説明

マグネシウム回収方法及びマグネシウム回収装置

【課題】環境への負担が少なく、海水からマグネシウムを回収するマグネシウム回収方法及びマグネシウム回収装置を提供する。
【解決手段】海水7を電解し、海水電解により生成されたアノード電解水7aとカソード電解水7bとを分離し、前記アノード電解水にアルカリ材を投入してpH調整し、前記カソード電解水中にマグネシウムを水酸化マグネシウムとして析出させて回収し、pH調整後のアノード電解水と水酸化マグネシウム回収後のカソード電解水とを合流させ、海水と同等のpHとして放流する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水の電気分解により海水中からマグネシウムを回収する方法、及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、比強度の高いマグネシウムは次世代の構造材として注目され、今後需要が増大していくと予想されている。我国ではマグネシウムは殆どが輸入に頼っており、将来共に安定した供給を確保する為には、マグネシウムの輸入以外の調達方法の確立も望まれる。
【0003】
周知の様に、マグネシウムは鉱物として存在すると共に海水にも含まれている。従って、海洋に恵まれる我国に於いて、海水からマグネシウムを回収できれば、マグネシウムの安定供給に大きく寄与する。一方、海水からマグネシウムを大量に回収した場合、海水の組成を変化させる等環境に負荷を掛ける可能性があり、海水からのマグネシウム回収は、環境に負担を掛けることなく行わなければならない。
【0004】
尚、特許文献1には、海水から淡水と塩素ガスと水酸化マグネシウムを得る電解槽が示されており、特許文献2には海洋深層水のpHを電気分解、又はアルカリを添加させてpHを上昇させ、Mg、Ca等の水酸化物を析出させ、沈殿物として回収する方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭51−77586号公報
【特許文献2】特開2007−167786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は斯かる実情に鑑み、環境に負担を掛けることなく、海水からマグネシウムの回収が行えるマグネシウム回収方法及びマグネシウム回収装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、海水を電解し、海水電解により生成されたアノード電解水とカソード電解水とを分離し、前記アノード電解水にアルカリ材を投入してpH調整し、前記カソード電解水中にマグネシウムを水酸化マグネシウムとして析出させて回収し、pH調整後のアノード電解水と水酸化マグネシウム回収後のカソード電解水とを合流させ、海水と同等のpHとして放流するマグネシウム回収方法に係るものである。
【0008】
又本発明は、前記アルカリ材は廃コンクリートである、マグネシウム回収方法に係り、又アノード側電極に溶解性金属である鉄を使用し、海水電解過程で鉄イオンをアノード電解水に溶解させるマグネシウム回収方法に係るものである。
【0009】
又本発明は、アノードとカソードとを有する電解槽と、該電解槽の内部を、前記アノードを含むアノード側領域と前記カソードを含むカソード側領域とに仕切る隔膜と、前記アノード側領域で生成されたアノード電解水を貯溜する第1処理槽と、前記カソード側領域で生成されたカソード電解水を貯溜する第2処理槽と、前記アノード、カソードに電力を供給する電源装置と、前記第1処理槽にアルカリ材を投入するアルカリ材投入装置と、前記第2処理槽に沈殿した水酸化マグネシウムを回収する回収手段とを具備し、前記第1処理槽からの排水と前記第2処理槽からの排水とを合流し、pHが海水のpHと同等として放流する様にしたマグネシウム回収装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記電源装置は、太陽電池、燃料電池、風力発電機、波力発電機、海洋温度差発電装置、太陽熱発電装置の少なくとも1つを有するマグネシウム回収装置に係り、又前記電源装置は、前記カソード側で発生した水素ガスと前記アノード側で発生した酸素ガスを使用する燃料電池を含むマグネシウム回収装置に係り、又前記投入するアルカリ材は、廃コンクリートであるマグネシウム回収装置に係り、更に又前記アノードは、消耗電極としての鉄を含み、前記消耗電極は鉄イオンを溶解するマグネシウム回収装置に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、海水を電解し、海水電解により生成されたアノード電解水とカソード電解水とを分離し、前記アノード電解水にアルカリ材を投入してpH調整し、前記カソード電解水中にマグネシウムを水酸化マグネシウムとして析出させて回収し、pH調整後のアノード電解水と水酸化マグネシウム回収後のカソード電解水とを合流させ、海水と同等のpHとして放流するので、環境に負担を掛けることなく海水からマグネシウムを回収できる。
【0012】
又本発明によれば、前記アルカリ材は廃コンクリートであるので、産業廃棄物の処理を併せて行うことができる。
【0013】
又本発明によれば、アノード側電極に溶解性金属である鉄を使用し、海水電解過程で鉄イオンをアノード電解水に溶解させるので、植物プランクトンの栄養素である鉄イオンが海中に供給され、植物プランクトンの繁殖を促進し、植物プランクトンによる炭酸ガスの固定化が図れる。
【0014】
又本発明によれば、アノードとカソードとを有する電解槽と、該電解槽の内部を、前記アノードを含むアノード側領域と前記カソードを含むカソード側領域とに仕切る隔膜と、前記アノード側領域で生成されたアノード電解水を貯溜する第1処理槽と、前記カソード側領域で生成されたカソード電解水を貯溜する第2処理槽と、前記アノード、カソードに電力を供給する電源装置と、前記第1処理槽にアルカリ材を投入するアルカリ材投入装置と、前記第2処理槽に沈殿した水酸化マグネシウムを回収する回収手段とを具備し、前記第1処理槽からの排水と前記第2処理槽からの排水とを合流し、pHが海水のpHと同等として放流する様にしたので、環境に負担を掛けることなく海水からマグネシウムを回収できる。
【0015】
又本発明によれば、前記電源装置は、太陽電池、燃料電池、風力発電機、波力発電機、海洋温度差発電装置、太陽熱発電装置の少なくとも1つを有するので、環境に負担を掛けることなく、マグネシウムの回収が可能となる。
【0016】
又本発明によれば、前記電源装置は、前記カソード側で発生した水素ガスと前記アノード側で発生した酸素ガスを使用する燃料電池を含むので、海水電解に消費した電力の一部が再び海水電解に使用され、省エネルギ化が図れる。
【0017】
又本発明によれば、前記投入するアルカリ材は、廃コンクリートであるので、産業廃棄物である廃コンクリートの処理を併せて行うことができる。
【0018】
又本発明によれば、前記アノードは、消耗電極としての鉄を含み、前記消耗電極は鉄イオンを溶解するので、植物プランクトンの栄養素である鉄イオンが海中に供給され、植物プランクトンの繁殖を促進し、植物プランクトンによる炭酸ガスの固定化が図れるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例の概念図である。
【図2】本実施例に於けるカソード電流密度とCaCO3 及びMg(OH)2 の析出比率を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例に於ける物質収支を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例に係るマグネシウム回収装置を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0021】
先ず、図1に於いて、本発明の実施例の原理を説明する。
【0022】
図1中、1は電解槽、2は第1処理槽、3は第2処理槽を示している。
【0023】
前記電解槽1は、耐腐食性材料、例えばステンレス鋼製の電解処理容器4を有し、該電解処理容器4は上流端に流入口5、下流端に流出口6を有し、前記流入口5から流入した海水7が前記電解処理容器4の内部を一様に流れて前記流出口6から流出する様になっている。
【0024】
前記海水7の流れを形成する手段としては、種々の手段が採用される。例えば、前記電解処理容器4を水中に没し、海流を利用し、内部を流通させてもよく、或は前記流入口5にスクリュー等を設け、該スクリューをモータで回転する等して水流を形成してもよく、或は、ポンプ等により海水7を取水し、前記流入口5に供給する様にしてもよい。
【0025】
前記電解処理容器4の内部には、海水の流れ方向に沿って隔膜8が設けられ、該隔膜8は前記電解処理容器4の内部を2つに仕切り、前記電解処理容器4内には前記隔膜8によって分離された海水7の流れが形成される様になっている。
【0026】
前記隔膜8は電流を通し、分離された流れが混合しない様な、又は混合することを抑制する材質、構造のものが用いられる。例えば、タイル状の素焼の板を敷き並べたもの、或は合成樹脂製の多孔質シート等が用いられる。
【0027】
前記隔膜8により前記電解処理容器4内部を仕切る態様は、上下に仕切る、左右に仕切る、同心円状に仕切る等種々考えられるが、以下は、前記電解処理容器4内部が前記隔膜8によって上下に仕切られた場合を説明する。
【0028】
前記電解処理容器4の上壁面に沿って+電極(アノード)9を設け、下壁面に沿って−電極(カソード)11を設け、前記アノード9、前記カソード11を電源装置12のそれぞれ+極、−極に接続する。従って、前記隔膜8により前記電解処理容器4内が仕切られることで、前記電解処理容器4内にアノード側領域9aとカソード側領域11aが形成される。
【0029】
前記電源装置12の電力供給源は任意であるが、太陽光発電、風力発電、波力発電、海洋温度差発電、太陽熱発電等自然エネルギを利用した電力供給源、或は排出物が無害である燃料電池であることが好ましい。又、太陽光発電、風力発電、波力発電、海洋温度差発電、太陽熱発電、燃料電池等の2以上を電力供給源とした複合装置が用いられてもよい。更に、発電所から電力の供給が受けられる場合は、夜間の余剰電力を利用する様にしてもよい。
【0030】
前記アノード9としては、チタン等の不溶性金属の網目状或は多孔板のバケット(消耗電極収納容器)に溶解製金属を消耗電極材13として投入したものが用いられる。尚、投入する消耗電極材13として、鉄が好ましい。鉄は廃材として容易に入手し得、溶解した鉄イオンは、植物プランクトンが繁殖する為の栄養素であり、鉄イオンが供給されることで、植物プランクトンが繁殖し、植物プランクトンによる炭酸ガス固定化も期待できる。
【0031】
前記カソード11には、チタンに白金メッキしたもの等が用いられる。又、前記カソード11の近傍、或はカソード11に対向して水素回収装置14が設けられ、該水素回収装置14はカソード11側で発生した水素ガスを回収する。前記アノード9側(アノード側領域9a)を流通した海水(アノード電解水7a)は、前記第1処理槽2に導かれ、前記カソード11側(カソード側領域11a)を流通した海水(カソード電解水7b)は、前記第2処理槽3に導かれる。
【0032】
前記第1処理槽2は、廃コンクリート投入装置15を有しており、該廃コンクリート投入装置15により廃棄物であるコンクリートが前記第1処理槽2内に投入される様になっている。尚、投入する廃コンクリートは、粉砕され表面積が大きくなったものが好ましく、更に、砂、石等の骨材が除去されたものであれば、尚好ましい。
【0033】
前記第2処理槽3には、前記海水7で回収された水素ガスが燃料電池の還元剤として供給される様になっている。又、前記第2処理槽3では、析出したMg(OH)2 を沈殿させ、沈殿したMg(OH)2 を回収する様になっている。前記第1処理槽2から流出するアノード電解水7a、前記第2処理槽3から流出するカソード電解水7bは合流され、pHが調整された後、海中に放流される。
【0034】
以下、本実施例の作用について説明する。
【0035】
前記アノード9、前記カソード11間に電圧を印加し、前記アノード9、前記カソード11間に通電させることで、海水の電気分解が起り、カソード11側で主として下記(1)及び(2)式の反応が起る。
【0036】
2 O+1/2O2 +2e- →2OH- (1)
2H2 O+2e- →2OH- +H2 (2)
【0037】
従って、OH- (水酸イオン)が発生する為、カソード側では海水(以下カソード電解水7bと称す)のpHが上昇し、図2で示す様に、CaCO3 及びMg(OH)2 が生成する。又、カソード11の単位面積当りの通電量をカソード電流密度Dk(A/m2 )とすると、カソード電流密度DkとCaCO3 及びMg(OH)2 の析出比率は、図2に示される様になり、カソード電流密度Dkが高くなると、Mg(OH)2 の析出比が大きくなり、又カソード電流密度Dkが2(A/m2 )を超えたところで、ほぼ100%となる。尚、カソード電流密度Dkが2(A/m2 )迄は、CaCO3 についてはその比率が漸次減少、Mg(OH)2 についてはその比率が漸次増大であるので、カソード電流密度Dkをコントロールすることで、CaCO3 及びMg(OH)2 の析出比率のコントロール、或はCaCO3 及びMg(OH)2 の選択的な析出が可能となる。
【0038】
従って、カソード電流密度Dkを高く設定して電気分解を行うことで、即ち図2によれば、カソード電流密度Dkを2[A/m2 ]以上で海水の電気分解を行うことで、析出されるものの殆どを略Mg(OH)2 とすることができる。
【0039】
前記カソード電解水7bはMg(OH)2 を析出した状態として、前記第2処理槽3に貯溜される。析出したMg(OH)2 は該第2処理槽3で沈殿し、沈殿物は沈殿物回収手段16により回収される。
【0040】
上記海水電解の過程で、前記アノード9側には酸素ガスが発生し、前記カソード11側では水素ガスが発生する。発生した水素ガスは前記水素回収装置14で回収され、前記電源装置12に燃料電池が用いられている場合、燃料電池に還元剤として供給される。
【0041】
次に、前記アノード9側に、前記消耗電極材13として鉄を用いた場合、以下の反応が起り、鉄が溶解する。更に、鉄イオンの加水分解により、水酸化第1鉄が生じると共にH+ が生成するので、アノード9側の海水(以下アノード電解水7aと称す)のpHが低下する。
【0042】
Fe→Fe2++2e- (4)
Fe2++2H2 O→Fe(OH)2 +2H+ (5)
【0043】
前記第1処理槽2に流入するアノード電解水7aは前記2H+ により酸性となっている。前記第1処理槽2に廃コンクリート(Ca(OH)2 )が投入され、下式の通り該廃コンクリートにより酸性海水が中和される。
Ca(OH)2 +2H+ →Ca2++2H2 O (6)
【0044】
尚、アノード9に不溶解性の金属を使用した場合、或は高電流密度で海水の電気分解を行うと、塩素Cl2 が発生し、Cl2 の発生に伴い、HCl、HClOが発生する。HClは強酸性であり、又HClOは生物に有害な物質である為、なるべくHCl、HClOの発生を抑制する様な電流密度で電気分解する。然し、上記した様に、アノード電解水7aには、廃コンクリート(Ca(OH)2 )が投入されるので、
【0045】
Ca(OH)2 +HCl→CaCl2 +H2 O (7)
の反応により中和される。
【0046】
而して、前記第1処理槽2で中和処理されたアノード電解水7aが前記第2処理槽3から放流されるカソード電解水7bと合流され、海中に放流される。尚、前記アノード電解水7aに溶解させるコンクリートの量を制御することで、合流後のpHが8.0程度、即ち海水のpHと同等となる様に調整される。
【0047】
従って、Mg(OH)2 の回収を連続的に行え、而も固定処理過程で廃コンクリートを使用するので、産業廃棄物の処理を並行して行える。更にMg(OH)2 回収後に放流される海水は、自然の海水のpHと同等であるので、環境に負担を掛けることがない。又、電気分解の過程で溶解した鉄イオンは、植物プランクトンを繁殖させるので、炭酸ガスの固定にも寄与する。
【0048】
上記した様に、海水電解の過程で、前記アノード9側には酸素ガスが発生し、前記カソード11側では水素ガスが発生する。前記電源装置12に燃料電池が用いられている場合は、前記酸素ガス及び水素ガスは燃料電池に供給され、発電の燃料とされる。
【0049】
次に、図3を参照して、上記実施例に於ける物質の収支例について説明する。尚、図3中、図1中で示したものと同等のものには同符号を付してある。
【0050】
前記カソード電流密度Dkを変化させることで、電解反応が変化し、前記カソード電流密度Dkを増大させることで、電解反応が促進される。従って、前記カソード電流密度Dkを制御することで、Mg(OH)2 回収処理過程に於ける、前記アノード9側及び前記カソード11側でのpHの制御が可能となる。
【0051】
先ず電解により、カソード電解水7bのpHは10〜11程度とし、海水中のCa2+及びMg2+を全て沈殿させる。この時アノード電解水7aのpHは3〜4程度とする。尚、Mg(OH)2 の回収を効率よく行う為に、カソード電流密度Dkを2[A/m2 ]以上とする。
【0052】
又、前記第2処理槽3で沈殿したMg(OH)2 の回収を行う。前記第2処理槽3から流出するカソード電解水7bのpHは10〜11程度となる。前記第1処理槽2では廃コンクリートが投入され、前記第1処理槽2から流出するアノード電解水7aのpHが4〜5程度となる様に調整する。尚、流出するアノード電解水7aのpHは一例であり、アノード電解水7a、カソード電解水7bを合流させた場合にpHが8.0〜8.2となる様に前記廃コンクリートの投入量を調整する。而して、放流される排水のpHを8.0〜8.2とすることで、海水の物理特性を変化させることなく放流しつつ、Mg(OH)2 の回収が行え、而も環境に負荷を掛けることがない。
【0053】
回収されたMg(OH)2 を精錬することで、Mg地金を生産することができる。
【0054】
尚上記実施例では、アノード電解水7aの中和剤として、廃コンクリートを使用したが、火力発電所で発生した石炭灰等、アルカリ性を有する廃棄物であればよい。
【0055】
上記実施例では、前記電解槽1内に海水を流動させつつ海水電解を行ったが、前記流入口5、前記流出口6にそれぞれ開閉弁を設け、海水電解を前記流入口5、前記流出口6を閉じた状態で行い、電解処理後は前記電解槽1内の海水を入替えるバッチ式としてもよい。
【0056】
図4は、本発明の実施例に係るMg(OH)2 回収装置の概略を示している。
【0057】
尚、図4中、図1中で示したものと同等のものには同符号を付してある。又、図4で示す実施例では、発電源として燃料電池18を示している。
【0058】
前記電解槽1の水素回収装置14側で発生する水素ガスを回収し、前記燃料電池18に供給する水素ガス回収ライン21が設けられると共に前記電解槽1のアノード9側で発生する酸素ガスを回収し、前記燃料電池18に供給する酸素ガス回収ライン22が設けられる。前記水素ガス回収ライン21、前記酸素ガス回収ライン22はそれぞれガス流量調整ブロワ23,24を有しており、前記燃料電池18に供給する酸素ガス、水素ガスの流量を調整する。
【0059】
前記燃料電池18で発電された電力は、前記電源装置12で蓄電され、蓄電した電力は、前記カソード11に於いて所定のカソード電流密度Dkとなる様に、電力の供給を制御する。尚、前記燃料電池18の発電量で不足する電力については、太陽光発電による電力、或は風力発電、或は波力発電による電力、或は発電所からの電力によって補充される。
【0060】
前記電解槽1には海水供給ライン25が接続され、又廃コンクリート槽26(第1処理槽2に相当)、回収槽27(第2処理槽3に相当)が接続される。
【0061】
前記廃コンクリート槽26にはアノード電解水7aである酸性水が供給され、前記廃コンクリート槽26には廃コンクリートが投入され、pHが調整されて排出される。
【0062】
前記回収槽27には、Mg(OH)2 を含むカソード電解水7bであるアルカリ水が供給される。前記回収槽27で沈殿したMg(OH)2 が回収され、該Mg(OH)2 が除去されたカソード電解水7b(アルカリ水)が前記回収槽27より排出される。
【0063】
前記廃コンクリート槽26から排出された酸性水及び前記回収槽27から排出されたアルカリ水は合流された後、回収装置から海洋に排出される。酸性水及びアルカリ水が合流されることで、pH調整され、最終的に回収装置から放流される状態では、海水が持つpHと同等となり、環境に負荷を掛けることはない。
【0064】
尚、図4中、31は海水を前記電解槽1に送給するポンプ、32はカソード電解水7bを前記回収槽27に送給するポンプ、33は前記廃コンクリート槽26から排水する為のポンプ、34は前記回収槽27から排水する為のポンプをそれぞれ示している。
【符号の説明】
【0065】
1 電解槽
2 第1処理槽
3 第2処理槽
4 電解処理容器
5 流入口
7 海水
7a アノード電解水
7b カソード電解水
8 隔膜
9 アノード
9a アノード側領域
11 カソード
11a カソード側領域
12 電源装置
13 消耗電極材
14 水素回収装置
15 廃コンクリート投入装置
16 沈殿物回収手段
18 燃料電池
21 水素ガス回収ライン
22 酸素ガス回収ライン
26 廃コンクリート槽
27 回収槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水を電解し、海水電解により生成されたアノード電解水とカソード電解水とを分離し、前記アノード電解水にアルカリ材を投入してpH調整し、前記カソード電解水中にマグネシウムを水酸化マグネシウムとして析出させて回収し、pH調整後のアノード電解水と水酸化マグネシウム回収後のカソード電解水とを合流させ、海水と同等のpHとして放流することを特徴とするマグネシウム回収方法。
【請求項2】
前記アルカリ材は廃コンクリートである請求項1のマグネシウム回収方法。
【請求項3】
アノード側電極に溶解性金属である鉄を使用し、海水電解過程で鉄イオンをアノード電解水に溶解させる請求項1のマグネシウム回収方法。
【請求項4】
アノードとカソードとを有する電解槽と、該電解槽の内部を、前記アノードを含むアノード側領域と前記カソードを含むカソード側領域とに仕切る隔膜と、前記アノード側領域で生成されたアノード電解水を貯溜する第1処理槽と、前記カソード側領域で生成されたカソード電解水を貯溜する第2処理槽と、前記アノード、カソードに電力を供給する電源装置と、前記第1処理槽にアルカリ材を投入するアルカリ材投入装置と、前記第2処理槽に沈殿した水酸化マグネシウムを回収する回収手段とを具備し、前記第1処理槽からの排水と前記第2処理槽からの排水とを合流し、pHが海水のpHと同等として放流する様にしたことを特徴とするマグネシウム回収装置。
【請求項5】
前記電源装置は、太陽電池、燃料電池、風力発電機、波力発電機、海洋温度差発電装置、太陽熱発電装置の少なくとも1つを有する請求項4のマグネシウム回収装置。
【請求項6】
前記電源装置は、前記カソード側で発生した水素ガスと前記アノード側で発生した酸素ガスを使用する燃料電池を含む請求項4のマグネシウム回収装置。
【請求項7】
前記投入するアルカリ材は、廃コンクリートである請求項4のマグネシウム回収装置。
【請求項8】
前記アノードは、消耗電極としての鉄を含み、前記消耗電極は鉄イオンを溶解する請求項4のマグネシウム回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−57230(P2012−57230A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203353(P2010−203353)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】