説明

マグネシウム合金製ドア部材

【課題】従来のドア部材より、更に軽量でかつ耐食性、耐熱性に優れたマグネシウム合金製のドア部材を提供することを目的とする。
【解決手段】マグネシウム合金製板材2の少なくとも一部の表面に、ステンレス、鋼、純アルミまたはその合金、純銅またはその合金、純ニッケルまたはその合金、純チタンまたはその合金よりなる群から選ばれる材料からなる被覆用板材1の少なくとも一種を金属冶金的に被覆してなることを特徴とするマグネシウム合金製のドア部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア部材の材質に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や倉庫等でみられる大型のドア部材は、一般的には鋼やアルミを使用したものが多く、ドア部材を支える構造物あるいは支持物には重量に応じた高い強度や開閉に必要な大きな動力を必要としており、潜在的にドア部材の軽量化が求められている。また、電車や航空機、自動車といった輸送機械のドア部材においても、燃料消費を低減させるために、ドア部材の更なる軽量化が強く要求されている。
【0003】
一方、マグネシウム材料は、他の金属材料に比べて軽量でかつ比強度が高いことから、各種構造用途への活用が期待され、様々な分野において本材料の開発が盛んになっている。マグネシウム材料を利用した製品としては、ダイキャスト法による自動車部品、マグネシウム箔や薄板をプレス成形した電子機器関連部品が開発されているが、耐食性または耐熱性が悪いといった大きな欠点があるため、幅広い用途展開はされていない。
【0004】
特許文献1には自動車・電車等の輸送機械のドア・パネル材の発明が記載されている。これは軽量化を目的としたもので、ダイキャスト方法によって製造したマグネシウム合金製のドア・パネルである。このドア・パネルは本発明のドア部材とは軽量化を目的としている点では同じであるが、ドア・パネルの構造および製法が全く異なっている。
特許文献2には、マグネシウム合金を含む軽合金製成形体の発明が記載されている。この軽合金製成形体は耐食性および光沢性の向上を目的としており、金属光沢面の上に、耐食性、耐候性を備えた樹脂系の塗装層を有しており、耐食性を向上させることを目的としている点では本発明と同じであるが、成形体の構造、製法が全く異なっている。
【特許文献1】特許第3351947号公報
【特許文献2】特開2002−52647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のドア部材より、更に軽量でかつ耐食性、耐熱性に優れたマグネシウム合金製のドア部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、ドア部材にマグネシウム合金を用い、その表面に他金属を金属冶金的に被覆することで、耐食性、耐熱性に優れたドア部材になること見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は次に記載する通りの構成を有する。
(1)マグネシウム合金製板材の少なくとも一部の表面に、ステンレス、鋼、純アルミまたはその合金、純銅またはその合金、純ニッケルまたはその合金、純チタンまたはその合金よりなる群から選ばれる材料からなる被覆用板材の少なくとも一種を金属冶金的に被覆してなることを特徴とするマグネシウム合金製のドア部材。
(2)ドア部材の表裏両面に前記被覆用板材の少なくとも一種を金属冶金的に被覆してなることを特徴とする前記(1)記載のマグネシウム合金製のドア部材。
(3)前記被覆用板材が爆発圧着法によって被覆されていることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のマグネシウム合金製のドア部材。
【発明の効果】
【0007】
本発明のマグネシウム合金製のドア部材を用いることにより、ドア部材自体が軽くなり、ドア部材の開閉または移動に必要な人力あるいはその他動力を省力化することができる。またドア部材を維持させるための構造部材を小さくあるいは少なくすることもできる。また表面に他の金属を冶金的に被覆していることで、接合強度が強く、また表面からの入熱に対しても被覆している材料の特性に準じ、マグネシウム合金単体よりも優れた特性になる。また被覆する材料により耐食性も優れたものになる。また、熱処理温度の違いによって様々な色に発色するチタン材のような金属を被覆することで扉に意匠性をもたせることも可能である。また、マグネシウム合金の特性である振動吸収性により、振動、音に対する遮蔽・遮断・低減効果も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明におけるドア部材とは一般家屋や工場・倉庫、輸送機械、設備機器のドア部材のことである。
本発明のドア部材は、マグネシウム合金製板材の少なくとも一部が、ステンレス、鋼、純アルミまたはその合金、純銅またはその合金、純ニッケルまたはその合金、純チタンまたはその合金のいずれかからなる板材の少なくとも一種で金属治金的に被覆されたものである。
【0009】
マグネシウム合金としては、Mg−Al合金、Mg−Mn合金、Mg−Zn合金が挙げられ、例えば、AZ31B、AZ61A、AZ80Aが挙げられる。マグネシウム合金を用いることにより、軽量化が可能であると同時に、ドア部材を維持するための構造部材を小さくまたは少なくすることができる。また、マグネシウム合金の特性である振動吸収性による効果も期待できる。
【0010】
本発明における「板材」とは圧延、押し出し等の製造方法で製造された板状のものである。
被覆する方法としては、接合強度の点から金属治金的な方法を用いる。具体的には、爆発圧着、圧延、拡散接合、溶接、超音波接合、HIP、ロウ付けから選択されるが、特に大きなサイズの均一な接合や、接合強さを考慮した場合、爆発圧着法が最も好ましい。
【0011】
爆発圧着法とは、爆薬を用いた金属接合方法の一つであり、材料同士を高速度で衝突させて、金属を接合させる方法である。爆薬としては、ニトログリセリン、ニトログリコール、ニトロセルロース、PETN(ペンタエリスリトールテトラナイトレート)、TNT(トリニトロトルエン)、シクロトリメチレントリニトラミン、シクロテトラメチレンテトラニトラミン、硝酸アンモニウム、硝酸カリウムといった物質を有する火薬類を挙げることができ、それらを爆発させることで発生する衝撃波あるいはガス膨張力を利用し材料を高速で飛翔させることができる。
【0012】
マグネシウム合金に被覆する板材の厚さは、軽量なマグネシウム合金の特徴を生かすためにも出来るだけ薄いほうが望ましいが、耐食性、耐熱性を考慮して設定する必要がある。具体的には0.1〜10mm、好ましくは0.5〜5mm、更に好ましくは1〜3mmに設定すると良い。マグネシウム合金の板厚は、構造材として必要な強度を有するように設定されるが、被覆する板材の1.5倍以上であることが好ましく、5倍以上であることが更に好ましい。1.5倍未満では軽量化の効果が小さくなり、被覆も困難となる。また、板厚の大きな組み合わせで被覆した後に、圧延により前記板厚の範囲に減厚することも可能である。
【0013】
被覆する板材としては、ステンレス、鋼、純アルミまたはその合金、純銅またはその合金、純ニッケルまたはその合金、純チタンまたはその合金のいずれかからなる板材が挙げられる。
具体的には、ステンレスとしては、SUS304、SUS316、SUS340、SUS430等が挙げられ、純アルミまたはその合金としては、A1050P、A3003P、A5052P等が挙げられる。また、純ニッケルまたはその合金としてはNW2200、NW2201、NW4400等が、純チタンまたはその合金としてはTP270、TP340等が挙げられる。
【0014】
被覆する板材の材料を適宜選択することにより、特性を持たせることができる。例えば、ステンレス、鋼等の板材を被覆することにより、金属光沢もあり、耐食性、耐熱性に優れたドア部材となる。また、熱処理温度の違いによって様々な色に発色するチタン合金の板材を被覆することにより、耐食性とともに意匠性を持たせることも可能である。
アルミ又はその合金を被覆材とすることにより、軽量性を損なわずに耐食性に優れたドア部材とすることができ、銅又はその合金を被覆材とすることにより、耐海水性といった耐食性に優れたドア部材とすることができ、ニッケルまたはその合金を被覆材とすることにより耐熱性・耐食性に優れたドア部材とすることができる。
【0015】
図1に本発明のマグネシウム合金製ドア部材の一例を示す。図1に示すドア部材は、マグネシウム合金2の片面(表面)のみがアルミニウム合金1で被覆されているが、被覆される面は両面(表裏面)等であってもよい。また、板材を用いて金属冶金的に被覆されていない面を、耐食性・耐熱性当の観点から、フッ素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の有機系樹脂の塗装や電気メッキ、無電解メッキ、化成処理、真空メッキ、溶融メッキ、電着、陽極酸化、溶射、肉盛等の金属表面処理により被覆することもできる。
【実施例】
【0016】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は以下の実施例に示されたものに限定されるものではない。
【0017】
[実施例1、比較例1]
厚み10mm、幅1000mm、長さ2000mmのステンレス製(SUS304)ドア部材(比較例1)との比較として、厚み8mm、幅1000mm、長さ2000mmのマグネシウム合金(AZ31B)の両面に厚み1mm、幅1000mm、長さ2000mmのステンレス(SUS304)を爆発圧着法により接合させた(実施例1)。ステンレス製ドア部材は計算重量が約150kgであるのに対し、マグネシウム合金製ドア部材は60kgであり、重量比で半分以下になることが確認できた。またマグネシウム合金製ドア部材は、表面にSUSを接合させているため、金属光沢もあり、耐食性、耐熱性にも優れた性能を有する。
【産業上の利用可能性】
【0018】
建築構造物や輸送機械類あるいは産業用設備機械類等において、マグネシウム合金製のドア部材を用いることにより、ドア部材自体が軽くなり、ドア部材の開閉または移動に必要な人力あるいはその他動力を省力化することができる。またドア部材を維持させるための構造部材を小さくあるいは少なくすることもできる。また表面に他の金属を冶金的に被覆していることで、接合強度が強く、また表面からの入熱に対しても被覆している材料の特性に準じ、マグネシウム合金単体よりも優れた特性になる。また被覆する材料により耐食性も優れたものになる。また、熱処理温度の違いによって様々な色に発色するチタン材のような金属を被覆することで扉に意匠性をもたせることも可能である。また、マグネシウム合金の特性である振動吸収性により、振動、音に対する遮蔽・遮断・低減効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】片面をアルミニウム合金(A3003P)で被覆したマグネシウム合金製ドア部材を示す。
【符号の説明】
【0020】
1 被覆用板材
2 マグネシウム合金製板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム合金製板材の少なくとも一部の表面に、ステンレス、鋼、純アルミまたはその合金、純銅またはその合金、純ニッケルまたはその合金、純チタンまたはその合金よりなる群から選ばれる材料からなる被覆用板材の少なくとも一種を金属冶金的に被覆してなることを特徴とするマグネシウム合金製のドア部材。
【請求項2】
ドア部材の表裏両面に前記被覆用板材の少なくとも一種を金属冶金的に被覆してなることを特徴とする請求項1記載のマグネシウム合金製のドア部材。
【請求項3】
前記被覆用板材が爆発圧着法によって被覆されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマグネシウム合金製のドア部材。

【図1】
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【公開番号】特開2008−31675(P2008−31675A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204274(P2006−204274)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】