説明

マスキングシールの貼付け方法およびその貼付け装置、車両外装部材の製造方法

【課題】部材に対して簡易かつ正確にマスキングシールを貼付けることを可能にする。
【解決手段】マスキングシールMSには、ルーフスポイラ100の塗装境界ラインLに沿うように形成された見切り縁Fと異なる部位に位置決め縁Gが設けられる。貼付け装置10のシールセット部14には、マスキングシールMSの位置決め縁Gと整合するセット基準部42が設けられる。マスキングシールMSは、位置決め縁Gをセット基準部42に整合させることで、見切り縁F側がシールセット部14から延出した状態で該シールセット部14にセットされる。シールセット部14を貼付け位置として、マスキングシールMSの見切り縁Fがルーフスポイラ100における後端面106の塗装境界ラインLに揃うようにし、マスキングシールMSを見切り縁F側から後端面106に貼付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材を塗装するに先立って該部材にマスキングシールを貼付けるマスキングシールの貼付け方法と、マスキングシールの貼付け装置と、前記貼付け方法を実施して得られる車両外装部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、ボディBのルーフ部B1の後方に、車体外装部材であるルーフスポイラ100を装着した自動車の後部を示す斜視図である。前記ルーフスポイラ100は、該ルーフスポイラ100の主体部材であるスポイラ本体102の上面104がボディBのカラーと同色に塗装されると共に、後端面106がボディカラーとは異なる色に塗装された所謂ツートンカラー仕様のものがある。このようなツートンカラー仕様のルーフスポイラ100は、図8に示すように、後端面106を被覆可能な形状に形成されたマスキングシールMSを使用して塗装が行なわれる。すなわち塗装作業は、上面104の全体または該上面104の後端面106に隣接する部分および後端面106を所定のカラー塗料を塗装する第1塗装工程と、塗装された後端面106にマスキングシールMSを貼付けて該後端面106をマスキングしたもとで上面104に所定のカラー塗料を塗装する第2塗装工程とを行なう。このように塗装作業に際してマスキングシールを使用することは一般的に広く実施されており、このようなシールを貼付ける装置も特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2006−111376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記ルーフスポイラ100の後端面106は、車幅方向において中央側から外側に向かうにつれて前方へ湾曲すると共に下方へ捻れた複雑な三次元形状となっている。このため、マスキングシールMSを後端面106に貼付けるに際して、該後端面106と前記上面104との境界となる塗装境界ラインLに対してマスキングシールMSの見切り縁Fを正確に合わせることは、非常に難しい作業となっている。すなわち、マスキングシールMSに皺が生じないようにすると該マスキングシールMSの見切り縁Fを前記塗装境界ラインLに揃えることが難しくなり、またマスキングシールMSの見切り縁Fを塗装境界ラインLに揃えるようとすると該マスキングシールMSに皺が生じ易くなる。従って、貼付け作業に熟練した作業者であっても、貼付け作業に時間がかかると共に貼付けミスが発生し易く、マスキングシールMSの貼付け作業の効率が低下しているのが実情である。
【0005】
また、前記マスキングシールMSの貼付け作業の効率が低下すると塗装作業が遅延するから、ルーフスポイラ100の製造効率が低下する問題が発生する。しかも、前記マスキングシールMSが後端面106に正確に貼付けられていない状態で塗装を行なうと、塗装の前記塗装境界ラインLが正確かつ綺麗にならず、品質が低下すると共に不良発生率も増加する。
【0006】
従って本発明では、部材に対して簡易かつ正確にマスキングシールを貼付けることを可能にしたマスキングシールの貼付け方法およびその貼付け装置と、塗装品質を向上させた車両外装部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、部材を塗装するのに先立って該部材にマスキングシールを貼付ける方法であって、
前記マスキングシールにおいて前記部材の塗装境界ラインに沿うように形成された見切り縁以外の部位を位置決めして、該部材に対して位置関係が規定されたシールセット部に該マスキングシールをセットすることで、マスキングシールを塗装境界ラインに見切り縁が揃った状態で部材に相対させ、該マスキングシールを該見切り縁側から該部材に貼付けるようにしたことを要旨とする。
【0008】
従って、請求項1に係る発明によれば、マスキングシールにおいて部材の塗装境界ラインに沿うように形成された見切り縁以外の部位を位置決めして、該部材に対して位置関係が規定されたシールセット部に該マスキングシールをセットすることで、熟練を必要とせず簡易に見切り縁を塗装境界ラインに揃えた状態でマスキングシールを部材に相対させることができる。そしてマスキングシールは、見切り縁以外の部位でシールセット部に位置決めされて該見切り縁側をフリーとしているので、この見切り縁側を部材に貼付け易い。これにより、マスキングシールを部材に正確に位置決めした状態で、該マスキングシールの見切り縁側から部材に貼付けることができるから、部材に対するマスキングシールの貼付けミスが発生し難くなると共に、貼付け作業を簡易かつ迅速に行なうことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記マスキングシールは、前記シールセット部が前記部材から離間したセット位置で該シールセット部にセットし、前記シールセット部を該部材に対し近接した貼付け位置に移動して、前記見切り縁を前記塗装境界ラインに揃えて部材に相対させることを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、シールセット部が部材から離間したセット位置でマスキングシールを該シールセット部にセットするので、該マスキングシールを簡易かつ正確に該シールセット部にセットし得る。従って、マスキングシールが正確にセットされたシールセット部を部材に対し近接した貼付け位置に移動させることで、該マスキングシールを部材に対して正確に相対させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記マスキングシールは、前記見切り縁側が前記シールセット部から延出した状態で該シールセット部にセットされることを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、マスキングシールの見切り縁側がシールセット部から延出しているので、該マスキングシールを部材に貼付ける際に、見切り縁と塗装境界ラインとの整合状態を確認することができる。また、指先や適宜道具等を使用して、シールセット部から演出したマスキングシールの見切り縁側を部材へ簡単に貼付けることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記マスキングシールは、前記部材に接触しないように相対した状態で該部材に対して位置決めされることを要旨とする。
従って、請求項4に係る発明によれば、部材がシールセット部により押されないから該部材のマスキングシールが貼付けられる貼付け面に傷が付くことを防止し得る。また、マスキングシールを部材に貼付ける前に、該部材に対する該マスキングシールの位置決め状態を確認できるから、貼付けミスを防止できる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記マスキングシールは、部材における塗装境界ラインの三次元的な形状に合わせて見切り縁を変形した状態でシールセット部に保持されることを要旨とする。
従って、請求項5に係る発明によれば、シールセット部に保持されたマスキングシールの見切り縁が、部材における塗装境界ラインの三次元的な形状に合わせて変形しているので、貼付ける際に該マスキングシールを更に変形させる必要がなく、部材にマスキングシールを貼付ける際に該シールに皺や弛み等が発生することを防止し得る。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記マスキングシールは、前記シールセット部に対して保持手段により取外し可能に保持され、前記見切り縁側を前記部材に貼付けた後に該シールセット部から取外されることを要旨とする。
従って、請求項6に係る発明によれば、部材に対するマスキングシールの貼付け作業時に、シールセット部にセットしたマスキングシールが保持手段によりずれ動くことがなく保持されるから、マスキングシールの貼付けミスを防止し得る。
【0014】
同じく前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本願請求項7に記載の発明は、
部材をセットする部材セット部と、
前記部材セット部にセットした前記部材に対し接離するように移動し、該部材に近接する貼付け位置において該部材との位置関係が規定されたシールセット部と、
前記シールセット部に設けられ、前記マスキングシールにおいて前記部材の塗装境界ラインに沿うように形成された見切り縁以外の部位を位置決めするセット基準部とを備え、
前記シールセット部の前記貼付け位置で、前記セット基準部で位置決めされて該シールセット部にセットされた前記マスキングシールの前記見切り縁を、前記塗装境界ラインに揃った状態で前記部材に相対するよう構成したことを要旨とする。
【0015】
従って、請求項7に係る発明によれば、シールセット部が、貼付け位置において部材セット部にセットした部材との位置関係が規定されるよう構成されているので、マスキングシールにおいて部材の塗装境界ラインに沿うように形成された見切り縁以外の部位を、シールセット部に設けたセット基準部に位置決めして、マスキングシールをセットしたシールセット部を貼付け位置に移動すると、熟練を必要とせず簡易に見切り縁を塗装境界ラインに揃えた状態でマスキングシールを部材に相対させることができる。そして、マスキングシールを見切り縁以外の部位でシールセット部に位置決めするようになっているので、該マスキングシールの該見切り縁側をフリーとすることができ、この見切り縁側を部材に貼付け易くすることができる。これにより、マスキングシールを部材に正確に位置決めした状態で、該マスキングシールの見切り縁側から部材に貼付けることが可能であり、部材に対するマスキングシールの貼付けミスを発生し難くすることができると共に、貼付け作業を簡易かつ迅速に行なうことを可能とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、前記セット基準部は、前記マスキングシールの見切り縁が前記シールセット部から延出するように該マスキングシールを位置決めすることを要旨とする。
従って、請求項8に係る発明によれば、マスキングシールの見切り縁がシールセット部から延出しているので、該マスキングシールを部材に貼付ける際に、見切り縁と塗装境界ラインとの整合状態を確認することが可能となる。また、マスキングシールの見切り縁側を、指先や適宜道具等を使用して部材へ押して貼付けることを可能とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、前記シールセット部は、前記貼付け位置において、前記マスキングシールが前記部材に接触せずに相対するよう停止保持されることを要旨とする。
従って、請求項9に係る発明によれば、シールセット部が部材を押すことがないから、該部材のマスキングシールが貼付けられる貼付け面に傷が付くことを防止し得る。また、マスキングシールが部材に貼付けられる前に、該部材に対する該マスキングシールの位置決め状態を確認することを可能とし、貼付けミスを防止できる。
【0018】
請求項10に記載の発明は、前記シールセット部は、前記マスキングシールを、前記部材における塗装境界ラインの三次元的な形状に合わせて見切り縁を変形した状態に保持することを要旨とする。
従って、請求項10に係る発明によれば、マスキングシールの見切り縁を部材における塗装境界ラインの三次元的な形状に合わせて変形させた状態で、該マスキングシールをシールセット部に保持することができるから、部材に貼付ける際に該マスキングシールを更に変形させる必要がなく、該シールに皺や弛み等が発生することを防止し得る。
【0019】
請求項11に記載の発明は、前記シールセット部は、前記マスキングシールを取外し可能に保持する保持手段を備えることを要旨とする。
従って、請求項11に係る発明によれば、部材に対してマスキングシールを貼付ける前に、該マスキングシールを保持手段によりシールセット部に保持することができるから、貼付け作業時にマスキングシールがずれ動くことを阻止でき、マスキングシールの貼付けミスを防止し得る。
【0020】
請求項12に記載の発明は、前記請求項1〜6の何れか一項に記載のマスキングシールの貼付け方法により、前記マスキングシールを前記部材に貼付け、該部材の該マスキングシールの貼付け部位を除く外面に塗装を行なって車両外装部材を得ることを要旨とする。
従って、請求項12に係る発明によれば、マスキングシールを部材に正確かつ迅速に貼付けることができるから、該車両外装部材に塗装境界ラインが正確に形成されて車両外装部材の塗装品質を向上させることができると共に、該車両外装部材の製造時間が短縮されて製造コストを抑え得る。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るマスキングシールの貼付け方法によれば、部材に対してマスキングシールを簡易かつ正確に貼付けることができると共に、該部材に対するマスキングシールの貼付け作業を迅速に行なうことができる。
別の発明に係るマスキングシールの貼付け装置によれば、部材に対してマスキングシールを簡易かつ正確に貼付けることを可能とすると共に、該部材に対するマスキングシールの貼付け作業の迅速化を図り得る。
更に別の発明に係る車両外装部材の製造方法によれば、部材にマスキングシールが正確かつ迅速に貼付けられることで、車両外装部材の塗装品質を向上し得ると共に製造コストを抑え得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図2のI−I線断面図であって、実施例に係るマスキングシールの貼付け装置を使用してマスキングシールをルーフスポイラの後端面に貼付ける状態を示している。
【図2】実施例に係るマスキングシールの貼付け装置の平面図である。
【図3】(a)は、貼付け装置におけるシートセット部とマスキングシールとを示す斜視図であり、(b)は、(a)のIIIb−IIIb線断面図である。
【図4】(a)は、マスキングシールを裏側から見た斜視図であり、(b)は、剥離紙を剥離する状態を示す説明斜視図である。
【図5】実施例に係るマスキングシールの貼付け方法を示す説明図であって、貼付け装置の部材セット部にルーフスポイラをセットする一方、シールセット部にマスキングシールをセットすると共に第1剥離紙を剥がす状態を示している。
【図6】(a)は、マスキングシールの見切り縁側を後端面の塗装境界ライン側に貼付けた後に、シールセット部を貼付け位置から移動させる状態を示し、(b)は、マスキングシールから第2剥離紙を剥がす状態を示し、(c)は、マスキングシールを後端面に巻き込むように貼付ける状態を示している。
【図7】自動車の車体に装着したツートンカラー仕様のルーフスポイラを示す部分斜視図である。
【図8】ルーフスポイラの後端面にマスキングシールを貼付けることを示す説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係るマスキングシールの貼付け方法およびその貼付け装置、車両外装部材の製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお実施例では、車両外装部材として、図8に示したツートンカラー仕様の前記ルーフスポイラ100を例示する。
【実施例】
【0024】
ルーフスポイラ100は、図7および図8に示すように、ボディBのルーフ部B1後方に装着されるスポイラ本体102と、このスポイラ本体102の下側に装着されるカバー部材(図示せず)とを備えている。スポイラ本体102は、ボディBの車幅方向中央を基準として車幅方向で対称形状に形成されて、ルーフスポイラ100の上壁を構成する上面(外面)104と、該ルーフスポイラ100の後壁を構成する後端面106とを備えている。スポイラ本体102の上面104は、後端縁における車幅方向の両端がルーフ部B1側へ徐々に湾曲したラウンド形状となっている。また各後端面106は、図1および図8に示すように、上面104の後端縁に沿って車幅方向へ延在するよう形成されて、中央側から外側に向かうにつれて前方へ湾曲すると共に、該上面104の後端縁から下方に向かうにつれて該上面104の下方へ回り込むよう斜めに延出している。すなわち各後端面106は、中央側から外側に向かうにつれて前方へ湾曲すると共に下方へ捻れた複雑な三次元形状となっている。そして、上面104と後端面106との境界が塗装境界ラインLとされ、上面104はボディカラーと同色に塗装され、後端面106はボディカラーと異なる色(例えばブラック等)に塗装される。このようなルーフスポイラ100は、上面104の全面または該上面104の後端面106,106に隣接する部分と、該後端面106,106の全面とに所定のカラー塗料を塗装する第1塗装工程と、実施例の貼付け装置10および貼付け方法を実施してマスキングシールMSを後端面106,106に貼付けたもとで、上面104に所定のカラー塗料を塗装する第2塗装工程とにより、ツートンカラーに塗装して製造される。
【0025】
そこで先ず、実施例に係るマスキングシールの貼付け方法を実施可能とする貼付け装置10につき、図1および図2を引用して説明する。なお、特に指定がない場合は、マスキングシールMSをセットする作業者の作業位置から見て、作業者側から奥側の方向を装置の前後方向、左右方向を装置の左右方向、上下方向を装置の上下方向とし、作業者側を前側とする。貼付け装置10は、ルーフスポイラ100を所定の姿勢で位置決め保持する部材セット部12と、ルーフスポイラ100の各後端面106に対して貼付けられる各マスキングシールMSを位置決めセットする1対のシールセット部14,14とを備えている。
【0026】
部材セット部12は、ベース部16の前後方向の略中央において左右方向へ延在するよう立設されたメインフレーム20と、このメインフレーム20の上部に左右方向へ一列に配置された第1部材保持体22と、メインフレーム20から後方へ水平に延出したサブフレーム24に後端に左右方向へ一列に配置された第2部材保持体26とを備えている。第1部材保持体22は、ルーフスポイラ100における上面104と後端面106,106との境界部分の裏側に整合する形状に構成されて、該後端面106,106を裏側から支持するようになっている。第2部材保持体26は、ルーフスポイラ100における上面104の前端部を裏側から支持するようになっている。従って部材セット部12は、前記第1部材保持体22および第2部材保持体26により、ルーフスポイラ100を、後端面106,106を上方に位置させて前方に向けると共に上面104を後下がりとした姿勢で安定的に保持するようになっている。
【0027】
前記一対のシールセット部14は、部材セット部12の前側において左右に離間した状態でベース部16に配設され、左右方向で対称の形態に構成されている。従ってここでは、右側のシールセット部14について説明し、左側のシールセット部14については、右側のシールセット部14と同一部材、部位について同一の符号を付して説明は省略する。シールセット部14は、マスキングシールMSをセットするシール保持体30と、このシール保持体30を回転可能に支持する支持装置32と、シール保持体30にマスキングシールMSを保持させる保持手段34とを備えている。そしてシールセット部14は、前記部材セット部12と同様にベース部16に配設されていることで、部材セット部12にセットされたルーフスポイラ100に対して位置関係が規定される。すなわちシールセット部14は、支持装置32の作動により、前方へ略水平に延出してルーフスポイラ100から離間したセット位置(図1に2点鎖線表示)と、起立してルーフスポイラ100に近接した貼付け位置(図1に実線表示)の間に姿勢変位するよう構成され、部材セット部12にセットしたルーフスポイラ100の後端面106に対してシール保持体30の位置が規定される。
【0028】
シール保持体30は、図1および図3に示すように前記セット位置において、前記ルーフスポイラ100の後端面106の三次元形状を表裏反転した形状に形成された第1保持体36と、この第1保持体36の下側に組み付けられた第2保持体38とを備えている。第1保持体36には、左右方向に長くかつ右側が後方へ湾曲しながら上方へ徐々に傾斜して捻れた三次元形状をなす「逆J字形」のシールセット面40が形成されている。すなわちシールセット面40は、マスキングシールMSを、後端面106における塗装境界ラインLの三次元的な形状に合わせて見切り縁Fを変形した状態にセットし得る形状に形成されている。そして、第1保持体36におけるシールセット面40の後側には、該シールセット面40に対して垂直に突出すると共に左右方向へ延在するセット基準部42が設けられ、シールセット面40に対するマスキングシールMSの位置決めを図るようになっている。このセット基準部42には、シールセット面40から後方へ凹んだ凹部44が設けられており(実施例では3つ)、マスキングシールMSに設けた位置決め縁G(図4参照)の凸部G1が該凹部44に整合するようになっている。従ってマスキングシールMSは、その位置決め縁Gをセット基準部42に整合させることで、左右方向および前後方向の位置決めが適切になされた状態でシールセット面40にセットされるようになっている。
【0029】
なおシールセット面40は、図3(a)および図3(b)に示すように、左右方向の寸法がマスキングシールMSの長さ寸法と同じであり、シールセット面40の各部位毎の前後方向の幅寸法H1は、該マスキングシールMSにおける該シールセット面40と対応する部位の前後方向の幅寸法H2より所定量だけ小さく設定されている。従ってセット基準部42は、図1および図3(b)に示すように、マスキングシールMSの見切り縁F側がシールセット面40の外縁から所要の延出幅(H2−H1)で延出するよう該マスキングシールMSを位置決めする。なお、マスキングシールMSの延出した部分MS1の延出幅は、後述するように該延出した部分MS1を指先または道具等で押すことができる寸法に設定されており、例えば5〜10mmとされている。但し、マスキングシールMSの延出幅は、大きすぎるとマスキングシールMSが変形するおそれがあるため、少なくとも延出した部分MS1が変形しない範囲内で設定する。
【0030】
また第1保持体36には、シールセット面40の全域に、表裏に貫通する複数の通気孔46が、適宜間隔毎に形成されている。これら通気孔46は、前記保持手段としての空気吸引装置34を作動させた際の吸気孔となり、シールセット面40にセットしたマスキングシールMSを該シールセット面40に吸着して保持させるために機能する。
【0031】
第2保持体38は、第1保持体36側に陥凹部48が設けられており、これら第1保持体36と第2保持体38とを組み付けることで、シールセット部14内に空間50が画成されている。この空間50は、第1保持体36に設けた前記各通気孔46に臨んでおり、各通気孔46を介して空間50内へ外部空気が流入し得るようになっている。また第2保持体38には、陥凹部44の底部から第1保持体36と反対側へ開口する送出口52が形成されており、この送出口52には、前記空気吸引装置34に接続される通気パイプ54が接続されている。従って、空気吸引装置34を作動させると、各通気孔46を介してシールセット面40の外側に存在する外部空気が各通気孔46から空間50へ吸引され、シールセット面40にセットしたマスキングシールMSが該シールセット面40に吸着保持される。
【0032】
支持装置32は、前記部材セット部12の前側においてベース部16に対して左右方向へ水平に架設されて回転可能な回転支持軸56と、一端がこの回転支持軸56に回転不能に固定されると共に他端が前記シール保持体30の第2保持体38に固定される複数(実施例では3つ)の支持レバー58と、ベース部16に配設されて回転支持軸56に連係された駆動モータ60とを備えている。従って、駆動モータ60を正逆駆動することで回転支持軸56が正逆回転し、各支持レバー58が水平前方へ延出した姿勢と上方へ起立した姿勢とに揺動する。従ってシート保持体30は、部材セット部12にセットしたルーフスポイラ100の後端面106から離間した前記セット位置と、該後端面106に近接した貼付け位置とに移動する。
【0033】
前述のように構成された貼付け装置10は、部材セット部12にルーフスポイラ100を適切に位置決めして保持すると共に、セット位置に保持したシールセット部14のシールセット面40にマスキングシールMSを適切に位置決めして保持したもとで、該シールセット部14を貼付け位置へ移動させることで、該マスキングシールの見切り縁Fが該ルーフスポイラ100の塗装境界ラインLに整合した状態で該マスキングシールMSを後端面106に相対するよう構成されている。なお、シールセット部14の貼付け位置は、シール保持体30のシールセット面40に保持したマスキングシールMSが、部材セット部12に保持したルーフスポイラ100の後端面106に接触しないように相対した状態で該後端面106に位置決めされるように設定されている。これは、シール保持体30が後端面106に押付けられて該後端面106の塗装面に傷が付くのを防止するためである。そして、シールセット部14が貼付け位置へ移動した位置決めの状態では、マスキングシールMSと後端面106とが、微少な隙間(例えば0.5〜2.0mm)をおいて対向するようになっている。
【0034】
マスキングシールMSは、図3および図4に示すように、例えば塩化ビニル等を材質とするシート材であり、可撓性を有して湾曲変形、折曲変形および捻れ変形し易く、前記後端面106の全体を覆い得る形状の「略J字形」に形成されている。マスキングシールMSは、ルーフスポイラ90塗装境界ラインLに整合する形状に形成された見切り縁Fと、該見切り縁Fと異なる部位、すなわち該見切り縁Fと前後方向で離間する端縁に、シールセット部14の前記セット基準部42に整合する形状に形成された位置決め縁Gとを有する。位置決め縁Gには、セット基準部42の凹部44に整合する凸部G1が設けられている。なおマスキングシールMSは、見切り縁Fと位置決め縁Gとの前後方向の幅寸法H2が、後端面106の幅寸法H3より大きく設定されており、見切り縁Fを塗装境界ラインLに整合させて該後端面106に貼込んだ際に、該位置決め縁G側が後端面106から外方に延出するようになっており、この延出した部分は後端面106の裏側へ巻き込んで貼付けるようになっている(図6(c)参照)。また、マスキングシールMSの裏側には、接着剤が塗布された貼付面80を保護する剥離紙82が装着されている。この剥離紙82は、マスキングシールMSの前後略中央において左右方向に延在する切り込みが形成され、見切り縁Fに沿う第1剥離紙82Aと、位置決め縁Gに沿う第2剥離紙82Bとに分離している。
【0035】
次に、前述のように構成された貼付け装置10を使用した実施例に係るマスキングシールの貼付け方法につき、各図面を引用して説明する。実施例に係るマスキングシールの貼付け方法は、マスキングシールMSに形成された位置決め縁Gをシールセット部14のシール保持体30に設けたセット基準部42に位置決めして、マスキングシールMSをシールセット面40にセットすることで、マスキングシールMSを塗装境界ラインLに見切り縁Fを揃えた状態でルーフスポイラ100の後端面106に相対させ、該マスキングシールMSを見切り縁F側から該後端面106に貼付けるようになっている。なおマスキングシールMSは、前記見切り縁Fおよび位置決め縁Gが正確に形成されるように予め裁断加工しておく。
【0036】
先ず、図5に示すように、貼付け装置10における部材セット部12に、ルーフスポイラ100をセットする。この際に、ルーフスポイラ100における上面104と後端面106,106との境界部分の裏側を第1部材保持体22に整合させ、ルーフスポイラ100における上面104の前端部の裏側を第2部材保持体26に整合させることで、当該ルーフスポイラ100が部材セット部12に規定の姿勢で安定的に保持される。これにより、ルーフスポイラ100の各後端面106は、上方に位置して貼付け装置10の前方に向いている。
【0037】
一方、図3および図5に示すように、貼付け装置10における各シールセット部14のシール保持体30に、各マスキングシールMSをセットする。この際に、マスキングシールMSは、裏表ひっくり返して表面がシールセット面40に向いた姿勢として、セット基準部42に位置決め縁Gを位置決めしながら該シールセット面40にセットする。そして、位置決め縁Gがセット基準部42に整合してマスキングシールMSがシールセット面40に適切に位置決めしたら、前記空気吸引装置34を作動させて、該マスキングシールMSをシールセット面40に吸着した状態で保持させる。マスキングシールMSがシールセット面40に適切に保持された状態では、図2および図3(b)に示すように、該マスキングシールMSの見切り縁F側が、所要の延出幅で該シールセット面40の外縁から延出する。
【0038】
そして、シールセット部14のシール保持体30に対するマスキングシールMSのセットが完了したら、該マスキングシールMSの裏面に装着されている第1剥離紙82Aだけを?がして、該マスキングシールMSの貼付面80における見切り縁F側の略半分を露出させる(図5参照)。
【0039】
次いで、支持装置32の駆動モータ60を作動させて、シールセット部14のシール保持体30を、セット位置から貼付け位置に向け移動させて該貼付け位置に停止させる(図1参照)。これにより、シールセット部14に保持したマスキングシールMSは、該マスキングシールMSの貼付面80がルーフスポイラ100の後端面106に接触せずに微少な隙間をおいて対向すると共に、該マスキングシールMSの見切り縁Fが後端面106の塗装境界ラインLに沿って揃った状態となる。
【0040】
シールセット部14のシール保持体30が貼付け位置に停止したら、先ずマスキングシールMSにおけるシールセット面40から延出した(はみ出した)部分MS1を、指先または適宜の道具等により後端面106に押し付け、該マスキングシールMSの見切り縁Fに沿った部分を、後端面106の塗装境界ラインLに沿った部位に貼付ける。これによりマスキングシールMSは、該マスキングシールMSの見切り縁Fと後端面106の塗装境界ラインLとが適切に整合した状態で該後端面106に対して部分的に貼付けられる。
【0041】
後端面106に対するマスキングシールMSの部分貼付けが完了したら、図6(a)に示すように、前記空気吸引装置34の作動を停止してシールセット面40に対するマスキングシールMSの吸着を解除して、前記支持装置32を逆に駆動してシール保持体30を貼付け位置からセット位置に向けて移動させる。これによりマスキングシールMSは、シール保持体30のシールセット面40から離脱して後端面106に残る。
【0042】
次に、図6(b)に示すように、マスキングシールMSの位置決め縁G側を捲り、該マスキングシールMSの裏面に装着されていた第2剥離紙82Bを?がして、該マスキングシールMSの貼付面80における位置決め縁G側を露出させる。そして、図6(c)に示すように、マスキングシールMSの位置決め縁G側を、後端面106から該後端面106の裏側へ巻き込むように貼込む。これにより、後端面106はマスキングシールMSでその全面が被覆され、後端面106に対する当該マスキングシールMSの貼付け作業が完了する。
【0043】
実施例のルーフスポイラ100の塗装作業は、次のように行なわれる。先ず、上面104の全面または該上面104の各後端面106,106に隣接する部分と、各後端面106,106の全面とに、所定カラーの第1の塗料を塗装する。そして、第1の塗料が乾燥して硬化したら、前述した貼付け装置10による貼付け方法により、第1の塗料が塗装された各後端面106,106にマスキングシールMS,MSを貼付ける。各後端面106,106に対するマスキングシールMSの貼付けが完了したら、前記上面104に、ボディBと同じカラーの第2の塗料を塗装する。そして、第2の塗料が乾燥して硬化したら、各後端面106から各マスキングシールMSを剥がすことで、塗装境界ラインLで上面104と後端面106とが異なるカラーに塗り分けされたツートンカラー仕様のルーフスポイラ100が製造される。
【0044】
従って、実施例のマスキングシールの貼付け方法によれば、マスキングシールMSにおいて見切り縁Fとは異なる部位に形成した位置決め縁Gを、部材セット部12にセットしたルーフスポイラ100の後端面106と位置関係が規定されたシールセット部14に設けたセット基準部42に位置決めして、該マスキングシールMSをシール保持体30のシールセット面40にセットすることで、熟練を必要とせず簡易に見切り縁Fを塗装境界ラインLに揃えた状態でマスキングシールMSを後端面106に相対させることができる。特に、マスキングシールMSが、見切り縁Fと異なる部位に設けた位置決め縁Gでシールセット部14に位置決めされて見切り縁F側をフリーとしているので、この見切り縁F側を後端面106に貼付け易い。これにより、マスキングシールMSをルーフスポイラ100の後端面106に正確に位置決めした状態で、該マスキングシールMSを見切り縁F側から後端面106に貼付けることができるから、後端面106に対するマスキングシールMSの貼付けミスが発生し難くなると共に、貼付け作業を簡易かつ迅速に行なうことができる。
【0045】
そして、実施例のマスキングシールの貼付け方法によれば、シールセット部14のシール保持体30がルーフスポイラ100の後端面106から離間したセット位置でマスキングシールMSを該シール保持体30のシールセット面40にセットするので、該マスキングシールMSを簡易かつ正確に該シールセット面40にセットし得る。従って、シールセット部14のシール保持体30を貼付け位置に移動させた際には、マスキングシールMSの見切り縁Fが後端面106の塗装境界ラインLに揃い、マスキングシールMSを後端面106に対して正確に相対させることができる。
【0046】
また、実施例のマスキングシールの貼付け方法によれば、マスキングシールMSの見切り縁Fをシール保持体30のセット部14から延出させるので、該マスキングシールMSを後端面106に貼付ける際に、見切り縁Fと塗装境界ラインLとの整合状態を確認することができる。しかも、指先や適宜の道具等を使用して、マスキングシールMSの見切り縁F側を後端面106へ貼付けることができる。そして、シールセット部14の貼付け位置では、後端面106がシール保持体30により押されないから、該後端面106に傷が付くことを防止し得る。また、マスキングシールMSを後端面106に貼付ける前に、該後端面106に対する該マスキングシールMSの位置決め状態を確認できるから、貼付けミスを防止できる。更に、シール保持体30のシールセット面40に保持されたマスキングシールMSの見切り縁Fが、後端面106における塗装境界ラインLの三次元的な形状に合わせて変形しているので、貼付ける際に該マスキングシールMSを更に変形させる必要がなく、後端面106にマスキングシールMSを貼付ける際に該シールMSに皺や弛み等が発生することを防止し得る。また更に、空気吸引装置34により、マスキングシールMSをシールセット部14のシールセット面40に吸着させて保持するので、シールセット部14を後端面106に向けて移動させる際にシールセット面40にセットしたマスキングシールMSがずれ動いたり脱落することを防止し得ると共に、マスキングシールMSを後端面106に対して正確に位置決めすることができるので、マスキングシールMSの貼付けミスを防止し得る。
【0047】
一方、実施例のマスキングシールの貼付け装置10によれば、シールセット部14のシール保持体30が、貼付け位置において部材セット部12にセットしたルーフスポイラ100の後端面106との位置関係が規定されるように構成されているので、マスキングシールMSに形成された位置決め縁Gをシール保持体30に設けたセット基準部42に位置決めして、マスキングシールMSをセットしたシール保持体30を貼付け位置に移動すると、熟練を必要とせず簡易に見切り縁Fを塗装境界ラインLに揃えた状態でマスキングシールMSを後端面106に相対させることができる。そして、マスキングシールMSを位置決め縁Gでシールセット部14のシール保持体30に位置決めするようになっているので、該マスキングシールMSの該見切り縁F側をフリーとすることができ、この見切り縁F側を後端面106に貼付け易くすることができる。これにより、マスキングシールMSを、ルーフスポイラ100の後端面106に正確に位置決めした状態で該後端面106に貼付けることができるから、後端面106に対するマスキングシールMSの貼付けミスが発生し難くなると共に、貼付け作業を簡易かつ迅速に行なうことができる。
【0048】
そして、実施例のマスキングシールの貼付け装置10よれば、シールセット部14のシール保持体30がルーフスポイラ100の後端面106から離間したセット位置および該後端面106に近接した貼付け位置に移動するよう構成されていて、マスキングシールMSを該シール保持体30のセット位置においてシールセット面40にセットするので、該マスキングシールMSを簡易かつ正確に該シールセット面40にセットし得る。従って、シールセット部14のシール保持体30を貼付け位置に移動させた際には、マスキングシールMSの見切り縁Fを後端面106の塗装境界ラインLに揃えた状態でマスキングシールMSを後端面106に整合させることができる。
【0049】
また、実施例のマスキングシールの貼付け装置10によれば、マスキングシールMSの見切り縁Fをシールセット部14のシール保持体30から延出させるので、該マスキングシールMSを後端面106に貼付ける際に、見切り縁Fと塗装境界ラインLとの整合状態を確認することを可能とする。しかも、マスキングシールMSの見切り縁F側を、指先や適宜の道具等を使用して後端面106へ押して貼付けることも可能とする。また、貼付け位置においては、マスキングシールMSを後端面106に接触させないように構成されているから、シールセット部14のシール保持体30が後端面106を押すことがなく、該後端面106に傷が付くことを防止し得る。また更に、マスキングシールMSが後端面106に貼付けられる前に、該後端面106に対する該マスキングシールMSの位置決め状態を確認することを可能とし、貼付けミスを防止できる
【0050】
更に、実施例の貼付け装置10によれば、シールセット部14におけるシール保持体30のシールセット面40を、後端面106の三次元形状を表裏反転した形状としたので、該シールセット面40にセットされたマスキングシールMSの見切り縁Fを後端面106の塗装境界ラインLの三次元的な形状に合わせて変形させた状態でマスキングシールMSを保持することができるから、後端面106に貼付ける際にマスキングシールMSを更に変形させる必要がなく、該マスキングシールMSに皺や弛み等が発生することを防止し得る。また更に、空気吸引装置34により、マスキングシールMSをシールセット部14のシールセット面40に吸着させて保持するよう構成したので、シールセット部14を後端面106に向けて移動させる際にシールセット面40からマスキングシールMSがずれ動いたり脱落することを防止し得ると共に、マスキングシールMSを後端面106に対して正確に位置決めすることができ、マスキングシールMSの貼付けミスを防止し得る。
【0051】
一方、実施例のマスキングシールの貼付け装置10および貼付け方法を実施したルーフスポイラ100の製造方法によれば、上面104に塗装した第2の塗料と後端面106,106に塗装した第1の塗料との塗装境界ラインLが正確かつ綺麗に形成されるので、該ルーフスポイラ100の塗装品質を向上することができる。そして、マスキングシールMSをルーフスポイラ100の後端面106に正確かつ迅速に貼付けることができるから、該ルーフスポイラ100の製造時間が短縮されて製造コストを抑え得る。また、製造されたルーフスポイラ100は、塗装境界ラインLにおいては、第1の塗料の上に第2の塗料が塗装されているから、自動車のボディBに装着した状態において第2の塗料の端縁が下向きとなり、第1の塗料と第2の塗料との間に雨水や塵埃が入り込むことが防止され、塗装が変色したり剥離すること等を防止し得る。
【0052】
(変更例)
(1)実施例では、マスキングシールMSを貼付ける対象の部材として、車両外装部材であるルーフスポイラ100を例示したが、本願発明のマスキングシールの貼付け方法および貼付け装置10は、ルーフスポイラ以外の各種の車両外装部材や、車両外装部材以外の様々な部材に好適に実施可能である。
(2)マスキングシールMSに設けられる位置決め縁Gは、実施例の如く見切り縁Fと対向する外周端縁に限定されず、該見切り縁F以外の部位であればよい。例えば、位置決め縁Gは、マスキングシールMSにおける外端面106の裏側へ巻き込む部分に形成した貫通孔とし、シールセット部14のシール保持体30に突設したピン状のセット基準部が挿通係止される形態としても、シール保持体30のシールセット面40に対してマスキングシールMSを正確に位置決めしてセットすることができる。
(3)シールセット部14におけるシール保持体30をセット位置および貼付け位置に移動させる形態は、操作レバーを使用する手動形態であってもよい。
(4)保持手段34は、実施例の空気吸引装置に限定されず、例えばマスキングシールMSを吸着可能な吸盤等であってもよい。
(5)実施例の貼付け装置10は、マスキングシールMSをセットしたシールセット部14を貼付け位置に移動させた際に、該マスキングシールMSが後端面106に接触しないように構成されているが、シールセット部14のシールセット面40をゴム等の弾力変形が可能な材質とすることで、マスキングシールMSが後端面106に接触するように構成することも可能である。
(6)マスキングシールMSの形状やサイズにより、剥離紙82は1枚で構成したものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
12 部材セット部,14 シールセット部,34 空気吸引装置(保持手段)
42 セット基準部,100 ルーフスポイラ(部材),106 後端面(貼付け面)
F 見切り縁,L 塗装境界ライン,MS マスキングシール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材を塗装するのに先立って該部材にマスキングシールを貼付ける方法であって、
前記マスキングシールにおいて前記部材の塗装境界ラインに沿うように形成された見切り縁以外の部位を位置決めして、該部材に対して位置関係が規定されたシールセット部に該マスキングシールをセットすることで、マスキングシールを塗装境界ラインに見切り縁が揃った状態で部材に相対させ、該マスキングシールを該見切り縁側から該部材に貼付けるようにした
ことを特徴とするマスキングシールの貼付け方法。
【請求項2】
前記マスキングシールは、前記シールセット部が前記部材から離間したセット位置で該シールセット部にセットし、前記シールセット部を該部材に対し近接した貼付け位置に移動して、前記見切り縁を前記塗装境界ラインに揃えて部材に相対させる請求項1記載のマスキングシールの貼付け方法。
【請求項3】
前記マスキングシールは、前記見切り縁側が前記シールセット部から延出した状態で該シールセット部にセットされる請求項1または2記載のマスキングシールの貼付け方法。
【請求項4】
前記マスキングシールは、前記部材に接触しないように相対した状態で該部材に対して位置決めされる請求項1〜3の何れか一項に記載のマスキングシールの貼付け方法。
【請求項5】
前記マスキングシールは、部材における塗装境界ラインの三次元的な形状に合わせて見切り縁を変形した状態でシールセット部に保持される請求項1〜4の何れか一項に記載のマスキングシールの貼付け方法。
【請求項6】
前記マスキングシールは、前記シールセット部に対して保持手段により取外し可能に保持され、前記見切り縁側を前記部材に貼付けた後に該シールセット部から取外される請求項1〜5の何れか一項に記載のマスキングシールの貼付け方法。
【請求項7】
部材をセットする部材セット部と、
前記部材セット部にセットした前記部材に対し接離するように移動し、該部材に近接する貼付け位置において該部材との位置関係が規定されたシールセット部と、
前記シールセット部に設けられ、前記マスキングシールにおいて前記部材の塗装境界ラインに沿うように形成された見切り縁以外の部位を位置決めするセット基準部とを備え、
前記シールセット部の前記貼付け位置で、前記セット基準部で位置決めされて該シールセット部にセットされた前記マスキングシールの前記見切り縁を、前記塗装境界ラインに揃った状態で前記部材に相対するよう構成した
ことを特徴とするマスキングシールの貼付け装置。
【請求項8】
前記セット基準部は、前記マスキングシールの見切り縁が前記シールセット部から延出するように該マスキングシールを位置決めする請求項7記載のマスキングシールの貼付け装置。
【請求項9】
前記シールセット部は、前記貼付け位置において、前記マスキングシールが前記部材に接触せずに相対するよう停止保持される請求項7または8記載のマスキングシールの貼付け装置。
【請求項10】
前記シールセット部は、前記マスキングシールを、前記部材における塗装境界ラインの三次元的な形状に合わせて見切り縁を変形した状態に保持する請求項7〜9の何れか一項に記載のマスキングシールの貼付け装置。
【請求項11】
前記シールセット部は、前記マスキングシールを取外し可能に保持する保持手段を備える請求項7〜10の何れか一項に記載のマスキングシールの貼付け装置。
【請求項12】
前記請求項1〜6の何れか一項に記載のマスキングシールの貼付け方法により、前記マスキングシールを前記部材に貼付け、該部材の該マスキングシールの貼付け部位を除く外面に塗装を行なって車両外装部材を得る
ことを特徴とする車両外装部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−115817(P2012−115817A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270919(P2010−270919)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】