説明

マグネトロンスパッタ装置

【課題】比較的簡素な構成で、膜厚の均一性とターゲットの利用率を向上させたマグネトロンスパッタ装置を提供する。
【解決手段】マグネトロンスパッタ装置100は、処理チャンバ20と、基板を搬送する基板搬送手段2と、平板状のターゲット3を設置するためのターゲットホルダー4と、ターゲットホルダーの裏側に配置された磁石ユニット5と、ターゲットホルダー4に電力を供給するための電力供給手段24と、電力供給手段、および基板搬送手段を制御するための制御手段25と、ターゲットホルダーの表面に略平行な面内でターゲットホルダーを移動させるターゲットホルダー移動手段10と、を備え、制御手段は、電力供給手段によりターゲットホルダーに電力を供給しながら、基板搬送手段を駆動して基板を搬送するとともに、ターゲットホルダー移動手段を駆動してターゲットホルダーを移動させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネトロンスパッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池用基板やフラットパネルディスプレイ用の大面積基板等に薄膜を形成する方法としてスパッタリング法が用いられ、特にターゲットホルダーに設置されるターゲットの裏側に磁石ユニットを配置したマグネトロンスパッタ装置は、ターゲット利用率の向上、プラズマの安定性、及びターゲットの大型化が容易であることにより、広く利用されている。その中でも太陽電池用基板では大量に成膜をおこなえるように基板を連続的に並べて一定速度で搬送しながらスパッタ室で成膜する搬送成膜方式が多く用いられている。
マグネトロンスパッタ装置では磁石ユニットによる磁場によりターゲット表面近傍に高密度プラズマが生成し、その高密度プラズマ領域のターゲットが主にスパッタされる。搬送成膜方式のマグネトロンスパッタ装置では通常、大面積基板を連続的に成膜するためスパッタ電力は一定でターゲットからは一定量のスパッタ原子が放出され続けている。磁石ユニットが固定されている場合、高密度プラズマ領域の位置も静止しているのに対し、基板が一定速度で搬送されていることにより、基板に堆積する膜厚は搬送方向に均一となる。
一方、ターゲットの利用率を高めるために、例えば、特許文献1には、固定した平板状ターゲットの裏面で磁石ユニットを移動させるマグネトロンスパッタ装置が開示されている。しかし、搬送成膜方式のマグネトロンスパッタ装置では、磁石ユニットを基板の搬送方向に往復運動のような移動させると、基板上に形成される膜は搬送方向に厚い領域と薄い領域が交互に現われて不均一となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−17671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この膜厚の不均一を抑制する方法として、いろいろな方法が開示されているが、最も単純な方法は磁石ユニットの移動をある程度速くすることである。図9に発明者による磁石ユニットの往復する周期とそのときの搬送方向の膜厚分布の変化を計算した例を示す。搬送方向の膜厚分布は、実際には磁石ユニットの往復する周期と、基板の搬送速度の積によって決まる。したがって、図の横軸は基板の搬送速度と磁石ユニットの往復周期の積となっている。この横軸の意味は磁石ユニットが1往復する間に基板が移動する長さである。横軸がおよそ60mmより大きいと次第に搬送方向の膜厚分布は悪くなっていく。横軸がおよそ60mm以下になるように磁石ユニットの往復の周期を決めれば搬送方向の膜厚は均一となる。
近年、生産性の向上から基板の搬送速度は高速化している。そのため搬送方向の膜厚分布を均一にするためには図8の関係から基板の搬送速度が大きくなった分、磁石ユニットの往復の周期は小さくしなければならなくなった。つまり磁石ユニットの移動の速度を高速化しなければならなくなった。 例えば、基板の搬送速度が60mm/s、等速で往復する磁石ユニットの片道移動量を100mmとすると、搬送方向の膜厚を均一にするには磁石ユニットの往復の周期は1秒、移動速度は200mm/sとなる。大型スパッタ装置の磁石ユニットは大きく、その重量も100kgになるものもある。磁石ユニットをこのような高速で移動するためには磁石ユニットの移動機構を大型化する必要があるが、装置の制約上困難になっている。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、比較的簡素な構成で、搬送方向の膜厚の均一性とターゲットの利用率を向上させたマグネトロンスパッタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明のマグネトロンスパッタ装置は、処理チャンバと、前記処理チャンバ内に設けられ、基板を搬送する基板搬送手段と、前記処理チャンバ内に設けられ、平板状ターゲットを設置するためのターゲットホルダーと、前記ターゲットホルダーの裏側に配置された磁石ユニットと、前記ターゲットホルダーに電力を供給するための電力供給手段と、前記電力供給手段、および前記基板搬送手段を制御するための制御手段と、前記ターゲットホルダーの表面に略平行な面内で前記ターゲットホルダーを移動させるターゲットホルダー移動手段と、を備え、前記制御手段は、前記電力供給手段により前記ターゲットホルダーに電力を供給しながら、前記基板搬送手段を駆動して基板を搬送するとともに、前記ターゲットホルダー移動手段を駆動して前記ターゲットホルダーを移動させるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、比較的簡素な構成で、搬送方向の膜厚の均一性とターゲットの利用率を向上させたマグネトロンスパッタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に適用可能なマグネトロンスパッタ装置の全体構成を説明するための概略断面図である。
【図2】図1に示すターゲットホルダーの拡大断面図である。
【図3】供給棒の拡大断面図である。
【図4】図1のA方向から見た正面図である。
【図5】図1に示す磁石ユニットの上面図である。
【図6】図1に示す開口シールドの上面図である。
【図7】開口シールドがない場合の高密度プラズマの様子を説明する図である。
【図8】開口シールドがある場合の高密度プラズマの様子を説明する図である。
【図9】磁石ユニット往復周期と膜厚分布の関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に適用可能なマグネトロンスパッタ装置の全体構成を説明するための概略断面図である。通常、ロードロック室やバッファー室、アンロードロック室など複数のチャンバがゲートバルブを介して連結されて、一つの成膜装置を形成するが、図1ではそのうちのマグネトロンスパッタ装置のみを示している。図1に示すように、マグネトロンスパッタ装置100は、処理チャンバ20と、処理チャンバ20内に設けられ、所定の速度(本例では一定速度)で基板1を搬送する基板搬送手段2と、処理チャンバ20内に設けられ、平板状ターゲット3を設置するための平板状のターゲットホルダー4と、ターゲットホルダー4に電力を供給するための電力供給手段24と、ターゲットホルダー4の裏面側に配置された磁石ユニット5と、ターゲットホルダー4面に略平行な面内でターゲットホルダー4を移動させるターゲットホルダー移動手段10と、ターゲットホルダー移動手段10、電力供給手段24および基板搬送手段2を制御するための制御手段25とを備える。また、ターゲット3と基板1の間に開口70を持つ開口シールド7を備える。
【0010】
制御手段25は、記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラムを実行するためのコントローラであり、電力供給手段24によりターゲットホルダー4に電力を供給しながら、基板搬送手段2を駆動して基板を搬送するとともに、ターゲットホルダー移動手段10を駆動してターゲットホルダー4を移動させるように構成されている。磁石ユニット5は、N極の永久磁石とS極の永久磁石との組み合わせにより構成され、ターゲット3上にループ状の磁場を形成する。
【0011】
処理チャンバ20の側壁には、基板1を搬入するための搬入口30と、搬出するための搬出口31が設けられている。搬入口30から搬入された基板1は、水平に保持されながら図1の左方向から右方向に向かって、基板搬送手段2によって、停止させることなく、一定速度で搬送され、搬出口31から搬出される。この間、基板1の上面には、ターゲット3によってスパッタ成膜される。
基板が一定の間隔を空けて次々に搬入される搬送成膜方式では、一般的に、大量の基板を効率よく成膜できることの他に、大型の基板を比較的小型のターゲットと磁石ユニットで均一に成膜できる利点がある。ターゲットと磁石ユニットの基板の搬送方向の長さは基板の長さより小さくてもよい。
【0012】
基板搬送手段2は、等間隔に配置された、回転する複数のローラー21を備えている。図1では基板1は直接、ローラー21に載って搬送されているが、トレイのような基板保持部材に基板1を載せて搬送してもよい。また、トレイに基板1を載せる場合は、1つのトレイに比較的小型の基板を多数載せて成膜することもできる。なお、本例の基板1は、矩形の平板状であるが、これに限定されるものではなく、円形、楕円形などの形状を有する平板状であってもよい。
処理チャンバ20は、図示しない排気ポンプにより真空状態(低圧)に排気され、図示しないガス配管によりプロセスガス(たとえばArガス)が所定の圧力になるように供給される。
【0013】
基板1の上面に対向してターゲットホルダー4が配置されており、平板状のターゲット3はターゲットホルダー4に設置されている。平板状ターゲット3は、基板搬送方向に沿った辺を短辺とし、基板搬送方向と直角方向の辺を長辺する矩形である。この平板状のターゲット3の長辺は、基板搬送方向と直角方向の基板の長さより長くなっている。
ターゲットホルダー4はターゲットホルダー移動手段10によって基板搬送方向に沿って移動することができる。ターゲットホルダー4は、真空状態の処理チャンバ20内に配置されており、供給棒8に接続されている。供給棒8はベローズ9を介して、真空容器外部の大気中に設置されたボールネジ11に接続されている。ボールネジ11の末端には、モーター12が設けられ、モーター12の駆動によってターゲットホルダー4を移動することができる。なお、本例では移動は、基板搬送方向に沿った等速の往復運動や単振動の運動であるが、これに限定されず、ある地点からある地点への移動や、回転等であってもよい。なお、ターゲットホルダー4の移動方向は必ずしも基板の搬送方向に限らず、平板状ターゲットホルダーの表面に略平行な面内であればどの方向でも良い。例えば、基板の搬送方向とその直角方向の2つを組み合わせた移動方法では平板状ターゲットのエロージョンがより均一化する場合もある。
供給棒8の内部には、図示しない電力用ケーブルと冷却水用のパイプが通っており、ターゲットホルダー4に電力供給手段24による電力と冷却水も供給することができる。
【0014】
図2は、図1に示すターゲットホルダー4の拡大断面図である。ターゲットホルダー4はターゲット裏板、またはバッキングプレートとも呼ばれる。平板状のターゲットホルダー4には平板状ターゲット3をボンディングなどの方法で接着して設置している。
ターゲットホルダー4は、裏面側の絶縁物でできたターゲット絶縁板15を介して通常接地されているターゲットシールド6に絶縁ネジ等で絶縁を保ったまま固定されている。ターゲットシールド6は、平板状ターゲット3及びターゲットホルダー4と2〜3mmの隙間をあけてターゲットホルダー4の両端部及びターゲットの側面図を覆っている。
【0015】
図3は、供給棒8の拡大断面図である。なお、冷却水の経路は入口と出口があるが、図3では片方の入口のみ示す。
供給棒8の内部には、電力ケーブル80と冷却水チューブ81が設けられている。供給棒8の内部は真空状態である。電力ケーブル80は、電力導入金属部802を介してターゲットホルダー4に電力を供給することができる。電力導入金属部802は、金属導入部801を介して、ターゲットシールド6に固定されている。
一方、冷却水チューブ81は、冷却水導入部810の内部の配管を介して、ターゲットホルダー4の内部に設けられた水路812と接続されている。この水路812に冷却水が流れることで、ターゲット3を冷却することができる。ターゲット3を交換する際には、3本のボルト62を取り外すことで、冷却水導入部810と電力導入部801をターゲット裏板15から取り外すことができる。新しいターゲットを設置したら3本のボルト62で冷却水導入部810と電力導入部801をターゲット裏板15と接続する。
【0016】
図4は図1のA方向から見た正面図である。基板の搬送方向は紙面に垂直方向である。
ターゲットホルダー4を保持するターゲットシールド6は、ターゲットシールド6の両端にあるターゲットホルダーローラー16に支えられており、基板搬送方向に移動できるようになっている。平板状ターゲット3の裏側の大気側には、磁石ユニット5が固定されている。処理チャンバ20内にはチャンバ壁13への膜付着を防止するために一対のL字型シールド17が設けられている。
【0017】
図5は、図1に示す磁石ユニット5の基板側から見た上面図である。
磁石ユニット5は、強磁性体のヨーク53と、ヨーク53上に配置され、ターゲット側をS極とした永久磁石でできた中心極51と、中心極51を取り囲むターゲット側をN極とした永久磁石でできた外周極52を備えている。磁石ユニット5の形状も基板搬送方向に沿った辺を短辺とする矩形で、磁石ユニット5の短辺の長さは、ターゲット短辺の長さより短く、長辺の長さはターゲット長辺の長さとほぼ同等である。
【0018】
本実施例では、磁石ユニット5が固定されているため、ターゲットホルダー4が移動しても図1に示すようにターゲット表面近傍の磁力線に拘束された高密度プラズマの位置は変化しない。したがって、ターゲットから放出されるスパッタ原子の放出位置も変化せず、一定速度で搬送される基板上には搬送方向に均一な膜厚で膜が堆積される。
このとき、ターゲットホルダー4の移動はターゲット利用率向上のためにおこなわれるが、ターゲットホルダー移動の速度と膜厚均一性の関連性はなく、基板の搬送速度が速くなってもターゲットホルダーの移動速度は一定でよい。例えばターゲットホルダーの往復の周期は10秒から100秒程度でよく、片道の移動量を100mm、つまり往復200mmとしても移動速度は2〜20mm/sと比較的低速度でよい。そのため、ターゲットホルダー移動手段10の負荷も小さく、製作が容易である。
【0019】
次に開口シールド7について説明する。
図1に示すようにターゲット3と基板1の間には、開口70を有する接地された開口シールド7が、チャンバ20に固定して設けられている。開口シールド7の開口70の位置は磁石ユニット5の位置に相当し、開口70はターゲット表面付近に生じる高密度プラズマをさえぎることがなく、その開口70を通ってスパッタ原子が基板1に膜として堆積できる。また、シールド7が高密度プラズマのアノードとして機能するように比較的ターゲットに近い位置に設置されている。
【0020】
図6は、基板側から見た、開口シールド7の上面図である。なお、図6では、説明の便宜上、ターゲット3とターゲットホルダー4を省略している。開口シールド7は、矩形の環状シールドであり、開口70は磁石ユニットとほぼ同じ形状で大きさも同程度である。したがって、開口70の面積は通常ターゲット面積より小さい。開口70に磁石ユニット5が位置するように、開口シールド7は配置されている。なお、図5では省略しているが、開口シールド7と磁石ユニット5の間を、ターゲットホルダー4とターゲット3は移動する。
【0021】
次に、開口シールド7の効果について説明する。なお、開口シールド7は、ターゲットの利用率を向上させる観点からは本発明の必須の構成要素ではないが、ターゲットホルダー4を移動させるターゲットホルダー移動手段を採用した場合に、生じる下記の課題を解決するために、重要である。
ターゲット表面にはスパッタによりエロージョンが形成されるが、ターゲットホルダーの移動により比較的均一なエロージョンができた場合でもターゲット外周部には多少の非エロージョン領域が生じてしまうことがある。この非エロージョン領域はターゲットがほとんどスパッタされない領域のため、逆にスパッタ原子のターゲットへの戻りのため膜が堆積してしまう。この膜厚がある程度厚くなるとターゲットから膜がはがれてパーティクルとなることがある。太陽電池の製造などではパーティクルの大きさは0.1ミリ程度以上を問題視するため、浮遊するパーティクルよりは落下するパーティクルが問題になる。
本実施例ではターゲットホルダー4を移動しながらスパッタするため、特許文献1に示した従来の固定したターゲットホルダーの装置に比べ、パーティクルが振動しやすい。そのため、ターゲットの非エロージョン領域からの膜はがれがおこりやすく基板にパーティクルが落下する可能性が高くなる。
そこで、ターゲット3と基板1の間に開口シールド7を設置する事でターゲット3から落下するパーティクルの多くを開口シールド7で受けとめて基板に到達することを防いでいる。開口シールド7の開口70の面積はターゲット面積に比較して小さく、またターゲットの膜はがれが生じる領域はターゲットの外周部が多いため開口を通って基板に達するパーティクルを減少できる。
【0022】
次に、図7及び図8を参照して、開口シールドのもう一つの効果について説明する。
図7は開口シールドがない場合のプラズマの様子を説明する図である。図8は、図1で示したように、開口シールドを有するマグネトロンスパッタ装置を用いた場合のプラズマの様子を説明する図である。
図7に示すように、ターゲット3表面付近の磁石ユニット5の外周極と中心極の間では、ループ状の磁力線が形成され、電子のドリフト運動によりターゲット表面付近にリング状に高密度プラズマが分布する。ここでは、磁石ユニット5が細長い矩形のため、高密度プラズマも細長い楕円形状のリング状に分布している様子を示している。
高密度プラズマは上述したように楕円形状のリング状に分布するが、その中でもプラズマ密度に高低が生じる場合がある。DCマグネトロンスパッタで生じるリング状の高密度プラズマは近くに接地された部材、つまりアノードがあればその近辺でさらに高密度になることが発明者の経験上わかっている。たとえば、ターゲット3の外周には接地されたターゲットシールド6がターゲット3を囲うように配置されているので、リング状の高密度プラズマはターゲットシールド6に近い場所がさらに高密度になる。図7では磁石ユニット5がターゲット3の中央に位置しているときを示すが、このときプラズマはAやCの領域がBやDの領域より高密度になる。
このように、リング状の高密度のプラズマに密度の不均一が生じると、それに対応してターゲットのエロージョンにも不均一が生じ、図7ではAやCに対応したターゲットの領域がBやDに対応したターゲットの領域より深く削れることになる。磁石ユニット5がターゲット3の端部以外に存在するときはだいたい同様のエロージョンの不均一性が生じ、部分的に深く削れる部分が最終的にターゲット利用率の低下をもたらすことがある。
また、ターゲットホルダー4が移動すると高密度プラズマに対する接地されたターゲットシールド6の位置が変化するため、高密度プラズマの不均一性もターゲットホルダー4の移動とともに変化する。このため、基板に堆積する膜の厚さの不均一や膜質の不均一を生じる可能性がある。
【0023】
一方、図8に示すようにターゲット3と基板1の間に接地され、かつ開口を有する固定の開口シールド7があれば、ターゲットホルダー4が移動しても、リング状の高密度のプラズマの外周近傍に接地された開口シールド7、つまりアノードが常に存在するため、リング状の高密度のプラズマの中で密度の不均一は起こりにくい。したがってターゲット3のエロージョンもその楕円形状の中では不均一は起こりにくく、ターゲット利用率は向上する。また、ターゲットホルダー4が移動しても高密度のプラズマにとってアノード位置が不変であるためリング状の高密度のプラズマの密度分布は変化しないので放電は安定する。このことは、基板に堆積する膜の厚さの均一性や膜質の均一性を向上する。
【0024】
次に、本実施例のマグネトロンスパッタ装置を用いた電子デバイスの製造方法について説明する。
真空に排気したチャンバに所定の圧力になるようにたとえばArガスのようなプロセスガスをチャンバに導入する。次にターゲットホルダー4をターゲットホルダー移動機構10で基板の搬送方向に連続的に往復移動させる。ターゲットホルダー4には供給棒8を経て冷却水を供給しておく。
制御手段25により電力供給手段24から供給棒8を経てターゲットホルダー4にDC電力を供給しマグネトロンスパッタをおこなう。また、同時に制御手段25により基板搬送手段2を駆動し、基板1を一定速度で搬送し成膜を実施する。また、制御手段25は、ターゲットホルダー4に電力を供給しながら、ターゲットホルダー移動手段10を駆動して、ターゲットホルダー4を移動する。
このようにすることで、基板上には少なくとも搬送方向に均一な膜厚で均一な膜質の成膜をおこなうことができる。また、ターゲットのエロージョンも比較的均一になりターゲット利用率が向上する。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0026】
1 基板
2 基板搬送手段
3 ターゲット
4 ターゲットホルダー
5 磁石ユニット
6 ターゲットシールド
7 開口シールド
8 供給棒
9 ベローズ
10 ターゲットホルダー移動手段
11 ボールネジ
12 モーター
13 チャンバ上壁
15 ターゲット絶縁板
16 ターゲットホルダーローラー
17 L字型シールド
20 処理チャンバ
21 ローラー
24 電力供給手段
25 制御手段
70 開口
100 マグネトロンスパッタ装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理チャンバと、
前記処理チャンバ内に設けられ、基板を搬送する基板搬送手段と、
前記処理チャンバ内に設けられ、平板状ターゲットを設置するためのターゲットホルダーと、
前記ターゲットホルダーの裏側に配置された磁石ユニットと、
前記ターゲットホルダーに電力を供給するための電力供給手段と、
前記電力供給手段、および前記基板搬送手段を制御するための制御手段と、
前記ターゲットホルダーの表面に略平行な面内で前記ターゲットホルダーを移動させるターゲットホルダー移動手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記電力供給手段により前記ターゲットホルダーに電力を供給しながら、前記基板搬送手段を駆動して基板を搬送するとともに、
前記ターゲットホルダー移動手段を駆動して前記ターゲットホルダーを移動させるように構成されていることを特徴とするマグネトロンスパッタ装置。
【請求項2】
前記ターゲットホルダーと前記基板搬送手段との間には、前記平板状ターゲットの面積より小さい開口を有する、接地された開口シールドが固定して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマグネトロンスパッタ装置。
【請求項3】
前記制御手段は前記基板搬送手段により、前記基板を一定速度で搬送することを特徴とする請求項1又は2に記載のマグネトロンスパッタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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