説明

マクロ生物の付着を防止し、および/またはマクロ生物を除去し、および/またはマクロ生物を制御するために、水および該水と接触する表面を処理する方法、該処理のための組成物およびペイント

【課題】マクロ生物の付着を防止し、および/またはマクロ生物を除去し、お
よび/またはマクロ生物制御するために、水および水と接触する表面を処理する
方法、およびこの処理のための組成物およびペイントを提供すること。
【解決手段】本願明細書に記載されるような、マクロ生物の付着を防止し、および/またはマクロ生物を除去し、および/またはマクロ生物を制御するために、水および該水と接触する表面を処理する方法、該処理のための組成物およびペイント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と接触する表面上で、動物界に属するマクロ微生物、特に軟体動
物の付着を防止し、および/またはマクロ生物を除去し、および/またはマクロ
生物を制御するために、水および水と接触する表面を処理する方法、およびこの
処理のための、水に注入される組成物および水と接触する表面に塗布されるペイ
ントに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの工業は、新鮮な水(例えば、渓流、川、湖、天然または人工貯水池、地
下の井戸またはその他から汲み出された水)、または塩水(例えば、海水)を利
用している。この水は、例えば、ボイラー循環または冷却水循環に使用される。
水は、工業設備における閉鎖ダクトまたは外気に開放されたダクトを循環する。
循環は、水が例えば川から汲み上げられそして川に排出される開放循環、または
、水が何度も再利用される閉鎖または半閉鎖循環で行われ得る。
【0003】
水が循環しまたは貯蔵される設備の表面では、まず第一に、微生物が発生し、
それにより、この表面上に有機物質、細菌、藻類、原生動物またはその他の微生
物からなる生物学的膜または細菌膜を形成することが知られている。この生物学
的膜は、例えば、出力または熱交換の顕著な損失を引き起こし得る。さらに、こ
の生物学的膜の存在は、局所的な腐食を起こし得、これは、膜を形成する微生物
の物理的な存在および代謝に関連する。結果として、動物界に属するマクロ生物
もまた水と接触する表面に発生し、これらのマクロ生物は、軟体動物(例えば、
イガイ類(mussels)、二枚貝(clams)およびフジツボ目の甲殻類(barnacles
))、セルプラ(serpulae)、甲殻類(crustaceans)、ヒドロポリプ(hydroid
s)、外肛動物(bryozoa)、ヒドロ虫類(hydrozoa)であり得る。これらのマク
ロ生物は、水と接触する設備の表面に外皮を形成する。これらの外皮の除去は困
難であり、そして機械的にまたは手作業でこの外皮を除去する前に、しばしば設
備を停止して水を排出する必要がある。従って、マクロ生物の成長および水と接
触する表面へのその付着を防ぎ得る、殺菌作用および/または生物静菌作用を有
する化合物を活性生成物として水に導入することが試みられている。
【0004】
殺菌物質と呼ばれる多くの化合物が、水を処理するために提案され使用されて
いる。実際に最も一般的に使用されているものは、塩素、臭素、ヨウ素、塩化カ
リウム、次亜塩素酸およびそのナトリウム塩またはカルシウム塩、次亜臭素酸、
ジクロロ−またはトリクロロイソシアヌル酸の塩、あるいはハロゲン化ヒダント
インのような、ハロゲンまたはハロゲン化無機誘導体または有機誘導体である。
しかし、これらの化合物は、腐食性であり、そして水中に存在する有機物質と共
に強い毒性の塩素化化合物を形成する欠点がある。注入またはコーティングとの
接触による処理のために、過酸化誘導体、フェノールおよびフェノール誘導体、
重金属またはそれらの有機誘導体、ホルムアルデヒド、安息香酸およびベンゾエ
ートを使用することもまた提案されている。しかし、これらの化合物の大部分は
高価であり、そして大量の水を利用する工業設備におけるそれらの使用は考えら
れない。さらに、それらの多くは、毒性または腐食性の残留物を処理された水に
残してしまう。
【0005】
殺菌性化合物は、一般に、有機溶媒を含有し得る水相中の溶液または分散液の
形態で使用される。この場合は、これらは、通常、処理される水に注入される。
しかし、ある場合には、特に殺菌性化合物が水に対して溶解性が低い場合、これ
らをある物質(例えば、ペイント)に導入し、そして殺菌性化合物を含有するこ
の物質を保護されるべき表面(例えば、船体)に塗布して、保護されるべき表面
と接触する水を処理する。
【0006】
一般に、工業用水、特に開放循環設備用の水を処理するための方法における適
切な形態での使用に適するようにするために、殺菌性化合物は以下の性質を有さ
なければならない:
水と接触する表面の腐食を(この腐食が水中に存在する化学物質(例えば、CO
2)によるか、または生物学的膜によるかに関わらず)防ぐこと、
生物学的膜の形成を防ぐこと、
マクロ生物の付着を除去または防ぐこと、および
使用後に、工業設備の下流の植物相および動物相が保護されるように、毒性ま
たは腐食性残留物を残さないこと。
【0007】
フランス特許第1601304号から、殺藻剤コーティングは、水と接触し、保護さ
れるべき表面にコーティングされる脂肪族モノアミンまたはポリアミンを使用す
ることにより得られ得ることが知られている。ヨーロッパ特許出願第0017611号
からはまた、脂肪酸アミンはマクロ生物を破壊し、そしてそれにより生物学的膜
を破壊しやすいことが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、水と接触する表面上への、動物界に属するマクロ生
物、特に軟体動物の付着を防止し、および/または破壊するために、水および水
と接触する表面を処理する方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の課題は、この方法の変形を実行するために使用されるペイントを
提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によって、以下が提供される:
(1) 動物界に属するマクロ生物の付着の防止、水と接触する表面
上の該マクロ生物の除去および制御の少なくとも1つを行うために、該水および
該水と接触する表面を処理する方法であって、該方法には、該水に注入され、ま
たは該表面に塗布され、またはその両方が行われる、少なくとも1つの殺菌活性
生成物、または生物静菌活性生成物、あるいはその両方が使用され、ここで、使
用された該少なくとも1つの活性生成物は、少なくとも1つの下式Iのポリアミ
ン、または少なくとも1つの下式IIのモノアミン、あるいは該少なくとも1つの
式Iのポリアミンおよび該少なくとも1つの式IIのモノアミンの混合物を含有す
る、方法:
(化1)
R1-NH[(CH2)3-NH]n-(CH2)3NH2 (I)
ここで、R1はC8〜C22のアルキル基またはアルケニル基であり、そしてnは0お
よび3の間の整数である;および
(化2)
R2NH2 (II)
ここで、R2は、C8〜C22のアルキル基またはアルケニル基である。
(2) 前記使用される式Iの活性生成物が、第1に、R1がドデシル
基である少なくとも1つの式Iのポリアミン、またはR1がテトラデシル基である
少なくとも1つの式Iのポリアミン、あるいはその混合物、および第2に、R1
オクタデセニル基である少なくとも1つの式Iのポリアミンを含有する混合物で
ある、項目1に記載の方法。
(3) 前記少なくとも1つの活性生成物が、断続的に水に注入され
る、項目1および2のいずれか1項に記載の方法。
(4) 前記少なくとも1つの活性生成物が、連続的に水に注入され
る、項目1および2のいずれか1項に記載の方法。
(5) 前記少なくとも1つの活性生成物が、水相中のエマルジョン
として処方される、項目3および4のいずれか1項に記載の方法。
(6) 前記少なくとも1つの活性生成物のエマルジョンが使用され
、該エマルジョンが、少なくとも1つの下式IIIのポリオキシエチレン化第3ア
ミンを含有する乳化剤の補助によって得られる、項目5に記載の方法:
【化3】


ここで、R3は、C8〜C22のアルキル基またはアルケニル基であり、そしてxおよ
びyは、(x+y)が5と50との間であるような整数である。
(7) 前記少なくとも1つの活性生成物を含有するコーティングが
、前記水と接触する表面に塗布される、項目1および2のいずれか1項に記載
の方法。
(8) 前記少なくとも1つの式Iまたは式IIの活性生成物、あるい
はその両方が、粉末状の充填剤と混合され、そのようにして得られた混合物を顔
料のように用いてペイントが調製され、そして該ペイントが前記水と接触する表
面に塗布される、項目7に記載の方法。
(9) 項目3および4のいずれか1項に記載の処理方法を実行す
るための殺菌性組成物であって、第1に、R1がドデシル基である少なくとも1つ
式Iのポリアミン、またはR1がテトラデシル基である少なくとも1つの式Iのポ
リアミン、あるいはそれらの混合物、および第2に、R1がオクタデセニル基であ
る少なくとも1つの式Iのポリアミンを含有するポリアミンの混合物を含有する
、組成物。
(10) 獣脂から誘導されるポリアミン、またはオレインを含有す
る植物油または動物油あるいはその両方と、ココヤシから誘導される少なくとも
1つのポリアミンとの混合物を含有する、項目9に記載の組成物。
(11) 15重量%を越えない前記少なくとも1つの式IIのアミンを
含有する、項目9および10のいずれか1項に記載の殺菌性組成物。
(12) 項目5に記載の方法を実行するために意図され、水性エ
マルジョンの形態である、項目9から12のいずれか1項に記載の殺菌性組成
物。
(13) 項目6に記載の方法を実行するために意図され、以下の
、少なくとも1つの式IIIのポリオキシエチレン化第3アミンを含有する乳化剤
を含有する、項目12に記載の組成物:
【化4】


ここで、R3は、C8〜C22のアルキル基またはアルケニル基であり、そしてxおよ
びyは、(x+y)が5と50との間であるような整数である。
(14) 前記乳化剤が、少なくとも1つの式Iまたは式IIの活性生
成物あるいはその両方の重量に対して、5〜45重量%を構成する、項目12お
よび13のいずれか1項に記載の殺菌性組成物。
(15) 前記エマルジョンの水相が、ジエチレングリコール、へキ
シレングリコール、モノプロピレングリコールおよび下式IVのアミノアルコール
からなる群より選択される少なくとも1つの有機溶媒を含有する、項目12か
ら14のいずれか1項に記載の組成物:
(化5)
HO-A-NR4R5 (IV)
ここで、AはC2〜C4の線状または分枝アルケニル基であり、そしてR4およびR5
、同一または異なって、HまたはC1〜C3のアルキル基である。
(16) 項目8に記載の処理方法を実行するためのペイントであ
って、第1に、R1がドデシル基である少なくとも1つの式Iのポリアミンまたは
R1がテトラデシル基である少なくとも1つの式Iのポリアミン、またはそれらの
混合物、および第2に、R1がオクタデセニル基である少なくとも1つの式Iのポ
リアミンを含有するポリアミンの混合物を含有する、ペイント。
本発明によれば、アミン、より詳細には、ポリアミンの特定の混合物が上記全
ての性質を有すること、およびこれらは、水と接触する表面から、マクロ生物、
より詳細には軟体動物を有利に除去することを可能にすることが見出された。よ
り詳細には、これらは、熱発電所または原子力発電所中の冷却設備のような開放
循環で水が循環する工業設備において、ゼブライガイ類(zebra musseles)また
はカワホトトギス貝(Dreissena)によって引き起こされた問題を解決すること
を可能にする。
【0011】
本発明は、動物界に属するマクロ生物の付着の防止、水と接触する表面上のこ
のマクロ生物の除去および制御の少なくとも1つを行うために、この水およびこ
の水と接触する表面を処理する方法を提供する。この方法には、この水に注入さ
れ、またはこの表面に塗布され、またはその両方が行われる、少なくとも1つの
殺菌活性生成物または生物静菌活性生成物あるいはその両方が使用され、ここで
、使用されたこの少なくとも1つの活性生成物は、少なくとも1つの下式Iのポ
リアミン、または少なくとも1つの下式IIのモノアミン、あるいはこの少なくと
も1つの式Iのポリアミンおよびこの少なくとも1つの式IIのモノアミンの混合
物を含有する:
【0012】
(化6)
R1-NH[(CH2)3-NH]n-(CH2)3NH2 (I)
ここで、R1はC8〜C22のアルキル基またはアルケニル基であり、そしてnは0お
よび3の間の整数である;および
【0013】
(化7)
R2NH2 (II)
ここで、R2は、C8〜C22のアルキル基またはアルケニル基である。そのことによ
り、上記目的が達成される。
【0014】
1実施態様では、上記使用される式Iの活性生成物は、第1に、R1がドデシル
基である少なくとも1つの式Iのポリアミン、またはR1がテトラデシル基である
少なくとも1つの式Iのポリアミン、あるいはその混合物、および第2に、R1
オクタデセニル基である少なくとも1つの式Iのポリアミンを含有する混合物で
ある。
【0015】
他の実施態様では、上記少なくとも1つの活性生成物は、断続的に水に注入さ
れる。
【0016】
さらに他の実施態様では、上記少なくとも1つの活性生成物は、連続的に水に
注入される。
さらに他の実施態様では、上記少なくとも1つの活性生成物は、水相中のエマ
ルジョンとして処方される。
【0017】
さらに他の実施態様では、上記少なくとも1つの活性生成物のエマルジョンは
使用され、このエマルジョンは少なくとも1つの下式IIIのポリオキシエチレン
化第3アミンを含有する乳化剤の補助によって得られる:
【0018】
【化8】

【0019】
ここで、R3は、C8〜C22のアルキル基またはアルケニル基であり、そしてxおよ
びyは、(x+y)が5と50との間であるような整数である。
【0020】
さらに他の実施態様では、上記少なくとも1つの活性生成物を含有するコーテ
ィングは、上記水と接触する表面に塗布される。
【0021】
さらに他の実施態様では、上記少なくとも1つの式Iまたは式IIの活性生成物
、あるいはその両方は、粉末状の充填剤と混合され、そのようにして得られた混
合物を顔料のように用いてペイントは調製され、そしてこのペイントは上記水と
接触する表面に塗布される。
【0022】
本発明はまた、上記処理方法を実行するための殺菌性組成物を提供する。この
組成物は、第1に、R1がドデシル基である少なくとも1つ式Iのポリアミン、ま
たはR1がテトラデシル基である少なくとも1つの式Iのポリアミン、あるいはそ
れらの混合物、および第2に、R1がオクタデセニル基である少なくとも1つの式
Iのポリアミンを含有するポリアミンの混合物を含有する。
【0023】
1実施態様では、上記組成物は、獣脂脂から誘導されるポリアミン、またはオ
レインを含有する植物油または動物油あるいはその両方と、ココヤシから誘導さ
れる少なくとも1つのポリアミンとの混合物を含有する。
【0024】
他の実施態様では、上記殺菌性組成物は、15重量%を越えない上記少なくとも
1つの式IIのアミンを含有する。
【0025】
さらに他の実施態様では、上記殺菌性組成物は、上記方法を実行するために意
図され、水性エマルジョンの形態である。
【0026】
さらに他の実施態様では、上記殺菌性組成物は、上記方法を実行するために意
図され、以下の、少なくとも1つの式IIIのポリオキシエチレン化第3アミンの
を含有する乳化剤を含有する:
【0027】
【化9】

【0028】
ここで、R3は、C8〜C22のアルキル基またはアルケニル基であり、そしてxおよ
びyは、(x+y)が5と50との間にであるような整数である。
【0029】
さらに他の実施態様では、上記乳化剤は、少なくとも1つの式Iまたは式IIの
活性生成物またはその両方の重量に対して、5〜45重量%を構成する。
【0030】
さらに他の実施態様では、上記エマルジョンの水相は、ジエチレングリコール
、へキシレングリコール、モノプロピレングリコールおよび下式IVのアミノアル
コールからなる群より選択される少なくとも1つの有機溶媒を含有する:
【0031】
(化10)
HO-A-NR4R5 (IV)
ここで、AはC2〜C4の線状または分枝アルケニル基であり、そしてR4およびR5
、同一または異なって、HまたはC1〜C3のアルキル基である。
【0032】
本発明はまた、上記処理方法を実行するためのペイントを提供する。このペイ
ントは、第1に、R1がドデシル基である少なくとも1つの式Iのポリアミンまた
はR1がテトラデシル基である少なくとも1つの式Iのポリアミン、またはそれら
の混合物、および第2に、R1がオクタデセニル基である少なくとも1つの式Iの
ポリアミンを含有するポリアミンの混合物を含有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
従って、本発明の課題は、水と接触する表面上への、動物界に属するマクロ生
物、特に軟体動物の付着を防止し、および/または破壊するために、水および水
と接触する表面を処理する方法を提供することである。この方法には、水に注入
され、そして/またはこの表面に塗布される少なくとも1つの活性な殺菌性生成
物および/または生物静菌性生成物が使用される。これらの活性な生成物は下式
Iの少なくとも1つのポリアミンおよび/または下式IIの少なくとも1つのモノ
アミンを含有することにより特徴づけられる:
【0034】
(化11)
R1-NH[(CH2)3-NH]n-(CH2)3NH2 (I)
ここで、R1はC8〜C22のアルキル基またはアルケニル基であり、そしてnは0お
よび3の間の整数(これらを含めて)である;および
【0035】
(化12)
R2NH2 (II)
ここで、R2は、C8〜C22のアルキル基またはアルケニル基である。
【0036】
本発明によれば、使用される式Iの活性生成物は、より詳細には、第1に、R1
がドデシル基である式Iの少なくとも1つのポリアミン、および/またはR1がテ
トラデシル基である式Iの少なくとも1つのポリアミン、および第2に、R1がオ
クタデセニル基である式Iの少なくとも1つのポリアミンを含有する混合物であ
る。この混合物は、他のモノアミンおよび/またはポリアミンも含有し得る。
【0037】
本発明によれば、アミンおよびポリアミンは、その塩または他の誘導体の形態
でなく、それ自体として使用される。
【0038】
本発明によれば、この活性生成物は水に有利に注入され得る。本発明によれば
、活性生成物の水への注入は、処理される水に連続的または断続的に行われ得る
。連続的に注入する場合、水1リットルあたり式Iおよび/または式IIの生成物
の0.01ppmと1.5ppmとの間の濃度を得るために必要とされる量が、処理される表
面に関して適切であり得る。断続的に注入する場合、1.5時間で6mg/lのオーダー
の濃度を得るように式Iおよび/または式IIの生成物を毎日注入することにより
、カワホトトギス貝の集団を1ヶ月で根絶させ得る。式Iおよび/または式IIの
活性生成物の必要濃度は、除去されるマクロ生物、水と接触する表面のサイズお
よび性質、ならびに水の流れに依存し、当業者に容易に決定され得る。
【0039】
活性生成物による水の処理は、処理に用いられる式Iおよび/または式IIの活
性生成物の全てを含有する殺菌性組成物を水に注入することにより、有利に行わ
れる。しかし、使用される異なる活性生成物を別々に注入することが可能であり
、各注入は、一部の殺菌性組成物を用いて行われる。本発明のさらなる目的は、
先に定義された処理方法に使用される殺菌性組成物を提供することである。この
組成物は、第1に、R1がドデシル基である式Iの少なくとも1つのポリアミンお
よび/またはR1がテトラデシル基である式Iの少なくとも1つのポリアミン、お
よび第2に、R1がオクタデセニル基である式Iのポリアミンを含有する。
【0040】
これらの組成物は、実際には好ましくは、獣脂から誘導されるポリアミンおよ
び/またはオレインを含有する植物油または動物油から誘導されるポリアミンと
、ココヤシから誘導されるポリアミンとを混合することにより得られる。
【0041】
水に注入するために、組成物は、好ましくは、水相において、エマルジョン、
より好ましくはマイクロエマルジョンとして処方される。なぜなら、式Iおよび
/または式IIのアミン自体は水に不溶であるからである。活性生成物を乳化させ
るために、乳化性界面活性剤が好適に使用される。この乳化剤は、有利には、以
少なくとも1つの下式IIIのポリオキシエチレン化第3アミンを含有する:
【0042】
【化13】

【0043】
ここで、R3は、C8〜C22のアルキル基またはアルケニル基であり、好ましくは、
ヘキサデシル基、ステアリル基またはオレイル基であり、そしてxおよびyは、
x+yが5と50との間、好ましくは、10と20との間であるような整数である。乳
化剤は、式Iおよび/または式IIの活性生成物により形成される組合せの重量に
対して、5〜45重量%の量、好ましくは、15〜35重量%を構成し得る。
【0044】
水相は、水に加え、少なくとも1つの有機溶媒を含有し得る。この有機溶媒は
、ジエチレングリコール、へキシレングリコール、モノプロピレングリコールお
よび下式IVのアミノアルコールからなる群から適切に選択される:
【0045】
(化14)
HO-A-NR4R5 (IV)
ここで、AはC2〜C4の線状または分枝アルケニル基であり、そしてR4およびR5
、同一または異なって、HまたはC1〜C3のアルキル基である。
【0046】
溶媒を含有するエマルジョンの水相は、適切であれば、このエマルジョンの90
重量%までを構成し得る。
【0047】
本発明によれば、少なくとも1つの式Iおよび/または式IIの活性生成物を含
有するコーティング、特にペイントを水と接触する表面に塗布することによって
水を処理することもまた可能である。このようなペイントの特定の実施態様によ
れば、式Iおよび/または式IIの少なくとも1つの活性生成物は、粉状の生成物
を得るように、粉状の充填剤(例えば、微粉状にしたシリカ)と混合される。こ
の粉状の生成物は、次いで、顔料と同じようにペイント中に導入される。本発明
の他の課題は、この方法の変形を実行するために使用されるペイントを提供する
ことである。このペイントは、第1に、R1がドデシル基である少なくとも1つの
式Iのポリアミンおよび/またはR1がテトラデシル基である少なくとも1つの式
Iのポリアミン、および第2に、R1がオクタデセニル基である式Iのポリアミン
を含有する。
【0048】
本発明によれば、式Iのポリアミンおよび式IIのアミンは、水と接触する表面
に付着する、動物界に属するマクロ生物に対して活性を有することが見出された
。これらのマクロ生物は、セルプラ(serpulae)、甲殻類(crustaceans)、ヒ
ドロポリプ(hydroids)、外肛動物(bryozoa)およびヒドロ虫類、より詳細に
は、軟体動物(molluscs)、例えば、イガイ(mussels)、フジツボ目の甲殻類
(barnacles)および二枚貝(clams)であり得る。簡略化のために、本願のこれ
以降において、マクロ生物に対するこの活性を、用語「軟体動物致死活性」と称
す。本発明によれば、脂肪族鎖R1(これはドデシル(またはラウリル)鎖および
/またはテトラデシル(またはミリスチル)鎖である)を含有するポリアミンが
、オクタデセニル(またはオレイル)脂肪族鎖R1を含有するポリアミンと混合さ
れるときに、軟体動物致死活性は特に高いことが見出された。実は、以下の実施
例に示されるように、これらの2つのタイプのポリアミンの間には相乗反応があ
る。ポリアミンのこの好ましい混合物は、相乗作用が改変されることなく、さら
に他のポリアミンを含有し得る。これは、特に、以下の(A)、(B)または(C)のポ
リアミンのいずれかが使用されるときにあてはまる:
(A)脂肪族鎖がココヤシから誘導され、そしてC12およびC14の脂肪族鎖を有す
る式Iのポリアミンに加え、C8、C10、C16、C18およびモノ不飽和C18基R1を有す
るポリアミンを含有する、市販の式Iのポリアミン、または
(B)脂肪族鎖が獣脂から誘導され、そしてモノ不飽和C18基R1に加え、C14、C16
およびC18基R1を含有する、市販の式Iのポリアミン、または、
(C)オレインを含有する植物油または動物油から誘導され、ここで、脂肪族鎖
は、モノ不飽和C18基R1に加え、C14、C16、モノ不飽和C16基および飽和C18基R1
、ならびにいくつかの場合には、ジエン性C18基R1を含有する、市販の式Iのポ
リアミン。
【0049】
この混合物はまた、アミンR2NH2を含有し得、これは、市販の生成物中の式I
のポリアミンと混合され、そしてその基R2は、一般に、式Iのポリアミンの基R1
と同じであり、この場合、モノアミンの含有量は15重量%を越えない。
【0050】
試験は、本発明の殺菌性組成物が、熱発電所または原子力発電所の冷却設備(
水が開放循環で循環する)において、マイクロエマルジョンの形態で水中にこの
組成物を注入することにより、ストライプ(striped)イガイ類(カワホトトギス
貝多形体(Dreissena polymorpha))の除去を可能にすることを示している。さら
に、本発明に従って使用される組成物は、水と接触する表面への軟体動物の付着
を防ぎ得ることが見出された。実際に、実験室の実験では、本発明に従って使用
される組成物は、ストライプイガイ類の足糸(byssal)フィラメントの生長を阻
害することが観察された。さらに、この殺菌性組成物の存在下で、水と接触する
表面へのフジツボ目の甲殻類および殻斗貝類(acorn-shells)の付着が少ないこ
とが観察された。
【0051】
さらに、使用される脂肪族鎖アミンは、安定な膜形成効果を有し、そしてそれ
らは、水に注入されると、水と接触する表面に膜の形態で付着することが知られ
ている。従って、注入により処理を行うときの殺菌性組成物の必要量は少ない。
なぜなら、表面に付着した膜が微生物またはマクロ生物に対して長期間の作用を
有するからである。これは、塩素およびその誘導体(二酸化塩素および有機塩素
化合物)を用いる場合にはあてはまらない。従来の技術で最も一般的に使用され
るこれらの化合物は表面に付着せず、そして水中に分散される。従って、本発明
の処理方法によれば、水に注入される殺菌性組成物の量は設備中の水の流れより
も、水と接触する表面に依存する。特に、所定の表面を処理するために、まず第
1に、この表面に膜を形成するように、比較的高い濃度の本発明の殺菌性組成物
を導入し、次いで、膜を補充しマクロ生物に作用するように、保護される表面で
低濃度の殺菌性組成物を維持する。
【0052】
本発明に従って使用する殺菌性組成物はまた、生物学的膜の形成を防ぐこと、
または生物的な膜が形成されたときにこの膜を破壊すること、およびこの生物学
的膜による腐食を防ぐことを可能にする。これはまた、腐食防止作用およびアン
チスケール作用を有する。このことに関して、アミンが公知である。
【0053】
本発明に従って使用される殺菌性組成物の殺菌作用および腐食防止作用は、例
えば、スチール、銅、セラミック、ガラスおよびプラスチックの多くの表面にお
いて確認された。
【0054】
さらに、使用される殺菌性組成物は毒性がない。実際に処理された媒体中のア
ミンおよびポリアミンの寿命は比較的短く、そして毒性二次生成物を形成しない
。本発明の方法によって水が処理される、発電所の冷却設備から出る残留水は、
魚類、特にスズキ(perch)およびコイ科の淡水魚(bream)の幼魚に対して毒性
作用を有しない。
【0055】
本発明に従って使用される組成物は、成分を混合することにより調製される。
実際には、特に適切な組成物は、ココヤシから誘導される少なくとも1つのポリ
アミンと、獣脂から誘導される少なくとも1つのポリアミン、および/またはオ
レインを含有する植物油または動物油から誘導される少なくとも1つのポリアミ
ンとを混合することにより得られる。
【0056】
以下の、例示のために示される非限定的な実施例は、本発明をより良く理解す
ることを可能にする。
【実施例】
【0057】
(実施例1〜82)
実施例1〜82は、水への注入による処理における、本発明の殺菌性組成物の試
験に関する。
【0058】
A−使用材料
1−ポリアミン
以下の表1は、使用される市販のポリアミン中の脂肪族鎖の分布を示す。表1
の第1欄は、ポリアミンの市販名を示す。例えば、「獣脂」は、その脂肪族鎖R1
が獣脂から誘導されたポリアミンを示し、そして「オクチル」は、工業用のオク
タン酸から誘導された市販のポリアミンを示す。
【0059】
【表1】

【0060】
2−マクロ生物
モゼル地方(Moselle)で、カワホトトギス貝(Dreissena polymorpha pallas
)の成体(長さ18〜23mm)を収集した。実験室で、脱塩素および常に通気され飲
用に適する水道水に、これらの軟体動物を以下の条件で保存する:
温度:18℃±1℃
pH: 7.6〜8.2
カワホトトギス貝に、予め凍結されたChlamydomonas属の緑藻を毎日与える。
凍結藻のブロックを実験容器の上層に懸濁する。藻は、溶解しながら徐々に分配
する。
【0061】
B−方法
死亡率テスト:カワホトトギス貝の成体(18〜23mm)を実験条件に3日間順応
させる。この間に、これらの貝は支持体(ガラスプレート)に付着する。
【0062】
実験セットは、予め脱塩素された、飲用可能な水道水が連続的に供給される(
流速:100ml/分)12リットルの容器から構成される。容器中の水は常に通気さ
れ、そして媒体は、閉鎖循環で作動するポンプで均質化される(流速:6l/分)
。 各支持体および各テスト濃度については、50個のカワホトトギス貝が最初の
実験サンプルを構成する。各サンプルには、容器中の水の1リットルあたり、2
、6、および10mgの濃度が得られるように、組成物を毎日90分間または180分間
注入し、そしてこれを各組成物について繰り返して、最適な効果を測定する。
【0063】
死亡率を1ヶ月間毎日計算する。これは、カワホトトギス貝がその殻を開けた
まま、触覚刺激に反応しないときに確立される。
【0064】
対照サンプルを、同じ実験条件に供するが、脱塩素された飲用可能な水道水に
のみ保存する。
【0065】
2つの試験物質の混合物の軟体動物致死相乗作用の存在を測定するために、使
用される方法は、生物静菌性相乗作用を測定するための、Kull F.C., Eismann P
.C., Sylvestrowicz H.D., Mayer R.L. (Appl. Microbiol. 9, 538-541, 1961)
により提案されたものであった。
【0066】
使用する式は以下のとおりである:
【0067】
【数1】

【0068】
ここで、
CAは、物質Aの最低軟体動物致死濃度である。
【0069】
QAは、混合物A/Bの最低軟体動物致死濃度中の物質Aの量である。
【0070】
CBは、物質Bの最低軟体動物致死濃度である。
【0071】
QBは、混合物A/Bの最低軟体動物致死濃度中の物質Bの量である。
【0072】
X=1のとき、効果の増加があり、X>1のとき、拮抗作用があり、そしてX
<1のとき、相乗作用がある。
【0073】
組成物は、1つまたはそれ以上のポリアミンを乳化性界面活性剤としての2-ア
ミノ-2-メチル-1-プロパノールおよびエトキシ化アミン、ならびに水と混合する
ことにより、マイクロエマルジョンの形態で調製される。Genamin(登録商標)O
-200は、20単位のエチレンオキシドを有するオレイルアミンである。
【0074】
表2および表3は、比較のために、使用される種々のポリアミンそれ自体の最
適な軟体動物致死濃度を示す。
【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
単独で使用された種々のアミンおよびジアミンは、軟体動物致死作用を有する
ことが表2および表3から理解され得る。
【0078】
表4〜6は、ジアミンの種々の混合物の軟体動物致死作用を示す。
【0079】
【表4】

【0080】
【表5】

【0081】
【表6】

【0082】
これらの表は、ドデシルプロピレンジアミンの混合物およびテトラデシルプロ
ピレンジアミンの混合物が軟体動物致死作用に対して相乗効果を有しないが、こ
の混合物がオクタデセニル(C18.1)プロピレンジアミンを含有するとき、相乗効
果を有すること(Xは1未満である)を示す。
【0083】
表7および8は、トリアミンおよびテトラアミン自体(実施例52〜55)の存在
下での、または他のポリアミンとの混合物としての(実施例51および53〜65)、
軟体動物致死濃度を示す。
【0084】
【表7】

【0085】
【表8】

【0086】
表7および8は、オレイルポリアミンがトリアミンまたはテトラアミンである
ときに、相乗作用がまた存在することを示す。
【0087】
表9および10に要約した試験は、種々の溶媒および種々の乳化性界面活性剤の
存在下で行われた。
【0088】
【表9】

【0089】
【表10】

【0090】
表9および10は、種々の溶媒および種々の乳化性界面活性剤がポリアミンの軟
体動物致死作用に対して実質的に影響を有しないことを示す。
【0091】
(実施例83〜138)
実施例83〜138は、水と接触する表面への塗布による処理についての、生物活
性ペイントの試験に関する。
【0092】
A−方法:
長鎖アミンをベースにした組成物を含有する一連の生物活性ペイントを製造し
た。これらを、以下の表11の、乾燥重量で表される処方に対応するコーティング
組成物に導入した。
【0093】
【表11】

【0094】
生物活性充填剤は、高シアータービン中で、液体の状態のアミンをSylobloc 4
5(登録商標)と混合することによって得られた粉末である。
【0095】
この生物活性充填剤の組成は、組成物83〜138により表される。生物活性コー
ティングは、上記処方に生物活性充填剤を組み込むことによって得られる。生物
活性充填剤を導入する前に、高シアータービンを用いて20,000回転/分の速度で
、30重量%の、キシレン/Solvesso 100(重量で72/28)を含有する溶媒の混合物
に、この処方の成分を予め分散して微細かつ均一な分散物を得た。
【0096】
150×200×1.5mmのスチールプレートの両側を砂で磨き、続いて、乾燥後に層
全体が厚さ80ミクロンになるように、各生物活性処方物を2層コーティングした
。対照プレートを同じ方法で処理したが、処方物は、充填剤として「Sylobloc 4
5」シリカのみを含有し、生物活性アミンを含有しなかった。
【0097】
続いて、2シリーズのプレートを亜熱帯の海に浸漬し、ナイロン糸により、一
方では深さ1メートル、他方では深さ10メートルのところに吊るして、貝殻付着
防止効果を測定した。浸漬試験を、1月にまず1ヶ月間で行った。続いて、プレ
ートを引き上げ、そして対照プレートと比較した。重量を計った後、プレートに
付着した付着物(deposits)を取り除き、m2あたりの付着した生物種を同定およ
び計数した。同じ条件下で、新しいシリーズのコーティングされたプレートを、
2月、5月、8月および10月に3回繰り返し3ヶ月間浸漬し、続いて、対照プレ
ートとの比較により再び検討した。
【0098】
表12は、対照プレートとして浸漬したシリーズのプレートに主に付着した種々
の生物種の最も重要なものを示す。
【0099】
【表12】

【0100】
B−結果
海洋性貝殻類に関する種々の組成物の阻害活性を、表面近くおよび一定の深さ
に浸漬した実験プレートに付着した種々の生物種の重量および数の関数として、
各浸漬期間の終わりに評価した。表13〜18は、コーティング処方物に導入された
生物活性充填剤の各組成物についての、%により表されるその効果を示す。効果
は以下のように計算される:各処理プレート上および対照プレート上の微生物の
重量をはかり、そしてその重量の差を計算する。効果をパーセントにより表す。
示される数値は得られた数値の算術平均である。
【0101】
表13〜18の結果に示されるように、海洋性貝殻類の付着防止剤として、ココヤ
シから誘導されたポリアミンと、獣脂から誘導されたポリアミンまたはオレイル
ポリアミンとの混合物は、個々の純粋なアミンよりも効果的であることが明らか
である。
【0102】
【表13】

【0103】
【表14】

【0104】
【表15】

【0105】
【表16】

【0106】
【表17】

【0107】
【表18】

【0108】
1ヶ月後、対照群は、非常に低い平均死亡率を保つ。これは、本発明に基づく
処理に曝された群で記録された死亡率が、確かに、試験された軟体動物致死作用
によることを示す。
【0109】
(発明の効果)
本発明の水および水と接触する表面を処理する方法およびペイントは、水と接
触する表面から、マクロ生物、より詳細には軟体動物を有利に除去することを可
能にする安定な膜形成効果を有し、しかも毒性がない。本発明の方法はまた、生
物学的膜の形成を防ぐこと、または生物的な膜が形成されたときにこの膜を破壊
すること、およびこの生物学的膜による腐食を防ぐことを可能にし、腐食防止作
用およびアンチスケール作用を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載されるような、マクロ生物の付着を防止し、および/またはマクロ生物を除去し、および/またはマクロ生物を制御するために、水および該水と接触する表面を処理する方法。

【公開番号】特開2007−245153(P2007−245153A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113577(P2007−113577)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【分割の表示】特願平7−320821の分割
【原出願日】平成7年12月8日(1995.12.8)
【出願人】(595173042)
【氏名又は名称原語表記】Antoine VANLAER
【住所又は居所原語表記】5,rue Saint−Louis−en−L’Ile,75004 PARIS−FRANCE
【Fターム(参考)】