すように、本発明に係る移動防止具Xは、マクラギMの端部に固定される固定部1、固定構造物としてのバラスト止めに当接される支持部10、及び、固定部1と支持部10とを連結するボルト20を主たる構成部材としている。
【0015】
固定部1は、図3に示すように、水平部1aと起立部1bとから成る断面L形のプレートが用いられ、起立部1bの表面に、切欠4を形成したコ字形部材を固定して、これをボルト受け部3と成している。水平部1aには、これをマクラギMに固定する釘を挿通させるための開孔2が形成されている。
【0016】
支持部10は、図4に示すように、平板状のプレート11に、ボルト20を螺合させる高ナット12を固定したものである。
【0017】
固定部1と支持部10とを連結するボルト20は、本例では、図5に示すような頭部を持たず全長にネジを形成したいわゆる寸切ボルトを用いた。そして、このボルト20の中間部に螺合したナット21をピン21aで固定することにより、ボルト20の回転操作部となしている。なお、ボルト20に回転操作部を形成する手段は、上記の固定ナット21のほか、図7に示すように、適当な六角棒の両端からネジを形成し、中間部にネジの未形成部20aを残存させることにより、これを回転操作部とする態様や、図8に示す如く、十分な太さを有する寸切ボルト20の中間部に、二つの面取部20b、20bを対向させて形成することにより、これを回転操作部とする態様が考えられる。なお、ネジ部の長さは、移動防止具Xを適用しようとするマクラギとバラスト止めとの隙間寸法に応じて適宜設定すればよい。
【0018】
ボルト20における回転操作部としての固定ナット21より固定部1側の部分には、ボルト受け部3に直接又は間接的に当接してボルト20と一体に回転可能になされた当接部材として、バネなどによる緩み止め構造を有するナット23が螺合され、必要に応じワッシャ24,25が配置され、さらに一端部近くに締結ナット26が螺合される。従ってナット23は、ワッシャ24を省略した場合はボルト受け部3に直接当接し、ワッシャ24を使用した場合は間接的に当接することになる。またボルト20における回転操作部21よりも支持部10側の部分には、所望により、ボルト20の高ナット12への螺合状態が緩むのを防止するためのロックナット22が配置される。
【0019】
当接部材として機能するナット23は、例えば図6に示すような、バネ23aによる緩み止め構造を有し、ボルト20へ螺合させたときに、一方向への回転は許可するが、反対方向への回転は阻止するようになされている。具体的には、回転操作部21からボルト受け部3側へ進行する方向へのみ回転可能になされている。当該ナット23におけるボルト受け部3と対向する側の当接面に講じる摩擦抵抗低減化手段としては、グリースのような潤滑剤を塗布することが考えられる。その他、ナット23における当接面に、図6(C)に示す如き環状溝23cまたは複数の凹部を形成し、当該環状溝23cまたは複数の凹部内に複数の鋼球23bを配置して、ボールベアリングと同様の構造を設けることが考えられる。
【0020】
なお当接部材に上記の緩み止め構造を有するナット23を用い、回転操作部を図5に示す固定ナット21で構成する場合は、ナット23が一方向にしか回転(進行)できないことを考慮すると、当接部材であるナット23をあらかじめボルト20へ螺合させてから、固定ナット21をボルト20に螺合させて固定する必要がある。また、ボルト20の回転操作部を図7に示す構造とした場合、上記緩み止め構造を有するナット23はボルト20に螺合させるのが困難になる。そこで、この場合は、例えば通常のナットを2つ組み合わせ、一方をロックナットとして機能させることにより緩み止め機能を持たせることが考えられる。
【0021】
前記締結ナット26にも、バネ等による緩み止め構造を有するものを使用するのが望ましい。この場合、当該締結ナット26は、ボルト20の一端部から回転操作部21の方へ向かって進行する方向へのみ回転可能とする。
【0022】
前記移動防止具Xの各構成部材は、強度に優れ、且つ、容易に錆びないことが要求される。そのような材質としては、例えば、鉄製あるいは鋼製の部材に、亜鉛溶融メッキを施したものが考えられる。また、固定部1の起立部1bに対するコ字形のボルト受け部3の固定や、支持部10における平板状プレート11に対する高ナット12の固定を、溶接で行なう場合は、溶接後にメッキを施すことが望ましい。
【0023】
前記の如く構成された移動防止具Xの施工手順を、次に説明する。図9に示す如く、固定構造物であるバラスト止めEの凹部GにマクラギMが設置されている状況下で、まず、このマクラギMのバラスト止めEに面した端部t(マクラギMの長手方向の端部)に、L字形の固定部1を装着する。そして、固定部1の水平部1aを釘40で固定する。
【0024】
次に、図10に示す如く、回転操作部となる固定ナット21及び当接部材であるナット23をあらかじめ装着したボルト20の一端部側に、ワッシャ24.25を介して、締結ナット26を螺合させる。他方、ボルト20の他端側には、ロックナット22を介して、支持部10の高ナット12を螺合させる。当接部材23と締結ナット26との間隔は、ワッシャ24,25間に、ボルト受け部4をできるだけ隙間なく挟持できるような寸法に設定する。そして、ボルトの一端部から支持部10の平板状プレート11までの長さが、マクラギMとバラスト止めEとの隙間寸法より若干短くなるように、ボルト20の高ナット12に対する螺合状態を調節する。
【0025】
続いて、図11に示す如く、ボルト20の一端部を、固定部1のボルト受け部3に形成した切欠4に挿入すると共に、ワッシャ24,25間に、ボルト受け部3を挟持させる。そして、支持部10を保持した状態で、ボルト20中間部に設けた回転操作部(固定ナット21)を適当な道具(スパナ・モンキーレンチ・プライヤ・ペンチなど)で操作して、ボルト20が高ナット12に対し後退する方向へ、当該ボルト20を回転させる。これにより、固定部1と支持部10との距離が拡大するので、支持部10の平板状プレート11がバラスト止めEへ押しつけられると同時に、当接部材23がワッシャ24を介して、ボルト受け部3の表面を押圧する。当接部材23におけるボルト受け部3側の当接面には摩擦抵抗低減化手段が講じられており、また、ボルト受け部3から後退する方向への回転を阻止する緩み止め機構が設けられていることにより、当接部材23は、ボルト受け部3に対し押圧力を及ぼしながら、ボルト20と一体に回転することができる。
【0026】
上述のようにして、回転操作部の固定ナット21を操作してボルト20の回転を続けると、やがて固定部1と支持部10との距離がマクラギMとバラスト止めEとの間隔寸法に到達し、それ以上、ボルト20を回転させるのが困難になる。このような状態になったならば、適当な道具でボルト20の回転操作部(固定ナット21)を押さえ、ボルト20が回転しないように保持する。そして締結ナット26を回転させ、次いで必要に応じ当接部材23も回転させ、ワッシャ24,25間でボルト受け部3を挟持する。これにより、ボルト20の一端部がボルト受け部3へ強固に固定される。
【0027】
前述した工程をマクラギMの両端部において行い、図12に示すように、マクラギMの両端部に移動防止具Xを装着することにより、マクラギMの長手方向の移動を確実に阻止することができる。図13(A)(B)に示す如く、マクラギMとバラスト止めEとの間隔寸法の違いは、ボルト20の高ナット12に対する螺合度合によって対応することが可能である。また、ボルト20及び高ナット12の長さを適当に設計することで、移動防止具Xにおける固定部1から支持部10までの長さの最大寸法及び最小寸法を所望の値とすることが可能である。なお、まくらぎMとバラスト止めEとの距離が、移動防止具Xの最大長さより大きいときは、支持部10の平板状プレート11とバラスト止めEとの間に適当な補助部材(例えば軌道パッドなど)を配置して、隙間を充填するようにしてもよい。
【0028】
[第2の実施形態]
図14(A)に示すように、マクラギMの端部tに対し、バラスト止めE等の固定構造物の表面が明確に傾斜している場合、移動防止具Xのボルト20を、固定部1に対し、傾斜させた姿勢で取り付けることが望ましい。そのためには、ボルト20に装着される当接部材23と締結ナット26との間に配置するワッシャを、同図(B)乃至(E)に示す如き、厚み方向の断面を台形状に形成したテーパワッシャ27,28とすればよい。なお、テーパワッシャ27(28)には、断面の勾配(表裏面の成す角度θ)が異なる(例えば5,8,13度)ものを用意することが好ましい。このようにすれば、当接部材23と締結ナット26との間に配置するテーパワッシャ27,28の種類を適宜選択することで、マクラギMの端部tとバラスト止めE表面との傾斜に応じて、ボルト20を固定部1に対し最適な傾斜姿勢で固定することができる。
【0029】
[第3の実施形態]
図15(A)に示すように、固定部1と支持部10との連結を、頭部を有する通常のボルト30で行なうことも可能である。この場合、固定ナット21で回転操作部を構成するときは、ワッシャ23,24を、固定ナット21の螺合に先立って、ボルト30に装着しておく必要が生じるが、それ以外の態様は、前記第1の実施形態とほぼ共通である。
【0030】
[第4の実施形態]
図16は、支持部10に関する異なる態様を例示するものである。本例では、高ナットに代えて、平板状プレート11に貫通孔を設けたコ字形部材13を固定し、このコ字形部材13に通常のナット14を固定したものである。かかる構成の支持部10であっても、前記第1の実施形態と、ほぼ同様の機能を発揮することができる。
【符号の説明】
【0031】
X…移動防止具 1…固定部 3…ボルト受け部 4…切欠 10…支持部 11…平板状プレート 12…高ナット 20…ボルト 21…固定ナット(回転操作部) 23…当接部材 26…締結ナット E…バラスト止め(固定構造物) G…凹部 M…マクラギ t…マクラギ端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクラギの長手方向の端部に固定される固定部、マクラギ端部の近傍に位置する固定構造物に当接される支持部、及び、固定部と支持部とを連結するボルトを備え、
固定部にはボルトの一端部が回転可能に装着されるボルト受け部が設けられ、
支持部にはボルトの他端部を螺合させるナットが設けられ、
ボルトの中間部に当該ボルトを回転させるための回転操作部が設けられ、
前記ボルトにおける前記固定部のボルト受け部に装着される側の一端部と前記回転操作部との間に、前記固定部のボルト受け部に直接又は間接的に当接し且つ当該ボルトと一体に回転可能になされた当接部材が設けられていることを特徴とするマクラギの移動防止具。
【請求項2】
前記固定部はL形状プレートから成り、
前記支持部は前記ボルトの他端部を螺合させる高ナットを固定した平板状プレートから成り、
前記ボルトは少なくとも両端部から所定範囲にネジが形成されたボルトから成り、
前記固定部のボルト受け部は、前記ボルトの一端部を挿入させる切欠を形成したコ字形部材から成り、
前記ボルトの一端部と回転操作部との間に設けられる当接部材は、ボルトに螺合される緩み止め構造を有するナットであって、ボルト受け部との当接部分に摩擦抵抗を低減化する手段が講じられており、
前記ボルトの一端部に、前記当接部材としてのナットと協働して前記ボルト受け部としてのコ字形部材を挟持する締結ナットを螺合した請求項1に記載するマクラギの移動防止具。
【請求項3】
前記当接部材としてのナットに講じられる摩擦抵抗低減化手段は、当該ナットにおける前記ボルト受け部に対する当接面に凹部又は溝を形成し、当該凹部又は溝内に配置した球状部材から構成されている請求項2に記載するマクラギの移動防止具。
【請求項1】
マクラギの長手方向の端部に固定される固定部、マクラギ端部の近傍に位置する固定構造物に当接される支持部、及び、固定部と支持部とを連結するボルトを備え、
固定部にはボルトの一端部が回転可能に装着されるボルト受け部が設けられ、
支持部にはボルトの他端部を螺合させるナットが設けられ、
ボルトの中間部に当該ボルトを回転させるための回転操作部が設けられ、
前記ボルトにおける前記固定部のボルト受け部に装着される側の一端部と前記回転操作部との間に、前記固定部のボルト受け部に直接又は間接的に当接し且つ当該ボルトと一体に回転可能になされた当接部材が設けられていることを特徴とするマクラギの移動防止具。
【請求項2】
前記固定部はL形状プレートから成り、
前記支持部は前記ボルトの他端部を螺合させる高ナットを固定した平板状プレートから成り、
前記ボルトは少なくとも両端部から所定範囲にネジが形成されたボルトから成り、
前記固定部のボルト受け部は、前記ボルトの一端部を挿入させる切欠を形成したコ字形部材から成り、
前記ボルトの一端部と回転操作部との間に設けられる当接部材は、ボルトに螺合される緩み止め構造を有するナットであって、ボルト受け部との当接部分に摩擦抵抗を低減化する手段が講じられており、
前記ボルトの一端部に、前記当接部材としてのナットと協働して前記ボルト受け部としてのコ字形部材を挟持する締結ナットを螺合した請求項1に記載するマクラギの移動防止具。
【請求項3】
前記当接部材としてのナットに講じられる摩擦抵抗低減化手段は、当該ナットにおける前記ボルト受け部に対する当接面に凹部又は溝を形成し、当該凹部又は溝内に配置した球状部材から構成されている請求項2に記載するマクラギの移動防止具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−242328(P2010−242328A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90282(P2009−90282)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(390007607)大鉄工業株式会社 (11)
【出願人】(509095444)株式会社モリオ建工 (1)
【出願人】(592123266)峰岸株式会社 (4)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(390007607)大鉄工業株式会社 (11)
【出願人】(509095444)株式会社モリオ建工 (1)
【出願人】(592123266)峰岸株式会社 (4)
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