説明

マグネシウム豊富被覆剤および被覆系

金属の耐食性を向上させるために金属を処理する方法を開示する。前記方法は、マグネシウム粉末および結合剤を含む被覆剤を、金属表面に塗布することを含む。本発明は、マグネシウム粉末およびシラン改質エポキシイソシアネートハイブリッドポリマーまたはプレポリマーを含有する被覆組成物にも関する。本発明者らは、2024 T−3アルミニウム合金において3000時間を超える耐食性(参照により本明細書に組み込まれるASTM D5894−96によってProhesion(商標)暴露によって測定)を、本発明の方法および被覆組成物によって達成し得ることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2003年11月13日に出願された米国仮特許出願第60/519,681号、および2004年4月16日に出願された米国仮特許出願第60/562,883号の優先権を主張し、各仮特許出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、U.S.Air Force Office of Scientific Research Grant No.F49620−99−1−0283の援助を受けてなされた。連邦政府は本発明について特定の権利を有し得る。
【0003】
本発明は一般に、組成物、ならびに金属、特にアルミニウムおよびアルミニウム合金の腐食の防止または抑制におけるその使用法に関する。
【背景技術】
【0004】
多くの金属は、腐食を受けやすい。これに関して、大気腐食は特に関心が持たれている。そのような腐食は、腐食された金属ならびにそれから製造された製品の性能および/外観に影響を及ぼし得る。さらに、ポリマー被覆剤、例えば、塗料、接着剤またはシーラントをその金属に塗布した場合、その下にある金属の腐食が、ポリマー被覆剤と基材金属との付着の損失を生じ得る。ポリマー被覆剤と基材金属との接着性の損失も、金属の腐食を生じ得る。アルミニウムおよびアルミニウム合金は、防食、および基材アルミニウム(またはアルミニウム合金)とその後のポリマー被覆剤との付着の改良を必要とする場合が多い。特にアルミニウム合金は、金属の機械的特性を向上させるために使用される合金元素が耐食性を減少し得るので、腐食を受けやすい。
【0005】
従来から、Cu、Mg、FeおよびMnの金属間化合物から形成された不均質ミクロ構造物を含有する析出グレード硬化(precipitation grade hardened)高強度Al合金は、Al合金腐食の抑制に特に有効なCrIV、クロメートおよびジクロメートを含有する保護被覆系と共に使用されている。アルミニウム基材用のこれらの耐食性航空機被覆系は、一般に、化成被覆層、プライマー層およびトップコートから成る。実際に、クロメート化成被膜(「CCC」)は、印加されるアノード電流によってアノード的にAl表面に付着させることができ、または3価および6価クロム塩溶液(即ち、Alodine(商標))とAl金属との反応によって化学的に発生させることができる。Cr着色と同様に、Al航空機構造物の保護におけるCCC系の広範囲な成功および使用にもかかわらず、クロメートが発ガン性であり、取り扱いコストが高く、最も高い航空機整備コストの原因の1つであることが分かっているので、クロメートの使用は減少しつつある。
【0006】
一般に、腐食過程は、金属を弱めかつ/または美観を損なう作用をする金属表面における酸化を意味する。大部分の金属は酸化物に変換するのに充分に活性であり、金属表面における小さいガルバニ電池の形成に関与する電気化学作用によって腐食が生じることは一般に認識されている。老化航空機の大部分の構造腐食損傷は、機体自体への接合過程に含まれる部品、例えば、リベット、ファスナー、重ね継手、ジョイント、およびスポット溶接から生じる。これらの接合法は全て、金属中の合金元素に影響を与える冶金学的および環境的誘発要因に関連しており、該冶金学的および環境的誘発要因が一旦変化すると、航空機の外面および内面が腐食を受けやすくなる。例えば、ある航空輸送会社の全航空機において、スポット溶接された重ね継手/ダブラに生じるすきま腐食、および上翼外板上のスチールファスナーの周囲に環境的に誘発された腐食が観察され、重大な腐食問題として取り組まれている。
【0007】
分類的に、1)冶金学的、2)機械的、および3)環境的、というアルミニウム合金における腐食過程に関連する3つの一般的な要因が存在する。冶金学的誘発要因は、熱処理、合金元素の化学組成、材料不連続性、例えば空隙の存在、析出物、結晶の粒界/配向、および/または第二相(S相)における銅濃度を包含する。機械的要因は、サイクル依存性疲労および疲労亀裂開始を包含する。さらに、腐食をもたらす環境的要因は、温度、湿分、pH、電解質、存在する塩のタイプ、および暴露の頻度および期間を包含する。
【0008】
軍用アルミニウム航空機構造物における、最も広く認められている腐食過程の要因は以下の要因である:直接的な化学的攻撃(例えば、アグレッシブ燐酸エステル油圧用作動油の漏出)、ガルバニック腐食(例えば、種々の電気化学的電位の金属が、腐食性媒体中で接触している場合)、すきま腐食(例えば、腐食性液体が成分中または成分間の隙間に到達し得る場合)、孔食(例えば、深く狭い空洞の形成を生じる局部的攻撃)、および応力腐食(例えば、引張り応力または臨界環境条件が、結晶粒界において脱成分腐食を生じ、その結果、負極析出領域が形成される場合)。全般的に言えば、全てのこれら腐食タイプの中で、粒子部位における孔食による材料薄肉化(material thinning)が、Al 2024 T−3機体表面材料に悪影響を及ぼす最も基本的な腐食メカニズムである。
【0009】
一般に、Al 2024 T−3は、機体外部、翼外板および操縦装置面に使用され、それらにおいて、孔食に有利な環境条件に暴露された場合に、暴露された列理構造中に孔が形成されるのが観察される。Al 2024 T−3における孔食は、正極粒子(Al、Cu、FeおよびMn)が合金マトリックス中で溶解し、その間に負極粒子(AlおよびMg)も溶解して、粒間腐食が生じた場合に起こる。Al 2024 T−3において、正極粒子の約3倍の負極粒子が存在すると推定され、従って、それは孔食によって誘発される粒子間腐食を受けやすい。浅い孔食または疲労および亀裂に関連した損傷による機体腐食損傷の問題を解決しなければ、2機のComet航空機が高高度飛行に失敗した1950年代中頃の事故、および1988年のAloha Airlines事故のような悲劇的な結果を招き得る。
【0010】
前記のように、金属の耐食性を向上させる先行技術法は、表面を不活性化するためにクロメート化成被膜の使用を広く採用している。しかし、使用されるクロメートは高毒性、発ガン性であり、かつ環境的に望ましくないので、そのようなクロメート処理は望ましくない。リン酸化成被膜も使用されているが、一般に、クロメートと共に使用しなければ、与える防食は実質的により少なくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
最近、腐食抑制および付着促進処理においてクロメートの使用を排除する種々の方法が提案されている。しかし、提案されている方法の多くは、効果がないか、または時間を要しエネルギー効率が悪い多段階工程を必要とすることが分かった。従って、金属、特にアルミニウムおよびアルミニウム合金の、簡単で、低コストかつ有効な防食法が現在も必要とされている。本発明は、少なくとも部分的に、この必要を満たすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、金属の耐食性を向上させるための金属の処理方法に関する。該方法は、マグネシウム粉末および結合剤を含む被覆剤を、金属表面に塗布することを含む。
【0013】
本発明は、マグネシウム粉末およびシラン改質エポキシイソシアネートハイブリッドポリマーまたはプレポリマーを含有する被覆組成物にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、金属の耐食性を向上させるための金属処理方法に関する。該方法は、金属表面に、マグネシウム粉末および結合剤を含む被覆剤を塗布することを含む。
【0015】
アルミニウムおよびアルミニウム合金のような種々の金属を、本発明の方法によって保護することができる。例えば、本発明の方法を使用して、銅(これは、銅を含有する金属間化合物から形成された不均質ミクロ構造物を含むことを意味する)および1つまたはそれ以上の他の金属、例えば、Mg、FeおよびMnを含有するアルミニウム合金を処理することができる。例えば、本発明の方法を使用して、飛行機および他の航空機に一般に使用されている銅含有アルミニウム合金、例えば、Al 2024 T−3およびAl 7075 T−6を処理することができる。本発明の方法を使用して保護することができる他の金属は、鉄および鉄合金(例えば鋼)、銅および銅合金(例えば黄銅および青銅)、錫および錫合金、マグネシウムより低い反応性の金属または金属合金、アルミニウムより低い反応性の金属または金属合金、および/またはAl 2024 T−3および/またはAl 7075 T−6より低い反応性の金属または金属合金を包含する。
【0016】
保護される金属は、多くの種々の金属部品から形成された構造物の一部であってよいことが理解される。多くのそのような構造物は、互いに物理的接触している種々の金属(または合金)から形成された部品を含有する。種々の金属が物理的に接合している箇所は、金属の接触によってガルバニック腐食が増加する箇所である。大部分の他の金属の活性と比較した場合に、本発明の方法に使用されるマグネシウムの高い活性は、1つの部品の耐食性を向上させるが他の部品の腐食を促進するというリスクを伴わずに、互いに接触した種々の金属の2つまたはそれ以上の部品(例えば、鋼部品と結合したアルミニウム部品)から形成された基材に本発明の方法を使用することを可能にする。互いに接触した2つまたはそれ以上の金属を含有するそのような構造物の例として、以下のような部品を有する構造物が挙げられる:第一金属から製造された部品(例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の薄板のような金属板);および、例えば、金属板または他の部品を基材(例えば、プラスチック製、木製、金属製またはその他の下部構造物;もう1つの金属板等)に固定するためにファスナーを使用する場合のような、第一金属と異なる第二金属から製造された1つまたはそれ以上のファスナー(例えば、リベット、ボルト、クギ、コッタピンまたは他のピン、飾りびょう等)。例えば、1つの例示的実施形態において、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の薄板を、鋼、銅、銅合金、またはアルミニウムもしくはアルミニウム合金以外の他の金属もしくは金属合金から製造されたファスナーで固定することができる。部品とファスナーとの物理的接触箇所は、ガルバニック腐食が増加する箇所である。多くの場合、そのような増加ガルバニック腐食は、例えば非導電材料(例えば、プラスチック、ゴム等)を使用することによって、固定される金属板または他の部品からファスナーを物理的に分離することによって減少される。本発明の方法を使用して、薄板およびファスナーの両方の面に被覆剤を塗布する(例えば、薄板の表面に塗布された被覆剤が、ファスナーの表面に塗布された被膜剤と一体になって形成されるように塗布する)ことによって、そのような増加ガルバニック腐食をさらに減少させることができ、場合によっては、金属板からのファスナーの物理的分離(例えば、非導電材料の使用による)を必要としないほど充分に減少させることができる。
【0017】
本明細書に使用される「金属の耐食性を向上させる」という語句は、広く理解されるものとし、当業者に既知の任意の好適な定性的または定量的方法によって確認できる。例えば、ASTM D5894−96(参照により本明細書に組み込まれる)に準拠したProhesion(商標)暴露によって、金属の耐食性を測定することができる。金属の耐食性のあらゆる増加を、金属の耐食性を「向上させる」ものとみなす。耐食性の増加は、例えば、本発明の方法によって被覆した試料を、非被覆試験試料またはトップコートのみで被覆した試験試料と目視で比較することによって確認することができる。前記のように、耐食性のレベルは、膨れ、剥離、カーリング、泡、または被覆破損もしくは層剥離の他の徴候の目視によるか、または孔食および金属腐食の他の徴候の目視によって、定量的に確認することができる。そのような目視は、単一の時点で行うことができ(例えば、約1800時間、約2000時間、約2500時間、約3000時間、約3500時間、約4000時間、約4500時間、約5000時間等にわたるASTM D5894−96に準拠したProhesion(商標)暴露後)、またはある期間にわたって行うこともできる。
【0018】
前記のように、本発明の方法は、マグネシウム粉末を含み、クロムを実質的に含有しない被覆剤を、金属表面に適用することによって行われる。
【0019】
本明細書において使用される「マグネシウム粉末」は、マグネシウム金属および/またはその酸化物を含有するミクロン(マイクロメートル)サイズの粒子(例えば、約1〜1000ミクロン(μm)、例えば約10〜100ミクロン(μm)等の直径を有する粒子)の集合を意味する。
【0020】
マグネシウム金属および/またはその酸化物を含有する粒子は、1つまたはそれ以上の他の金属または他の金属の酸化物をさらに含有することができる。そのような例としては、マグネシウム粉末が、マグネシウム合金(例えば、(マグネシウムに加えて)カルシウム、マンガン、リチウム、炭素、亜鉛、カリウム、アルミニウムおよび/または希土類金属(例えば、セリウム)を含有するマグネシウム合金;アルミニウムより反応性のマグネシウム合金;Al 2024 T−3より反応性のマグネシウム合金;および/またはAl 7075 T−6より反応性のマグネシウム合金)のミクロン(マイクロメートル)サイズ粒子の集合であるような場合が挙げられる。例えば、好適なマグネシウム合金としては、(i)カルシウム、リチウム、炭素、亜鉛、カリウム、アルミニウムおよび/または希土類金属(例えば、セリウム)が存在するか存在しない、マグネシウムおよびマンガンを含有する合金;(ii)マグネシウム、および約6質量%までの、カルシウム、マンガン、リチウム、炭素、亜鉛、カリウム、アルミニウムおよび/または希土類金属(例えばセリウム)を含有する合金;および/またはマグネシウムおよび約6質量%までのマンガンを含有するマグネシウム合金を含む。マグネシウム金属を含有する粒子とマグネシウム合金を含有する粒子の混合物も使用することができ、また、本明細書において使用される「マグネシウム粉末」によって包含されるものとする。本明細書において使用される「マグネシウム粉末」は、第一マグネシウム合金を含有する粒子と、第二マグネシウム合金を含有する粒子との混合物も意味するものとする。例えば、マグネシウム粉末を構成する粒子は、マグネシウム金属コアまたはマグネシウム合金コア、およびコア表面上のマグネシウム酸化物の被膜を有することができる。
【0021】
これに関して、本明細書における「直径」との言及は、マグネシウム粉末を構成する粒子が必ずしも球状であることを意味するものではないことに注意すべきである:粒子は、球状、楕円状、立方体状、棒状、円盤状、角柱状等、およびそれらの組合せであることができる。粒子が球状でない場合、「直径」は、粒子の容積に等しい容積を有する仮想上の球の直径を意味するものとする。従って、本明細書において使用される「マグネシウム粉末」は、マグネシウムフレークを包含するものとする。本明細書において使用される「マグネシウムフレーク」は、マグネシウム粒子の二次元的形状(即ち、2つの大きい寸法および1つの小さい寸法を有する形状)を意味するものとする。
【0022】
マグネシウム粉末に含有される粒子は、実質的に均一な粒度であってもよく、そうでなくてもよい。例えば、マグネシウム粉末は、それぞれ異なる平均粒径分布を有する2つまたはそれ以上のマグネシウム粒子粉末の混合物を含有することができ、そのような例において、マグネシウム粉末が第一マグネシウム粒子粉末および第二マグネシウム粒子粉末を含有し、第一マグネシウム粒子粉末および第二マグネシウム粒子粉末が実質的に異なる平均粒径分布を有する。これに関して使用される、2つの平均粒径分布XおよびYは、X:Yの比率またはY:Xの比率が、約1.5より大、例えば、約1.6より大、約1.7より大、約1.6より大、約1.8より大、約1.9より大、約2より大、約1.1〜約4、約1.5〜約3、約2〜約2.5、約2.1〜約2.5、および/または約2.2〜約2.4である場合に、「実質的に異なる」とみなされる。それに加えて、またはそれに代わって、第一マグネシウム粒子粉末および第二マグネシウム粒子粉末を、混合物のバルク密度が第一マグネシウム粒子粉末のバルク密度より大きくなるように、かつ、混合物のバルク密度が第二マグネシウム粒子粉末のバルク密度より大きくなるように、選択することができ、そのような例としては、混合物のバルク密度が第一マグネシウム粒子粉末のバルク密度より少なくとも約2%大きく(例えば、少なくとも約5%大きい、少なくとも約8%大きい等)、かつ、混合物のバルク密度が第二マグネシウム粒子粉末のバルク密度より少なくとも約2%大きい(例えば、少なくとも約5%大きい、少なくとも約8%大きい等)ような場合が挙げられる。
【0023】
他の例として、本発明の実施において使用されるマグネシウム粉末は、平均粒径分布約25μm〜約35μmを有する第一マグネシウム粒子粉末(例えば、第一マグネシウム粒子粉末が平均粒径分布約27μm〜約33μmを有し、かつ/または第一マグネシウム粒子粉末が平均粒径分布約30μmを有する)と、平均粒径分布約65μm〜約75μmを有する第二マグネシウム粒子粉末(例えば、第二マグネシウム粒子粉末が平均粒径分布約67μm〜約73μmを有し、かつ/または第二マグネシウム粒子粉末が平均粒径分布約70μmを有する)との混合物を含有し得る。
【0024】
さらに他の例として、本発明の実施において使用されるマグネシウム粉末は、平均粒径分布約25μm〜約35μmを有する第一マグネシウム粒子粉末と、平均粒径分布約65μm〜約75μmを有する第二マグネシウム粒子粉末との混合物を含有することができ、第一マグネシウム粒子粉末/第二マグネシウム粒子粉末の容積比は約40:60〜約60:40であり、例えば、第一マグネシウム粒子粉末/第二マグネシウム粒子粉末の容積比は約45:55〜約55:45であり、例えば、第一マグネシウム粒子粉末/第二マグネシウム粒子粉末の容積比は約50:50〜約55:45であり、かつ/または第一マグネシウム粒子粉末/第二マグネシウム粒子粉末の容積比は約58:42である。
【0025】
さらに他の例として、本発明の実施において使用されるマグネシウム粉末は、平均粒径分布約30μmを有する第一マグネシウム粒子粉末と、平均粒径分布約70μmを有する第二マグネシウム粒子粉末との混合物を含有することができ、第一マグネシウム粒子粉末/第二マグネシウム粒子粉末の容積比は約40:60〜約60:40であり、例えば、第一マグネシウム粒子粉末/第二マグネシウム粒子粉末の容積比は約45:55〜約55:45であり、例えば、第一マグネシウム粒子粉末/第二マグネシウム粒子粉末の容積比は約50:50〜約55:45であり、かつ/または第一マグネシウム粒子粉末/第二マグネシウム粒子粉末の容積比は約58:42である。
【0026】
前記のように、本発明の方法は、(i)前記マグネシウム粉末、および(ii)結合剤、を含有する被覆剤を使用することによって行われる。被覆剤は、1つまたはそれ以上の他の物質、例えば、他の金属粒子、溶媒等を含有し得る。または、被覆剤は、そのような1つまたはそれ以上の他の物質を含有しなくてよい。例えば、被覆剤は、クロムを実質的に含有しなくてよい。本明細書において使用されるように、被覆剤は、(被覆剤中のクロム金属またはイオン)/(被覆剤中のマグネシウム金属またはイオン)の重量比が20%未満、例えば、約18%未満、約15%未満、約12%未満、約10%未満、約5%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、および/または約0である場合に、「クロムを実質的に含有しない」とみなされる。それに加えて、またはそれに代わって、付加クロムを含有しないように、被覆剤を製剤することができる。
【0027】
前記のように、被覆剤は、さらに(即ち、マグネシウム粉末の他に)、結合剤も含有する。
【0028】
結合剤は、任意の好適な高分子材料(例えば、ポリマーまたはコポリマー)、または重合もしくは共重合の際にポリマーまたはコポリマーを形成するプレポリマー(例えば、モノマーまたはオリゴマー)またはプレポリマーの組合せであってよい。例えば、結合剤は、少なくとも2種類のメカニズム下に架橋および網目形成に参加することができる少なくとも2種類の反応基を有するポリマー主鎖を含有する、ハイブリッドポリマーマトリックスまたは複数のハイブリッドポリマーマトリックスまたは他のポリマー複合材料またはポリマーアロイを含有することができ;かつ/または、結合剤は、重合または共重合の際に、前記のハイブリッドポリマーマトリックス、複数のハイブリッドポリマーマトリックス、または他のポリマー複合材料またはポリマーアロイを形成する、プレポリマーまたはプレポリマー組合せを含有することができる。
【0029】
例えば、本発明の方法の1つの実施形態において、結合剤は、ポリイソシアネートプレポリマーおよびエポキシプレポリマーを含有する。
【0030】
好適なポリイソシアネートプレポリマーは、例えば、脂肪族ポリイソシアネートプレポリマー、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートホモポリマー(「HMDI」)トリマー、および芳香族ポリイソシアネートプレポリマー、例えば、4,4’−メチレンジフェニルイソシアネート(「MDI」)プレポリマーを包含する。2つまたはそれ以上の脂肪族ポリイソシアネートプレポリマーの組合せ、2つまたはそれ以上の芳香族ポリイソシアネートプレポリマーの組合せ、および/または1つまたはそれ以上の脂肪族ポリイソシアネートプレポリマーと1つまたはそれ以上の芳香族ポリイソシアネートプレポリマーとの組合せも使用することができる。
【0031】
好適なエポキシプレポリマーは、例えば、一般的な任意のエポキシ樹脂、例えば、少なくとも1個の多官能エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂(即ち、1分子につき2個またはそれ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂)である。そのようなエポキシ樹脂の例として、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン(またはビスフェノールF、例えば、Nippon Kayaku,Japanによって市販されているRE−404−SまたはRE−410−S)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン(またはビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンおよびトリス(4−ヒドロキシフェニル)メタンのポリグリシジルエーテル;前記ジフェノールの遷移金属錯体塩素化および臭素化生成物のポリグリシジルエーテル;ノボラックのポリグリシジルエーテル;ジハロアルカンまたはジハロゲンジアルキルエーテルで芳香族ヒドロカルボン酸の塩をエステル化することによって得られるジフェノールのエーテルをエステル化することによって得られる、ジフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノールと少なくとも2個のハロゲン原子を有する長鎖ハロゲンパラフィンとの縮合によって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル;N,N’−ジグリシジルアニリン;N,N’−ジメチル−N,N’−ジグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N,N’−ジグリシジル−4−アミノフェニルグリシジルエーテル;N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−プロピレンビス−4−アミノベンゾエート;フェノールノボラックエポキシ樹脂;クレゾールノボラックエポキシ樹脂;およびそれらの組合せが挙げられる。市販エポキシ樹脂の中で、本発明に使用するのに好適なものは、以下の商品名で市販されているフェノール化合物のポリグリシジル誘導体である:EPON 828、EPON 1001、EPON 1009およびEPON 1031(Shell Chemical Co.);DER 311、DER 332、DER 334およびDER 542(Dow Chemical Co.);GY285(Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,N.Y.);およびBREN−S(Nippon Kayaku,Japan)。前記のエポキシプレポリマーおよび他のエポキシプレポリマーの組合せも使用できる。一官能価エポキシ樹脂を、例えば反応性希釈剤または架橋密度調節剤として、使用することもできる。
【0032】
本発明の方法は、結合剤を架橋剤に接触させることも含む。好適な架橋剤として、シラン化テトラヒドロキノキサリノール、例えば、7−フェニル−1−[4−(トリアルキルシリル)−ブチル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−6−オールおよび他の7−フェニル−1−[4−(トリアルキルシリル)−アルキル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−6−オールが挙げられる。本明細書において使用される7−フェニル−1−[4−(トリアルキルシリル)−ブチル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−6−オールは、下記の式Iで示される化合物を包含するものとする:
【0033】
【化1】

【0034】
[式中、各Rは、同じかまたは異なり、アルコキシ基を表す]。これに関して使用される「アルコキシ」は、式−OR’で示される基を意味し、ここでR’は、置換または非置換アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、または他のC1〜C6アルキルもしくは他の低級アルキル)、または置換もしくは非置換アリール基である。本明細書において使用される7−フェニル−1−[4−(トリアルキルシリル)−アルキル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−6−オールは、下記の式IIで示される化合物を包含するものとする:
【0035】
【化2】

【0036】
[式中、各Rは、式Iに関して定義した通りであり、R’’は、プロピレン部分(例えば、−CH2CH2CH2−)、ブチレン部分(例えば、−CH2CH2CH2CH2−)、ペンチレン部分(例えば、−CH2CH2CH2CH2CH2−)、または他のC1〜C6アルキレンもしくは他の低級アルキレン含有架橋部分である]。
【0037】
結合剤を架橋剤に接触させる工程は、例えば、被覆剤を金属表面に塗布する工程の前に、またはそれと同時に、行うことができる。例えば、架橋剤を、被覆配合物中で結合剤と合わすことができ、被覆配合物(架橋剤、マグネシウム粉末、結合剤等を含有)を一段階で塗布することができる。または、被覆配合物(マグネシウム粉末、結合剤等を含有)を塗布する前に、架橋剤を金属表面に塗布することもできる。または、被覆配合物を塗布する前に架橋剤を金属表面に塗布することができ、被覆配合物は付加的架橋剤を含有することができる(マグネシウム粉末、結合剤等に含有するのに加えて)。
【0038】
シラン化テトラヒドロキノキサリノール架橋剤または他の架橋剤を使用するか否かにかかわらず、本発明の方法は、金属表面に被覆剤を塗布する前記工程前に、金属表面をアミン含有オルガノシランと接触させる工程をさらに含むことができる。これに関して、種々のアミン含有オルガノシランを使用することができ、その例は、式H2N−Ra−NH−Rb−S(ORc3のアミン含有オルガノシランであり、式中、RaおよびRbはそれぞれ独立に、メチレン成分(例えば、−CH2−)、エチレン成分(例えば、−CH2CH2−)、プロピレン部分(例えば、−CH2CH2CH2−)、ブチレン部分(例えば、−CH2CH2CH2CH2−)、ペンチレン部分(例えば、−CH2CH2CH2CH2CH2−)、または他のC1〜C6アルキレンもしくは他の低級アルキレン−含有架橋部分を表し;Rcは、同じかまたは異なり、アルコキシ基を表す。例えば、好適なアミン含有オルガノシランは、(N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、(N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、(N−β−(アミノエチル)−γ−アミノブチルトリメトキシシラン、および(N−β−(アミノエチル)−γ−アミノブチルトリエトキシシランを包含する。
【0039】
アミン含有オルガノシランを使用する場合、金属表面をアミン含有オルガノシランと接触させた後、かつ、被覆配合物(マグネシウム粉末、結合剤等を含有)を金属表面に塗布する工程の前に、金属表面を、MDIのポリイソシアネートのようなポリイソシアネートプレポリマーとも接触させることができる。
【0040】
本発明の方法において共に使用した場合、アミン含有オルガノシラン、ポリイソシアネートプレポリマー、エポキシプレポリマー、およびシラン化テトラヒドロキノキサリノール架橋剤は、金属表面に結合したシラン改質エポキシイソシアネートハイブリッド結合剤を形成すると考えられる。例えば、図1Aに示すように、アミン含有オルガノシランの初期塗布は、表面シラン化アミノ化層を生じ得る。次に、図1Bに示すように、この層をポリイソシアネートプレポリマー、例えばHMDIおよびMDIと反応させ;かつ、図1Cに示すように、さらなる重合が表面層から起きてバルクに伸長すると推測される。特に、イソシアネートの加水分解(例えば、大気水分または他の周囲水分による)は、カルバミン酸を形成して(水でのイソシアネートのホフマン転位における中間体であるアミンおよび二酸化炭素の両方を形成する)、反応性/再アミノ化層、および水素結合平行多層を有する共有構造を生じることができる。表面から伸長するバルク反応は、(i)結合剤配合物中のポリイソシアネートおよびアミノ化表面(例えば、先に記載し、図1Cに示す)の間、ならびに(ii)ポリイソシアネートおよびシラン化テトラヒドロキノキサリノール架橋剤(例えば、図1Dに示す)(これは、さらなる加水分解時に、ポリ尿素およびポリシロキサンの両方の相互侵入網目(「IPN」)構造を形成すると推測される)の間で起こる。このように、例えば、シラン改質エポキシイソシアネートハイブリッド結合剤物質を、ポリ尿素結合、ポリウレタン結合(ポリイソシアネートプレポリマーより)、エポキシアミン結合およびオルガノシラン結合から成る高分子材料から形成し得る。
【0041】
先の記載は有機結合剤に焦点を当てているが、無機結合剤も使用することができ、本明細書において使用される「結合剤」は、有機結合剤、無機結合剤およびそれらの組合せを包含するものとする。
【0042】
本発明の実施において使用できる好適な無機結合剤は、以下に記載されている結合剤を包含する:Klein,「Inorganic Zinc−rich」,in L.Smith ed.,Generic Coating Types:An Introduction to Industrial Maintenance Coating Materials,Pittsburgh,Pennsylvania:Technology Publication Company(1996)(これは、参照により本明細書に組み込まれる)。例えば、改質SiO2構造を有する無機結合剤(例えば、大気水分への暴露時に加水分解するシリケートまたはシランから生成)を、無機結合剤として使用することができる。
【0043】
本発明の実施において使用し得る他の結合剤は、導電結合剤を包含する。例えば、そのような導電結合剤は、固有導電ポリマー、例えば、ドープポリアニリンまたはドープポリピロールから製造できる。他のそのような導電結合剤は、カーボンブラックのような極めて小さいサイズの導電性顔料でドープされた有機ポリマーまたは他の高分子材料を包含する。さらに他のそのような導電結合剤は、顔料形態の固有導電ポリマーでドープされた有機ポリマーまたは他の高分子材料を包含する。導電結合剤を含有するマグネシウム豊富被覆製剤は、例えば、導電性結合剤によってマグネシウムへの電気結合度を(例えば、Mgの体積分率約30〜50%から約90〜100%へ)増加させることによって、そのような被覆剤の有効寿命を延ばすことができると考えられる。
【0044】
前記のように、本発明の方法は、前記の被覆剤(即ち、架橋剤、マグネシウム粉末、結合剤等を含有する被覆製剤)を、耐食性を増加すべき金属の表面に塗布することによって行われる。
【0045】
被覆剤は、好適な溶媒または溶媒組合せ(例えば、プロピレンカーボネート、エチル−3−エトキシプロピオネート(「EEP」)およびそれらの組合せ)における、懸濁液、分散液または溶液の形態で適用できる。適用を、例えば、吹き付け(例えば、エアレススプレー、または空気を使用した吹き付け)、はけ塗、ロール塗、流し塗、浸漬等の任意の好適な方法によって行い、好適な膜厚、例えば、約10ミクロン(μm)〜約100ミクロン(μm)、約30ミクロン(μm)〜約80ミクロン(μm)、約40ミクロン(μm)〜約60ミクロン(μm)、および/または約50ミクロン(μm)を得ることができる。
【0046】
前記のように、被覆剤は、金属表面に直接的に塗布することもでき、または金属表面に間接的に塗布することもできる。
【0047】
被覆剤を金属表面に間接的に塗布する1つの例において、被覆剤の塗布前に、金属表面に、アミン含有オルガノシランを先ず接触させることができる。アミン含有オルガノシランを使用する場合、アミン含有オルガノシランと金属表面との接触は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Walker,「Organo Silanes as Adhesion Promoters for Organic Coatings」,Journal of Coatings Technology,52(670):49−61(1980)に記載のような任意の好適な方法、例えば、吹き付け(例えば、エアレスまたはその他の方法)、はけ塗、ロール塗、流し塗、浸漬等によって行うことができる。アミン含有オルガノシランは、水およびアセトンを含有する溶媒のような適切な溶媒中の、アミン含有オルガノシランの1〜4質量%溶液の形態で適用できる。例えば、1つの好適なアミン含有オルガノシラン溶液は、水80質量%、アセトン18質量%、およびSilquest(商標)A−1120シラン(N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)2質量%を含有する。アミン含有オルガノシラン溶液を使用する場合、該溶液を金属表面に接触させて、好適な厚さ、例えば約0.2ミル〜約2ミル湿潤厚さの皮膜を形成することができ、さらに被覆する前に、皮膜を定着させることができる(例えば、約5分〜約2時間;約15分〜約1時間;および/または約30分間)。
【0048】
アミン含有オルガノシランでそのように処理した金属表面は、被覆配合物(マグネシウム粉末、結合剤等を含有)の塗布前に、MDIのポリイソシアネートのようなポリイソシアネートプレポリマーと接触させることができる。ポリイソシアネートプレポリマーを使用する場合、ポリイソシアネートプレポリマーと、アミン含有オルガノシランで処理した金属表面との接触は、例えば、吹き付け(例えば、エアレスまたはその他の方法)、はけ塗、ロール塗、流し塗、浸漬等のような任意の好適な方法を使用して行うことができる。ポリイソシアネートプレポリマーは、芳香族炭化水素溶媒(例えばキシレン)のような適切な溶媒中の、ポリイソシアネートプレポリマーの2〜10質量%溶液の形態で適用できる。例えば、1つの好適なポリイソシアネートプレポリマー溶液は、キシレン95質量%、およびDesmodur(商標)E23−A(MDIのポリイソシアネート)5質量%を含有する。ポリイソシアネートプレポリマー溶液を使用する場合、該溶液を、アミン含有オルガノシランで処理した金属表面に接触させて、好適な厚さ[例えば、約0.2ミル〜約4ミル湿潤厚さ(約5μm〜約100μm湿潤厚さ)、約0.5ミル〜約2ミル湿潤厚さ(約12.5μm〜約50μm)、および/または約1ミル厚さ(約25μm厚さ)]の皮膜を形成することができ、例えば前記のような被覆剤(即ち、架橋剤、マグネシウム粉末、結合剤等を含有する被覆配合物)の塗布前に、皮膜を定着させることができる(例えば、約5分〜約2時間;約15分〜約1時間;および/または約30分間)。
【0049】
例えば前記のように、金属表面に直接的または間接的に一旦適用したら、被覆剤(即ち、架橋剤、マグネシウム粉末、結合剤等を含有する被覆配合物)を、例えば、約1週間〜約1ヶ月間、例えば約2週間、約室温〜約50℃、例えば約30℃〜約40℃および/または約35℃で硬化させることができる。
【0050】
被膜は、任意の適合性トップコート配合物、例えばExtended Lifetime(商標)トップコートを使用して、例えば吹き付けまたははけ塗によって、仕上げ塗りして、トップコート厚さ約20ミクロン(μm)〜約200ミクロン(μm)、例えば約50ミクロン(μm)〜約150ミクロン(μm)、約80ミクロン(μm)〜約120ミクロン(μm)、および/または約100ミクロン(μm)を得ることができる。
【0051】
本発明者らは、2024 T−3アルミニウム合金上で3000時間を超える耐食性(参照により本明細書に組み込まれるASTM D5894−96によって、Prohesion(商標)暴露によって測定)が、本発明の方法によって得られることを見出した。
【0052】
被覆剤は、マグネシウム粉末に加えて、他の材料も含有し得る。1つの実施形態において、被覆剤は、セリウムのような希土類金属も含有する。セリウムは、セリウム金属、セリウム酸化物、セリウム塩、またはそれらの組合せの形態で存在し得る。セリウムは、例えば硝酸セリウムまたは他のセリウム塩の形態で、マグネシウム粉末またはその一部に塗布することができる。例えば、マグネシウム粉末が、それぞれ異なる平均粒径分布を有する2つまたはそれ以上のマグネシウム粒子粉末の混合物を含有する場合、例えば、マグネシウム粉末が、第一マグネシウム粒子粉末および第二マグネシウム粒子粉末を含有し、第一マグネシウム粒子粉末の平均粒径分布が20μm未満であり、第二マグネシウム粒子粉末の平均粒径分布が20μより大である場合、セリウムを第一マグネシウム粒子粉末の表面に塗布することができ、第二マグネシウム粒子粉末には適用しない。それに加えて、またはそれに代わって、セリウム金属、酸化物または塩を、被覆剤に使用される結合剤に分散させることができる。さらに、例えば、本発明の方法が金属表面をセリウムイオンで前処理する工程をさらに含むような場合には、それに加えてまたはそれに代わって、金属表面への被覆剤の塗布前に、セリウム金属、酸化物または塩を、例えばセリウムナノ粒子の形態で、金属表面に塗布することができる。
【0053】
本発明の一部の側面を、以下の実施例によってさらに説明する。
【実施例1】
【0054】
初期電気化学的および暴露検討
A.開路電位および電気化学インピーダンス分光EIS検討
まず、我々の研究所で配合したMg豊富プライマー(トップコートなし)の電気化学的検討を、3%NaCl溶液に浸漬した下塗りAl 2024 T−3合金の表面で行った。合金に接触している被膜に関して、腐食電位Ecorr、または開路電位(OCP)を監視し、エポキシ−ポリアミドポリマーマトリックスにおいて配合した3つのプライマーの組の(EIS)スペクトルを、時間の関数として記録した。OCPは、腐食反応が反応系の負極と正極の間に生じている際に得られる混合電位である。図2Aおよび2Bに示されているデータは、43、46および50%PVC(顔料容積濃度)におけるEckart(Eckagranules(商標))約50ミクロン(μm)平均粒径分布(PSD)Mg粉末に基づく3つのこれらのプライマーに関する。これらのデータは、プライマーだけからの最も有効な保護が約46%PVCであることを示し、これは、この系の推定CPVC(臨界顔料容積濃度)であった。
【0055】
図2Aは、pH約6.2の3%NaCl溶液に暴露した、ポリアミド/エポキシ被覆ポリマー中43、46および50%PVCで配合したMg豊富プライマーについての、暴露時間に対するOCPを示す。結果の解釈は、以下の通りである。3つの組についての初期OCP値は、Mg金属に関する一つの電子移動電位に対応し、EMg=−1.50V〜−1.60VSCE、プライマーは裸(bare)Mgのように作用すると考えられる。次に、24時間にわたって、MgおよびAl合金は分極して、腐食電位、Ecorrに対応する混合電位になり、その電位において、Mgは、まだ犠牲的にE2024が飽和カロメル電極(SCE)に対して−0.68VであるAl 2024を保護している。3%NaCl中のMgおよびAl合金について観測された混合電位は、およそ、Ecorr=−0.90V〜−1.00VSCEであることがわかった。最初の24時間を超えたOCP値は、プライマーPVCによって変化した。43%PVC試料についての、初期の低い混合電位値、Ecorr(図2A)は、Mg/Al合金界面におけるより高いポリマー被覆率(coverage)の結果としての、より少ない有効活性金属領域によると考えられる。最初のうちは、Mg負極がOCPを支配している。43%PVC試料のOCPのE2024=−0.68mVSCEへの漸増は、この系における暴露Mgの反応消費、および正極表面からのエポキシ被覆ポリマーの剥離によると考えられる。43%PVC試料のOCPのEmix=−0.90V〜−1.00VSCEへの漸減は、被覆剤におけるMg酸化物の形成および充填による分極抵抗によるものと考えられる。50PVC試料のOCPの初期および連続減少は、プライマーにおけるより高い空隙率、ならびにプライマー合金界面におけるより広い正極領域によるものと推定される。46%PVC試料のOCPは、急速にEmix=−0.90V〜−1.00VSCE値に達し、試験期間中一定に維持する。従って、46%PVCプライマーは、プライマーの臨界顔料容積濃度(CPVC)に対応すると推測され、Mg金属によるAl合金の正極防食が、CPVCにおいてまたはその近くで最も効果的に生じることを示している。図2Bは、43%、46%および50%PVCのMg豊富プライマーにおいて、pH6.2の3%NaCl溶液中で測定した、暴露時間に対するインピーダンス絶対値|Z|を示す。この図は、Mg豊富プライマーについてのCPVCにおけるPVCの作用を示す。46%PVC試料のZ絶対値は、28日間にわたって、より高いインピーダンス絶対値を生じて、臨界顔料容積濃度におけるまたはその近くでの適正配合を示し、これは、系のポリマーマトリックスからの最少抵抗を有し、かつプライマーからの優れた基材湿潤および適正な物理的特性を確実にするのに充分なポリマーマトリックス含有量を有する、Mg顔料の緊密充填を確実にするのに必要である。
【0056】
OCPデータにおける傾向は、時間の関数としての、Mg豊富プライマーにおける正極防食の発生および有効性を特徴付ける3つの明確な期間を示している。これらは以下の通りである。
【0057】
期間I:初期浸漬第1日、「活性化」期間であり、その期間に、腐食電位値が、SCEに対する正極値−1.1Vにシフトし、これは電解質におけるMg金属/Al 2024 T−3混合電位に対応する。マグネシウムが、直ぐに塩化ナトリウム溶液と反応し始め;それが「活性化」されて、マグネシウム粒子とAl表面の間に、より優れた金属−金属電気接点を確立させる。
【0058】
期間II:一旦、初めに「活性化」期間を過ぎると、マグネシウム対アルミニウムの面積比が最大となることにより、正極防食メカニズムがそのピークに達する。これは、腐食電位が、SCEに対して約−0.9Vという、より負極値にシフトするほぼ第5日〜第7日で起こり;それは、「移行」期間と称される相対安定化が起こる期間である。
【0059】
期間III:移行期間後、かつ第21日まで、腐食電位が正極防食ドメインからシフトし、皮膜の溶液化学(film’s solution chemistry)が変化し始めると共に電位が変動する。このとき、脱酸素が皮膜の上部で起こり始め、pHの局所増加を生じ、これによって、界面におけると同様に、腐食生成物がヒドロキシ塩化マグネシウムから水酸化マグネシウムに変化する。
【0060】
B.初期加速試験
金属豊富被覆剤において、顔料容積濃度(PVC)は、透水性および凝集強度のような塗料特性が劇的に変化する領域において、高くかつ臨界PVCに近い。従って、トップコートなしの、希薄ハリソン溶液におけるProhesion(商標)繰返し暴露が、酸性電解質、空中酸素、CO2および水の、被膜Mg負極への容易接近を可能にする。Mg豊富プライマーを上塗りすることは、Prohesion(商標)の主な繰返し作用からプライマーを絶縁するかまたは遮蔽し、それにより、Al合金が酸性雨環境に暴露された場合に被膜にかき傷が付いたり隙間ができたりする過程が観察されるのを防止する。このような過程の発生をより良く観察するために、下塗りしたパネルをトップコートなしに、希薄ハリソン溶液へ直接的に暴露し、監視した。希薄ハリソン溶液のpHは約4.5であり、これは、Mg金属がCO2、SO42-およびOH-と容易に塩を形成するpHに対応する。これらの塩の形成は、3つの明確な事象に対応する所定時間間隔で、プライマーの表面および界面に発生することが観察された:
【0061】
1.EDXAスペクトルは、プライマー液体/蒸気界面における炭酸マグネシウム水化物、ダイピンガイト(dypingite)[Mg5(CO34(OH)2・8H2O]およびハイドロマグネサイト[Mg5(CO34(OH)2・4H2O]の形成を示した。これらの塩は、試験した全ての上塗りしていない下塗Mg豊富パネルについて、最初の500時間までの暴露だけに存在することが観察された。
【0062】
2.500時間を超える暴露時間については、ブルーサイト[Mg(OH)2]ドメインが形成し始め、次に、プライマーの大部分に広がる。この間、アルミニウム合金は、けがいた線が無傷に維持されるので、正極防食に維持される。
【0063】
3.1300時間より長い暴露時間については、プライマー破損および被膜剥離が、界面におけるヘキサハイドライト[(MgSO4)・6H2O]化合物の蓄積に対応する。Mg金属およびブルーサイト構造物が被覆ポリマーマトリックスから枯渇し、充分なヘキサハイドライト塩が合金界面に蓄積し、その際にヘキサハイドライト構造物によって加えられる圧縮力により被覆ポリマーが破裂し分解する場合に、破損が生じる。
【0064】
空中CO2を使用して塩フォッグ(fog)溶液への暴露の最初の24時間で、マグネシウムは、表面で、炭酸マグネシウム化合物Mg5(OH)5・CO3を形成し、これは、より緊密に充填された水酸化マグネシウムMg(OH)2擬六方晶構造物に置き換えられる。マグネシウムエポキシプライマー走査電子顕微鏡法(SEM)画像において観察されるロゼット構造物は、Prohesion(商標)暴露において形成されるブルーサイト水酸化マグネシウムMg(OH)2(針状結晶体)結晶と一致している。希薄ハリソン溶液を使用してProhesion(商標)循環塩フォッグに暴露したMg豊富プライマーについて、さらに観察した。第一に、マグネシウム金属上に形成された白色酸化物領域水酸化マグネシウム(ブルーサイト)、およびエネルギー分散X線解析(EDXA)測定は、マグネシウム、酸素およびアルミニウムの存在を示し、最少量の炭素が検出された。第二に、初めに存在していたエポキシマトリックスまたはマグネシウム金属を有さないけがいた領域において、EDXAスペクトルは、炭素、酸素、マグネシウムおよびアルミニウムを示し、暴露アルミニウム表面におけるダイピンガイト(炭酸マグネシウム)構造物が存在する可能性を示した。
【0065】
要約して、表1は、EDXAスペクトルにおいて確認されたマグネシウム塩についての、相対pH、溶解度積(solubility product)、および水への溶解度を示す。最初の1000時間の暴露の間に生成された塩は、被膜/合金表面の界面から被膜の外面への層化法による局所pHにおいて増加することが観測された。
【0066】
【表1】

【0067】
酸性環境に暴露されたMg豊富被覆剤の劣化過程は、以下のように記述し得る。Al3+のような陽イオン種を溶液からAl界面に移動させる負極分極条件により、局所pH条件がより低い合金界面において、より多くの酸性塩(即ち、ヘキサハイドライト)が確認された。炭酸塩が、Mg(OH)2と共に、被膜の上面に発生したことが観察され、両方とも、より高いpHにおいて形成される種として同定される。さらに、損傷のある/けがいた領域は、Mg(OH)2の枯渇後まで、およびヘキサハイドライト塩の蓄積が起こるまで、被覆ポリマーも合金表面も劣化させなかった。水酸化マグネシウム水溶液は、過剰のMg(OH)2の存在下でさえpH10.5を超えないpH緩衝剤として作用することが報告されている。
【0068】
C.予備実現可能性検討の結論
これらの極めて期待の持てる結果が、最適化努力を行わずに、市販(OTS)ポリマー系に基づく簡単なMg豊富被覆剤から得られた。それらの結果は、実際の系が野外暴露において遭遇し得る極めて一般的な暴露環境における、Mg顔料の酸化生成物が、Al 2024 T−3合金の塩基性(basic)腐食を生じなかったことを示している。さらに、Mg豊富系は、Al 2024 T−3に正極防食も与え、前処理においてクロメートを使用せず、かつプライマーにおいてクロメート顔料を使用しない完全にCr不含の系における有意な防食特性を与えた。われわれは、被覆ポリマー系を向上させるための検討も行い、さらに配合物検討も行った。これらの検討を実施例2に記載する。
【実施例2】
【0069】
被覆ポリマー設計による配合物の改良および製造
A.被覆ポリマーの選択
一般に、二液型亜鉛エポキシ/ポリアミド高分子材料は、高い付着性および耐アルカリ性を有する架橋マトリックスを生じ、それによって亜鉛を含むいかなるアルカリ性反応も結合剤自体に影響を及ぼさないので、鋼の正極防食に使用されている(参照により本明細書に組み込まれる、Van Vliet,Prog.Organic Coatings,34:220−226(1998))。最近、エポキシ、エポキシアクリルおよびポリウレタン被覆剤と比較してかなり向上したエポキシシロキサン「ハイブリッド」被覆剤が報告されている(参照により本明細書に組み込まれる、Keijman,High Solids Coatings:Experience in Europe and USA − Paper 40,Proceedings PCE Conference,The Hague,The Netherlands 「Protecting industrial and marine structures with coatings」,March 1977)。高性能プライマー用のハイブリッドポリマーマトリックスは、少なくとも2つの異なるメカニズム下に架橋および網目形成に参加し得る少なくとも2種類の反応基を有するポリマー主鎖を含有する高分子複合材料または合金として設計される。
【0070】
B.シラン改質多層/IPNポリマーマトリックス
Mg豊富被覆剤用の向上したポリマーマトリックスの設計は、Al合金表面の最小限の調製を必要とし、かつ既存のゾル−ゲル技術から誘導される、調製容易多層法を含む。反応法は、オルガノシラン(N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)の初期塗布、次に、新規シラン改質架橋剤を使用することによって、表面からの有機層をバルクにグラフトすることを含む。被覆法は、「ゾル−ゲル」法に類似しているが、多層スキームを含み、該多層スキームはオルガノシラン基材処理を使用し、その処理により、湿分硬化ポリイソシアネートを適用し、該ポリイソシアネートは水との初期反応に関与して不安定カルバミン酸中間体を形成すると考えられ、該中間体はアミンおよび二酸化炭素に自発的に脱カルボキシル化する(図1A〜1Cに示す)。前記スキームを終了させるために、バルク/表面架橋剤を使用することによって、アミノ化表面からバルクへの、エポキシ、シラノールおよびイソシアネート間のさらなるバルク架橋反応を行うことが提案される。簡単に言えば、調製されたオルガノシラン改質面は、続いてプロピレンカーボネート中のポリイソシアネートの20%溶液で吹き付けられ(2つのポリイソシアネートプレポリマー:(i)1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートホモポリマー(HMDI)トリマー(図1A〜1Cに示す)および(ii)4,4’−メチレンジフェニルイソシアネート(MDI)プレポリマー類似法の1つを使用)。湿潤面の均一被覆率は、未乾燥塗膜厚さ計で測定して約2ミル(50ミクロン(μm))であった。
【0071】
表面から伸長するバルク反応は、(i)プライマー配合物中のポリイソシアネートおよびアミノ化表面(図1C)の間、ならびに(ii)イソシアネートおよび7−フェニル−1−[4−(トリメチルシリル)−ブチル]−1,2,3,4−テトラ−ヒドロ−キノキサリン−6−オール架橋剤(図1D)(これは、さらなる加水分解時に、ポリ尿素およびポリシロキサンの両方のIPN構造を形成すると推測される)の間で起こる。シラン改質エポキシ(HMDIまたはMDI)ハイブリッドは、ポリ尿素結合、ポリウレタン結合(ポリイソシアネートプレポリマーより)、エポキシアミン結合およびオルガノシラン結合から成る高分子材料から得られる。
【0072】
C.被覆配合物
この検討に使用した材料の概要を表2に示す。
【0073】
【表2】

【実施例3】
【0074】
Mg豊富被覆剤の配合および特性検討
A.Mg豊富プライマーの臨界顔料容積濃度推定
臨界顔料容積濃度(CPVC)は、顔料+吸着層厚さ(d)のランダム稠密充填効率(random dense packing efficiency)の関数であり、これは実験的に求めなければならない。これは、文献に広く記載されており、最近の検討(参照により本明細書に組み込まれるBierwagen et al.,「Recent Studies of Particle Packing in Organic Coatings」,Prog.Organic Coatings,35:1−10(1999))は新たな事実を考慮している。これらのMg豊富系のCPVCを得る方法を、以下に記載する。2つのマグネシウム粉末、平均粒径分布(PSD)30μmのEckagranules(商標)PK31および平均PSD70μmのEckagranules(商標)PK51(図3A参照)を入手したままの状態で使用し、52%−PK31:48%−PK51容積で混合した。2つの粉末の52:48容積混合物は、各粉末単独の場合より高い嵩密度値を生じることが見出された。まず、プライマーの臨界顔料容積濃度(CPVC)は、全顔料上2%vol.におけるAerosil(商標)R202を使用して樹脂/粉末すり合わせ値(rub−up value)を得ることによって概算し、最終CPVCを、実験的に求めた樹脂すり合わせ値と組み合わせて、球状と想定した3つの顔料について、Eckart GmbHから提供されるPSDから算出した。図3Bは、3つの顔料混合物についての三成分図からの算出CPVCを示す。体積分率座標(PK31=0.51、PK51=0.47、およびR202=0.02)は、PVC=0.475の領域における理論CPVC値を与え、これは、図2Aおよび2BのEISデータから確認される実験的に推測したCPVCを裏付けている。
【0075】
B.Mg豊富被覆剤の特性決定
1.パネルおよび皮膜の作製。表2の材料からのプライマーを、6’’x3’’ Al 2024 T3 Q−panels(商標)に適用し、Scotch Brite(商標)パッドでこすり、濯ぎ、エチル−3−エトキシプロピオネート(「EEP」)で脱脂し、その後、10%燐酸溶液に60秒間浸漬し、蒸留水で濯いだ。Alパネルを、参照により本明細書に組み込まれるWalker,「Organo Silanes as Adhesion Promoters for Organic Coatings」,Journal of Coatings Technology,52(670):49−61(1980)に記載の方法によって表面改質した。Mg豊富被覆剤を、タッチアップスプレーガンで塗布し、被覆剤を35℃で14日間硬化させた。次に、下塗りしたパネルを、Extended Lifetime(商標)Topcoatで上塗りした。SEMおよびEDAX画像によって確認された平均膜厚(FT)は、約50±20ミクロン(μm)と推定されるプライマー膜厚、および約100±40ミクロン(μm)と推定されるトップコート膜厚を示す。
【0076】
2.顕微鏡写真SEMおよびEDAX。被覆試料をアルミニウムマウントに取り付け、Technics Hummer IIスパッターコーターを使用して金で被覆した。SEMおよびEDAX画像を、JEOL JSM−6300走査電子顕微鏡によって得た。VANTAGE Digital Acquisition Engineを使用してThermoNoran EDX検出器によって、X線情報を得た。4つの50PVC Mg豊富プライマーのEDAX断面(色素性(pigmentary)Mg X線蛍光(XRF)カウントは赤色、シリコンXRFカウントは青色)は、Al界面におけるMg粉末の全体的配列およびポリマーマトリックスにおける顔料の分布を示し、該分布は、被覆剤ポリマーマトリックスにおけるその分散、および最終的に、防食用被覆剤としてのその有効性度に関係していると考えられる。
【0077】
C.Mg豊富被覆剤の試験
1.Mg豊富被覆剤の機械的特性。Instron(商標)モデル5542およびMerlin(2)ソフトウエアを使用して、ASTM D 2370−82に従って引張特性を測定した。DMTA測定は、Rheometricsモデル3−E動的機械分析器を使用して行った。
【0078】
2.Mg豊富被覆剤の燃焼性試験。6インチのストリップを、上塗りしたMg豊富Alパネルから切り取り、長さ4インチ、内径0.37インチの管を備えたブンセンバーナーを使用し、当量1000BTU/ft3でメタンガスを使用して、改質燃焼試験[文献IPC−SM840B(International Printed Circuit)において引用され、U.L.−94燃焼性規格にも記載されている]に付した。火炎温度1120℃(2048°F)のプロパントーチを、被覆剤で覆われたアルミニウムパネルの裏面に30秒間付けた。被覆剤中のマグネシウム金属を空気/酸素に直接的に暴露するために、各パネルの表面にX字形をけがくことによって、この試験をさらに改変した。
【0079】
3.暴露試験。Prohesion(商標)暴露を、ASTM D5894−96によって行った。パネルの裏面および縁を3M電気めっきテープで覆うことによって上塗りMg豊富パネルを製造し、次に、Aldrichからの2−K工業用エポキシで縁をシールした。上塗りしたパネルの被膜表面を、超硬ガラススクライブでけがいてX字形を形成し、それによってAl表面を暴露させた。
【0080】
4.電気化学インピーダンス分光法(EIS)。下塗りしたパネルの防食特性を、EISによって評価した。実験装置は、3.0質量%NaCl水溶液40mLを含有し、空気に開放され、室温〜22℃/72°Fに維持された3電極セルから構成された。飽和カロメル電極(SCE)を参照電極として使用し、ステンレス鋼板は対電極として作用した。全ての測定を、系の開路電位で行った。EIS測定は、ポテンシオスタット−ガルバノスタットを備えたGamry PC−4/300TM電気化学測定系で行った。インピーダンススペクトルを、0.01Hz〜10kHzの周波数掃引で記録し;シグナル摂動幅は10mV(rms)であり;Gamry 3.1Framework(商標)ソフトウエアを使用して、ボーデプロット形態でデータを分析した。これらの結果を実施例4に示す。
【実施例4】
【0081】
試験結果
A.被覆ポリマーの粘弾性
表3は、5つのポリマー系の測定粘弾性を示す:Tg、貯蔵弾性率E’(最小値)、および計算架橋密度。記録されたガラス転移温度の有意な差は、完全硬化における個々の被覆剤化学特性に関係していると考えられる。架橋密度は(E’)から算出した:(T=Tg+50℃)、この温度において材料はゴム状である;νeは弾性的に有効な架橋密度である:νe=3E’/RT(T+Tg)。
【0082】
【表3】

【0083】
表3の結果は、形成された架橋の化学組成の違いが、Tgの観測される違いを生じ得ることも示唆している。HaleおよびMacosko(参照により本明細書に組み込まれる、Hale et al.,Macromolecules,24:2610(1991))によれば、Tgの変化は、鎖末端の消失、およびより高い枝分かれ度において弾性的に有効な連鎖密度を生じる化学架橋の形成、の両方によって生じる。
【0084】
B.Mg豊富被覆剤の機械的特性
表4は、被覆ポリマー皮膜の測定引張特性を示す。引張試験は、目に見える空隙のない被覆ポリマー皮膜ストリップにおいて行った。表4の機械的特性は、出発材料と比較して、ハイブリッド系の引張強度および引張弾性率特性の両方の向上を示す。引張弾性率は、その測定値が皮膜の引張強度より低い欠陥依存性であるので、皮膜の機械的特性のより優れた指標であることが既知である。高い引張弾性率は、物質が、より弾性であることも示し、これは、より高い硬化度または転化度を意味する。
【0085】
【表4】

【0086】
ハイブリッドシラン改質エポキシ−尿素/ウレタン類似体の両方は、母材より低いTgを示し、架橋密度に有意な差はなく、これは、IPNマトリックス全体における(−N−R−Si−O−Si−R−N−)結合の存在を示している。
【0087】
C.燃焼性
難燃性(FR)被覆剤は、発火を遅らせ、延焼性を抑制する被覆剤である。燃焼性を評価する一般的な試験法は、限界酸素指数(LOI)試験(ASTM D 2863)であり、LOIが26未満の場合、材料は一般に燃焼性とみなされる。これらの被覆剤は全て、ある尺度において被膜不燃性に寄与し得る弗素化ELT(商標)トップコートで被覆された(図4A〜4D)。被膜燃焼性に関連して最もよく報告されるパラメーターは、材料の限界酸素指数(LOI)値である。エポキシ/ポリアミン系は、シラン改質セラマー(ceramer)エポキシドについて低値24〜高値32の間で変化する一方、弗素化ポリウレタンは50までである。向上した不燃性に寄与する他の要因は、イソシアヌレート結合の存在である。HMDIは、MDIのような他のウレタン結合より固有に高い熱安定性を有することが報告されているが、後者は約200℃で解離することが報告されている。一般に、燃焼性は、イソシアヌレートトリジン環の比率が増加すると共に減少する。
【0088】
D.加速暴露
希薄ハリソン溶液、(NH4SO4)酸性雨条件におけるProhesion(商標)暴露の結果、従来の結合剤を使用したMg豊富被膜は約1000時間まで明瞭なけがき線を維持し、これに対し、ハイブリッド結合剤を使用して配合した被膜は、3000時間まで明瞭なけがき線を示し5000時間で破損の徴候を示した。プライマービヒクルの結合性が、これらの系の向上した防食に関連した主要な問題であると考えられる。Mg豊富プライマー被膜の全試料は、この暴露において、同様のトップコートを有する標準クロメート基剤系より優れた性能を示し、かつ、図5A〜5Eに見られるように、4800時間後のこれらのMg豊富系は、1800時間の暴露後の非着色プライマー/ELT(商標)系(図5E)より目視的に優れた性能を示した。
【実施例5】
【0089】
拡張電気化学的検討
A.Mg豊富被膜の電解化学的検討
高いpH、中性pHおよび低いpH条件下に、トップコートを有する50%PVC(CPVCより大)のMg豊富プライマーのEIS試験を行った。3%NaCl溶液中、pH条件を変化させて、円形にけがいたMg豊富被膜を浸漬に付すことを伴うEIS試験法を使用した。この方法は、この研究において開発された種々のプライマー配合物を識別するのを助けるために使用した。けがいた条件下に、系を、酸性(pH2.8)、中性および塩基性(pH2.0)3%NaCl浸漬に付すことで、広い範囲の暴露条件における配合物の比較が可能になった。Mg豊富Al 2024 T−3パネルを、Deft 99 GY−001 ELT(商標)(極めて耐化学薬品性の被覆剤)で上塗りし、けがき、次に、連続浸漬に付した。3つの被覆系をMg豊富被覆剤として評価し、2つは市販の既製品であり、1つは前記のハイブリッドシラン改質エポキシ−尿素であった。簡単に言えば、3つの被覆系は以下の通りであった:
【0090】
1.湿分硬化(MC−PUR)芳香族ポリイソシアネート、Desmodur(商標)E23A、ポリ尿素;
【0091】
2.Epon(商標)828およびマンニッヒ塩基ポリアルキルアミン硬化剤Epicure(商標)3251から成るエポキシ/ポリアミン;
【0092】
3.Epon 1001およびDesmodur(商標)N3300脂肪族ポリイソシアネート、Silquest(商標)A−1120シラン(N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)から成るハイブリッドシラン改質エポキシ−尿素(表2、配合物C参照)。
【0093】
B.実験装置
被膜を切ってAl 2024 T−3面を露出させる直径1.0cmの円形けがき線を有する試料上に、円筒形電極セルを取り付けた。円筒に、以下の組成の電解質を装填した:(1) NaOHでpH12.0に調節した3質量%NaClにおいて塩基性;(2)HClでpH2.8に調節した3質量%NaClにおいて酸性;(3)pH6.2の3.0質量%NaClにおいて中性。実施例3に記載したEIS試験法を使用して、各試験の間で調節した11日間にわたるpHにおいて、インピーダンス測定を行った。中性3%NaCl溶液への浸漬によって非損傷被膜に何が起きているかを調べるために、けがいていない上塗り皮膜も電気化学的に検査した。
【0094】
C.結果
けがき暴露試験(図6A〜6C(塩基性条件pH12)および7A〜7C(酸性条件pH2.8))から得た目視結果は、高いpHおよび低いpH条件下に、従来の被覆ポリマー、即ちMC−PURおよびエポキシ/シッフ塩基、を使用して配合したMg豊富被覆剤は、これらのpH極値において弱点を有することを示した。高いpH12において、試料A(E23、MC−PUR)およびC(ハイブリッドエポキシ−マンニッヒ塩基)は、浸漬暴露後にふくれを生じた。低いpH2.8において、浸漬暴露によって皮膜が基材から剥がれ、持ち上がった。アミノ−シラン改質ハイブリッドポリマーマトリックス(試料B)は、より一般的なポリマーと比較して、付着性および反応性において、Mg豊富被覆剤におけるかなり高いpH耐性系を与えた。11日間の試験後のけがいた試料において目に見える差異がないことは、中性pH6.2の条件が、プライマー被膜/界面においてより高い安定性を与えることを示している。
【実施例6】
【0095】
結果の考察
A.動的および機械的特性の結果
ポリマー皮膜の粘弾性DMTA測定は、ハイブリッドシラン改質エポキシ−尿素/ウレタンが、母材と同じ架橋密度において、より低いTgを示すことを明らかにし、これは、IPNマトリックス全体におけるバルク(−N−R−Si−O−Si−R−N−)結合の形成を示唆している。さらに、シラン改質エポキシ−尿素ハイブリッドの引張特性は、それらの母材より優れていた。
【0096】
B.燃焼性の結果
試験した4つの系のいずれに関しても、PVCに関する燃焼性の違いは観察されなかった。2つの従来の被覆剤、ポリ尿素(MC−PUR)および(エポキシ/ポリアミド)は、剥離し、液化し、灰化し、続いて急速にマグネシウムが灰化した。ハイブリッド−E23A、MDIは、液化も剥離もしなかったが、少量の木炭を形成し、マグネシウムは灰化しなかった。脂肪族の、N−アルキルイソシアヌレート含有ハイブリッドN3300は、炭化せず、Mgも灰化しなかった。このMg豊富被覆剤は、(−Al−O−Si−)結合によってAl基材に、より共有的に結合し、この付加的共有結合が、被膜燃焼性を減少させるのに正の影響を与えたと推測される。
【0097】
C.Prohesion(商標)暴露の結果
顔料Mg含有量を43、46および50%PVCとなるように変化させた4つの被覆系において行ったASTM D5894−96の結果は、希薄ハリソン溶液への暴露の関数としてのPVCにおいて、明確な傾向を示さなかった。しかし、ハイブリッド配合物における50%PVC試料は、僅かにより優れた性能を示した。シラン改質エポキシ−MDIハイブリッド系は、最も優れた性能を示し、破損まで約5000時間であり、一方、脂肪族シラン改質エポキシ−HMDIハイブリッド被膜は、3000〜3400時間の範囲で破損した。他の2つの従来Mg豊富被覆系:ポリ尿素(MC−PUR)およびエポキシ/ポリアミドは、2000〜2600時間で破損し、2つの従来の市販被覆系の間に明確な差異はなかった。
【実施例7】
【0098】
マグネシウム豊富プライマーのスケールアップ
Mg豊富プライマー配合物を、実験室量から2.2Lにスケールアップした。この配合バッチ用に選択したPVCは、系のPVCよりわずかに高いと考えられる数値50であった。以下の工程に従ってスケールアップを行った:(1)出発物質の調製、(2)Mg粉末の調製、(3)パネル表面の調製、(4)タイコートの調製/塗布、および(5)Mg粉末混合物の調製/塗布。
【0099】
出発物質の調製は、以下の手順を使用して行った。
【0100】
出発物質、青色粉末は、500mL丸底フラスコ、Vigeraux凝縮カラム、加熱マントル、撹拌子、温度調節器および窒素流入口(influx)から成る装置を使用して、ジクロロメタンおよびトリクロロイソシアヌル酸中での2−フェニルヒドロキノンの酸化によって得た。以下の材料を使用した:ジクロロメタン(「DCM」)300mL、2−フェニルヒドロキノン(「2−PHQ」)5.0g、およびトリクロロイソシアヌル酸(「TCCA」)2.3g。
【0101】
反応装置を組み立てて、DCM300mLを装填した。系を36℃に温めた。この温度に達し安定化した際に、2−PHQを添加し、系を窒素ガスでパージした。系の温度を35℃〜36℃に制御しながら、TCCAを少しずつ増加して(添加ごとに約0.2g)添加した。TCCAの添加に特に注意を払った:この反応は発熱性であり、生成物の1つとしてのHClの放出を伴うので、TCCAの添加が速すぎると、全混合物が泡立ち、凝縮カラムを通って上がるからである。
【0102】
一旦全てのTCCAを添加したら、反応を36℃で30分間進ませた。その後、撹拌を停止し、混合物を30分間沈降させた。
【0103】
非酸化部分(固体のまま)から最終生成物を分離するために、2枚の濾紙および漏斗を使用して濾過装置を組み立てた。非酸化材料を濾紙上に集め、溶媒および酸化2−PHQから成る残留液体を容器に集めた。青色の液体を回転蒸発器(rotovap)で濃縮して、最終酸化生成物と残留DCM溶媒を完全に分離した。
【0104】
Mg粉末の調製は、以下の手順を使用して行った。
【0105】
配合に使用したMg粉末(Ecka granules(商標))は、元々、2つの異なる粒径であった(Pk31およびPk51)。50mL/50mL vol/volの混合比をこの調製に使用した。正確な量のMg粉末を得るために、粉末を沈降させる超音波浴をメスシリンダーと併用した。粉末をメスシリンダーに注ぎ、粉末が充分に沈降して50mLのクォート(quote)に達するまで、数分間超音波処理して沈降させた。Mg粉末を別々に測定し、手作業で混合した。最終混合物の質量は33.5gであった。
【0106】
Al 2024−T3パネル表面の調製は、以下の手順を使用して行った。
【0107】
Al 2024−T3(Q−panel(商標))パネルをプライマー基材として使用した。パネルを、クロスハッチ的にワイヤブラシでこすって、油を除去し、粒子外観を与えた。次に、それらを3−エトキシプロピルアセテート(「EEP」)で濯ぎ、乾燥させた。乾燥した際に、パネルを燐酸に60秒間浸漬し、脱イオン(「DI」)水で濯いだ。乾燥した際に、パネルを2%KOH溶液に15秒間浸漬し、その後、パネルを再びDI水で濯いだ。
【0108】
シラン表面前処理は、以下の手順を使用して行った。
【0109】
Al 2024−T3表面を、アミノ−シラン処理によって順次処理して、付着性を向上させた。アミノ−シラン処理組成物は、アミノ−シラン(Silquest A−1120)(2%)、アセトン(18%)および水(80%)から構成した。化合物をビーカーで混合し、フォームブラシを使用してパネル表面に塗布した。その後、被覆パネルを室温で30分間乾燥させた。
【0110】
タイコートの調製/塗布は、以下の手順を使用して行った。
【0111】
タイコートは、アミノ−シラン表面前処理後かつMg豊富混合物の塗布前に塗布される第一層であった。タイコートは、キシレン溶媒およびイソシアネート(Desmodur(商標)A23−E)の95/5重量比の混合物から構成した。キシレン(95g)およびDesmodur(商標)A23−E(5g)の混合物を調製し、フォームブラシを使用してパネル表面に塗布した。
【0112】
Mg粉末混合物の調製/塗布は、以下の手順を使用して行った。
【0113】
前もって混合した粉末を、表5に示す量で、エポキシ基剤樹脂(1001−X−75)、シラン(Silquest(商標)A−1120)、およびイソシアネート(Desmodur(商標)3300)と混合した。
【0114】
【表5】

【0115】
シランおよびイソシアネート化合物の添加の間、混合を連続的に行い、粉末ミキサーを使用して、混合終了後の良好な分散を可能にした。チキソトロープ化合物、例えばDegussa(商標)Aerosil R202(これをこの実験に使用した)の添加によって、所望の粘度を得た。所望の粘度において、圧縮空気スプレーガンを使用して混合物をパネル表面に吹き付け、トップコートの塗布前に、被覆混合物を室温で2日間乾燥させた。
【0116】
本発明を例示目的で詳細に説明したが、そのような説明は例示目的にすぎず、請求の範囲によって限定される本発明の意図および範囲を逸脱せずに、当業者によってそれに変更を加え得るものと理解される。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1A〜1Cは、本発明の特定の実施形態によって使用される多層共有構造の展開を示す概略図である。図1Aは、表面シラン化(silation)/アミノ化層を示す。図1Bは、この層とHMDIまたはMDIとの逐次反応を示す。図1Cは、表面層から起きてバルク(bulk)に伸長すると推測されるさらなる重合を示す。図1Dは、イソシアネートモノマーと架橋剤、7−フェニル−1−[4−(トリメチルシリル)−ブチル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−6−オールとの反応を示し、凝集相全体にわたる塊状エポキシ/イソシアネート相互侵入網目生長を表す。
【図2】図2Aは、3%NaCl中、pH6.2における、Mg豊富エポキシ/ポリアミドプライマーについての、PVCに対する開路電位SCEのグラフである。図2Bは、3%NaCl中、pH6.2における、Mg豊富エポキシ/ポリアミドプライマーについてのPVCに対する0.01Hzでの|Z|絶対値を示すグラフである。
【図3】図3Aは、Mg粉末、Eckagranules(商標)PK31およびPK51についての粒度分布を示すグラフである。図3Bは、理論的に計算したCPVCに対応する領域を示すPK31、PK51およびAerosil(商標)R202についての三成分混合物のグラフである。
【図4】図4A〜4Dは、50%PVCハイブリッドエポキシ/尿素/ウレタンN3300(図4A);50%PVCハイブリッドE23A(図4B);50%PVC MC−PUR(図4C);および50%PVCエポキシ−ポリアミド(図4D)についての、改変UL−94燃焼性試験の結果を示す画像である。
【図5】図5A〜5Dは、50%PVCにおいて、表2の項目Cに示されている配合物(Mg豊富プライマーハイブリッドN3300)で被覆されELT(商標)トップコートを有するAl 2024 T−3パネルについて、ASTM D5894−96によって行った、0時間(図5A)、1200時間(図5B)、3000時間(図5C)、および4800時間(図5D)における、Prohesion(商標)試験の結果を示す画像である。図5Eは、エポキシEpon(商標)828/Ancamide(商標)2353ポリアミド(非着色プライマー)で被覆され、ELT(商標)トップコートを有するAl 2024 T−3パネルについて、ASTM D5894−96によって行ったProhesion(商標)試験の1800時間における結果を示す画像である。
【図6】図6A〜6Cは、11日間の浸漬およびpH12におけるEIS試験後のけがかれた(scribed)Al 2024 T−3試料の画像である。試料を、E23A(図6A)、MC−PUR(図6B)、またはエポキシ−マンニッヒ塩基(図6C)で被覆した。
【図7】図7A〜7Cは、11日間の浸漬およびpH2.8でのEIS試験後の、けがかれたAl 2024 T−3試料の画像である。試料を、E23A(図7A)、MC−PUR(図67)、またはエポキシ−マンニッヒ塩基(図7C)で被覆した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の耐食性を向上させるために金属を処理する方法であって、マグネシウム粉末および結合剤を含有する被覆剤を金属表面に塗布することを含む方法。
【請求項2】
前記被覆剤が、クロムを実質的に含有しない請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被覆剤が、付加クロムを含有しない請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属が、アルミニウムまたはアルミニウム合金である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属が、アルミニウム合金である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルミニウム合金が、銅含有アルミニウム合金である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記銅含有アルミニウム合金が、Al 2024 T−3である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記銅含有アルミニウム合金が、Al 7075 T−6である請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記マグネシウム粉末が、第一マグネシウム粒子粉末および第二マグネシウム粒子粉末の混合物を含み、
前記第一マグネシウム粒子粉末および前記第二マグネシウム粒子粉末が、実質的に異なる平均粒径分布を有し、
前記混合物の嵩密度が前記第一マグネシウム粒子粉末の嵩密度より大きく、前記混合物の嵩密度が前記第二マグネシウム粒子粉末の嵩密度より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一マグネシウム粒子粉末が、平均粒径分布約25μm〜約35μmを有し、第二マグネシウム粒子粉末が、平均粒径分布約65μm〜約75μmを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第一マグネシウム粒子粉末が、平均粒径分布約30μmを有し、第二マグネシウム粒子粉末が、平均粒径分布約70μmを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物が、第一マグネシウム粒子粉末および第二マグネシウム粒子粉末を約40:60〜約60:40の容積比で含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記混合物が、第一マグネシウム粒子粉末および第二マグネシウム粒子粉末を約45:55〜約55:45の容積比で含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記混合物が、第一マグネシウム粒子粉末および第二マグネシウム粒子粉末を約50:50〜約55:45の容積比で含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記第一マグネシウム粒子粉末が、平均粒径分布約30μmを有し、第二マグネシウム粒子粉末が、平均粒径分布約70μmを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物が、第一マグネシウム粒子粉末および第二マグネシウム粒子粉末を約58:42の容積比で含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記結合剤が、高分子結合剤である請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記高分子結合剤が、ポリイソシアネートプレポリマーおよびエポキシプレポリマーを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリイソシアネートプレポリマーが、脂肪族ポリイソシアネートプレポリマーである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリイソシアネートプレポリマーが、芳香族ポリイソシアネートプレポリマーである請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記高分子結合剤が、ポリイソシアネートプレポリマーおよびエポキシプレポリマーを含み、前記高分子結合剤を架橋剤と接触させることをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記架橋剤が、シラン化テトラヒドロキノキサリノールである請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記架橋剤が、7−フェニル−1−[4−(トリアルキルシリル)−アルキル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−6−オールである請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記架橋剤が、7−フェニル−1−[4−(トリアルキルシリル)−ブチル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−6−オールである請求項21に記載の方法。
【請求項25】
該被覆剤の塗布前に、金属表面をアミン含有オルガノシランと接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記アミン含有オルガノシランが、(N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランである請求項25に記載の方法。
【請求項27】
金属表面とアミン含有オルガノシランとの前記接触が、アミン含有オルガノシランで処理された金属表面を生じ、かつ、該被覆剤の塗布前に、アミン含有オルガノシランで処理された金属表面をポリイソシアネートプレポリマーと接触させることをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記高分子結合剤が、シラン改質エポキシイソシアネートハイブリッドである請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記高分子結合剤が、ポリ尿素結合、ポリウレタン結合、エポキシ−アミン結合およびオルガノシラン結合を有する高分子材料である請求項17に記載の方法。
【請求項30】
前記マグネシウム粉末が、(i)マグネシウム、ならびに(ii)カルシウム、マンガン、リチウム、炭素、亜鉛、カリウム、アルミニウムおよび/または希土類金属を含むマグネシウム合金の粉末である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記マグネシウム粉末が、(i)マグネシウムおよび(ii)マンガンを含むマグネシウム合金の粉末である、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
金属表面をセリウムイオンで前処理することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記金属が、金属ファスナーと物理的接触している薄板の形態であり、前記薄板および前記ファスナーが異なる金属から作られ、
前記被覆剤が、薄板およびファスナーの両表面に塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記マグネシウム粉末が、マグネシウムフレークである請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記マグネシウム粉末、およびシラン改質エポキシイソシアネートハイブリットポリマーまたはプレポリマーを含む、被覆組成物。
【請求項36】
前記マグネシウム粉末が、シラン改質エポキシイソシアネートハイブリッドポリマーまたはプレポリマーに実質的に均一に分散している請求項35に記載の被覆組成物。
【請求項37】
前記マグネシウム粉末が、第一マグネシウム粒子粉末および第二マグネシウム粒子粉末の混合物を含み、
前記第一マグネシウム粒子粉末および前記第二マグネシウム粒子粉末が、実質的に異なる平均粒径分布を有し、
前記混合物の嵩密度が、前記第一マグネシウム粒子粉末の嵩密度より大きく、前記混合物の嵩密度が、前記第二マグネシウム粒子粉末の嵩密度より大きい、請求項35に記載の被覆組成物。
【請求項38】
前記第一マグネシウム粒子粉末が、平均粒径分布約25μm〜約35μmを有し、第二マグネシウム粒子粉末が平均粒径分布約65μm〜約75μmを有する、請求項37に記載の被覆組成物。
【請求項39】
前記第一マグネシウム粒子粉末が、平均粒径分布約30μmを有し、第二マグネシウム粒子粉末が平均粒径分布約70μmを有する、請求項38に記載の被覆組成物。
【請求項40】
前記混合物が、第一マグネシウム粒子粉末および第二マグネシウム粒子粉末を約40:60〜約60:40の容積比で含有する、請求項38に記載の被覆組成物。
【請求項41】
前記混合物が、第一マグネシウム粒子粉末および第二マグネシウム粒子粉末を約45:55〜約55:45の容積比で含有する、請求項38に記載の被覆組成物。
【請求項42】
前記混合物が、第一マグネシウム粒子粉末および第二マグネシウム粒子粉末を約50:50〜約55:45の容積比で含有する、請求項38に記載の被覆組成物。
【請求項43】
前記第一マグネシウム粒子粉末が、平均粒径分布約30μmを有し、第二マグネシウム粒子粉末が、平均粒径分布約70μmを有する、請求項42に記載の被覆組成物。
【請求項44】
前記混合物が、第一マグネシウム粒子粉末および第二マグネシウム粒子粉末を約58:42の容積比で含有する、請求項43に記載の被覆組成物。
【請求項45】
前記シラン改質エポキシイソシアネートハイブリッドポリマーまたはプレポリマーが、ポリイソシアネートプレポリマー、エポキシプレポリマー、およびシラン化テトラヒドロキノキサリノール架橋剤、またはそれらの重合生成物を含む、請求項35に記載の被覆組成物。
【請求項46】
前記ポリイソシアネートプレポリマーが、脂肪族ポリイソシアネートプレポリマーである請求項45に記載の被覆組成物。
【請求項47】
前記ポリイソシアネートプレポリマーが、芳香族ポリイソシアネートプレポリマーである請求項45に記載の被覆組成物。
【請求項48】
前記シラン化テトラヒドロキノキサリノール架橋剤が、7−フェニル−1−[4−(トリアルキルシリル)−アルキル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−6−オールである請求項45に記載の被覆組成物。
【請求項49】
前記シラン化テトラヒドロキノキサリノール架橋剤が、7−フェニル−1−[4−(トリアルキルシリル)−ブチル]−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−6−オールである請求項45に記載の被覆組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−515550(P2007−515550A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539495(P2006−539495)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/033089
【国際公開番号】WO2005/051551
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(506163397)エヌディーエスユー・リサーチ・ファウンデイション (1)
【Fターム(参考)】