説明

マスカーおよびマスカーロール

【課題】外力により壁面等から剥がれにくい養生資材を提供する。
【解決手段】マスカー11は、非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第1構成部14と、非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第2構成部15と、合成樹脂製のフィルムシートである第3構成部16とにより構成され、第1構成部14の表面と第2構成部15の裏面とを向かい合わせ、それらの幅方向の両端部から50パーセントの長さの位置、すなわち幅方向の真ん中の長手方向と平行な直線位置に第3構成部16の長手方向に伸びる一端辺を合わせた状態で、第3構成部16を挟み込みながら第1構成部14および第2構成部15を押さえ付けることにより生成される。マスカー11においては、シート13がテープ12の端部からではなく内側の領域から外部に延伸するため、シート13にかかる外力によりテープ12が剥がれにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築現場の塗装の養生用に用いられるマスカーおよびマスカーロールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に建築現場の塗装においては、塗装したくない部分に塗料が跳ねたりたれたりして付着することを防ぐために、養生資材と呼ばれるものが使用されている。
【0003】
そのような養生資材の使用方法の一例としては、塗装面と非塗装面との境界部分に粘着テープを貼りつけた後、当該粘着テープに大型のシートを固着させて非塗装面を保護する方法がある(特許文献1参照)。
【0004】
あるいは、粘着テープとシートとを最初から組み合わせた養生資材であるマスカーと呼ばれる製品も、近年は盛んに用いられている。そのようなマスカーの一例は、特許文献2等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−192616号公報
【特許文献2】特開平7−31908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
養生資材に用いられる粘着テープの壁面等に貼着する側の面の粘着力は、作業後に当該粘着テープを剥がしたときにその痕跡が残らないことが望ましいという理由から、あまり強くできない。
【0007】
そのため、従来技術にかかる養生資材による場合、壁面等に粘着テープにより貼られている養生用のシートに対し、例えば塗装作業員の接触や、風の煽り等により何らかの外力が加えられた場合、その外力により壁面等から粘着テープが剥がれ易いという問題があった。
【0008】
本発明は、外力により壁面等から剥がれにくい養生資材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みて想到されたものであり、
非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープと、
前記テープの表面のうち、前記テープの長手方向と平行な2つの端辺のいずれでもない内側の領域上の前記テープの長手方向に平行な直線上から前記テープの表面側に延伸するシートと
を備えるマスカーを提供する(第1の実施態様)。
【0010】
また、上記の第1の実施態様において、
前記内側の領域は、前記テープの長手方向と平行な2つの端辺の各々から前記テープの長手方向に垂直な方向の25%の長さの領域を含まない領域である
構成を採用してもよい(第2の実施態様)。
【0011】
また、上記の第1または2の実施態様において、
前記テープの裏面が壁面に貼り付けられている状態で前記シートに外部から力が加えられた場合、前記シートが前記テープに接続している線上の一の点における前記力の前記壁面に対し垂直方向の成分により、前記シートが前記一の点において前記テープから離脱しない強度で前記シートと前記テープとが接続されている
構成を採用してもよい(第3の実施態様)。
【0012】
また、上記の第1乃至3のいずれかの実施態様において、
非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第1構成部の裏面のうち前記第1構成部の長手方向に平行な一の端辺から所定幅の領域と、非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第2構成部の裏面のうち前記第2構成部の長手方向に平行な一の端辺から所定幅の領域とを、シート状の第3構成部の長手方向に平行な一の端辺を挟み込んだ状態で互いに貼り合わせ、
前記第1構成部および前記第2構成部のうち互いに裏面が貼り合わさっていない部分により前記テープが構成され、
前記第1構成部および前記第2構成部のうち前記第3構成部を挟み込んだ状態で互いに裏面が貼り合わさっている部分と、前記第3構成部とにより前記シートが構成される
構成を採用してもよい(第4の実施態様)。
【0013】
また、上記の第4の実施態様において、
前記第2構成部の表面の少なくとも一部に剥離加工が施されている
構成を採用してもよい(第5の実施態様)。
【0014】
また、上記の第1乃至3のいずれかの実施態様において、
非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第1構成部の表面のうち前記第1構成部の長手方向に平行な直線を含む所定幅の領域と、非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第2構成部の裏面とを、シート状の第3構成部の長手方向に平行な一の端辺を挟み込んだ状態で互いに貼り合わせ、
前記第1構成部と、前記第2構成部のうち裏面が前記第1構成部の表面に粘着している部分とにより前記テープが構成され、
前記第2構成部のうち裏面が前記第3構成部の一方の面に粘着している部分と、前記第3構成部とにより前記シートが構成される
構成を採用してもよい(第6の実施態様)。
【0015】
また、上記の第6の実施態様において、
前記第2構成部の表面の少なくとも一部に剥離加工が施されている
構成を採用してもよい(第7の実施態様)。
【0016】
また、上記の第1乃至3のいずれかの実施態様において、
粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第1構成部と、
シート状の第2構成部と
を備え、
前記第2構成部は、長手方向に平行な一の端辺と平行で、当該端辺から前記第1構成部の幅と同じ長さだけ離れた直線を折り目として折り重ねた状態で、前記折り目から前記第1構成部の幅の長さより短い長さの幅の領域の少なくとも一部において、前記第2構成部のうち当該折り重ねにより互いに折り重なった部分どうしが接着され、
前記第1構成部の表面の全面は、前記第2構成部の前記一の端辺と前記折り目との間の部分の前記接着の行われていない側の面の全面に粘着し、
前記第1構成部と、前記第2構成部のうち前記一の端辺と前記折り目との間の部分と、前記接着により前記第2構成部のうち前記一の端辺と前記折り目との間の部分に接着している部分とにより前記テープが構成され、
前記第2構成部のうち前記第2の構成部の前記一の端辺に対向する端辺である他の端辺から前記接着により互いに接着されている部分の前記他の端辺側の外縁までの部分により前記シートが構成される
構成を採用してもよい(第8の実施態様)。
【0017】
また、上記の第8の実施態様において、
前記第2構成部のうち前記折り目から前記他の端辺側の前記第1の構成部の幅と同じ長さの幅の部分の前記接着において接着のされていない側の面の少なくとも一部に剥離加工が施されている
構成を採用してもよい(第9の実施態様)。
【0018】
また、上記の第8の実施態様において、
前記第2構成部のうち前記折り目から前記一の端辺までの部分の前記第1構成部の表面に粘着されていない側の面の少なくとも一部と、前記第2構成部のうち前記接着によって互いに接着されている部分の前記折り目に対向する端辺から前記他の端辺に向かい延伸する部分の前記接着によって接着されている面と同じ側の面の少なくとも一部とに剥離加工が施されている
構成を採用してもよい(第10の実施態様)。
【0019】
また、上記の第8の実施態様において、
非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第3構成部を備え、
前記第3構成部の裏面は、前記第2構成部のうち前記折り目から前記一の端辺までの部分の前記第1構成部の表面に粘着されていない側の面の少なくとも一部と、前記第2構成部のうち前記接着によって互いに接着されている部分の前記折り目に対向する端辺から前記他の端辺に向かい延伸する部分の前記接着によって接着されている面と同じ側の面の少なくとも一部とに粘着している
構成を採用してもよい(第11の実施態様)。
【0020】
また、上記の第1乃至3のいずれかの実施態様において、
粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第1構成部と、
シート状の第2構成部と、
非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第3構成部と
を備え、
前記第2構成部は、長手方向に平行な一の端辺と平行で前記一の端辺から前記第1構成部の幅の長さ以下の長さだけ離れた直線を第1の折り目として折り重ね、さらに前記第1の折り目と平行で前記第1の折り目から前記第1構成部の幅の長さ未満の長さだけ前記第1の折り目からみて前記一の端辺と反対の方向に離れた直線を第2の折り目として前記第1の折り目における折り重ねの方向と逆の方向に折り重ねられ、
前記第1構成部の表面の少なくとも一部は、前記第2構成部の前記第1の折り目が前記第1構成部の長手方向に平行な一の端辺と一致する状態で、前記第2構成部の前記一の端辺と前記第1の折り目との間の部分に粘着し、
前記第3構成部の裏面は、前記第2構成部のうち前記第2の折り目からみて前記一の端辺に対向する他の端辺の側に位置する部分の少なくとも一部と、前記第2構成部のうち前記一の端辺から前記第1の折り目までの部分の前記第1の折り目における折り重ねにより折り重なっていない部分と、前記第1構成部の表面のうち前記第2構成部に粘着していない部分とに粘着し、
前記第1構成部と、前記第2構成部のうち前記第2の折り目からみて前記一の端辺の側に位置する部分と、前記第3構成部のうち裏面が前記第2構成部のうち前記一の端辺から前記第1の折り目までの部分の前記第1の折り目における折り重ねにより折り重なっていない部分に粘着している部分と、前記第3構成部のうち裏面が前記第1構成部の表面に粘着している部分とにより前記テープが構成され、
前記第2構成部のうち前記第2の折り目からみて前記他の端辺の側に位置する部分と、前記第3の構成部のうち裏面が前記第2構成部のうち前記第2の折り目からみて前記他の端辺の側に位置する部分に粘着している部分とにより前記シートが構成される
構成を採用してもよい(第12の実施態様)。
【0021】
また、上記の第1乃至3のいずれかの実施態様において、
表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第1構成部と、
シート状の第2構成部と
を備え、
前記第2構成部の一部は、前記第1構成部の表面の一部と接着され、
前記第1構成部および前記第2構成部のうち前記第1構成部と接着されている部分により前記テープが構成され、
前記第2構成部のうち前記第1構成部と接着されていない部分により前記シートが構成される
構成を採用してもよい(第13の実施態様)。
【0022】
また、上記の第13の実施態様において、
前記テープのうち前記テープと前記シートが接続している線から前記テープを構成する前記第1構成部と前記第2構成部の接着が行われていない側の端辺までの長さを第1の長さとするとき、
前記第2構成部のうち前記テープを構成している部分と、前記第2構成部の前記シートを構成する部分のうち前記テープに接続している線から前記第1の長さの幅の部分との少なくとも一部に剥離加工が施されている
構成を採用してもよい(第14の実施態様)。
【0023】
また、上記の第1乃至3のいずれかの実施態様において、
粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第1構成部と、
非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第2構成部と、
シート状の第3構成部と
を備え、
前記第3構成部は、長手方向に平行な一の端辺と平行で、当該端辺から前記第1構成部の幅より短い所定の長さだけ離れた直線を折り目として折り重ねられ、
前記第1構成部と前記第2構成部とは、前記折り重ねられた状態の前記第3構成部を前記折り目から前記所定の長さ以下の幅の領域において挟み込んだ状態で互いに貼り合わされ、
前記第1構成部と、前記第2構成部のうち裏面が前記第1構成部の表面と互いに粘着している部分と、前記第3構成部のうち前記第1構成部に粘着されている部分とにより前記テープが構成され、
前記第2構成部のうち裏面が前記第3構成部に粘着している部分と、前記第3構成部のうち前記第2構成部の裏面に粘着されている部分および当該部分から前記一の端辺に対向する他の端辺に向かい延伸する部分とにより前記シートが構成される
構成を採用してもよい(第15の実施態様)。
【0024】
また、上記の第15の実施態様において、
前記第1構成部のうち表面が前記第2構成部の裏面と互いに粘着している部分と、前記第2構成部のうち裏面が前記第1構成部の表面と互いに粘着している部分との間には、シート状のスペーサが配置され、前記第1構成部の表面と前記第2構成部の裏面とは前記スペーサを介して互いに粘着している
構成を採用してもよい(第16の実施態様)。
【0025】
また、本発明は、
上記の第1乃至16のいずれか実施態様にかかるマスカーを、当該マスカーの長手方向に垂直な直線を軸として前記軸周りに巻き上げてロール状に形成したマスカーロール
を提供する(第17の実施態様)。
【0026】
また、上記の第17の実施態様において、
前記シートを、折り目が前記シートの長手方向に平行な直線となるように折り重ねた後に、前記巻き上げを行い形成した
構成を採用してもよい(第18の実施態様)。
【発明の効果】
【0027】
本発明の第1の実施態様にかかるマスカーによれば、シートがテープの長手方向と平行な2つの端辺の内側の領域における直線上からテープの表面側に延伸するので、シートが何らかの外力を受けた場合に当該外力をテープの長手方向と垂直な方向の両側の粘着力によって支えることとなり、従来技術のようにシートの片側の粘着力のみで支えるマスカーと比較し、テープが壁面等から剥がれにくい。
【0028】
また、本発明の第2の実施態様にかかるマスカーは、上述のテープの長手方向と平行な2つの端辺の内側の領域が、当該2つの端辺の各々から当該長手方向と垂直な方向の25パーセントの長さの領域を含まない領域なので、テープを壁面等から剥がれにくくするという目的を果たす上で望ましい。
【0029】
また、本発明の第3の実施態様にかかるマスカーによれば、外力によってシートがテープから離脱しない強度で当該シートと当該テープとが接続されているので、風等の外力によって当該マスカーのシートがテープから剥がれることがない。
【0030】
また、本発明の第4の実施態様にかかるマスカーにおいては、テープ状の第1構成部の所定の領域とテープ状の第2構成部の所定の領域とによってテープを構成し、第1構成部および第2構成部の上記の所定の領域を除いた部分でシート状の第3構成部を挟み込んでテープの表面側にシートを構成するので、当該マスカーの製造が容易である。
【0031】
また、本発明の第5の実施態様にかかるマスカーによれば、上述の第2構成部の表面の少なくとも一部に剥離加工が施されているので、マスカーがロール状に積層されて形成されたマスカーロールから当該マスカーを引き出す場合に、第1構成部の裏面と第2構成部の表面とが剥がれ易く養生作業が容易となる。
【0032】
また、本発明の第6の実施態様にかかるマスカーにおいては、テープ状の第1構成部とテープ状の第2構成部とがシート状の第3構成部を挟み込んだ状態で貼り合わされて当該マスカーが構成されているので、やはり当該マスカーの製造が容易である。さらに、当該マスカーは、第1構成部のサイズと第2構成部のサイズとを同じにすれば、テープの長手方向と垂直な方向において厚さに凹凸がなくマスカーロールにした際に扱い易い。
【0033】
また、本発明の第7の実施態様にかかるマスカーによれば、上述の第2構成部の表面の少なくとも一部に剥離加工が施されているので、やはりマスカーロールから当該マスカーを引き出す場合に、第1構成部の裏面と第2構成部の表面とが剥がれ易く養生作業が容易となる。
【0034】
また、本発明の第8の実施態様にかかるマスカーは、テープ状の第1構成部と1度折り重ねた状態のシート状の第2構成部とを貼り合わせて構成されているので、やはりテープの長手方向と垂直な方向において厚さに凹凸がなくマスカーロールにした際に扱い易い。
【0035】
また、本発明の第9もしくは第10の実施態様にかかるマスカーによれば、上述の第2構成部の所定の領域の少なくとも一部に剥離加工が施されているので、やはりマスカーロールから当該マスカーを引き出す場合に、第1構成部の裏面と第2構成部の表面とが剥がれ易く養生作業が容易となる。
【0036】
また、本発明の第11または第12の実施態様にかかるマスカーによれば、第3構成部により高い強度のマスカーが容易に実現される。
【0037】
また、本発明の第13の実施態様にかかるマスカーは、テープ状の第1構成部の所定の領域にシート状の第2構成部の所定の領域を貼り合わせて当該マスカーが構成されているので、やはりテープの長手方向と垂直な方向において厚さに凹凸がなくマスカーロールにした際に扱い易い。
【0038】
また、本発明の第14の実施態様にかかるマスカーによれば、第2構成部の所定の領域の少なくとも一部に剥離加工が施されているので、やはりマスカーロールから当該マスカーを引き出す場合に、第1構成部の裏面と第2構成部の表面とが剥がれ易く養生作業が容易となる。
【0039】
また、本発明の第15の実施態様にかかるマスカーによれば、折り重ねられたシート状の第3構成部の折り目を挟み込むようにテープ状の第1構成部と第2構成部の粘着性を有する面が互いに貼り合わされているため、シートに対し外部から力が加わった場合、第1構成部と第2構成部の分離に抗う力が第3構成部から生じ、高い強度のマスカーが実現される。
【0040】
また、本発明の第16の実施態様にかかるマスカーによれば、折り重ねられたシート状の第3構成部の厚みにより生じ得る段差がスペーサにより解消もしくは緩和されるため、マスカーロールにした際に扱い易い。
【0041】
また、本発明の第17の実施態様にかかるマスカーロールは、上記の第1乃至16のいずれかの実施態様にかかるマスカーを巻き上げて形成されているので、上記のいずれかのマスカーを実際に使用する場合、もしくは製品として販売する場合に便利である。
【0042】
また、本発明の第18の実施態様にかかるマスカーロールにおいては、シートを折り目が当該シートの長手方向に平行な直線となるように折り重ねた状態で巻き上げて当該マスカーロールが形成されているので、いわゆる製品幅の長さを適切なものとすることができる。また、折り重ねたシートの厚さをテープの厚さと同じにすれば、例えばマスカーロールにおけるシート部分とテープ部分の厚さおよび硬さが近くなり、望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明の実施形態1にかかるマスカーの長手方向に垂直な方向の断面を表す断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態1にかかるマスカーロールの外観図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態1の一変形例にかかるマスカーの長手方向に垂直な方向の断面を表す断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態2にかかるマスカーの長手方向に垂直な方向の断面を表す断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態2の一変形例にかかるマスカーの長手方向に垂直な方向の断面を表す断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態3にかかるマスカーの長手方向に垂直な方向の断面を表す断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態4にかかるマスカーの長手方向に垂直な方向の断面を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(実施形態1)
以下、本発明の具体例である実施形態1を、図面を用いて説明する。
【0045】
図1は、実施形態1にかかるマスカー11の長手方向に垂直な断面を表す断面図である。マスカー11は、非粘着性の表面および粘着性の裏面を有するテープ12と、テープ12の所定位置から延伸するシート13とを備えている。
【0046】
マスカー11、すなわちテープ12およびシート13を構成する要素として、テープ状の第1構成部14と、テープ状の第2構成部15と、シート状の第3構成部16とがある。
【0047】
第1構成部14は、非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の部材である。第1構成部14の本体、すなわち基材は、例えば、容易に破れない程度の強度を有する布でできている。第1構成部14の表面は非粘着性であるが、第2構成部15の裏面と強く粘着する必要から剥離加工は施されていない。第1構成部14の裏面は、例えば、粘着剤が塗布されていることにより一般的な粘着テープと比べ弱い粘着性を有する。一般的な粘着テープと比べ弱い粘着性である理由は、塗装作業が終了した後にマスカー11を壁面等から剥がし易い必要があるとともに、剥がし跡が当該壁面に残ったり、当該壁面の表面を剥がし取ったりする危険性を少なくするためである。
【0048】
また、第1構成部14の長手方向の長さは12.5メートルであり、長手方向と垂直な方向、すなわち幅の長さは2.5センチメートルである。
【0049】
第2構成部15は、非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の部材である。第2構成部15の本体、すなわち基材は、例えば、容易に破れない程度の強度を有する布でできている。第2構成部15の表面は非粘着性であり、その全面に剥離加工が施されている。第2構成部15の裏面は、例えば、粘着剤が塗布されていることにより一般的な粘着テープと同等もしくはそれ以上の強い粘着性を有する。このように強い粘着性が必要な理由は、第2構成部15が、第1構成部14および第3構成部16と貼り合わせた後にそれらから容易に剥がれないようにするためである。
【0050】
また、第2構成部15の長手方向の長さは例えば12.5メートルであり、長手方向と垂直な方向、すなわち幅の長さは例えば2.5センチメートルである。
【0051】
第3構成部16は、例えば、合成樹脂製のフィルムシートである。第3構成部16の長手方向の長さは例えば12.5メートルであり、長手方向と垂直な方向、すなわち幅の長さは例えば1メートルである。
【0052】
マスカー11は、第1構成部14の表面と第2構成部15の裏面とを向かい合わせ、それらの幅方向の両端部から50パーセントの長さの位置、すなわち幅方向の真ん中の長手方向と平行な直線位置に第3構成部16の長手方向に伸びる一端辺を合わせた状態で、第3構成部16を挟み込みながら第1構成部14および第2構成部15を押さえ付けることにより生成される。
【0053】
この場合、第1構成部14と、第2構成部15のうち裏面が第1構成部14の表面に粘着している部分とにより、テープ12が構成される。そして、第2構成部15のうち裏面が第3構成部16の一方の面に粘着している部分と、第3構成部16とによりシート13が構成される。
【0054】
このような構成を有するマスカー11においては、テープ12の表面のうち、テープ12の長手方向と平行であり、かつテープ12の幅方向の両端辺から例えば50パーセントの長さの位置にある直線上から、テープ12の表面側にシート13が延伸する。
【0055】
通常のマスカーと比較して、実施形態1にかかるマスカー11は、以下のような特性を有する。すなわち、テープ12の裏面が壁面等に貼り付けられている状態でシート13に外部から力が加えられた場合に、シート13がテープ12に接続している線上の一の点に与える当該力の当該壁面に対して垂直な方向の成分は、当該貼り付けられているテープ12の長手方向と垂直な方向の(テープ12とシート13との接続部の)両側の剪断応力によって支えられるため、テープ12が壁面等から離脱しにくい。
【0056】
すなわち、通常のマスカーにおいては、シートがテープの幅方向の一方の端辺から延伸しているため、シートとテープとの接続部がなす直線からみてテープは片側にしか存在しない。従って、シートが外力を受けた場合に、当該直線の片側に位置するテープが持つ粘着力のみによってシートが壁面から剥がれないようにその外力に対抗することになる。
【0057】
一方、マスカー11においては、シート13がテープ12の幅方向の中央部から延伸しているため、シート13とテープ12との接続部がなす直線からみてテープ12は両側に存在することになる。従って、シート13が外力を受けた場合に、当該直線の両側に位置するテープ12が持つ粘着力によってシート13が壁面から剥がれないようにその外力に対抗することができる。
【0058】
なお、この場合、上述のシート13がテープ12に接続している線上の一の点における力の壁面に対して垂直方向の成分により、シート13が当該一の点においてテープ12から離脱しない強度で、シート13とテープ12とが接続されていることが必要である。なぜなら、外力によってテープ12が壁面から離脱しなくとも、当該外力によってシート13がテープ12から剥がれてしまっては元も子もないからである。
【0059】
マスカー11は、実際に養生作業を行う場合や製品として販売される場合等には、例えば、図2に示されるようなマスカーロール17の状態であると便利である。マスカーロール17は、上述したマスカー11を、マスカー11の長手方向に垂直な直線を軸として当該軸周りに巻き上げて形成される。
【0060】
このとき、図2(b)に示されるように、シート13を折り畳んだ状態でマスカー11を巻き上げれば、製品のテープ12の長手方向と垂直な方向の幅、いわゆる製品幅を適切な長さに調整することができる。さらに、マスカーロール17におけるテープ12の部分とシート13の部分との厚さおよび硬さの差を小さくする目的で、折り畳んだシート13の厚さがテープ12の厚さと同じになるように調整することもできる。
【0061】
なお、実施形態1においては、第3構成部16の厚さが十分に薄い限り、テープ12が幅方向においてほぼ同じ厚さを有することになるので、マスカーロール17を作成したときに凹凸ができにくく、製品として良好である。また、第2構成部15の表面が剥離加工されているので、第1構成部14の裏面と第2構成部15の表面とがくっついてマスカーロール17からマスカー11を引き出しにくい、といった問題が起きにくい。
【0062】
(実施形態1の変形例)
実施形態1は、本発明の技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。以下、そのような変形の例について説明する。
【0063】
(実施形態1の一変形例)
図3は、実施形態1の一変形例を示した図である。以下、この一変形例が上述した実施形態1と異なる点を中心に説明する。
【0064】
この一変形例においては、第1構成部14の表面は、第2構成部15の裏面と同様に粘着性を有している。また、第3構成部16は、長手方向に平行な一の端辺と平行で、かつ当該端辺から第1構成部14の幅(長手方向と垂直な方向の長さ)の半分の長さだけ離れた直線を折り目として折り曲げられている。以下、第3構成部16を折り目により区分した2つの領域のうち、折り目から端辺までの長さが短い方を領域161、長い方を領域162とする。
【0065】
領域161の折り目側でない側の端辺が第1構成部14の一方の端辺と一致し、領域161と領域162とを区分する折り目が第1構成部14の幅方向の中央線と一致する位置で、領域161の裏面が第1構成部14の表面に粘着されるように、第1構成部14の上に第3構成部16が配置される。
【0066】
また、第1構成部14の表面のうち、第3構成部16の領域161により覆われない部分を全て覆うように、スペーサ30が第1構成部14の表面上に配置される。スペーサ30は、例えば第3構成部16と同じ素材のフィルムシートであり、第3構成部16を2枚重ねた厚さ、すなわち第3構成部16の領域161と領域162とを重ねた厚さを備えている。
【0067】
このスペーサ30は、マスカー11を巻き上げて図2(a)に示したマスカーロール17を作成した場合、テープ12を巻き上げた部分とシート13を巻き上げた部分との直径差が生じる不都合を回避するために用いられている。従って、第3構成部16の厚さが十分に薄い場合には、スペーサ30は用いられなくともよい。
【0068】
上記のように第3構成部16と、必要に応じてスペーサ30が第1構成部14の表面上に配置された状態で、第2構成部15の裏面が第1構成部14の領域162の表面およびスペーサ30の表面に貼り合わされる。その結果、図3(a)に示すように、テープ12およびシート13を備えるマスカー11が形成される。
【0069】
なお、テープ12は、第1構成部14と、第2構成部15のうち裏面がスペーサ30の表面に粘着している部分(スペーサ30を用いる場合)もしくは裏面が第1構成部14と粘着している部分(スペーサ30を用いない場合)と、第3構成部の領域161と、スペーサ30(スペーサ30を用いる場合)とにより構成される。
【0070】
また、シート13は、第2構成部15のうち裏面が第3構成部16の領域162の表面に粘着している部分と、第3構成部16の領域162とにより構成される。
【0071】
上記のように作成されるマスカー11は、上述した実施形態1にかかるマスカー11と比較し、使用時にシート13に外部から加えられる力に対する強度を高め易い。なぜなら、まず第1構成部14の表面と第2構成部15の裏面の両方が粘着性を有しているため、第3構成部16を挟み込まない領域において強い固着性を確保することが容易であるためである。さらに、第3構成部16が第1構成部14と第2構成部15の各々と固着し、かつ第1構成部14と固着している第3構成部16の領域161が、シート13に外部から加えられる力の方向に対し鋭角をなす方向に延びているため、第3構成部16が折り目部分において第1構成部14と第2構成部15の分離に抗う力を生じるためである。
【0072】
(実施形態1の他の変形例)
以下に、上述した一変形例以外の変形例につき述べる。
【0073】
シート13は、テープ12の幅方向の50パーセントの長さの位置の直線上から延伸するものとしたが、テープ12が壁面から外力によって剥がれにくくなるようにするという目的を達成できる限り、シート13が延伸する位置はテープ12の幅方向の50パーセントの長さの位置である必要はない。すなわち、シート13は、テープ12の表面のうちテープ12の長手方向と平行な2つの端辺のいずれでもない内側の所定領域上におけるテープ12の長手方向と平行な直線上からテープの表面側に延伸すればよい。
【0074】
ただし、経験的に上述の所定領域は、テープ12の長手方向と平行な2つの端辺の各々からテープ12の長手方向に垂直な方向の25パーセントの長さの領域を含まない領域であると、本願発明の効果を十分に得られることが多い。
【0075】
また、第1構成部14および第2構成部15は布製であるとしたが、通常発生する外力によって破れるものでなければ紙や合成樹脂等の他の素材で製造されていてもよい。
【0076】
また、第3構成部16は、合成樹脂製のフィルムシートであるとしたが、通常発生する外力によって破れるものでなければ紙や布等の他の素材で製造されていてもよい。
【0077】
また、第1構成部14の裏面および第2構成部の表面に塗布される粘着剤は、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系その他種々のものが、それぞれの目的に応じて適宜採用されればよい。
【0078】
また、第1構成部14および第2構成部15の長手方向の長さは12.5メートルであり、長手方向と垂直な方向の長さは2.5センチメートルであるとしたが、本発明はこれらの数値によって限定されるものではない。
【0079】
また、第3構成部16の長手方向の長さは12.5メートルであり、長手方向と垂直な方向の長さは1メートルであるとしたが、本発明はこれらの数値によって限定されるものではない。
【0080】
また、図1(c)に示されるように、第1構成部14のサイズと第2構成部15のサイズとを変えて、第1構成部14の表面のうち幅方向の狭い領域に、第3構成部16の一の端辺を挟み込んだ状態で第2構成部15を貼り付けてもよい。この場合、第2構成部15の必要量を少なくできる、というメリットがある。ただし、この場合、テープ12の厚さ方向における段差を少なくするために、第2構成部15の厚さが十分に薄いことが望ましい。
【0081】
また、第2構成部15の表面の全面に剥離加工が施されているものとしたが、本発明はそれに限られない。すなわち、マスカーロール17からマスカー11を引き出す際に困難でない限り第2構成部15の表面の一部の領域にのみ剥離加工が施されていてもよいし、第2構成部15の表面に全く剥離加工が施されていなくてもよい。
【0082】
(実施形態2)
以下、本発明の具体例である実施形態2を、図面を用いて説明する。なお、実施形態1と同じ部分については、一部説明を省略する。
【0083】
図4は、実施形態2にかかるマスカー11の長手方向に垂直な断面を表す断面図である。マスカー11が、非粘着性の表面および粘着性の裏面を有するテープ12と、テープ12の所定位置から延伸するシート13とを備えていることは、実施形態1と同じである。
【0084】
マスカー11、すなわちテープ12およびシート13を構成する要素として、テープ状の第1構成部18と、シート状の第2構成部19とがある。
【0085】
第1構成部18は、粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の部材である。
【0086】
第2構成部19は、合成樹脂製のフィルムシートである。第2構成部19は、長手方向に平行な一の端辺と平行で、かつ当該端辺から第1構成部18の幅(長手方向と垂直な方向の長さ)と同じ長さだけ離れた直線を折り目として折り重ねた状態で、当該折り目から第1構成部18の幅の例えば50パーセントの長さの全体(図4(a)の領域S)において、第2構成部19のうち当該折り重ねにより互いに折り重なった部分どうしが熱処理により接着されている。
【0087】
なお、第2構成部19のうち上述の折り目から一の端辺と対向する他の端辺側の第1構成部18の幅と同じ長さの部分において、熱処理により接着されていない側の全面(図4(a)の領域T)に剥離加工が施されている。後述するように、この剥離加工によりマスカーロール17からマスカー11を引き出し易いという利点が生ずる。
【0088】
第1構成部18の表面の全面は、第2構成部19の一の端辺と折り目との間の部分の熱処理による接着が行われていない側の面の全面に貼り付けられる。そのようにして、実施形態2にかかるマスカー11が生成される。
【0089】
マスカー11において、第1構成部18と、第2構成部19のうちの一の端辺と折り目との間の部分と、熱処理よる接着により第2構成部19のうち一の端辺と折り目との間の部分に接着している部分とによりテープ12が構成される。そして、第2構成部19のうち第2構成部19の一の端辺に対向する端辺である他の端辺から熱処理による接着により互いに接着されている部分の他の端辺側の外縁までの部分によりシート13が構成される。
【0090】
このような構成を有するマスカー11においては、テープ12の表面のうち、テープ12の幅方向の両端辺から50パーセントの長さの位置の直線上からテープ12の表面側にシート13が延伸する。そのため、上述した実施形態2にかかるマスカー11は、実施形態1にかかるマスカー11と同様の理由で、通常のマスカーと比較してテープ12が壁面から離脱しにくい、という特性を有する。
【0091】
また、実施形態2においても実施形態1と同様に、テープ12が幅方向においてほぼ同じ厚さを有しているので、マスカーロール17を作成したときに凹凸ができにくく、製品として良好である。
【0092】
また、第2構成部19の表面の所定の領域が剥離加工されているので、マスカーロール17からマスカー11を引き出すときに第1構成部18の裏面と第2構成部19の表面とが剥がれにくいという問題が起きにくい。
【0093】
なお、上述の利点を維持できるならば、マスカーロール17において第2構成部19が第1構成部18と重なる部分の全面に剥離加工が施されている必要はない。すなわち、マスカーロール17において第2構成部19が第1構成部18と重なる部分の一部もしくは全部の領域において剥離加工が施されていなくてもよい。
【0094】
なお、第2構成部19は、長手方向に平行な一の端辺と平行で、当該端辺から第1構成部18の幅と同じ長さだけ離れた直線を折り目として折り重ねた状態で、当該折り目から第1構成部18の幅の長さの50パーセントの長さの全体、すなわち図4(a)の領域Sの全体において第2構成部19の折り重なった部分が熱処理により接着されているとしたが、領域Sの内側の一部分の領域だけで接着されていてもよい。
【0095】
また、第2構成部19のうち折り重ねて接着される部分、すなわち図4(a)の領域Sの幅方向の長さは第1構成部18の幅方向の長さの50パーセントであるものとしたが、本発明はこれに限定されず、領域Sの幅方向の長さが第1構成部18の幅方向の長さより短ければいずれの長さが採用されてもよい。ただし、経験上、シート13がテープ12の幅方向の両端辺の各々から25パーセントの長さの領域を除いた領域内の直線上から延伸するように第2構成部19の互いに折り重なった部分どうしの接着が行われると、本願発明の効果が十分に得られることが多い。
【0096】
また、第2構成部19の互いに折り重なった部分どうしの接着は、熱処理によるものに限られず、接着剤や両面テープ等により当該接着が行われてもよい。
【0097】
なお、第2構成部19に対する剥離加工の方法としては、例えばシリコーン樹脂等の剥離剤を塗布する方法が採用されてもよいし、裏面に強い粘着性を有し表面に剥離加工の施されたテープ状の素材を第2構成部19の表面に貼り付ける方法が採用されてもよい。
【0098】
(実施形態2の一変形例)
上述した実施形態2においては、第2構成部19のうちシート13を構成する部分が、第2構成部19のうち領域Sにおいて第2構成部19のうち一の端辺と折り目との間の部分に接着されている部分の延伸方向と同じ方向に延伸する。すなわち、図4における領域Tにおいて、第2構成部19に折り目はない。
【0099】
これを変形し、第2構成部19のうち互いに接着されている部分と接着されていない部分の境界線を折り目とし、第2構成部19を長手方向と並行な方向から見た場合にZ字型となるように折り曲げ、第2構成部19のうちシート13を構成する部分が、第2構成部19のうち領域Sにおいて第2構成部19のうち一の端辺と折り目との間の部分に接着されている部分の延伸方向と逆方向に延伸するようにしてもよい。
【0100】
図5(a)は、そのような変形例を示した図である。この変形例においては、図4に示した領域Tに代えて、図5(a)に示される領域Uに剥離加工が施されていると、マスカーロール17からマスカー11を引き出し易く、望ましい。
【0101】
また、領域Uに、非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の部材である第3構成部31を貼り付ける構成を採用してもよい。図5(b)は、そのような変形例を示した図である。
【0102】
さらに、第3構成部31の表面に剥離加工が施されていると、マスカーロール17からマスカー11を引き出し易く、望ましい。
【0103】
図5(b)に示されるマスカー11によれば、シート13に外部から力が加えられた場合、第3構成部31が、第2構成部19の互いに接着されている部分の分離、もしくは第2構成部19の第1構成部18からの剥離に抗う力を生じるため、マスカー11の強度を容易に高めることができる。
【0104】
さらに、第3構成部31を第1構成部18と第2構成部19で挟み込む構成を採用する場合、図5(c)に示されるように、第2構成部19は必ずしも第1構成部18の表面の全面を覆う必要はない。すなわち、第1構成部18の表面のうち、図5(c)の領域Vの一部もしくは全部は第2構成部19を挟むことなく第3構成部31と互いに直接粘着し合ってもよい。
【0105】
また、第3構成部31を第1構成部18と第2構成部19で挟み込む構成を採用する場合、第2構成部19のうち折り重ねにより互いに折り重なった部分どうしの熱処理等による接着、すなわち図5(a)における領域Sにおける接着が行われなくてもよい。第3構成部31により、領域Sにおける折り重なった第2構成部19が分離することがないためである。
【0106】
(実施形態3)
以下、本発明の具体例である実施形態3を、図面を用いて説明する。なお、実施形態1または2と同じ部分については、一部説明を省略する。
【0107】
図6は、実施形態3にかかるマスカー11の長手方向に垂直な断面を表す断面図である。マスカー11が、非粘着性の表面および粘着性の裏面を有するテープ12と、テープ12の所定位置から延伸するシート13とを備えていることは、実施形態1または2と同じである。
【0108】
マスカー11、すなわちテープ12およびシート13を構成する要素として、テープ状の第1構成部20と、テープ状の第2構成部21と、シート状の第3構成部22とがある。
【0109】
第1構成部20および第2構成部21は、非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の部材である。
【0110】
第3構成部22は、合成樹脂製のフィルムシートである。
【0111】
実施形態3にかかるマスカー11は、第1構成部20の裏面のうち第1構成部20の長手方向に平行な一の端辺から所定幅の領域と、第2構成部21の裏面のうち第2構成部21の長手方向に平行な一の端辺から所定幅の領域とを、第3構成部22の長手方向に平行な一の端辺から連続する領域を挟み込んだ状態で貼り合わせて生成される。
【0112】
この場合、第1構成部20および第2構成部21のうち互いに裏面が貼り合わさっていない部分によりテープ12が構成される。さらに、第1構成部20および第2構成部21のうち第3構成部22を挟み込んだ状態で互いに裏面が貼り合わさっている部分と、第3構成部22とによりシート13が構成される。
【0113】
上述の所定幅の領域とは、長手方向と垂直な方向の(横幅の一の端辺から)50パーセントの長さの領域である。ただし、この数値によって本発明が限定されるものではない点は実施形態1および2と同様である。また、図6(c)に示されるように、第1構成部20の所定幅の領域と、第2構成部21の所定幅の領域とが異なる大きさで貼り合わさっていてもよい。
【0114】
このような構成を有するマスカー11においては、テープ12の表面のうち、テープ12の長手方向と平行であり、かつテープ12の長手方向と垂直な方向の両端辺から例えば50パーセントの長さの位置の直線上からテープ12の表面側にシート13が延伸する。
【0115】
実施形態3にかかるマスカー11も、実施形態1または2にかかるマスカー11と同様に、シート13が外力を受けた場合に、通常のマスカーと比較して、テープ12が壁面等から剥がれにくいという利点を有する。
【0116】
なお、第2構成部21の表面に第1構成部20の裏面を巻き回して形成したマスカーロール17を養生作業等に使用する際に、第2構成部21の表面の全面に剥離加工が施されていれば、マスカー11を引き出すのに便利である。ただし、第2構成部21の表面の一部のみに剥離加工が施されていてもよいし、また特に問題がなければ剥離加工が施されていなくてもよい。
【0117】
(実施形態4)
以下、本発明の具体例である実施形態4を、図面を用いて説明する。なお、実施形態1乃至3と同じ部分については、一部説明を省略する。
【0118】
図7は、実施形態4にかかるマスカー11の長手方向に垂直な断面を表す断面図である。マスカー11が、非粘着性の表面および粘着性の裏面を有するテープ12と、テープ12の所定位置から延伸するシート13とを備えていることは、実施形態1乃至3と同じである。
【0119】
マスカー11、すなわちテープ12およびシート13を構成する要素として、テープ状の第1構成部23と、シート状の第2構成部24とがある。
【0120】
第1構成部23は、非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の部材である。
【0121】
第2構成部24は、合成樹脂製のフィルムシートである。
【0122】
マスカー11は、第2構成部24の一の端辺付近の領域を第1構成部23の表面と接着することにより生成される。
【0123】
この場合、第1構成部23および第2構成部24のうち第1構成部23と接着されている部分によりテープが構成される。さらに、第2構成部24のうち第1構成部23と接着されていない部分によりシート13が構成される。
【0124】
このような構成を有するマスカー11においては、テープ12の表面のうち、テープ12の長手方向と平行であり、かつテープ12の長手方向と垂直な方向の両端辺から例えば50パーセントの長さの位置の直線上からテープ12の表面側にシート13が延伸する。
【0125】
実施形態4にかかるマスカー11も、実施形態1乃至3にかかるマスカー11と同様に、シートが外力を受けた場合に、テープ12が壁面等から剥がれにくいという利点を有する。
【0126】
なお、マスカーロール17の使用の便宜を考慮して、第2構成部24の表面の少なくとも一部に剥離壁加工が施されていれば望ましいが、これは本発明を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明にかかるマスカーおよびマスカーロールは、建築現場の養生作業に用いられるだけではなく、例えば清掃の際の汚れ防止やバーベキューの際の油よけ等、様々なシチュエーションでの利用が期待される。
【符号の説明】
【0128】
11…マスカー、12…テープ、13…シート、14…第1構成部、15…第2構成部、16…第3構成部、17…マスカーロール、18…第1構成部、19…第2構成部、20…第1構成部、21…第2構成部、22…第3構成部、23…第1構成部、24…第2構成部、30…スペーサ、31…第3構成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープと、
前記テープの表面のうち、前記テープの長手方向と平行な2つの端辺のいずれでもない内側の領域上の前記テープの長手方向に平行な直線上から前記テープの表面側に延伸するシートと
を備えるマスカー。
【請求項2】
前記内側の領域は、前記テープの長手方向と平行な2つの端辺の各々から前記テープの長手方向に垂直な方向の25%の長さの領域を含まない領域である
請求項1に記載のマスカー。
【請求項3】
前記テープの裏面が壁面に貼り付けられている状態で前記シートに外部から力が加えられた場合、前記シートが前記テープに接続している線上の一の点における前記力の前記壁面に対し垂直方向の成分により、前記シートが前記一の点において前記テープから離脱しない強度で前記シートと前記テープとが接続されている
請求項1または2に記載のマスカー。
【請求項4】
非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第1構成部の裏面のうち前記第1構成部の長手方向に平行な一の端辺から所定幅の領域と、非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第2構成部の裏面のうち前記第2構成部の長手方向に平行な一の端辺から所定幅の領域とを、シート状の第3構成部の長手方向に平行な一の端辺を挟み込んだ状態で互いに貼り合わせ、
前記第1構成部および前記第2構成部のうち互いに裏面が貼り合わさっていない部分により前記テープが構成され、
前記第1構成部および前記第2構成部のうち前記第3構成部を挟み込んだ状態で互いに裏面が貼り合わさっている部分と、前記第3構成部とにより前記シートが構成される
請求項1乃至3のいずれかに記載のマスカー。
【請求項5】
前記第2構成部の表面の少なくとも一部に剥離加工が施されている
請求項4に記載のマスカー。
【請求項6】
非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第1構成部の表面のうち前記第1構成部の長手方向に平行な直線を含む所定幅の領域と、非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第2構成部の裏面とを、シート状の第3構成部の長手方向に平行な一の端辺を挟み込んだ状態で互いに貼り合わせ、
前記第1構成部と、前記第2構成部のうち裏面が前記第1構成部の表面に粘着している部分とにより前記テープが構成され、
前記第2構成部のうち裏面が前記第3構成部の一方の面に粘着している部分と、前記第3構成部とにより前記シートが構成される
請求項1乃至3のいずれかに記載のマスカー。
【請求項7】
前記第2構成部の表面の少なくとも一部に剥離加工が施されている
請求項6に記載のマスカー。
【請求項8】
粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第1構成部と、
シート状の第2構成部と
を備え、
前記第2構成部は、長手方向に平行な一の端辺と平行で、当該端辺から前記第1構成部の幅と同じ長さだけ離れた直線を折り目として折り重ねた状態で、前記折り目から前記第1構成部の幅の長さより短い長さの幅の領域の少なくとも一部において、前記第2構成部のうち当該折り重ねにより互いに折り重なった部分どうしが接着され、
前記第1構成部の表面の全面は、前記第2構成部の前記一の端辺と前記折り目との間の部分の前記接着の行われていない側の面の全面に粘着し、
前記第1構成部と、前記第2構成部のうち前記一の端辺と前記折り目との間の部分と、前記接着により前記第2構成部のうち前記一の端辺と前記折り目との間の部分に接着している部分とにより前記テープが構成され、
前記第2構成部のうち前記第2の構成部の前記一の端辺に対向する端辺である他の端辺から前記接着により互いに接着されている部分の前記他の端辺側の外縁までの部分により前記シートが構成される
請求項1乃至3のいずれかに記載のマスカー。
【請求項9】
前記第2構成部のうち前記折り目から前記他の端辺側の前記第1の構成部の幅と同じ長さの幅の部分の前記接着において接着のされていない側の面の少なくとも一部に剥離加工が施されている
請求項8に記載のマスカー。
【請求項10】
前記第2構成部のうち前記折り目から前記一の端辺までの部分の前記第1構成部の表面に粘着されていない側の面の少なくとも一部と、前記第2構成部のうち前記接着によって互いに接着されている部分の前記折り目に対向する端辺から前記他の端辺に向かい延伸する部分の前記接着によって接着されている面と同じ側の面の少なくとも一部とに剥離加工が施されている
請求項8に記載のマスカー。
【請求項11】
非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第3構成部を備え、
前記第3構成部の裏面は、前記第2構成部のうち前記折り目から前記一の端辺までの部分の前記第1構成部の表面に粘着されていない側の面の少なくとも一部と、前記第2構成部のうち前記接着によって互いに接着されている部分の前記折り目に対向する端辺から前記他の端辺に向かい延伸する部分の前記接着によって接着されている面と同じ側の面の少なくとも一部とに粘着している
請求項8に記載のマスカー。
【請求項12】
粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第1構成部と、
シート状の第2構成部と、
非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第3構成部と
を備え、
前記第2構成部は、長手方向に平行な一の端辺と平行で前記一の端辺から前記第1構成部の幅の長さ以下の長さだけ離れた直線を第1の折り目として折り重ね、さらに前記第1の折り目と平行で前記第1の折り目から前記第1構成部の幅の長さ未満の長さだけ前記第1の折り目からみて前記一の端辺と反対の方向に離れた直線を第2の折り目として前記第1の折り目における折り重ねの方向と逆の方向に折り重ねられ、
前記第1構成部の表面の少なくとも一部は、前記第2構成部の前記第1の折り目が前記第1構成部の長手方向に平行な一の端辺と一致する状態で、前記第2構成部の前記一の端辺と前記第1の折り目との間の部分に粘着し、
前記第3構成部の裏面は、前記第2構成部のうち前記第2の折り目からみて前記一の端辺に対向する他の端辺の側に位置する部分の少なくとも一部と、前記第2構成部のうち前記一の端辺から前記第1の折り目までの部分の前記第1の折り目における折り重ねにより折り重なっていない部分と、前記第1構成部の表面のうち前記第2構成部に粘着していない部分とに粘着し、
前記第1構成部と、前記第2構成部のうち前記第2の折り目からみて前記一の端辺の側に位置する部分と、前記第3構成部のうち裏面が前記第2構成部のうち前記一の端辺から前記第1の折り目までの部分の前記第1の折り目における折り重ねにより折り重なっていない部分に粘着している部分と、前記第3構成部のうち裏面が前記第1構成部の表面に粘着している部分とにより前記テープが構成され、
前記第2構成部のうち前記第2の折り目からみて前記他の端辺の側に位置する部分と、前記第3の構成部のうち裏面が前記第2構成部のうち前記第2の折り目からみて前記他の端辺の側に位置する部分に粘着している部分とにより前記シートが構成される
請求項1乃至3のいずれかに記載のマスカー。
【請求項13】
表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第1構成部と、
シート状の第2構成部と
を備え、
前記第2構成部の一部は、前記第1構成部の表面の一部と接着され、
前記第1構成部および前記第2構成部のうち前記第1構成部と接着されている部分により前記テープが構成され、
前記第2構成部のうち前記第1構成部と接着されていない部分により前記シートが構成される
請求項1乃至3のいずれかに記載のマスカー。
【請求項14】
前記テープのうち前記テープと前記シートが接続している線から前記テープを構成する前記第1構成部と前記第2構成部の接着が行われていない側の端辺までの長さを第1の長さとするとき、
前記第2構成部のうち前記テープを構成している部分と、前記第2構成部の前記シートを構成する部分のうち前記テープに接続している線から前記第1の長さの幅の部分との少なくとも一部に剥離加工が施されている
請求項13のマスカー。
【請求項15】
粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第1構成部と、
非粘着性の表面と粘着性の裏面とを有するテープ状の第2構成部と、
シート状の第3構成部と
を備え、
前記第3構成部は、長手方向に平行な一の端辺と平行で、当該端辺から前記第1構成部の幅より短い所定の長さだけ離れた直線を折り目として折り重ねられ、
前記第1構成部と前記第2構成部とは、前記折り重ねられた状態の前記第3構成部を前記折り目から前記所定の長さ以下の幅の領域において挟み込んだ状態で互いに貼り合わされ、
前記第1構成部と、前記第2構成部のうち裏面が前記第1構成部の表面と互いに粘着している部分と、前記第3構成部のうち前記第1構成部に粘着されている部分とにより前記テープが構成され、
前記第2構成部のうち裏面が前記第3構成部に粘着している部分と、前記第3構成部のうち前記第2構成部の裏面に粘着されている部分および当該部分から前記一の端辺に対向する他の端辺に向かい延伸する部分とにより前記シートが構成される
請求項1乃至3のいずれかに記載のマスカー。
【請求項16】
前記第1構成部のうち表面が前記第2構成部の裏面と互いに粘着している部分と、前記第2構成部のうち裏面が前記第1構成部の表面と互いに粘着している部分との間には、シート状のスペーサが配置され、前記第1構成部の表面と前記第2構成部の裏面とは前記スペーサを介して互いに粘着している
請求項15に記載のマスカー。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれかに記載のマスカーを、当該マスカーの長手方向に垂直な直線を軸として前記軸周りに巻き上げてロール状に形成したマスカーロール。
【請求項18】
前記シートを、折り目が前記シートの長手方向に平行な直線となるように折り重ねた後に、前記巻き上げを行い形成した
請求項17に記載のマスカーロール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−67805(P2011−67805A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223556(P2009−223556)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(509244983)
【出願人】(509244994)
【Fターム(参考)】