説明

マグネシウム複合材およびその製造方法

【課題】 優れた湯回り性を有して電子機器筐体などの薄肉成形に適したマグネシウム複合材、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 マグネシウム合金よりなるマトリックス金属と、当該マトリックス金属中に含まれるシリカバルーンと、を備えるマグネシウム複合材であって、前記シリカバルーンは、10〜100μmの平均粒径を有するとともに、5〜20vol%の濃度範囲で含まれており、前記マグネシウム合金は、アルミニウムを4〜8wt%、亜鉛を1〜6wt%、カルシウムを1〜2wt%の濃度範囲で含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム合金をマトリックス金属として構成されたマグネシウム複合材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコン等のモバイル電子機器の筐体に対しては、高強度であること、CPU等から発生する熱を効率良く発散すること、リサイクル性が良いことなどが要求される。そして、これらの要求に対処すべく、ノートパソコン等のモバイル電子機器には、従来の樹脂筐体から、金属筐体が採用されるようになってきた。電子機器用金属筐体は、ダイカスト法や半溶融射出成形法などにより成形される。
【0003】
一方、ノートパソコン等のモバイル電子機器においては、小型化および軽量化が進んでいるところ、電子機器の小型化および軽量化を達成するためには、要素部品の小型化および軽量化が必要である。特に、総重量の30%以上もの重量を有する場合のある金属筐体の軽量化は重要である。
【0004】
電子機器用金属筐体を構成する材料としては、近年、マグネシウムを主成分とする合金が注目を集めている。マグネシウムは、構造材として実用され得る金属のうち最も比強度が大きいうえに、その放熱性がアルミニウムに匹敵する程に高いためである。
【0005】
しかしながら、現在広く使用されているマグネシウム合金(例えば、AZ91D;アルミニウム:9wt%、亜鉛:1重量%、残部:マグネシウム)は、本来、大型かつ厚肉の自動車部品用途に開発されたものであり、その溶湯の流動性は一般的に低い傾向にある。具体的には、従来のマグネシウム合金は、熱伝導率に優れており、金型内へ射出されると急速に冷却され、その結果、固相の成長などにより溶湯の粘性が上がり、成形途中で溶湯が固化する場合が生じ得る。そして、薄肉で成形を行うと、更にその凝固時間が短くなる。そのため、マグネシウム合金を溶湯に用いた例えばダイカスト成形によって、小型で薄肉の電子機器筐体を成形する際には、マグネシウム溶湯の低流動性に起因して、成形途中での凝固、金型未充填、および鋳造割れなどの不良が発生し、充分な成形性を得ることができない場合がある。
【0006】
例えば特開平9―272945号公報には、従来のマグネシウム合金のこのような不具合を解消することによって、マグネシウム合金の成形性を向上させることを目的とする技術が開示されている。具体的には、アルミニウム合金の組成を、アルミニウム2〜6wt%、カルシウム0.5〜4wt%、Ca/Al比0.8以上とし、当該マグネシウム合金を用いて半溶融射出成形すると、マグネシウム合金であっても、その成形性が向上するとされている。ここで、半溶融射出成形とは、固相と液相が混在した状態の金属材料を用いて射出成形を行う技術をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9―272945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような方法によっても、ノートパソコン筐体などに要求される1mm以下の肉厚を有する製品を成形する場合には、マグネシウム合金の流動性は依然として充分なものでなく、金型未充填、鋳造割れ、および金型への貼り付き等の問題が発生し得る。
【0009】
一方、金型温度を上げることや成形温度を上げることなどにより、マグネシウム合金の見かけの流動性を向上することも考え得るが、これらの方法は、成形装置への負担が大きく、好ましくない。例えば特開平11―77240号公報に開示されているように、金型表面材料に低熱伝導率の部位を設けることによって、溶湯の冷却速度遅らせる手段も、理論上採用し得るが、金型構造が複雑となり、コストアップを招来するという問題がある。
【0010】
また、一般のマグネシウム合金の組成で大きな割合を占めるアルミニウムおよび亜鉛の組成比を増加させて、当該合金の液相線温度と固相線温度とを共に低下させることによって、マグネシウム合金の流動性を向上させることも考え得る。しかしながら、このような構成によると、材料自体は脆化することが確認されており、タッピングなどの後加工や組み立て工程の際に、成形品が破損してしまうおそれが増大し、好ましくない。
【0011】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、以上に述べた問題点を解消ないし軽減することを課題とし、充分な湯回り性を有して電子機器筐体などの薄肉成形に適したマグネシウム複合材、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の側面によると、マグネシウム複合材が提供される。マグネシウム合金よりなるマトリックス金属と、当該マトリックス金属中に含まれるシリカバルーンと、を備えるマグネシウム複合材であって、前記シリカバルーンは、10〜100μmの平均粒径を有するとともに、5〜20vol%の濃度範囲で含まれており、前記マグネシウム合金は、アルミニウムを4〜8wt%、亜鉛を1〜6wt%、カルシウムを1〜2wt%の濃度範囲で含むことを特徴とする。
【0013】
このような構成によると、優れた湯回り性を有して、電子機器筐体などの薄肉成形に適したマグネシウム複合材となる。具体的には、断熱性粒子としてのシリカバルーンが、マトリックス金属としてのマグネシウム合金の中に含まれることにより、ダイカスト成形やその他の鋳造技術において、溶湯として用いられる本発明に係るマグネシウム複合材の蓄熱性が向上する。その結果、当該複合材の、金型内における湯回り性ないし流動長が向上する。したがって、本発明のマグネシウム複合材を用いると、マグネシウム製またはマグネシウム合金製の電子機器筐体などにおいて、良好な薄肉化を達成することが可能となるのである。
【0014】
本発明では、マグネシウム合金は、アルミニウムを4〜9wt%、亜鉛を1〜6wt%、カルシウムを1〜2wt%の濃度範囲で含む。より好ましくは、マグネシウム合金は、マンガンを、耐腐食性の観点より0.17wt%以上の濃度で含み、銅を0.025wt%以下、鉄を0.004wt%以下、Niを0.001wt%以下の濃度に抑えられている。
【0015】
本発明の第2の側面によると、マグネシウム複合材の製造方法が提供される。この方法は、アルミニウムを4〜8wt%、亜鉛を1〜6wt%、カルシウムを1〜2wt%の濃度範囲で含むマグネシウム合金よりなるマトリックス金属を溶融する工程と、真空中または不活性ガス中において、前記溶融されたマトリックス金属に対して10〜100μmの平均粒径を有するシリカバルーンを5〜20vol%の濃度範囲で添加する添加工程と、前記マトリックス金属の固液共存温度領域において、攪拌により、前記シリカバルーンを前記マトリックス金属中に分散させる分散工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
このような構成によると、本発明の第1の側面に係るマグネシウム複合材を製造することができるか、或いは、ダイカスト成形などによりマグネシウム複合材製の電子機器筐体などを作製することができる。したがって、本発明の第2の側面によっても、第1の側面に関して上述したのと同様の効果が奏される。
【0017】
好ましい実施の形態では、シリカバルーンを添加および分散させる工程は、マトリックス金属の固液共存温度領域、即ち、マトリックス金属の温度を低下させることによりマトリックス金属に粘性を付与した状態で、マトリックス金属を攪拌することによって行われる。このような構成によると、粘性を付与されたマトリックス金属が、マトリックス金属中におけるシリカバルーンの自発的な沈降または浮上を抑制することができ、シリカバルーンのマトリックス金属中での分散を担保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】流動長測定に用いたスパイラルフロー金型の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の好ましい実施の形態について具体的に説明する。
【0020】
マグネシウム複合材に含まれるマトリックス金属の作製に際しては、マグネシウム合金の各成分毎にインゴットを用意し、目的とする組成比となるように、これらを溶解炉ないし坩堝に入れて、加熱し、当該合金を完全溶融する。その後、これを冷却し、所望組成のマトリックス金属であるマグネシウム合金が作製される。
【0021】
合金の組成は、最終的に肉厚1mm以下の筐体を作製する場合における溶湯の流動性の向上を図る上では、例えばAZ91Dを基準とすると、アルミニウム比率を増大させるのがよい。一方、成形品に施すゲートカットやタッピングなどの後加工の際に、割れなどの不良発生頻度を低減するという観点からは、アルミニウム濃度は4〜9wt%の範囲であることが望ましい。また、マグネシウム合金に亜鉛を含有させる場合には、亜鉛濃度は、耐食性および成形品強度を確保する観点からは、1〜6wt%の範囲が望ましい。
【0022】
次いで、このようにして得られたマトリックス金属を、溶解炉ないし坩堝内で、真空中、または、アルゴンなどの不活性ガス下での非酸化条件下において、その液相線温度を越える高温にて、完全溶融する。このような非酸化条件下でマトリックス金属を溶融することにより、溶融マトリックス金属表面に酸化膜が形成されるのを抑制することができる。また、マトリックス金属に含まれるマグネシウムが燃焼してしまうのを回避することもできる。
【0023】
次いで、溶解炉温度を、マトリックス金属の液相線温度以下であって固相線温度以上とすることによって、マトリックス金属に対して粘性を付与する。この状態で、断熱性中空粒子を、溶融マトリックス金属に添加する。添加後、マトリックス金属であるマグネシウム合金中において断熱性粒子が均一に分散するのを担保するため、攪拌する。これら一連の工程も、引き続き、非酸化条件下で行う。断熱性中空粒子を添加する前にマトリックス金属に粘性を付与しておくことにより、断熱性中空粒子の比重が小さい場合には当該粒子の過剰な浮上を抑制することができる。
【0024】
断熱性中空粒子は、鋳造時のマグネシウム合金の溶湯温度である例えば600℃以上で溶けないこと、及び、マグネシウムやアルミニウムなどの軽金属の比重より小さい比重を有することの観点からは、シリカバルーンなどが好ましいと考えられる。シリカバルーンは、これらの特性を満たしつつ、マグネシウムやアルミニウムと比較して熱伝導率が小さく、中空構造をとり得るからである。
【0025】
また、断熱性中空粒子の形状は、溶湯の内部流動抵抗の低減および応力集中の緩和の観点より、球状であることが好ましい。また、マトリックス金属にカルシウムを添加することにより、マトリックス金属の主成分であるマグネシウムと断熱性中空粒子との濡れ性が向上し、その結果、最終的に得られるマグネシウム複合材において、著しい強度の低下を回避することができる。良好な濡れ性向上を達成しつつ、金型と成形品の貼り付きを抑制するという観点からは、カルシウム添加量は、0.5〜2.0wt%の範囲であることが望ましい。また、添加されるカルシウムは、複合材に含まれるマグネシウムが燃焼するのを抑制するという効果も有する。
【0026】
断熱性中空粒子のサイズは、肉厚1ミリ以下の筐体を成形する場合には、より小さい方が好ましい。この事実とともに、断熱性中空粒子のマトリックス金属における良好な分散性を考慮すると、断熱性中空粒子の平均粒径は、例えば10〜100μmの範囲であることが好ましい。また、その添加量については、成形品の軽量化を達成しつつ過剰な強度低下を回避したい場合には、5〜20wt%の濃度範囲で添加するのが好ましい。
【0027】
次いで、このようにして得られたマグネシウム複合材を溶湯に用いて、電子機器筐体などの成形品を鋳造する。鋳造方法としては、一般的な金属の鋳造方法である重力鋳造およびダイカスト法、または、半溶融射出成形法などを用いることができる。
【実施例】
【0028】
次に、本発明の実施例について比較例とともに説明する。
【0029】
〔実施例1〕
<マトリックス金属の作製>
マグネシウム、アルミニウム、および亜鉛の各インゴットを用意し、これらを表1に示したような化学成分となるように、700℃の溶解炉(50L)で溶融し、そこへ、アルミニウム箔で包んだカルシウム粉末を添加し、溶融および攪拌した後、冷却した。その結果、マグネシウム複合材に含まれるマトリックス金属としてのマグネシウム合金が作製された。その組成は、マグネシウム92wt%、アルミニウム6wt%、亜鉛1wt%、カルシウム1wt%であった。
【0030】
<マグネシウム複合材の作製>
上述のようにして得られたマグネシウム合金を、真空溶解炉(1L)に入れ、当該真空溶解炉を5×10-5torrの真空状態とした。その後、真空状態の炉空間部にアルゴンガスを入れ、大気圧と同等の不活性ガス雰囲気下とした。次いで、真空溶解炉の炉内温度を700℃まで上昇させ、マグネシウム合金を完全溶融状態とした。次いで、炉内温度を590℃付近まで冷却し、マグネシウム合金が固液共存状態となってその粘性が上昇したところへ、平均粒径75μmのシリカバルーンを添加し、攪拌した。当該シリカバルーンは中空構造を有し、その比重は0.6〜0.9である。その結果、平均粒径75μmの断熱性中空粒子を15vol%の濃度で含むマグネシウム複合材が作製された。マグネシウム複合材の組成は表1に掲げる。
【0031】
<流動長測定>
上述のようにして得られたマグネシウム複合材の流動長を、図1に示すスパイラルフロー金型(フローパスの全長:1500mm、フローパスの幅:10mm、フローパスの厚さ:1.0mm)を用いて測定した。本測定におて、溶湯は、当該スパイラルフロー金型の中心に設けられた注入口2から金型出口3に向けて射出される。溶湯温度は、マトリックス金属である上述のマグネシウム合金の液相線温度より10〜30℃高温の650℃とし、金型温度は250℃、射出速度は2.0mm/secとした。その結果、本実施例のマグネシウム複合材の流動長は、438mmであった。この結果は表1に掲げる。
【0032】
<ダイカスト成形>
溶湯として上述のようにして得られたマグネシウム複合材を用い、金型として300×280×0.7mmの薄板の取れるものを用い、150トンのホットチャンバー型ダイカストマシンによってダイカスト成形を行った。このときの溶湯温度は、マトリックス金属である上述のマグネシウム合金の液相線温度の10〜30℃高温、即ち600〜650℃の範囲とし、金型温度は250℃、射出速度は2.0mm/secとした。その結果、良好な薄肉板を作成することができた。
【0033】
〔実施例2、実施例3〕
シリカバルーン濃度15vol%を、10vol%(実施例2)または20vol%(実施例3)に変えた以外は、実施例1と同様の方法により、マグネシウム複合材を作製した。そして、実施例1と同様の方法により、マグネシウム複合材の流動長を測定した。マグネシウム複合材の組成および流動長測定の結果を表1に掲げる。
【0034】
〔実施例4、実施例5〕
シリカバルーンの平均粒径75μmを、20μm(実施例4)または200μm(実施例5)に変えた以外は、実施例1と同様の方法により、マグネシウム複合材を作製した。そして、実施例1と同様の方法により、マグネシウム複合材の流動長を測定した。マグネシウム複合材の組成および流動長測定の結果を表1に掲げる。
【0035】
〔実施例6、実施例7、実施例8〕
シリカバルーン濃度15vol%を40vol%(実施例6,7,8)に変え、シリカバルーンの平均粒径75μmを、20μm(実施例6)、100μm(実施例7)、または200μm(実施例8)に変えた以外は、実施例1と同様の方法により、マグネシウム複合材を作製した。そして、実施例1と同様の方法により、マグネシウム複合材の流動長を測定した。マグネシウム複合材の組成および流動長測定の結果を表1に掲げる。
【0036】
〔実施例9〕
マグネシウム合金の作製においてCaを添加せず、シリカバルーンの平均粒径75μmを20μmに変えた以外は、実施例1と同様の方法により、マグネシウム複合材を作製した。そして、実施例1と同様の方法により、マグネシウム複合材の流動長を測定した。マグネシウム複合材の組成および流動長測定の結果を表1に掲げる。
【0037】
〔実施例10〕
マグネシウム合金の作製において最終濃度が3wt%となるようにCaを添加し、シリカバルーンの平均粒径75μmを20μmに変えた以外は、実施例1と同様の方法により、マグネシウム複合材を作製した。そして、実施例1と同様の方法により、マグネシウム複合材の流動長を測定した。マグネシウム複合材の組成および流動長測定の結果を表1に掲げる。
【0038】
〔実施例11〕
マグネシウム合金の作製において最終濃度が3wt%となるようにCaを添加した以外は、実施例7と同様の方法により、マグネシウム複合材を作製した。そして、実施例1と同様の方法により、マグネシウム複合材の流動長を測定した。マグネシウム複合材の組成および流動長測定の結果を表1に掲げる。
【0039】
〔実施例12〕
マグネシウム合金の作製において最終濃度が9wt%となるようにAlを添加し、シリカバルーン濃度15vol%を20vol%に変え、シリカバルーンの平均粒径75μmを100μmに変えた以外は、実施例1と同様の方法により、マグネシウム複合材を作製した。そして、実施例1と同様の方法により、マグネシウム複合材の流動長を測定した。マグネシウム複合材の組成および流動長測定の結果を表1に掲げる。
【0040】
〔比較例1〕
Caを添加しない以外は実施例1と同様にしてマグネシウム合金を作製し、当該マグネシウム合金について、シリカバルーンを添加しない状態で、実施例1と同様の方法により流動長を測定した。合金の組成および流動長測定の結果を表1に掲げる。
【0041】
【表1】

【0042】
以下、本発明の構成をそのバリエーションとともに付記として記載する。
【0043】
(付記1) マグネシウムまたはマグネシウム合金よりなるマトリックス金属と、
当該マトリックス金属中に含まれる断熱性粒子と、を備えることを特徴とする、マグネシウム複合材。
(付記2) 前記断熱性粒子は中空構造を有する、付記1に記載のマグネシウム複合材。
(付記3) 前記断熱性粒子は、ガラスまたはセラミック材料からなる、付記1または2に記載のマグネシウム複合材。
(付記4) 前記断熱性粒子は、5〜20vol%の濃度範囲で含まれている、付記1から3のいずれか1つに記載のマグネシウム複合材。
(付記5) 前記断熱性粒子は球形である、付記1から4のいずれか1つに記載のマグネシウム複合材。
(付記6) 前記断熱性粒子は、10〜100μmの平均粒径を有する、付記1から5のいずれか1つに記載のマグネシウム複合材。
(付記7) 前記マグネシウム合金は、アルミニウムを4〜8wt%、亜鉛を1〜6wt%、カルシウムを1〜2wt%の濃度範囲で含む、付記1から6のいずれか1つに記載のマグネシウム複合材。
(付記8) 付記1から7のいずれか1つに記載のマグネシウム複合材を用いて成形したことを特徴とする、電子機器筐体。
(付記9) マグネシウムまたはマグネシウム合金よりなるマトリックス金属を溶融する工程と、
真空中または不活性ガス中において、前記溶融されたマトリックス金属に対して断熱性粒子を添加する工程と、
前記断熱性粒子を前記マトリックス金属中に分散させる工程と、を含むことを特徴とする、マグネシウム複合材の製造方法。
(付記10) 前記断熱性粒子を前記マトリックス金属中に分散させる工程は、前記マトリックス金属の固液共存温度領域において攪拌により行う、付記9に記載のマグネシウム複合材の製造方法。
【0044】
本発明によると、マグネシウムまたはマグネシウム合金よりなるマトリックス金属に対して断熱性粒子を添加することにより、その流動性が向上する。その結果、当該複合材を用いて良好な薄肉電子機器筐体などを成形することが可能となる。また、断熱性粒子として中空構造を有するものを使用する場合には、成形体の軽量化にも資することが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 スパイラルフロー金型
2 注入口
3 金型出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム合金よりなるマトリックス金属と、
当該マトリックス金属中に含まれるシリカバルーンと、を備えるマグネシウム複合材であって、
前記シリカバルーンは、10〜100μmの平均粒径を有するとともに、5〜20vol%の濃度範囲で含まれており、
前記マグネシウム合金は、アルミニウムを4〜8wt%、亜鉛を1〜6wt%、カルシウムを1〜2wt%の濃度範囲で含むことを特徴とする、マグネシウム複合材。
【請求項2】
請求項1に記載のマグネシウム複合材を用いて成形したことを特徴とする、電子機器筐体。
【請求項3】
アルミニウムを4〜8wt%、亜鉛を1〜6wt%、カルシウムを1〜2wt%の濃度範囲で含むマグネシウム合金よりなるマトリックス金属を溶融する工程と、
真空中または不活性ガス中において、前記溶融されたマトリックス金属に対して10〜100μmの平均粒径を有するシリカバルーンを5〜20vol%の濃度範囲で添加する添加工程と、
前記マトリックス金属の固液共存温度領域において、攪拌により、前記シリカバルーンを前記マトリックス金属中に分散させる分散工程と、を含むことを特徴とする、マグネシウム複合材の製造方法。
【請求項4】
前記マトリックス金属をいったん液相線温度を越える温度で完全溶融した後、前記固液共存温度領域として前記分散工程を行う、請求項3に記載のマグネシウム複合材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−87414(P2012−87414A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270205(P2011−270205)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【分割の表示】特願2001−194045(P2001−194045)の分割
【原出願日】平成13年6月27日(2001.6.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)