説明

マスキング材料およびそれを用いたマスキング方法

【課題】被処理物の非塗布領域が複雑な形状を有する場合であっても、非塗布領域塗布物が付着するのを防止し、塗布処理終了後には非塗布領域からマスキング材を容易に剥離することができる、マスキング材料の提供。
【解決手段】全分子末端基の50%未満が加水分解性珪素基である重合体(I)100重量部と、全分子末端基の50%以上が加水分解性珪素基である重合体(II)5〜200重量部とを含む湿気硬化型樹脂組成物から成るマスキング材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物に塗料や接着剤等の塗布物を塗布する際、非塗布領域に塗布物が付着するのを防止するマスキング材料およびそれを用いたマスキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料、接着剤、シーリング材などの塗布作業において、仕上げをきれいにするために、マスキング材料が使用されている。マスキング材料は、塗布作業時において塗液が非塗布領域へ付着しないように非塗布領域を保護する目的で使用されるものであり、塗布作業時時には被処理物から剥離することなく非塗布領域を保護し、塗布作業終了後には被処理物から容易に剥離されることが要求される。
【0003】
マスキング材料には一般的にマスキングテープが使用されている。しかし、複雑な構造の造作物など、凹凸部分に対して細部にわたるマスキングが必要な場合には、マスキングテープでは対処するのが困難であった。
【0004】
これに対し、マスキングテープに代わるマスキング方法が提案されている。例えば特許文献1には、自動車のフロントドアと後部ドアの間に位置するBピラーをマスキングするのに感圧接着剤付きの定型ストリップを使うことが提案されている。しかし、車のサイズによって定型品の場合サイズをいろいろ取りそろえる必要があり、金型のコストも含めて考えると非常に高いコストになる。また、最近は自動車のドアの構造も複雑になり単純な形の定型ストリップでは対応できないという問題もある。
【0005】
また、凹凸部に対するマスキングを容易にするために、多くの液状のマスキング塗料が市販されている。これらは塗布したのちマスキング塗料中の水分の揮発によって、内容物がゴム状に硬化するもので、はけ塗り作業で使用する商品であり、種々の形状の非塗布領域を簡易にマスキングできるという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平9−510138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の通り、マスキング塗料には、種々の形状の非塗布領域を簡易にマスキングできるという特徴がある一方、以下のような問題がある。すなわち、マスキングを施したい部位が微細かつ深さのある凹み部の場合、深部まで液状のマスキング塗料を塗布するのは困難である。また、液状で粘度が低いので塗布時に垂れるという問題もある。また、乾燥硬化型では肉痩せするという問題もある。また、薄い塗膜しか形成できないため、剥がす際にエッジで破断し剥離が非常に困難になるという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、マスキング塗料の上記の問題点に鑑み、被処理物の非塗布領域が複雑な形状を有する場合であっても非塗布領域に塗布物が付着するのを防止することが可能であり、塗布時の液垂れもなく、肉痩せもなく、塗布処理終了後には非塗布領域から容易に剥離することができるマスキング材料およびそれを用いたマスキング方法を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のマスキング材料は、全分子末端基の50%未満が加水分解性珪素基である重合体(I)100重量部と、全分子末端基の50%以上が加水分解性珪素基である重合体(II)5〜200重量部とを含む湿気硬化型樹脂組成物から成ることを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、上記重合体(II)の加水分解性珪素基がトリアルコキシル基であることが好ましい。
【0011】
また、本発明においては、B型回転粘度計による回転数が2rpmと10rpmでの粘度の比V2rpm/V10rpmで規定される上記湿気硬化型樹脂組成物のチキソ比が2.5以上であり、かつ10rpmでの粘度が100Pa・s以上であることが好ましい。
【0012】
また、本発明のマスキング方法は、被処理物に塗液を塗布するに際し、該被処理物の非塗布領域に剥離性樹脂膜を形成し、該非塗布領域に対する塗液の付着を防止するマスキング方法であって、全分子末端基の50%未満が加水分解性珪素基である重合体(I)100重量部と、全分子末端基の50%以上が加水分解性珪素基である重合体(II)5〜200重量部とを含む湿気硬化型樹脂組成物を用いて該剥離性樹脂膜を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマスキング材料は被塗布領域の大きさや形状に合わせて自由に形状を付与できるので、垂直面や天井面などの凹み部にも問題なく使用できる。また、本発明のマスキング材料は一種類の材料で色々な形状に対応できる。また、従来のマスキング材料と異なり、ガラスを含む様々な被処理部材に一時接着可能であり、かつ必要がなくなった時点で痕跡を残すことなく容易に剥がすことができる。また、従来のマスキング塗料が水分や溶剤が蒸発・揮散して乾燥するのに対し、本発明のマスキング材料は湿気との反応で硬化するため、肉痩せすることなく、非塗布領域を保護することができる。また、塗布時の液垂れがないので、非塗布領域のみを正確に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のマスキング方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のマスキング材料は、全分子末端基の50%未満が加水分解性珪素基である重合体(I)100重量部と、全分子末端基の50%以上が加水分解性珪素基である重合体(II)5〜200重量部とを含む湿気硬化型樹脂組成物から成る。
【0016】
本発明の対象とする被処理物は、固体材料であれば特に限定されず、例えば、金属、ガラス、プラスチック、セラミックス、コンクリート、木質材料、布等の各種の材料が含まれる。また、塗液とは、塗料、接着剤、シーリング剤等の流動性材料であって、被処理物の処理に使用される流動性材料であれば特に限定されない。
【0017】
(重合体)
本発明に用いる重合体(I)と(II)の主鎖には、ポリオキシアルキレン重合体又はビニル系重合体を用いる。ポリオキシアルキレン重合体には、−CHCHO−、−CHCH(CH)O−、−CHCH(C)O−、−CH(CH)CHO−、−CH(C)CHO−、−CHCHCHO−、及び−CHCHCHCHO−から選択された1種以上の繰り返し単位からなるものを用いることができる。好ましくは、−CHCH(CH)O−である。また、ビニル系重合体には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、及びこれら重合体のいずれか2種以上を成分として含む共重合体等を挙げることができる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリレートである。
【0018】
主鎖にポリオキシアルキレン重合体を用いた場合、重合体(I)の分子量は500〜30000、好ましくは1000〜20000である。また、重合体(II)の分子量は500〜30000、好ましくは5000〜20000である。ここで、重合体(I)及び(II)の分子量は、原料である水酸基末端ポリオキシアルキレン重合体の水酸基価換算価分子量に基づいて算出した値である。
【0019】
また、主鎖にビニル系重合体を用いた場合、重合体(I)の数平均分子量は500〜30000、好ましくは1500〜15000である。また、重合体(II)の数平均分子量は500〜30000、好ましくは2000〜15000である。
【0020】
また、重合体(I)の加水分解性ケイ素基は分子鎖末端に対する加水分解性ケイ素基の導入率が50%未満であり、25%以上50%未満が好ましい。また、重合体(II)の加水分解性ケイ素基は分子鎖末端に対する加水分解性ケイ素基の導入率が50%以上100%以下であり、60%以上100%以下が好ましい。
ここで、分子鎖末端に対する加水分解性ケイ素基の導入率は、末端基が水酸基である重合体の場合、加水分解性ケイ素基導入後の未反応の水酸基を水酸基価分析法を用いて算出することができる。また、末端基の種類に限定されない方法として、IR法やNMR法を用いて加水分解性ケイ素基導入後の末端基を定量することにより算出する方法を用いることもできる。
【0021】
また、重合体(I)及び(II)の加水分解性ケイ素基は、アルキルジアルコキシシリル基やトリアルコキシシリル基を用いることができる。アルキルジアルコキシシリル基は、アルキル基が炭素数1から6のアルキル基が好ましく、アルコキシ基が炭素数1から6のアルコキシ基、すなわち、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基又はn−ヘキシルオキシ基が好ましく、より好ましくはメチルジメトキシシリル基又はメチルジエトキシシリル基、さらに好ましくはメチルジメトキシシリル基である。また、トリアルコキシシリル基は、アルコキシ基が炭素数1から6のアルコキシ基、すなわち、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基が好ましく、より好ましくはトリメトキシシリル基である。重合体(I)及び(II)の加水分解性ケイ素基の組み合わせは特に限定されない。
【0022】
重合体(I)100重量部に対し、重合体(II)を5〜250重量部、好ましくは5〜200重量部使用する。5重量部より少ないとガラスに付着し易くなり、250重量部より多いと、ガラスに接着し易くなるからである。
【0023】
ポリオキシアルキレン重合体に加水分解性ケイ素基を導入する方法としては、2官能の開始剤の存在下、環状エーテルを開環重合させてポリオキシアルキレンジオールを製造し、このジオールの水酸基に加水分解性ケイ素基を導入する方法等の公知の方法を用いることができる。また、ビニル系重合体に加水分解性ケイ素基を導入する方法としては、ビニル系モノマーと、加水分解性ケイ素基含有モノマーとを共重合する方法を用いることができる。加水分解性ケイ素基の導入率を変化させる方法としては、ポリオキシアルキレン重合体の場合、ジオールの水酸基に対する加水分解性ケイ素基のモル数を変化させることに行うことができる。また、ビニル系重合体の場合、共重合させる加水分解性ケイ素基含有モノマーの配合比を変化させることにより加水分解性ケイ素基の導入率を変化させることができる。
【0024】
(硬化触媒)
本発明の樹脂組成物には、硬化反応を促進させるために硬化触媒を用いる。具体例としては、アルキルチタン酸塩、有機ケイ素チタン酸塩、ビスマストリス−2−エチルヘキサノエート等の金属塩、リン酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸等の酸性化合物、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン等の脂肪族モノアミン、エチレンジアミン、ヘキサンジアミン等の脂肪族ジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミン類、ピペリジン、ピペラジン等の複素環式アミン類、メタフェニレンジアミン等の芳香族アミン類、エタノールアミン類、トリエチルアミン、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる各種変性アミン等のアミン化合物を挙げることができる。また、ジオクチル酸錫、ジナフテン酸錫、ジステアリン酸錫等の2価の錫と上記アミン類の混合物を挙げることもできる。
【0025】
また、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート及び以下のカルボン酸型有機錫化合物並びにこれらのカルボン酸型有機錫化合物と上記のアミン類との混合物を挙げることもできる。
(n−CSn(OCOCH=CHCOOCH
(n−CSn(OCOCH=CHCOO−(n−C))
(n−C17Sn(OCOCH=CHCOOCH
(n−C17Sn(OCOCH=CHCOO−(n−C))
(n−C17Sn(OCOCH=CHCOO−(iso−C17))
【0026】
また、以下の含硫黄型有機錫化合物を挙げることもできる。
(n−CSn(SCHCOO)
(n−C17Sn(SCHCOO)
(n−C17Sn(SCHCHCOO)
(n−C17Sn(SCHCOOCHCHOCOCHS)
(n−CSn(SCHCOO−(iso−C17))
(n−C17Sn(SCHCOO−(iso−C17))
(n−C17Sn(SCHCOO−(n−C17))
(n−CSnS
【0027】
また、以下の有機錫オキシドを挙げることもできる。
(n−CSnO
(n−C17SnO
【0028】
また、上記の有機錫オキシドとエチルシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル等のエステル化合物との反応生成物を挙げることもできる。
【0029】
また、以下のキレート錫化合物およびこれらのキレート錫化合物とアルコキシシランとの反応生成物(但し、acacはアセチルアセトナト配位子を表す。)を挙げることもできる。
(n−CSn(acac)
(n−C17Sn(acac)
(n−C(C17O)Sn(acac)
【0030】
また、以下の−SnOSn−結合含有有機錫化合物を挙げることもできる。
(n−C(CHCOO)SnOSn(OCOCH)(n−C
(n−C(CHO)SnOSn(OCH)(n−C
【0031】
硬化触媒は、重合体(I)及び(II)の合計量100重量部に対し、0.01〜10重量部使用する。0.01重量部より少ないと効果が十分でなく、10重量部より多いとい硬化物に耐久性が低下するので好ましくない。
【0032】
本発明に用いる湿気硬化型樹脂組成物には、必要に応じて、充填剤、脱水剤、可塑剤等の添加剤を添加することができる。
【0033】
(充填剤)
充填剤としては、公知の充填剤を使用することができる。具体例としては、表面を脂肪酸または樹脂酸系有機物で表面処理した炭酸カルシウム、さらにこれを微粉末化した平均粒径1μm以下の膠質炭酸カルシウム、沈降法により製造した平均粒径1〜3μmの軽質炭酸カルシウム、平均粒径1〜20μmの重質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、フュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、およびカーボンブラック、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン、木粉、パルプ、木綿チップ、マイカ、くるみ穀粉、もみ穀粉、グラファイト、アルミニウム微粉末、フリント粉末等の粉体状充填剤、ガラス繊維、ガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバー等の繊維状充填剤等を挙げることができる。これらの充填剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0034】
充填剤の使用量は重合体(I)及び(II)の合計量に対して1〜1000重量%であり、好ましくは10〜300重量%である。
【0035】
(可塑剤)
本発明の樹脂組成物には、硬度調整のために可塑剤を使用することもできる。可塑剤としては公知の可塑剤を使用することができる。具体例としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸アルキルエステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸アルキルエステル類;ペンタエリスリトールエステル等;リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤;ポリプロピレングリコール;ポリエチレングリコール;塩素化パラフィン;等を挙げることができる。これらの可塑剤を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0036】
(脱水剤)
本発明の樹脂組成物には、硬化物の物性や硬化性及び貯蔵安定性を調節する目的で加水分解性ケイ素化合物を任意に添加できる。具体例としては、テトラメチルシリケート、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシランなどやこれらのメトキシ基がエトキシ基に置換された化合物などを挙げることができるが、これらに限定されない。添加量は重合体(I)及び重合体(II)の合計量100重量部に対し、0.5〜5重量部である。0.5重量よりも少ないと貯蔵安定性が悪くなる。また5重量部よりも多いとガラスに接着し易くなるからである。
【0037】
その他の添加剤として、チキソ性付与剤、フェノール樹脂やエポキシ樹脂、顔料、各種の安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、オリゴエステルアクリレートのような表面改質を目的とした光硬化性化合物、粘度調整のための溶剤等を添加することもできる。しかし、湿気硬化性樹脂組成物に一般的に使用される各種のシランカップリング剤といった粘着付与剤は添加しない。粘着付与剤を用いると、被着体に対し強力に接着するようになるからである。
【0038】
また、粘度を調製する目的で溶剤を使用することもできる。
【0039】
また、本発明の樹脂組成物は、環境条件下で硬化可能であり、加熱することにより又は水分を添加することにより硬化を促進させることができる。
【0040】
また、本発明の樹脂組成物は、B型回転粘度計による回転数が2rpmと10rpmでの粘度比で規定される樹脂組成物のチキソ比が2.5以上であり、かつ10rpmでの粘度が100Pa・s以上であることが好ましい。好ましくは、チキソ比は2.5〜4.0である。ここで、チキソ比は、2rpm、10rpmでの粘度をそれぞれV2rpm、V10rpmとした場合、V2rpm/V10rpmで表すことができる。チキソ比が2.5以上で、かつ10rpmでの粘度が100Pa・s以上であると、非塗布領域に剥離性樹脂膜を形成する際に、液垂れを防止して、塗布された形状を維持することができるので、非塗布領域の大きさや形状により正確に対応した剥離性樹脂膜を形成することができる。これにより、非塗布領域をより正確に保護することができる。
【0041】
本発明の樹脂組成物には、さらに、視覚的な効果を付与する成分を添加することもできる。視覚的な効果を付与することにより、形状のみの場合に比べ、装飾の自由度をさらに大きくすることができる。また、マスキング材料の剥がし忘れが無いことを容易に識別できる。視覚的な効果を付与する成分としては、着色剤、蓄光剤、光輝性無機顔料、蛍光顔料、色の変わるコレステリック液晶顔料等を挙げることができる。これらの視覚効果付与成分を単独で用いることもでき、あるいは複数種を用いることもできる。本発明の樹脂組成物は、硬化が早く且つ貯蔵安定性がよいので、これら成分を長期に亘り保持することが可能であり、これら成分の効果を十分に発揮させることが可能である。
【0042】
なお、本発明の樹脂組成物は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルムを支持体とし、その片面または両面に本発明の樹脂組成物を塗布したマスキングシートあるいはマスキングテープとしても用いることができる。
【0043】
本発明のマスキング方法は、被処理物に塗液を塗布するに際し、該被処理物の非塗布領域に剥離性樹脂膜を形成し、該非塗布領域に対する塗液の付着を防止するマスキング方法であり、本発明のマスキング材料を用いて剥離性樹脂膜を形成するものである。本発明のマスキング材料を用いて剥離性樹脂膜を形成する方法としては、被処理物に非塗布領域の大きさおよび形状に合わせて塗布してもよく、あるいは型等を利用して非塗布領域の大きさおよび形状に合わせた剥離性樹脂膜を作製し、その剥離性樹脂膜を非塗布領域に貼り付けてもよい。図1は、本発明のマスキング方法の一例であり、手持ち式のガンタイプの塗布装置を用い、カートリッジに収容した湿気硬化型樹脂組成物を塗布ノズルから吐き出して、直接、被処理物の非塗布領域に塗布する例を示している。すなわち、フロントドア1と後部ドア3の間のBピラー2との隙間に本発明のマスキング材料4を充填している。使用する塗布ノズルの形状を工夫することで、様々な非塗布領域に対応可能である。しかし、本発明はこの方法に限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における「部」は、特に断らない限り「重量部」を表す。
【0045】
実施例1から5および比較例1から4.
(製造方法)
重合体(I)としてエクセスターS1000(旭硝子社製)およびアルフォンUS6110(東亞合成社製)、重合体(II)としてエクセスターS2420、エクセスターA2551を用いた。エクセスターS2420は加水分解性珪素基が基本的にジアルコキシアルキルシラン基で、エクセスターA2551はトリアルコキシシラン基である。これら重合体と、可塑剤としてポリプロピレングリコール、充填剤として加熱乾燥により水分を除去したシリカを加え、遊星式攪拌器(クラボウ社製)を使用して攪拌・混合した。得られた混合物を室温まで温度を下げてから、脱水剤としてシラン化合物と硬化触媒としてジブチルスズビス(アセチルアセトネート)を加えて攪拌・混合して、実施例1〜5および比較例1〜4の樹脂組成物を得た。表1に作製した樹脂組成物の組成を示す。
【0046】
【表1】

【0047】
比較例5として、市販のマスキング塗料(Mr.マスキングゾル(グンゼ産業社製))
を用いた。
【0048】
(試験方法)
(1)対ガラス非接着性評価
製造した樹脂組成物を温度23℃・湿度55%雰囲気下で打設し、3日間養生した跡、簡易接着性試験(日本シーリング材工業会発刊建築用シーリング材ハンドブック記載方法に準拠)を行った。跡が残らず簡単に剥がれた場合を合格(○)とし、跡が少しでも残れば不合格(×)とした。
【0049】
(2)硬化性評価
製造した樹脂組成物を温度23℃・湿度55%雰囲気下で、10mm幅で10mmの高さのアルミチャネルに打設し、24時間後切り出した厚み(単位:mm)を測定した。厚みが0.5mm以上であれば実用上問題のない硬化速度を有する。
【0050】
(3)貯蔵安定性評価
製造した樹脂組成物をカートリッジ容器に充填し、温度50℃・湿度80%のオーブンに7日間に保存した後、押し出して外観の変化の有無、タックフリー時間を確認した。外観の変化が無くタックフリー時間が2倍以上変化しない場合を合格(○)とし、タックフリー時間が2倍を越えて変化した場合を不合格(×)とした。ただし、硬化性試験において厚みが0.5mmより小さい場合には硬化性不良として、貯蔵安定性の評価は行わなかった。表2に実施例1〜5および比較例1〜4の樹脂組成物の試験結果を示す。
【0051】
(4)チキソ比評価
粘度測定は東京計器社製のB型粘度計を用いて室温(20〜25℃)で行った。回転数が2rpmと10rpmでの粘度を測定し、チキソ比を算出した。
【0052】
(5)肉痩せ評価
肉痩せは、直径45mm、深さ20mmの金属製容器の隅々まで製造した樹脂組成物を充填し、40℃・湿度80%のオーブンに14日間保管した後、容器の端部から樹脂組成物の凹みが2mm以上の場合を不合格(×)、2mm未満の場合を合格(○)とした。
【0053】
【表2】

【0054】
(結果)
実施例1から5は、対ガラス非接着性、硬化性、貯蔵安定性のいずれも優れた特性を有していた。また、チキソ比は、2.5以上であり、かつV10rpmも100Pa・s以上であった。また、肉痩せは、全て2mm以内であった。
【0055】
一方、比較例1、2は重合体(I)が配合されていないため、硬化性は良好であるが、対ガラス非接着性が不良であった。
【0056】
また、比較例3は重合体(I)が配合されているが、重合体(II)の配合量が少ないため硬化性が0.5mmより小さく実用には不十分な値であった。比較例4は重合体(I)および重合体(II)がともに配合されているが、重合体(I)100部に対して、重合体(II)が300部と多いために、対鋼板非接着性において、一部剥離せずに鋼板に接着した。
【0057】
また、実施例1と実施例2との比較、および実施例3と実施例4との比較でも分かるように加水分解性トリアルコシシラン基を持つ重合体を添加した場合の方がより硬化性が優れていた。
【0058】
また、比較例5は、チキソ比が2.5より小さく、肉痩せも大きかった。
【0059】
実施例6.
自動車の塗り替え時に図1に示すようにフロントドア1と後部ドア3の間のBピラー2との隙間に実施例1で製造した樹脂組成物4を充填したあと、フロントドア1と後部ドア3に塗装をかけた。塗装後、樹脂組成物4は容易に剥がすことができた。また、樹脂組成物4の肉痩せが無いため剥がした部分に塗料が回り込むこと無くきれいに塗装されていた。
【0060】
実施例7.
山岳模型の一部に白色パウダーを接着するために、接着させたくない部位に、実施例1で製造した樹脂組成物を打設してから、接着剤をスプレー塗布した。そこへパウダーをふりかけた後、樹脂組成物を剥がすと、山肌の凹凸に沿った意図する部分にのみ白色パウダーを接着させることができた。
【0061】
比較例6.
市販のマスキングゾルと実施例1で製造した樹脂組成物を用いて、オープンカータイプの自動車プラモデルのボディー部分のみ塗り替えを実施した。具体的には、運転席の内部および運転手、タイヤおよびタイヤハウス、アンダーカバー全体を覆うように市販のマスキングゾルと実施例1で製造した樹脂組成物を打設し、翌日スプレーでボディー部に塗装を施し、塗料が乾いた時点でマスキングゾルと実施例1で製造した樹脂組成物を剥がした。
【0062】
実施例1の樹脂組成物は塗装前に垂れてしまうこともなく、肉厚が変化することなく、剥がす途中で千切れてしまうこともなく、塗り替えの出来映えも良く、マスキングの目的を十分果たすことができた。一方市販のマスキングゾルはタイヤハウス部、アンダーカバー部から垂れが見られた。また打設時と比べて厚みが減少していた。剥がす途中で千切れてしまうという現象も発生した。塗り替えの出来映えとしても、部分的に塗料が回り込んでいたことから、マスキングの効果は不十分であった。
【符号の説明】
【0063】
1 フロントドア
2 Bピラー
3 後部ドア
4 本発明の組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全分子末端基の50%未満が加水分解性珪素基である重合体(I)100重量部と、全分子末端基の50%以上が加水分解性珪素基である重合体(II)5〜200重量部とを含む湿気硬化型樹脂組成物から成るマスキング材料。
【請求項2】
上記重合体(II)の加水分解性珪素基がトリアルコキシル基である請求項1記載のマスキング材料。
【請求項3】
B型回転粘度計による回転数が2rpmと10rpmでの粘度の比V2rpm/V10rpmで規定される上記湿気硬化型樹脂組成物のチキソ比が2.5以上であり、かつ10rpmでの粘度が100Pa・s以上である請求項1記載のマスキング材料。
【請求項4】
被処理物に塗液を塗布するに際し、該被処理物の非塗布領域に剥離性樹脂膜を形成し、該非塗布領域に対する塗液の付着を防止するマスキング方法であって、
全分子末端基の50%未満が加水分解性珪素基である重合体(I)100重量部と、全分子末端基の50%以上が加水分解性珪素基である重合体(II)5〜200重量部とを含む湿気硬化型樹脂組成物を用いて該剥離性樹脂膜を形成するマスキング方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−25901(P2012−25901A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168222(P2010−168222)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000107000)シャープ化学工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】