説明

マグネトロン・スパッタリング・デバイスで使用するためのリング・カソード

【課題】欠陥レベルの低い、予想される厚さ分布を有する膜形成に用いるマグネトロン・スパッタリング・デバイスを提供する。
【解決手段】リング・カソードの位置は、遊星ドライブ・システムの中心点に関してオフセットする。アノード20または反応性ガス供給源36は、リング・カソードの内側半径内に配置される。カソード12における低電力密度によって低欠陥率が得られ、低電力密度は、アーク放電を抑制し、一方、マスクを使用することなく、遊星幾何形状に対するランオフがカソードによって最小になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、基板上に材料を堆積させるマグネトロン・スパッタリング・デバイスに関しており、そのマグネトロン・スパッタリング・デバイスでは、堆積された膜が、欠陥レベルの低い、予想される厚さ分布を有する。より詳細には、本発明は、マグネトロン・スパッタリング・デバイスで使用するためのリング・カソードおよびそれを組み込むマグネトロン・スパッタリング・デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタ・コーティングは、基板上に材料の薄膜を堆積させる広く使用される技法である。スパッタリング堆積プロセスでは、イオンは、通常、グロー放電中のガス原子と電子との衝突によって生じる。イオンは、電界によってカソードのコーティング材料のターゲット内に加速され、ターゲット材料の原子を、ターゲット表面から放出させる。基板は、放出された原子の一部分を捕えるように適した場所に設置される。こうして、ターゲット材料のコーティングは、基板の表面上に堆積される。反応性スパッタリングでは、ガス種もまた、基板表面に存在し、ターゲット表面からの原子と反応し、一部の実施形態では、原子と結合して、所望のコーティング材料が形成される。
【0003】
動作時、スパッタ・ガス、たとえば、アルゴンが、コーティング・チャンバ内に導入されると、カソードとアノードとの間に印加されたDC電圧が、アルゴンをイオン化してプラズマにし、正に帯電したアルゴン・イオンは、負に帯電したカソードに引き寄せられる。イオンは、かなりのエネルギーでカソードの前面のターゲットに衝突し、ターゲット原子または原子クラスタがターゲットからスパッタリングされるようにする。ターゲット粒子の一部は、コーティングされるウェハまたは基板材料に衝突し、堆積し、それにより、膜が形成される。
【0004】
堆積レートの増加および動作圧力の低下を達成するために、磁気的に強化されたカソードが使用される。平板マグネトロンでは、カソードは、閉ループで配列され、コーティング材料の平坦ターゲット板に対して固定位置で搭載される永久磁石のアレイを含む。そのため、磁界によって、電子は、一般に「レース・トラック」と呼ばれる閉ループ内を移動し、その結果、ターゲット材料のスパッタリングまたはエロージョンがそこに沿って起こる経路または領域が確立される。マグネトロン・カソードでは、磁界が、グロー放電プラズマを閉じ込め、電界の影響下で移動する電子の経路長を増加させる。これによって、ガス原子−電子衝突の確率が増し、それにより、磁気閉じ込めを使用することなく得られるよりもずっと高いスパッタリング・レートがもたらされる。さらに、スパッタリング・プロセスは、はるかに低いガス圧で達成されうる。
【0005】
通常、マグネトロン・スパッタリング・システムは、スパッタリング中、2×10∧−2Pa〜1×10∧−1Paで動作する。この圧力を確立するために、通常、チャンバは、<1×10∧−4Paの圧力までポンプダウンされ、ガス、通常アルゴン(また、反応性スパッタリングの場合、アルゴンと酸素)の制御された流れが、所望の圧力を維持するためにチャンバ内に給送される。ダイオード・システムの場合、すなわち、磁石が全く使用されないとき、プラズマを点火させ、維持するために、>2Paの圧力が必要とされる。高い圧力は、平均自由工程が大幅に減少し、広範囲にわたるガス散乱が引起されるという欠点を有する。これは、ヘイジー・コーティングをもたらす。
【0006】
個々の基板にわたって、基板ごとに、また、運転ごとに、コーティング・レートおよび製品均一性を増加させるマグネトロン・スパッタリング・システムを作成することが望ましい。
【0007】
カソード幾何形状、特に、カソードの形状、位置、および寸法とコーティングされる対象物との間の関係は、堆積レートおよびコーティング面積、ならびに、製品品質および一貫性にかなりの影響を及ぼす。基板にわたる膜厚の変動はランオフと呼ばれる。ランオフは、モデル化によって予測されうる。直径の大きな基板に対して良好な膜厚均一性、低いランオフを提供することが望まれる。
【0008】
多くのコーティング装置では、コーティング・レート変動を許容可能なレベルに減少させるのにマスキングが使用される。しかし、経時的に、マスクは通常、大量のコーティング材料を蓄積する。マスク上の材料は、臨界厚に達すると、剥離し、コーティング品質を低下させる粒子の原因となる。同様に、こうしたマスクをトリミングし、かつ、維持することは骨の折れるプロセスである。さらに、マスクは、コーティングされるにつれて、その形状を徐々に変え、それにより、コーティング分布が連続的に変わる。一部の例では、スパッタリング粒子のかなりの部分がシールドされ、材料の利用が低下する。従来技術では、ヘビー・マスキング、コーティング材料の40%までをブロックすることが、100mmウェハにわたって+/−1.5%の許容可能な厚さ分布(ランオフ)を達成するために必要とされる。運転ごとの均一性を提供するために、安定したシステムが必要とされる。マスクを使用しないデバイスを提供することが望まれる。
【0009】
アノードは、負に帯電したカソードに対して荷電の差を提供する。これは、電荷がチャンバ壁に提供されるのと同様に簡単に行われうる。しかし、スパッタリング材料はまた、スパッタリング原子に暴露される任意の表面上に堆積される。コーティングが、金属酸化物などの電気絶縁材料である場合、スパッタリング装置の他の部分上への材料の蓄積が問題を引き起こしうる。特に、アノード上での絶縁性コーティングの蓄積は、プラズマの荷電平衡を維持するために必要とされるプラズマから電子を除去するアノードの能力に干渉する。これは、プラズマを不安定にし、堆積制御に干渉する。コーティングの蓄積によって、アノードの場所が、システム内の別の表面に移動することになる。この不安定性は、コーティング品質に影響を及ぼす。アノードが、コーティング材料をコーティングされるという問題を克服するために、多くの従来技術のアノードが提案されている。多くの従来技術のアノードは、非常に高い電圧で機能し、非常に高い電圧はまた、コーティング品質を損なうアーク放電の問題を増大させる。安定したアノードの場所を提供しうる低電圧アノードは、一貫性のあるコーティング品質を確保することにとって重要である。
【0010】
コーティング能力の増加は、堆積レートの増加か、負荷サイズの増加か、またはその両方によって実現されうる。堆積レートを増加させるために、ターゲットにおける電力密度を増加させることが必要である。しかし、より高い電力密度は、アーク放電の増加、またシリコンなどの一部のターゲットでは、ターゲット割れの増加をもたらす。より大きなターゲットは、電力密度を増加させることなく、より高い材料除去レートを可能にする。堆積された膜のより大きな酸化効率はまた、反応性スパッタリングの場合に堆積レートを増加させうる。ランオフ制限を維持することは、負荷サイズを増加させることにとって難題である。カソードと遊星ドライブが共通中心点を共有する同心システムでは、より大きな基板またはより多くの数の基板について遊星ドライブ・システムを拡大することは、照射距離の増加を必要とする。これは、粒子の衝突(「平均自由工程の減少(a reduction of the mean free path)」とも呼ばれる)の確率を増すことによるガス散乱の問題を増大させる。結果として、散乱またはヘイズの増加として認識されるコーティングの表面粗さの増加がもたらされる。+/−0.5%のランオフを維持しながら、3ミクロン厚の塗布について、スループットを3600cm/時間より大きな値まで増加させることが望まれる。一部の産業の場合、300mm基板をコーティングする能力が必要である。コーティング品質を犠牲にすることなく、能力を上げることが望まれる。温度に敏感な材料を処理することができるために、電力入力が増加しても、低温プロセスを維持することも望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高いコーティング品質を維持し、材料廃棄を最小にしながら、大きな表面積にわたって高速なコーティングを提供する幾何形状を有するマグネトロン・スパッタ・コーティング・デバイスで使用するためのリング形状カソードを提供することが本発明の目的である。
【0012】
マスクを使用することなく、高い品質のコーティングを生成するリング形状カソード幾何形状を含むマグネトロン・スパッタ・コーティング・デバイスを提供することが本発明のさらなる目的である。
【0013】
低電圧アノード容器と組合せたリング形状カソードを組み込むマグネトロン・スパッタ・コーティング・デバイスを提供することが本発明の目的である。
【0014】
カソード・リングの中心にアノード容器を組み込むマグネトロン・スパッタ・コーティング・デバイスで使用するためのリング形状カソードを提供することが本発明の目的である。
【0015】
カソード・リングの中心に反応性ガス出口を組み込むマグネトロン・スパッタ・コーティング・デバイスで使用するためのリング・カソードを提供することが本発明のさらなる目的である。
【0016】
活性化された反応性ガスを送出しうる、カソード・リングの中心にアノード容器を組み込むマグネトロン・スパッタ・コーティング・デバイスで使用するためのリング形状カソードを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、カソード軸が遊星ドライブに対してオフセットする遊星ドライ・システムを用いて、マグネトロン・スパッタリング・デバイスのコーティング面積およびターゲット材料効率を増加させるリング・カソード幾何形状を見出した。基板用のリング・カソード幾何形状およびオフセンタ2重回転システムは、マスキングを使用することなく、大きな基板にわたる優れたコーティング均一性の実現を可能にする。低い欠陥レベルは、カソード上で電力密度を低下させることによって維持される。
【0018】
したがって、本発明は、マグネトロン・スパッタリング・デバイスを提供するものであり、マグネトロン・スパッタリング・デバイスは、
主回転用の中心回転軸Cを有し、複数の遊星を支持する遊星ドライブ・システムであって、各遊星は、遊星中心点Cに第2の回転軸を有し、各遊星は、r遊星半径によって描かれるコーティング領域を示すものであり、遊星ドライブ・システムは、中心回転軸Cから遊星中心点Cまでのキャリア半径rを有する遊星ドライブ・システムと、
コーティングを形成する材料を含むリング形状ターゲットを含むリング形状カソードであって、中心点C、遊星半径より大きい外側半径r(r>r)、外側半径の1/4より大きい内側半径r(r>r>1/4×r)を有し、
カソード中心点Cは、中心回転軸Cからキャリア半径rの2/3と4/3との間のオフセット距離r(2/3×r<r<4/3×r)に配設され、
オフセット距離rは、カソードの外側半径の1/2より大きく(r>1/2×r)、
垂直方向にターゲット表面から遊星表面までの照射距離hは、カソードの外側半径rの1/3とカソードの外側半径の1倍との間にある(1/3×r<h<r)リング形状カソードと、
動作時に排気されるようになっている、カソードおよび遊星ドライブ・システムを収容するチャンバと、
スパッタ・ガス流をチャンバ内に提供するガス送出システムとを含む。
【0019】
マスクを使用することなく基板にスパッタ・コーティングを提供するためのマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0020】
反応性ガス用の活性化供給源をさらに含む上記マグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0021】
反応性ガス用の活性化供給源はリング形状カソードの中心に配置される上記マグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0022】
カソードに電圧差を提供するアノードをさらに含み、アノードは電子のための好ましい戻り経路になるものであり、アノードは、チャンバ壁から電気的に絶縁された絶縁外部表面を有する容器の内部導電性表面を備え、容器は、チャンバ内部に連通する開口を有し、開口は、スパッタリングされるほとんどの材料から内部導電性表面をシールドするために、容器の外周より著しく小さいマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0023】
スパッタリング・ガス用の供給源は、開口を通してチャンバ内にスパッタリング・ガスを提供するために、容器内に結合され、開口は、ガス流が、局所的にアノード容器内の圧力を排気されるチャンバの圧力を超えて増加させることを可能にする大きさに作られるマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0024】
反応性ガス用の活性化供給源をさらに含む上記マグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0025】
スパッタリング・ガス用の供給源を含むアノードは、チャンバ内部に連通する容器の開口が、リング形状カソードの中心にあるように配置されるマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0026】
反応性ガス用の活性化供給源を含み、アノードは、チャンバ内部に連通する容器の開口が、リング形状カソードの中心に配置されるマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0027】
スパッタリング・ガス用の供給源としてアノードを含み、反応性ガス用の活性化供給源が、リング形状カソードの中心にあるように配置されるマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0028】
スパッタリング・ガス用の供給源としてアノードを含み、アノードは、活性化された反応性ガスを、スパッタリング・ガスと共に開口を通してチャンバ内に提供するために、容器内に結合した反応性ガス用の供給源をさらに含むマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0029】
スパッタリング・ガスおよび反応性ガス用の供給源としてアノードを含み、アノードを備える容器のチャンバ内への開口は、リング形状カソードの中心に配置される上記マグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0030】
リング形状カソードの中心に配置されたスパッタリング・ガスおよび反応性ガス用の供給源としてアノードを含み、カソードからある距離に配置された補助活性化反応性供給源をさらに含む上記マグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0031】
内側半径rは、r>r>1/2×rとなるように、外側半径rの1/2より大きいマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0032】
内側半径rは、r>r>0.70×rとなるように、外側半径rの0.70倍より大きいマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0033】
0.95×r>r>0.6×rであるマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0034】
カソード半径rは、遊星半径の1.11倍以上である(r>1.11×r)マグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0035】
マグネトロン・スパッタリング・デバイスであって、カソードは、カソードのターゲット材料の対向する側に永久磁石材料の内側および外側の同心リングを含み、内側および外側の同心リングは、反対極性を有し、内側および外側の同心リングの軸は、ターゲットの表面の近くに磁界を提供するために、ターゲットの表面に垂直であるマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0036】
チャンバ内に、コーティングを形成する材料を含むリング形状ターゲットを含む1つまたは複数の交互のリング形状カソードをさらに含み、オフセット距離rは、外側半径rの1倍より大きい(r>1×r)請求項1に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0037】
ターゲット表面平面と対象物平面との間の前記照射距離を調整する手段をさらに含むマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【0038】
有利には、本発明は、従来技術に比べて、ランオフと遊星ごとの結果の両方においてコーティング均一性を増加させる。垂直および水平位置決めの機械的逸脱に対する許容度が、大幅に緩和される。そのため、精密な機械的制御を用いて、遊星ごとの均一性の大幅な改善が達成されうる。この品質制御は、依然として比較的短い照射距離を維持しながら、比較的大きな基板(300mm)にわたって、また、増加した負荷のためのスケールアップによらず維持されうる。本発明によれば、この均一性は、マスクを使用することなく達成されうる。
【0039】
本発明の例示的な実施形態が、ここで、図面に従って述べられるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】一部の外部壁が除去された状態の、本発明のコーティング・システムの等角図である。
【図2】図2Aはコーティングされる遊星基板に対して、活性化反応性ガス供給源を含むアノード容器をその中心に組み込むリング形状カソードの略断面図である。図2Bはコーティングされる遊星基板に対して、図2Aのカソードおよび活性化反応性ガス供給源を有するアノードの略平面図である。図2Cはカソードおよび半径方向に位置決めされた別個の活性化反応性ガス供給源を有するアノードの略断面図である。
【図3A】本発明のある実施形態によるリング形状カソード・ターゲットおよび遊星基板の略平面図である。
【図3B】リング形状カソード・ターゲットおよび遊星基板ドライブの略側面図である。
【図4】図4Aはリング形状カソードの平面図である。図4Bはターゲット材料、磁石、および磁力線を示す、図4AのラインIV−IVを通して切取ったリング形状カソードの断面図である。
【図5】マグネトロン・スパッタリング・デバイスで使用するためのアノード容器の断面図である。
【図6】リング形状カソードの内側半径と外側半径の可変の比についての計算されたランオフのグラフである。
【図7A】相対的なキャリア半径およびカソード位置に対する計算されたランオフおよび高さのグラフである。
【図7B】相対的なキャリア半径およびカソード位置についての計算された基板の数のグラフである。
【図8A】正規化されたキャリア半径r/rに対する計算されたランオフのグラフである。
【図8B】正規化されたキャリア半径r/rに対する計算された照射距離のグラフである。
【図9A】ある範囲のカソード・リング寸法r/rについての、相対的な基板サイズr/rに対する計算されたランオフのグラフである。
【図9B】相対的な基板サイズr/rに対する計算され正規化された照射距離h/rのグラフである。
【図10A】相対的な遊星サイズr/rに対する計算されたランオフのグラフである。
【図10B】相対的な遊星サイズr/rに対する計算された相対的な照射距離h/rのグラフである。
【図11】本発明に従って構築されたデバイスについての測定されたランオフのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
マグネトロン・スパッタ・コーティング・デバイス10のコーティング・チャンバ2の等角図が図1に示される。ポンプ8は、圧力が大気圧未満である場合を意味すると理解される真空状態下での動作のためにコーティング・チャンバ2を排気する。チャンバ壁32は、接地され、正に帯電したアノード20および負の帯電したカソード12から絶縁される。図3Aおよび3Bでより詳細に見られる遊星ドライブ14は、中心回転軸Cの周りに回転可能なキャリア16またはラックを備える。複数の、たとえば7つまたは8つの遊星17が中心回転軸Cの周りに半径方向に支持される。キャリア半径rは、中心軸Cと遊星軸Cとの間で規定される。リング形状カソード12、この実施形態では2つのカソード12が示され、それぞれが遊星ドライブ14の中心軸Cからオフセットする中心軸Cを有する。コーティング・チャンバ2に連通する開口を有する容器の形態のアノード20は、コーティング材料からシールドされ、カソード12のターゲット材料への直接線からそらされている。活性化反応性ガス供給源36は、カソード12の中心に示される。これらの位置は、アノードを備える反応性供給源36がカソード12の中心にあり、活性化反応性供給源20がカソード12からある距離の所に配設されることによって反転されうる。反応性供給源36についての好ましい場所は、図2Cに示すように、Cから半径方向位置rにあるが、代替の実施形態は、アノード容器20’が、リング・カソード12の中心に位置決めされ、反応性ガス供給源としても機能する図2Aおよび2Bに示される。アノード20’がカソードの中心において活性化反応性ガス供給源(図1の36)である場合、より高い堆積レートを可能にするために、補助活性化酸素供給源が、図1の20に配置されうる。マグネトロン・スパッタ・コーティング・デバイス10は、コーティングするために、基板または他の対象物23をローディングおよびアンローディングするロード・ロック1を含む。これは、堆積チャンバ2が常に真空条件下に留まることを可能にする。デバイスは、ここではスパッタを上にした構成で示される。しかし、本発明の幾何形状は、スパッタを下、水平、または他の向きに同様に適用される。
【0042】
パルス駆動式DCマグネトロン・スパッタリングが好ましいプロセスである。あるいは、本発明はまた、DCマグネトロン、ACマグネトロン・スパッタリング、およびrfマグネトロン・スパッタリングで実施されうる。
【0043】
多くの光学コーティングは、そのスペクトル応答において差別的な特徴を有する。たとえば、色分解用のエッジ・フィルタは、他の色を排除しながら、1つの色を通過させる。本開示の目的のために、コーティングについての全200mmまたは300mm基板にわたる精度要件は、0.5%であると仮定される。上記実施例の場合、エッジが500nmにあった場合、精度要件は、2.5nm絶対エッジ配置変動に移行されることになる。スペクトル特徴部の配置は、コーティング設計における層の厚さに関連する。そのため、基板にわたるコーティング・レートの変動は、0.5%未満である必要がある。複数の基板が同じバッチでコーティングされる場合、基板ごとの変動は、その何分の1かである必要がある。スペクトル特徴部の配置の変動もまた、ランオフと呼ばれる。
【0044】
遊星ドライブ14およびリング・カソード12は、図3Aおよび3Bにより詳細に概略的に示される。遊星ドライブ14は、ドライブ・システムが回転する中心軸C、および、各遊星17が独立に回転する複数の第2の軸Cを含む。中心軸Cと第2の軸Cとの間の距離は、キャリア半径rである。各遊星17は、使用可能な最大コーティング領域を規定する中心半径rを有する。所望される遊星17の数およびサイズは、遊星ドライブ14のサイズおよびデバイス10の能力を確定する。
【0045】
遊星17は、遊星コーティング幾何形状において、中心回転軸Cから共通距離rにおいて支持される。通常、コーティング材料の最良使用のために遊星17をできる限り密接に配列することが望まれる。各遊星17は、単一のまたは複数の基板、光学プリズム、レンズ、あるいは他の対象物23を支持しうる。コーティングされる対象物23は、支持基板上に搭載される複数の分離した小型部品を備えうる。遊星半径rは、各遊星17用の使用可能なコーティング領域を規定するに過ぎない。遊星17は、構造上、この寸法自体である必要はないが、この半径の基板23またはこの領域内でコーティングされる複数の対象物23を支持することができる。好ましい実施形態では、バルク光学部品などの大きな対象物は、32mmまでの厚さを有してもよい。制御された高さ調整によって、正確に規定されたターゲット表面と対象物表面の距離は、最小ランオフをもたらす。
【0046】
独立した遊星回転は、中心回転軸Cの周りの回転に対して協調した回転レートを含んでもよい。第2の軸Cは、中心回転軸Cに好ましくは平行であるが、ある他の角度にあってもよい。各遊星17は、他のすべての遊星17と実質的に同じ条件を受けるように配設される。図3Bに明確に見られるように、対象物平面46が示され、基板または他の対象物23のコーティング表面にある。照射距離hは、対象物平面46とカソード12のターゲット表面の平面44との間で測定される。
【0047】
リング・カソード12は、遊星半径rより大きい大きな半径rを有する。コーティングのために選択される遊星サイズおよび数に依存して、カソード半径rは、必要とされるランオフを維持するために最適化されうる。1つの他の因子はリング幅である。カソードは内側半径rを有する。リングが狭くなればなるほど、すなわち、r/rが大きくなればなるほど、同じ均一性を達成するために、ラックまたは基板17が大きくなりうる。より大きなカソード半径は、カソード12の総合電力が高くても、高い堆積レートを達成するために低電力密度を必要とする。これは、ターゲット24上への電荷蓄積およびその結果得られるアーク放電を最小にする。カソード12の中心軸Cは、中心軸Cからのオフセット距離rに移行される。この移行またはオフセット距離rは、キャリア半径rの2/3と4/3の間に等しい。最も好ましいオフセットは、キャリア半径r(r=r)に等しく、一方、キャリア半径の0.7〜1.3倍の範囲が、同様のランオフ制御を達成する。これらの値は、図8Aを見てわかるように、カソード・リング幅r/rおよび確定されたランオフ限界によって変動する。オフセット距離は、基板サイズまたはコーティングされる基板の数に応じて変動する。
【0048】
カソード12は、図4Bに明確に示される、ターゲットの浸食ゾーンで測定された、内側半径rおよび外側半径rを有する。これらの半径は共に、好ましくは狭いリングを規定する。カソード12とコーティング材料のターゲット24は共に、実質的に同じ環状リング形状および寸法を有する。内側半径は、0.98×rと同程度に大きくあることができ、また、少なくとも0.25×rであるべきである。改善された結果が0.55×rで見られる。300mm基板の場合、最適ランオフは、0.70以上のr/rの狭いカソード・リングを用いて達成される。外側半径rは、遊星17の半径rに依存する。半径rは、遊星半径より大きく(r>r)、理想的には、遊星17の半径の2倍である。カソード半径は、より大きくできr>2×r、これは、チャンバ内の空間制限に依存する。より大きな半径(r)のリング・カソードは、等しい幅のリング(たとえば、r−r)と比較すると、よりよいコーティング均一性をもたらす。これは、図6を見てわかる。大きなターゲットが単独で、良好な均一性を必ずしももたらさないことに留意することが重要である。円形の(非環状の)高利用率カソードが低い均一性をもたらすことをシミュレーションが示す。シミュレーション・データが図6に示される。本発明の幾何形状の性能は、数値モデリングによって予測されている。所与のターゲットおよび基板サイズ(外側半径)について、レース・トラック・リングが狭くなればなるほど、内側直径rについて約0.98×rの実用上の限界まで、基板にわたるコーティング均一性がよくなることを、この幾何形状のシミュレーションが示す。より大きな直径のリング・カソードが、同じ幅のリングと比較すると、よりよいコーティング均一性をもたらすことがさらに観測されている。図6は、基板サイズr/r=0.69についての半径方向ランオフ対相対的リング半径r/rのグラフを示す。グラフは、リングが狭くなるにつれて、ランオフが減少することを明確に示す。2%未満のランオフは、r/r>0.25で見られる。よりよいランオフが、リングr1/r2>0.55について予測される。理想的な範囲は、0.9>r/r>0.55であるように見える。対向軸に関して、照射距離hは、相対的リング半径r1/r2に対してプロットされる。ターゲット平面44から対象物平面46までの照射距離hは、r/r=0.25からr/r=0.9まで90mmから240mmまで増加する。
【0049】
図4Aおよび4Bに示すように、大きなリング・カソード12は、内側磁気リング35および外側磁気リング37を含む。リング・ターゲットは、内側および外側レース・トラック半径を有するものとして述べられうる。マグネトロン・カソードのレース・トラックは、材料がその上に放出される領域を描く。このパターンに対する主要な寄与物は、ターゲット24の前面の水平磁界強度である。磁界は、ターゲットの下の2つの同心リング内の永久磁石35、37によって生成される。内側磁気リング35は、実質的にr以下の半径を有し、外側磁気リングは、実質的にr以上の半径を有する。2つの磁気リング35、37は、反対極性を有し、磁気リングの軸は、ターゲット24の表面44に垂直である。リングが比較的狭いため、大きな磁界が達成されることができ、低いターゲット電圧(−250Vと−650Vとの間)、通常、堆積層内に低い応力をもたらす。大きなリング・カソードでは、よりよいターゲット利用率のため磁界形状を最適化するために、さらなる磁石を含むための十分な空間がリングの内部に存在する。カソードは、任意の電気モード、たとえば、RF、DC、パルス駆動式DC、MF、デュアル・カソードAC、単一カソードACを用いて駆動されうる。
【0050】
本発明による幾何形状は、コーティング・デバイスが、照射距離を大幅に増加することなく、より大きな能力のためにスケールアップすることを可能にする。これは、能力を増加させながら、コーティング品質を維持するのに役立つ。図7Aおよび8Aは、キャリア半径rの増加に伴って表面均一性に及ぼされる影響をグラフで実証する。図7Bは、キャリア半径rの増加に伴う、遊星、したがって基板の数の増加の可能性を実証する。図8Bは、キャリア半径の増加に伴う最適化された照射距離をグラフで立証する。図7では、カソードの一定r直径に関して計算が行われる。図8Aおよび8Bでは、固定ターゲット位置r(r=rが正規化される)に関して計算が行われる。負荷サイズまたは基板寸法を増加させるための、この最適位置からの逸脱は、ランオフに大きな影響を及ぼすことなく対処されうることが図8Aのグラフで見てわかる。r=rについて正規化された固定ターゲット位置に関して同様に行われた、異なるターゲット・リング寸法r/rについての照射距離hの必要とされる増加を図8Bのグラフは示す。照射距離は、ターゲット材料のコーティング・レートおよび使用効率に影響を及ぼす。照射距離はまた、コーティング品質に重大な影響を及ぼす。ターゲットと基板の距離が大きくなればなるほど、スパッタリング原子が、残りの作動ガス(アルゴンおよび酸素)内に散乱することになる確率が高くなる。散乱は、スパッタリング粒子のエネルギーの減少および所定方向の荷電をもたらす。これらのメカニズムは共に、コーティング品質に悪い影響を及ぼし、粗いコーティング、また、誘電体膜の場合、ヘイズおよび光散乱をもたらす。本発明における短い照射距離hは、コーティング能力および大きなコーティング能力のための品質を改善するときに重要である。
【0051】
図9Aのグラフは、均一性に及ぼす遊星サイズrの影響を実証する。カソード・リングが狭くなればなるほど、r/r=0.90、同じ均一性を達成するために、遊星が大きくなりうることが見てわかる。2%のランオフの場合、
/r>=0.48についてr<0.67×rまたはr/r>=0.48についてr>1.50×r
/r>=0.55についてr<0.69×rまたはr/r>=0.55についてr>1.45×r
/r>=0.76についてr<0.80×rまたはr/r>=0.76についてr>1.25×r
/r>=0.90についてr<0.90×rまたはr/r>=0.90についてr>1.11×r
【0052】
0.5%のランオフの場合、
/r>=0.48についてr<0.50×rまたはr/r>=0.48についてr>2.00×r
/r>=0.55についてr<0.52×rまたはr/r>=0.55についてr>1.92×r
/r>=0.76についてr<0.58×rまたはr/r>=0.76についてr>1.72×r
/r>=0.90についてr<0.65×rまたはr/r>=0.90についてr>1.54×r
【0053】
同様に、図10Aは、ターゲット24およびカソード12の異なる内側半径rについての遊星サイズに関する均一性の変化を示す。やはり最も狭いリング(最も大きなr)が最も低いランオフをもたらす。図10Bは、相対的な遊星サイズに関して、カソード直径(r)に対する比較的平坦な相対的照射距離を示す。
【0054】
150mm半径rの7つの基板および290mmの外側半径rを有するリング・カソードを含むこの幾何形状の実施例が構築された。内側カソード半径rは、220mmであり、r/rは0.76である。キャリア半径rは、400mmにおいてオフセット距離rに等しい。図11は、異なる照射距離hについての300mm基板(r+150mm)にわたる位置に関する相対的ランオフを実証する本プロトタイプについてのデータを示す。210mmの照射距離が、最もよいランオフ結果を示す。
【0055】
好ましい実施形態では、図1に示すように、2つのカソード12は、多層コーティングのための異なる材料を提供するために、異なるターゲット24を有するコーティング・チャンバ2内に含まれる。各カソード12は、独立に動作し、一方、アイドルカソードは、汚染を回避するために扉を閉められてもよい(図示せず)。ターゲット24は、たとえば、SiOを形成するためにシリコンであり、Taを形成するためにタンタル・ターゲットでありうる。2つのカソード12を1つのチャンバ2内に嵌合させるために、オフセット距離rは、カソード外側直径rより大きくなければならない。設計はオフセットrの小さな変化に対して比較的感度が低いため、こうして、付加的でかつ異なるターゲット材料が、コーティング品質を犠牲にすることなく提供されうる。各カソード12と遊星ドライブ14の関係rは同じである。そのため、付加的な材料を提供するため、または、運転時間を減少させるため、複数のカソードがチャンバ内に配設されうる。異なるターゲット間の相互汚染、コーティング・チャンバ2内の利用可能な空間、および大きなチャンバ用のさらなるポンプ・コストについての考慮事項は、カソードの数を部分的に確定するであろう。
【0056】
カソード12か、回転ドライブ14か、またはその両方用の搭載プラットフォームの移動によって、照射距離を変更するために、カソード12の位置に対して調整が行われうる。これは、手動でまたはモータを起動することによって行われうる。こうした調整はまた、異なる材料について幾何形状を改善するため、または、ターゲットが使用によって浸食されるときに距離を維持するために行われうる。調整は、真空下のプロセス・チャンバに関して行われうる。遊星ドライブ・マウンティングまたはカソード・マウンティング内の高さ調整メカニズムは、異なる基板または対象物厚についての照射距離補償を可能にする。動作時、高さ調整は、コーティング運転全体を通して正しい照射距離hを維持するために、ターゲット浸食について連続的な補償を提供しうる。
【0057】
約100nmの標準的な層厚の場合、遊星17の回転速度は、300rpmを超えるべきである。非常に薄い(約10nmの)層の場合、良好なランオフをもたらすために、より高い遊星回転速度(>600rpm)が必要とされる。これは、遊星ドライブ14が40〜80rpmで回転することを仮定する。
【0058】
アノード20は、負に帯電したカソードに対して荷電の差を提供する。図5に詳細を示す、本発明で使用するための好ましいアノード20は、2005年3月7日に出願され、本発明の譲受人が所有する関連出願、米国出願第11/074,249号に開示され、参照により本明細書に組み込まれる。ここで図5を参照すると、アノード20は、真空チャンバ2と連通する開口21を第1端に有する、銅またはステンレス鋼22の内側表面を有するコンテナまたは容器の形態で示され、開口21は真空チャンバ2に直接結合する。コンテナ20の外側壁26は、電気絶縁されている。断面図では、水冷却パイプ28は、動作時にアノード温度を維持するために、実質的にアノード20の周りに示されている。スパッタ・ガスが、アノード容器にそこを通して入ることができる導管を提供するガス入口ポート29が示されている。開口21のサイズおよびスパッタ・ガスの流れは、アノード20を局所的に加圧するように選択されうる。アノード本体20は、真空コーティング・チャンバ2の外または内部に配設されうる。さらに、開口21は、アノード容器の側面または端に配置されうる。容器の外周より著しく小さい、比較的小さな開口21、および、ターゲットへの視線から外れた開口21の場所は、コーティング材料が、アノード容器に入り、アノード容器の内側導電性表面にコーティングされることを防止する。動作時、アノード20は、アルゴン・ガスによって加圧され、アルゴン・ガスは、適した点火電圧、および、その後、維持電圧の存在下で、コーティング・チャンバ2内でプラズマの形成を促進する。真空コーティング・チャンバ2の残りの部分より高い容器20内の圧力は、低いアノード電圧およびより安定したスパッタリング条件を可能にする。正の電源リード線25は、電源をアノード20の内側導電性壁22に接続する。図5に示すアノードは、低いアノード電圧で、かつ、アーク放電がほとんどまたは全くなしの状態で機能するように設計された。約+15〜+60ボルトの低いアノード電圧は、プロセス変動を低減するために好ましい。アノード20は、絶縁性材料33によって接地されたチャンバ壁32から電気絶縁される。
【0059】
好ましい実施形態では、アノードは、図5に示すように一端で真空チャンバ(2)への開口21を有し、対向端が閉じた、少なくともd=10cmの直径および少なくともh=20cmの長さを有する円柱形状の容器を備える。散乱プロセスが低い場合、チャンバ圧は0.267Pa(2mTorr)未満である。アノードにおけるより高い圧力は、アノード20の減少した開口21、および、入口ポート29を介したアノード20内へのプロセス・ガスの制御された流れによって達成される。最適な開口は、約20cmの面積を有し、好ましくは丸い。動作時、アノード20は、0.400Pa(3mTorr)を超えて加圧されうる。このアノード20は、長い期間にわたってほぼ連続した動作で運転されうる。アノード容器20は都合がよいことには、図1に示すように、カソード12に隣接してチャンバ壁32内に配置され、スパッタ・ガス供給源の役割も果たしうる。
【0060】
アノード容器20は、アノード開口が強い磁界から比較的遠方にあるため、図2に示すように、リング・カソードの中心に一体化されうる。これは、システムの対称性を改善し、ターゲット利用率を改善する。
【0061】
多くの光学コーティングは、酸化物または他の化合物の堆積を必要とする。こうした材料は好ましくは、金属ターゲットがスパッタリングされ、酸素、窒素、または別の反応性ガスがプロセスに添加される反応性スパッタ・モードで生産される。スパッタリング材料および活性化酸素種は、基板に同時に到達する。最適酸素分圧についての、たとえば、酸素の最適流量を見出す必要がある。酸素流量が小さ過ぎる場合、膜は、化学量論的でなく、高い吸収損失を有する。酸素流量が大き過ぎる場合、ターゲット表面は、必要以上に酸化され、考えられる最も高い堆積レートでの動作を妨げる。金属ターゲットについてのスパッタ・レートは、完全に酸化したターゲットより10倍高い可能性がある。その基本的な形態では、反応性ガスは、質量流量コントローラを通して流れ、単純ガス・ラインまたは複雑多岐管を通してコーティング・チャンバに入る。酸素が活性化し基板に送られる場合、酸化効率が上昇し、したがって、考えられる堆積レートが増加しうる。
【0062】
本発明のこの態様の好ましい実施形態では、誘導結合式反応性活性化供給源36の出力オリフィスは、リング・カソード12の中心に配置される。低い吸収を有する金属酸化物のよい高い堆積レートは、ターゲットからのスパッタリング材料のプルームならびに活性化酸素およびイオン化酸素のプルームが、オーバラップし、コーティングされる基板に同時に到達するときに達成されうることを実験が示している。そのため、反応性ガス供給源36をターゲットの中心に持つことは、最も理想的な解決策である。図1に示す指向性のある酸素活性化または加速デバイス36の使用は、ターゲット酸化を最小にしながらの、化学量論的な膜の形成に役立つ。こうしたデバイスは、抽出または加速システムがある状態またはない状態での誘導結合式または容量結合式プラズマ供給源でありうる。供給源出力は、イオン化されるかまたはその他の方法で活性化された酸素種(たとえば、原子酸素、オゾン)でありうる。例は、JDSU PAS供給源、Pro VacからのTaurion供給源、LeyboldからのAPS供給源、あるいは他の市販のイオンまたは活性化供給源を含む。活性化反応性供給源36は、カソード12の中心の、ちょうどターゲット表面の平面44に位置決めされる。活性化反応性供給源がカソードから分離される場合、酸素供給源36における大量のコーティング蓄積を防止することが重要であるため、スパッタリング・ターゲット表面24からの視線から外れるようカソード12が酸素供給源36と対象物平面46との間になるように活性化反応性供給源が向けられるべきである。図2Cに示すように、酸素供給源36は、Cから半径rに搭載され、その開口は、ターゲット24および遊星17の方向に傾斜する。開口は、対象物平面46からh以上の垂直距離であるべきである。距離hが好ましい。本幾何形状によって可能になる、ターゲット表面の平面44を対象物平面46の近くに移動させることは、酸素活性化供給源36を、大量のコーティング蓄積がない状態に維持しながら、基板23の近くに位置決めすることを可能にする。それは、酸化効率を増加させ、より高いレートでコーティングすることを可能にする。酸化物用の反応性スパッタ・プロセスが開示される。すべての態様は、窒化物または他の反応性プロセスに同様に適用されうる。
【0063】
さらなる好ましい実施形態では、アノード容器20は、活性化反応性ガスを提供するための適した構造であることが見出された。典型的な配置構成のアノード容器20はプラズマを含むことを本発明者等は観測した。プラズマは、カソード12からやって来て、アノード20を通して電源に戻る高密度電子によって点火される。イオン生成および活性化種の生成の作用は、カソードで起こる反応と同様である。すなわち、エネルギーe−+Ar=≧2e−+Ar+またはエネルギーe−+Ar=>e−+Ar。アルゴン原子のこの活性化がなしでは、アノードにおける目に見えるプラズマが存在しないことになる。本発明者等は、活性化酸素およびイオン化酸素を生成するかどうかを試験するために、アノードに対する酸素の添加を試験しようと決めた。酸素フィードをアノード容器20’内に結合させることによって、本発明者等は、明確なSiOの単一層を堆積させることができた。これは、アルゴンおよび酸素を用いて動作するアノードが、アノードおよび活性化反応性ガス供給源として振舞っているという明確な指示である。さらに、本発明者等は、アノードの内部壁の酸化を観測しなかった。構成は図2Aに示される。アノードと酸化供給源が別個であるとき、ターゲット利用率を制限するターゲット摩耗の大きな変動が観測される。酸化供給源に近い側では、ターゲット酸化の増加によりターゲット摩耗は小さい、一方、アノードに近い側では、プラズマ密度の増加によりターゲット摩耗は大きい。アノード20をカソード12の中心に含むことによって、非対称性の1つの原因が削除される。酸素供給源を、カソード12の中心と共にアノード容器20’に含むことによって、非常に対称性が高いシステムが生成され、ターゲット摩耗は、均一になると予想される。カソード12からある距離に(たとえば図1に示すように20に)配置される補助の活性化反応性供給源は、より高い堆積レートを可能にするために、さらに設けられうる。
【符号の説明】
【0064】
1 ロード・ロック
2 コーティング・チャンバ
8 ポンプ
10 マグネトロン・スパッタ・コーティング・デバイス
12 カソード
14 遊星ドライブ
16 キャリア
17 遊星
20、20’ アノード
21 開口
22 コンテナまたは容器
23 基板または対象物
24 ターゲット
25 電源リード線
26 コンテナの外側表面
28 水冷却パイプ
29 ガス入口ポート
32 チャンバ壁
33 絶縁性材料
35 内側磁気リング
36 活性化反応性ガス供給源
37 外側磁気リング
44 ターゲット表面の平面
46 対象物平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主回転用の中心回転軸Cを有し、複数の遊星を支持する遊星ドライブ・システムであって、各遊星は、遊星中心点Cに第2の回転軸を有し、各遊星は、r遊星半径によって描かれるコーティング領域を示すものであり、前記遊星ドライブ・システムは、前記中心回転軸Cから遊星中心点Cまでのキャリア半径rを有する遊星ドライブ・システムと、
コーティングを形成する材料を含むリング形状ターゲットを含むリング形状カソードであって、中心点C、前記遊星半径より大きい外側半径r(r>r)、前記外側半径の1/4より大きい内側半径r(r>r>1/4×r)を有し、
前記カソード中心点Cは、前記中心回転軸Cから前記キャリア半径rの2/3と4/3との間のオフセット距離r(2/3×r<r<4/3×r)に配設され、前記オフセット距離rは、前記カソードの外側半径の1/2より大きく(r>1/2×r)、
垂直方向にターゲット表面から遊星表面までの照射距離hは、前記カソードの前記外側半径rの1/3と前記カソードの前記外側半径の1倍との間にある(1/3×r<h<r)リング形状カソードと、
動作時に排気されるようになっている、前記カソードおよび前記遊星ドライブ・システムを収容するチャンバと、
スパッタ・ガス流を前記チャンバ内に提供するガス送出システムとを含むマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項2】
マスクを使用することなく基板にスパッタ・コーティングを提供するための請求項1に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項3】
前記カソードに電圧差を提供するアノードをさらに含み、前記アノードは電子のための好ましい戻り経路になるものであり、前記アノードは、前記チャンバ壁から電気的に絶縁された絶縁外部表面を有する容器の内部導電性表面を備え、前記容器は、チャンバ内部に連通する開口を有し、前記開口は、スパッタリングされるほとんどの材料から前記内部導電性表面をシールドするために、前記容器の外周より著しく小さい請求項2に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項4】
スパッタリング・ガス用の供給源は、前記開口を通して前記チャンバ内にスパッタリング・ガスを提供するために、前記容器内に結合され、前記開口は、ガス流が、局所的に前記アノード容器内の圧力を前記排気されるチャンバの圧力を超えて増加させることを可能にする大きさに作られる請求項3に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項5】
反応性ガス用の活性化供給源をさらに含む請求項2に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項6】
反応性ガス用の活性化供給源をさらに含む請求項4に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項7】
前記アノードは、前記チャンバ内部に連通する前記容器の開口が、前記リング形状カソードの中心にあるように配置される請求項4に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項8】
反応性ガス用の前記活性化供給源は、前記リング形状カソードの中心に配置される請求項5に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項9】
前記アノードは、前記チャンバ内部に連通する前記容器の開口が、前記リング形状カソードの中心にあるように配置される請求項6に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項10】
反応性ガス用の前記活性化供給源は、前記リング形状カソードの中心に配置される請求項6に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項11】
前記アノードは、活性化された反応性ガスを、前記スパッタリング・ガスと共に前記開口を通して前記チャンバ内に提供するために、前記容器内に結合した反応性ガス用の供給源をさらに含む請求項4に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項12】
前記アノードを備える前記容器の前記チャンバ内への開口は、前記リング形状カソードの中心に配置される請求項11に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項13】
前記カソードからある距離に配置された補助活性化反応性供給源をさらに含む請求項12に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項14】
前記内側半径rは、r>r>1/2×rとなるように、外側半径rの1/2より大きい請求項1に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項15】
前記内側半径rは、r>r>0.70×rとなるように、外側半径rの0.70倍より大きい請求項1に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項16】
0.95×r>r>0.6×rである請求項1に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項17】
前記カソード半径rは、前記遊星半径の1.11倍以上である(r>1.11×r)請求項1に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項18】
前記カソードは、前記カソードの前記ターゲット材料の対向する側に永久磁石材料の内側および外側の同心リングを含み、前記内側および外側の同心リングは、反対極性を有し、前記内側および外側の同心リングの軸は、前記ターゲットの表面の近くに磁界を提供するために、前記ターゲットの表面に垂直である請求項1に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項19】
前記チャンバ内に、コーティングを形成する材料を含むリング形状ターゲットを含む1つまたは複数の交互のリング形状カソードをさらに含み、前記オフセット距離rは、前記外側半径rの1倍より大きい(r>1×r)請求項1に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項20】
ターゲット表面平面と対象物平面との間の前記照射距離を調整する手段をさらに含む請求項1に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−225992(P2011−225992A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−88373(P2011−88373)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(502151820)ジェイディーエス ユニフェイズ コーポレーション (90)
【氏名又は名称原語表記】JDS Uniphase Corporation
【住所又は居所原語表記】430 N. McCarthy Boulevard, Milpitas, California, 95035, USA
【Fターム(参考)】