説明

マグネシウム合金用黒色化成処理液、化成処理方法及び化成処理部材

【課題】裸耐食性、塗装密着性、塗装耐食性に優れ、均一に黒色の化成皮膜を表面に形成することができるマグネシウム合金用黒色化成処理液、黒色化成処理方法、黒色化成処理皮膜、黒色化成処理部材を提供すること。
【解決手段】リン酸イオンとフッ化物イオンとを含有することを特徴とするマグネシウム合金用黒色化成処理液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロム系、リン酸-マンガン系などのマグネシウム合金の化成処理皮膜材と同等あるいはそれ以上の裸耐食性および塗装密着性を有したマグネシウム合金用黒色化成処理液、化成処理方法及び化成処理部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ、ノートパソコン、携帯電話、ビデオカメラなどの普及に伴い、これらの筐体や部品にマグネシウム合金が多く使用されるようになってきた。マグネシウム合金は、実用金属のなかでは密度が最も小さく、比強度が高く、さらにリサイクル性、電磁波シールド性、熱放射性など優れた特性を有しているため、プラスチックに代わる素材として注目を集めている。しかしながら、マグネシウム合金は実用金属のなかでとくに耐食性が劣るという欠点がある。このため、従来からマグネシウム合金部材の多くは、化学的浸漬処理によって化成皮膜を生成させ、これによって耐食性を付与されている。また、この化成皮膜は有機質皮膜との密着性が優れているため、化成処理後に塗装処理を施せば、一般的な腐食環境においても十分に耐食性を維持することができる。
【0003】
従来マグネシウム合金用の化成処理としては、JIS H 8651やMIL-M-3171などのクロム系化成処理が主流であった。しかしながら、これら従来のクロム系化成処理液は、いずれも6価クロムイオンを含有しており、人体および地球環境にとって有害性を伴うものであった。このため最近では、ノンクロム系の化成処理液が研究され、実用化されるようになってきた。ノンクロム系化成処理液としては一般に市販されているリン酸-マンガン系化成処理液(特許文献1)やリン酸-マンガン-カルシウム系化成処理液(特許文献2)などがある。
【0004】
しかしながら、上記ノンクロム系化成処理皮膜は、製品内部など穏やかな腐食環境においては十分に耐食性があるにもかかわらず、実際の使用では、製品の全面あるいは一部に塗装処理を施すことが多い。この理由としては、上記化成処理皮膜は有色皮膜でないため、意匠性に乏しいことが挙げられ、外観上の要求から、有色塗装処理を施されることが非常に多い。このように、化成処理によって十分な裸耐食性を有しているにも関わらず、外観上の要求から、有色塗装処理が施されることは、製品の製造コスト上昇の一因になっている。
【0005】
なお、黒色の有色化成処理皮膜として、リン酸とストロンチウム化合物とを含有する水溶液中で浸漬処理する方法(特許文献3)が開発されている。しかしながら、この方法は、マグネシウム合金中のAl含有量が少なくなるほど黒色化し難くなる傾向があり、種々検討した結果、3質量%以下のAl含有量の合金では、化成処理後の皮膜が、無色〜灰色程度にしかならず、均一性に乏しいことがわかった。さらに、化成処理液に高価なストロンチウム化合物を使用することは、経済的にも好ましくない。
【0006】
【特許文献1】特開平7-126858号公報
【特許文献2】特開平11-131255号公報
【特許文献3】特開2003-3274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記課題を解決することを目的とするものである。
本発明の目的は、リン酸-マンガン系化成処理方法やリン酸-マンガン-カルシウム系化成処理方法などのノンクロム系化成処理方法により得られた化成処理皮膜に匹敵する裸耐食性、塗装密着性、塗装耐食性を維持したまま、経済的にマグネシウム合金の表面を処理することが可能で、しかも均一に黒色の化成皮膜を表面に形成することができるマグネシウム合金用黒色化成処理液を提供することである。
本発明の他の目的は、上記処理液を使用した黒色化成処理方法、黒色化成処理皮膜、黒色化成処理部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するための手段を種々検討した結果、マグネシウム合金をリン酸イオンとフッ化物イオンとを含有する水溶液に浸漬処理することによって、ノンクロム系化成処理皮膜に匹敵する裸耐食性、塗装密着性、塗装耐食性を維持したまま、経済的にマグネシウム合金の表面を処理することが可能で、しかもノンクロム系化成処理方法にはない均一な黒色の化成皮膜を表面に形成することが可能であることを見出した。
本発明は以下に示すマグネシウム合金用黒色化成処理液、黒色化成処理方法及び黒色化成処理部材を提供するものである。
1.リン酸イオンとフッ化物イオンとを含有することを特徴とするマグネシウム合金用黒色化成処理液。
2.リン酸イオン濃度が0.1g/L〜350g/L、フッ化物イオン濃度が0.1g/L〜300g/Lである上記1記載のマグネシウム合金用黒色化成処理液。
3.リン酸イオンとフッ化物イオンとの濃度比率F-/PO43-が0.2〜2である上記1又は2記載のマグネシウム合金用黒色化成処理液。
4.pHが1〜3である上記1〜3のいずれか1項記載のマグネシウム合金用黒色化成処理液。
5.上記1〜4のいずれか1項記載の処理液を使用することを特徴とするマグネシウム合金黒色化成処理方法。
6.上記5記載の処理方法により製造されたマグネシウム合金黒色化成処理皮膜。
7.上記6記載の皮膜を有するマグネシウム合金黒色化成処理部材。
8.該皮膜の上にさらに塗膜を有する上記7記載のマグネシウム合金黒色化成処理部材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の黒色化成処理液を使用して得られた皮膜は、リン酸-マンガン系化成処理方法やリン酸-マンガン-カルシウム系化成処理方法などのノンクロム系化成処理方法により得られた化成処理皮膜に匹敵する裸耐食性、塗装密着性、塗装耐食性有しており、さらに均一な黒色を呈しているため、意匠性が優れる。さらに、塗装処理を施すことによって、通常の腐食環境でも問題なく使用できる特性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明が適用されるマグネシウム合金の組成は特に限定されず、産業上使用されるマグネシウム合金のいずれにも適用できる。その具体例としては、AZ92、AZ91、AZ80、AZ63、AZ61、AZ31、AM100、AM60、AM50、AM20、AS41、AS21、AE42等が挙げられる。本発明の処理対象となる部材としては、これらの鋳造品、ダイカスト品、射出成形品(半溶融鋳造またはチキソモールド)、展伸材(押出材、圧延材、鍛造材)の板およびプレス品などが挙げられる。
【0011】
本発明の化成処理液は、リン酸イオン(PO43-)とフッ化物イオン(F-)とを含有する水溶液である。リン酸イオン源としては、リン酸(オルソリン酸H3PO4)や水に溶解してリン酸イオンを生成するリン酸化合物であれば任意の化合物が使用できる。例えば、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸三ナトリウム(Na3PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)等の水溶性リン酸塩が挙げられる。
【0012】
フッ化物イオン源としては、フッ化水素酸(HF)や、水に溶解してフッ化物イオンを生成するフッ素化合物であれば任意の化合物が使用できる。例えば、アルカリ金属フッ化物であるフッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)等やフッ化アンモニウム(NH4F)等の水溶性フッ化水素酸塩が挙げられる。
【0013】
化成処理液のリン酸イオン濃度は、好ましくは0.1g/L〜350g/L、さらに好ましくは1〜100g/Lである。またフッ化物イオン濃度は、好ましくは0.1g/L〜300g/L、さらに好ましくは1〜100g/Lである。ただし、黒色化成皮膜を得るにはリン酸イオンとフッ化物イオンとの濃度比率が非常に重要となり、リン酸イオンとフッ化物イオンの濃度比率、F-/PO43-を好ましくは0.2〜2、さらに好ましくは0.2〜1の範囲にすることが望ましい。概ねフッ化物イオンの濃度比率が高くなるほど、生成する化成皮膜はテンパーカラー(干渉色)程度となり、黒色化し難くなる傾向にある。また、リン酸イオンの濃度比率が高くなるほど、化成処理時に活発に溶解反応が起こり、化成皮膜自体が生成し難くなる。
化成処理液のpHは、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1.5〜3.0である。pH調整用の酸としては、フッ化水素酸(HF)およびリン酸(オルソリン酸H3PO4)が好ましい。pH1以下では活性溶解が激しく、皮膜生成が生じ難く、pH3以上では、無色〜テンパーカラーの皮膜が生成して黒色化し難くなる。
化成処理の際の処理液の温度は、好ましくは10℃〜60℃、さらに好ましくは10〜40℃である。水溶液温度が10℃以下では、反応速度が小さく、皮膜生成までに長時間を要し、また60℃以上では、皮膜の生成速度は大きいが、黒色皮膜に肌ムラが発生し易くなる。浸漬時間は、好ましくは0.1〜30分間、さらに好ましくは0.1〜20分間である。
【0014】
黒色化成処理の前処理として、有機溶剤またはアルカリ溶液による脱脂処理を行うことが望ましい。これはマグネシウム合金表面の加工油、潤滑油、圧延油などの油分を除去することが目的であり、油分が残存すると黒色皮膜に肌ムラが発生する原因となる。有機溶剤としては、炭化水素系脱脂剤、臭素系脱脂剤およびアルコール等が適する。また、アルカリ脱脂剤としては、水酸化ナトリウム等に、ケイ酸塩および界面活性剤などが含まれたpH13以上の水溶液が適している。化成処理後の肌の均一性に関しては、アルカリ脱脂方法の方がより優れている。またアルカリ脱脂によって表面に残存するAl偏析、Zn偏析が優先的に除去され(アルカリエッチング)、化成処理皮膜の均一性が向上する。さらに、脱脂処理によって除去できなかった離型剤、ブラスト材、研磨材の除去には、酸洗が必要である。酸には低濃度の硝酸、硫酸、リン酸、有機酸などが適する。
【0015】
黒色化成処理後には、水洗工程と乾燥工程とが必要となる。黒色化成処理で生成した皮膜中にリン酸イオンやフッ化物イオンが残存すると、乾燥時に肌ムラが発生する原因となるため、黒色化成処理の後処理には、水洗を十分に行うことが望ましい。水洗後の化成処理皮膜には水分が含まれており、この水分によって表面肌に変色、退色が生じる可能性がある。また、化成処理後に塗装処理を行う場合にも化成皮膜に水分が残存していると、塗装後の焼付け工程で、塗膜にフクレや黒色化成皮膜に変色が生じることがある。
このため、水洗後には、温風乾燥を行った後、100〜300℃で1〜30分、例えば、150℃で20分間程度の強制乾燥を行うことが望ましい。
【0016】
こうして得られる本発明の黒色化成処理皮膜の厚みは、好ましくは0.5〜15μm、さらに好ましくは0.5〜10μmである。黒色化成処理皮膜中、MgおよびAlはフッ化物(フッ化マグネシウム:MgF2、フッ化アルミニウム:AlF3)および酸化物(MgO)、水酸化物として存在しており、炭素はC-C、炭酸基として存在している。また、MgおよびAl以外の合金成分であるZn、および化成処理液の成分であるリン酸イオンは、この黒色化成皮膜中には含まれていない。
本発明により得られる黒色化成処理皮膜の黒色度は、色の表示をJIS Z 8729に準じ、色彩演算後の明度L*で評価した場合、標準白色面(硫酸バリウム粉末)の明度L*を100とすると、好ましくは30以下、さらに好ましくは25以下である。
【0017】
塗装処理は、溶剤型塗料、水溶性塗料、粉体塗料など一般的な塗料を用いて行うことができるが、粉体塗料が最も好ましい。塗装膜厚は目的により調整されるが一般に乾燥膜厚で5〜30μm程度である。
【0018】
以下実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
実施例1
【0019】
供試材
供試材には、板厚が0.1mmの AZ31温間圧延材を使用した。これを50mm×50mmに切断した後、#600のエメリーペーパーで湿式研磨して試験片(素材)とした。
化成処理方法
試験片を市販のアルカリ脱脂剤を使用して超音波洗浄を施した後、30g/L H3PO4と10g/L HFの混酸水溶液中、25℃で5分間浸漬処理した。水洗を施した後に温風乾燥を施した。その後、150℃で20分間の大気加熱を行った。大気加熱後の試験片表面をSEM(走査電子顕微鏡)観察した。
【0020】
また、塗装処理はアクリル系溶剤型塗料(クリアー)を試験片に塗布し、乾燥塗膜厚さが20μmになるように塗装、焼付けを行った。これらの試験片に対して、裸耐食性、塗装密着性、塗装耐食性および黒色度を評価した。
【0021】
図1には黒色化成処理後の表面SEM観察結果を示す。化成皮膜には多数のクラックが存在していることがわかる。化成処理直後の皮膜中には多量の水分が存在(フーリエ変換赤外分光光度計、FT-IRで確認)しており、この水分が大気加熱処理によって蒸発することで皮膜にクラックが生じたものと考えられる。
【0022】
次に、黒色皮膜の皮膜厚さを計測する目的で、黒色化成処理後の試験片を切断して、樹脂に埋め込んだ後、湿式エメリー紙研磨およびバフ研磨によって鏡面に仕上げ、さらにダイヤモンド研磨(アルコール使用)を施して試験片断面を観察できる試料を作製した。SEMによって試験片断面を観察した結果、黒色皮膜の厚さが1.5μmであることがわかった。
【0023】
処理液の組成および処理時間を変化させて、黒色化に必要な皮膜厚さを調べた結果、黒色化には0.5μm以上の皮膜厚さが必要であることがわかった。
【0024】
次に黒色化成皮膜をX線光電子分光分析法(XPS)によって解析した。X線光電子の取出角度を45°とし、試験片表層深さ4〜5nm(検出深さ)の情報を得た。
【0025】
表1に、素材表面(#600研磨材)と黒色化成処理表面の定量分析結果(原子%)を示す。黒色化成処理によって生成した皮膜には多量のFが含まれるようになり、またFとMgとの原子%比率から、皮膜の主成分はMgF2と推定できる。そのほかの成分としては、O、Al、Cが検出された。さらに皮膜の組成解析を行った結果、MgおよびAlは、フッ化物(フッ化マグネシウム:MgF2、フッ化アルミニウム:AlF3)および酸化物(MgO)、水酸化物として存在しており、炭素はC-C、炭酸基として存在していた。なお、合金成分であるZnおよび化成処理液の成分であるリン酸イオンは、この黒色化成皮膜中には含まれていないことが特徴である。
【0026】
【表1】

【0027】
純粋なMgF2、MgO、AlF3は白色を呈するが、これに炭素や炭酸基、水酸化物などが含まれ、さらに光の吸収および干渉によって黒色化するものと考えられる。
【0028】
次に、黒色化成処理後の皮膜の黒色度を、JIS Z 8722の分光測色方法に準じて評価した。分光器には株式会社島津製作所製紫外可視分光光度計UV-2450を使用した。色彩値の演算(2°視野)には、標準光に測色用補助イルミナントCを使用し、標準白色面には硫酸バリウム粉末を形成したものを使用した。色の表示はJIS Z 8729に準じ、色彩演算後の明度L*で黒色度を評価した。標準白色面(硫酸バリウム粉末)の明度L*を100とすると、黒色化成処理後のL*は18となった。
【0029】
黒色化成処理皮膜の裸耐食性、塗装耐食性をJIS Z 2371に準じた塩水噴霧試験法を用いて評価した。試験時間は裸耐食性評価では6時間、塗装耐食性評価では100時間とした。評価はJIS Z 2371に準じたレイティングナンバー、RN.によった。
【0030】
塗装密着性は、JIS Z 2371に準じた塩水噴霧試験法を100時間行った後、JIS K 5600-5-6に準じた碁盤目テープ法によって評価した。塗装面に1mm幅100マスの碁盤目を入れ、JIS Z 1522に準じたセロハン粘着テープによる剥離試験を行い、剥離しなかった碁盤目マスの残存数で塗装密着性を表わした。
【0031】
塩水噴霧試験6時間後の裸耐食性は、RN.9.0であり、室内など穏やかな腐食環境においては十分な耐食性を維持している。また、塗装耐食性は塩水噴霧試験100時間後でRN.10で全く腐食は発生していなかった。また塩水噴霧試験後のセロハン粘着テープによる剥離試験結果が100/100となり、非常に塗装密着性が優れていた。この塗装密着性が優れる理由は、図1に示すように黒色化成処理皮膜には多数のクラックが発生しており、このクラックによる投錨効果が現れたためと考えられる。
【0032】
実施例2
供試材には、板厚が0.1mmの AZ31温間圧延材、板厚が0.5mmのAZ61温間圧延材、板厚が0.5mmのAZ80温間圧延材、AZ91のダイカスト品を用いた。温間圧延材は50mm×50mmに切断して試験片とした、ダイカスト品はそのまま試験片とした。試験片を市販のアルカリ脱脂剤を使用して超音波洗浄を施した後、50g/L H3PO4と25g/L HFの混酸水溶液中、25℃で5分間浸漬処理した。水洗後に温風乾燥を施した。その後、150℃で20分間の大気加熱を行った。
また、板厚が0.1mmの AZ31温間圧延材を使用して、日本パーカライジング株式会社製のマグボンドプロセスCによってリン酸-マンガン系ノンクロム系化成処理皮膜を施して比較材とした。なお、塗装処理はエポキシ樹脂系塗料(クリアー)を乾燥塗膜厚さが20μmになるように試験片に塗布し、150℃で20分間の焼付けを行った。これらの試験片に対して、黒色度、裸耐食性、塗装密着性、塗装耐食性の評価を行った。
【0033】
黒色化成処理後の黒色度の評価は、実施例1と同様の方法(明度L*比較)で行った。裸耐食性、塗装耐食性の評価にはJIS Z 2371に準じた塩水噴霧試験法を用いた。試験時間は裸耐食性評価では6時間、塗装耐食性評価では100時間とした。評価はJIS Z 2371に準じたレイティングナンバー、RN.によった。
【0034】
塗装密着性は、JIS Z 2371に準じた塩水噴霧試験法を100時間行った後、実施例1と同様のJIS K 5600-5-6に準じた碁盤目テープ法によって評価した。
【0035】
黒色度(明度L*)、裸耐食性、塗装耐食性および塗装密着性の評価結果を表2に示す。AZ31、Z61、AZ80、AZ91の明度L*は20以下となり、皮膜が黒色化していることがわかる。
【0036】
裸耐食性はすべての試験片でRN.9以上となり、室内など穏やかな腐食環境においては十分な耐食性を維持している。また塗装耐食性はすべての試験片でRN.10となり、全く腐食は発生していなかった。このことから、海岸など一般的腐食環境においても問題なく使用できるものと考えられる。さらに、塩水噴霧試験100時間後の塗装密着性も全く剥離は認められず、腐食環境において塗膜と化成処理皮膜の界面に何ら腐食反応が進行していないものと考えられた。
【0037】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】黒色化成皮膜の表面SEM(走査型電子顕微鏡)による観察結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸イオンとフッ化物イオンとを含有することを特徴とするマグネシウム合金用黒色化成処理液。
【請求項2】
リン酸イオン濃度が0.1g/L〜350g/L、フッ化物イオン濃度が0.1g/L〜300g/Lである請求項1記載のマグネシウム合金用黒色化成処理液。
【請求項3】
リン酸イオンとフッ化物イオンとの濃度比率F-/PO43-が0.2〜2である請求項1又は2記載のマグネシウム合金用黒色化成処理液。
【請求項4】
pHが1〜3である請求項1〜3のいずれか1項記載のマグネシウム合金用黒色化成処理液。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の処理液を使用することを特徴とするマグネシウム合金黒色化成処理方法。
【請求項6】
請求項5記載の処理方法により製造されたマグネシウム合金黒色化成処理皮膜。
【請求項7】
請求項6記載の皮膜を有するマグネシウム合金黒色化成処理部材。
【請求項8】
該皮膜の上にさらに塗膜を有する請求項7記載のマグネシウム合金黒色化成処理部材。

【図1】
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【公開番号】特開2010−84203(P2010−84203A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255170(P2008−255170)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000230869)日本金属株式会社 (29)
【Fターム(参考)】