説明

マグネットロールの製造方法および製造装置

【課題】 従来のマグネットロールの製造方法は、磁極ピースをシャフトに押し付ける上型および下型、並びにプレスする空気圧または油圧シリンダ等を用いており、装置自体が大型で、高価であるという問題があった。また、シャフトに無理な力が加わり、シャフトの真直度が悪化するという問題があった。
【解決手段】ドーナツ形のゴムの中空体が気体の注入により内側に膨らむバルーンチャックが複数並べられて形成された穴の中に、接着剤が固化する前の複数の磁極ピースを貼り合わせたシャフトを挿入した後、シャフトから複数の磁極ピースが自然に剥がれない程度に接着剤が固化するまでの間、複数のゴムの中空体に気体を注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザープリンタやデジタル複写機等の画像形成装置等に用いられるマグネットロールの製造方法、マグネットロールの製造装置およびマグネットロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シャフトの周りに短手方向の断面形状が略扇形の複数の磁極ピースを接着剤を用いて放射状に貼り合わせたマグネットロールが提供されている(例えば、特許文献1〜7参照)。
かかるマグネットロールは、上型および下型からなる治具を用い、上型および下型にそれぞれ略半分ずつの磁極ピースをセットし、上型と下型の間に周面に接着剤を塗布したシャフトを位置させて上型と下型をプレスする等により製造していた。
【0003】
【特許文献1】特開2003−229309号公報
【特許文献2】特開2003−229321号公報
【特許文献3】特開2001−034068号公報
【特許文献4】特開2000−075665号公報
【特許文献5】特開平10−308308号公報
【特許文献6】特開平01−114011号公報
【特許文献7】特開昭62−282422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記したマグネットロールの製造方法では、磁極ピースの精度のバラツキに対応して磁極ピースをシャフトに押し付けることができないという問題があった。また、上型と下型のプレスにより、シャフトに無理な力が加わり、シャフトの真直度が悪化し、ひいてはマグネットロール自体の真直度が悪化するという問題があった。
【0005】
また、前記したマグネットロールの製造装置は、上型と下型のプレスによりシャフトに複数の磁極ピースを押し付けるものであったため、押し付け力は上下方向のみであり、水平方向には押し付け力が働かないという問題があった。つまり、上型と下型が合わさる面の近傍にある磁極ピースは、シャフトへの押し付けが不十分であるという問題があった。
【0006】
さらに、前記したマグネットロールの製造装置は、上型および下型、並びにプレスする空気圧または油圧シリンダ等を必要とするため、装置自体が大型かつ高価であるという問題があった。
【0007】
また、前記したマグネットロールの製造装置は、形状・大きさ等の異なる複数機種のマグネットロールを製造する場合は、その都度、上型および下型の段取り替えが必要であるという問題があった。そして、同機種のマグネットロールを大量生産する場合は、複数の上型と下型からなる製造装置を準備しなければならないが、この場合、各製造装置の製造条件を同一にするための条件出しに多くの工数が必要であるという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、シャフトのもつ真直度に合わせて複数の磁極ピースを、磁極ピースの外周面から略均一な力で貼り合わせるマグネットロールの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。そして、かかるマグネットロールの製造方法および製造装置により、シャフトのもつ高精度な真直度をそのまま生かし、かつ磁極ピースがシャフトから浮いていないマグネットロールを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(第1発明)
第1発明に係るマグネットロールの製造方法は、シャフトの周面、または断面が略扇形形状である複数の磁極ピースにおけるシャフトの周面と対向する面に、接着剤を塗布し、シャフトの周面に複数の磁極ピースを貼り合わせた後、接着剤を固化させるマグネットロールの製造方法に関するものである。
【0010】
そして、ドーナツ形のゴムの中空体が気体の注入により内側に膨らむバルーンチャックが複数並べられて形成された穴の中に、接着剤が固化する前の複数の磁極ピースを貼り合わせたシャフトを挿入した後、シャフトから複数の磁極ピースが自然に剥がれない程度に接着剤が固化するまでの間、複数のゴムの中空体に気体を注入するものである。
【0011】
かかる構成により、気体が注入された複数のゴムの中空体が、シャフトの軸心(中心軸)に向かって、磁極ピースをシャフトに押し付けるので、シャフトに複数の磁極ピースを貼り合わせるに際し、シャフトに対して無理な外力を加えることが無い。なぜなら、磁極ピースのシャフトへの押し付けはゴムの中空体が行っており、かかるゴムの中空体は弾性体であり、シャフトよりも剛性が非常に小さいからである。したがって、本第1発明に係るマグネットロールの製造方法は、シャフトの高精度な真直度を維持することができ、ソリ量が少なく、真直度が高いマグネットロールを製造することができる。
【0012】
また、ゴムの中空体は、マグネットロールの全周からマグネットロール(シャフト)の軸心に向かって略同時に、かつ略均一な力で締め付ける(磁極ピースをシャフトに押し付ける)ので、磁極ピースをシャフトに対してきれいに貼り付けることができる。つまり、磁極ピースがシャフトから浮いていないマグネットロールを製造することができる。
【0013】
(第2発明)
第2発明に係るマグネットロールの製造方法は、第1発明において、バルーンチャックは、間隔をあけて並べられているものである。
【0014】
(第3発明)
また、第3発明に係るマグネットロールの製造方法は、第2発明において、バルーンチャック間の間隔は、どのバルーンチャック間でも等しくしたものである。
かかる第2発明および第3発明の構成であっても、第1発明と同じ効果を得ることができ、ソリ量が少なく、真直度が高いマグネットロールを製造することができる。また、バルーンチャックの数を少なくできるので、より安価にマグネットロールを製造することができる。
【0015】
(第4発明)
第4発明に係るマグネットロールの製造方法は、第1発明から第3発明のいずれか1つの発明において、バルーンチャックは、位置が可変のフローティング機構を有するものである。
【0016】
かかる構成により、気体が注入されたゴムの中空体のそれぞれが、磁極ピースの製造バラツキや、製造装置の加工・組立て精度のバラルキに対応して、シャフトを基準とした最適な位置に動くことができる。このため、前記した第1乃至第3発明の場合よりもさらに真直度の高いマグネットロールを製造することができる。
【0017】
(第5発明)
第5発明に係るマグネットロールの製造方法は、第1発明から第4発明のいずれか1つの発明において、気体の注入は、シャフトの軸方向の略中央部に位置するバルーンチャックのゴムの中空体から、両端部に位置するバルーンチャックのゴムの中空体に向かって順次行うものである。
【0018】
かかる構成により、マグネットロールの軸方向の略中央部からマグネットロールの軸方向の両端部に向かって順次ゴムの中空体がマグネットロールをシャフトの軸心に向かって締め付ける(磁極ピースをシャフトに押し付ける)ので、前記した効果を奏するのみならず、磁極ピースをシャフトに対してきれいに貼り付けることができるという効果を奏する。つまり、シャフトの高い真直度を生かしつつ、各磁極ピースがシャフトから浮いていないマグネットロールを製造することができる。
【0019】
(第6発明)
第6発明に係るマグネットロールの製造装置は、シャフトの周面に接着剤により複数の磁極ピースを貼り合わせたマグネットロールの製造装置において、ドーナツ形のゴムの中空体が気体の注入により内側に膨らむ複数のバルーンチャックと、複数のバルーンチャックを、その内側が連通するように固定した固定板と、シャフトから複数の磁極ピースが自然に剥がれない程度に接着剤が固化するまでの間、複数のゴムの中空体に気体を注入する制御装置とを有するものである。
【0020】
ここで、連通とは、隔絶された2つの空間の通路を介して、連続状態にすることをいう。より具体的には、隣り合うバルーンチャックのドーナツ形のゴムの中空体の内側の空間を連続状態にすることである。
【0021】
かかる構成により、気体が注入された複数のゴムの中空体である弾性体が、全ての磁極ピースの外周面からシャフトの軸心に向かって、全ての磁極ピースを略同時に、略均一な力でシャフトに押し付けるので、シャフトに複数の磁極ピースを貼り合わせるに際し、シャフトに対して無理な外力を加えることが無い。このため、シャフトの高精度な真直度を維持することができ、ソリ量が少なく、真直度が高いマグネットロールを製造することができる。
【0022】
また、構造が単純かつ小型であるため、製造装置を安価にでき、かつ、製造現場の省スペース化を図ることができる。
さらに、磁極ピースをシャフトに押し付けるに当たり、従来のように金属製の上型、下型等の剛体を用いていないので、製造するマグネットロールの機種が変わっても段取り替えが短時間でできるという効果を奏する。
また、同機種のマグネットロールを大量に生産する場合であっても、各マグネットロールの製造装置の加工精度、組立て精度等に基づくバラツキはゴムの中空体が吸収できるので、短期間で複数のマグネットロールの製造装置を生産導入することができるという効果を奏する。
【0023】
(第7発明)
第7発明に係るマグネットロールの製造装置は、第6発明において、バルーンチャックは、間隔をあけて並べられているものである。
【0024】
(第8発明)
また、第8発明に係るマグネットロールの製造装置は、第7発明において、バルーンチャック間の間隔は、どのバルーンチャック間でも等しくしたものである。
かかる第7発明および第8発明の構成であっても、第6発明と同じ効果を得ることができ、ソリ量が少なく、真直度が高いマグネットロールを製造することができる。
【0025】
(第9発明)
第9発明に係るマグネットロールの製造方法は、第6発明から第8発明のいずれか1つの発明において、バルーンチャックは、位置が可変のフローティング機構を有するものである。
【0026】
かかる構成により、気体が注入されたゴムの中空体のそれぞれが、シャフトを基準とした最適な位置に動くことができるので、前記した第6乃至第8発明の場合よりもさらに真直度の高いマグネットロールを製造することができる。
【0027】
(第10発明)
第10発明に係るマグネットロールの製造方法は、第6発明から第9発明のいずれか1つの発明において、制御装置は、シャフトの軸方向の略中央部に位置するバルーンチャックのゴムの中空体から、両端部に位置するバルーンチャックのゴムの中空体に向かって順次気体を注入するものである。
【0028】
かかる構成により、マグネットロールの軸方向の略中央部から両端部に向かって順次ゴムの中空体がマグネットロールをシャフトの軸心に向かって締め付ける(磁極ピースをシャフトに押し付ける)ので、前記した効果を奏するのみならず、磁極ピースをシャフトに対してきれいに貼り付けることができるという効果を奏する。
【0029】
(第11発明)
第11発明に係るマグネットロールは、第1発明から第5発明のいずれか1つに記載したマグネットロールの製造方法、または第6発明から第10発明のいずれか1つに記載したマグネットロールの製造装置により製造したものである。
【0030】
かかる構成により、シャフトの高い真直度を生かした真直度の高いマグネットロールを提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、シャフトのもつ真直度に合わせて複数の磁極ピースを貼り合わせるマグネットロールの製造方法および製造装置を提供することができる。
また、かかるマグネットロールの製造方法および製造装置により、シャフトのもつ高精度な真直度をそのまま生かしたマグネットロールを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
(マグネットロール)
まず、本発明が対象とするマグネットロールについて説明する。
図1はマグネットロールの斜視図、図2はマグネットロールの側面図(図1における矢視A)である。
【0033】
本発明が対象とするマグネットロールは、円柱状の金属製のシャフトの周りに、短手方向の断面が略扇形の複数の磁極ピースを放射状に貼り合わせられたものである。例えば、図1および図2に示すように、マグネットロール1は、シャフト2の周りに磁極ピース3〜8が接着剤を用いて放射状に貼り合わせられたものである。この例では、シャフト2の周りに、汲み上げ極S3の磁極ピース5と、トリミング極N2の磁極ピース4と、現像極S1の磁極ピース3と、回収(搬送)極N1の磁極ピース8と、剥離極S2の磁極ピース7がこの順に貼り付けられており、さらに、汲み上げ極S3の磁極ピース5と剥離極S2の磁極ピース7間には介在極ピース6が介在したものである。
【0034】
この磁極ピース3〜8は、磁石材料粉、樹脂バインダー、添加剤等の混合物を磁場中で成形することによって製造される。磁石材料粉としては、例えば、フェライト粉や、Nd等の希土類金属粉とFe、Co、Ni等の鉄族金属粉との混合物が使用される。また、樹脂バインダーは、例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エチレンエチルアクリレート(EEA)等が使用される。
【実施例1】
【0035】
(マグネットロールの製造装置)
本実施例1に係るマグネットロールの製造装置を図3〜図9を用いて説明する。図3および図4はバルーンチャックの斜視図、図5はマグネットロールの製造装置の斜視図、図6はマグネットロールの製造装置の側面図、図7はマグネットロールの製造装置の構成図、図8および図9はマグネットロールの製造装置の斜視図である。
【0036】
図5に示すように、マグネットロールの製造装置18は、複数のバルーンチャック9(91〜97)が、それぞれのバルーンチャック9の内側12が連通するように密接して並べられ、1つの穴15が形成されている。このバルーンチャック9は、図6に示すように、固定板14に固定ボルト16および平ワッシャ17により固定されている。
【0037】
ここで、バルーンチャック9(91〜97)は、全て同じものであり、図3および図4を用いて詳細に説明する。
バルーンチャック9は、金属または樹脂製の円筒形のボディ10の内側(内周面)に、ドーナツ形のゴムの中空体としてのゴムチューブ11の外側(外周面)が接着剤等により固定されたものである。そして、ゴムチューブ11には、気体(例えば、エアー)を注入/排出できる図示しないチューブコネクタが取り付けられている。
【0038】
このチューブコネクタにはチューブ13が接続されており、図7に示すように電磁弁(81等)および減圧弁(71等)により、ゴムチューブ11の内部に所定の圧力の気体を注入または排出できるようになっている。図8は全てのバルーンチャック9のゴムチューブ11の内部の気体を排出した状態を示したものであり、図9は全てのバルーンチャックのゴムチューブ11の内部に気体を注入した状態を示したものである。このようなバルーンチャック9は、一般に市販されているものを用いることができる。例えば、ブリヂストン社製のエアグリッパ(型式:G020GCA等)である。
【0039】
次に、マグネットロールの製造装置18の制御装置22について、以下に説明する。
図7に示すように、図5に示したマグネットロールの製造装置18のそれぞれのバルーンチャック9には、前記したようにチューブ13が接続されている。このチューブ13はそれぞれ電磁弁81〜87に接続されており、これらの電磁弁81〜87はそれぞれ減圧弁71〜77にチューブ23により接続されている。ここで、減圧弁とは、タンク21から供給された加圧気体の圧力を減少させる弁のことである。図7において図面を見易くするため減圧弁72、73、75、76の符号を省略しているが、減圧弁は71から77まで順に並んでいる。
【0040】
そして、減圧弁71〜77は、加圧された気体を蓄積したタンク21にチューブ24により接続されている。このため、減圧弁71〜77によりバルーンチャック9のゴムチューブ11に供給する気体の圧力を個々に設定することができる。尚、本実施例1においては、減圧弁71〜77の設定は、全て同じにした。
【0041】
また、電磁弁71〜77は、コントローラ19に配線20により接続されている。このコントローラ20は、電磁弁71〜77の動作を制御するものであり、電磁弁71〜77の動作順序および動作時間を設定することができる。
【0042】
本実施例1においては、マグネットロールの製造装置18の穴15に挿入した磁極ピース3〜8付きのシャフト2の略中央部に位置するバルーンチャック94を最初に動作させ、その1秒後にその両側のバルーンチャック93および95を動作させ、その1秒後にその両側のバルーンチャック92および96を動作させ、その1秒後に両端のバルーンチャック91および97を動作させるように設定した。そして、動作時間は、最後のバルーンチャック91および97が動作してから60秒で全てのバルーンチャック91乃至97の動作を停止するように設定した。
【0043】
すなわち、コントローラ19は、電磁弁84→電磁弁83および85→電磁弁82および86→電磁弁81および87の順に配線20を介して各電磁弁に動作信号を送るため、各電磁弁は上記の順に各バルーンチャック9の各ゴムチューブ11に気体を送ることになる。そして、コントローラ19は最後の電磁弁81および87に動作信号を送信してから60秒のカウントを行い、60秒に達し次第、全ての電磁弁71〜77への動作信号の送信を停止するため、全てのバルーンチャック9(91〜97)のゴムチューブ11から略同時に気体が放出されることになる。
【0044】
尚、本発明において、制御装置は、シャフト2から複数の磁極ピース3〜8が自然に剥がれない程度に接着剤が固化するまでの間、複数のゴムチューブ11に気体を注入するものであるため、図7において一点鎖線で示したように、コントローラ19、電磁弁81〜87、減圧弁71〜77およびタンクを含むものである。
【0045】
(マグネットロールの製造方法)
次に、前記したマグネットロールの製造装置18を用いてマグネットロールを製造する方法について説明する。
【0046】
まず、シャフト2の周面(外周面)に接着剤を塗布する。この接着剤は、シャフト2と磁極ピース3〜8とを接着するためのものであるから、断面が略扇形形状である複数の磁極ピース3〜8におけるシャフト2の周面と対向する面に接着剤を塗布しても良い。
【0047】
次に、シャフト2の周面に複数の磁極ピース3〜8を貼り合わせる。ここでの貼り合わせは暫定的なものであり(仮固定、仮貼り合わせ)、単にシャフト2の周面に複数の磁極ピースが所定の並びで貼り付いている程度で良い。
この磁極ピース3〜8が仮固定されたシャフト2を、前記したマグネットロールの製造装置18の穴15に挿入する。この状態を示したものが図8である。
【0048】
そして、前記した制御装置22を動作させる。つまり、最初に電磁弁84を動作させて、シャフト2の略中央部に位置するバルーンチャック94のゴムチューブ11に気体を注入し、シャフト2の略中央部に磁極ピース3〜8を押し付ける。そして、その1秒後にバルーンチャック94の両側に位置するバルーンチャック93および95のゴムチューブ11に気体を注入し、その位置においてシャフト2に磁極ピース3〜8を押し付ける。そして、その1秒後にバルーンチャック93および95軸方向の外側に位置するバルーンチャック92および96のゴムチューブ11に気体を注入し、その位置においてシャフト2に磁極ピース3〜8を押し付ける。そして、その1秒後にバルーンチャック92および96軸方向の外側に位置するバルーンチャック91および97のゴムチューブ11に気体を注入し、その位置(軸方向の両端部)においてシャフト2に磁極ピース3〜8を押し付ける。この状態を示したものが図9である。
【0049】
その後、前記したシャフト2への磁極ピース3〜8の押し付け状態を所定の時間、すなわち、シャフト2から磁極ピース3〜8が自然に剥がれない程度に接着剤が固化するまでの時間(本実施例1では60秒)維持する。そして、その時間の経過後、全てのバルーンチャック91〜97のゴムチューブ11から気体を放出する。この状態は、図8と略同じである。
【0050】
この時点おけるマグネットロール1は、シャフト2から磁極ピース3〜8が自然に剥がれない程度に接着剤が固化しているだけである。したがって、その後、例えば、約24時間常温にて保管することにより、接着剤が完全に固化したマグネットロールを得ることができる。
尚、自然に剥がれない程度とは、常温で放置していても磁極ピースが自重や自己のソリ等によってシャフトから離れず、シャフトに貼り付いた状態を維持し続けることをいう。
【0051】
前記したマグネットロールの製造装置は、構造が単純なため、複数並列に並べることにより、小さいスペースで品質の良いマグネットロールを大量に生産できる装置にすることができる。つまり、製造現場の省スペース化を図ることができる。また、装置コストが安価であるため、マグネットロールのコストを安価にできる。
【0052】
また、前記したマグネットロールの製造装置は、製造するマグネットロールの機種が変わっても段取り替えが短時間でできる。さらに、同機種のマグネットロールを大量に生産する場合であっても、各マグネットロールの製造装置の加工精度、組立て精度等に基づくバラツキはゴムチューブが吸収するので、短期間で複数のマグネットロールの製造装置を立ち上げることができる。
【0053】
また、前記したマグネットロールの製造方法により製造したマグネットロールは、弾性体であるゴムチューブ11によりシャフト2に磁極ピース3〜8を全周から押し付けるので、磁極ピースの製造バラツキによりシャフト2に無理な押し付けがなされることが無く、シャフト2を曲げる(反らせる)ことが無い。すなわち、シャフト2の持つ高精度な真直度をそのまま生かしたマグネットロールを製造できる。
【実施例2】
【0054】
本発明に係る第2実施例を、図10を用いて以下に説明する。
図10は、マグネットロールの製造装置の斜視図であり、詳しくは、磁極ピース3〜8を貼り合わせたシャフト2をマグネットロールの製造装置の穴15に挿入した状態を示したものである。尚、実施例1との相違点のみを詳細に説明し、実施例1と同一の部分については説明を省略する。
【0055】
本実施例2の実施例1との主な相違点は、バルーンチャック9が間隔をあけて固定板14に固定されている点である。つまり、本実施例2は、実施例1で説明した構成からバルーンチャック92および96を取り除き、バルーンチャック91、93、94、95および97のそれぞれに間隔を設けたものである。その他の点については、実施例1と略同一の構成である。かかる構成であっても、前記した実施例1と同じ効果を得ることができる。
【0056】
磁極ピース3〜8のソリ量が大きい場合は、シャフト2への両端部の押し付けを強化する観点から、バルーンチャック9の配設密度は、シャフト2の軸方向の両端部を高くすることが望ましい。具体的には、図10において、バルーンチャック91、94および97の位置を図10のままにし、バルーンチャック93および95の位置を変えて、バルーンチャック91と93の間隔、およびバルーンチャック95と97の間隔を狭くし、バルーンチャック93と94の間隔、およびバルーンチャック94と95の間隔を広くする等である。
【実施例3】
【0057】
本発明に係る第3実施例を、図11を用いて以下に説明する。
図11は、マグネットロールの製造装置の側面図である。尚、実施例2との相違点のみを詳細に説明し、実施例2と同一の部分については説明を省略する。
【0058】
本実施例3の実施例2との主な相違点は、バルーンチャック9が等間隔(B)で固定板14に固定されている点である。その他の点については、実施例2と同一の構成である。かかる構成であっても、前記した実施例1と同じ効果を得ることができる。また、バルーンチャックの数を若干減らすことができるので、マグネットロールの製造装置を安価にすることができる。
【実施例4】
【0059】
本発明に係る第4実施例を、図12を用いて以下に説明する。
図12は、マグネットロールの製造装置の断面図である。尚、実施例3との相違点のみを詳細に説明し、実施例3と同一の部分については説明を省略する。
【0060】
本実施例4の実施例3との主な相違点は、バルーンチャック9に、フローティング機構を設けた点である。つまり、バルーンチャックは、ゴムの中空体に気体を注入した際に、位置の微調整ができる機構を有するものである。
【0061】
具体的には、実施例3の構成から平ワッシャ17を無くした点が相違点である。つまり、バルーンチャック9は、固定板14に強固に固定されているのではなく、固定板14に設けられた貫通穴25と固定ボルト16の隙間、および固定板14の底面26と固定ボルト16の頭部の隙間があるので、自由に動けるようになっている。
【0062】
このため、バルーンチャック9のゴムチューブ11に気体が注入された場合に、マグネットロールに合わせて個々のバルーンチャック9が位置決めを行ないつつ、全周から磁極ピース3〜8をシャフト2に押し付ける。
かかる構成により、実施例1の効果を奏するのみならず、実施例1〜3以上にシャフト2に無理な外力が加わらないので、実施例1〜3以上にシャフト2の高精度な真直度が維持され、ソリ量が少なく、真直度が高いマグネットロールを製造することができる。
【0063】
尚、フローティング機構として、実施例4においては、固定ボルト16を用いたものを示したが、これに限定されるものではなく、バルーンチャック9がゴムチューブ11の内側12が略連通した状態を維持し、かつ、個々のバルーンチャック9がその位置の近傍を自由に動けるものであれば、その他の公知のフローティング機構を採用できる。
【0064】
例えば、図13に示すように、下板28に形成した各凹部29のそれぞれにバルーンチャックを置き、上板27に形成した各凹部32のそれぞれにバルーンチャックを位置させて、下板28に対して図示しない複数の板等を用いて上板27を固定する。このようなフローティング機構であっても、凹部29および凹部32内においてバルーンチャックが自由に動くことができるので、前記した効果を得ることができる。尚、図13は、説明を分かりやすくするために、各凹部とバルーンチャックの隙間を大きく図示した。
【実施例5】
【0065】
本発明に係る第5実施例を、図14を用いて以下に説明する。
図14は、マグネットロールの製造装置の断面図である。尚、説明を分かり易くするため、図14において、図12との相違点は断面図にしていない。
また、実施例4との相違点のみを詳細に説明し、実施例4と同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
本実施例5の実施例4との主な相違点は、各バルーンチャック間に、軸受け31に支持されたローラ30を設けた点である。
かかるマグネットロールの製造装置は、各バルーンチャック間に自由に回転できるローラが設けられているので、複数のバルーンチャックの内側が連通することにより形成される穴に、複数の磁極ピースが接着剤により貼り付けられた(仮固定された)シャフトを容易に挿入することができる。
【0067】
つまり、複数の磁極ピースが接着剤により仮固定されたシャフト(半製品)を複数のバルーンチャックにより形成される穴に挿入するに際し、半製品をローラ30に載せることにより、バルーンチャックのゴムチューブの内面に半製品の外周面を当てることが無い。このため、半製品を容易に穴に挿入することができる。
【0068】
前記した実施例は、説明のために例示したものであって、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載から当事者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更、削除および付加が可能である。
【0069】
例えば、前記した実施例においては、シャフト2に貼り付ける磁極ピースの個数として6個のものを示したが、6個に限定されるものではなく、磁極ピースは複数であれば、4個であっても8個であっても良い。
【0070】
また、前記した実施例においては、シャフト2の軸方向の略中央部にあるバルーンチャック9のゴムチューブ11から軸方向の両端部のバルーンチャック9のゴムチューブ11に順次気体を注入するものを示したが、これに限定されるものではなく、全てのゴムチューブ11に同時に気体を注入してもよく、一端のゴムチューブ11から他端のゴムチューブ11に向かって順次気体を注入しても良い。
【0071】
また、前記した実施例においては、バルーンチャック9の個数として7個または5個のものを示したが、バルーンチャック9は複数であれば良く、20個、12個等の偶数個であっても良い。
【0072】
また、前記した実施例においては、減圧弁71〜77の設定を全て同じにしたものを示したが、圧力の設定値を個々に設定しても良い。例えば、磁極ピース3〜8のソリ量が大きい場合は、シャフト2への両端部の押し付けを強化する観点から、シャフト2の両端部に位置するバルーンチャック91および97の減圧弁71および77の圧力設定値を高くする等である。
【0073】
また、前記した実施例においては、電磁弁の動作を1秒毎に順次行ない、電磁弁の保持時間を60秒にしたものを示したが、これに限定されるものではない。
【0074】
さらに、マグネットロールの製造装置は、各バルーンチャック9が1本の固定ボルト16により支持されているものであり、かつ、第4実施例においては各バルーンチャック9が動くので、固定ボルト16の先端にロックタイト(登録商標)等を付けることにより、固定ボルト16がバルーンチャック9から抜けなくすることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、画像形成装置等に使用されるマグネットロールに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】マグネットロールの斜視図である
【図2】マグネットロールの側面図(図1における矢視A)である
【図3】バルーンチャックの斜視図である(実施例1)
【図4】バルーンチャックの斜視図である(実施例1)
【図5】マグネットロールの製造装置の斜視図である(実施例1)
【図6】マグネットロールの製造装置の側面図である(実施例1)
【図7】マグネットロールの製造装置の構成図である(実施例1)
【図8】マグネットロールの製造装置の斜視図である(実施例1)
【図9】マグネットロールの製造装置の斜視図である(実施例1)
【図10】マグネットロールの製造装置の斜視図である(実施例2)
【図11】マグネットロールの製造装置の側面図である(実施例3)
【図12】マグネットロールの製造装置の断面図である(実施例4)
【図13】マグネットロールの製造装置の断面図である(実施例4)
【図14】マグネットロールの製造装置の断面図である(実施例5)
【符号の説明】
【0077】
1 マグネットロール
2 シャフト
3〜8 磁極ピース
9(91〜97) バルーンチャック
11 ゴムチューブ
12 内側
14 固定板
15 穴
22 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの周面、または断面が略扇形形状である複数の磁極ピースにおける該シャフトの周面と対向する面に、接着剤を塗布し、
該シャフトの周面に前記複数の磁極ピースを貼り合わせた後、
前記接着剤を固化させるマグネットロールの製造方法において、
ドーナツ形のゴムの中空体が気体の注入により内側に膨らむバルーンチャックが複数並べられて形成された穴の中に、前記接着剤が固化する前の前記複数の磁極ピースを貼り合わせた前記シャフトを挿入した後、
前記シャフトから前記複数の磁極ピースが自然に剥がれない程度に前記接着剤が固化するまでの間、前記複数のゴムの中空体に気体を注入することを特徴とするマグネットロールの製造方法
【請求項2】
前記バルーンチャックは、間隔をあけて並べられている請求項1に記載のマグネットロールの製造方法
【請求項3】
前記間隔は、どのバルーンチャック間でも等しい請求項2に記載のマグネットロールの製造方法
【請求項4】
前記バルーンチャックは、位置が可変のフローティング機構を有する請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のマグネットロールの製造方法
【請求項5】
前記エアーの注入は、前記シャフトの軸方向の略中央部に位置する前記バルーンチャックの前記ゴムの中空体から、両端部に位置する前記バルーンチャックの前記ゴムの中空体に向かって順次行う請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のマグネットロールの製造方法
【請求項6】
シャフトの周面に接着剤により複数の磁極ピースを貼り合わせたマグネットロールの製造装置において、
ドーナツ形のゴムの中空体が気体の注入により内側に膨らむ複数のバルーンチャックと、
該複数のバルーンチャックを、前記内側が連通するように固定した固定板と、
前記シャフトから前記複数の磁極ピースが自然に剥がれない程度に該接着剤が固化するまでの間、前記複数のゴムの中空体に気体を注入する制御装置とを有することを特徴とするマグネットロールの製造装置
【請求項7】
前記バルーンチャックは、間隔をあけて並べられている請求項6に記載のマグネットロールの製造装置
【請求項8】
前記間隔は、どのバルーンチャック間でも等しい請求項7に記載のマグネットロールの製造装置
【請求項9】
前記バルーンチャックは、位置が可変のフローティング機構を有する請求項6から請求項8のいずれか1つに記載のマグネットロールの製造装置
【請求項10】
前記制御装置は、前記シャフトの軸方向の略中央部に位置する前記バルーンチャックの前記ゴムの中空体から、両端部に位置する前記バルーンチャックの前記ゴムの中空体に向かって順次前記気体を注入する請求項6から請求項9のいずれか1つに記載のマグネットロールの製造装置
【請求項11】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載したマグネットロールの製造方法、または請求項6から請求項10のいずれか1つに記載したマグネットロールの製造装置により製造したマグネットロール

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−300802(P2009−300802A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156065(P2008−156065)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【特許番号】特許第4208205号(P4208205)
【特許公報発行日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
【Fターム(参考)】