説明

マクロラクトン誘導体

本発明は、微生物ST201196(DSM18870)により形成される、式(I)
【化1】


[式中、XおよびYが互いに独立して、OH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2もしくはNH(C16)アルキルであるか、またはXおよびYが一緒になって基−O−を形成し、R1およびR2が互いに独立して、ClまたはHであり、R3がH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキルまたは(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり、そしてR4がH、(C1−C6)−アルキルまたはC(=O)−(C1−C6)−アルキルである]
の化合物またはそれらの生理的に許容される塩、真菌性疾患を治療および/または予防するためのそれらの使用、式(I)の化合物を含有する薬剤、それらを調製するための方法および微生物ST201196(DSM18870)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なマクロラクトン、ならびにそれらの製造方法および使用に関する。微生物株ST201196(DSM18870)は真菌カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対して強力な抗真菌活性を有する新規な大環状化合物を形成し得ることが今や発見された。従って、本化合物は局所性および/または全身性真菌性疾患の治療に適している。
【背景技術】
【0002】
多数の抗感染薬は感染性疾患の治療に使用されている。しかし、原因微生物は使用した薬剤に対してますます耐性を持つようになっており、そして1種類だけでなく、同時に数種の抗感染薬に対する耐性を有する「多剤耐性微生物」による大きな危険がまさに差し迫っている。市販の抗感染薬全てに対して耐性となっている原因微生物さえ存在する。この種の微生物によって引き起こされる感染性疾患はもはや治療不可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Remington’s Pharmaceutical Sciences(第17編,page 1418(1985))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、耐性微生物に対して使用できる新規な薬剤についての大きなニーズが存在する。何千もの抗感染薬が文献に記載されているが、多くが薬剤として使用するには余りに毒性である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(I):
【化1】

[式中、
XおよびYが互いに独立して、OH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2もしくはNH−(C1−C6)−アルキルであるか、またはXおよびYが一緒になって基−O−を形成し、
R1およびR2が互いに独立して、ClまたはHであり、
R3がH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキルまたは(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり、そして
R4がH、(C1−C6)−アルキルまたはC(=O)−(C1−C6)−アルキルである]
の化合物、または式(I)の化合物の生理学的に許容される塩に関する。
【0006】
好ましくは、本発明は、XおよびYが一緒になって基−O−を形成し、この結果、対応する好ましい化合物中のXおよびYがそれらが結合するC原子と一緒になって、エポキシド基を形成する式(I)の化合物に関する。
【0007】
より好ましくは、本発明は、R1およびR2がClである、式(I)の化合物に関する。
【0008】
より好ましくは、本発明は、R1がClであり、そしてR2がHである式(I)の化合物に関する。
【0009】
好ましくは、R3およびR4が互いに独立して、H、(C1−C6)−アルキルまたはC(=O)−(C1−C6)−アルキルであり、特に好ましくはR3およびR4の両方がHである。特に好ましくは、本発明は、XおよびYが一緒になって基−O−を形成し、R1およびR2が互いに独立して、ClまたはHであり、そしてR3およびR4が互いに独立して、H、(C1−C6)−アルキルまたはC(=O)−(C1−C6)−アルキルである式(I)の化合物、
さらにXおよびYが一緒になって基−O−を形成し、R1およびR2がClであり、そしてR3およびR4が互いに独立して、H、(C1−C6)−アルキルまたはC(=O)−(C1−C6)−アルキルである式(I)の化合物、
さらに、XおよびYが一緒になって基−O−を形成し、R1がClであり、R2がHであり、そしてR3およびR4が互いに独立して、H、(C1−C6)−アルキルまたはC(=O)−(C1−C6)−アルキルである式(I)の化合物、
【0010】
さらにXおよびYが一緒になって基−O−を形成し、R3およびR4がHであり、そしてここでR1およびR2が互いに独立して、ClまたはHであり、好ましくはここでR1およびR2がClである(以下の式(II):
【化2】

の化合物としても示される)か、
【0011】
またはここでより好ましくはR1がClであり、そしてR2がHである(以下の式(III):
【化3】

の化合物としても示される)か、
またはここでより好ましくはR1およびR2がHである式(I)の化合物に関する。
【0012】
(C1〜C6)−アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルまたはn−ヘキシルである。
【0013】
式(I)の化合物中のキラル中心は、他の記述がない場合、RまたはS配置で存在し得る。本発明は光学的に純粋な化合物ならびにエナンチオマー混合物およびジアステレオマー混合物のような立体異性体混合物の両方に関する。
【0014】
式(I)の化合物の生理的に許容される塩は、非特許文献1に記載されるようにその有機塩および無機塩の両方の意味として理解される。物理的および化学的安定性、および溶解性の理由で、特に酸性基については、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびアンモニウム塩が好ましく;特に塩基性基については、塩酸、硫酸、リン酸の塩、または例えば酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸およびp−トルエンスルホン酸のようなカルボン酸もしくはスルホン酸の塩が好ましい。
【0015】
さらに、本発明は、本発明の式(I)の化合物の全ての自明な化学的等価体に関する。この種の等価体は、わずかな化学的な差異を示す、従って同じ作用を有するか、または穏やかな条件下で本発明の化合物に変換される化合物である。前述の等価体としてはまた、例えば式(I)の化合物の塩、還元生成物、酸化生成物、エステル、エーテル、アセタールまたはアミド、および標準的な方法を使用して当業者が製造し得る等価体が挙げられる。
【0016】
さらに、本発明は、式(I):
【化4】

[式中
XおよびYが互いに独立して、OH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2もしくはNH−(C1−C6)−アルキルであるか、またはXおよびYが一緒になって基−O−を形成し、
R1およびR2が互いに独立して、ClまたはHであり、
R3がH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキルまたは(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり、そして
R4がH、(C1−C6)−アルキルまたはC(=O)−(C1−C6)−アルキルである]
の化合物、または式(I)の化合物の生理学的に許容される塩の調製方法であって、
該方法は、
1.1つまたはそれ以上の式(I)の化合物が培地中に堆積するまで、適切な条件下、Cl源を含む培地中で、株ST201196(DSM18870)、またはその変異株および/もしくは突然変異株の1つを発酵させ、そして
2.培地から式(I)の化合物を単離し、そして
3.場合により、式(I)の化合物を誘導体化および/または生理学的に許容される塩に変換することを含む、方法に関する。
【0017】
培地は、少なくとも1つの炭素源および窒素源、および通常の無機塩を含む栄養溶液または固形培地である。
【0018】
使用されるCl源は、例えば、NaClまたはCaCl2であり得る。この場合において、株ST201196(DSM18870)は、好ましくはラジカルR1およびR2の両方がClであるか、またはRがClであり、そしてR2がHである式(I)の化合物を生産する。好ましくは、本発明は、R1およびR2がClである式(I)の化合物の調製方法に関する。さらに好ましくは、本発明は、R1がHであり、R2がClである式(I)の化合物の調製方法に関する。
【0019】
好ましくは、本発明はXとYが基−O−を形成し、さらにR3およびR4が上記の通り、または好ましくはHである式(I)の化合物の調製方法に関する。
【0020】
特に好ましくは、本発明は、式(II)の化合物の調製方法に関する。より特に好ましくは、本発明は式(III)の化合物の調製方法に関する。さらに、特に好ましくは、本発明は、R1、R2、R3およびR4がHである、式(I)の化合物の調製方法に関する。
【0021】
本発明の方法は、実験室規模(ミリリットル〜リットル規模)および工業的規模(立方メートル規模)での発酵に使用され得る。
【0022】
発酵のために適した炭素源は、資化性の炭水化物および糖アルコール、例えばブドウ糖、乳糖、ショ糖、またはD−マンニトール、および炭水化物含有天然産物、例えば麦芽エキスまたは酵母エキスである。適した窒素含有栄養物は、アミノ酸;ペプチドおよび蛋白質、およびそれらの分解産物、例えばProbion F(Applied Microbiology and Biotechnology 1984,19(1),23−28)、カゼイン、ペプトンまたはトリプトン;肉エキス;酵母エキス;グルテン;挽いた種子、例えばトウモロコシ、小麦、豆類、大豆または綿の種子;アルコール製造からの蒸留残渣;ミートミール;酵母エキス;アンモニウム塩;ナイトレート(nitrates)である。好ましくは、窒素源は、1つまたはそれ以上の合成的または生合成的に得られるペプチドである。無機塩は、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、鉄、亜鉛、コバルトまたはマンガンの塩化物、炭酸塩、硫酸塩またはリン酸塩である。微量元素は、例えば、コバルトおよびマンガンである。
【0023】
本発明の物質を形成するための適した条件は以下の通りである:本発明の物質の形成は、好ましくは、0.05〜5%、好ましくは0.1〜2.5%のProbion F;0.02〜1.0%、好ましくは0.05〜0.5%のCaCl2×2H2O;0.02〜1.5%、好ましくは0.05〜0.7%のMgSO4×7H2O、および0.00001%〜0.001%のシアノコラバミン、1〜5%の吸着樹脂XAD−16、または0.05〜5%、好ましくは0.1〜2.5%のオートミール;0.2〜5.0%、好ましくは0.1〜2%のグリセリン;0.02〜1.0%、好ましくは0.05〜0.5%のCaCl2;0.02〜1.5%、好ましくは0.05〜0.7%のMgSO4×7H2O、および0.00001%〜0.001%のシアノコバラミンのいずれかを含む培地中で進められる。各場合において、百分率のデータは、栄養溶液全体の質量に基づく。
【0024】
微生物は、好気的に、すなわち、例えば、場合によっては空気または酸素を導入しながら、振とうフラスコもしくは発酵槽中振とうまたは撹拌しながら浸水形式(submerse form)で、または固形培地上で培養される。培養は約18〜35℃、好ましくは約20〜32℃、特に27〜30℃の温度範囲で行われ得る。pHの範囲は4〜10、好ましくは6.5〜9であるべきである。微生物は、一般に、こうした条件下で3〜18日間、好ましくは144〜216時間培養される。有利には、培養は多数の段階で行われ、すなわち、最初に1つまたはそれ以上の前培養物が液体栄養培地中で調製され、次いで実際の生産培地、つまり本培養の培地中に、例えば体積比1:10〜1:100で植菌される。前培養物は、例えば栄養細胞または子実体の形態の株を栄養溶液中に植菌し、そして約3〜13日間、好ましくは96〜240時間増殖させることにより得られる。栄養細胞および/または子実体は、例えば、固形または液体の栄養培地、例えば、酵母寒天で株を約3〜15日間、好ましくは7〜10日間増殖させることにより得ることができる。
【0025】
培地からの式(I)の物質の単離または精製は、天然物質の化学的、物理的および生物学的特性を考慮した公知の方法に従って行なわれる。培地中のまたは個々の単離段階でのそれぞれの誘導体の濃度を試験するために、HPLCを使用した。
【0026】
単離のために、培養ブロスは遠心分離および/または吸引フィルターに通して濾過される。菌子体はXADと共に凍結乾燥され、次いで天然物質は、有機溶媒、例えばメタノールまたは2−プロパノールを使用して凍結乾燥物から抽出される。有機溶媒相は本発明の天然物質を含有し;この相は場合によって、真空で濃縮され、そしてさらに精製される。
【0027】
本発明の1つまたはそれ以上の化合物のさらなる精製は、適切な材料上で、好ましくは、例えばモレキュラーシーブ上で、シリカゲル上で、アルミナ上で、イオン交換体上でまたは吸着樹脂上でまたは逆相(RP)上でのクロマトグラフィーにより行なわれる。このクロマトグラフィーの助けによって、天然物質誘導体が分離される。本発明の化合物のクロマトグラフィーは、緩衝水溶液、または水溶液と有機溶液との混合物を使用して行なわれる。水溶液または有機溶液の混合物とは、0〜100%の溶媒濃度で水と混和性の全ての有機溶媒、好ましくはメタノール、2−プロパノールおよびアセトニトリル、あるいは有機溶媒と混和性の全ての緩衝水溶液の意味として理解される。使用すべき緩衝液は上記に示したものと同じである。
【0028】
極性の差に基づく本発明の化合物の分離は、逆相クロマトグラフィーを用いて、例えば、MCI(R)(吸着樹脂、Mitsubishi、Japan)またはAmberlite XAD(R)(TOSOHAAS)上で、または例えばRP−8もしくはRP−18相のような別の疎水性材料上で行われる。さらに、分離は順相クロマトグラフィーを用いて、例えばシリカゲル、アルミナ上などで行われ得る。
【0029】
天然物質誘導体のクロマトグラフィーは、好ましくは緩衝された、塩基性または酸性の水溶液またはアルコールもしくは他の水混和性有機溶媒と水溶液との混合物を使用して、当業者に公知の方法に従って行なわれた。アセトニトリルおよび/またはメタノールが有機溶媒として使用されるのに好ましい。
【0030】
緩衝化した、塩基性または酸性の水溶液とは、例えば水、0.5Mまでの濃度におけるリン酸緩衝液、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、クエン酸緩衝液、および好ましくは1%までの濃度におけるギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、アンモニア、トリエチルアミンまたは当業者に公知の市販の全ての酸および塩基の意味として理解される。緩衝化水溶液の場合、0.1%の酢酸アンモニウムが特に好ましい。
【0031】
クロマトグラフィーは、例えば、水100%に始まり溶媒100%で終わるグラジエントを使用して行なわれ;好ましくは、5〜95%のアセトニトリルの直線グラジエントで操作された。
【0032】
あるいは、ゲルクロマトグラフィーまたは疎水性相上でのクロマトグラフィーをもまた行ない得る。ゲルクロマトグラフィーは、ポリアクリルアミドまたは混合ポリマーゲル、例えばBiogel−P 2(R)(Biorad)またはFractogel TSKHW40(R)(Merck、Germany)上で行なわれる。上記のクロマトグラフィーの順序は逆も可能である。
【0033】
式(I)の化合物が立体異性体混合物として存在する場合、立体異性体は、公知の方法、例えばキラルカラムを用いる分離により分離され得る。
【0034】
式(I)の化合物の3,5−ジクロロチロシンアミノ酸のOH基[R3がHである]のアシル基[R3がC(=O)−(C1−C6)−アルキル)である]への誘導体化および/または式(I)の化合物の3−ヒドロキシバリンアミノ酸のOH基[R4がHである]のアシル基[R4がC(=O)−(C1−C6)−アルキル)である]への誘導体化を、例えば塩基の存在下、酸塩化物との、または酸無水物との反応により、それ自体が公知である方法(J.March,Advanced Organic Chemistry,John Wiley & Sons,第4編,1992)に従って行ない得る。
【0035】
式(I)の化合物の3,5−ジクロロチロシンアミノ酸のOH基[R3がHである]のアルキル基[R3が(C1−C6)−アルキルである]を用いるアルキル化および/または式(I)の化合物の3−ヒドロキシバリンアミノ酸のOH基[R4がHである]のアルキル基[R4が(C1−C6)−アルキルである]を用いるアルキル化を、例えば塩基の存在下、(C1−C6)−アルキルブロミドとの反応、またはメチル化の場合、ヨウ化メチルまたはMe2SO4との反応により、それ自体が当業者に公知である方法(J.March,Advanced Organic Chemistry,John Wiley & Sons,第4編,1992)により行ない得る。
【0036】
保護基の導入のための当業者に自体公知の方法により、フェノール性OH基(R3=H)と脂肪族OH基(R4=H)の間の選択的差異化(selective differentiation)が行なわれる(T.W.Greene,P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,第3編,1999)。例えば、Pettus et al.(J.Am.Chem.Soc.2000,122,6160−6168)は、K2CO3の存在下、アセトン中、(C1−C6)−アルキルブロミドとの反応による、または(CF3CO)2OおよびCuCl2水和物の存在下、DBU中、(C1−C6)−アルキル−OHとの反応による第三級脂肪族アルコールの存在下でのフェノール性OH基の選択的アルキル化を記載する。ビス−アルキル化[R3およびR4が(C1−C6)−アルキルである]された式(I)の化合物またはビス−アシル化[R3およびR4が(=O)−(C1−C6)−アルキル)である]された式(I)の化合物の選択的脱保護のための当業者に自体公知の方法により、フェノール性OH基と脂肪族OH基との間のさらなる可能性ある差異化が行なわれる(T.W.Greene,P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,第3編,1999)。例えば、Jones et al.(J.Org.Chem.2001,66,3688−3695)は、TBS−保護第三級アルコールの存在下、−20℃でのtert−ブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)によるtert−ブチルシリル(TBS)−保護フェノールの選択的脱保護を記載する。さらに、フェノール性OH基(R3=H)は、Cl−[(C1−C6)−アルキル]−ClまたはBr−[(C1−C6)−アルキル]−Brの存在下、H2N−(C1−C6)−アルキルとの反応により、基−(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルに誘導体化され得る。
【0037】
式(I)の化合物(ここで、XとYが基−O−を形成する)の式(I)の化合物(ここで、XおよびYが互いに独立して、OH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2またはNH−(C1−C6)−アルキルである)への誘導体化は、例えば、エポキシド基と(C1−C6)−アルコラート[YがO−(C1−C6)−アルキルである場合、XはOHであるか、またはXがO−(C1−C6)−アルキルである場合、YはOHである]、NH3[YがNH2である場合、XはOHであるか、またはXがNH2である場合、YはOHである]、またはH2N−(C1−C6)−アルキル[YがNH−(C1−C6)−アルキルである場合、XはOHであるか、またはXがNH−(C1−C6)−アルキルである場合、YはOHである]との反応による当業者に自体公知の方法により行なわれる(J.March,Advanced Organic Chemistry,John Wiley & Sons,第4編,1992)。
【0038】
微生物株ST201196の単離物は、以下の番号で、2003年9月11日付けのBudapest Conventionの規則に従って、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen[German Collection of Microorganisms and Cell Cultures]GmbH(DSMZ),Mascheroder Weg 1B,38124 Brunswick,Germanyに寄託された。以下の番号とは、寄託番号:DSM18870が指定された。
【0039】
株ST201196(DSM18870)の栄養細胞は、特徴的な桿状(rodshape)を有する。固形栄養培地上で、ST201196(DSM18870)は円形の粘菌胞子を含む橙黄色の子実体を形成する。従って、株ST201196は、Myxobacterium sp.として分類され得る。
【0040】
株ST201196(DSM18870)の代わりに、1つまたはそれ以上の本発明の化合物を合成するこの株の突然変異株および/または変異株を使用することもまた可能である。
【0041】
突然変異株は、ゲノムの1つまたはそれ以上の遺伝子が修飾されている微生物であり、ここで本発明の化合物を生産する生物体の能力に関与する1つまたは複数の遺伝子は機能的、かつ遺伝的に保持する。
【0042】
この種の突然変異株は、物理的手段、例えば紫外線もしくはX線のような照射、または例えばメタンスルホン酸エチル(EMS);2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(MOB)もしくはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MMNG)のような化学的突然変異誘発物質によって、またはBrock et al.「Biology of Microorganisms」,Prentice Hall,page 238−247(1984)に記載されているように、自体公知の方法で産生され得る。
【0043】
変異株は微生物の1つの表現型である。微生物は、その環境に適応する能力を有し、従って、顕著な生理学的適応性を示す。表現型適応の場合において、微生物の全ての細胞が関与し、修飾の性質は遺伝的に条件づけられておらず、修飾された条件下では可逆性である(H.Stolp,Microbial ecology:organismus,habitats,activities.Cambridge University Press,Cambridge,GB,page 180,1988)。
【0044】
1つまたはそれ以上の本発明の化合物を合成する突然変異株および/または変異株のスクリーニングは、以下のスキームに従って行なわれる:
−発酵培地の凍結乾燥;
−有機溶媒を使用する凍結乾燥物の抽出;
−固相を使用する培養濾液からの化合物の抽出;
−HPLC、TLCによる、または生物活性の試験による分析。
【0045】
記載した発酵条件は、ST201196(DSM18870)ならびにその突然変異株および/または変異株に当てはまる。
【0046】
急増殖する好気性原因微生物の抗真菌活性を検出するために、CLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute,M7−A7,Vol.26,No.2)の手順に従うブイヨン希釈法(微量希釈)を使用する。IC50値を決定した。これは、試験生物カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の増殖を50%阻害するために必要な活性物質の濃度である。
【0047】
式(II)の化合物は、カンジダ・アルビカンスに対して0.06μg/mlのIC50値を有する。式(IV)の化合物は、カンジダ・アルビカンスに対して0.41μg/mlのIC50値を有する。
【0048】
従って、本発明は、特に、真菌性疾患を治療および/または予防する人間医学または獣医学の薬剤としての、式(I)の化合物またはそれらの生理学的に許容される塩の使用に関する。好ましくは、本発明は、局所性および/または全身性真菌性疾患を治療するための、式(I)の化合物またはそれらの生理学的に許容される塩の使用に関する。
【0049】
加えて、本発明は、少なくとも1種の式(I)の化合物を含有する薬剤に関し、ここで式(I)の1つまたは複数の化合物は、実質上それ自体で、または好ましくは、1つまたはそれ以上の通常の薬理学的に適したビヒクルまたは添加剤との混合物として投与され得る。
【0050】
本発明の化合物は、固体状態でおよび2〜9、特に5〜7の範囲のpHの溶液中で安定であり、従って通常のガレヌス製剤中に組み込まれ得る。
【0051】
本発明の薬剤は、経口的または非経口的に投与され得るが、直腸投与もまた原則として可能である。適切な固形または液体のガレヌス製剤の形態は、例えば顆粒剤、散剤、錠剤、コーティング錠剤、(マイクロ)カプセル剤、坐薬、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、エアゾール剤、アンプル形態の滴剤または注射用液剤、および活性物質を持続放出する製剤であり、この製剤中で薬理学的に適切なビヒクルまたは添加剤、例えば崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨張剤、流動促進剤もしくは滑沢剤、着香添加物、甘味料または可溶化剤、例えば炭酸マグネシウム、二酸化チタン、乳糖、マンニトールおよび他の糖、タルク、乳タンパク質、ゼラチン、澱粉、ビタミン、セルロースおよびその誘導体、動物油もしくは植物油、ポリエチレングリコール、ならびに例えば滅菌水、アルコール、グリセロールおよび多価アルコールのような溶媒が通例使用される。
【0052】
場合によっては、経口投与のための投薬単位は、放出を遅延またはより長期間延長させるために、例えば粒子形態の活性物質を適切なポリマー、ワックスなどでコーティングまたは埋め込むことにより、マイクロカプセル化され得る。
【0053】
好ましくは、製薬学的製剤は、各単位が活性成分として特定の用量の1つまたはそれ以上の本発明の天然物質誘導体の化合物を含有する投薬単位に調製され、そして投与される。錠剤、カプセル剤および坐剤のような固形の投薬単位の場合において、この用量は、1日あたり約500mgまで、しかし好ましくは約0.1〜200mg、そしてアンプル形態の注射液の場合において、約200mgまで、しかし好ましくは約0.5〜100mgであり得る。
【0054】
投与すべき日用量は、哺乳動物の体重、年齢、性別および状態に依存する。しかし、特定の条件下で、より多いまたはより少ない日用量もまた適切であり得る。日用量の投与は、個々の投薬単位の形態の単回投与あるいは多数のより少ない投薬単位により、および細分された投与量の特定の間隔での反復投与の両方により行なわれ得る。
【0055】
本発明の製剤は、場合により、1つまたはそれ以上の本発明の式(I)の化合物を1つまたはそれ以上の通常のビヒクルまたは添加剤と混合し、そして適切な投与形態にすることにより調製される。
【0056】
以下の実施例は、決して本発明の範囲を限定することなしに、本発明をより詳細に説明するために役立つことを目的とする。
【0057】
百分率は質量に関連する。液体の場合の混合比は、特に他に示されていない場合、体積に関連する。
【実施例】
【0058】
実施例1:−135℃でのST201196(DSM18870)の保存
寒天平板(1% 新鮮なパン酵母;1% CaCl2×2H2O;0.477% HEPES(20mM);0.00005% シアノコバラミン;1.8% 寒天;pH 7.2)に株ST201196(DSM18870)を植菌し、そして約7〜10日間、30℃でインキュベートした。滅菌スパチュラを使用して、この表面培養の細胞を寒天表面から掻き取り、クリオチューブ(cryotube)中のカジトン培地(1% カジトン(Difco);0.15% MgSO4×7H2O;pH 7.0)(1ml)に懸濁し、そして−135℃で保存した。
【0059】
実施例2:−196℃でのST201196(DSM18870)の保存
寒天平板(1% 新鮮なパン酵母;1% CaCl2×2 H2O;0.477% HEPES(20mM);0.00005% シアノコバラミン;1.8% 寒天;pH 7.2)に株ST201196(DSM18870)を植菌し、そして約7〜10日間、30℃でインキュベートした。滅菌スパチュラを使用して、この表面培養の細胞を寒天表面から掻き取り、クリオチューブ中のカジトン培地(1% カジトン(Difco);0.15% MgSO4×7H2O;pH 7.0)(1ml)に懸濁し、そして−196℃で保存した。
【0060】
実施例3:エーレンマイヤーフラスコ中のST201196(DSM18870)の前培養物の調製
滅菌300mlエーレンマイヤーフラスコ中の栄養溶液(1% 新鮮なパン酵母;1% CaCl2×2H2O;0.477% HEPES(20mM);0.00005% シアノコバラミン;1.8% 寒天;pH 7.2)(100ml)に株ST201196(DSM18870)を植菌し、そして7日間、30℃および180rpmのロータリーシェイカーでインキュベートした。各場合のこの前培養物(10ml、10%)を、続けて本培養の調製に使用した。
【0061】
実施例4:培地1を使用する液体本培養ST201196(DSM18870)の調製
以下の栄養溶液(1% Probion F;0.1% CaCl2×2H2O;0.2% MgSO4×7H2O;0.00005% シアノコバラミン;2% 吸着樹脂XAD−16、pH 8.4)(100ml)を含む滅菌300mlエーレンマイヤーフラスコに前培養物(10ml、10%)(実施例3を参照のこと)または新しい寒天平板(1% 新鮮なパン酵母;1% CaCl2×2H2O;0.477% HEPES(20mM);0.00005% シアノコバラミン;1.8% 寒天;pH 7.2)上で洗浄した培養物を植菌し、そして180rpmのシェーカーで、30℃でインキュベートした。本発明の物質の最大産生が144〜216時間後に達成された。実施例3に記載されるような同じ栄養溶液の144〜196時間経過後の浸水培養物(submerse culture)(植菌材料 10%)が、10〜200Lの発酵槽に植菌するために十分であった。
【0062】
実施例5:培地2を使用する液体本培養ST201196(DSM18870)の調製
以下の栄養溶液(1% オートミール;0.5% グリセリン;0.1% CaCl2×2H2O;0.2% MgSO4×7H2O;0.00005% シアノコバラミン;2% 吸着樹脂XAD−16、pH 9.0)(100ml)を含む滅菌300mlエーレンマイヤーフラスコに前培養物(10ml、10%)(実施例3を参照のこと)または新しい寒天平板(1% 新鮮なパン酵母;1% CaCl2×2H2O;0.477% HEPES(20mM);0.00005% シアノコバラミン;1.8% 寒天;pH 7.2)上で増殖させた培養物を植菌し、そして180rpmのシェーカーで、30℃でインキュベートした。本発明の物質の最大産生が144〜216時間後に達成された。実施例3に記載されるような同じ栄養溶液の144〜196時間経過後の浸水培養物(植菌材料 10%)が、10〜200Lの発酵槽に植菌するために十分であった。
【0063】
実施例6:発酵槽中での本発明の物質の調製
1Lおよび50Lの発酵槽を、以下の条件下で操作した:
植菌材料: 20%
栄養培地: 1% オートミール;0.5% グリセリン;0.1% 酵母エキス;0.1% CaCl2×2H2O;0.2% MgSO4×7H2O;0.00005% シアノコバラミン、2% 吸着樹脂XAD−16
インキュベーション温度: 30℃
撹拌スピード: 200rpm
通気: 0.6m3/h
pH調節: なし、滅菌前にKOHによりpH 7.6±0.3
pO2調節: なし
消泡添加剤: 0.05% デスモフェン(Bayer)
実行時間: 155時間
pH調節は、10% KOHまたは10% H2SO4を使用して行なった。
【0064】
実施例7:微生物株ST201196(DSM18870)の撹拌培養物からの化合物(II)および(III)の単離
微生物株ST201196(DSM18870)の発酵が完了した後、実施例4からの培養ブロス(培養ブロス60L)を濾過した。XADを含むバイオマスを凍結乾燥し、次いでメタノールで抽出した(4×5L)。メタノール抽出物を真空で8Lまで減らし、次いでCHP−20P材料(MCI(R) Gel、75〜150μ、Mitsubishi
Chemical Corporation)(約3.0L)を充てんした分取用カラムに供した。10%〜95%のメタノールグラジエントを使用して溶離を行なった。カラム流れ(120ml/分)をフラクション(1Lフラクション)に集めた。フラクション11〜14を合わせ、溶媒をRotavaporで除去し、次いでフラクションプールを凍結乾燥した(収量約0.9g)。
【0065】
実施例8:RP18クロマトグラフィーによる化合物(II)および(III)の予備分離
実施例7からのフラクションプール11〜14をメタノール(100ml)に溶解し、そしてLuna(R) 10μ C18(2)プレカラム(寸法:60mm×21.2mm)を有するPhenomenex Luna(R) 10μ C18(2)カラム(寸法:250mm×50mm)に供し、そして水中5%〜95%アセトニトリル(0.1% 酢酸アンモニウム、酢酸を使用してpH 4.6に設定した)のグラジエントを使用して、40分にわたって溶離した。流れは190ml/分であり、フラクションは190mlの大きさであった。次いで、フラクション28〜29および31をさらに後処理した。
【0066】
実施例9:化合物(II)の精製
実施例8からのフラクション31を始めに凍結乾燥し(収量約98mg)、次いでメタノール(50ml)に溶解し、そしてXTerra(R) Prep MS C18 10μmプレカラム(Waters、寸法:19×10mm)を有するPhenomenex Luna(R) Axia 5μm C18(2)カラム(寸法:100mm×30mm)でのHPLCを用いて再び精製した。水中5%〜95%アセトニトリル(0.1% 酢酸アンモニウムを添加し、酢酸を使用してpH 4.6に設定した)のグラジエントを使用して、40分にわたって溶離した。UVに従ってカラム流れ(50ml/分)をフラクションに集めた。フラクション4〜14は式(II)の化合物を含み、そして凍結乾燥後、38mg(純度>95%)を得た。
【0067】
実施例10:式(II)の化合物のキャラクタリゼーション
無色の固体、アセトニトリル/水から結晶
UV:208、232、286nm
ESI−MS:MW=815.3312
実験式:C4255Cl239
比旋光度(MeOH):−0.19°、αD=−38°
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
実施例11:化合物(III)の精製
実施例8からのフラクション28〜29(380ml)を再びXTerra(R) Prep MS C18 10μmプレカラム(Waters、寸法:19×10mm)を有するWaters XTerra(R) 10μm C18カラム(寸法:100mm×30mm)でのHPLCを用いて精製した。水中10%〜95%アセトニトリル(10% ギ酸を添加、pH=2.0)のグラジエントを使用して、40分にわたって溶離した。UVに従ってカラム流れ(70ml/分)をフラクションに集めた。フラクション45〜47は式(III)の化合物を含み、そして凍結乾燥後、約5.4mg(純度>50%)を得た。
【0071】
実施例12:化合物(III)のキャラクタリゼーション
無色の固体
UV:204、232、286nm
ESI−MS:MW=799.3002
実験式:C4256ClN39
【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
実施例13:化合物(IV)の合成
化合物(II)(80mg、0.098mmol)をアセトニトリル(5ml)に溶解し、そして溶液を室温の炭酸カリウム(27mg、0.196mmol)およびヨウ化メチル(70mg、0.490mmol)で処理した。次いで、混合物を50℃で12時間撹拌した。溶液を濾過し、そしてXTerra(R) Prep MS C18 10μm プレカラム(Waters、寸法:19×10mm)を有するPhenomenex Luna(R) Axia 5μm C18(2)カラム(寸法:100mm×30mm)上でのHPLCを用いて精製した。水中5%〜95%アセトニトリル(0.1% 酢酸アンモニウムを添加し、酢酸を使用してpH 4.6に合わせた)のグラジエントを使用して、40分にわたって溶離した。UVに従ってカラム流れ(50ml/分)をフラクションに集めた。フラクション4および5は所望の式(IV)の化合物を含み、そして凍結乾燥後、50mg(収率:61%、純度>95%)を得た。
【0075】
実施例14:式(IV)の化合物のキャラクタリゼーション
【化5】

無色の固体、アセトニトリル/水から結晶
UV:235、286nm
MW=830.85
実験式:C4357Cl239
【0076】
【表5】

【0077】
【表6】

【0078】
実施例15:化合物(V)および(VI)の合成
化合物(II)(30mg、0.037mmol)を1,2−ジクロロエタン(10ml)に溶解し、そして溶液を室温のイソブチルアミン(500μl、5.03mmol)で処理した。混合物を70℃で48時間撹拌し、次いで濾過し、そしてXTerra(R)
Prep MS C18 10μm プレカラム(Waters、寸法:19×10mm)を有するPhenomenex Luna(R) Axia 5μm C18(2)カラム(寸法:100mm×30mm)でのHPLCを用いて精製した。水中5%〜95%アセトニトリル(0.1% 酢酸アンモニウムを添加し、酢酸を使用してpH 4.6に合わせた)のグラジエントを使用して、40分にわたって溶離した。UVに従ってカラム流れ(50ml/分)をフラクションに集めた。フラクション70は式(V)および(VI)の2つの化合物を含み、そして凍結乾燥後、2つの化合物(55:45の比率で3mg)を得た。
【0079】
実施例16:式(V)の化合物のキャラクタリゼーション
【化6】

MW=889.97
実験式:C4666Cl249
【0080】
【表7】

【0081】
【表8】

【0082】
実施例17:式(VI)の化合物のキャラクタリゼーション
【化7】

MW=916.00
実験式:C4868Cl249
【0083】
【表9】

【0084】
【表10】

【0085】
実施例18:カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対する抗真菌活性の測定
1000μg/mlの活性物質[例えば、式(II)の化合物または式(IV)の化合物]のメタノール貯蔵液を調製した。試験株[カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)FH 2173]を−80℃で保存した。新しい液体前培養から植菌材料を調製した。前培養物を−80℃で保存した物質(1ビーズ)および栄養培地(サブローデキストロースブロス、Difco)(30ml)から調製し、そして37℃、180毎分回転数で、24時間インキュベートした。試験容器に植菌した後、必要な数のコロニー形成単位に達するように、植菌材料を調整すべきである。そのために、植菌材料を590nmの波長の光度計を用いて、107CFU/ml(CFU:コロニー形成単位)の値に調整した。植菌材料の調整後、懸濁液を栄養溶液(ミュラーヒントンブロス、Difco)で1:100に希釈した。植菌材料の調製15分以内で、マイクロタイタープレートに植菌した。表面培養を用いて正確なコロニー計数を測定した。活性物質および栄養培地(ミュラーヒントンブロス、Difco)の貯蔵液を使用して、連続希釈をマイクロタイタープレートで予め調製した。活性物質は20μlの体積で存在し、そして40μlの全試験体積が得られるように、20μlの植菌材料で処理した。次いで、植菌したマイクロタイタープレートを蓋で密閉し、そして37℃、5% CO2および95%雰囲気湿度(atmospheric humidity)で20時間インキュベートした。各試験について、活性物質を含まない対照、無菌対照、および基準物質として、シプロフロキサシンおよびナイスタチンを384ウェルマイクロタイタープレートで共試験した(co−test)。590nmの波長の光度計を用いて吸収を測定することにより、マイクロタイタープレートを読み取った。次いで、標準処理に従って、試験生物カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の増殖を50%阻害するのに必要な活性物質の濃度として、連続希釈の値からIC50値を計算した。
【0086】
【表11】

【0087】
【表12】

【0088】
【表13】

【0089】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中
XおよびYが互いに独立して、OH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2もしくはNH−(C1−C6)−アルキルであるか、またはXおよびYが一緒になって基−O−を形成し、
R1およびR2が互いに独立して、ClまたはHであり、
R3がH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキルまたは(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり、そして
R4がH、(C1−C6)−アルキルまたはC(=O)−(C1−C6)−アルキルである]
の化合物、または式(I)の化合物の生理的に許容される塩。
【請求項2】
XおよびYが一緒になって基−O−を形成する、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
R3およびR4が互いに独立して、H、(C1−C6)−アルキルまたはC(=O)−(C1−C6)アルキルである、請求項1または2に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
XおよびYが一緒になって基−O−を形成し、R1およびR2が互いに独立して、ClまたはHであり、そしてR3およびR4が互いに独立して、H、(C1−C6)−アルキルまたはC(=O)−(C1−C6)−アルキルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
R1およびR2がClである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
R1がClであり、そしてR2がHである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
R3およびR4がHである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
R1、R2、R3およびR4がHである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
薬剤を製造するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはそれらの生理的に許容される塩の使用。
【請求項10】
真菌性疾患を治療および/または予防する薬剤を製造するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはそれらの生理的に許容される塩の使用。
【請求項11】
少なくとも1つの請求項1〜8のいずれか1項に記載の式(I)の化合物を含有する薬剤。
【請求項12】
式(I):
【化2】

[式中
XおよびYが互いに独立して、OH、O−(C1−C6)−アルキル、NH2もしくはNH−(C1−C6)−アルキルであるか、またはXおよびYが一緒になって基−O−を形成し、
R1およびR2が互いに独立して、ClまたはHであり、
R3がH、(C1−C6)−アルキル、C(=O)−(C1−C6)−アルキルまたは(C1−C6)−アルキレン−NH−(C1−C6)−アルキルであり、そして
R4がH、(C1−C6)−アルキルまたはC(=O)−(C1−C6)−アルキルである]
の化合物、または式(I)の化合物の生理学的に許容される塩の調製方法であって、
該方法は、
1.1つまたはそれ以上の式(I)の化合物が培地中に蓄積するまで、適切な条件下、Cl源を含む培地中で、株ST201196(DSM18870)、またはその変異株および/もしくは突然変異株の1つを発酵させ、そして
2.培地から式(I)の化合物を単離し、そして
3.場合により、式(I)の化合物を誘導体化および/または生理学的に許容される塩に変換することを含む、方法。
【請求項13】
XおよびYが一緒になって基−O−を形成し、R1およびR2が互いに独立して、ClまたはHであり、そしてR3およびR4が互いに独立して、H、(C1−C6)−アルキルまたはC(=O)−(C1−C6)−アルキルである、式(I)の化合物の請求項12に記載の方法。
【請求項14】
微生物株ST201196(DSM18870)。

【公表番号】特表2010−531823(P2010−531823A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513729(P2010−513729)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004971
【国際公開番号】WO2009/003595
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】