マグネトロンスパッタリング装置及び電子部品の製造方法
【課題】薄膜均一性および高い生産性を維持しつつ、低抵抗の良質なW膜の成膜を可能とするマグネトロンスパッタリング装置を提供する。
【解決手段】ターゲットと交差する方向に磁化された2つの磁石部材を、ターゲット側に向く磁極が互いに逆向きとなるようにして隣接配置したマグネットピース22を複数備えた磁石ユニットを設けたマグネトロンスパッタリング装置とし、磁石ユニットによって作り出されるターゲット表面の水平磁束密度を高くすることによって、ターゲットへ加速されるArイオンのイオンエネルギーを小さくする。すなわち、ターゲット表面の水平磁束密度を高くするとターゲット表面で生成されるプラズマ密度が増加し、同一のDC電力を投入した場合に、プラズマ密度が増加した分だけプラズマインピーダンスが低下してターゲット電圧が低下し、W膜に取り込まれる反射Arの含有量を小さくすることによりW膜の低抵抗化を実現する。
【解決手段】ターゲットと交差する方向に磁化された2つの磁石部材を、ターゲット側に向く磁極が互いに逆向きとなるようにして隣接配置したマグネットピース22を複数備えた磁石ユニットを設けたマグネトロンスパッタリング装置とし、磁石ユニットによって作り出されるターゲット表面の水平磁束密度を高くすることによって、ターゲットへ加速されるArイオンのイオンエネルギーを小さくする。すなわち、ターゲット表面の水平磁束密度を高くするとターゲット表面で生成されるプラズマ密度が増加し、同一のDC電力を投入した場合に、プラズマ密度が増加した分だけプラズマインピーダンスが低下してターゲット電圧が低下し、W膜に取り込まれる反射Arの含有量を小さくすることによりW膜の低抵抗化を実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程等で使用されるマグネトロンスパッタリング装置にかかわり、基板へのチャージアップダメージを抑制しつつ、薄膜均一性および高い生産性を維持したまま低抵抗の良質な膜の形成を可能とするマグネトロンスパッタリング装置及びそれを用いた電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング方法としては、例えば特許文献1に示すようなマグネトロンスパッタリング法が知られている。マグネトロンスパッタリング法では、ターゲット電極の背面側にマグネットを設け、ターゲット表面に磁界を形成させることにより、ターゲット近傍に電子が閉じ込められるため、低圧条件下でも効率的にイオン化を行うことができ、高密度なプラズマが生成される。従って、高品質の膜が得られしかも高速成膜が可能であることから、様々な分野で実用化されている。半導体デバイスや電子部品の製造においても例外ではなく、これらデバイス等の特性を左右する重要な技術として位置づけられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−92632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常、上述のマグネットによって閉じ込められたプラズマの密度は、ターゲット上で一様ではなく、ターゲット上の磁場の強さによって決まる分布をもっており、このプラズマ分布の不均一性によるチャージアップダメージの発生という問題がある。すなわち、プラズマ密度は雰囲気中に存在する磁束密度の強さに依存するため、マグネット配置によって基板近傍における磁束密度が不均一となり、これに伴ってプラズマ密度の不均一性が生じる。このため、例えば、電界効果トランジスタの製造において、ゲート電極をゲート酸化膜上に形成する際に、ゲート酸化膜がプラズマ中に曝されるため、不均一に電荷が蓄積された場合にゲート酸化膜に電気的ストレス(高電界によるトンネル電流の流入)が生じ、ゲート酸化膜の破壊や劣化を引き起こすことになる。
【0005】
したがって、プラズマの不均一性によるチャージアップダメージの発生を抑制することが求められる。
【0006】
さらに、一部のターゲット材料では、ターゲットへの投入電力を大きくすると、成膜物質の比抵抗が増加してしまうという問題がある。図4に、電極材料などに用いられるタングステン(W)を成膜する場合のW膜の比抵抗とターゲット電極への投入電力(直流電力)との関係を示す。投入電力が大きいと、W膜の比抵抗が増大してしまうのが分かる。
【0007】
これに対し、投入電力を小さくすれば膜の低抵抗化を実現できる反面、成膜レートが大幅に低下する。すなわち、投入電力の低下による成膜装置のスループット低下にともなって生産性が低下してしまうという課題が生じる。
【0008】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、チャージアップダメージを抑えて、高品質な膜を高速に成膜可能な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述の問題点に鑑み、比抵抗の異なる2種類のW膜のSIMS(二次イオン質量分析計)による分析を行った。具体的には、放電時の投入直流電力が「0.5kW」と「2.5kW」の条件でW膜を成膜した試料を用意した。「0.5kW」条件におけるターゲット電圧は−300V程度である。「2.5kW」条件におけるターゲット電圧は−370V程度である。図5のグラフは2条件の基板について各元素の検出強度を基板表面から深さ方向に対してプロットしたデータである。主成分として検出された元素は、ターゲット材料のW、プロセスガス(スパッタガス)のArである。Wの検出強度にはほとんど差が確認されなかったが、Arの検出強度は「0.5kW」条件の方が「2.5kW」条件よりも小さい。W膜に含まれるArの量はDC電力が小さい条件で処理した方が相対的に少ないことがわかる。
【0010】
図4の結果から図6のような後方散乱Ar(以降、反射Arと略す)がW膜に取り込まれるモデルが考えられる。反射Arとは、ターゲット電圧によってターゲットに入射したArイオンが電荷を失った後、ターゲットで反射することによって通常気体時の温度よりも高いエネルギーを持つにいたったAr原子のことである。また、反射Arのエネルギーはターゲットの原子量に依存するため、ターゲット材料にW原子を用いた場合は、TiやAlなどの比較的軽い金属を用いた場合よりも反射Arが発生しやすい。ターゲット電圧のエネルギーを低くするとArイオンに与えられる運動エネルギーは小さくなるので、基板へ到達する反射Arのエネルギーが小さくなる、あるいは反射Arの量が減少する。さらに、反射Arのエネルギーの減少は、Ar原子が基板に成膜されたW膜に突入する確率を低くするため、W膜の結晶構造やグレインサイズ等を変化させ、結果としてW膜の比抵抗が変化すると考えられる。
【0011】
図6で示した反射ArがW膜に取り込まれるモデルから、生産性を維持したままW膜の比抵抗を低下させる手段として、マグネットによって作り出されるターゲット表面の水平磁束密度を高くすることによってターゲットへ加速されるArイオンのイオンエネルギーを小さくする方法を考案した。すなわち、ターゲット表面の水平磁束密度を高くするとターゲット表面で生成されるプラズマ密度が増加する。同一の電力を投入した場合、プラズマ密度が増加した分だけプラズマインピーダンスが低下し、ターゲット電圧が低下する。ターゲット電圧の低下によって反射Arの運動エネルギーが低下するため反射Arの基板への到達確率が低下し、W膜に取り込まれるAr原子の量が減少すると考えられる。この方法であれば、成膜レートを維持したままW膜の比抵抗を低下することができる。
【0012】
しかしながら、マグネットの磁束密度を強くする場合には、先に述べたようなプラズマの不均一性によるチャージアップダメージの発生を考慮する必要性がある。
【0013】
したがって、本発明の一実施形態にかかるマグネトロンスパッタリング装置は、ターゲットを取り付け可能なカソード電極と、前記カソード電極の前記ターゲットとは反対側に位置し、前記ターゲット表面に水平方向の磁界を形成する磁石ユニットと、を備え、前記磁石ユニットは、前記ターゲットと交差する方向に磁化された第1磁石部材と、前記ターゲットと交差する方向であって前記第1磁石部材と逆方向に磁化されると共に、前記ターゲット表面に水平方向の磁界を形成するように前記第1磁石部材に接して位置する第2磁石部材と、を有するマグネットピースを備えることとした。
【0014】
これにより、ターゲット近傍の磁束密度を強くしつつ、基板近傍の磁束密度を抑制できる構成とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ターゲット近傍での磁束密度が高く、基板近傍での磁束密度が抑制されるので、高品質な高速成膜が可能で、かつ、チャージアップダメージを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のスパッタリング装置の一例を示す模式図である。
【図2A】本実施形態の磁石ユニットを示す概略平面図である。
【図2B】本実施形態のマグネットピースを示す模式図である。
【図3】本発明を適用可能な電子部品の製造例を示す図である。
【図4】膜の比抵抗と投入DC電力の関係を示すグラフである。
【図5】膜中のAr含有量を示すグラフである。
【図6A】ターゲット電圧が高い場合に、膜中にArが取り込まれる現象を示すモデルである。
【図6B】ターゲット電圧が低い場合に、膜中にArイオンの挙動を示すモデルである。
【図7】膜の比抵抗の水平磁束密度依存性を示すグラフである。
【図8】本発明のカソードマグネットにおける水平磁束密度のZ軸方向に対する減衰状態を示すグラフである。
【図9】比較例のマグネットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
[装置構成]
図1に、本実施形態にかかるマグネトロンスパッタリング装置の構成を示す断面模式図を示す。
【0019】
図1のマグネトロンスパッタリング装置は、成膜室1の内部に、基板8を保持可能なウエハホルダ5と、基板8に向けて配置されたターゲット41及びターゲット41に電圧を印加可能なターゲット電極(カソード電極)42からなるカソードユニット4とを備える。また、カソードユニット4のウエハホルダ5に向く面と反対側には、ターゲット41表面に磁場を形成するための磁石ユニット2が設けられている。磁石ユニット2は、金属などの材料より形成されるプレート21と、プレート21に取り付けられる複数のマグネットピース22とを備えている。また、磁石ユニット2は、ターゲット41に交差する回転軸3を中心に回転可能に構成され、ターゲット41表面上にその面内方向に沿って回転する磁場を形成することで、エロージョンがターゲット41全面で均一に生じる。なお、符号6はウエハホルダ5を上下駆動するための昇降機構である。
【0020】
また、図示していないが、成膜室1は、真空ポンプと、スパッタガスを導入可能なガス導入系に接続され、内部が減圧されると共にスパッタガスを導入可能に構成されている。スパッタガス導入後、ターゲット41へグロー放電用の高圧電源7により電力を供給することにより、磁石ユニット2の形成する磁気回路内に閉じ込められたスパッタ用の高密度なプラズマ9が生成される。このとき、プラズマ中の電子は、磁石ユニット2によって形成される磁気回路内のドリフト運動によってターゲット表面近傍にトラップされるためガス分子のイオン化が促進される。ターゲット表面上の水平磁束密度が高い点に高密度のプラズマが形成される。このプラズマ9中のイオンが、陰極シースで加速されターゲット41に衝突すると、ターゲット41からその構成原子がスパッタされ、その原子が基板8の表面へ付着して薄膜が形成される。
【0021】
図2Aに磁石ユニット2の平面図、図2Bに磁石ユニット2の部分側面図を示す。
【0022】
磁石ユニット2は、前記のように、金属などの材料より形成されるプレート21と、プレート21に取り付けられる複数のマグネットピース22とを備えて構成されている。
【0023】
マグネットピース22は、プレート21に交差する方向(ターゲット41と交差する方向)に磁化された2つのマグネット(第1磁石部材と第2磁石部材)BN,BSを有し、この2つのマグネットBN,BSはターゲット41側に向く磁極が互いに逆向きとなるようにして隣接配置される。これにより、一方のマグネットBNからターゲット41側に向かって出て他方のマグネットBSの端部に収束するトンネル状の磁力線による磁場Bが形成される。マグネット中、磁力が最も強い磁極同士を異極性で隣接配置することで、近傍で強度が大きく、離れた位置への発散が小さい磁場Bが形成される。マグネットBN,BSのターゲット41と反対側の端部は、中間プレート22Aを介してプレート21に取り付けられている。中間プレート22Aは、好ましくは透磁率の高い材料、軟磁性材料(例えば、磁性SUS)で形成され、マグネットBN,BSの端部同士を磁気的に結合し、又は、磁石ユニット2外部に対し磁界を遮蔽する。マグネットBN,BSの材料は、本発明において特に限定されず、鋼系磁石、フェライト系磁石、希土類系磁石のいずれも用いることができるが、高い磁束密度を得るためにNd−Fe系磁石とすることが好ましい。
【0024】
図2Aの例では、上述したマグネットピース22が複数、上記磁力線のトンネルが無端状につながるような位置関係で、具体的には、一方の磁極が内側、他方の磁極が外側となるように複数のマグネットピース22が向きを揃え、周方向に互いに間隔を空けてリング状に配置されるマグネットピース22はターゲット41の表面に水平な径方向に向かうリング状磁界を形成するようにリング状に配置することが好ましい。環状は、円環状に限らず、無端状であればよい。これにより、電子が無端状の磁場を旋回するようにドリフト運動し、ターゲット41表面上を回り続けることになり、ガスとの衝突によりイオンを生成する。そして、ターゲット41表面に交差する方向に形成される電界に対し、磁力線が直交する部分、ターゲット41表面に平行な方向の磁束密度(以後、「水平磁束密度」)が高い点に高密度のプラズマが形成される(プレーナーマグネトロン放電)。
【0025】
以上のように、本発明者らが考案した、2つのマグネットBN,BSの異なる磁極を隣接させて配置するバランス型マグネットピースは、Z軸方向(ターゲット41面に直交する方向)に対する磁束密度の減衰率が最大となる構造である。従って、ターゲット41近傍に強い水平方向磁場を形成させ、プラズマインピーダンスの低下による反跳原子、イオン等の発生を防止できると共に、基板近傍では水平磁束密度が減衰するため、チャージアップダメージの発生を抑制できる。
【0026】
図7に、水平磁束密度とW膜の比抵抗の関係を示す。図7に示すように、水平磁束密度の増加により成膜レートは低下しないことから、成膜レートを維持したままW膜の比抵抗の低減を実現できる。つまり、比抵抗を小さくするために投入電力を低下させることも考えられるが、この場合は図4に示したように成膜レートが低下する。この点、磁石ユニット2を調整する方法によれば、このような損失はなく、スループットを維持した高速成膜が可能である。
【0027】
さらに、バランス型マグネットピースを採用する別のメリットは2つある。1つ目は、単一のマグネットピース22でターゲット41の表面に対して水平成分の磁束密度を形成することが可能であるため、エロージョントラック形状を容易にイメージできることである。2つ目は、マグネットピース単位で基板8方向への磁束密度の減衰状態を決定できるため、最適なエロージョントラック形状を検討する際にチャージアップダメージの原因となる基板位置の磁束密度の変化を考慮する必要がないことである。
【0028】
なお、図2Aの例では、マグネットピース22の配置により、プレート21の周縁に沿って外側環状磁場OBを形成すると共に、外側環状磁場OBの内側にかつ回転軸3から偏心させて、内側環状磁場IBを形成している。このように、周速が早い外側部分にマグネットピース22を多く配置することが好ましい。また、図2Aの例では、内側環状磁場IBと外側環状磁場OBの磁力線の向きが逆向きになるようにマグネットピース22を配置されている。これにより、磁力線がマグネットピース22内又は少なくとも同一環状磁場内で収束しやすくなるため、水平方向磁束密度がターゲット表面に近い位置で強くなり、ターゲット41表面から離れた位置で水平方向磁場を形成するような、環状磁場間を跨いで収束する磁力線の発生を抑制できる。
【0029】
なお、本発明の適用は、上記実施形態に限定されない。例えば、複数の環状磁場を形成する場合、必ずしも入れ子にする必要はない。この場合も、環状磁場同士が(間隔を空けて)隣接する場合は、マグネットピース22の同極同士が(間隔を空けて)隣接するように夫々の環状磁場におけるマグネットピース22の向きを決定することが好ましい。また、必ずしも複数の環状磁場を設ける必要は無く、1つであってもよい。
【0030】
さらに、上記実施形態では、同じマグネットピース22を用いているが、環状磁場を形成するのに場所によっては異なる強度の磁場を形成するマグネットピース22を混在させてもよい。また、マグネットピース22を構成するマグネットBS,BNについても、磁束密度や高さ、形状の異なるものを用いてもよいが、磁力線を隣接するマグネットに収束させる観点からすればほぼ同じであることが好ましく、例えば磁束密度及び高さについては夫々他方の1.5倍を超えない範囲とすることが好ましい。
【0031】
[電子部品の製造方法]
次に、上記半導体デバイスの代表的メモリであるDRAM(Dynamic Random Access Memory)の製造を例に挙げて説明する。図3はDRAMのメモリセルを構成する電界効果トランジスタの断面構造である。図3の例では、Si表面に加熱酸化によってゲート酸化膜としてのSiO2層を形成したうえで、多結晶Si膜上に、ゲート電極として高融点金属のWN/W層を形成したものである。この構造によりSiゲートの機能を保持しながら配線抵抗の低減が図れる。ゲート電極材料、ゲート酸化膜材料は、これに限定されない。
【0032】
本実施形態では、ゲート酸化膜上にゲート電極を形成する際に、上記図1に示すマグネトロンスパッタリング装置を用いる。これにより、反跳Arの膜中への混入を防ぎ、低抵抗なゲート電極を成膜可能であると共に、ゲート酸化膜のチャージアップを防止できる。
【実施例】
【0033】
図8は、実施例と比較例の磁石ユニット2について、ターゲット表面からの距離と水平磁束密度の関係を示すグラフである。ここで、実施例の磁石ユニット2は、図2Bに示したマグネットピース22を配置して、環状磁場を形成したものである。一方、比較例の磁石ユニットは、図9に示すようにターゲット面と交差する方向に磁化された棒状のマグネット93S、93Nを互いに離し、基板表面における水平磁束密度が実施例と同じ大きさになるように複数配列し、環状磁場を形成した。なお、図8のグラフ中、縦軸は水平磁束密度の平均値であり、磁石ユニットから所定距離にある磁束密度の水平成分が垂直成分の5倍以上となる点のみを抽出したうえで、その平均をとった。なお、磁束密度Bの測定には、着磁されたマグネットの表面磁束密度をプローブにより測定するための3次元磁場測定器を用いた。前記磁場測定器のガウスメータとホールプローブは、3軸方向の測定に対応しているため、X、Y、Z方向の磁束密度を検出することが可能である。
【0034】
この結果、ターゲット表面における水平磁束密度は、実施例の磁石ユニットでは64.2mTであり、比較例の磁石ユニットの42.6mTに対して約50%Upとなっているが、基板近傍の磁束密度は、双方のマグネットで同等レベル(6〜8mT程度)であることが確認された。これより、ターゲット表面における水平磁束密度の上記平均値を65mT以上とし、ウエハ表面の水平磁束密度の上記平均値が7mT以下となる磁石ユニット2を用いることが好ましい。
【0035】
さらに、実施例の磁石ユニットでは、各マグネットピース22で減衰率(各マグネットピース22に対応する位置で得られる水平磁束密度)が固定されているため、面内分布だけを考慮すればよく、容易に目的の水平磁束密度を得るマグネット配列を決定できた。しかし、比較例の磁石ユニットでは異極性のマグネット93S、93N間の距離、同極のマグネット93S,93S又は93N,93N間の距離により、ターゲット表面及び基板近傍で得られる大きさが異なったため、マグネット配列を決定するのに手間を要した。
【符号の説明】
【0036】
1 成膜室
2 磁石ユニット
3 回転軸
4 カソードユニット
5 ウエハホルダ
6 昇降機構
7 直流電源
8 基板
9 プラズマ
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程等で使用されるマグネトロンスパッタリング装置にかかわり、基板へのチャージアップダメージを抑制しつつ、薄膜均一性および高い生産性を維持したまま低抵抗の良質な膜の形成を可能とするマグネトロンスパッタリング装置及びそれを用いた電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング方法としては、例えば特許文献1に示すようなマグネトロンスパッタリング法が知られている。マグネトロンスパッタリング法では、ターゲット電極の背面側にマグネットを設け、ターゲット表面に磁界を形成させることにより、ターゲット近傍に電子が閉じ込められるため、低圧条件下でも効率的にイオン化を行うことができ、高密度なプラズマが生成される。従って、高品質の膜が得られしかも高速成膜が可能であることから、様々な分野で実用化されている。半導体デバイスや電子部品の製造においても例外ではなく、これらデバイス等の特性を左右する重要な技術として位置づけられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−92632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常、上述のマグネットによって閉じ込められたプラズマの密度は、ターゲット上で一様ではなく、ターゲット上の磁場の強さによって決まる分布をもっており、このプラズマ分布の不均一性によるチャージアップダメージの発生という問題がある。すなわち、プラズマ密度は雰囲気中に存在する磁束密度の強さに依存するため、マグネット配置によって基板近傍における磁束密度が不均一となり、これに伴ってプラズマ密度の不均一性が生じる。このため、例えば、電界効果トランジスタの製造において、ゲート電極をゲート酸化膜上に形成する際に、ゲート酸化膜がプラズマ中に曝されるため、不均一に電荷が蓄積された場合にゲート酸化膜に電気的ストレス(高電界によるトンネル電流の流入)が生じ、ゲート酸化膜の破壊や劣化を引き起こすことになる。
【0005】
したがって、プラズマの不均一性によるチャージアップダメージの発生を抑制することが求められる。
【0006】
さらに、一部のターゲット材料では、ターゲットへの投入電力を大きくすると、成膜物質の比抵抗が増加してしまうという問題がある。図4に、電極材料などに用いられるタングステン(W)を成膜する場合のW膜の比抵抗とターゲット電極への投入電力(直流電力)との関係を示す。投入電力が大きいと、W膜の比抵抗が増大してしまうのが分かる。
【0007】
これに対し、投入電力を小さくすれば膜の低抵抗化を実現できる反面、成膜レートが大幅に低下する。すなわち、投入電力の低下による成膜装置のスループット低下にともなって生産性が低下してしまうという課題が生じる。
【0008】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、チャージアップダメージを抑えて、高品質な膜を高速に成膜可能な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述の問題点に鑑み、比抵抗の異なる2種類のW膜のSIMS(二次イオン質量分析計)による分析を行った。具体的には、放電時の投入直流電力が「0.5kW」と「2.5kW」の条件でW膜を成膜した試料を用意した。「0.5kW」条件におけるターゲット電圧は−300V程度である。「2.5kW」条件におけるターゲット電圧は−370V程度である。図5のグラフは2条件の基板について各元素の検出強度を基板表面から深さ方向に対してプロットしたデータである。主成分として検出された元素は、ターゲット材料のW、プロセスガス(スパッタガス)のArである。Wの検出強度にはほとんど差が確認されなかったが、Arの検出強度は「0.5kW」条件の方が「2.5kW」条件よりも小さい。W膜に含まれるArの量はDC電力が小さい条件で処理した方が相対的に少ないことがわかる。
【0010】
図4の結果から図6のような後方散乱Ar(以降、反射Arと略す)がW膜に取り込まれるモデルが考えられる。反射Arとは、ターゲット電圧によってターゲットに入射したArイオンが電荷を失った後、ターゲットで反射することによって通常気体時の温度よりも高いエネルギーを持つにいたったAr原子のことである。また、反射Arのエネルギーはターゲットの原子量に依存するため、ターゲット材料にW原子を用いた場合は、TiやAlなどの比較的軽い金属を用いた場合よりも反射Arが発生しやすい。ターゲット電圧のエネルギーを低くするとArイオンに与えられる運動エネルギーは小さくなるので、基板へ到達する反射Arのエネルギーが小さくなる、あるいは反射Arの量が減少する。さらに、反射Arのエネルギーの減少は、Ar原子が基板に成膜されたW膜に突入する確率を低くするため、W膜の結晶構造やグレインサイズ等を変化させ、結果としてW膜の比抵抗が変化すると考えられる。
【0011】
図6で示した反射ArがW膜に取り込まれるモデルから、生産性を維持したままW膜の比抵抗を低下させる手段として、マグネットによって作り出されるターゲット表面の水平磁束密度を高くすることによってターゲットへ加速されるArイオンのイオンエネルギーを小さくする方法を考案した。すなわち、ターゲット表面の水平磁束密度を高くするとターゲット表面で生成されるプラズマ密度が増加する。同一の電力を投入した場合、プラズマ密度が増加した分だけプラズマインピーダンスが低下し、ターゲット電圧が低下する。ターゲット電圧の低下によって反射Arの運動エネルギーが低下するため反射Arの基板への到達確率が低下し、W膜に取り込まれるAr原子の量が減少すると考えられる。この方法であれば、成膜レートを維持したままW膜の比抵抗を低下することができる。
【0012】
しかしながら、マグネットの磁束密度を強くする場合には、先に述べたようなプラズマの不均一性によるチャージアップダメージの発生を考慮する必要性がある。
【0013】
したがって、本発明の一実施形態にかかるマグネトロンスパッタリング装置は、ターゲットを取り付け可能なカソード電極と、前記カソード電極の前記ターゲットとは反対側に位置し、前記ターゲット表面に水平方向の磁界を形成する磁石ユニットと、を備え、前記磁石ユニットは、前記ターゲットと交差する方向に磁化された第1磁石部材と、前記ターゲットと交差する方向であって前記第1磁石部材と逆方向に磁化されると共に、前記ターゲット表面に水平方向の磁界を形成するように前記第1磁石部材に接して位置する第2磁石部材と、を有するマグネットピースを備えることとした。
【0014】
これにより、ターゲット近傍の磁束密度を強くしつつ、基板近傍の磁束密度を抑制できる構成とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ターゲット近傍での磁束密度が高く、基板近傍での磁束密度が抑制されるので、高品質な高速成膜が可能で、かつ、チャージアップダメージを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のスパッタリング装置の一例を示す模式図である。
【図2A】本実施形態の磁石ユニットを示す概略平面図である。
【図2B】本実施形態のマグネットピースを示す模式図である。
【図3】本発明を適用可能な電子部品の製造例を示す図である。
【図4】膜の比抵抗と投入DC電力の関係を示すグラフである。
【図5】膜中のAr含有量を示すグラフである。
【図6A】ターゲット電圧が高い場合に、膜中にArが取り込まれる現象を示すモデルである。
【図6B】ターゲット電圧が低い場合に、膜中にArイオンの挙動を示すモデルである。
【図7】膜の比抵抗の水平磁束密度依存性を示すグラフである。
【図8】本発明のカソードマグネットにおける水平磁束密度のZ軸方向に対する減衰状態を示すグラフである。
【図9】比較例のマグネットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
[装置構成]
図1に、本実施形態にかかるマグネトロンスパッタリング装置の構成を示す断面模式図を示す。
【0019】
図1のマグネトロンスパッタリング装置は、成膜室1の内部に、基板8を保持可能なウエハホルダ5と、基板8に向けて配置されたターゲット41及びターゲット41に電圧を印加可能なターゲット電極(カソード電極)42からなるカソードユニット4とを備える。また、カソードユニット4のウエハホルダ5に向く面と反対側には、ターゲット41表面に磁場を形成するための磁石ユニット2が設けられている。磁石ユニット2は、金属などの材料より形成されるプレート21と、プレート21に取り付けられる複数のマグネットピース22とを備えている。また、磁石ユニット2は、ターゲット41に交差する回転軸3を中心に回転可能に構成され、ターゲット41表面上にその面内方向に沿って回転する磁場を形成することで、エロージョンがターゲット41全面で均一に生じる。なお、符号6はウエハホルダ5を上下駆動するための昇降機構である。
【0020】
また、図示していないが、成膜室1は、真空ポンプと、スパッタガスを導入可能なガス導入系に接続され、内部が減圧されると共にスパッタガスを導入可能に構成されている。スパッタガス導入後、ターゲット41へグロー放電用の高圧電源7により電力を供給することにより、磁石ユニット2の形成する磁気回路内に閉じ込められたスパッタ用の高密度なプラズマ9が生成される。このとき、プラズマ中の電子は、磁石ユニット2によって形成される磁気回路内のドリフト運動によってターゲット表面近傍にトラップされるためガス分子のイオン化が促進される。ターゲット表面上の水平磁束密度が高い点に高密度のプラズマが形成される。このプラズマ9中のイオンが、陰極シースで加速されターゲット41に衝突すると、ターゲット41からその構成原子がスパッタされ、その原子が基板8の表面へ付着して薄膜が形成される。
【0021】
図2Aに磁石ユニット2の平面図、図2Bに磁石ユニット2の部分側面図を示す。
【0022】
磁石ユニット2は、前記のように、金属などの材料より形成されるプレート21と、プレート21に取り付けられる複数のマグネットピース22とを備えて構成されている。
【0023】
マグネットピース22は、プレート21に交差する方向(ターゲット41と交差する方向)に磁化された2つのマグネット(第1磁石部材と第2磁石部材)BN,BSを有し、この2つのマグネットBN,BSはターゲット41側に向く磁極が互いに逆向きとなるようにして隣接配置される。これにより、一方のマグネットBNからターゲット41側に向かって出て他方のマグネットBSの端部に収束するトンネル状の磁力線による磁場Bが形成される。マグネット中、磁力が最も強い磁極同士を異極性で隣接配置することで、近傍で強度が大きく、離れた位置への発散が小さい磁場Bが形成される。マグネットBN,BSのターゲット41と反対側の端部は、中間プレート22Aを介してプレート21に取り付けられている。中間プレート22Aは、好ましくは透磁率の高い材料、軟磁性材料(例えば、磁性SUS)で形成され、マグネットBN,BSの端部同士を磁気的に結合し、又は、磁石ユニット2外部に対し磁界を遮蔽する。マグネットBN,BSの材料は、本発明において特に限定されず、鋼系磁石、フェライト系磁石、希土類系磁石のいずれも用いることができるが、高い磁束密度を得るためにNd−Fe系磁石とすることが好ましい。
【0024】
図2Aの例では、上述したマグネットピース22が複数、上記磁力線のトンネルが無端状につながるような位置関係で、具体的には、一方の磁極が内側、他方の磁極が外側となるように複数のマグネットピース22が向きを揃え、周方向に互いに間隔を空けてリング状に配置されるマグネットピース22はターゲット41の表面に水平な径方向に向かうリング状磁界を形成するようにリング状に配置することが好ましい。環状は、円環状に限らず、無端状であればよい。これにより、電子が無端状の磁場を旋回するようにドリフト運動し、ターゲット41表面上を回り続けることになり、ガスとの衝突によりイオンを生成する。そして、ターゲット41表面に交差する方向に形成される電界に対し、磁力線が直交する部分、ターゲット41表面に平行な方向の磁束密度(以後、「水平磁束密度」)が高い点に高密度のプラズマが形成される(プレーナーマグネトロン放電)。
【0025】
以上のように、本発明者らが考案した、2つのマグネットBN,BSの異なる磁極を隣接させて配置するバランス型マグネットピースは、Z軸方向(ターゲット41面に直交する方向)に対する磁束密度の減衰率が最大となる構造である。従って、ターゲット41近傍に強い水平方向磁場を形成させ、プラズマインピーダンスの低下による反跳原子、イオン等の発生を防止できると共に、基板近傍では水平磁束密度が減衰するため、チャージアップダメージの発生を抑制できる。
【0026】
図7に、水平磁束密度とW膜の比抵抗の関係を示す。図7に示すように、水平磁束密度の増加により成膜レートは低下しないことから、成膜レートを維持したままW膜の比抵抗の低減を実現できる。つまり、比抵抗を小さくするために投入電力を低下させることも考えられるが、この場合は図4に示したように成膜レートが低下する。この点、磁石ユニット2を調整する方法によれば、このような損失はなく、スループットを維持した高速成膜が可能である。
【0027】
さらに、バランス型マグネットピースを採用する別のメリットは2つある。1つ目は、単一のマグネットピース22でターゲット41の表面に対して水平成分の磁束密度を形成することが可能であるため、エロージョントラック形状を容易にイメージできることである。2つ目は、マグネットピース単位で基板8方向への磁束密度の減衰状態を決定できるため、最適なエロージョントラック形状を検討する際にチャージアップダメージの原因となる基板位置の磁束密度の変化を考慮する必要がないことである。
【0028】
なお、図2Aの例では、マグネットピース22の配置により、プレート21の周縁に沿って外側環状磁場OBを形成すると共に、外側環状磁場OBの内側にかつ回転軸3から偏心させて、内側環状磁場IBを形成している。このように、周速が早い外側部分にマグネットピース22を多く配置することが好ましい。また、図2Aの例では、内側環状磁場IBと外側環状磁場OBの磁力線の向きが逆向きになるようにマグネットピース22を配置されている。これにより、磁力線がマグネットピース22内又は少なくとも同一環状磁場内で収束しやすくなるため、水平方向磁束密度がターゲット表面に近い位置で強くなり、ターゲット41表面から離れた位置で水平方向磁場を形成するような、環状磁場間を跨いで収束する磁力線の発生を抑制できる。
【0029】
なお、本発明の適用は、上記実施形態に限定されない。例えば、複数の環状磁場を形成する場合、必ずしも入れ子にする必要はない。この場合も、環状磁場同士が(間隔を空けて)隣接する場合は、マグネットピース22の同極同士が(間隔を空けて)隣接するように夫々の環状磁場におけるマグネットピース22の向きを決定することが好ましい。また、必ずしも複数の環状磁場を設ける必要は無く、1つであってもよい。
【0030】
さらに、上記実施形態では、同じマグネットピース22を用いているが、環状磁場を形成するのに場所によっては異なる強度の磁場を形成するマグネットピース22を混在させてもよい。また、マグネットピース22を構成するマグネットBS,BNについても、磁束密度や高さ、形状の異なるものを用いてもよいが、磁力線を隣接するマグネットに収束させる観点からすればほぼ同じであることが好ましく、例えば磁束密度及び高さについては夫々他方の1.5倍を超えない範囲とすることが好ましい。
【0031】
[電子部品の製造方法]
次に、上記半導体デバイスの代表的メモリであるDRAM(Dynamic Random Access Memory)の製造を例に挙げて説明する。図3はDRAMのメモリセルを構成する電界効果トランジスタの断面構造である。図3の例では、Si表面に加熱酸化によってゲート酸化膜としてのSiO2層を形成したうえで、多結晶Si膜上に、ゲート電極として高融点金属のWN/W層を形成したものである。この構造によりSiゲートの機能を保持しながら配線抵抗の低減が図れる。ゲート電極材料、ゲート酸化膜材料は、これに限定されない。
【0032】
本実施形態では、ゲート酸化膜上にゲート電極を形成する際に、上記図1に示すマグネトロンスパッタリング装置を用いる。これにより、反跳Arの膜中への混入を防ぎ、低抵抗なゲート電極を成膜可能であると共に、ゲート酸化膜のチャージアップを防止できる。
【実施例】
【0033】
図8は、実施例と比較例の磁石ユニット2について、ターゲット表面からの距離と水平磁束密度の関係を示すグラフである。ここで、実施例の磁石ユニット2は、図2Bに示したマグネットピース22を配置して、環状磁場を形成したものである。一方、比較例の磁石ユニットは、図9に示すようにターゲット面と交差する方向に磁化された棒状のマグネット93S、93Nを互いに離し、基板表面における水平磁束密度が実施例と同じ大きさになるように複数配列し、環状磁場を形成した。なお、図8のグラフ中、縦軸は水平磁束密度の平均値であり、磁石ユニットから所定距離にある磁束密度の水平成分が垂直成分の5倍以上となる点のみを抽出したうえで、その平均をとった。なお、磁束密度Bの測定には、着磁されたマグネットの表面磁束密度をプローブにより測定するための3次元磁場測定器を用いた。前記磁場測定器のガウスメータとホールプローブは、3軸方向の測定に対応しているため、X、Y、Z方向の磁束密度を検出することが可能である。
【0034】
この結果、ターゲット表面における水平磁束密度は、実施例の磁石ユニットでは64.2mTであり、比較例の磁石ユニットの42.6mTに対して約50%Upとなっているが、基板近傍の磁束密度は、双方のマグネットで同等レベル(6〜8mT程度)であることが確認された。これより、ターゲット表面における水平磁束密度の上記平均値を65mT以上とし、ウエハ表面の水平磁束密度の上記平均値が7mT以下となる磁石ユニット2を用いることが好ましい。
【0035】
さらに、実施例の磁石ユニットでは、各マグネットピース22で減衰率(各マグネットピース22に対応する位置で得られる水平磁束密度)が固定されているため、面内分布だけを考慮すればよく、容易に目的の水平磁束密度を得るマグネット配列を決定できた。しかし、比較例の磁石ユニットでは異極性のマグネット93S、93N間の距離、同極のマグネット93S,93S又は93N,93N間の距離により、ターゲット表面及び基板近傍で得られる大きさが異なったため、マグネット配列を決定するのに手間を要した。
【符号の説明】
【0036】
1 成膜室
2 磁石ユニット
3 回転軸
4 カソードユニット
5 ウエハホルダ
6 昇降機構
7 直流電源
8 基板
9 プラズマ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットを取り付け可能なカソード電極と、
前記カソード電極の前記ターゲットとは反対側に位置し、前記ターゲット表面に水平方向の磁界を形成する磁石ユニットとを備え、
前記磁石ユニットは、
前記ターゲットと交差する方向に磁化された第1磁石部材と、
前記ターゲットと交差する方向であって前記第1磁石部材と逆向きに磁化されると共に、前記ターゲット表面に水平方向の磁界を形成するように前記第1磁石部材に接して位置する第2磁石部材と
を有するマグネットピースを備えることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置。
【請求項2】
前記磁石ユニットは、前記ターゲット表面に水平な径方向に向かうリング状磁界が形成されるように、リング状に配置された複数の前記マグネットピースを有することを特徴とする請求項1に記載のマグネトロンスパッタリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載の磁石ユニットを備えたスパッタリング装置を用い、マグネトロンスパッタによる成膜工程を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項1】
ターゲットを取り付け可能なカソード電極と、
前記カソード電極の前記ターゲットとは反対側に位置し、前記ターゲット表面に水平方向の磁界を形成する磁石ユニットとを備え、
前記磁石ユニットは、
前記ターゲットと交差する方向に磁化された第1磁石部材と、
前記ターゲットと交差する方向であって前記第1磁石部材と逆向きに磁化されると共に、前記ターゲット表面に水平方向の磁界を形成するように前記第1磁石部材に接して位置する第2磁石部材と
を有するマグネットピースを備えることを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置。
【請求項2】
前記磁石ユニットは、前記ターゲット表面に水平な径方向に向かうリング状磁界が形成されるように、リング状に配置された複数の前記マグネットピースを有することを特徴とする請求項1に記載のマグネトロンスパッタリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載の磁石ユニットを備えたスパッタリング装置を用い、マグネトロンスパッタによる成膜工程を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−76104(P2013−76104A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298237(P2009−298237)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
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