説明

マグネットロータの製造方法及びこの製法で作られたマグネットロータとこのマグネットロータを用いた電磁駆動装置並びに光量調整装置

【課題】本発明は、マグネットロータの製造方法及びこの製法で作られたマグネットロータとこのマグネットロータを用いた電磁駆動装置並びに光量調整装置の提供。
【解決手段】回転軸を備えた駆動アームと中空円筒形状の永久磁石とを光硬化性樹脂で一体化してなるマグネットロータであって、駆動アームを光透過性の樹脂で成形し、永久磁石を磁化容易軸を有する異方性磁石で成形し、そして所定の方向に磁界を形成する取付部を備えた冶工具に駆動アームをその磁界の方向に位置決めし、その駆動アームの回転軸に光硬化性樹脂を塗布し、その駆動アームの回転軸に永久磁石の中空部を嵌合し、その永久磁石を磁気容易軸の方向が磁界の方向と一致する位置で保持した状態で光を照射して光硬化性樹脂を硬化させマグネットロータを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスチールカメラ、ビデオカメラ等の撮像装置や、リアプロジェクションテレビ、フロントプロジェクタ等の投影装置といった光学機器において、シャッタ羽根、絞り羽根など羽根部材を開閉駆動して撮影光量若しくは投影光量を調整する光量調整装置及びこれに用いる電磁駆動装置の駆動源のロータとして用いられるマグネットロータ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の光量調整装置は光学光路上に羽根部材を配置し、この羽根部材を電磁駆動装置で開閉することによってシャッタ、或いは絞りなどの光量を調整している。そしてこの電磁駆動装置は永久磁石の中心に回転軸を設けたマグネットロータと、コイル枠の外周に励磁コイルを巻廻したステータとで構成され、励磁コイルに通電することによってマグネットロータを所定角度回転させ、羽根部材を開閉するようになっている。
【0003】
このような電磁駆動装置に用いられるマグネットロータは、例えば特許文献1(特開平8−19239号公報)に開示されている様に、駆動アームの回転軸を永久磁石の中心透孔に圧入し一体化したもの、特許文献2(特開平9−56092号公報)に開示されている様に、回転軸と永久磁石とを接着剤で接着し一体化したもの、特許文献3(特開平6−258683号公報)に開示されている様に、中空円筒状のマグネットに樹脂等のモールディング材料をインサート成形により一体化したもの等が知られている。
【0004】
そして、これらマグネットロータの一体化方法はそれぞれ装置との適合性に合わせ使われ、本願はその中で接着方法に係わるものである。
【0005】
従来、その接着方法では、その接着剤に二液性エポキシ樹脂が一般に用いられてきている。この二液性エポキシ樹脂が用いられた理由としては、第一に接着使用時に本剤と硬化剤とを混ぜ合わせることで硬化が始まり扱い易く、第二にその硬化時間が長く、マグネットロータが駆動アームのアーム方向と永久磁石の磁化容易軸の方向を所定の関係に位置付ける必要があり、その位置付け時間の間に硬化することが無く、マグネットロータの接着剤に適していたことによる。
【0006】
また、接着剤として一液性エポキシ樹脂も知られているが、この一液性エポキシ樹脂は空気に触れるとことで硬化するもので、駆動アームの回転軸と永久磁石の中心透孔の間に塗布した接着剤は空気に触れ難く硬化し難いことからあまり利用されていない。
【特許文献1】特開平8−19239号公報
【特許文献2】特開平9−56092号公報
【特許文献3】特開平6−258683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、この二液性エポキシ樹脂は本剤と硬化剤とを使用時に混ぜ合わせ使うことから、しばしば混合状態が悪くて硬化斑による接着不良や、また装置の小型化に伴い装置外径が小さくなると、接着剤を駆動アームの回転軸と永久磁石の中心透孔との間に塗布せざるを得ず、その場合に硬化時間が長いために接着剤が回転軸の軸受部に流れ出て、回転不良といった問題が生じている。
【0008】
そこで本発明は、第一に従来のように接着使用時に本剤と硬化剤とを混ぜ合わせること無く硬化開始時間がコントロール可能で扱い易く、第二にその硬化開始後直ちに硬化し液漏れが無く、また密閉された部分でも確実に硬化され硬化斑の無いマグネットロータの製造方法及びこの製法で作られたマグネットロータとこのマグネットロータを用いた電磁駆動装置並びに光量調整装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために以下の構成を採用したものである。
【0010】
まず、本発明のマグネットロータの製造方法として、回転軸を備えた駆動アームと、この駆動アームの回転軸が貫通する中空円筒形状の永久磁石とを光硬化性樹脂からなる接着剤で一体化してなるマグネットロータにおいて、前記駆動アームを光透過性のポリカーボネート(PC)樹脂で成形し、前記永久磁石を磁化容易軸を有するネオジウム(Nd)系の異方性磁石で成形し、そして第1に、所定の方向に磁界を形成する取付部を備えた冶工具の該取付部内に前記駆動アームをその磁界の方向に対し所定の姿勢で位置決め支持し、第2に、その位置決め支持した駆動アームの回転軸に光硬化性樹脂を塗布し、第3に、その光硬化性樹脂を塗布した駆動アームの回転軸に前記永久磁石の中空部を嵌合し、第4に、その永久磁石をその磁気容易軸の方向が前記磁界の方向と一致する位置で磁気的に保持し、第5に、その磁気保持後に前記駆動アームを透過させ紫外線(UV)、電子線(EV)若しくは特定の可視光の光等を照射して前記光硬化性樹脂を硬化させ、第6に、前記光硬化性樹脂で接着した前記永久磁石と前記駆動アームを冶工具から取り出しマグネットロータを製造するようにしたものである。
【0011】
また、この方法により作ったマグネットロータを励磁コイルに供給する電流の通電方向に応じ回転トルクを付与するようにした電磁駆動装置、及びその電磁駆動装置で光軸開口を有する基板に取付けられ、その光軸開口を規制する羽根部材を開閉駆動するようにした光量調整装置を提供するものである。
【0012】
尚、特に本願のマグネットロータは、特に中心に回転軸を有する円筒形状の永久磁石から成るマグネットロータと、前記回転軸の両端を回動自在に支持する一対の軸受を有するコイル枠と、前記コイル枠の外周に巻廻された励磁コイルと、前記コイル枠の外周に配置された軟磁性材から成るヨークとを備え、前記一対の軸受の一方を前記回転軸の軸中心を中心とする円錐形状のテーパ面で構成し、前記回転軸には軸中心を中心とする球面を設け、この回転軸に形成した球面を前記軸受のテーパ面に当接すると共に、前記回転軸には前記球面を前記テーパ面側に付勢する付勢作用が付与されてなる電磁駆動装置のマグネットロータとして最適である。つまり、本願の方法で作られたマグネットロータはその軸受部を接着剤で汚すことなく円滑な作動が補償され得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、回転軸を備えた駆動アームを光透過性の樹脂で成形し、その駆動アームの回転軸と、この回転軸が貫通する中空円筒形状で磁化容易軸を有する異方性磁石に成形された永久磁石の中心透孔との間に接着剤を塗布し一体化してなるマグネットロータの接着剤として紫外線(UV)、電子線(EV)若しくは特定の可視光の照射により硬化する光硬化性樹脂を用いたことによって、第一に従来のように接着使用時に本剤と硬化剤とを混ぜ合わせること無く硬化開始時間がコントロール可能で扱い易く、第二にその硬化開始後直ちに硬化し液漏れが無く、また密閉された部分でも確実に硬化され硬化斑の無く、電磁駆動装置並びに光量調整装置に適したマグネットロータを得ることが出来る。
【0014】
また、一対の軸受の一方を前記回転軸の軸中心を中心とする円錐形状のテーパ面で構成し、前記回転軸には軸中心を中心とする球面を設け、この回転軸に形成した球面を前記軸受のテーパ面に当接すると共に、前記回転軸には前記球面を前記テーパ面側に付勢する付勢作用が付与されてなる電磁駆動装置のマグネットロータとして用いることで、本願の方法で作られたマグネットロータはその軸受部を接着剤で汚すことなく円滑な作動が補償され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。そこで先に本願発明に係る方法で作られたマグネットロータを使った電磁駆動装置及び光量調整装置について説明するに、図1は電磁駆動装置の要部を示し、本発明の原理の説明図であり、図2はカメラ装置のシャッタ開閉構造を示す光量調整装置の斜視図である。
【0016】
まず図1に基づいて本発明の原理を説明すると、本発明に係わる電磁駆動装置40は次のように構成される。マグネットロータ41は円筒形状の永久磁石42とこの磁石42の中央に挿通され一体化形成された回転軸43と、この回転軸43に一体形成された駆動アーム44とから構成される。その詳細は図7、図8に基づいて後述する。一方、ステータは上下一対のコイル枠47、48と、このコイル枠に巻廻した励磁コイル49(以下コイルと云う)で構成される。このコイル枠46は図示のように上下2つに区分された上コイル枠47と下コイル枠48で構成され、内部にマグネットロータ41を収納する空胴部を形成する。このようにコイル枠46を上下に分割したのはコイル枠内部の空洞部にマグネットロータ41を収容するためであり、上下2分割の他回転軸を中心に左右に2分割することも可能である。
【0017】
そこでマグネットロータ41の回転軸43にはその端部に上端軸承部43aと下端軸承部43bを形成する。上端軸承部43aは軸外周を後述する軸孔で支持するよう所定の軸径で形成し、下端軸承部43bは球面に形成する。図示X−Xは仮想回転軸中心であり、上端軸承部43aは軸外周がこの軸中心X−Xを中心に形成してあり、下端軸承部43bは中心点Oが軸中心X−Xと一致する球面形状に形成してある。従って、上端軸承部43aの軸外周と下端軸承部43bの球面外周とは軸中心X−Xを中心に対称形状にそれぞれ形成されている。
【0018】
次に上コイル枠47には上端軸承部43aと係合する軸受孔47aを設け、下コイル枠48には下端軸承部43bと係合する円錐形状のテーパ面48aを設ける。軸受孔47aは軸中心X−Xを中心とする円筒状内周面を有し、この内周面と上端軸承部43aが互いに嵌合し、両者には回転軸43の回転を許容する少許の隙間(ギャップ)が形成されるようになっている。またテーパ面48aは中心Qが軸中心X−Xと一致する円錐形状の軸受凹溝で構成する。従って、テーパ面48aは軸中心X−Xを中心とする2等辺三角錐を形成することとなる。
【0019】
そこで図1に示すようにマグネットロータ41の永久磁石42を下コイル枠48の空胴部に収納し、回転軸43の下端軸承部43bを下コイル枠48のテーパ面48aに係合支持する。そしてこの下コイル枠48に上コイル枠47を合体する際に回転軸43の上端軸承部43aを軸受孔47aに嵌合し、次いで上コイル枠47に形成したコイル巻廻溝に沿ってコイル49を巻廻する。このように構成されたマグネットロータ41は回転軸43の一端(上端軸承部)を軸受孔47aに、他端(下端軸承部)を三角錐状のテーパ面48aにそれぞれ回動自在に支持されることとなる。このときマグネットロータ41は図1X−X方向に少許な範囲で移動自在となるが、図示のものはマグネットロータ41には常時下端軸承部43bの球面がテーパ面48aと当接するように付勢力が作用している。
【0020】
この付勢力はマグネットロータ41にスプリング等の付勢手段を設けても良いが、次のような磁気的吸引力を作用させることが好ましい。図示のものはコイル枠(下コイル枠48)の外周に円筒形状のヨーク52が設けられ、このヨーク52は軟磁性体で構成され永久磁石42に生起される磁界をシールドして外部に漏洩しないように磁気回路を構成する。
【0021】
そこでこの下コイル枠48を次のように構成することによってマグネットロータ41にスラスト方向の付勢力を作用することが可能である。つまり円筒形状の永久磁石42の軸方向中央(図示W−W)に対し、同じく円筒形状のヨーク52の軸方向中央(図示Z−Z)を下端軸承部43b側に距離Lだけ偏倚させる。つまり円筒形状の永久磁石の軸方向長さ(n)の1/2n位置と同じく円筒形状のヨークの軸方向長さ(m)の1/2m位置とを距離Lだけ異ならせる。これによって軟磁性材から成るヨーク52にマグネットロータ41が吸引され付勢力Fが発生する。この付勢力によって下端軸承部43bの球面は下コイル枠48に形成されたテーパ面48aに当接した状態で保持される。
【0022】
このとき、カメラ装置などに外部からの衝撃が及んでマグネットロータ41がスラスト方向(図示X−X方向)に移動しても付勢力Fの作用でテーパ面48aと当接する姿勢に復帰することとなる。従ってマグネットロータ41はその回転軸中心に位置する円錐形状のテーパ面48aに沿って先端球面が移動し中心ブレを生ずることが無く、円滑な運動が保証される。
【0023】
そこでかかる電磁駆動装置40の詳細を図3乃至図8に基づき説明する。
その電磁駆動装置40としては通常の電磁モータなど種々の駆動装置が採用可能であり、例えば次の構成にすれば良い。円筒形状の永久磁石42に駆動アーム44を一体形成した回転軸43を設けてマグネットロータ41を構成し、このロータ41をコイル枠46内に回動自在に軸受支持し、このコイル枠46にコイル49を巻回してステータを構成する。そしてマグネットロータ41のN−S磁極に対しコイル49に生起した磁界でマグネットロータ41を所定角度内で回動させ、外周をヨーク52で覆う。
【0024】
また、この駆動アーム44には図示するアーム部の両先端部に駆動ピン44a、44bが設けられている。つまり電磁駆動装置40の回転軸43には一対の駆動ピン44a、44bを有する駆動アーム44が設けられ、回転軸43の回転は距離を隔てた位置に配置されている一対の駆動ピン44aと44bとに互いに反対方向の運動を伝達する。
【0025】
従って、駆動アーム44は電磁駆動装置40の回転軸43に一体に取付ける必要はなく、例えば基板30にリング状の伝動部材を回動自在に取付け、この伝動部材を駆動装置の回転軸と連結して回転運動を生起し、この伝動部材に駆動ピンを設ける構成であっても良い。
【0026】
このように構成した電磁駆動装置40は前述の基板30の羽根部材を配置した側の背面側にビスなどで固定され、図2で示す様にその基板30には駆動ピン44a、44bの逃げ溝35a、35bが設けられ、また第1、第2の羽根部材にはこの駆動ピン44a、44bと係合するスリット孔13、23が設けられている。そしてその逃げ溝35a、35bに駆動ピン44a、44bが挿通され基板30の羽根部材を配置した面側に突出する。そこで伝動アーム44に設けた駆動ピン44a、44bが第1、第2の羽根部材10、20のスリット孔13、23に連結される。
【0027】
次に、そのマグネットロータ41を回転可能に支持するコイル枠46について詳述すると、このコイル枠46は図5の斜視図及び図9の側面断面図で示す通り紙面上下2体分割され上コイル枠47と下コイル枠48からなる。そして、その合せ面に上述の駆動アーム44が両側に突出する開口を有し、また外周にコイル49を巻廻する凹環溝が形成されている。更に下コイル枠48はマグネットロータ41の回転位置を永久磁石42の磁束の変化を捕らえ検出するホール素子50を半田付けしてなるプリント板51が挿入される切欠け部が形成されている。また、その下コイル枠48の底面には図4及び図6で示す様にコイル49の口出し用にリン青銅の導電性の金属棒から成る口出し端子48c、48dが圧入されていると共に、この口出し端子48c、48dが貫通し半田付けされ外部の制御回路と電気的に接続する図示せぬプリント基板が下コイル枠48の底面から浮き上がらないよう3箇所で保持するための補助端子48eが設けられている。
【0028】
また、そのコイル枠46の外側に嵌合し磁気的にシールドするヨーク52が設けられている。このヨーク52の嵌合位置は予め図9の断面図で示す様に、コイル枠46で回動可能に支持されたマグネットロータ41を構成する永久磁石42の長さ方向中央位置に対しヨーク52の同方向中央位置が図示の様にズレ量Lだけ変位している。この変位により永久磁石42は磁気バランスが均一に成るようヨーク52の中央位置へ移動する磁気的な付勢力を常時受けることとなり、この付勢力Fによりマグネットロータ41の回転軸43の下端軸承部43bが下コイル枠48のテーパ面48aに姿勢差で多少付勢力に差異は生じるものの常に当接保持されることとなり、回転中心軸上に球の中心が来るように外形が球面となり、互いに圧接状態で軸受を構成している。つまり、一般に知られるVブロックの原理同様にそのテーパ面48aに回転軸43を押圧付勢すると自然にテーパ面48aの軸心と回転軸43の軸心が一致することとなる。
【0029】
この結果、このマグネットロータ41の回転軸43は電磁駆動装置40の姿勢差に係らず常にテーパ面48aの中心軸を中心に回転することとなり、回転軸43の回転時の振れが小さくなることから回転軸43とテーパ面48aの取付け寸法を極力小さく抑えることが可能となり、取付け寸法を小さく抑えた分装置の小型化を図ることが出来る。
【0030】
次に上述の電磁駆動装置40を用いた光量調整装置Eについて説明する。図2に示すように光量調整装置Eは光路開口を有する基板30と、この基板30に組み込んだ一対の羽根部材10、20と、この羽根部材を開閉する駆動装置40とから構成されている。
【0031】
その基板30は合成樹脂のモールド成形或いは金属板のプレス加工で後述する羽根部材を開閉自在に支持し、この羽根部材を開閉駆動する駆動装置を取付けられる形状でカメラ装置などの組込みスペースに応じた形状に形成されている。この基板30にはカメラ装置などの撮影光軸Y−Yを中心とする光路開口31を形成する。この光路開口31は撮影に要する光路の最大径より若干大きい口径に形成する。そして、この光路開口31には複数の羽根部材10、20を配置する。図示のものは第1の羽根部材10と第2の羽根部材20の2枚で構成されている。
【0032】
この第1、第2の羽根部材10、20の形状は光路開口31を通過する光量を大小に調整する絞り羽根と、光路開口31を遮閉するシャッタ羽根と、光路開口31の光量(露光量)を調整した後、光路を遮閉する絞り兼用シャッタ羽根との何れかその働きに適した形状に構成される。図示のものは絞り兼用シャッタ羽根として図示の形状に構成してある。つまり第1の羽根部材10は開口11とこの開口11の一部端縁を先鋭状に形成した絞り形成面11aと光路開口31の一部を覆うシャッタ機能部14を備えている。また第2の羽根部材20は半円形状の開口21と、この開口21の一部端縁を先鋭状に形成した絞り形成面21aとを備えている。
【0033】
この第1、第2の羽根部材10、20の形状は基板30に摺動自在に支持するか回動自在に支持するか或いは2枚構成にするか3枚以上複数の構成にするかによってそれぞれ異なった形状を採用する。図示のものは2枚構成の羽根を同一直線上で反対方向に移動(摺動)するようにしている関係で、第1の羽根部材10には右側の半円弧を形成する開口11が、第2の羽根部材20には左側の半円弧を形成する開口21が必要となる。
【0034】
従って、この左右の半円状の開口11、開口21が互いに接近或いは離反することによって光路開口31を開閉することとなる。また、図示のものは撮影などの露光量を規制する為、開口11には先鋭状の絞り形成面11aが第1の羽根部材10に、同様の絞り形成面21aが第2の羽根部材20にそれぞれ形成してある。これは略々菱型形状の絞り口径を第1、第2の羽根部材10、20で形成し、この絞り口径を大小に調整することによって近似した開口径で開口11を通過する光量を調整する為である。
【0035】
従って、この絞り口径をどのような形状に設定するかによって開口11と開口21の形状が決定される。そこで、前述の基板30には第1の羽根部材10と第2の羽根部材20とを摺動自在に案内するガイドリブ36a、36bとガイドピン34a、34b、34cが形成され、第1の羽根部材10にはガイド溝12a、12bが、第2の羽根部材20にはガイド溝22a、22bとが形成されている。つまり、第1の羽根部材10は前述の開口11を備え、互いに平行するガイド溝12a、12bが形成され、このガイド溝12aには基板30に植設したガイドピン34aが係合し、ガイド溝12bにはガイドピン34bが係合するようになっている。
【0036】
またこの第1の羽根部材10の側縁(図2上側)は基板30に形成したガイドリブ36bと係合する。従って、第1の羽根部材10はガイドピン34aと34b及びガイドリブ36bに沿って図2左右方向に摺動自在に案内されることとなる。同様に第2の羽根部材20は前述の開口21を備え、平行するガイド溝22aと22bが形成され、ガイド溝22aにはガイドピン34bが、ガイド溝22bにはガイドピン34cがそれぞれ嵌合され、またこの第2の羽根部材20の側縁(図2下側)は基板30に形成したガイドリブ36aと係合するようになっている。
【0037】
以上説明した構成によって第1の羽根部材10と第2の羽根部材20とは基板30に同一直線上(図2左右方向)で摺動自在に支持され、この第1、第2の羽根部材10、20はそれぞれ基板30に形成した光路開口31を過ぎる方向に移動自在となる。そこで、前述した駆動装置40は基板30の羽根部材を配置した側の背面側にビスなどで固定され、図2で示す様にその基板30には駆動ピン44a、44bの逃げ溝35a、35bが設けられ、また第1、第2の羽根部材10、20にはこの駆動ピン44a、44bと係合するスリット孔13、23が設けられている。そしてその逃げ溝35a、35bに駆動ピン44a、44bが挿通され基板30の羽根部材を配置した面側に突出する。そこで駆動アーム44に設けた駆動ピン44a、44bが第1、第2の羽根部材10、20のスリット孔13、23に連結される。
【0038】
尚、本発明にあって駆動アーム44は電磁駆動装置40の回転軸43に一体に取付ける必要はなく、例えば基板30にリング状の伝動部材を回動自在に取付け、この伝動部材を駆動装置の回転軸と連結して回転運動を生起し、この伝動部材に駆動ピンを設ける構成であっても良い。
【0039】
次に上述の光量調整装置Eを用いた撮像装置について図11に基づいて説明する。
スチールカメラ、ビデオカメラ等のレンズ鏡筒に前述の光量調整装置Eを組込む。図示Aは撮影光路に配置した前レンズ、Bは後レンズであり、これ等のレンズで被写体像を結像しその結像面に撮像手段Sを配置する。撮像手段SとしてはCCDなどの固体撮像素子或いは感光フィルムなどを用いる。そして制御はCPU制御回路、露出制御回路、及びシャッタ駆動回路で実行するように構成する。図示のSW1はメイン電源スイッチであり、SW2はシャッタレリーズスイッチを示す。カメラ装置としての制御には、この他オートフォーカス回路などが用いられるが良く知られた構成であるので説明を省く。
【0040】
そこでレンズ鏡筒に組込まれた前レンズAと後レンズBとの間に基板30を組込む。この基板30には前述の第1、第2の羽根部材10、20及び駆動装置40が組込まれ光量調整装置がユニット化されている。そこで制御CPUは露出量、シャッタスピードなどの撮影条件を設定し、露出制御回路及びシャッタ駆動回路に指示信号を発する。まず露光量は露出制御回路が制御CPUからの指示信号で駆動装置40のコイルに所定方向の電流を供給する。すると第1、第2の羽根部材10、20は駆動装置40の回転を駆動アーム44を介して駆動ピン44a、44bから伝達され最適露光量に光路開口31を形成する。
【0041】
次に図12乃至14に基づきマグネットロータ41の製造方法について詳述するに、図12は永久磁石42と駆動アーム44を接着により一体化する冶工具を示す図、図13はその接着方法を示す状態図、図14はその接着工程を説明するための工程図をそれぞれ示している。
【0042】
まず永久磁石42をネオジウム(Nd)系の磁石素材を所定の方向に磁界を形成した金型によりその磁界の方向に磁性が揃った磁化容易軸を持った異方性磁石に成形する。一方、前記駆動アーム44を光透過性のポリカーボネート(PC)樹脂で少なくとも後述する接着材を硬化し得る様に紫外線(UV)、電子線(EV)若しくは特定の可視光が透過可能に成形する。そして、接着剤として紫外線(UV)、電子線(EV)若しくは特定の可視光の照射により硬化する光硬化性樹脂70を用意する。
【0043】
そして、第1工程で、所定の方向に磁界N−Sを形成する取付部61を備えた冶工具60の該取付部61内に駆動アーム44をその磁界N−Sの方向に対し所定の姿勢β−βで位置決め支持する。尚、磁界N−Sは冶工具60の取付部61を形成する台座62、63にそれぞれ埋め込まれた磁石64、65により形成される。また、駆動アーム44は取付部61の紙面下方に形成された位置決め凹部68a、68b(図示せず)に支持アーム部44b、44cが嵌め込まれ位置決めされる。また、逃げ孔66、67は駆動アーム44の駆動ピン44a、44bが規制されないようにするための開口である。
【0044】
次に、第2工程で、その位置決め支持した駆動アーム44の回転軸43に光硬化性樹脂70を図13(a)で示す様に、回転軸43にその下端軸承部43bに塗布されないように注意しながら光硬化性樹脂70を塗布する。
【0045】
次に、第3工程で、その光硬化性樹脂70を塗布した駆動アーム44の回転軸43に永久磁石42の中空部42aを嵌合しつつ、冶工具60の取付部61に形成した磁石周面支持曲率端部62a、63aに沿ってセットする。このセットと同時に自動的に冶工具60の取付部61内の磁界N−Sにより永久磁石42の磁化容易軸α−αが平行に沿うよう回転し、冶工具60の取付部61内の磁界N−Sと永久磁石42の磁化容易軸α−αが平行となり、その結果として駆動アーム44の姿勢方向β−βに対し永久磁石42の磁化容易軸α−αの方向が所定の関係、この実施例の場合はほぼ直角の位置関係でセットされる。
【0046】
次に、第4工程で、その永久磁石42をその磁気容易軸α−αの方向が磁界N−Sの方向と一致する位置で磁気的に保持し続ける。
【0047】
次に、第5工程で、その磁気保持状態で駆動アーム44の光透過部を透過させ紫外線(UV)、電子線(EV)若しくは特定の可視光を照射して光硬化性樹脂70を硬化させる。
【0048】
最後に、第6工程で、光硬化性樹脂70で接着した永久磁石42と駆動アーム44を冶工具60から取り出すことでマグネットロータ41を得ることが出来る。
【0049】
そして、図14で示す様に以上の工程をロット分繰り返しマグネットロータ41を製造する。
【0050】
尚、冶工具60への下端軸承部43bを紙面上方に向けてセットする理由としては、駆動アーム44の回転軸43に塗布した光硬化性樹脂70が流れ下端軸承部43bに付着しないように配慮している。また、他端側の上端軸承部43aは永久磁石42の側面と当接しスラスト方向の位置決めするフランジ部45により光硬化性樹脂70が流れ出すことが無い。
【0051】
また、実施例でマグネットロータ41の回転軸43に作用する下端軸承部43bの球面をテーパ面48a側に付勢するための構造として、図9で示すように永久磁石42の長さ方向中央位置に対しヨーク52の同方向中央位置が図示の様にズレ量Lだけ変位させているが、別の方法としてマグネットロータ41の回転軸43の軸方向で下コイル枠48と励磁コイル49との間に磁性体を介在しても同様な効果を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係わる電磁駆動装置の要部の説明図であり、(a)は電磁駆動装置の断面図を示し、(b)はテーパ面と下端軸承部との係合を示す断面図。
【図2】本発明に係る光量調整装置の分解斜視図。
【図3】本発明の光量調整装置の駆動源である電磁駆動装置の構成を説明するための斜視図。
【図4】本発明の光量調整装置の駆動源である電磁駆動装置の構成を説明するための斜視図。
【図5】本発明の光量調整装置の駆動源である電磁駆動装置の構成を説明するための斜視図。
【図6】本発明の光量調整装置の駆動源である電磁駆動装置の構成を説明するための斜視図。
【図7】本発明の光量調整装置の駆動源である電磁駆動装置の構成を説明するための斜視図。
【図8】本発明の光量調整装置の駆動源である電磁駆動装置の構成を説明するための斜視図。
【図9】本発明の電磁駆動装置の側断面図。
【図10】本発明の電磁駆動装置の軸受構造を説明するための拡大断面図。
【図11】本発明に係る光量調整装置を備えた撮像装置の概略構成図。
【図12】本発明に係るマグネットロータ一体成形冶工具を示す図。
【図13】本発明に係るマグネットロータの接着方法を示す状態図。
【図14】本発明に係るマグネットロータの接着工程図。
【符号の説明】
【0053】
10 第1の羽根
11 開口
20 第2の羽根
21 開口
30 基板
31 光路開口
40 電磁駆動装置
41 マグネットロータ
42 永久磁石
43 回転軸
43a 上端軸承部
43b 下端軸承部
44 駆動アーム
46 コイル枠
47 上コイル枠
48 下コイル枠
48a テーパ面
49 励磁コイル
52 ヨーク
60 接着冶工具
70 接着剤(光硬化型接着剤)
E 光量調整装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を備えた駆動アームと、
この駆動アームの回転軸が貫通する中空円筒形状の永久磁石とを光硬化性樹脂からなる接着剤で一体化してなるマグネットロータにおいて、
前記駆動アームを光透過性の樹脂で成形し、
前記永久磁石を磁化容易軸を有する異方性磁石で成形し、
第1に、所定の方向に磁界を形成する取付部を備えた冶工具の該取付部内に前記駆動アームをその磁界の方向に対し所定の姿勢で位置決め支持し、
第2に、その位置決め支持した駆動アームの回転軸に光硬化性樹脂を塗布し、
第3に、その光硬化性樹脂を塗布した駆動アームの回転軸に前記永久磁石の中空部を嵌合し、
第4に、その永久磁石をその磁気容易軸の方向が前記磁界の方向と一致する位置で磁気的に保持し、
第5に、その磁気保持後に前記駆動アームを透過させ光を照射して前記光硬化性樹脂を硬化させ、
第6に、前記光硬化性樹脂で接着した前記永久磁石と前記駆動アームを冶工具から取り出してなることを特徴とするマグネットロータの製造方法。
【請求項2】
回転軸を備えた光透過性の樹脂で成形した駆動アームと、
この駆動アームの回転軸が貫通する中空円筒形状で磁化容易軸を有する異方性磁石に成形された永久磁石とからなり、
前記駆動アームと前記永久磁石とを光硬化性樹脂からなる接着剤で一体化してなるマグネットロータ。
【請求項3】
前記永久磁石は異方性磁石で磁化容易軸を有し、
前記駆動アームは光透過性の樹脂で成形され、
前記接着剤は、紫外線(UV)、電子線(EV)若しくは特定の可視光の照射により硬化する光硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項2に記載のマグネットロータ。
【請求項4】
中心に回転軸を有する中空円筒形状の永久磁石とから成るマグネットロータと、
このマグネットロータに通電方向に応じた回転トルクを付与する励磁コイルとを備えた電磁駆動装置において、
前記マグネットロータは、
前記回転軸を備えた光透過性の樹脂で成形した駆動アームと、
この駆動アームの回転軸が貫通する中空円筒形状で磁化容易軸を有する異方性磁石に成形された永久磁石とからなり、
前記駆動アームと前記永久磁石とを光硬化性樹脂からなる接着剤で一体化してなる電磁駆動装置。
【請求項5】
中心に回転軸を有する円筒形状の永久磁石から成るマグネットロータと、
前記回転軸の両端を回動自在に支持する一対の軸受を有するコイル枠と、
前記コイル枠の外周に巻廻された励磁コイルと、
前記コイル枠の外周に配置された軟磁性材から成るヨークとを備え、
前記一対の軸受の一方を前記回転軸の軸中心を中心とする円錐形状のテーパ面で構成し、
前記回転軸には軸中心を中心とする球面を設け、
この回転軸に形成した球面を前記軸受のテーパ面に当接すると共に、前記回転軸には前記球面を前記テーパ面側に付勢する付勢作用が付与されてなる電磁駆動装置であって、
前記マグネットロータは、
前記マグネットロータは、
前記回転軸を備えた光透過性の樹脂で成形した駆動アームと、
この駆動アームの回転軸が貫通する中空円筒形状で磁化容易軸を有する異方性磁石に成形された永久磁石とからなり、
前記駆動アームと前記永久磁石とを光硬化性樹脂からなる接着剤で一体化してなる電磁駆動装置。
【請求項6】
光軸開口を有する基板と、
この基板に取付けられ前記光軸開口を規制する羽根部材と、
この羽根部材を開閉駆動する電磁駆動装置とからなる光量調整装置において、
前記電磁駆動装置は、
中心に回転軸を有する中空円筒形状の永久磁石とから成るマグネットロータと、
このマグネットロータに通電方向に応じた回転トルクを付与する励磁コイルとを備え、
前記マグネットロータは、
前記回転軸と前記羽根部材と駆動連結する駆動ピンとを備えた光透過性の樹脂で成形した駆動アームと、
この駆動アームの回転軸が貫通する中空円筒形状で磁化容易軸を有する異方性磁石に成形された永久磁石とからなり、
これら永久磁石と駆動アームは光硬化性樹脂からなる接着剤で一体化して成ることを特徴とする光量調整装置。
【請求項7】
光軸開口を有する基板と、
この基板に取付けられ前記光軸開口を規制する羽根部材と、
この羽根部材を開閉駆動する電磁駆動装置とからなる光量調整装置において、
前記電磁駆動装置は、
中心に回転軸を有する円筒形状の永久磁石から成るマグネットロータと、
前記回転軸の両端を回動自在に支持する一対の軸受を有するコイル枠と、
前記コイル枠の外周に巻廻された励磁コイルと、
前記コイル枠の外周に配置された軟磁性材から成るヨークとを備え、
前記一対の軸受の一方を前記回転軸の軸中心を中心とする円錐形状のテーパ面で構成し、
前記回転軸には軸中心を中心とする球面を設け、
この回転軸に形成した球面を前記軸受のテーパ面に当接すると共に、前記回転軸には前記球面を前記テーパ面側に付勢する付勢作用が付与されてなるとともに、
前記マグネットロータは、
前記回転軸と前記羽根部材と駆動連結する駆動ピンとを備えた光透過性の樹脂で成形した駆動アームと、
この駆動アームの回転軸が貫通する中空円筒形状で磁化容易軸を有する異方性磁石に成形された永久磁石とからなり、
これら永久磁石と駆動アームは光硬化性樹脂からなる接着剤で一体化して成ることを特徴とする光量調整装置。

【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−340445(P2006−340445A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159895(P2005−159895)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】