説明

マスカラ塗布具

【課題】1本のマスカラ塗布具のブラシ形状が変化し、多様な態様で使用できるマスカラ塗布具を提供すること。
【解決手段】桿体部と、その上端に延設され、一部に他の部分と比べて径が大きい拡径部を少なくとも1つ有する桿頭部と、を有する内部桿;当該内部桿の前記桿体部を、可動状態で内部に保持する管体;前記管体の先端に取り付けられ、弾性材料からなる筒状の塗布部基体の外側にブラシ突起が設けられるとともに、当該塗布部基体の筒の内径の少なくとも一部が、前記桿頭部の拡径部の径より小さくなるように構成された筒状の塗布部;および前記管体の下端部を固定し、内部桿を可動機構を介して取り付けた保持部;を含み、前記内部桿の桿頭部は、筒状の塗布部内に位置し、前記内部桿を移動させることにより、前記桿頭部の拡径部が塗布部基体の内径が小さくなった部分と当接し外側に押し拡げることで、塗布部の形状が変化することを特徴とするマスカラ塗布具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスカラ塗布具に関し、更に詳細には、塗布部の外径が変動することで幾通りもの使用をすることができる、マスカラブラシ、マスカラコーム等のマスカラ塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、睫の化粧方法としてマスカラが広く使用されるようになっており、これに伴って使用性の良いマスカラ塗布具の提供が求められている。基本的なマスカラ塗布具の形状は、塗布部が大略円筒状になっているものであるが、このマスカラ塗布具の使用性を高めるための工夫として、塗布部の形状がひょうたん型や団子型などの多種の形状のものや(特許文献1〜2)、一方のブラシ毛は長く、他方のブラシが短いもの(特許文献3)、ブラシ部が屈曲しているもの(特許文献4)、これらを複合したもの等多くのものが知られている。
【0003】
このような形状を工夫したものは、一般に基本的形状のマスカラ塗布具より塗布具としての使い勝手は良いが、化粧の方法によっては逆に形状を変えたことによる使用しにくさが出てきたり、容器のしごき部と塗布具との関係が塗布具全体にわたって一様でないためマスカラ液付着量のコントロールがしにくいなど、マスカラ容器との関係で、目的とする効果が十分に得られないものもあり、更に新しいコンセプトによるマスカラ塗布具の提供が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−80322
【特許文献2】特開2005−334094
【特許文献3】特開2003−9942
【特許文献4】特開2004−16328
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マスカラ塗布具を利用し睫にマスカラを塗布するに当たっては、塗布具に多くマスカラ液を付けたい場合や、少しだけ付けたい場合がある。また、睫への塗布でも、塗布部が直線状の方が使いやすい場合もあるし、また曲線状の方が使いやすい場合もある。従って、1本のマスカラ塗布具の形状が変化し、多様な態様で使用できれば使い勝手が飛躍的に向上するといえるが、このようなものは従来はなかった。従って、本発明の課題は、このような塗布具の形状が変化するマスカラ塗布具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、マスカラ塗布具が、マスカラ液を入れた容器と共に使用するという制約の中で、上記のようにマスカラ塗布具の塗布部の形状を変化させる手段について鋭意検討を行った結果、本願発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、
桿体部と、その上端に延設され、一部に他の部分と比べて径が大きい拡径部を少なくとも1つ有する桿頭部とを有する内部桿;
当該内部桿の前記桿体部を、可動状態で内部に保持する管体;
前記管体の先端に取り付けられ、弾性材料からなる筒状の塗布部基体の外側にブラシ突起が設けられるとともに、当該塗布部基体の筒の内径の少なくとも一部が、前記桿頭部の拡径部の径より小さくなるように構成された筒状の塗布部;および
前記管体の下端部を固定し、内部桿を可動機構を介して取り付けた保持部;
を含み、
前記内部桿の桿頭部は、筒状の塗布部内に位置し、前記内部桿を移動させることにより、前記桿頭部の拡径部が塗布部基体の内径が小さくなった部分と当接し、塗布部を外側に押し拡げることでその形状が変化する
ことを特徴とするマスカラ塗布具である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマスカラ塗布具は、内部桿の移動により、塗布部の形状が変化するため、塗布部の外形線が長手方向に直線状である円筒状のマスカラ塗布具としても、また塗布部の外形線の少なくとも一部に曲線状の部分を含むマスカラ塗布具としても利用可能であり、マスカラ液の睫全体への塗布も、部分的な塗布も可能となる。また、マスカラ液収納容器に設置されたしごき部との関係で、しごき部通過時の塗布部の形状を変えることにより、マスカラ塗布具にマスカラ液を多く付けたり、少量を付けるなど、付着量をコントロールすることも可能である。従って、本発明のマスカラ塗布具は、1本で幾通りもの方法で使用することができ、睫の化粧における微細な調整・仕上げが可能となる。さらに、本発明のマスカラ塗布具は、塗布部内部の構造と内部桿上端の形状の組み合わせにより、変化させた時の塗布部の形状を所望の形とすることができ、様々な睫の化粧方法に合ったマスカラ塗布具の設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明マスカラ塗布具を示す部分断面図
【図2】塗布部が円筒状である状態を示す図面
【図3】塗布部が膨張し、大略ビヤ樽状になった状態を示す図面
【図4】図2における塗布部のA−A'端面図
【図5】別の態様の塗布部の構造を示す図面
【図6】可動機構の一例を示す図面
【図7】塗布部基体の内径が小さくなった部分の断面の一例を示す模式図
【図8】他の態様の塗布部の構造を示す図面
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のマスカラ塗布具のいくつかの実施形態示す図面と共に、本発明を更に詳しく説明する。なお、本発明のマスカラ塗布具は、これら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0011】
図1は、本発明マスカラ塗布具の部分断面図、図2は管体の先端に設けられた塗布部が円筒状である状態を示す図、図3は、内部桿を移動させることにより、塗布部が大略ビヤ樽状になった状態を示す図、図4は図2における塗布部のA−A'端面図である。図中、1はマスカラ塗布具、2は塗布部、3はブラシ突起、4は内部桿、4aは桿体部、4bは桿頭部、5は拡径部、6は管体、7は保持部、8は可動機構、9は塗布部基体、9aは肉薄部、9bは肉厚部、9cは狭隘部を示す。
【0012】
本発明のマスカラ塗布具1は、図1ないし3に示すように、塗布部基体9に多数のブラシ突起3を立設した塗布部2が、管体6の先端に設けられている。この塗布部2は、図2の左側に示したように、そのほぼ中央部で1箇所、塗布部基体9の筒の内側において環状に肉厚(9b部)となっており、内部が縮径している。また、内部桿4は、図2の左側に示すように、桿体部4aと桿頭部4bから構成される。この内部桿4の桿体部4aは、管体6中に挿入されており、この桿体部4aの上端(マスカラ塗布具1の先端側の端)に延設された桿頭部4bは、その先端が他の部分より大きな径となって拡径部5を形成している。さらに、管体の下端部(マスカラ塗布具1の保持部側の端)が、保持部7に固定されており、内部桿4を取り付けた可動機構8が摺動可能に保持部7に取り付けられている。
【0013】
上記塗布部2を構成する塗布部基体9は、円筒形の筒状であり、好ましくはその先端が閉じられた構造となっている。塗布部基体9の材料は、適当な強度と弾力性のある弾性材料であれば何れの材料でも使用可能であるが、例えば、シリコンゴム、天然ゴム、合成ゴム、特殊ゴムなどのゴム類や、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エラストマ(ペルプレン(登録商標)等)などが好ましく、特に、耐油性、耐薬品性および耐久性に優れたエステル系熱可塑性エラストマのうち、その表面硬度が55〜70(ASTM(アメリカ材料試験協会規格)D2240)のものが好ましい。
【0014】
また、この塗布部基体9は10〜40mm程度の長さ、2〜8mm程度の外径であることが好ましく、その外面には、好ましくは10ないし4000本程度、特に好ましくは20ないし2000本程度の多数のブラシ突起3が設けられている。このブラシ突起3は、好ましくは、その長さが1〜5mm程度、太さが0.1〜1mm程度であり、個々のブラシ突起3の断面形状は、特に限定されず種々の断面形状をとり得るが、丸、三角、四角などが好ましい。
【0015】
ブラシ突起3の材料は、塗布部基体9の材料と同じであっても異なってもよく、可撓性や弾力性のあるなしにかかわらず使用可能であるが、塗布部基体9と同じ材料を用い、塗布部2として両者を一体に成形したものが、耐久性においても、コスト面においても優れており、特に好ましい。
【0016】
塗布部基体9外面におけるブラシ突起3の配置は、例えば、各ブラシ突起3の先端を塗布部基体9の外側方向に向けて、塗布部基体9の長手方向と平行に、好ましくは20〜60本程度、1つの列を形成して設け、この列を塗布部基体9の周方向に放射状に、例えば1列〜60列程度、好ましくは2列〜40列程度、同一のまたは異なる任意の間隔で設けた構成としてもよい。また、これらの列を塗布部基体9の長手方向から任意の角度をもって配置し、スパイラル状のブラシ突起3の列として配置してもよい。さらに、ブラシ突起3の列を形成せず、塗布部基体9外面にランダムに配置してもよいし、塗布部基体9の側面のみならず、閉じたその先端面に、ブラシ突起3の先を長手方向あるいは長手方向から任意の角度をもった方向に向けて設けてもよい。
【0017】
また、内部桿4の桿体部4aおよび桿頭部4bの材質は、かなり固い材料であれば使用可能であるが、例えば、ステンレス、アルミニウム等の金属や、ABS樹脂、PP樹脂、PET樹脂等のプラスチック材料で作成されていることが好ましい。また、桿体部4aと桿頭部4bは、両者を一体に成型して調製しても良く、また、棒状の桿体部4aに、後から桿頭部4bを接着する等の手段で形成しても良い。
【0018】
そして、前記内部桿4は、桿体部4aの部分がマスカラ塗布具1の軸を形成する管体6中に可動状態で挿入されており、通常は図2に示すように塗布部基体9の肉薄部9aに保持され、塗布部2は全体として円筒形状を保っているが、保持部7に設けた可動機構8により、内部桿4を下方に移動させると、図3に示すように内部桿4の桿頭部4bの拡径部5が塗布部2の肉厚部9bに当接するようになる結果、塗布部基体9の側面は外側に押し出され、全体として大略ビア樽状の形状に変わる。このような機構により、塗布部2の形状が変化し、先端を塗布部基体9の外側方向に向けて平行に並んでいた多数のブラシ突起3は互いの先端が開いて放射状となる。このように塗布部2の形状が変化することにより、いくつかの使用方法が可能となるのである。
【0019】
なお、上記説明では、塗布部基体9は、内側が肉厚のものとして説明したが、別の態様としては、図5の左側に示したように、肉薄部9a、狭隘部9c、肉薄部9aのように構成され、塗布部基体9自体の中央が細くなっておりながら、外部のブラシ突起3の先端で形成する塗布部2の形状が円筒状であるものが挙げられる(図5A)。この態様のマスカラ塗布具も、中央の細くなっている狭隘部9cに、内部桿4の移動で桿頭部4bの拡径部5が当接することで塗布部基体9の側面を押し広げ、結果としてブラシ突起3で形成する塗布部2の外形線が外に凸の曲線を呈して突出することになる(図5B)。
【0020】
次に、本発明のマスカラ塗布具の使用方法について説明する。
【0021】
本発明のマスカラ塗布具1には、まず、マスカラ容器からのマスカラ液の取り方において、塗布部2を通常の状態(円筒状)にして取る方法と、膨張させた状態にして取る方法の、2つの方法がある。すなわち、マスカラ容器(図示せず)には、一般にマスカラ塗布具に余分に付着したマスカラ液をそぎ落とす(除去する)ためのしごき部があるが、一般にしごき部の径は固定されているため、塗布部2を円筒状にして用いた場合には、しごき部によるマスカラ液の除去量が相対的に少なくなり、塗布部2に取れるマスカラ液が多くなる。これは特に、マスカラ液を睫に多く塗布したい場合に適する。これに対して、塗布部2を膨張させた状態(例えば、大略ビア樽状)とした場合には、しごき部によるマスカラ液の除去量が相対的に多くなり、塗布部2に取れるマスカラ液の量が少なくなる。これは特に、マスカラ液を塗布しながら睫を一本一本梳きたい場合に適する。塗布部2の膨張の度合いは、塗布部2がしごき部を通過する程度にコントロールしながら膨張させればよいが、例えば、しごき部にスリットを入れるなどして、膨張した塗布部2を通過しやすくしてもよい。
【0022】
また、マスカラ液を睫に塗布する場合でも、塗布部2を通常の状態(円筒状)にして塗布する方法と、膨張させた状態(例えば、ビア樽状)にして塗布する方法の、2つの方法がある。すなわち、塗布部2を円筒状で使用する場合は、ブラシ突起3が形成する外形線が直線になるため、広い範囲を塗布することができる。これは特に、睫の全体にマスカラ液を塗布したい場合に適する。これに対して、塗布部2を膨張させた状態で使用する場合は、ブラシ突起3が形成する外形線が外に凸の曲線になるため、特に目的の部分にのみ塗布する場合や、睫の一部分を梳きたい場合等に有利となる。そして、これらの使用方法を適宜組み合わせることにより、睫に対する種々の化粧方法が可能となる。
【0023】
このように、マスカラ液をマスカラ容器から取るときと、マスカラ液を睫に塗布するときに、目的に応じて本発明のマスカラ塗布具1の塗布部を変形させることで、1本のマスカラ塗布具を多様な態様で使用でき、使用性が飛躍的に向上するのである。
【0024】
なお、上記した態様では、塗布部基体9の内側に環状の肉厚部9bを設けることで内径を小さくしたが、本発明においてその仕様は任意であり、例えば、図7のAに示すように内径を一様に縮径したもの、図7のBに示すように内径を二方向に縮径したもの、図7のCに示すように内径を三方向に縮径したもの等、種々の態様が可能である。図7Bおよび図7Cの態様では、図示しないが、塗布具2がそれぞれ部分的に扁平形状および略三角柱形状に変形する。
【0025】
また、上記態様では、内部桿4の拡径部5は、桿頭部4bの先端に1つ設けられているが、拡径部5は複数設けてもよく、例えば図8に示すように、桿頭部4bの先端および中程に2つの拡径部5を設けてもよい。この場合、内部桿4を下方に移動させると塗布具2は、図8Bに示すようにひょうたん形状を呈し、塗布具2の中程にマスカラ液を多く含むことが可能となる。
【0026】
拡径部5の形状も、上記態様では、楕円球型(ラグビーボール型)であるが、これに限られるものでない。例えば、球状であっても良いし、一方の側にのみ突出した形状や、扁平球状(丸餅型)であっても良い。すなわち、一方の側にのみ突出した形状であれば、塗布部2の一方のブラシ突起3のみが突出するため、反対側の面で広く塗布したマスカラ液を、この面で細かく調整することが可能となる。また、扁平球状の場合も、ほぼ同様な使用が可能となる。
【0027】
さらに、上記態様では内部桿4の可動機構8は、図6に示されるように、保持部7に設けられたスライド機構であるが、内部桿4を上下させうる機構であればこれに限られず、例えば螺旋回転繰り出し装置や、ノック式繰り出し装置を利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のマスカラ塗布具は、その塗布部の形状が変化するため、直線状のマスカラブラシとしても、また曲線状のマスカラブラシとしても利用可能である。そしてマスカラ液を多く付けたり、少量付けたりすることも可能である。
【0029】
従って、本発明のマスカラ塗布具は、1本で幾通りもの使用を行うことができ、睫化粧の微細な調整・仕上げが可能となるので、化粧品の分野において有利に利用できるものである。
【符号の説明】
【0030】
1 … … マスカラ塗布具
2 … … 塗布部
3 … … ブラシ突起
4 … … 内部桿
4a … 桿体部
4b … 桿頭部
5 … … 拡径部
6 … … 管体
7 … … 保持部
8 … … 可動機構
9 … … 塗布部基体
9a … 肉薄部
9b … 肉厚部
9c … 狭隘部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
桿体部と、その上端に延設され、一部に他の部分と比べて径が大きい拡径部を少なくとも1つ有する桿頭部とを有する内部桿;
当該内部桿の前記桿体部を、可動状態で内部に保持する管体;
前記管体の先端に取り付けられ、弾性材料からなる筒状の塗布部基体の外側にブラシ突起が設けられるとともに、当該塗布部基体の筒の内径の少なくとも一部が、前記桿頭部の拡径部の径より小さくなるように構成された筒状の塗布部;および
前記管体の下端部を固定し、内部桿を可動機構を介して取り付けた保持部;
を含み、
前記内部桿の桿頭部は、筒状の塗布部内に位置し、前記内部桿を移動させることにより、前記桿頭部の拡径部が塗布部基体の内径が小さくなった部分と当接し、塗布部を外側に押し拡げることでその形状が変化する
ことを特徴とするマスカラ塗布具。
【請求項2】
前記拡径部の少なくとも1つが、前記桿頭部の先端に位置することを特徴とする請求項1記載のマスカラ塗布具。
【請求項3】
前記塗布部が、前記塗布部基体の筒の内側を部分的に肉厚に構成することで、塗布部基体の筒の内径を小さくすることを特徴とする請求項1または2記載のマスカラ塗布具。
【請求項4】
前記内部桿の桿頭部が、球状ないし楕円球状である請求項1ないし請求項3のいずれかの項に記載のマスカラ塗布具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−170569(P2012−170569A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34214(P2011−34214)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)