説明

マクロファージが仲介する疾患の治療および診断

【課題】活性化マクロファージが仲介する病態を治療またはモニター/診断する方法の提供。
【解決手段】本方法は、マクロファージが仲介する病態にある患者に、以下の一般式のコンジュゲートまたは複合体を含有する組成物の有効量を投与するステップを含む。A‐X(式中、グループAは、活性化マクロファージとの結合能をもつリガンドを含み、グループXは、該コンジュゲートを該病態の治療に用いる場合、免疫原、細胞毒、もしくはマクロファージ機能を変化させる能力をもつ化合物を含み、また、該コンジュゲートを該病態のモニター/診断に用いる場合は、画像化剤を含む。)この方法は、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症、感染症、骨髄炎、アテローム性動脈硬化症、臓器移植拒絶反応、肺繊維症、サルコイドーシス、および全身性硬化症からなる群から選択される疾患に罹患している患者の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性化マクロファージが仲介する病態の治療法およびモニター法に関する。特に、マクロファージが仲介する疾患を診断および/または治療するため、罹患している宿主に投与することを目的とし、活性化マクロファージと結合するリガンドを、画像化剤、または免疫原、細胞毒、もしくはマクロファージ機能を変化させる作用物質と複合体にする。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の免疫系は、外来の病原体を認識して除去する手段を与える。免疫系は通常、外来の病原体に対する防衛線を与えるが、その一方で免疫応答そのものが疾患の進行に関与している場合も多い。宿主自身の免役応答により引き起こされたり悪化したりする疾患の代表例としては、多発性硬化症、紅斑性狼瘡、乾癬、肺繊維症、および関節リウマチなどの自己免疫疾患や、アテローム性硬化症、炎症性疾患、骨髄炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、および器官移植拒絶反応の原因となることが多い移植片対宿主病などの、免疫応答が病因に寄与している疾患がある。
【0003】
マクロファージは、概して、外来の病原体に最初に出会う細胞であり、このため、免疫応答において重要な役割を果たしている。しかし、場合によっては、活性化マクロファージが疾患の病態生理に寄与することがある。活性化マクロファージは、異種病原体を非特異的に飲み込み、加水分解的かつ酸化的攻撃によって自身の内部で殺し、その結果病原体を分解してしまう。分解されたタンパク質のペプチドがマクロファージ細胞表面に提示されると、そこでT細胞に認識されることができ、B細胞表面の抗体と直接相互作用することができる。その結果、T細胞とB細胞が活性化し、さらに免疫応答が刺激される。
【0004】
関節リウマチ(RA)は、滑膜の慢性的な炎症を特徴とする全身性疾患であり、通常、末梢関節に生じる。滑膜の炎症が軟骨の変形と骨の腐食を引き起こし、その結果、関節の整合性が壊れる。リウマトイド因子は、IgGのFc部位に反応する自己抗体であり、RA患者の3分の2以上に見られる。このことは、RAが自己免疫疾患としての側面をもつことを示すものである。
【0005】
世界におけるRAの罹患率は人口の2%にもおよび、そのうち80%の患者が35歳から50歳の間に発病している。RAの臨床症状は、関節の疼痛、腫脹、および圧痛であり、その結果として動作の制限、脱力感、疲労、および体重の減少が起こる。RAは、全身性疾患であるため、特にリウマトイド因子の力価が高い患者において関節外症状をきたす。関節外症状としては、リウマトイド結節(中心層に壊死性の物質、中間層にマクロファージ、外層に肉芽組織をもつ)、筋肉の萎縮、骨粗鬆症、肺繊維症、およびリウマチ性血管炎(rheumatoid vasculitis)などがあり、リウマチ性血管炎は、皮膚潰瘍、指の壊疽、または神経血管疾患を引き起こすことがある。
【0006】
RAの特徴であるリウマチ性滑膜炎(rheumatoid synovitis)は、滑膜表層細胞数の増加、滑膜表層細胞の過形成(hyperplasia)と肥大(hypertrophy)、微細血管の損傷、浮腫のほか、T細胞、マクロファージ、樹状細胞等の細胞の浸潤を引き起こす。リウマチの滑膜の特徴は、IL‐2、IFN‐δ、IL‐6、IL‐10、GM‐CSF、およびTGFα、TGFβなどのTリンパ球により分泌される因子、ならびにIL‐l、IL‐6、IL‐8、IL‐10、GM‐CSF、マクロファージCSF、およびTGFβなどの活性化マクロファージにより分泌される因子のような、免疫細胞の分泌産物の存在である。このようなサイトカインの産生は、滑膜の炎症、滑膜細胞増殖、軟骨と硬骨の退行、およびRAの全身性症状等のRAの病理の多くの説明となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
RAは、理学療法、安静、および副木固定等の様々な治療法を用いて治療することが可能である。RAの治療には、局所的な炎症を抑制するために、アスピリンや非ステロイド系抗炎症剤をはじめとする治療薬もまた用いられる。しかし、このような薬剤は、RAの進行には最低限の効果しかなく、また有害な副作用を伴う。α‐ペニシラミンやスルファサラジンのような疾患修飾性抗リウマチ薬もRAの治療に用いられるが、このような薬剤は、効果が発揮されるまでに数週間あるいは数カ月を要し、かつ有害な副作用がある。患者によっては、免疫を抑制する薬や細胞毒性のある薬がRAの症状を抑制する場合もあるが、このような薬剤は毒性を伴う。グルココルチコイドを関節内に投与する方法も行われてきたが、一時的に鎮痛させるにすぎなかった。したがって、RAをはじめとする、活性化マクロファージにより引き起こされたり悪化したりする疾患に、有効でかつ毒性の低い新しい治療法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
葉酸受容体(FR)は、ビタミンの一種である葉酸に高親和力(<1nM)で結合する38KDaのGPIアンカー型タンパク質である。受容体に結合した後、葉酸は迅速なエンドサイトーシスにより細胞内に輸送され、pHの低いエンドソームの区画で受容体から離れる。重要なことは、小さな分子、タンパク質、およびリポソームですら、葉酸と共有結合することで葉酸の葉酸受容体との結合能を変化することはないため、葉酸塩と薬剤とのコンジュゲートは、受容体が仲介するエンドサイトーシスによって容易に細胞内に進入するということである。
【0009】
ほとんどの細胞が、必要な葉酸を得るために、関連性のない還元型葉酸塩キャリア(RFC)を用いているため、葉酸受容体の発現は、数種類の細胞タイプ(cell-type)に限定される。腎臓と胎盤を除いては、正常組織は、低レベルまたは検出不可能レベルのFRしか発現しない。しかし、卵巣癌、乳癌、気管支癌、脳腫瘍を含む多くの悪性組織が、葉酸受容体を有意に高レベルで発現している。実際、全卵巣癌の95%が葉酸受容体を過剰発現していると推定されている。近年になって報告されたことであるが、葉酸受容体の非上皮性アイソフォームであるFRβが、滑膜の活性化(休止期ではなく)マクロファージ上に発現している。そこで、発明者等は、マクロファージが仲介する病態を治療するため、活性化マクロファージの機能を変化させる可能性のある葉酸塩結合化合物を利用することを試みた。例えば、発明者らは、マクロファージを除去して関節の炎症を緩和するために、葉酸塩結合免疫原を用いて、関節炎を罹患する動物における宿主免疫反応を炎症部位の活性化マクロファージに向けさせることが可能であることを明らかにした。
【0010】
シンチグラフィー用画像化剤は、磁気共鳴画像診断(MRI)用造影剤よりもはるかに高感度であり、その選択性は、病変に特異的な細胞マーカーを標的とすることにより、さらに高めることができる。確かに、非特異的IgG抗体、抗CD4抗体、CD11b/CD14グリコリポペプチドリガンド、およびEセレクチン結合ペプチドを用いて、放射性同位体99mTcを関節炎罹患組織に輸送することが行われてきた。このような放射性画像化剤を用いた前臨床研究では、in vivoで関節炎組織を画像化することにはっきりと力点が置かれてきたが、現在入手できる画像化剤の選択性は未だ最適ではなく、また、現在用いられている化合物のなかに、活性化マクロファージのみを標的とするものはない。葉酸受容体の活性はマクロファージが活性化する間に現れることを考慮し、発明者らは、in vivoで関節炎病変を画像化するために、葉酸を標的とする99mTc画像化剤を用いることが可能かどうかを見極めることを試みた。
【0011】
炎症部位において、薬剤が活性化マクロファージを選択的に標的とするよう、この高親和性を有するFRの発現を利用することが可能かどうかを判断するために、葉酸を99mTcキレート剤に結合し、その分布を、アジュバントで関節炎を誘導したラットの正常組織および患部組織において評価した。EC20と名付けたこの葉酸結合99mTcキレート複合体は、罹患ラットの関節炎を起こしている四肢に集中するのが確かに認められたが、健常ラットの関節には認められなかった。過剰な競合葉酸の存在下では、患部組織のガンマシンチグラフィー画像の強度は、大幅に減少した。また、関節炎罹患動物の肝臓および脾臓も、EC20の取り込みの増加を示し、FRのレベルも上がった。このことから、アジュバント誘導関節炎には、全身的なマクロファージの活性化が伴うことが確認された。関節炎罹患動物からマクロファージを除去すると、組織のFR量が減少し、それと付随してEC20の取り込みがなくなる。また、アジュバント誘導関節炎ラットから単離したクップファー細胞は、葉酸塩コンジュゲートとの結合能が、健常ラットのクップファー細胞より有意に高かった。このようにして、発明者等は、EC20が関節リウマチなどの炎症性病変に対する活性化マクロファージの関与をアッセイするのに有用であることを明らかにした。
【0012】
本発明は、活性化マクロファージが仲介する疾患を治療およびモニターする方法を目的とする。本発明の一つの実施態様によれば、宿主免疫応答を活性化マクロファージに向けさせること、または活性化マクロファージの機能を変化させること、または活性化マクロファージを直接殺すことにより、活性化マクロファージが仲介する病態を治療する。本発明の一つの実施態様では、活性化マクロファージの死を促進することを目的とし、宿主免疫応答を活性化マクロファージに向けさせるため、活性化マクロファージに特異的に結合するリガンドを、免疫原と結合させるか、マクロファージを直接殺すために、リガンドを細胞毒と結合させる。本発明のコンジュゲートに用いられるリガンドは、葉酸受容体のような活性化マクロファージ上に特異的に発現する受容体に結合するリガンドや、活性化マクロファージ上に特異的に発現する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のようなリガンドを含む。本発明のまた別の実施態様では、活性化マクロファージに特異的に結合するリガンドを、画像化剤と結合させる。このコンジュゲートを、活性化マクロファージが仲介する疾患の進行の診断およびモニターのため、患者に投与する。
【0013】
一つの実施態様では、活性化マクロファージが仲介する疾患の治療またはモニター/診断方法が提供される。この方法は、マクロファージが仲介する病態にある患者に、一般式A‐Xのコンジュゲートまたは複合体を含有する組成物の有効量を投与するステップを含む。この式中、グループAは、活性化マクロファージへの結合能をもつリガンドを含み、コンジュゲートを病態の治療に用いる場合、グループXは、免疫原、細胞毒、もしくはマクロファージ機能を変化させる能力をもつ化合物を含み、またコンジュゲートを病態のモニター/診断に用いる場合、Xは画像化剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によれば、活性化マクロファージが仲介する病態の治療またはモニター/診断方法が提供される。活性化マクロファージが仲介することが知られている疾患の代表例としては、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、骨髄炎、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、肺繊維症、サルコイドーシス、全身性硬化症、臓器移植拒絶症(GVHD)、および慢性炎症が挙げられる。その病態にある患者に、まず、一般式A‐X(式中、グループAは、活性化マクロファージへの結合能をもつリガンドを含み、グループXは、画像化剤を含む)のコンジュゲートを含有する組成物の有効量を投与し、次にこの画像化剤を検出することができる画像装置により患者をスキャンすることによって、このような病態をモニターすることができる。本発明によれば、マクロファージが仲介する病態を、上記式の組成物の有効量を投与することによって治療することができる。この場合、グループAは、活性化マクロファージへの結合能をもつリガンドを含み、グループXは、免疫原、細胞毒、もしくはマクロファージ機能を変化させる能力をもつサイトカインを含む。このようなマクロファージを標的とするコンジュゲートは、活性化マクロファージが仲介する病態にある患者に投与されると、結合している細胞毒、免疫原、またはサイトカインが集中的に活性化マクロファージの集団と結びつくように作用し、活性化マクロファージを殺したり、マクロファージ機能を変化させたりする。活性化マクロファージ集団を除去または不活性化することは、治療中の病態に特徴的な、活性化マクロファージが仲介する疾患の発生を阻止または抑制する効果がある。このコンジュゲートは通常、そのコンジュゲートと薬学的に許容されるその担体とを含む組成物として非経口投与される。コンジュゲートの投与は、通常、当該疾患の症状が緩和または除去されるまで続けられる。
【0016】
本発明の一つの実施態様では、コンジュゲートA‐X(式中、Aは活性化マクロファージへの結合能を有するリガンドを含み、Xは画像化剤を含む)を投与し、かつその後画像化剤の局所的集中を検出することができる画像装置を用いて患者をスキャンすることによって、患者の体内で、活性化マクロファージが仲介する病態をモニターまたは診断する。この画像用または診断用コンジュゲートは、上記で説明した治療用コンジュゲートと同様のもので、通常、コンジュゲートと薬学的に許容されるその担体とを含む治療用組成物として投与される。この組成物は、通常、非経口投与用として調剤され、活性化マクロファージ集団が存在する場所を画像化することが可能な有効量を患者に投与される。このコンジュゲートの画像化剤成分の性質は、画像診断法で記述される。したがって、この画像化剤は、例えば、キレート部分と金属陽イオン、例えば、ガドリニウム等の放射性核種または核磁気共鳴画像診断用造影剤、を含みうる。通常、活性化マクロファージを標的とするこの画像化剤を患者に投与し、画像化剤が活性化マクロファージ集団の中に輸送されて集中するよう一定の時間を置いた後、患者を画像診断する。このようにして標的化画像化剤による画像診断が可能となる。
【0017】
本発明の方法は、ヒト臨床医学と獣医学のいずれにも応用することが可能である。すなわち、活性化マクロファージが仲介する病態にある宿主動物は、ヒトであってもよいし、または獣医学に応用する場合は、実験動物、農業用動物、家畜、野生動物のいずれであってもよい。本発明の方法によって投与されるコンジュゲートは、活性化マクロファージが仲介する病態にある動物またはヒトの患者に対し、例えば、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、または静脈内投与のように、非経口投与されることが好ましい。あるいは、このコンジュゲートは、その他の医学的に有用な方法で動物またはヒトの患者に投与されることができ、標準的投与形態でも、緩徐ポンプ(slow pump)のような徐放性投与形態でも、有効量を投与することが可能である。本発明の治療法は、単独で実施してもよいし、またはマクロファージが仲介する病態の治療に認められている他の治療法と組み合わせて実施してもよい。
【0018】
本発明による一般式A‐Xのリガンドコンジュゲートにおいて、グループAは、活性化マクロファージへの結合能を有するリガンドである。数多くのマクロファージ結合成分があるが、そのいかなるものでも使用することができる。許容されるリガンドの例としては、特に、葉酸受容体結合リガンドや、活性化マクロファージ内/上にのみ、あるいは他より高いレベルで発現したり提示されたりしている表面成分を認識し、かつこれに特異的に結合する能力を有する抗体および抗体断片が挙げられる。一つの実施態様では、活性化マクロファージ結合リガンドは、葉酸、葉酸類似体、またはその他の葉酸受容体結合分子である。活性化マクロファージは、葉酸および葉酸誘導化合物をナノモルレベル以下(すなわち、<1nM)の親和性で結合する38LDのGPIアンカー型葉酸受容体を発現している。また別の実施態様では、活性化マクロファージ結合リガンドは、特異的なモノクローナルもしくはポリクローナル抗体、または活性化マクロファージに対する特異的結合能を有する抗体のFabあるいはscFv(すなわち、単鎖可変領域)断片である。
【0019】
本発明によれば、活性化マクロファージが仲介する病態を診断およびモニターするために用いられる活性化マクロファージ標的コンジュゲートは、患者の活性化マクロファージ集団がある部位を標的とし、ここに画像化剤を集中させるよう調製される。このような一般式A‐Xのコンジュゲートにおいて、グループAは、活性化マクロファージとの結合能を有するリガンドであり、グループXは画像化剤を含む。一つの実施態様では、この画像化剤はキレート剤および金属陽イオンを含むが、通常は、ガドリニウム等の、放射性核種または核磁気共鳴画像診断用の増強剤や造影剤のいずれかである。グループAが、葉酸、葉酸類似体、または別の葉酸受容体結合リガンドであるこのようなコンジュゲートは、米国特許第5,688,488号に詳細に説明されている。この文献の明細書を本出願に援用する。上記のほか、関連する米国特許第5,416,016号および同5,108,921号にも、本発明に従い有用なキレートコンジュゲートを調製する方法と実施例が記載されている。これらの文献をそれぞれ本出願に援用する。本発明のマクロファージを標的とする画像化剤は、先に挙げた特許文献の中に記載されている下記の一般的なプロトコールに従って調製し、使用することができる。しかし、葉酸を標的とするコンジュゲートは、結合した画像化成分を活性化マクロファージ集団内にめがけて集中させるために用いることができるという発見に、本発明の診断法は部分的に基づいている。この活性化マクロファージ集団自体が、患部に活性化マクロファージが集中していることを特徴とする病態のモニターおよび診断を可能にするのである。
【0020】
本発明の一つの実施態様によれば、活性化マクロファージが仲介する病態を、そのような病態にある患者に一般式A‐Xのコンジュゲートを含有する組成物の有効量を投与することによって治療する方法が提供される。この式中、Aは上記で定義した通りであり、グループXは細胞毒、免疫原、もしくはマクロファージ機能を変化させる能力を有する化合物を含む。本方法により使用するコンジュゲートを調製するのに有用である細胞毒成分の代表例としては、クロドロネート、炭疽、シュードモナス外毒素(これら3種の細胞毒成分は、正常な細胞と結合しないように改変するのが普通)、およびその他の毒素または細胞障害性薬物が挙げられる。このような毒素または細胞障害性薬物には、当業者に公知の化学療法剤が含まれるが、それは例えば、アドレノコルチコイド、アルキル化剤、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、エストロゲン、代謝拮抗物質(シトシンアラビノシド、プリン類似体、ピリミジン類似体、およびメトトレキサート等)、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、プラチナ化合物(シスプラチン等)、タモキシフェン、タキソール、シクロフォスファミド、植物アルカロイド、プレドニゾン、ヒドロキシウレア、テニポシド、ブレオマイシン、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、ビンクリスチン、ビンブラスチン、抗炎症剤および炎症誘発剤等である。このような毒素または細胞障害性成分は、例えば、葉酸またはその他の葉酸受容体結合リガンドのような活性化マクロファージ結合成分と直接結合させることもできるし、または、リポソームの中に調剤することもできる。このリポソーム自体が、通常、構成成分のリン脂質にマクロファージ結合成分を共有結合したコンジュゲートとして、標的に向かう。同じように、グループXがマクロファージ機能を変化させることができる化合物(例えば、IL‐10またはIL‐11のようなサイトカイン)を含む場合、このサイトカインは、標的指向型成分A(例えば、葉酸受容体結合リガンド、抗体または抗体断片)と直接共有結合させることができる。あるいは、マクロファージ機能を変化させるサイトカインをリポソーム内に被包することができる。このリポソーム自体が、一つまたは複数のリン脂質リポソーム構成成分に共有結合する懸垂マクロファージ標的化成分Aによって、活性化マクロファージを標的にする。
【0021】
また別の実施態様では、リガンドと免疫原とのコンジュゲートを細胞障害性化合物と組み合わせて投与することができる。上記のパラグラフで列挙した化合物は、この目的のために適切なものの中に含まれている。
【0022】
本発明のさらにもう一つの治療方法の実施態様では、活性化マクロファージを標的とするコンジュゲートA‐XのグループXが、免疫原を含む。このリガンド‐免疫原コンジュゲートは、内因性免疫応答または抗体の共投与により、当該疾患を罹患する患者においてその病因となっている活性化マクロファージ集団を特異的に除去することを目的として、そのマクロファージ集団に「標識」を付けるのに効果的である。本発明による治療法においてリガンド−免疫原コンジュゲートを使用することによって、免疫応答を介する活性化マクロファージ集団の除去を促進することができる。これは、内因性免疫応答を介するか、または共投与された抗体による受動的免疫応答を利用することで達成できる。内因性免疫応答は、液性免疫応答、細胞性免疫応答、および宿主動物に内在する他のどのような免疫応答であってもよい。その例としては、補体が仲介する細胞溶解、抗体依存性細胞媒介性障害作用(ADCC)、食作用をもたらす抗体オプソニン作用、アポトーシス、増殖抑制、または分化のシグナル伝達をもたらす抗体結合の際の受容体のクラスター形成、および輸送された抗原/ハプテンを免疫細胞が直接認識すること等がある。また、内因性免疫応答が、免疫細胞の増殖や遊走などのプロセスを調節するサイトカインの分泌を利用しているということも考慮する。内因性免疫応答には、B細胞、ヘルパーT細胞や細胞障害性T細胞のようなT細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、好中球、LAK細胞等の免疫細胞タイプの関与が含まれてもよい。
【0023】
また別の実施態様では、免疫細胞によって認識させるために、マクロファージに、リガンド‐免疫原コンジュゲートを取り込ませ、その免疫原を分解させ、分解された免疫原を提示させることにより、分解された免疫源を提示しているマクロファージに対して向けられる免疫応答を引き出すことが可能である。
【0024】
液性応答は、通常のスケジュールによるワクチン接種や、天然の抗原、人工の抗原、もしくは新たな免疫を誘導する人工の抗原に結合させたフルオレセインイソシアネート(FITC)等のハプテンによる能動免疫化などのプロセスにより誘導される反応であってよい。能動免疫化には、新たな免疫を誘導するため、通常のワクチン接種計画以外に予定された、人工免疫原やハプテンの複数回の接種が必要である。液性応答はまた、宿主動物が、α‐ガラクトシル基に対する免疫等の、元々天然に存在する免疫を有するような先天性免疫に起因するものであってもよい。あるいは、宿主動物に、血清から収集した天然の抗体またはモノクローナル抗体等の抗体を投与することによって、受動免疫を確立してもよい。そのモノクローナル抗体は、ヒト化抗体をはじめとする遺伝子工学により作製された抗体であるか否かに関わらない。受動免疫を生じさせるため、一定量の抗体試薬を利用すること、および受動的に投与する抗体が当該免疫原に対して働くようなリガンド‐免疫原コンジュゲートを使用することは、他の潜在的免疫原に対する患者の既存の抗体価が治療上有用でない場合に、標準的な1組の試薬を使用できるというメリットをもたらすだろう。受動的に投与する抗体は、リガンド‐免疫原コンジュゲートと「共投与」してもよい。「共投与」とは、抗体を、リガンド‐免疫原コンジュゲートの前、これと同時、またはこの後に投与することであると定義する。既存の抗体、誘導された抗体、または受動的に投与された抗体は、リガンド‐免疫原コンジュゲートの活性化マクロファージ細胞集団との優先的な結合によって、活性化マクロファージを新たに標的とし、このような病原性細胞は、補体が仲介する細胞溶解、ADCC、抗体依存性食作用、または受容体の抗体クラスター形成等によって死ぬと考えられる。細胞障害のプロセスにはまた、上記以外の種類の免疫、例えば細胞性免疫や二次応答等の免疫反応を伴ってもよい。二次応答とは、引き付けられた抗原提示細胞が、活性化マクロファージを貪食し、このような細胞の抗原を免疫系に提示して、このような抗原を提示する他の活性化マクロファージを除去するときに起こる反応である。
【0025】
本発明の治療法に用いるコンジュゲートを調製するのに許容される免疫原は、宿主動物において抗体産生誘導能を有する免疫原か、宿主動物において以前抗体の産生を誘導したことがあり、その結果既存の免疫をつくる免疫原か、あるいは、先天性免疫系の一部を成す免疫原である。あるいは、その免疫原に対する抗体を、受動免疫を確立するために、宿主動物に投与してもよい。本発明において用いる適切な免疫原としては、ポリオウイルス、破傷風、チフス、風疹、麻疹、流行性耳下腺炎、百日咳、結核、インフルエンザ等の抗原、およびα‐ガラクトシル基等に対し、ワクチン接種を通常のスケジュールにより行ったか、あるいは以前自然に曝露されたために生じた既存の免疫の抗原または抗原ペプチドがある。そのような場合、宿主動物において以前に獲得された液性免疫または細胞性免疫を活性化マクロファージ集団に対して新たに標的とすることによりこのような細胞を除去するために、リガンド‐免疫原コンジュゲートを使用する。そのほかの適切な免疫原には、人工の抗原や例えばフルオレセインイソシアネート(FITC)やジニトロフェニル等のハプテンに対する免疫化によって宿主動物が新しい免疫を獲得している抗原または抗原ペプチドがある。さらに、スーパー抗原やムラミルジペプチドのような、先天性免疫が存在する場合の抗原もある。また、MHCクラスI拘束性ペプチドをリガンドに結合したものを用いて、細胞性免疫をマクロファージに対して新たに生じさせ、T細胞がマクロファージを殺すよう誘導することが可能であるとも考えられる。
【0026】
本発明に従い使用するためのコンジュゲートを調製する際、マクロファージ結合リガンドと、免疫原、細胞毒性薬剤、サイトカイン、または画像化剤(場合によりこれらのいずれでもよい)とは、当業者に公知の複合体形成法であればいかなるやり方で結合してもよい。その結合には、リガンドと免疫原との共有結合、イオン結合、または水素結合などがあり、直接結合してもよく、二価リンカーのような結合基によって、間接的に結合してもよい。コンジュゲートは、通常、複合体のそれぞれの構成要素上の酸、アルデヒド、ヒドロキシ、アミノ、またはヒドラゾの基の間でアミド結合、エステル結合またはイミノ結合の形成を介してリガンドが標的成分に共有結合することにより形成される。あるいは、先に説明したように、リガンド複合体はリポソームを含むものであってもよい。これは、標的成分(すなわち、画像化剤、または免疫原、細胞毒性物質もしくはマクロファージ機能を変化させる物質)を内包したリポソーム自体を、共有結合により活性化マクロファージ結合リガンドに結合するものである。
【0027】
本発明の一つの実施態様では、リガンドは葉酸、葉酸類似体、または他の任意の葉酸受容体結合分子であり、この葉酸リガンドは、トリフルオロ酢酸無水物を用い、プテロイル・アジド(pteroyl azide)の中間体を介して葉酸のγ−エステルを調製する方法で標的成分に結合させる。この方法によって、葉酸のグルタミン酸基のγ−カルボキシ基を介してのみ標的成分に結合する葉酸塩リガンドを合成する。あるいは、葉酸類似体を、グルタミン酸基のα‐カルボキシ部分か、もしくはα‐カルボン酸基とγ‐カルボン酸基部分の両方を介して結合してもよい。
【0028】
本発明に従い使用する、式A‐Xのコンジュゲートは、一つの実施態様として、そのコンジュゲートの有効量と薬学的に許容されるその担体とを含む治療用ならびに診断用組成物を調製するために用いられる。そのような組成物は、通常、非経口投与用に調整される。本発明により使用するためのコンジュゲートの有効量は、治療または診断される疾患の性質、コンジュゲートの分子量、コンジュゲートの投与経路、コンジュゲートの組織分布、および他の治療薬や診断薬と併用する可能性などのさまざまなパラメーターに左右される。患者に投与する有効量は、通常、体表面積、患者の体重、および医師による患者の状態の診断に基づく。有効量の範囲は、約1ng/kgから約1mg/kgの間であると考えられるが、より典型的な範囲は約1μg/kgから約500μg/kgの間であり、最も典型的な範囲は約1μg/kgから約100μg/kgの間である。
【0029】
画像処理をモニターまたは診断目的で行う場合、通常、活性化マクロファージを標的とする画像化剤の投与後約1時間から6時間の間に行う。
【0030】
リガンドコンジュゲートを投与するために効果的であれば、どのような投与計画を用いてもよい。例えば、単回投与でもよいし、分割投与にして毎日複数回投与してもよい。また、変則的な投与法として、例えば、毎日投与する代わりに、週1〜3日投与してもよい。本発明の目的にかんがみ、このような間欠的あるいは変則的投与法も毎日投与と同等であり、本発明の範囲内と考えられる。本発明の一つの実施態様では、病原性活性化マクロファージ集団を除去するため、患者にリガンドコンジュゲートを複数回注射する。この場合、標的成分は免疫原または細胞毒性物質である。一つの実施態様において、例えば、患者にリガンドコンジュゲートを複数回投与して治療する場合、例えば12〜72時間または48〜72時間の間隔をあけて注射する。リガンドコンジュゲートの初回投与後、数日または数カ月の間隔をあけて、追加投与することができる。追加投与により、疾患の再発が防止される。あるいは、活性化マクロファージが仲介する病態を発生しやすいとわかっている患者において疾患の発生防止のため、予防的にリガンドコンジュゲートを投与してもよい。本発明の一つの実施態様では、リガンドコンジュゲートを2種類以上使用してもよい。例えば、フルオレセインイソシアネートおよびジニトロフェニルの両方で予め免疫付与し、次に共投与プロトコールで、同一であるかまたは異なる活性化マクロファージ標的リガンドに結合しているフルオレセインイソシアネートおよびジニトロフェニルで処置してもよい。
【0031】
本発明に従って投与するリガンドコンジュゲートは、非経口で、最も普通には、腹腔内注射、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、髄腔内注射によって投与される。浸透圧ポンプを用いてリガンドコンジュゲートを患者に輸送することもできる。非経口剤形の例としては、コンジュゲートの水溶液があり、それは例えば等張食塩水溶液、5%グルコースや、アルコール、グリコール、エステル、アミドなどの周知の薬学的に許容される液体キャリアである。本発明に従い使用する非経口組成物は、リガンドコンジュゲートを1種類以上含む再構成可能な凍結乾燥物であってもよい。本発明のまた別の実施態様では、リガンドコンジュゲートを、当業者に知られたいくつかの徐放製剤のうち、任意の形態で調剤することができる。その例としては、米国特許第4,713,249号、同第5,266,333号、および同第5,417,982号に記載の生物分解性炭水化物基質があげられる。これら明細書の開示内容を、本出願に援用する。
【実施例】
【0032】
[実施例1]
==材料==
EC20(葉酸結合キレート剤99mTc)、EC28(葉酸を含まない点を除けばEC20と同じ99mTcキレート複合体)、および葉酸‐フルオレセインイソシアネート(葉酸‐FITC)は、エンドサイト社(ウエスト・ラファイエット、インディアナ州)より分与された。加熱滅菌したマイコプラズマ・ビュテリカム(Mycoplasma butericum) は、BDバイオサイエンシーズ社(スパークス、メリーランド州)より購入した。葉酸、軽鉱油、クロドロネート、コラゲナーゼ‐A、およびストレプトアビジン‐R‐フィコエリトリンはシグマ・ケミカル社(セントルイス、ミズーリ州)より、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)はギブコBRL社(ゲチスバーグ、メリーランド州)より入手した。H−葉酸は、アメリカン・ラジオラベルド・ケミカルズ社(セントルイス、ミズーリ州)より入手した。Microcon(登録商標)‐30メンブレンは、ミリポア社(ベッドフォード、マサチューセッツ州)より購入した。RK‐4‐ビオチン抗体はベイケム・バイオサイエンシーズ社(フィラデルフィア、ペンシルバニア州)より、ED2‐R‐フィコエリトリン抗体はアキュレート・ケミカル・アンド・サイエンティフィック社(ウエストベリー、ニューヨーク州)より購入した。
【0033】
[実施例2]
==関節炎の動物モデル==
体重150〜200gの雌Lewisラット(チャールズ・リバー研究所、ワシントン、マサチューセッツ州)を用い、各投与群4匹で、関節炎を誘導した。簡潔に述べると、鉱油に懸濁した加熱滅菌済みマイコプラズマ・ビュテリカム(Mycoplasma butericum )0.5mg(5mg/ml)を、ケタミンおよびキシラジンで麻酔後、当日(0日目)ラットの左後肢に注射した。動物は、疾患を21日間進行するにまかせたが、その健康状態を確認するため、毎日体重を測定した。注射した足に著明な腫脹がみられ、また注射していない足にも全身にわたる関節炎の進行に起因する進行性腫脹がみられたことと、患部四肢のX線解析から、処置した動物はすべて関節炎を発症したことが証明された。ラットはすべて、血清中の葉酸レベルを生理的に適切な濃度に下げるため、3週間葉酸欠乏食(ダイエーツ社、ベツレヘム、ペンシルバニア州)で飼育した後、葉酸塩‐FITCを投与した。対照ラットも葉酸欠乏食で飼育したが、関節炎発症の誘導は行わなかった。
【0034】
[実施例3]
==内因性マクロファージの除去==
リポソーム化したクロドロネートで内因性マクロファージを殺すことにより、マクロファージとは無関係の葉酸結合画像化剤の取り込みを評価した。等張クロドロネート液(250mg/ml)を用いて、卵のリン酸コリン(60mole%)とコレステロール(40mole%)の薄膜を再水和することによってリポソームを形成した。次に、このリポソームを、10mlのthermobarrel extruder(リペックス・バイオメンブレンズ社、バンクーバー、カナダ)を用いて、100nmのポリカーボネート・メンブレンに10回通過させて押し出すことにより、小さな1枚膜リポソームを作成した。封入されなかったクロドロネートを、分子量300,000のカットオフをもつSpectrapor酢酸セルロース膜(スペクトラム研究所、ランチョ・ドミンゲス、カリフォルニア州)を用いた透析により除去し、保持されているリポソームのクロドロネート濃度を、J.Microencapsul 誌1986年3巻2号、109〜114頁の記述に従って決定した。関節炎誘導から17日目にあたる画像化剤投与の3日前に、マクロファージ除去用のラットに、クロドロネート20mgを含むクロドロネートリポソームを単回注射として腹腔内投与した。
【0035】
[実施例4]
==シンチグラフィーと体内分布解析==
画像化剤投与の12時間前に、動物はすべて、結合しなかった画像化剤が適切に排出されるよう生理食塩水5mlを皮下注射された。関節炎誘導後21日目に、ラット(各群3匹)はEC20(葉酸+キレート剤)、EC2+500倍モル過剰葉酸、またはEC28(葉酸成分を含まない)のいずれかを腹腔内投与し、投与後4時間経過時点で、核シンチグラフィーによる画像化または体内分布解析のいずれかを行った。
【0036】
シンチグラフィーを行うため、ラットをケタミンとキラシンで麻酔し、画像取り込み面に腹臥位で保定した。画像取得は、Technicare Omega 500 Sigma 410 Radioisotope Gamma Cameraを用いて、毎分50〜75,000カウントのカウント速度で行った。全身像を取得した後、上部胴体(後膝関節から上部)の放射線を1/8インチの鉛板でブロックし、後肢の画像を取得した。データはすべて、Medasys(商標)Pinnacleソフトウェア搭載のMedasys(商標)MS−DOSベースのコンピューターにより解析した。
【0037】
体内分布解析を行うため、ラットを、ネンブタール、すなわちペントバルビタールナトリウムの腹腔内注射により麻酔した。次に、肝臓、脾臓、心臓、肺、腸、および腎臓を採取し、各組織の放射線を、ガンマカウンター(パッカード・バイオサイエンス社、メリディアン、コネチカット州)で計測して求めた。
【0038】
[実施例5]
==組織の葉酸受容体レベルのアッセイ==
各組織の葉酸受容体レベルを次のようにして測定した。簡潔に述べると、組織をホモゲナイズし、細胞膜を遠心分離により単離した。膜タンパク質を一晩かけて可溶化し、濾過装置Microcon(登録商標)−30に移し、さらに50nMのH−葉酸とともにインキュベートした。非特異的結合を測定するのに用いた各試料の複製(duplicate)もH−葉酸50nMに曝露させたが、ただし1000倍過剰の非標識葉酸の存在下で行った。結合しなかったH−葉酸を細胞膜全体から洗い落とし、結合したH−葉酸を含む膜タンパク質を回収しシンチレーションカウンタ(パッカード・バイオサイエンス社)で計測して、組織1グラムあたりの活性葉酸受容体数を求めた。
【0039】
[実施例6]
==肝臓における葉酸受容体を発現している細胞タイプの同定==
関節炎ラットおよび健常ラットをまずケタミンとキラシンで麻酔し、次に正中線に沿って下腹部から胸腔へ切開した。24Gカテーテルを肝静脈に、また24G針を心臓の左心室にそれぞれ挿入し、灌流の流出口とした。次にラットに生理食塩水を注入して灌流した後、さらにカテーテルを通して0.05%コラゲナーゼA含有ゲイ平衡塩類溶液で灌流した。各溶液は、20ml/分で2分間灌流させた。灌流後直ちに、肝臓を摘出してその膜状外部組織を切断した。残りのゲル状組織は、0.025%コラゲナーゼA含有DMEMで懸濁し、1μMの葉酸−FITC、または1μMの葉酸−FITC+1mMの葉酸の存在下で、37℃で2時間インキュベートした。それから、結合しなかった葉酸−FITCを除去するため細胞を3回洗浄し、直ちにフローサイトメトリーのため調製した。
【0040】
[実施例7]
==フローサイトメトリー試料の調製と解析==
葉酸−FITCに曝露した肝細胞試料を、塩化アンモニウム溶解緩衝液(150mM NHC1、10mM KHCO、1mM EDTA、pH7.4)で、10分間4℃で処理し、赤血球を溶解させた。リン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄した後、残りの細胞をED2 R−フィコエリトリン標識マウス抗ラットマクロファージ抗体またはRK-4ビオチン標識マウス抗ラット顆粒細胞抗体のいずれかとともにインキュベートした。細胞を再び2回洗浄した後、ビオチン化一次抗体が結合した細胞のみを、ストレプトアビジンR−フィコエリトリンとともにさらに30分間インキュベートした。細胞を最後に2回洗浄した後、FACScan Coulter XL フローサイトメーターで、FITCとフィコエリトリンとの二重染色について調べた。
【0041】
[実施例8]
==免疫療法を介するアジュバント関節炎に対する防御==
実施例2に記述した関節炎誘発に関するプロトコールが用いられた。ラットのアジュバント誘導関節炎に対する葉酸‐FITCコンジュゲート(葉酸‐フルオレセインイソシアネートコンジュゲート)の効果を調べた。実験に用いた各ラットを、尾根部で、FITC−KLH(150μg)を用いて免疫し、マイコプラズマ・ビュテリカム(Mycoplasma butericum)(アジュバント)の投与により関節炎を誘発する38日前および10日前に、FITCに対する抗体を誘導した。FITC−KLHの免疫は、アジュバント(すなわち、TiterMax Gold (150μg)、Alum(150μg)、または GPI‐100(150μg)など。これらはいずれも、関節炎誘発用アジュバントとは異なり、FITCに対する抗体を誘導するアジュバントである。)と一緒に行った。次に、第0日目に、免疫した動物の左足の肉球(footpad)に加熱殺菌したマイコプラズマ・ビュティリカム(Mycoplasma butyricum)(アジュバント)0.5mgを注射して関節炎を発症させた。さらに、後アジュバント(マイコプラズマ・ビュティリカム(Mycoplasma butyricum))注射後第1、2、3、9、11、14日目に、ラットに生理食塩水(対照ラット)または葉酸‐FITC(FF)2000nmoles/kgを腹腔内に注入した。毎日、カリパスを用いて左右の足の寸法を測定した。図9は、アジュバントを注射した足(上2本の折れ線)と処置しなかった足(下2本の折れ線)の両方の測定値をグラフにしたものである。アジュバントを投与した足の腫脹が突然増大しているのは、葉酸受容体をもたない好中球の流入によるものである。したがって、この段階では、免疫療法は足の腫脹に効果がないということになる。ところが、10日目あたりから、注射した足にもしない足にも活性化マクロファージが浸潤し、骨の分解とさらなる炎症が引き起こされている。この活性化マクロファージは機能的葉酸受容体をもち、葉酸‐FITCのような葉酸‐ハプテンコンジュゲートを結合することにより、除去されたかもしくは数が減少したことが明らかである。
【0042】
[実施例9]
==関節炎ラットの葉酸を標的とする画像化==
実施例2および4に記述したプロトコールが用いられた。先に述べた通り、休止期ではなく活性化しているマクロファージは、ビタミンの一種である葉酸に対する受容体を発現している。関節炎の炎症部位が99mTcの標的となるように、葉酸を利用することが可能であるかどうか判断するために、99mTcの葉酸結合キレート剤(図8参照)であるEC20をラット(各群5匹)に腹腔内投与し、ガンマカメラでシンチグラフィー画像を取得した。EC20はクリアランスが速いため、投与後少なくとも4時間で良好なコントラストが得られた(図1)。重要なことに、関節炎ラットのほうが、健常ラットよりも全身への取り込みが有意に増加し、この取り込みは飽和量の遊離葉酸とともにEC20を投与すると大幅に減少した。このことから、あらゆる組織による取り込みが、主に葉酸特異的受容体によって決定されることが示唆される。
【0043】
EC20の器官への激しい取り込みのため、関節炎ラットの全身像における肢の画像化ができなかった。しかし、体の中央部および上部の放射線をブロックすると、後肢の画像は容易に取得することが可能であった。このような遮蔽を行うと、関節炎に罹患した肢のほうが健常な肢よりEC20を多く取り込むのが認められ、この取り込みは、過剰な葉酸の存在下で完全に除去された(図1)。さらに、関節炎に罹患した動物の左後肢(ここの炎症が最も重篤)で、炎症がそれより軽度の右後肢より多くの取り込みが認められた(図1)。
【0044】
全身像より、関節炎に罹患している動物において、EC20取り込みのほとんどを担うのは腹部臓器であると結論することができた。この評価を確認するため、肝臓、脾臓、腎臓を摘出し個別に画像化した(図2)。EC20の取り込みは、関節炎ラットの肝臓が最も高く、健常ラットの肝臓が最も低かった。脾臓に関しては、関節炎ラットのみ画像化できた。肝臓と脾臓では、遊離葉酸によりEC20取り込みが完全に阻害されたが、腎臓による取り込みは、遊離ビタミンにより部分的に減少したにすぎなかった。
【0045】
[実施例10]
==マクロファージ除去の効果==
実施例2、3、および4に記述したプロトコールを用いた。ただし、EC20の投与量は0.25mCiとした。マクロファージがEC20の取り込みを担っているかどうかを判断するため、クロドロネートのリポソーム製剤を用いて、常在型マクロファージを関節炎ラットの全身から除去した(各群3匹)。足の大きさを評価したところ、クロドロネート投与後4日目までには、クロドロネートを投与したラットが、投与しないラットと比べて炎症が有意に軽いことが明らかになった(データは示さず)。次に、マクロファージの除去が、葉酸結合画像化剤の取り込みに影響を与えるかどうかを判断するため、クロドロネート処置ラットのEC20体内分布解析を行い、クロドロネート処置をしていない健常ラットならびに関節炎ラットのEC20体内分布解析と比較した。図3(黒の棒は関節炎ラット、明るい灰色は健常ラット、暗い灰色は、クロドロネート処置によりマクロファージを除去された関節炎ラットをそれぞれ示す。)に示すように、関節炎ラットでは、マクロファージを除去されたことで、EC20の肝臓への取り込みがほぼ20分の1に減少した。一方、脾臓と腸における貯留は3分の1に減少した。ほとんどの組織において、クロドロネート処置により、EC20の取り込みが健常ラットの取り込みレベルよりも低くなった。このことによって、活性化マクロファージが、正常組織におけるEC20貯留の大部分の原因となっているという仮説が確認された。これに対し、腎臓へのEC20取り込みは、マクロファージを除去されたラットにおいて増加した。これは、活性化マクロファージによってEC20のインターナリゼーションが減退し、腎臓の葉酸受容体と結合するためにより多くのEC20が利用可能になったためである可能性が高い。
【0046】
[実施例11]
==関節炎組織における、葉酸受容体を介するEC20の取り込み==
実施例2および4に記述したプロトコールを用いた。関節炎ラットの組織によるEC20取り込みは葉酸受容体が仲介することを確認するため、生体分布の研究をさらに2回行った(各群3匹)。まず、500倍過剰の遊離葉酸の存在下(明るい灰色の棒)および非存在下(黒の棒)でEC20の生体分布を調べた。図4に示す通り、腎臓を除くすべての組織でEC20取り込みのほぼ完全な除去が認められた。これは、結合が確かに葉酸受容体により仲介されていることを示すものである。事実、過剰葉酸が、肝臓、脾臓、心臓、肺、腸、および血液におけるEC20貯留をほぼバックグラウンドレベルにまで競合的に減少させた(図4)。次に、EC20が仲介する、キレート化99mTcの標的化における葉酸の役割を確認するため、葉酸成分を欠く同様の複合体(EC28)についても生体分布を調べた(暗い灰色の棒)。EC20とともに図4に示した通り、腎臓を除いていずれの組織においてもEC28の取り込みはごくわずかであった。腎臓では、競合的な葉酸の存在で、非標的複合体の貯留がEC20と同様であった。
【0047】
[実施例12]
==関節炎ラットの様々な組織における葉酸受容体の発現==
実施例2、4、および5に記載したプロトコールを用いた。上記の結果により、葉酸受容体が組織へのEC20取り込みを担っていることが示唆されるので、このことを確認するため、発明者はラットの様々な組織における葉酸結合タンパク質を直接定量化することを試みた。調べた主要な器官のそれぞれにおいて、活性葉酸受容体が検出され、関節炎ラットにおいてFRレベルが有意に増加していた(図5。黒の棒は関節炎ラット、明るい灰色の棒は健常ラットを示す)。また、FR量は、生体分布研究においてみられたEC20取り込みと良好な相関を示した。実際、FRアッセイにより、関節炎に罹患した肝臓ならびに脾臓で受容体のレベルがほぼ同じであり、それは同じ器官による同様のEC20取り込みに一致することが示された(図4)。いずれの関節炎罹患組織においても、クロドロネート処置(暗い灰色の棒)によりマクロファージを体全体から除去したことで、葉酸受容体レベルが有意に低下し(図5)、しかもEC20の生体内分布解析と良く一致した。最後に、腎臓と心臓においては、関節炎の誘発もクロドロネート処置もFRレベルを変化させないことがFRアッセイにより確認された。これらの組織では、FRが活性化マクロファージに関係しているとは考えられない。
【0048】
[実施例13]
==関節炎ラットの肝臓マクロファージ上の機能的葉酸受容体の発現==
実施例2、4、6および7に記載したプロトコールを用いた。関節炎ラットの肝臓におけるEC20取り込み増大が、マクロファージ集団に起因するものであることをさらに確認するため、コラゲナーゼで灌流したラットから肝臓を摘出し、葉酸‐FITCをFR発現の蛍光マーカーとして用いて、脱凝集化した細胞の葉酸受容体取り込みを調べた。また、同じ肝細胞懸濁液をラットの肝マクロファージに特異的な抗体で標識することにより、関節炎ラットにおいてマクロファージが確かに高レベルの葉酸受容体を発現する細胞タイプであることを証明することができた(図6)。すなわち、フローサイトメトリー分析により、関節炎ラットの肝細胞マクロファージの70%が葉酸塩‐FITCを結合したことが明らかにされ、30%しか結合しなかった健常ラットの肝細胞マクロファージとは対照的であった(図6)。さらに、関節炎ラットのマクロファージのFITC強度は、健常ラットの肝臓マクロファージより高かった。葉酸−FITCの結合が、過剰な遊離葉酸(1mM)の存在下で抑制されたことから、われわれは、肝細胞マクロファージによる葉酸コンジュゲートの取り込みが、葉酸受容体により仲介されると結論した。
【0049】
われわれはまた、顆粒細胞に特異的な抗体を用いて、組織に浸潤している好中球が葉酸コンジュゲートを取り込む可能性があるかどうかを調べた。肝臓にはほとんど好中球が存在せず、検出された好中球も葉酸‐FITCとの結合能を示さなかった(データは示さず)。また、Mac‐1+末梢血細胞を調べたところ、好中球と同じく、葉酸コンジュゲートとの結合能を示さなかった(データは示さず)。事実、肝臓においてはFITC蛍光陽性に分類された末梢血細胞はなく、このことは、常在型の組織マクロファージ(しかも、明らかにそのうちの一部の集団)のみがFRを発現していることを示唆する。
【0050】
最後に、ヒトの患者において、葉酸結合薬剤によって活性化マクロファージを標的とすることが可能であるかどうかの検討を始めるため、われわれは、最近終了したガンマ画像化剤111In‐DTPA‐葉酸の臨床試験に登録していた卵巣癌の疑いのある患者28例の全身像を検討する許可を得た。図7に示す通り、1人の患者が右膝に有意な画像化剤取り込みを示したが、左膝では示さなかった。重要なことは、他のいずれの患者も測定可能な関節への取り込みを示さなかったということである。担当医師に依頼し、その匿名患者に連絡を取って、以前何らかの慢性的な不快感が関節になかったかを尋ねてもらった。その医師は、患者が右膝に関節炎を患っていたと報告した、と回答した。
【0051】
==考察==
活性化マクロファージは、関節リウマチの病因に密接に関与していると考えられる。活性化マクロファージは、メタロプロテナーゼを分泌し、かつサイトカインの放出により他の免疫細胞を誘引/活性化することによって、関節組織を直接破壊する。ヒトにおいて、活性化マクロファージ量は関節の破壊および悪い疾患予後と良い相関を示すため、関節組織内の活性化マクロファージを定量化することは、診断としての価値があるのではないかと考えられる。
【0052】
EC20を投与したラットのガンマカメラによるシンチグラフィーにより、関節炎を起こしている外肢が、葉酸標的99mTcにより確かに写し出されるのが証明された。これに対し、健常ラットの脚と足は画像化することができず、これは関節炎に応用する場合に画像化剤が有する選択性を証明する。内臓の強度もまた、アジュバント誘導関節炎では増大したが、内臓からのガンマ線照射は、容易く遮ることができるため、このような組織からの干渉は、この方法を損なうものではなかったと思われる。さらに、EC20の注入から1、2時間内に良好なコントラストが得られることから明らかなように、画像化剤投与、ガンマカメラによるシンチグラフィー、および画像解析を同じ検査の中で行うことが可能である。
【0053】
アジュバント誘導関節炎ラットの体全体にわたるマクロファージの活性化が記録された。つまり、これまで、関節炎を発症させた動物で葉酸標的画像化剤の検討が行われたことがなかったので、EC20の取り込み増大にマクロファージが特異的に関与していることを立証することが重要であったのだ。この目的のために、3つの実験を行った。まず、クロドロネートを封入したリポソームを用いて、処置したラットの体全体からマクロファージを除去した。その結果、組織のFRレベルが大幅に減少したのみならず、マクロファージに富む器官におけるEC20の取り込みもほとんど除去された。これは、常在型マクロファージが、細網内皮系(RES)器官におけるFRの発現とEC20の貯留の両方の原因となり得ることを示唆するものである。次に、コラゲナーゼ処置によって肝細胞を分離し、個々の細胞への葉酸受容体取り込みを評価した。図6に認められるように、葉酸コンジュゲート取り込みが陽性と判定された細胞のほとんどが、マクロファージ・マーカー、ED2でも陽性に分類された。このことにより、FRが確かにマクロファージ上に存在していることが確認された。最後に、アジュバント関節炎に罹患しているラットの組織では、他の免疫細胞および骨髄球性細胞が増加していることが知られていることから、また別の血管外遊出を起こしている血球細胞タイプが、EC20の取り込みに関与しているとも考えられる。しかし、肝臓に浸潤している顆粒細胞も、循環しているどの血球も、葉酸‐FITCとの結合能を全く示さない。したがって、活性化マクロファージが、関節炎ラットの器官において主に葉酸コンジュゲートを内在化している細胞タイプではないかと思われるのである。
【0054】
驚くべきことに、健常ラットにおいても肝マクロファージの30%までが葉酸受容体を発現している(図6)。機能的葉酸受容体は休止期の滑膜マクロファージ上にはみつからないことから、健常ラットにおいては、葉酸‐FITC結合画分も活性化集団を構成しているのではないかと想像したくなる。二つの観察が、この想像を支持するかもしれない。まず、活性化マクロファージは、外来の抗原のような免疫刺激物質に曝露された後に、健常組織にもみられるということである。体内から異物を取り除くという肝臓の役割を考えると、低レベルの定常在型マクロファージ活性化が起こっていると考えるのも理不尽ではないようだ。もうひとつは、肝細胞の葉酸‐FITC(およびEC20)結合集団は、局所の炎症の誘発および全身性のマクロファージ活性化が起こると有意に増加するということである。
【0055】
葉酸を利用して、活性化マクロファージに付着分子を輸送する能力を今や確立したので、葉酸結合画像化剤を用い、関節リウマチの早期の発症や引き続く進行を診断することができるだろう。移植片対宿主病、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、疥癬、骨髄炎、およびアテローム性硬化症でさえも、活性化マクロファージにより引き起こされる/悪化するので、これらの疾患を診断/評価するのに葉酸塩結合画像化/造影剤が役立つ可能性がある。炎症を起こしている関節や肝臓の活性化マクロファージが、コンジュゲートを貪欲に取り込むことから、マクロファージは、解剖学的にはどこに存在しているかには関係なく、効果的な標的となることができることが明らかである。
【0056】
[実施例14]
==免疫療法を介するアジュバント誘導関節炎の防止==
図10に示すアッセイを行うため、実施例3に記載したプロトコールを用いた。ただし、葉酸‐FITCを、1日あたり3000nmoles/kg(第1、2、3日目と3回投与)投与し、輸送はラットの腹腔内に埋め込んだ浸透圧ポンプを用いて行った。アジュバント投与後、1、8、15日目に、メトトレキセート(MTX)0.15mgを1日1回腹腔内投与した。MTXで処置した動物については、葉酸−FITCの代用としてMTXを用いた。左足(注射部位)と右足(注射しなかった部位)の両足の結果を示す。その結果、MTXも葉酸‐FITCもアジュバント誘導関節炎を抑制することが示された。
【0057】
[実施例15]
==免疫療法を介するアジュバント誘導関節炎の防止==
実施例14に記載したプロトコールを用いた。ただし、右足の容積のみ測定し、葉酸‐FITCの投与量を3000、600、および120nmoles/kgとした(図11)。また、FFを1回3000nmoles/kgで、実施例14のように(図11では「3回」と示されている)3回投与か、または実施例8に記載したように第1、2、3、9、11、14日目に投与するか(図11では“FF3000”と示されている)のいずれかの方法で投与した。その結果、FFは関節炎ラットの右足におけるアジュバント誘導関節炎を抑制することが示された(注射をしていない右足にも、関節炎が全身に進行しているため、恐らく炎症は生じる)。また、アジュバント誘導関節炎を治療するためには、3回の初期投与より、FFによる持続的治療のほうが効果が高いことも示された。
【0058】
[実施例16]
==免疫療法を介するアジュバント誘導関節炎の防止==
実施例8に記載したプロトコールを用いた。ただし、FFの代わりにMTXを1回0.15mg(FF+low、earlyMTX、lateMTX、およびlateFFMTX)で投与した動物と(図12参照)、0.75mgのMXT(FF+mid)または1.5mgのMXT(FF+high)を投与した動物があった。“earlyMTX”の処置とは、関節炎誘発後1、8、15日目にラットにMTXを注射したもので、“lateMTX”の処置とは、アジュバント投与後8、15日目にラットにMTXを注射したものである。測定値はいずれも、注射していない右足のものである。その結果、葉酸‐FITC(FF)とMTX(earlyまたはlate処置および低用量、中用量、高用量MXT)との併用投与が、FF単独投与より良好にアジュバント誘導関節炎を抑制することが示された。
【0059】
[実施例17]
==免疫療法を介するアジュバント関節炎の防止==
図13に示す結果については、実施例8に記載したプロトコールに従った。ただし、動物によっては、関節炎誘発後第1、8、15日目にMTXのみで処置(0.15mg)したか、または実施例14に記述したように、FFとの併用投与でMTX処置(0.15mg; 第1、8、15日目)したものがあった。その結果、FFとMTXとの併用投与が、MIXもしくはFF単独投与よりはるかに良好にアジュバント関節炎を抑制することが示された。
【0060】
[実施例18]
==免疫療法を介するアジュバント関節炎の防止==
実施例8に記載したプロトコールを用いた。ただし、IL−10(10,000 U;FF10)またはIL−2(3μg,/kg;FF2)を、FFと併用投与した。(すなわち、アジュバント投与後1、2、3、9、11、14日目に、サイトカインを腹腔内注射により投与した。図14参照。)測定値は、注射をしていない右足のものである。その結果、IL‐10またはIL‐2のいずれかが、FFの治療によるアジュバント誘導関節炎の抑制を阻止することが示された。以上の免疫療法の結果をまとめると、マクロファージにとって細胞毒性のある葉酸結合薬剤は、マクロファージが仲介する病態を治療するために用いることができることが示される。
【0061】
[実施例19]
==関節炎ラットの葉酸を標的とする画像化==
図15に示すアッセイのため、実施例2および8に記載したプロトコールを用いた。ただし、実施例8に記載の通りFFで処置(2000nmoles/kg;第1、2、3、9、11、14日目)したものと、実施例14に記載の通りMTXで処置(0.15mg;第1、8、15日目)したものがあった。その結果、腎臓を除いて、調べた器官のいずれにおいても、FFあるいはMTXがEC20の取り込みを阻害していることが示された。EC20の取り込みは、ほとんどの器官で減少したが、その結果、腎臓を通して排出するEC20がより多くなったようだ。これは、腎臓組織において検出されたEC20の増加の説明となる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式 A−Xで表わされるコンジュゲートを含む組成物の、潰瘍性大腸炎の治療のための組成物の製造のための使用方法であって、
前記A基は葉酸を含み、
前記X基は免疫原または細胞毒を含み、
前記葉酸は、当該葉酸のグルタミン酸のγ−カルボキシ基を介して前記免疫原または細胞毒と結合していることを特徴とする、使用方法。

【公開番号】特開2011−256186(P2011−256186A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−167080(P2011−167080)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【分割の表示】特願2002−584782(P2002−584782)の分割
【原出願日】平成14年5月2日(2002.5.2)
【出願人】(598063203)パーデュー・リサーチ・ファウンデーション (59)
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】