マスク、マスク製造方法及び配線基板の製造方法
【課題】複数の直線状の貫通孔が並設された配線パターンを補強するために、マスク本体の上面に補強部を設けたマスクにおいて、補強部を回り込んで行われる金属膜の成膜を行いやすくでき、微細な配線パターンを精度よく形成することができるマスクを提供することにある。
【解決手段】配線パターンを形成する貫通孔2を跨いで補強部3を配設し、補強部3の貫通孔2を覆う部分に凹部4を設ける。これにより、金属配線を形成する基板と補強部3との間の距離を十分に広くでき、補強部3を回り込んで配線の金属が成膜できるようになる。
【解決手段】配線パターンを形成する貫通孔2を跨いで補強部3を配設し、補強部3の貫通孔2を覆う部分に凹部4を設ける。これにより、金属配線を形成する基板と補強部3との間の距離を十分に広くでき、補強部3を回り込んで配線の金属が成膜できるようになる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な金属配線を蒸着等によって基板上に形成するために、基板上の非配線領域をマスキングするためのマスク及びこのマスクの製造方法に関し、また、マスクを用いて基板上に配線を形成する配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に金属配線を形成するために、基板の表面に金属を成膜及び加工することが行われており、金属を加工する方法にサブトラクティブ法、アディティブ法及びリフトオフ法等がある。サブトラクティブ法は、予め基板表面の全面にスパッタ法などで金属の成膜を行い、配線とする部分にレジストパターンを形成し、不要部分をエッチングなどで除去する方法である。この方法では、形成される配線の精度がエッチングの精度に影響されるため、微細な配線の形成には適用が難しいという欠点がある。アディティブ法は、基板表面の配線の不要部分にレジストパターンを形成し、レジストのない部分にのみ金属の成膜を行う方法である。この方法では、形成される配線の精度はレジストパターンの精度で決まるため、微細な配線を形成することができるが、めっき膜等を成膜する場合は、膜の耐熱性が弱く、信頼性が低いという問題がある。
【0003】
リフトオフ法は、配線の不要部分にレジストパターンを形成し、基板及びレジストの表面の全面にスパッタ法などで金属の成膜を行い、成膜後にレジスト及びレジスト表面の金属膜を剥離して配線を形成する方法である。この方法では、微細な配線を形成することができるだけでなく、耐熱性が高い金属膜をスパッタ法で容易に成膜することができ、サブトラクティブ法の精度及びアディティブ法の膜の耐熱性の問題を共に解決できるが、レジスト及びレジスト表面の金属膜を確実に剥離できるように、断面形状が複雑なレジストパターンを形成する必要があり、製造工程数の増加及び製造コストの増加を招来するという問題がある。
【0004】
一方、配線の形成にレジストを用いず、配線パターンに対応する開口が形成されたマスクを用いるマスク成膜法がある。この方法では、配線部分を開口としたマスクを基板の表面に密着させ、マスク及び基板の表面の全面に金属の成膜を行い、成膜後にマスクを取り外して配線を形成する。形成される配線の精度はマスク精度で決まるため、リフトオフ法と同様に微細な配線を形成でき、スパッタ法等を用いれば耐熱性が高い金属膜を形成することができる。また、マスクの強度が高いものであれば、マスクを再利用することができるため、製造コストを減少させることができるという利点がある。
【0005】
しかし、マスク成膜法では、例えば配線の幅が2μm程度で長さが2mm程度の長い直線状の配線を、複数平行に並べたような配線を形成する場合に、マスクの基板への密着が不安定な状態、例えば平行線の部分に歪みが生じる又はマスクが基板に密着せずに浮き上がった状態となる等の状態となり、形成する配線の幅に誤差が生じる虞があり、誤差の程度によっては配線が断線する又は隣の配線と接触する等の虞があるという問題があった。
【0006】
特許文献1(特開2001−254169号公報)においては、長い直線状の配線を平行に並べた配線パターンを有するマスクにおいて、基板に貼り付ける側の反対側の表面に、複数の配線パターンを跨ぐ微細なリブを設けてマスクを補強することで、平行線の部分に歪みが生じないようにしている。
【0007】
【特許文献1】特開2001−254169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のマスクのように、複数の配線パターンを跨ぐリブを設けた場合には、リブを回り込んで基板の表面に成膜を行わなければならないため、基板の表面とリブとの間の距離が離れていることが望ましい。しかし、基板の表面とリブとの間の距離を離すためには、マスク本体を厚くする必要があり、マスク本体を厚くした場合には成膜が行われにくいため、微細な配線を形成することが難しいという問題がある。
【0009】
また、特許文献1に記載のマスクは、電鋳により金属を析出させてマスクを作成するため、マスク本体が金属製であり、金属配線の形成に用いる場合には、再利用が難しいという問題がある。これは、マスクの表面に成膜された金属膜を剥離する場合に、王水又は硝酸等の強酸溶液により金属膜を剥離するため、マスク本体が溶解する虞があるためであり、マスクの表面に成膜された金属膜を剥離せずに再利用を行う場合には、配線パターンを形成するマスクの開口部分が金属膜により埋まる虞があるためである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、微細な配線を精度よく形成できるマスク、そのようなマスクの製造方法、及びマスクを用いて基板上に配線を形成する配線基板の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の第1の態様に従えば、複数の貫通孔が形成された平板状のマスク本体と、該マスク本体の一面に前記貫通孔を跨いで配設され、前記マスク本体を補強する補強部とを備えるマスクにおいて、前記マスク本体の前記一面と反対側の面と、前記補強部の前記貫通孔に面している面との間の長さが、前記マスク本体の厚さよりも長いマスクが提供される。また、前記補強部は、前記貫通孔の開口を覆う部分に凹部が形成され、前記凹部によって画定される領域は前記貫通孔と連通していてもよい。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、マスク本体に形成された配線パターンをなす貫通孔を跨いで配される補強部を備え、例えば、補強部の貫通孔を覆う部分に凹部を設けることで、凹部によって画定される領域は貫通孔と連通するので、マスク本体を厚くすることなく基板と補強部との間の距離を広げることができる。例えばスパッタ法により基板上に配線を形成する場合、スパッタされる金属は補強部の凹部を回り込んで、基板上の補強部の影となる部分にも堆積できる。このとき、配線が形成される基板と補強部との間の距離は、マスク本体の厚さに関係なく、補強部に形成される凹部の深さによって決定されるので、基板と補強部との間の距離を十分に広げることができる。また、補強部と関係なくマスク本体の厚さを決定することができるため、マスク本体の厚さを薄くすることができ、より微細な配線パターンをマスク本体に形成することができる。よって、マスクの設計の自由度が高くなり、マスクの適用分野を広範囲なものにすることができる。なお、補強部の貫通孔に面している面(補強部の上内面)と、マスク本体の補強部が配置されていない側の面(裏面)との間の長さは、最長になるように定義する。つまり、例えば補強部の上内面が平坦な面ではなく、凹面形状であるような場合には、補強部の上内面の、マスクの裏面から最も遠い地点とマスクの裏面との間の距離を指すものとする。
【0013】
本発明のマスクにおいて、前記凹部は前記貫通孔と重なる領域に渡って形成され、前記凹部の内面及び前記貫通孔によって画定される前記マスク本体の面が連続した面であってもよい。
【0014】
補強部の凹部を、マスク本体の貫通孔と重なる領域の全体に渡って形成し、凹部の内面及び貫通孔の内面が連続した面をなすようにすることで、凹部及び貫通孔を同じ工程で形成することができるため、補強部の凹部を簡単に形成することができる。
【0015】
本発明のマスクにおいて、前記マスク本体及び前記補強部が、シリコン又はシリコンを含む化合物を用いてもよい。
【0016】
マスクをシリコン又はシリコンを含む化合物で製造することで、マスクを用いて基板上に配線の金属膜の形成を行った後、マスク表面に付着した金属膜を王水又は硝酸等で剥離することができ、マスクの再利用が可能となる。従って、レジストパターンによりマスキングを行う場合と比較して、コストを低減することができる。
【0017】
また、本発明に係るマスクは、前記マスク本体及び前記補強部が、一体形成されていてもよい。
【0018】
マスク本体及び補強部を一体的に形成することで、補強部を別体で製作して着接する場合のマスク本体と補強部との位置ずれなどが生じることがないため、より微細で複雑な配線パターンを有するマスクを実現することができる。また、補強部を別体で製作してマスク本体に着接する場合に形成することが難しい補強部の凹部を設けることができる。
【0019】
また、本発明に係るマスクは、前記マスク本体に直線状の貫通孔が複数並設してあり、前記補強部が、複数の前記貫通孔を跨いで配設されていてもよい。
【0020】
マスク本体に直線状の細長い貫通孔を複数並設して配線パターンを形成する場合に、複数の貫通孔を跨いで補強部を配設することで、歪みなどが起こりやすい配線パターンを補強することができるため、形成する配線に断線又はショート等が起こらないようにすることができ、配線の形成工程で発生する不良を低減することができる。
【0021】
本発明のマスクは、前記マスク本体に直線状の貫通孔が複数並設してあり、前記補強部は、複数の前記貫通孔を跨いで配設された第1の補強体と、該第1の補強体と交差するように配設された第2の補強体とを有してもよい。
【0022】
マスク本体に直線状の貫通孔を複数並設して配線パターンを形成する場合に、複数の貫通孔を跨いで第1の補強体を配設し、第1の補強体と交差するように第2の補強体を配設することで、より配線パターンを強固に補強することができるため、形成する直線状の配線に歪みなどが生じて断線又はショート等がより起こらないようにすることができ、配線の形成工程で発生する不良をより低減することができる。
【0023】
本発明のマスクは、前記補強部が細長い形状を有し、前記補強部の前記貫通孔と重なる部分の幅が、前記補強部の前記貫通孔と重ならない部分の幅よりも短くてもよい。この場合には、補強部と貫通孔とが重なる部分が小さくなるので、このマスクを用いて配線を形成する際に、配線の断線などの発生率が低下する。
【0024】
本発明のマスクは、前記マスク本体に屈曲部分を有する折れ線状の貫通孔が複数並設してあり、前記補強部が、複数の前記貫通孔の屈曲部分を跨いで配設されていてもよい。
【0025】
マスク本体に屈曲部分を有する折れ線状の貫通孔を複数並設して配線パターンを形成する場合に、屈曲部分を跨いで補強部を配設することで、折れ線状の配線パターンを効果的に補強することができるため、形成する配線に断線又はショート等がより起こらないようにすることができ、配線の形成工程で発生する不良をより低減することができる。
【0026】
本発明のマスクは、前記マスク本体に形成された貫通孔内に島状部分が設けてあり、前記補強部が、前記貫通孔を跨ぎ、前記マスク本体及び前記島状部分を結んで配設されていてもよい。
【0027】
島状部分を有する貫通孔を配設して配線パターンを形成する場合に、島状部分及びマスク本体を結び、貫通孔を跨いで補強部を配設することで、補強部がない場合には形成不可能な配線パターンをマスクに形成することができるため、基板上に同心円状などの配線を形成できるようになり、配線のレイアウトの自由度が上がり、マスクの適用範囲又は適用分野を広げることができる。
【0028】
本発明のマスクにおいて、第2の補強体は、平面視で前記貫通孔とほぼ重なる領域に配設され、第1の補強体と第2の補強体が交差する部分は、第1の補強体及び第2の補強体の他の部分よりも厚く形成されていてもよい。この場合には、第2の補強体を貫通孔とほぼ重なる領域に配設することができるため、第2の補強体を形成する位置の自由度が大きくなる。
【0029】
本発明の第2の態様に従えば、複数の貫通孔が形成された平板状のマスク本体と、前記貫通孔を跨いで配設され、前記マスク本体を補強する補強部とを備えるマスクの製造方法において、平板状のマスク基材を設ける工程と、前記マスク基材の一面に前記貫通孔を形成するための第1のガイドパターンを形成する第1ガイドパターン形成工程と、前記第1のガイドパターンが形成された面に、前記第1のガイドパターンに従って、前記マスク基材を貫通しないようにエッチングを行う第1エッチング工程と、前記マスク基材の他面に、前記補強部を形成するための第2のガイドパターンを形成する第2ガイドパターン形成工程と、前記他面に、前記第2のガイドパターンに従って前記補強部の形成領域以外にエッチングを行い、前記第1エッチング工程でエッチングを行った部分を貫通させる第2エッチング工程とを備えるマスク製造方法が提供される。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、マスク基材の一面に貫通孔を形成するための第1のガイドパターンを形成し、第1のガイドパターンに従ってエッチングを行い、配線パターンを形成する。更に、マスク基材の他面に補強部を形成するための第2のガイドパターンを形成し、第2のガイドパターンに従ってエッチングを行い、補強部を形成する。マスク基材の両面からエッチングを行うことで、マスク本体に貫通孔を形成し、また、補強部に凹部を形成し、マスク本体及び補強部を一体的に形成する。このように、マスク基材の一面にエッチングを行って配線パターンを形成する第1エッチング工程と、他面にエッチングを行って補強部を形成する第2エッチング工程とを備えることで、補強部に凹部を形成することができるため、マスク本体の厚さに関係なく配線を形成する基板と補強部との距離を広くすることができ、確実に補強部の凹部を回り込んで配線の金属膜が形成できる。また、補強部と関係なくマスク本体の厚さを薄くすることができるため、より微細な配線パターンを形成することができる。
【0031】
本発明のマスク製造方法は、前記第1エッチング工程及び前記第2エッチング工程で行うエッチングの深さの合計が、前記マスク基材の厚さより大きくてもよい。
【0032】
第1エッチング工程で行うエッチングの深さ及び第2エッチング工程で行うエッチングの深さの合計を、マスク基材の厚さより大きくすることで、補強部の凹部の深さは、エッチングの深さの合計とマスク基材の厚さとの差分で簡単に決定することができ、凹部を簡単に形成することができる。
【0033】
本発明のマスク製造方法は、前記第1エッチング工程及び前記第2エッチング工程で行うエッチングが、異方性エッチングであってもよい。
【0034】
第1エッチング工程及び第2エッチング工程で行うエッチングを、異方性エッチングで行うことで、マスクに配線パターンを形成する貫通孔の断面形状を鋭角なものにすることができるため、断面形状が半円状になりやすい等方性エッチングで行う場合に比較して、より高精度に配線パターンを形成することができ、より微細な配線パターンを形成することができる。
【0035】
本発明のマスク製造方法において、第2ガイドパターン形成工程は、前記補強部の第1の補強体を形成するための第1補強体パターンを形成する工程と、前記補強部の第2の補強体を形成するための第2補強体パターンを形成する工程とを備え、第1補強体パターンを形成する工程と第2補強体パターンを形成する工程との間に、前記マスク基材の、第1の補強体パターンが形成された面に、前記第1の補強体パターンに従って、前記マスク基材を貫通しないようにエッチングを行うエッチング工程を備えてもよい。この場合には、複数の補強体を有する補強部を形成することができる。
【0036】
本発明のマスク製造方法において、第1補強体パターンと、第2補強体パターンとが交差していてもよい。この場合には、より強度の高い補強部を形成することができる。
【0037】
本発明のマスク製造方法において、第2ガイドパターン形成工程は、さらに前記補強部の第3の補強体を形成するための第3補強体パターンを形成する工程を備え、第2補強体パターンを形成する工程と第3補強体パターンを形成する工程との間に、前記マスク基材の、第2の補強体パターンが形成された面に、前記第2の補強体パターンに従って、前記マスク基材を貫通しないようにエッチングを行うエッチング工程を備えてもよい。この場合には、第1補強体と第2補強体との接続部を補強する第3補強体を形成することができるので、補強部の強度を高めることができる。
【0038】
本発明のマスク製造方法は、少なくとも前記第2ガイドパターン形成工程を行う以前に、複数の前記貫通孔を形成するためのマスク領域を、マスク基材にエッチングを行うことで形成するマスク領域形成工程を行ってもよい。
【0039】
マスク基材に予めエッチングを行って、配線パターンを形成するためのマスク領域を形成しておくマスク領域形成工程を備えることで、マスク基材の厚さを予め調節することができる。そのため、両面に行うエッチングが行いやすくなり、貫通孔及び補強部の凹部を精度よく形成することができる。
【0040】
本発明の第3の態様に従えば、複数の貫通孔が形成された平板状のマスク本体と、該マスク本体の一面に前記貫通孔を跨いで配設され、前記マスク本体を補強する補強部とを備え、前記マスク本体の前記一面と反対側の面と、前記補強部の前記貫通孔に面している面との間の長さが、前記マスク本体の厚さよりも長いマスクを用いて、基板上に配線を形成する配線基板の製造方法において、前記マスクの他面が前記基板と対向するように前記マスクを位置決めする位置決め工程と、前記一面側から前記基板へ向けて、配線を形成するための材料粒子を飛翔させ、前記基板に配線を形成する配線形成工程とを備える配線基板の製造方法が提供される。
【0041】
貫通孔を覆う部分に例えば、貫通孔と連通する領域を画成する凹部を有する補強部が設けられたマスクを使用して、補強部が設けられた面の反対面が基板と対向するようにマスクの位置を決め、補強部が設けられた面の側から配線を形成するための材料粒子を、例えばスパッタ法により飛翔させて基板上に堆積させる。この場合、マスクの補強部には凹部が形成されており、基板の、補強部の影になった部分にも材料粒子が回り込むため、基板上に配線を精度よく形成できる。
【0042】
本発明の配線基板の製造方法は、前記マスクの表面に堆積した材料粒子を除去する除去工程を備えてもよい。
【0043】
この場合は、基板上に配線を形成した後、マスクの表面に堆積した材料粒子を除去することで、マスクの貫通孔が材料粒子により閉塞されることがなく、マスクを再利用することが可能であるため、配線基板の製造コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
【0045】
〈第1実施形態〉
図1は、本発明に係るマスクの模式的斜視図であり、図2は、図1のII−II線による断面図である。図において1は平板状のマスク本体であり、マスク本体1には基板101に形成すべき金属配線102の配線パターンに対応した複数の細長い貫通孔2が形成されている。
【0046】
複数の細長い貫通孔2の一部分は、直線状をなして互いに略平行に配設してある。マスク本体1の上面1Uには、複数の角棒状の補強部3が、貫通孔2の略平行に配された部分と交差し、且つ、それぞれの部分を跨ぐように、一定の間隔で設けられている。補強部3を設けることにより、貫通孔2の幅などに歪みが生じることを防止している。補強部3の貫通孔2を跨ぐ部分、つまり、マスク本体1の、貫通孔2が形成されている領域と対向する部分には、略矩形状の凹部4が形成されており、補強部3の形状はアーチ状となっている。即ち、凹部4は、その内部空間が貫通孔2の内部空間と連通するように形成されている。また、凹部4の内面及び貫通孔2の内面は連続した面をなすように形成されている。凹部4を設けることで、マスク本体1の下面1Lの貫通孔2の開口部分と補強部3との間隔を広げることができ、スパッタ法などによって金属配線の形成を行う場合に、スパッタされた金属粒子は補強部3を回り込みやすくなる。
【0047】
マスク本体1の厚さは約25μmである。このようにマスク本体1が薄い場合には、マスク本体1に歪みが生じ易く、又はマスク本体1が基板101に密着せずに浮き上がった状態となり易い。そのため、基板101に形成される金属配線102に断線又はショート等が発生する虞がある。この現象は、貫通孔2の幅及び隣り合う貫通孔2の間隔に対して貫通孔の長さが長くなるほど発生しやすい。例えば、貫通孔2の幅及び隣り合う貫通孔2の間隔が約10μmの場合、貫通孔2の長さが約2mm以上で上記不具合が発生することが経験的に認められる。このため、並設された直線状の貫通孔2には、約2mm以内の間隔で補強部3を設けて、貫通孔2の補強を行うこととした。
【0048】
補強部3の厚さは約25μmであり、凹部4の深さは約15μmである、また、マスク本体1の厚さは約25μmであるので、マスク本体1の下面と補強部3の貫通孔2を覆う部分との間の距離は約40μmである。補強部3に凹部4が形成されていない場合は、マスク本体1の下面と補強部3との距離は約25μmであるので、凹部4を形成することで距離を約60%広げることができる。なお、貫通孔2の幅がより狭い場合には、補強部3の厚さを増して、凹部4をより深く形成することで、マスク本体1の下面1Lと補強部3の凹部表面4aとの距離を広げることが望ましい。このマスクを用いて基板上にスパッタ法などで金属配線を形成する場合には、マスク本体1の下面1Lと補強部3の凹部表面4aとの距離を広げることによって、スパッタされた金属粒子が、基板101上の、平面視で補強部3の貫通孔2を覆う部分と重なる領域、すなわち、基板101上の補強部3の影となる領域に、より回り込みやすくなる。
【0049】
また、マスク本体1及び補強部3はマスク基材から一体的に形成されており、マスク基材にはシリコン又はシリコンを含む化合物等が用いられる。シリコンを含む化合物には、例えばSiC又はSiN等がある。シリコン又はシリコンを含む化合物等を用いることで、マスク本体1及び補強部3は、王水又は硝酸等の強酸溶液により溶解する虞がない。
【0050】
以上の構成のマスク本体1を用いて、スパッタ法により基板101の表面に金属配線102を形成する場合には、基板101の表面の金属配線102が形成される箇所に貫通孔2を位置決めした状態で、マスク本体1の下面を基板101の表面に密着させる。マスク本体1には、直線状の貫通孔2と交差するように補強部3が設けられているため、基板101にマスクを密着させる場合に生じるマスクの歪みをなくすことができ、また、マスクを基板101により密着させることができる。また、補強部3に凹部4を形成することにより、基板101の、補強部3の影となる領域にも金属粒子が回り込むため、形成される配線102が補強部3によって破断することは極力回避される。
【0051】
一般に、金属配線102は、マスク本体1の厚さが薄いほど精度よく形成することができる。また、金属粒子の補強部3における回り込みは、補強部3の凹部表面4aとマスク本体1の下面1Lとの距離が離れているほど効率よく行われる。このため、マスク強度の許容範囲内で、できるだけマスク本体1の厚さを薄くし、且つ、補強部3の凹部表面4aとマスク本体1の下面1Lとの距離を離すように、凹部4の深さを設定することが望ましい。
【0052】
また、マスクはシリコン又はシリコンを含む化合物によって形成されるため、基板101に金属配線102を形成した後、マスク表面に付着した金属粒子による膜をウエットエッチング処理により除去することが可能である。例えば金属粒子が白金である場合には王水を用い、金属粒子が金である場合には王水又はヨウ化アンモン系の溶液を用い、金属粒子が銀である場合には硝酸系の溶液を用いて、これらの金属粒子を除去することができる。
【0053】
補強部3は、複数並設された直線状の貫通孔2に交差するように設けるだけでなく、他の構成とすることもできる。図3乃至図10は、本発明に係るマスクの補強部3の配設例を示す正面図である。
【0054】
図3に示す配設例では、8つの直線状の細長の貫通孔2が並設されている場合に、一定の間隔を隔てて配置されている複数の直線状の補強部3は、8つの貫通孔2のそれぞれに跨って、貫通孔2が延在する方向と直交するように並設されている。
【0055】
図4に示す配設例では、8つの直線状の細長の貫通孔2a〜2hは、各貫通孔が延在する方向(長手方向)と直交する短手方向に、間隔を隔ててほぼ平行に配設されている。さらに、複数の補強部3aが、各貫通孔の短手方向の一方側(図4の上側)の4つの貫通孔2a〜2dのそれぞれに跨って、各貫通孔の短手方向にほぼ平行に設けられている。同様に、複数の補強部3bが、各貫通孔の短手方向の他方側(図4の下側)の4つの貫通孔2e〜2hのそれぞれに跨って、各貫通孔の短手方向にほぼ平行に設けられている。複数の補強部3a,3bは、各貫通孔の長手方向に一定の間隔で交互に配置されている。この場合、図3に示すものと比較して、補強部3a,3bが各貫通孔を跨ぐ部分が少なくなるため、金属配線を形成する際に破断が生じやすい箇所が減り、配線形成の信頼性が向上するという利点がある。
【0056】
図5に示す配設例は、図4に示す配設例の補強部3a,3bの補強強度を高めたものである。貫通孔2a〜2hの配置は図4と同様である。図5に示す補強部は、第1の補強体3cと第2の補強体3dとを備える。第1の補強体3cは、貫通孔2a〜2d又は貫通孔2e〜2hに跨って、各貫通孔が延在する方向と直交する方向に配設される。第2の補強体3dは、マスク本体1の、2つの貫通孔2bと2c(又は貫通孔2fと2g)によって画成される領域1Dに、各貫通孔の延在する方向に沿って形成された壁部であり、各貫通孔の延在する方向に隣接する2つの第1の補強体3cを互いに連結している。このように、二方向から補強を行うことによって、補強部の補強強度を高めている。
【0057】
図6に示す配設例では、図4、5と同じく8つの直線状の貫通孔2a〜2hが並設されている。補強部3は、8つの貫通孔2a〜2hをそれぞれを跨いで、各貫通孔が延在する方向と約45度の角度をもって延在する第1の補強体3eと、同じく8つの貫通孔2a〜2hをそれぞれを跨いで延在し、且つ、第1の補強体3eと同一平面上で直交する第2の補強体3fとを備え、二方向から補強を行っている。
【0058】
図7に示す配設例では、屈曲部分を有する折れ線状の9つの貫通孔2が並設されている。すなわち、各貫通孔は、水平方向に延在する部分と垂直方向に延在する部分とが屈曲部分において交差している。各貫通孔の屈曲部分は、水平方向に対して約45度の角度をなす方向沿って一列に並んでおり、補強部3gは、この方向に沿って各貫通孔の屈曲部分をそれぞれ跨ぐように設けられている。これにより、歪みが最も生じやすい、配線パターンの屈曲部分を確実に補強することができる。
【0059】
図8及び図9には、貫通孔2内に島状部分を有する場合の補強部3の配設例が示されている。ここで、島状部分とは、補強部を除いた場合に、全周囲が貫通孔により画成されている部分のことである。図8には、2つの大きさの異なる矩形状の配線を同心で形成するためのマスクの例が示されている。図8では、マスク本体1は、略矩形の形状の第1の島状部分84aと、第2の島状部分84bと、マスク外周部分84cと、補強部3とを備える。第2の島状部分84bは、第1の島状部分84aの周囲に一定の幅で形成された、平面視で略矩形枠の形状の貫通孔82aと、貫通孔82aと同心であって且つ一回り大きな略矩形枠の形状に形成された貫通孔82bとによって画成される。マスク外周部分84cは、第2の島状部分84bの外側に貫通孔82bを隔てて配置されている。補強部3は、第1の島状部分84a及び第2の島状部分84bの対角線方向に沿って四隅に1つづつ配置されている。各補強部3は、第1の島状部分84aの角部、第2の島状部分84bの角部及びマスク外周部分84cを結んで固定しており、貫通孔84a、84bをそれぞれを跨いで配設されている。このように、補強部3のないマスクでは実現不可能である島状部分を有するマスクを用いて配線パターンを形成できる。
【0060】
図9に示すマスクでは、マスク外周部分94aに形成された大きな矩形状の貫通孔2の内部に、25個の円形の島状部分94bが並設されている。島状部分94bは、5行5列のマトリクス状に配置されており、マトリクスの行方向及び列方向は、貫通孔2の外周の形状である矩形の横方向及び縦方向にそれぞれ平行である。島状部分94bは、各行及び各列において、直線状の補強部3によって連結されてマスク外周部分94aに固定されている。
【0061】
図10には、実際の配線に近い形状の配線パターンを形成するためのマスクの配設例が示されている。図3及び図7に示したマスクの配設例を組み合わせたものである。マスク本体1には、3つの平面視略矩形状の貫通孔20cが形成され、それぞれの貫通孔20cの一辺の略中央から貫通孔の外側に向かって直線状に延びる細長の貫通孔20aが形成されている。ここで、3つの貫通孔20aは、ほぼ平行に形成されている。3つの貫通孔20cは、貫通孔20aが延在する長手方向と直交する短手方向には一定の間隔を隔てて形成されており、長手方向には、中央の貫通孔20cが両端の2つの貫通孔20cよりも貫通孔20aが延びる向きにずれて配置されている。両端の貫通孔20cの間には、貫通孔20aの長手方向に延在する6本の細長い貫通孔20bが形成されている。貫通孔20bは、中央の貫通孔20cと交差することを回避するために、貫通孔20aの短手方向両側の3本ずつが、それぞれ貫通孔20aの短手方向両側に向かって屈曲し、さらに中央の貫通孔20cの外側で貫通孔20aの長手方向に向かって屈曲するように形成されている。つまり、6つの細長い貫通孔20bは、3本づつの2つのグループに分かれて中央の貫通孔20cを避けつつ、貫通孔20aの長手方向に延在している。平行に延びる複数の細長い貫通孔20bが形成されている部分には、図3で示した例と同様に、貫通孔20bの延在方向と直交する補強部30aが、複数の貫通孔20bそれぞれを跨いで配設されている。また、複数の貫通孔20bの屈曲部分が並設されている部分には、図7で示した例と同様に、屈曲部分それぞれを跨ぐ補強部30bが配設されている。
【0062】
次に、上述のマスクを製造するための製造方法について説明する。図11は、本発明に係るマスクの製造方法のマスク領域形成工程を示す模式図であり、図11においては、上から下へ順番に製造工程でのマスクの状態を時系列で示しており、また、図の左側にマスクの断面図を、右側に断面図に対応する平面図を示してある。
【0063】
図11(a)に加工前のウエハ10を示す。本実施形態では、本発明に係るマスクは円板状の4インチのシリコン製ウエハ10から製造される。ウエハ10の厚さD0は約500μmである。本発明のマスクは、ウエハ10に一辺が略10mmの略正方形状で、厚さが略50μmの領域(マスク領域)を44個形成し、該領域に複数の貫通孔を穿設することで形成される。以下、マスクの製造方法について詳述する。
【0064】
まず、ウエハ10の全面にレジストを塗布する。次に44個のマスク領域に対応した開口を有する露光用のマスクを介してレジストを露光し、その後、現像によりレジストの露光された部分を除去する。これにより、一辺の長さWR0が約10mmの略正方形状の開口を44個有するレジストマスク11が形成される。レジストマスク11が形成された後の状態を図11(b)に示す。具体的には、化薬マイクロケム製のレジストSU−8を、ミカサ製のスピンコータIH−DX2を用いてウエハ10の全面に塗布し、ウシオ製の露光機SE−571を用いて露光した後、酢酸2−プロピル系の現像液を用いて現像することで形成する。典型的には、形成されるレジストマスク11の厚さDR0は約40μmである。
【0065】
次いで、レジストマスク11が塗布されたウエハ10にエッチングを行う。エッチングは異方性エッチングであり、例えば、STS製のエッチング装置MULTIPLEX−ASE−HRMを用い、BoschプロセスにてSF6 ガス及びC4 F8 ガスで交互に処理することで行われる。エッチング後の状態を図11(c)に示す。このときのエッチングの条件は、速度5μm/min、選択比50:1、アスペクト比30:1である。また、エッチングの深さDE0は約450μmである。
【0066】
次いで、ウエハ10の表面に形成されていたレジストマスク11の剥離を行う。レジストマスク11の剥離は、例えば、アルキルベンゼン系の剥離液を用いて行う。レジストマスク11の剥離後の状態を図11(d)に示す。レジストマスク11の剥離を行うと、マスク領域の形成工程は終了し、ウエハ10に44個のマスク領域12が形成される。各マスク領域12は、一辺の長さが約10mmの正方形状で、厚さD1が約50μmの平板状である。
【0067】
図12及び図13は、本発明に係るマスクの製造方法の貫通孔2、補強部3及び凹部4を形成する工程を示す模式図である。図12及び図13では、製造工程でのマスクの状態を上から下へ順に時系列で示しており、また、図の左側にマスクの断面図を、右側に断面図に対応する平面図を示している。また、図12及び図13は、図11のマスク領域12の1つを拡大して示している。マスク領域12には、平行に配設された直線状の細長い貫通孔2と、全ての貫通孔2を跨ぎ、且つ、貫通孔2の延在する方向と直交する補強部3が形成される。これは図3に示した貫通孔2及び補強部3の配設例に対応するものである。
【0068】
図12(a)は、図11(a)〜(d)を参照して説明したマスク領域形成工程で形成したマスク領域12の一部を拡大したものである。平板状のマスク基材10aの厚さD1は約50μmである。
【0069】
まず、第1ガイドパターン形成工程を行う。第1ガイドパターン形成工程では、平板状のマスク基材10aの表面に、貫通孔2及び凹部4をエッチングにより形成するための開口を有するレジストパターン(第1ガイドパターン)15の形成を行う。レジストパターン15を形成した後の状態を図12(b)に示す。なお、レジストパターン15の塗布は図11(b)に示す工程で用いたものと同様の機器を用いて行う。
【0070】
次いで、第1エッチング工程を行う。第1エッチング工程では、第1ガイドパターン形成工程で形成したレジストパターン15に従って、マスク基材10aの一面(表面)に異方性エッチングを行って溝2aを形成する。これらの溝2aは、後に貫通孔2及び凹部4となる。エッチング後の状態を図12(c)に示す。エッチングの深さDE1は、約40μmであるので、マスク基材10aを貫通しない。なお、エッチングは図11(c)に示す工程で用いたものと同様の機器を用いて行う。
【0071】
次いで、第1剥離工程を行う。第1剥離工程では、第1ガイドパターン形成工程でマスク基材10aの表面に形成されたレジストパターン15の剥離を行う。レジストパターン15を剥離した後の状態を図12(d)に示す。なお、レジストパターン15の剥離は図11(d)に示す工程と同様の方法で行う。
【0072】
次いで、レジストパターン15を剥離した後のマスク基材10aを反転させる。マスク基材10aを反転させた状態を図13(a)に示す。マスク基材10aを反転させるのは、補強部3を形成するために、マスク基材10aの反対面(裏面)に対してエッチングを行うためである。
【0073】
次いで、第2ガイドパターン形成工程を行う。第2ガイドパターン形成工程では、反転させたマスク基材10aの表面に、エッチングにより補強部3を形成するためのパターンであるレジストパターン(第2ガイドパターン)16の形成を行う。レジストパターン16を形成した後の状態を図13(b)に示す。なお、レジストパターン16の形成は図11(b)に示す工程で用いたものと同様の機器を用いて行う。
【0074】
次いで、第2エッチング工程を行う。第2ガイドパターン形成工程にて形成されたレジストパターン16に従って、マスク基材10aに異方性エッチングを行い、補強部3を形成する。エッチングにより補強部3を形成した後の状態を図13(c)に示す。このとき行うエッチングの深さDE2は約25μmであり、第2エッチング工程で行うエッチングの深さDE2と、第1エッチング工程で行うエッチングの深さDE1と、(e)でのマスク基材10aの厚さD1との関係は、以下に示す式で表される。
【0075】
DE1+DE2>D1 ・・・(1)
このため、第1エッチング工程で形成された溝は、第2エッチング工程によりマスク基材10aの裏面からエッチングされることによって貫通孔となる。なお、エッチングは図11(c)に示す工程で用いたものと同様の機器を用いて行う。
【0076】
次いで、第2剥離工程を行う。第2剥離工程では、第2ガイドパターン形成工程にて形成したレジストパターン16を剥離する。レジストパターン16を剥離した後の状態を図13(d)に示す。なお、レジストパターン16の剥離は図11(d)に示す工程と同様の方法で行う。
【0077】
以上の製造工程により、補強部3及び凹部4を有し、貫通孔2が形成されたマスクを製造することができる。マスク本体1の厚さDM1は、マスク基材10aの厚さD1 及び第2エッチング工程でのエッチングの深さDE2で決まり、これらの間には以下の式(2)で表される関係がある。また、凹部4の深さDM4は、マスク基材10aの厚さD1 、第1エッチング工程でのエッチングの深さDE1及び第2エッチング工程でのエッチングの深さDE2で決まり、これらの間には以下の式(3)で表される関係がある。本実施形態では、マスク本体1の厚さDM1は約25μmであり、凹部4の深さDM4は約15μmである。また、マスク本体1の下面と補強部3の貫通孔2を覆う部分との距離は、第1エッチング工程でのエッチングの深さDE1に等しい。
【0078】
DM1=D1 −DE2 ・・・(2)
DM4=(DE1+DE2)−D1 ・・・(3)
マスク基材10aを両面からエッチングすることで、補強部3の貫通孔2を覆う部分に凹部4を有するマスクを製造することができ、マスク本体1の厚さDM1は第2エッチング工程でのエッチングの深さで決定でき、補強部3とマスク本体1の下面との距離は第1エッチング工程でのエッチングの深さで決定できる。このため、マスク強度の許容範囲内で、マスク本体1の厚さは薄く、補強部3とマスク本体1の下面との距離を離すように、マスクを形成することができる。
【0079】
図14は、本発明に係るマスクを用いて基板上に配線を形成する製造工程を示す模式図である。なお、図14においては、製造工程でのマスク及び基板の状態を(a)からEへ順に時系列で示している。
【0080】
まず、マスクを基板101に対して位置決めする。マスクの位置決めを行った後の状態を図14(a)に示す。マスクは、マスク本体1の補強部3が設けられていない側の面が基板101に対向するように、基板101に密着させて又は基板101と一定の間隔を開けて配される。
【0081】
次いで、基板101に配線を形成するために、マスクの補強部3が設けられている面(上面)側から、例えばスパッタ法によって白金又は金等の金属粒子103を飛翔させ基板101上に堆積させる。金属粒子103を堆積させる様子を図14(b)に示し、金属粒子103の堆積を終えた状態を図14(c)に示す。金属粒子103を堆積させると、基板101上に堆積した金属粒子103が金属配線を形成し、配線基板の形成が完了する。このとき、マスク本体1及び補強部3の上面に金属粒子103が付着して金属膜104をなす。
【0082】
次いで、金属膜104の除去工程を行う。除去工程では、王水又は硝酸等の強酸溶液を用いて金属膜104を溶解して剥離する。金属膜104の除去の様子を図14(d)に示し、金属膜104を除去した後のマスクの状態を図14(e)に示す。金属膜104を除去することでマスクを再利用することが可能となる。
【0083】
なお、本実施の形態において、直線状又は折れ線状等の配線パターンを形成するためのマスクの例を数種類示したが、これに限るものではなく、例えば湾曲した配線が複数並設してある配線パターンなど、その他の形状であってもよい。また、マスクの製造工程において第2ガイドパターン形成工程の前にマスク基材10aを反転させるとしたが、反転させなくてもよい。また、本実施の形態で示したマスクの寸法及び加工寸法等は一例であって、これに限定するものではない。また、本実施の形態のマスクの製造工程で示した各工程で用いる製造用の機器、レジスト及び剥離剤等の種類は一例であって、これに限定するものではない。また、本実施の形態のマスク製造工程で行うエッチングの条件は一例であって、これに限定するものではない。さらに、金属粒子103を用いた堆積法(成膜法)は上記スパッタ法に限ることなく、真空蒸着法等の一般的な成膜法を用いることもできる。但し、成膜された膜の付着力が強い点や膜厚制御等の簡便さから、上記実施形態ではスパッタ法を用いている。
〈第2実施形態〉
図15は、第2実施形態に係るマスクの平面図である。図16は、図15のXVI−XVI線による断面図であり、図17は、図15のXVII−XVII線による断面図である。本実施形態に係るマスクは、図5及び図6に示した第1実施形態に係るマスクと同様に、補強部が互いに交差する第1の補強体及び第2の補強体を備える場合に、第1の補強体及び第2の補強体の交差部分の強度を高めたものである。
【0084】
なお、第2実施形態に係るマスクの構成のうち、第1実施形態のマスクの構成と同様の箇所には、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。また、本実施形態に係るマスクの製造方法の工程が、第1実施形態のマスクの製造方法の工程と同じである場合には、同一の工程名を付してその詳細な説明を省略する。
【0085】
図15に示すように、マスク本体1には、平行に延在する複数の直線状の細長い貫通孔2が形成されている。補強部3は、それぞれ細長い形状の第1の補強体3hと第2の補強体3iとを備える。第1の補強体3hは貫通孔2の延在する方向と略直交するように配設され、また、第2の補強体3iは、第1の補強体3hの長手方向と略直交し、貫通孔2の延在する方向に沿って貫通孔2の開口を覆うように、配設される。ただし、第2の補強体3iの短手方向の幅は貫通孔2の短手方向の幅より細いので、第2の補強体3iにより貫通孔2の開口の全てが覆われることはない。
【0086】
第2の補強体3iは、平面視で貫通孔2とほぼ重なる領域に、貫通孔2の長手方向に沿って配設してあり、第2の補強体3iは両端部分及び第1の補強体3hとの交差部分によってのみ支持されている。このため、第2の補強体3iの安定性を高めるため、第1の補強体3h及び第2の補強体3iの交差部分の上側(貫通孔2と反対側)に第3の補強体3jが設けてある。第3の補強体3jは、第1の補強体3h及び第2の補強体3iの交差部分の厚さを大きくすることで交差部分を上方へ突出させた態様で設けてあり、これによって第2の補強体3iの安定性を高めている。
【0087】
図18、図19及び図20は、本実施形態に係るマスクの製造工程を示す模式図である。図18は貫通孔及び補強部の凹部を形成する工程を示しており、図19は第1の補強体を形成する工程を示しており、また、図20は第2の補強体及び第3の補強体を形成する工程を示している。なお、本工程ではマスク領域の形成工程は省略してある。
【0088】
図18(a)は、マスク領域形成工程にて形成されたマスク領域の一部を拡大したものである。厚さD1 は、平板状のマスク基材10aの厚さを示す。本実施形態では、厚さD1は約55μmである。
【0089】
まず、第1ガイドパターン形成工程を行う。第1ガイドパターン形成工程では、平板状のマスク基材10aの表面にレジストパターン17の形成を行う。レジストパターン17を形成した後の状態を図18(b)に示す。ここで、レジストパターン17は、エッチングにより貫通孔2及び凹部4を形成するための開口を有する
次いで、第1エッチング工程を行う。第1エッチング工程では、第1ガイドパターン形成工程にて形成されたレジストパターン17に従って、マスク基材10aに異方性エッチングを行い、後に貫通孔2及び凹部4となる溝2aを形成する。エッチング後の状態を図18(c)に示す。このとき行うエッチングの深さDE1は、約40μmであり、マスク基材10aを貫通しない。
【0090】
次いで、第1剥離工程を行う。第1剥離工程では、第1ガイドパターン形成工程にてマスク基材10aの表面に形成されたレジストパターン17の剥離を行う。レジストパターン17を剥離した後の状態を図18(d)に示す。
【0091】
次いで、レジストパターン17を剥離した後のマスク基材10aを反転させる。マスク基材10aを反転させた状態を図19(a)に示す。マスク基材10aを反転させるのは、補強部3を形成するために、マスク基材10aの反対面に対してエッチングを行うためである。
【0092】
次いで、第2ガイドパターン形成工程を行う。第2ガイドパターン形成工程では、反転させたマスク基材10aの表面にレジストパターン18の形成を行う。ここで、レジストパターン18は、補強部3の第1の補強体3hをエッチングにより形成するためのパターンである。レジストパターン18を形成した後の状態を図19(b)に示す。
【0093】
次いで、第2エッチング工程を行う。第2ガイドパターン形成工程にて形成されたレジストパターン18に従って、マスク基材10aに異方性エッチングを行い、第1の補強体3hを形成する。エッチングにより第1の補強体3hを形成した後の状態を図19(c)に示す。このとき行うエッチングの深さDE2は約10μmであり、この段階では溝2aはマスク基材10aを貫通していない。
【0094】
次いで、第2剥離工程を行う。第2剥離工程では、第2ガイドパターン形成工程にて形成したレジストパターン18を剥離する。レジストパターン18を剥離した後の状態を図19(d)に示す。
【0095】
次いで、第3ガイドパターン形成工程を行う。第3ガイドパターン形成工程では、レジストパターン19の形成を行う。ここで、レジストパターン19は、補強部3の第2の補強体3i及び第3の補強体3jを形成するためのパターンである。レジストパターン19を形成した後の状態を図20(a)に示す。レジストパターン19は、既に形成されている第1の補強体3hを跨いで塗布されるが、レジストパターン19が十分な厚みを持つように塗布を行うことで、ガイドパターンが途切れるなどの虞をなくすことができる。また、第1の補強体3h上に形成されたレジストパターン19が、第3の補強体3jを形成するためのパターンとなる。
【0096】
次いで、第3エッチング工程を行う。第3エッチング工程では、第3ガイドパターン形成工程で形成されたレジストパターン19に従って、マスク基材10aに異方性エッチングを行い、補強部3の第2の補強体3i及び第3の補強体3jを形成する。エッチングを行った後の状態を図20(b)に示す。このとき行うエッチングの深さDE3は約10μmであり、第2エッチング工程で行うエッチングの深さDE2と、第1エッチング工程で行うエッチングの深さDE1と、マスク基材10aの厚さD1 との関係は以下の式で表される。このため、第1エッチング工程で形成された溝2aは、第3エッチング工程により貫通して、配線パターンを形成するための貫通孔2となる。
【0097】
DE1+DE2+DE3>D1 ・・・(4)
次いで、第3剥離工程を行う。第3剥離工程では、第3ガイドパターン形成工程にて形成したレジストパターン19を剥離する。レジストパターン19の剥離を行った後の状態を図20(c)に示す。
【0098】
以上の製造工程により、補強部3の第1の補強体3h及び第2の補強体3iの交差部分に第3の補強体3jを形成することができ、第2の補強体3iの安定性を高めることができる。また、第1実施形態と同様に、マスク基材10aの両面からエッチングを行うことで、第1の補強体3h及び第2の補強体3iの貫通孔を覆う部分には、凹部4を形成することができる。
【0099】
なお、第2実施形態に示したマスクの配線パターンは一例であって、これに限るものではなく、例えば、第1実施形態に示した様々な配線パターンに応用することができる。また、第1の補強体3h及び第2の補強体3iの強度が十分に強い場合には、第3の補強体3jを設けなくてもよい。この場合には、第1実施形態に示す第2ガイドパターン形成工程及び第2エッチング工程にて、第1の補強体3h及び第2の補強体3iを同時に形成してもよい。
【0100】
上記実施形態では、補強部は一定の幅を有する棒状の部材で構成されていたが、図21に示すように、補強部203の、平面視でマスク本体1に形成された貫通孔2と重なる部分203aの幅が他の部分203bの幅よりも小さくてもよい。補強部203をこのような形状とすることによって、このマスクを利用して基板上に金属配線をスパッタ法などで形成する際に、基板上の、補強部の影となる領域にもスパッタされた金属が回り込みやすくなる。
【0101】
なお、上記実施形態では、補強部に形成された凹部の断面形状は略矩形であったが、例えば半円形などの任意の形状にし得る。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明に係るマスクの模式的斜視図である。
【図2】図1のII−II線による断面図である。
【図3】本発明に係るマスクの補強部の配設例を示す正面図である。
【図4】本発明に係るマスクの補強部の配設例を示す正面図である。
【図5】本発明に係るマスクの補強部の配設例を示す正面図である。
【図6】本発明に係るマスクの補強部の配設例を示す正面図である。
【図7】本発明に係るマスクの補強部の配設例を示す正面図である。
【図8】本発明に係るマスクの補強部の配設例を示す正面図である。
【図9】本発明に係るマスクの補強部の配設例を示す正面図である。
【図10】本発明に係るマスクの補強部の配設例を示す正面図である。
【図11】図11(a)〜(d)は本発明に係るマスクの製造方法のマスク領域形成工程を示す模式図である。
【図12】図12(a)〜(d)は本発明に係るマスクの製造方法の貫通孔、補強部及び凹部を形成する工程を示す模式図である。
【図13】図13(a)〜(d)は本発明に係るマスクの製造方法の貫通孔、補強部及び凹部を形成する工程を示す模式図である。
【図14】図14(a)〜(e)は本発明に係るマスクを用いて基板上に配線を形成する製造工程を示す模式図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係るマスクの平面図である。
【図16】図15のXVI−XVI線による断面図である。
【図17】図15のXVII−XVII線による断面図である。
【図18】図18(a)〜(d)は本発明の第2実施形態に係るマスクの製造工程を示す模式図である。
【図19】図19(a)〜(d)は本発明の第2実施形態に係るマスクの製造工程を示す模式図である。
【図20】図20(a)〜(c)は本発明の第2実施形態に係るマスクの製造工程を示す模式図である。
【図21】異なる幅を有する補強部を備えるマスクの平面図である。
【符号の説明】
【0103】
1 マスク本体
2 貫通孔
3、30a、30b 補強部
3a、3c、3e、3h 第1の補強体
3b、3d、3f、3i 第2の補強体
3j 第3の補強体
4 凹部
10 ウエハ(マスク基材)
10a マスク基材
11 レジストマスク
15、16、17、18、19 レジストパターン
12 マスク領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な金属配線を蒸着等によって基板上に形成するために、基板上の非配線領域をマスキングするためのマスク及びこのマスクの製造方法に関し、また、マスクを用いて基板上に配線を形成する配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に金属配線を形成するために、基板の表面に金属を成膜及び加工することが行われており、金属を加工する方法にサブトラクティブ法、アディティブ法及びリフトオフ法等がある。サブトラクティブ法は、予め基板表面の全面にスパッタ法などで金属の成膜を行い、配線とする部分にレジストパターンを形成し、不要部分をエッチングなどで除去する方法である。この方法では、形成される配線の精度がエッチングの精度に影響されるため、微細な配線の形成には適用が難しいという欠点がある。アディティブ法は、基板表面の配線の不要部分にレジストパターンを形成し、レジストのない部分にのみ金属の成膜を行う方法である。この方法では、形成される配線の精度はレジストパターンの精度で決まるため、微細な配線を形成することができるが、めっき膜等を成膜する場合は、膜の耐熱性が弱く、信頼性が低いという問題がある。
【0003】
リフトオフ法は、配線の不要部分にレジストパターンを形成し、基板及びレジストの表面の全面にスパッタ法などで金属の成膜を行い、成膜後にレジスト及びレジスト表面の金属膜を剥離して配線を形成する方法である。この方法では、微細な配線を形成することができるだけでなく、耐熱性が高い金属膜をスパッタ法で容易に成膜することができ、サブトラクティブ法の精度及びアディティブ法の膜の耐熱性の問題を共に解決できるが、レジスト及びレジスト表面の金属膜を確実に剥離できるように、断面形状が複雑なレジストパターンを形成する必要があり、製造工程数の増加及び製造コストの増加を招来するという問題がある。
【0004】
一方、配線の形成にレジストを用いず、配線パターンに対応する開口が形成されたマスクを用いるマスク成膜法がある。この方法では、配線部分を開口としたマスクを基板の表面に密着させ、マスク及び基板の表面の全面に金属の成膜を行い、成膜後にマスクを取り外して配線を形成する。形成される配線の精度はマスク精度で決まるため、リフトオフ法と同様に微細な配線を形成でき、スパッタ法等を用いれば耐熱性が高い金属膜を形成することができる。また、マスクの強度が高いものであれば、マスクを再利用することができるため、製造コストを減少させることができるという利点がある。
【0005】
しかし、マスク成膜法では、例えば配線の幅が2μm程度で長さが2mm程度の長い直線状の配線を、複数平行に並べたような配線を形成する場合に、マスクの基板への密着が不安定な状態、例えば平行線の部分に歪みが生じる又はマスクが基板に密着せずに浮き上がった状態となる等の状態となり、形成する配線の幅に誤差が生じる虞があり、誤差の程度によっては配線が断線する又は隣の配線と接触する等の虞があるという問題があった。
【0006】
特許文献1(特開2001−254169号公報)においては、長い直線状の配線を平行に並べた配線パターンを有するマスクにおいて、基板に貼り付ける側の反対側の表面に、複数の配線パターンを跨ぐ微細なリブを設けてマスクを補強することで、平行線の部分に歪みが生じないようにしている。
【0007】
【特許文献1】特開2001−254169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のマスクのように、複数の配線パターンを跨ぐリブを設けた場合には、リブを回り込んで基板の表面に成膜を行わなければならないため、基板の表面とリブとの間の距離が離れていることが望ましい。しかし、基板の表面とリブとの間の距離を離すためには、マスク本体を厚くする必要があり、マスク本体を厚くした場合には成膜が行われにくいため、微細な配線を形成することが難しいという問題がある。
【0009】
また、特許文献1に記載のマスクは、電鋳により金属を析出させてマスクを作成するため、マスク本体が金属製であり、金属配線の形成に用いる場合には、再利用が難しいという問題がある。これは、マスクの表面に成膜された金属膜を剥離する場合に、王水又は硝酸等の強酸溶液により金属膜を剥離するため、マスク本体が溶解する虞があるためであり、マスクの表面に成膜された金属膜を剥離せずに再利用を行う場合には、配線パターンを形成するマスクの開口部分が金属膜により埋まる虞があるためである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、微細な配線を精度よく形成できるマスク、そのようなマスクの製造方法、及びマスクを用いて基板上に配線を形成する配線基板の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の第1の態様に従えば、複数の貫通孔が形成された平板状のマスク本体と、該マスク本体の一面に前記貫通孔を跨いで配設され、前記マスク本体を補強する補強部とを備えるマスクにおいて、前記マスク本体の前記一面と反対側の面と、前記補強部の前記貫通孔に面している面との間の長さが、前記マスク本体の厚さよりも長いマスクが提供される。また、前記補強部は、前記貫通孔の開口を覆う部分に凹部が形成され、前記凹部によって画定される領域は前記貫通孔と連通していてもよい。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、マスク本体に形成された配線パターンをなす貫通孔を跨いで配される補強部を備え、例えば、補強部の貫通孔を覆う部分に凹部を設けることで、凹部によって画定される領域は貫通孔と連通するので、マスク本体を厚くすることなく基板と補強部との間の距離を広げることができる。例えばスパッタ法により基板上に配線を形成する場合、スパッタされる金属は補強部の凹部を回り込んで、基板上の補強部の影となる部分にも堆積できる。このとき、配線が形成される基板と補強部との間の距離は、マスク本体の厚さに関係なく、補強部に形成される凹部の深さによって決定されるので、基板と補強部との間の距離を十分に広げることができる。また、補強部と関係なくマスク本体の厚さを決定することができるため、マスク本体の厚さを薄くすることができ、より微細な配線パターンをマスク本体に形成することができる。よって、マスクの設計の自由度が高くなり、マスクの適用分野を広範囲なものにすることができる。なお、補強部の貫通孔に面している面(補強部の上内面)と、マスク本体の補強部が配置されていない側の面(裏面)との間の長さは、最長になるように定義する。つまり、例えば補強部の上内面が平坦な面ではなく、凹面形状であるような場合には、補強部の上内面の、マスクの裏面から最も遠い地点とマスクの裏面との間の距離を指すものとする。
【0013】
本発明のマスクにおいて、前記凹部は前記貫通孔と重なる領域に渡って形成され、前記凹部の内面及び前記貫通孔によって画定される前記マスク本体の面が連続した面であってもよい。
【0014】
補強部の凹部を、マスク本体の貫通孔と重なる領域の全体に渡って形成し、凹部の内面及び貫通孔の内面が連続した面をなすようにすることで、凹部及び貫通孔を同じ工程で形成することができるため、補強部の凹部を簡単に形成することができる。
【0015】
本発明のマスクにおいて、前記マスク本体及び前記補強部が、シリコン又はシリコンを含む化合物を用いてもよい。
【0016】
マスクをシリコン又はシリコンを含む化合物で製造することで、マスクを用いて基板上に配線の金属膜の形成を行った後、マスク表面に付着した金属膜を王水又は硝酸等で剥離することができ、マスクの再利用が可能となる。従って、レジストパターンによりマスキングを行う場合と比較して、コストを低減することができる。
【0017】
また、本発明に係るマスクは、前記マスク本体及び前記補強部が、一体形成されていてもよい。
【0018】
マスク本体及び補強部を一体的に形成することで、補強部を別体で製作して着接する場合のマスク本体と補強部との位置ずれなどが生じることがないため、より微細で複雑な配線パターンを有するマスクを実現することができる。また、補強部を別体で製作してマスク本体に着接する場合に形成することが難しい補強部の凹部を設けることができる。
【0019】
また、本発明に係るマスクは、前記マスク本体に直線状の貫通孔が複数並設してあり、前記補強部が、複数の前記貫通孔を跨いで配設されていてもよい。
【0020】
マスク本体に直線状の細長い貫通孔を複数並設して配線パターンを形成する場合に、複数の貫通孔を跨いで補強部を配設することで、歪みなどが起こりやすい配線パターンを補強することができるため、形成する配線に断線又はショート等が起こらないようにすることができ、配線の形成工程で発生する不良を低減することができる。
【0021】
本発明のマスクは、前記マスク本体に直線状の貫通孔が複数並設してあり、前記補強部は、複数の前記貫通孔を跨いで配設された第1の補強体と、該第1の補強体と交差するように配設された第2の補強体とを有してもよい。
【0022】
マスク本体に直線状の貫通孔を複数並設して配線パターンを形成する場合に、複数の貫通孔を跨いで第1の補強体を配設し、第1の補強体と交差するように第2の補強体を配設することで、より配線パターンを強固に補強することができるため、形成する直線状の配線に歪みなどが生じて断線又はショート等がより起こらないようにすることができ、配線の形成工程で発生する不良をより低減することができる。
【0023】
本発明のマスクは、前記補強部が細長い形状を有し、前記補強部の前記貫通孔と重なる部分の幅が、前記補強部の前記貫通孔と重ならない部分の幅よりも短くてもよい。この場合には、補強部と貫通孔とが重なる部分が小さくなるので、このマスクを用いて配線を形成する際に、配線の断線などの発生率が低下する。
【0024】
本発明のマスクは、前記マスク本体に屈曲部分を有する折れ線状の貫通孔が複数並設してあり、前記補強部が、複数の前記貫通孔の屈曲部分を跨いで配設されていてもよい。
【0025】
マスク本体に屈曲部分を有する折れ線状の貫通孔を複数並設して配線パターンを形成する場合に、屈曲部分を跨いで補強部を配設することで、折れ線状の配線パターンを効果的に補強することができるため、形成する配線に断線又はショート等がより起こらないようにすることができ、配線の形成工程で発生する不良をより低減することができる。
【0026】
本発明のマスクは、前記マスク本体に形成された貫通孔内に島状部分が設けてあり、前記補強部が、前記貫通孔を跨ぎ、前記マスク本体及び前記島状部分を結んで配設されていてもよい。
【0027】
島状部分を有する貫通孔を配設して配線パターンを形成する場合に、島状部分及びマスク本体を結び、貫通孔を跨いで補強部を配設することで、補強部がない場合には形成不可能な配線パターンをマスクに形成することができるため、基板上に同心円状などの配線を形成できるようになり、配線のレイアウトの自由度が上がり、マスクの適用範囲又は適用分野を広げることができる。
【0028】
本発明のマスクにおいて、第2の補強体は、平面視で前記貫通孔とほぼ重なる領域に配設され、第1の補強体と第2の補強体が交差する部分は、第1の補強体及び第2の補強体の他の部分よりも厚く形成されていてもよい。この場合には、第2の補強体を貫通孔とほぼ重なる領域に配設することができるため、第2の補強体を形成する位置の自由度が大きくなる。
【0029】
本発明の第2の態様に従えば、複数の貫通孔が形成された平板状のマスク本体と、前記貫通孔を跨いで配設され、前記マスク本体を補強する補強部とを備えるマスクの製造方法において、平板状のマスク基材を設ける工程と、前記マスク基材の一面に前記貫通孔を形成するための第1のガイドパターンを形成する第1ガイドパターン形成工程と、前記第1のガイドパターンが形成された面に、前記第1のガイドパターンに従って、前記マスク基材を貫通しないようにエッチングを行う第1エッチング工程と、前記マスク基材の他面に、前記補強部を形成するための第2のガイドパターンを形成する第2ガイドパターン形成工程と、前記他面に、前記第2のガイドパターンに従って前記補強部の形成領域以外にエッチングを行い、前記第1エッチング工程でエッチングを行った部分を貫通させる第2エッチング工程とを備えるマスク製造方法が提供される。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、マスク基材の一面に貫通孔を形成するための第1のガイドパターンを形成し、第1のガイドパターンに従ってエッチングを行い、配線パターンを形成する。更に、マスク基材の他面に補強部を形成するための第2のガイドパターンを形成し、第2のガイドパターンに従ってエッチングを行い、補強部を形成する。マスク基材の両面からエッチングを行うことで、マスク本体に貫通孔を形成し、また、補強部に凹部を形成し、マスク本体及び補強部を一体的に形成する。このように、マスク基材の一面にエッチングを行って配線パターンを形成する第1エッチング工程と、他面にエッチングを行って補強部を形成する第2エッチング工程とを備えることで、補強部に凹部を形成することができるため、マスク本体の厚さに関係なく配線を形成する基板と補強部との距離を広くすることができ、確実に補強部の凹部を回り込んで配線の金属膜が形成できる。また、補強部と関係なくマスク本体の厚さを薄くすることができるため、より微細な配線パターンを形成することができる。
【0031】
本発明のマスク製造方法は、前記第1エッチング工程及び前記第2エッチング工程で行うエッチングの深さの合計が、前記マスク基材の厚さより大きくてもよい。
【0032】
第1エッチング工程で行うエッチングの深さ及び第2エッチング工程で行うエッチングの深さの合計を、マスク基材の厚さより大きくすることで、補強部の凹部の深さは、エッチングの深さの合計とマスク基材の厚さとの差分で簡単に決定することができ、凹部を簡単に形成することができる。
【0033】
本発明のマスク製造方法は、前記第1エッチング工程及び前記第2エッチング工程で行うエッチングが、異方性エッチングであってもよい。
【0034】
第1エッチング工程及び第2エッチング工程で行うエッチングを、異方性エッチングで行うことで、マスクに配線パターンを形成する貫通孔の断面形状を鋭角なものにすることができるため、断面形状が半円状になりやすい等方性エッチングで行う場合に比較して、より高精度に配線パターンを形成することができ、より微細な配線パターンを形成することができる。
【0035】
本発明のマスク製造方法において、第2ガイドパターン形成工程は、前記補強部の第1の補強体を形成するための第1補強体パターンを形成する工程と、前記補強部の第2の補強体を形成するための第2補強体パターンを形成する工程とを備え、第1補強体パターンを形成する工程と第2補強体パターンを形成する工程との間に、前記マスク基材の、第1の補強体パターンが形成された面に、前記第1の補強体パターンに従って、前記マスク基材を貫通しないようにエッチングを行うエッチング工程を備えてもよい。この場合には、複数の補強体を有する補強部を形成することができる。
【0036】
本発明のマスク製造方法において、第1補強体パターンと、第2補強体パターンとが交差していてもよい。この場合には、より強度の高い補強部を形成することができる。
【0037】
本発明のマスク製造方法において、第2ガイドパターン形成工程は、さらに前記補強部の第3の補強体を形成するための第3補強体パターンを形成する工程を備え、第2補強体パターンを形成する工程と第3補強体パターンを形成する工程との間に、前記マスク基材の、第2の補強体パターンが形成された面に、前記第2の補強体パターンに従って、前記マスク基材を貫通しないようにエッチングを行うエッチング工程を備えてもよい。この場合には、第1補強体と第2補強体との接続部を補強する第3補強体を形成することができるので、補強部の強度を高めることができる。
【0038】
本発明のマスク製造方法は、少なくとも前記第2ガイドパターン形成工程を行う以前に、複数の前記貫通孔を形成するためのマスク領域を、マスク基材にエッチングを行うことで形成するマスク領域形成工程を行ってもよい。
【0039】
マスク基材に予めエッチングを行って、配線パターンを形成するためのマスク領域を形成しておくマスク領域形成工程を備えることで、マスク基材の厚さを予め調節することができる。そのため、両面に行うエッチングが行いやすくなり、貫通孔及び補強部の凹部を精度よく形成することができる。
【0040】
本発明の第3の態様に従えば、複数の貫通孔が形成された平板状のマスク本体と、該マスク本体の一面に前記貫通孔を跨いで配設され、前記マスク本体を補強する補強部とを備え、前記マスク本体の前記一面と反対側の面と、前記補強部の前記貫通孔に面している面との間の長さが、前記マスク本体の厚さよりも長いマスクを用いて、基板上に配線を形成する配線基板の製造方法において、前記マスクの他面が前記基板と対向するように前記マスクを位置決めする位置決め工程と、前記一面側から前記基板へ向けて、配線を形成するための材料粒子を飛翔させ、前記基板に配線を形成する配線形成工程とを備える配線基板の製造方法が提供される。
【0041】
貫通孔を覆う部分に例えば、貫通孔と連通する領域を画成する凹部を有する補強部が設けられたマスクを使用して、補強部が設けられた面の反対面が基板と対向するようにマスクの位置を決め、補強部が設けられた面の側から配線を形成するための材料粒子を、例えばスパッタ法により飛翔させて基板上に堆積させる。この場合、マスクの補強部には凹部が形成されており、基板の、補強部の影になった部分にも材料粒子が回り込むため、基板上に配線を精度よく形成できる。
【0042】
本発明の配線基板の製造方法は、前記マスクの表面に堆積した材料粒子を除去する除去工程を備えてもよい。
【0043】
この場合は、基板上に配線を形成した後、マスクの表面に堆積した材料粒子を除去することで、マスクの貫通孔が材料粒子により閉塞されることがなく、マスクを再利用することが可能であるため、配線基板の製造コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
【0045】
〈第1実施形態〉
図1は、本発明に係るマスクの模式的斜視図であり、図2は、図1のII−II線による断面図である。図において1は平板状のマスク本体であり、マスク本体1には基板101に形成すべき金属配線102の配線パターンに対応した複数の細長い貫通孔2が形成されている。
【0046】
複数の細長い貫通孔2の一部分は、直線状をなして互いに略平行に配設してある。マスク本体1の上面1Uには、複数の角棒状の補強部3が、貫通孔2の略平行に配された部分と交差し、且つ、それぞれの部分を跨ぐように、一定の間隔で設けられている。補強部3を設けることにより、貫通孔2の幅などに歪みが生じることを防止している。補強部3の貫通孔2を跨ぐ部分、つまり、マスク本体1の、貫通孔2が形成されている領域と対向する部分には、略矩形状の凹部4が形成されており、補強部3の形状はアーチ状となっている。即ち、凹部4は、その内部空間が貫通孔2の内部空間と連通するように形成されている。また、凹部4の内面及び貫通孔2の内面は連続した面をなすように形成されている。凹部4を設けることで、マスク本体1の下面1Lの貫通孔2の開口部分と補強部3との間隔を広げることができ、スパッタ法などによって金属配線の形成を行う場合に、スパッタされた金属粒子は補強部3を回り込みやすくなる。
【0047】
マスク本体1の厚さは約25μmである。このようにマスク本体1が薄い場合には、マスク本体1に歪みが生じ易く、又はマスク本体1が基板101に密着せずに浮き上がった状態となり易い。そのため、基板101に形成される金属配線102に断線又はショート等が発生する虞がある。この現象は、貫通孔2の幅及び隣り合う貫通孔2の間隔に対して貫通孔の長さが長くなるほど発生しやすい。例えば、貫通孔2の幅及び隣り合う貫通孔2の間隔が約10μmの場合、貫通孔2の長さが約2mm以上で上記不具合が発生することが経験的に認められる。このため、並設された直線状の貫通孔2には、約2mm以内の間隔で補強部3を設けて、貫通孔2の補強を行うこととした。
【0048】
補強部3の厚さは約25μmであり、凹部4の深さは約15μmである、また、マスク本体1の厚さは約25μmであるので、マスク本体1の下面と補強部3の貫通孔2を覆う部分との間の距離は約40μmである。補強部3に凹部4が形成されていない場合は、マスク本体1の下面と補強部3との距離は約25μmであるので、凹部4を形成することで距離を約60%広げることができる。なお、貫通孔2の幅がより狭い場合には、補強部3の厚さを増して、凹部4をより深く形成することで、マスク本体1の下面1Lと補強部3の凹部表面4aとの距離を広げることが望ましい。このマスクを用いて基板上にスパッタ法などで金属配線を形成する場合には、マスク本体1の下面1Lと補強部3の凹部表面4aとの距離を広げることによって、スパッタされた金属粒子が、基板101上の、平面視で補強部3の貫通孔2を覆う部分と重なる領域、すなわち、基板101上の補強部3の影となる領域に、より回り込みやすくなる。
【0049】
また、マスク本体1及び補強部3はマスク基材から一体的に形成されており、マスク基材にはシリコン又はシリコンを含む化合物等が用いられる。シリコンを含む化合物には、例えばSiC又はSiN等がある。シリコン又はシリコンを含む化合物等を用いることで、マスク本体1及び補強部3は、王水又は硝酸等の強酸溶液により溶解する虞がない。
【0050】
以上の構成のマスク本体1を用いて、スパッタ法により基板101の表面に金属配線102を形成する場合には、基板101の表面の金属配線102が形成される箇所に貫通孔2を位置決めした状態で、マスク本体1の下面を基板101の表面に密着させる。マスク本体1には、直線状の貫通孔2と交差するように補強部3が設けられているため、基板101にマスクを密着させる場合に生じるマスクの歪みをなくすことができ、また、マスクを基板101により密着させることができる。また、補強部3に凹部4を形成することにより、基板101の、補強部3の影となる領域にも金属粒子が回り込むため、形成される配線102が補強部3によって破断することは極力回避される。
【0051】
一般に、金属配線102は、マスク本体1の厚さが薄いほど精度よく形成することができる。また、金属粒子の補強部3における回り込みは、補強部3の凹部表面4aとマスク本体1の下面1Lとの距離が離れているほど効率よく行われる。このため、マスク強度の許容範囲内で、できるだけマスク本体1の厚さを薄くし、且つ、補強部3の凹部表面4aとマスク本体1の下面1Lとの距離を離すように、凹部4の深さを設定することが望ましい。
【0052】
また、マスクはシリコン又はシリコンを含む化合物によって形成されるため、基板101に金属配線102を形成した後、マスク表面に付着した金属粒子による膜をウエットエッチング処理により除去することが可能である。例えば金属粒子が白金である場合には王水を用い、金属粒子が金である場合には王水又はヨウ化アンモン系の溶液を用い、金属粒子が銀である場合には硝酸系の溶液を用いて、これらの金属粒子を除去することができる。
【0053】
補強部3は、複数並設された直線状の貫通孔2に交差するように設けるだけでなく、他の構成とすることもできる。図3乃至図10は、本発明に係るマスクの補強部3の配設例を示す正面図である。
【0054】
図3に示す配設例では、8つの直線状の細長の貫通孔2が並設されている場合に、一定の間隔を隔てて配置されている複数の直線状の補強部3は、8つの貫通孔2のそれぞれに跨って、貫通孔2が延在する方向と直交するように並設されている。
【0055】
図4に示す配設例では、8つの直線状の細長の貫通孔2a〜2hは、各貫通孔が延在する方向(長手方向)と直交する短手方向に、間隔を隔ててほぼ平行に配設されている。さらに、複数の補強部3aが、各貫通孔の短手方向の一方側(図4の上側)の4つの貫通孔2a〜2dのそれぞれに跨って、各貫通孔の短手方向にほぼ平行に設けられている。同様に、複数の補強部3bが、各貫通孔の短手方向の他方側(図4の下側)の4つの貫通孔2e〜2hのそれぞれに跨って、各貫通孔の短手方向にほぼ平行に設けられている。複数の補強部3a,3bは、各貫通孔の長手方向に一定の間隔で交互に配置されている。この場合、図3に示すものと比較して、補強部3a,3bが各貫通孔を跨ぐ部分が少なくなるため、金属配線を形成する際に破断が生じやすい箇所が減り、配線形成の信頼性が向上するという利点がある。
【0056】
図5に示す配設例は、図4に示す配設例の補強部3a,3bの補強強度を高めたものである。貫通孔2a〜2hの配置は図4と同様である。図5に示す補強部は、第1の補強体3cと第2の補強体3dとを備える。第1の補強体3cは、貫通孔2a〜2d又は貫通孔2e〜2hに跨って、各貫通孔が延在する方向と直交する方向に配設される。第2の補強体3dは、マスク本体1の、2つの貫通孔2bと2c(又は貫通孔2fと2g)によって画成される領域1Dに、各貫通孔の延在する方向に沿って形成された壁部であり、各貫通孔の延在する方向に隣接する2つの第1の補強体3cを互いに連結している。このように、二方向から補強を行うことによって、補強部の補強強度を高めている。
【0057】
図6に示す配設例では、図4、5と同じく8つの直線状の貫通孔2a〜2hが並設されている。補強部3は、8つの貫通孔2a〜2hをそれぞれを跨いで、各貫通孔が延在する方向と約45度の角度をもって延在する第1の補強体3eと、同じく8つの貫通孔2a〜2hをそれぞれを跨いで延在し、且つ、第1の補強体3eと同一平面上で直交する第2の補強体3fとを備え、二方向から補強を行っている。
【0058】
図7に示す配設例では、屈曲部分を有する折れ線状の9つの貫通孔2が並設されている。すなわち、各貫通孔は、水平方向に延在する部分と垂直方向に延在する部分とが屈曲部分において交差している。各貫通孔の屈曲部分は、水平方向に対して約45度の角度をなす方向沿って一列に並んでおり、補強部3gは、この方向に沿って各貫通孔の屈曲部分をそれぞれ跨ぐように設けられている。これにより、歪みが最も生じやすい、配線パターンの屈曲部分を確実に補強することができる。
【0059】
図8及び図9には、貫通孔2内に島状部分を有する場合の補強部3の配設例が示されている。ここで、島状部分とは、補強部を除いた場合に、全周囲が貫通孔により画成されている部分のことである。図8には、2つの大きさの異なる矩形状の配線を同心で形成するためのマスクの例が示されている。図8では、マスク本体1は、略矩形の形状の第1の島状部分84aと、第2の島状部分84bと、マスク外周部分84cと、補強部3とを備える。第2の島状部分84bは、第1の島状部分84aの周囲に一定の幅で形成された、平面視で略矩形枠の形状の貫通孔82aと、貫通孔82aと同心であって且つ一回り大きな略矩形枠の形状に形成された貫通孔82bとによって画成される。マスク外周部分84cは、第2の島状部分84bの外側に貫通孔82bを隔てて配置されている。補強部3は、第1の島状部分84a及び第2の島状部分84bの対角線方向に沿って四隅に1つづつ配置されている。各補強部3は、第1の島状部分84aの角部、第2の島状部分84bの角部及びマスク外周部分84cを結んで固定しており、貫通孔84a、84bをそれぞれを跨いで配設されている。このように、補強部3のないマスクでは実現不可能である島状部分を有するマスクを用いて配線パターンを形成できる。
【0060】
図9に示すマスクでは、マスク外周部分94aに形成された大きな矩形状の貫通孔2の内部に、25個の円形の島状部分94bが並設されている。島状部分94bは、5行5列のマトリクス状に配置されており、マトリクスの行方向及び列方向は、貫通孔2の外周の形状である矩形の横方向及び縦方向にそれぞれ平行である。島状部分94bは、各行及び各列において、直線状の補強部3によって連結されてマスク外周部分94aに固定されている。
【0061】
図10には、実際の配線に近い形状の配線パターンを形成するためのマスクの配設例が示されている。図3及び図7に示したマスクの配設例を組み合わせたものである。マスク本体1には、3つの平面視略矩形状の貫通孔20cが形成され、それぞれの貫通孔20cの一辺の略中央から貫通孔の外側に向かって直線状に延びる細長の貫通孔20aが形成されている。ここで、3つの貫通孔20aは、ほぼ平行に形成されている。3つの貫通孔20cは、貫通孔20aが延在する長手方向と直交する短手方向には一定の間隔を隔てて形成されており、長手方向には、中央の貫通孔20cが両端の2つの貫通孔20cよりも貫通孔20aが延びる向きにずれて配置されている。両端の貫通孔20cの間には、貫通孔20aの長手方向に延在する6本の細長い貫通孔20bが形成されている。貫通孔20bは、中央の貫通孔20cと交差することを回避するために、貫通孔20aの短手方向両側の3本ずつが、それぞれ貫通孔20aの短手方向両側に向かって屈曲し、さらに中央の貫通孔20cの外側で貫通孔20aの長手方向に向かって屈曲するように形成されている。つまり、6つの細長い貫通孔20bは、3本づつの2つのグループに分かれて中央の貫通孔20cを避けつつ、貫通孔20aの長手方向に延在している。平行に延びる複数の細長い貫通孔20bが形成されている部分には、図3で示した例と同様に、貫通孔20bの延在方向と直交する補強部30aが、複数の貫通孔20bそれぞれを跨いで配設されている。また、複数の貫通孔20bの屈曲部分が並設されている部分には、図7で示した例と同様に、屈曲部分それぞれを跨ぐ補強部30bが配設されている。
【0062】
次に、上述のマスクを製造するための製造方法について説明する。図11は、本発明に係るマスクの製造方法のマスク領域形成工程を示す模式図であり、図11においては、上から下へ順番に製造工程でのマスクの状態を時系列で示しており、また、図の左側にマスクの断面図を、右側に断面図に対応する平面図を示してある。
【0063】
図11(a)に加工前のウエハ10を示す。本実施形態では、本発明に係るマスクは円板状の4インチのシリコン製ウエハ10から製造される。ウエハ10の厚さD0は約500μmである。本発明のマスクは、ウエハ10に一辺が略10mmの略正方形状で、厚さが略50μmの領域(マスク領域)を44個形成し、該領域に複数の貫通孔を穿設することで形成される。以下、マスクの製造方法について詳述する。
【0064】
まず、ウエハ10の全面にレジストを塗布する。次に44個のマスク領域に対応した開口を有する露光用のマスクを介してレジストを露光し、その後、現像によりレジストの露光された部分を除去する。これにより、一辺の長さWR0が約10mmの略正方形状の開口を44個有するレジストマスク11が形成される。レジストマスク11が形成された後の状態を図11(b)に示す。具体的には、化薬マイクロケム製のレジストSU−8を、ミカサ製のスピンコータIH−DX2を用いてウエハ10の全面に塗布し、ウシオ製の露光機SE−571を用いて露光した後、酢酸2−プロピル系の現像液を用いて現像することで形成する。典型的には、形成されるレジストマスク11の厚さDR0は約40μmである。
【0065】
次いで、レジストマスク11が塗布されたウエハ10にエッチングを行う。エッチングは異方性エッチングであり、例えば、STS製のエッチング装置MULTIPLEX−ASE−HRMを用い、BoschプロセスにてSF6 ガス及びC4 F8 ガスで交互に処理することで行われる。エッチング後の状態を図11(c)に示す。このときのエッチングの条件は、速度5μm/min、選択比50:1、アスペクト比30:1である。また、エッチングの深さDE0は約450μmである。
【0066】
次いで、ウエハ10の表面に形成されていたレジストマスク11の剥離を行う。レジストマスク11の剥離は、例えば、アルキルベンゼン系の剥離液を用いて行う。レジストマスク11の剥離後の状態を図11(d)に示す。レジストマスク11の剥離を行うと、マスク領域の形成工程は終了し、ウエハ10に44個のマスク領域12が形成される。各マスク領域12は、一辺の長さが約10mmの正方形状で、厚さD1が約50μmの平板状である。
【0067】
図12及び図13は、本発明に係るマスクの製造方法の貫通孔2、補強部3及び凹部4を形成する工程を示す模式図である。図12及び図13では、製造工程でのマスクの状態を上から下へ順に時系列で示しており、また、図の左側にマスクの断面図を、右側に断面図に対応する平面図を示している。また、図12及び図13は、図11のマスク領域12の1つを拡大して示している。マスク領域12には、平行に配設された直線状の細長い貫通孔2と、全ての貫通孔2を跨ぎ、且つ、貫通孔2の延在する方向と直交する補強部3が形成される。これは図3に示した貫通孔2及び補強部3の配設例に対応するものである。
【0068】
図12(a)は、図11(a)〜(d)を参照して説明したマスク領域形成工程で形成したマスク領域12の一部を拡大したものである。平板状のマスク基材10aの厚さD1は約50μmである。
【0069】
まず、第1ガイドパターン形成工程を行う。第1ガイドパターン形成工程では、平板状のマスク基材10aの表面に、貫通孔2及び凹部4をエッチングにより形成するための開口を有するレジストパターン(第1ガイドパターン)15の形成を行う。レジストパターン15を形成した後の状態を図12(b)に示す。なお、レジストパターン15の塗布は図11(b)に示す工程で用いたものと同様の機器を用いて行う。
【0070】
次いで、第1エッチング工程を行う。第1エッチング工程では、第1ガイドパターン形成工程で形成したレジストパターン15に従って、マスク基材10aの一面(表面)に異方性エッチングを行って溝2aを形成する。これらの溝2aは、後に貫通孔2及び凹部4となる。エッチング後の状態を図12(c)に示す。エッチングの深さDE1は、約40μmであるので、マスク基材10aを貫通しない。なお、エッチングは図11(c)に示す工程で用いたものと同様の機器を用いて行う。
【0071】
次いで、第1剥離工程を行う。第1剥離工程では、第1ガイドパターン形成工程でマスク基材10aの表面に形成されたレジストパターン15の剥離を行う。レジストパターン15を剥離した後の状態を図12(d)に示す。なお、レジストパターン15の剥離は図11(d)に示す工程と同様の方法で行う。
【0072】
次いで、レジストパターン15を剥離した後のマスク基材10aを反転させる。マスク基材10aを反転させた状態を図13(a)に示す。マスク基材10aを反転させるのは、補強部3を形成するために、マスク基材10aの反対面(裏面)に対してエッチングを行うためである。
【0073】
次いで、第2ガイドパターン形成工程を行う。第2ガイドパターン形成工程では、反転させたマスク基材10aの表面に、エッチングにより補強部3を形成するためのパターンであるレジストパターン(第2ガイドパターン)16の形成を行う。レジストパターン16を形成した後の状態を図13(b)に示す。なお、レジストパターン16の形成は図11(b)に示す工程で用いたものと同様の機器を用いて行う。
【0074】
次いで、第2エッチング工程を行う。第2ガイドパターン形成工程にて形成されたレジストパターン16に従って、マスク基材10aに異方性エッチングを行い、補強部3を形成する。エッチングにより補強部3を形成した後の状態を図13(c)に示す。このとき行うエッチングの深さDE2は約25μmであり、第2エッチング工程で行うエッチングの深さDE2と、第1エッチング工程で行うエッチングの深さDE1と、(e)でのマスク基材10aの厚さD1との関係は、以下に示す式で表される。
【0075】
DE1+DE2>D1 ・・・(1)
このため、第1エッチング工程で形成された溝は、第2エッチング工程によりマスク基材10aの裏面からエッチングされることによって貫通孔となる。なお、エッチングは図11(c)に示す工程で用いたものと同様の機器を用いて行う。
【0076】
次いで、第2剥離工程を行う。第2剥離工程では、第2ガイドパターン形成工程にて形成したレジストパターン16を剥離する。レジストパターン16を剥離した後の状態を図13(d)に示す。なお、レジストパターン16の剥離は図11(d)に示す工程と同様の方法で行う。
【0077】
以上の製造工程により、補強部3及び凹部4を有し、貫通孔2が形成されたマスクを製造することができる。マスク本体1の厚さDM1は、マスク基材10aの厚さD1 及び第2エッチング工程でのエッチングの深さDE2で決まり、これらの間には以下の式(2)で表される関係がある。また、凹部4の深さDM4は、マスク基材10aの厚さD1 、第1エッチング工程でのエッチングの深さDE1及び第2エッチング工程でのエッチングの深さDE2で決まり、これらの間には以下の式(3)で表される関係がある。本実施形態では、マスク本体1の厚さDM1は約25μmであり、凹部4の深さDM4は約15μmである。また、マスク本体1の下面と補強部3の貫通孔2を覆う部分との距離は、第1エッチング工程でのエッチングの深さDE1に等しい。
【0078】
DM1=D1 −DE2 ・・・(2)
DM4=(DE1+DE2)−D1 ・・・(3)
マスク基材10aを両面からエッチングすることで、補強部3の貫通孔2を覆う部分に凹部4を有するマスクを製造することができ、マスク本体1の厚さDM1は第2エッチング工程でのエッチングの深さで決定でき、補強部3とマスク本体1の下面との距離は第1エッチング工程でのエッチングの深さで決定できる。このため、マスク強度の許容範囲内で、マスク本体1の厚さは薄く、補強部3とマスク本体1の下面との距離を離すように、マスクを形成することができる。
【0079】
図14は、本発明に係るマスクを用いて基板上に配線を形成する製造工程を示す模式図である。なお、図14においては、製造工程でのマスク及び基板の状態を(a)からEへ順に時系列で示している。
【0080】
まず、マスクを基板101に対して位置決めする。マスクの位置決めを行った後の状態を図14(a)に示す。マスクは、マスク本体1の補強部3が設けられていない側の面が基板101に対向するように、基板101に密着させて又は基板101と一定の間隔を開けて配される。
【0081】
次いで、基板101に配線を形成するために、マスクの補強部3が設けられている面(上面)側から、例えばスパッタ法によって白金又は金等の金属粒子103を飛翔させ基板101上に堆積させる。金属粒子103を堆積させる様子を図14(b)に示し、金属粒子103の堆積を終えた状態を図14(c)に示す。金属粒子103を堆積させると、基板101上に堆積した金属粒子103が金属配線を形成し、配線基板の形成が完了する。このとき、マスク本体1及び補強部3の上面に金属粒子103が付着して金属膜104をなす。
【0082】
次いで、金属膜104の除去工程を行う。除去工程では、王水又は硝酸等の強酸溶液を用いて金属膜104を溶解して剥離する。金属膜104の除去の様子を図14(d)に示し、金属膜104を除去した後のマスクの状態を図14(e)に示す。金属膜104を除去することでマスクを再利用することが可能となる。
【0083】
なお、本実施の形態において、直線状又は折れ線状等の配線パターンを形成するためのマスクの例を数種類示したが、これに限るものではなく、例えば湾曲した配線が複数並設してある配線パターンなど、その他の形状であってもよい。また、マスクの製造工程において第2ガイドパターン形成工程の前にマスク基材10aを反転させるとしたが、反転させなくてもよい。また、本実施の形態で示したマスクの寸法及び加工寸法等は一例であって、これに限定するものではない。また、本実施の形態のマスクの製造工程で示した各工程で用いる製造用の機器、レジスト及び剥離剤等の種類は一例であって、これに限定するものではない。また、本実施の形態のマスク製造工程で行うエッチングの条件は一例であって、これに限定するものではない。さらに、金属粒子103を用いた堆積法(成膜法)は上記スパッタ法に限ることなく、真空蒸着法等の一般的な成膜法を用いることもできる。但し、成膜された膜の付着力が強い点や膜厚制御等の簡便さから、上記実施形態ではスパッタ法を用いている。
〈第2実施形態〉
図15は、第2実施形態に係るマスクの平面図である。図16は、図15のXVI−XVI線による断面図であり、図17は、図15のXVII−XVII線による断面図である。本実施形態に係るマスクは、図5及び図6に示した第1実施形態に係るマスクと同様に、補強部が互いに交差する第1の補強体及び第2の補強体を備える場合に、第1の補強体及び第2の補強体の交差部分の強度を高めたものである。
【0084】
なお、第2実施形態に係るマスクの構成のうち、第1実施形態のマスクの構成と同様の箇所には、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。また、本実施形態に係るマスクの製造方法の工程が、第1実施形態のマスクの製造方法の工程と同じである場合には、同一の工程名を付してその詳細な説明を省略する。
【0085】
図15に示すように、マスク本体1には、平行に延在する複数の直線状の細長い貫通孔2が形成されている。補強部3は、それぞれ細長い形状の第1の補強体3hと第2の補強体3iとを備える。第1の補強体3hは貫通孔2の延在する方向と略直交するように配設され、また、第2の補強体3iは、第1の補強体3hの長手方向と略直交し、貫通孔2の延在する方向に沿って貫通孔2の開口を覆うように、配設される。ただし、第2の補強体3iの短手方向の幅は貫通孔2の短手方向の幅より細いので、第2の補強体3iにより貫通孔2の開口の全てが覆われることはない。
【0086】
第2の補強体3iは、平面視で貫通孔2とほぼ重なる領域に、貫通孔2の長手方向に沿って配設してあり、第2の補強体3iは両端部分及び第1の補強体3hとの交差部分によってのみ支持されている。このため、第2の補強体3iの安定性を高めるため、第1の補強体3h及び第2の補強体3iの交差部分の上側(貫通孔2と反対側)に第3の補強体3jが設けてある。第3の補強体3jは、第1の補強体3h及び第2の補強体3iの交差部分の厚さを大きくすることで交差部分を上方へ突出させた態様で設けてあり、これによって第2の補強体3iの安定性を高めている。
【0087】
図18、図19及び図20は、本実施形態に係るマスクの製造工程を示す模式図である。図18は貫通孔及び補強部の凹部を形成する工程を示しており、図19は第1の補強体を形成する工程を示しており、また、図20は第2の補強体及び第3の補強体を形成する工程を示している。なお、本工程ではマスク領域の形成工程は省略してある。
【0088】
図18(a)は、マスク領域形成工程にて形成されたマスク領域の一部を拡大したものである。厚さD1 は、平板状のマスク基材10aの厚さを示す。本実施形態では、厚さD1は約55μmである。
【0089】
まず、第1ガイドパターン形成工程を行う。第1ガイドパターン形成工程では、平板状のマスク基材10aの表面にレジストパターン17の形成を行う。レジストパターン17を形成した後の状態を図18(b)に示す。ここで、レジストパターン17は、エッチングにより貫通孔2及び凹部4を形成するための開口を有する
次いで、第1エッチング工程を行う。第1エッチング工程では、第1ガイドパターン形成工程にて形成されたレジストパターン17に従って、マスク基材10aに異方性エッチングを行い、後に貫通孔2及び凹部4となる溝2aを形成する。エッチング後の状態を図18(c)に示す。このとき行うエッチングの深さDE1は、約40μmであり、マスク基材10aを貫通しない。
【0090】
次いで、第1剥離工程を行う。第1剥離工程では、第1ガイドパターン形成工程にてマスク基材10aの表面に形成されたレジストパターン17の剥離を行う。レジストパターン17を剥離した後の状態を図18(d)に示す。
【0091】
次いで、レジストパターン17を剥離した後のマスク基材10aを反転させる。マスク基材10aを反転させた状態を図19(a)に示す。マスク基材10aを反転させるのは、補強部3を形成するために、マスク基材10aの反対面に対してエッチングを行うためである。
【0092】
次いで、第2ガイドパターン形成工程を行う。第2ガイドパターン形成工程では、反転させたマスク基材10aの表面にレジストパターン18の形成を行う。ここで、レジストパターン18は、補強部3の第1の補強体3hをエッチングにより形成するためのパターンである。レジストパターン18を形成した後の状態を図19(b)に示す。
【0093】
次いで、第2エッチング工程を行う。第2ガイドパターン形成工程にて形成されたレジストパターン18に従って、マスク基材10aに異方性エッチングを行い、第1の補強体3hを形成する。エッチングにより第1の補強体3hを形成した後の状態を図19(c)に示す。このとき行うエッチングの深さDE2は約10μmであり、この段階では溝2aはマスク基材10aを貫通していない。
【0094】
次いで、第2剥離工程を行う。第2剥離工程では、第2ガイドパターン形成工程にて形成したレジストパターン18を剥離する。レジストパターン18を剥離した後の状態を図19(d)に示す。
【0095】
次いで、第3ガイドパターン形成工程を行う。第3ガイドパターン形成工程では、レジストパターン19の形成を行う。ここで、レジストパターン19は、補強部3の第2の補強体3i及び第3の補強体3jを形成するためのパターンである。レジストパターン19を形成した後の状態を図20(a)に示す。レジストパターン19は、既に形成されている第1の補強体3hを跨いで塗布されるが、レジストパターン19が十分な厚みを持つように塗布を行うことで、ガイドパターンが途切れるなどの虞をなくすことができる。また、第1の補強体3h上に形成されたレジストパターン19が、第3の補強体3jを形成するためのパターンとなる。
【0096】
次いで、第3エッチング工程を行う。第3エッチング工程では、第3ガイドパターン形成工程で形成されたレジストパターン19に従って、マスク基材10aに異方性エッチングを行い、補強部3の第2の補強体3i及び第3の補強体3jを形成する。エッチングを行った後の状態を図20(b)に示す。このとき行うエッチングの深さDE3は約10μmであり、第2エッチング工程で行うエッチングの深さDE2と、第1エッチング工程で行うエッチングの深さDE1と、マスク基材10aの厚さD1 との関係は以下の式で表される。このため、第1エッチング工程で形成された溝2aは、第3エッチング工程により貫通して、配線パターンを形成するための貫通孔2となる。
【0097】
DE1+DE2+DE3>D1 ・・・(4)
次いで、第3剥離工程を行う。第3剥離工程では、第3ガイドパターン形成工程にて形成したレジストパターン19を剥離する。レジストパターン19の剥離を行った後の状態を図20(c)に示す。
【0098】
以上の製造工程により、補強部3の第1の補強体3h及び第2の補強体3iの交差部分に第3の補強体3jを形成することができ、第2の補強体3iの安定性を高めることができる。また、第1実施形態と同様に、マスク基材10aの両面からエッチングを行うことで、第1の補強体3h及び第2の補強体3iの貫通孔を覆う部分には、凹部4を形成することができる。
【0099】
なお、第2実施形態に示したマスクの配線パターンは一例であって、これに限るものではなく、例えば、第1実施形態に示した様々な配線パターンに応用することができる。また、第1の補強体3h及び第2の補強体3iの強度が十分に強い場合には、第3の補強体3jを設けなくてもよい。この場合には、第1実施形態に示す第2ガイドパターン形成工程及び第2エッチング工程にて、第1の補強体3h及び第2の補強体3iを同時に形成してもよい。
【0100】
上記実施形態では、補強部は一定の幅を有する棒状の部材で構成されていたが、図21に示すように、補強部203の、平面視でマスク本体1に形成された貫通孔2と重なる部分203aの幅が他の部分203bの幅よりも小さくてもよい。補強部203をこのような形状とすることによって、このマスクを利用して基板上に金属配線をスパッタ法などで形成する際に、基板上の、補強部の影となる領域にもスパッタされた金属が回り込みやすくなる。
【0101】
なお、上記実施形態では、補強部に形成された凹部の断面形状は略矩形であったが、例えば半円形などの任意の形状にし得る。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明に係るマスクの模式的斜視図である。
【図2】図1のII−II線による断面図である。
【図3】本発明に係るマスクの補強部の配設例を示す正面図である。
【図4】本発明に係るマスクの補強部の配設例を示す正面図である。
【図5】本発明に係るマスクの補強部の配設例を示す正面図である。
【図6】本発明に係るマスクの補強部の配設例を示す正面図である。
【図7】本発明に係るマスクの補強部の配設例を示す正面図である。
【図8】本発明に係るマスクの補強部の配設例を示す正面図である。
【図9】本発明に係るマスクの補強部の配設例を示す正面図である。
【図10】本発明に係るマスクの補強部の配設例を示す正面図である。
【図11】図11(a)〜(d)は本発明に係るマスクの製造方法のマスク領域形成工程を示す模式図である。
【図12】図12(a)〜(d)は本発明に係るマスクの製造方法の貫通孔、補強部及び凹部を形成する工程を示す模式図である。
【図13】図13(a)〜(d)は本発明に係るマスクの製造方法の貫通孔、補強部及び凹部を形成する工程を示す模式図である。
【図14】図14(a)〜(e)は本発明に係るマスクを用いて基板上に配線を形成する製造工程を示す模式図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係るマスクの平面図である。
【図16】図15のXVI−XVI線による断面図である。
【図17】図15のXVII−XVII線による断面図である。
【図18】図18(a)〜(d)は本発明の第2実施形態に係るマスクの製造工程を示す模式図である。
【図19】図19(a)〜(d)は本発明の第2実施形態に係るマスクの製造工程を示す模式図である。
【図20】図20(a)〜(c)は本発明の第2実施形態に係るマスクの製造工程を示す模式図である。
【図21】異なる幅を有する補強部を備えるマスクの平面図である。
【符号の説明】
【0103】
1 マスク本体
2 貫通孔
3、30a、30b 補強部
3a、3c、3e、3h 第1の補強体
3b、3d、3f、3i 第2の補強体
3j 第3の補強体
4 凹部
10 ウエハ(マスク基材)
10a マスク基材
11 レジストマスク
15、16、17、18、19 レジストパターン
12 マスク領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔が形成された平板状のマスク本体と、該マスク本体の一面に前記貫通孔を跨いで配設され、前記マスク本体を補強する補強部とを備えるマスクにおいて、
前記マスク本体の前記一面と反対側の面と、前記補強部の前記貫通孔に面している面との間の長さが、前記マスク本体の厚さよりも長いことを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記補強部は、前記貫通孔の開口を覆う部分に凹部が形成され、前記凹部によって画定される領域は前記貫通孔と連通していることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記凹部は前記貫通孔と重なる領域に渡って形成され、前記凹部の内面及び前記貫通孔によって画定される前記マスク本体の面が連続した面であることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項4】
前記マスク本体及び前記補強部は、シリコン又はシリコンを含む化合物を用いてなることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項5】
前記マスク本体及び前記補強部は、一体形成してあることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項6】
前記マスク本体に複数の直線状の貫通孔が並設してあり、
前記補強部が、複数の前記貫通孔を跨いで配設してあることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項7】
前記マスク本体に直線状の貫通孔が複数並設してあり、
前記補強部は、複数の前記貫通孔を跨いで配設された第1の補強体と、該第1の補強体と交差するように配設された第2の補強体とを有することを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項8】
前記マスク本体に屈曲部分を有する折れ線状の貫通孔が複数並設してあり、
前記補強部が、複数の前記貫通孔の屈曲部分を跨いで配設してあることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項9】
前記補強部が細長い形状を有し、前記補強部の前記貫通孔と重なる部分の幅が、前記補強部の前記貫通孔と重ならない部分の幅よりも短いことを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項10】
前記マスク本体に形成された貫通孔内に島状部分が設けてあり、
前記補強部が、前記貫通孔を跨ぎ、前記マスク本体及び前記島状部分を結んで配設してあることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項11】
第2の補強体は、平面視で前記貫通孔とほぼ重なる領域に配設され、第1の補強体と第2の補強体が交差する部分は、第1の補強体及び第2の補強体の他の部分よりも厚く形成されていることを特徴とする請求項7に記載のマスク。
【請求項12】
複数の貫通孔が形成された平板状のマスク本体と、前記貫通孔を跨いで配設され、前記マスク本体を補強する補強部とを備えるマスクの製造方法において、
平板状のマスク基材を設ける工程と、
前記マスク基材の一面に前記貫通孔を形成するための第1のガイドパターンを形成する第1ガイドパターン形成工程と、
前記第1のガイドパターンが形成された面に、前記第1のガイドパターンに従って、前記マスク基材を貫通しないようにエッチングを行う第1エッチング工程と、
前記マスク基材の他面に、前記補強部を形成するための第2のガイドパターンを形成する第2ガイドパターン形成工程と、
前記他面に、前記第2のガイドパターンに従って前記補強部の形成領域以外にエッチングを行い、前記第1エッチング工程でエッチングを行った部分を貫通させる第2エッチング工程と
を備えることを特徴とするマスク製造方法。
【請求項13】
前記第1エッチング工程及び前記第2エッチング工程で行うエッチングの深さの合計は、前記マスク基材の厚さより大きいことを特徴とする請求項12に記載のマスク製造方法。
【請求項14】
前記第1エッチング工程及び前記第2エッチング工程で行うエッチングは、異方性エッチングであることを特徴とする請求項12に記載のマスク製造方法。
【請求項15】
第2ガイドパターン形成工程は、前記補強部の第1の補強体を形成するための第1補強体パターンを形成する工程と、前記補強部の第2の補強体を形成するための第2補強体パターンを形成する工程とを備え、第1補強体パターンを形成する工程と第2補強体パターンを形成する工程との間に、前記マスク基材の、第1の補強体パターンが形成された面に、前記第1の補強体パターンに従って、前記マスク基材を貫通しないようにエッチングを行うエッチング工程を備えることを特徴とする請求項12に記載のマスク製造方法。
【請求項16】
第1補強体パターンと、第2補強体パターンとが交差していることを特徴とする請求項15に記載のマスク製造方法。
【請求項17】
第2ガイドパターン形成工程は、さらに前記補強部の第3の補強体を形成するための第3補強体パターンを形成する工程を備え、第2補強体パターンを形成する工程と第3補強体パターンを形成する工程との間に、前記マスク基材の、第2の補強体パターンが形成された面に、前記第2の補強体パターンに従って、前記マスク基材を貫通しないようにエッチングを行うエッチング工程を備えることを特徴とする請求項16に記載のマスク製造方法。
【請求項18】
少なくとも前記第2ガイドパターン形成工程を行う以前に、複数の前記貫通孔を形成するためのマスク領域を、マスク基材にエッチングを行うことで形成するマスク領域形成工程を行うことを特徴とする請求項12に記載のマスク製造方法。
【請求項19】
請求項1に記載のマスクを用いて、基板上に配線を形成する配線基板の製造方法において、
前記マスクの他面が前記基板と対向するように前記マスクを位置決めする位置決め工程と、
前記一面側から前記基板へ向けて、配線を形成するための材料粒子を飛翔させ、前記基板に配線を形成する配線形成工程と
を備えることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項20】
前記マスクの表面に堆積した材料粒子を除去する除去工程を備えることを特徴とする請求項19に記載の配線基板の製造方法。
【請求項1】
複数の貫通孔が形成された平板状のマスク本体と、該マスク本体の一面に前記貫通孔を跨いで配設され、前記マスク本体を補強する補強部とを備えるマスクにおいて、
前記マスク本体の前記一面と反対側の面と、前記補強部の前記貫通孔に面している面との間の長さが、前記マスク本体の厚さよりも長いことを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記補強部は、前記貫通孔の開口を覆う部分に凹部が形成され、前記凹部によって画定される領域は前記貫通孔と連通していることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記凹部は前記貫通孔と重なる領域に渡って形成され、前記凹部の内面及び前記貫通孔によって画定される前記マスク本体の面が連続した面であることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項4】
前記マスク本体及び前記補強部は、シリコン又はシリコンを含む化合物を用いてなることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項5】
前記マスク本体及び前記補強部は、一体形成してあることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項6】
前記マスク本体に複数の直線状の貫通孔が並設してあり、
前記補強部が、複数の前記貫通孔を跨いで配設してあることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項7】
前記マスク本体に直線状の貫通孔が複数並設してあり、
前記補強部は、複数の前記貫通孔を跨いで配設された第1の補強体と、該第1の補強体と交差するように配設された第2の補強体とを有することを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項8】
前記マスク本体に屈曲部分を有する折れ線状の貫通孔が複数並設してあり、
前記補強部が、複数の前記貫通孔の屈曲部分を跨いで配設してあることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項9】
前記補強部が細長い形状を有し、前記補強部の前記貫通孔と重なる部分の幅が、前記補強部の前記貫通孔と重ならない部分の幅よりも短いことを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項10】
前記マスク本体に形成された貫通孔内に島状部分が設けてあり、
前記補強部が、前記貫通孔を跨ぎ、前記マスク本体及び前記島状部分を結んで配設してあることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項11】
第2の補強体は、平面視で前記貫通孔とほぼ重なる領域に配設され、第1の補強体と第2の補強体が交差する部分は、第1の補強体及び第2の補強体の他の部分よりも厚く形成されていることを特徴とする請求項7に記載のマスク。
【請求項12】
複数の貫通孔が形成された平板状のマスク本体と、前記貫通孔を跨いで配設され、前記マスク本体を補強する補強部とを備えるマスクの製造方法において、
平板状のマスク基材を設ける工程と、
前記マスク基材の一面に前記貫通孔を形成するための第1のガイドパターンを形成する第1ガイドパターン形成工程と、
前記第1のガイドパターンが形成された面に、前記第1のガイドパターンに従って、前記マスク基材を貫通しないようにエッチングを行う第1エッチング工程と、
前記マスク基材の他面に、前記補強部を形成するための第2のガイドパターンを形成する第2ガイドパターン形成工程と、
前記他面に、前記第2のガイドパターンに従って前記補強部の形成領域以外にエッチングを行い、前記第1エッチング工程でエッチングを行った部分を貫通させる第2エッチング工程と
を備えることを特徴とするマスク製造方法。
【請求項13】
前記第1エッチング工程及び前記第2エッチング工程で行うエッチングの深さの合計は、前記マスク基材の厚さより大きいことを特徴とする請求項12に記載のマスク製造方法。
【請求項14】
前記第1エッチング工程及び前記第2エッチング工程で行うエッチングは、異方性エッチングであることを特徴とする請求項12に記載のマスク製造方法。
【請求項15】
第2ガイドパターン形成工程は、前記補強部の第1の補強体を形成するための第1補強体パターンを形成する工程と、前記補強部の第2の補強体を形成するための第2補強体パターンを形成する工程とを備え、第1補強体パターンを形成する工程と第2補強体パターンを形成する工程との間に、前記マスク基材の、第1の補強体パターンが形成された面に、前記第1の補強体パターンに従って、前記マスク基材を貫通しないようにエッチングを行うエッチング工程を備えることを特徴とする請求項12に記載のマスク製造方法。
【請求項16】
第1補強体パターンと、第2補強体パターンとが交差していることを特徴とする請求項15に記載のマスク製造方法。
【請求項17】
第2ガイドパターン形成工程は、さらに前記補強部の第3の補強体を形成するための第3補強体パターンを形成する工程を備え、第2補強体パターンを形成する工程と第3補強体パターンを形成する工程との間に、前記マスク基材の、第2の補強体パターンが形成された面に、前記第2の補強体パターンに従って、前記マスク基材を貫通しないようにエッチングを行うエッチング工程を備えることを特徴とする請求項16に記載のマスク製造方法。
【請求項18】
少なくとも前記第2ガイドパターン形成工程を行う以前に、複数の前記貫通孔を形成するためのマスク領域を、マスク基材にエッチングを行うことで形成するマスク領域形成工程を行うことを特徴とする請求項12に記載のマスク製造方法。
【請求項19】
請求項1に記載のマスクを用いて、基板上に配線を形成する配線基板の製造方法において、
前記マスクの他面が前記基板と対向するように前記マスクを位置決めする位置決め工程と、
前記一面側から前記基板へ向けて、配線を形成するための材料粒子を飛翔させ、前記基板に配線を形成する配線形成工程と
を備えることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項20】
前記マスクの表面に堆積した材料粒子を除去する除去工程を備えることを特徴とする請求項19に記載の配線基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−307337(P2006−307337A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91127(P2006−91127)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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