説明

マスクレス加工装置

【課題】本発明は、マスクレス加工装置に関する。
【解決手段】本発明のマスクレス加工装置は、基板に照射される光を提供する照明光学系と、多数の光変換素子で構成され、前記照明光学系から照射された光を加工パターンに応じて選択的に反射または透過するように当該光変換素子を調節して光量を変換する空間光変調器と、前記多数の光変換素子が前記基板の一つのピクセルに対応して集光するように配列され、前記空間光変調器により変換された光が入射されると、当該ピクセルに前記多数の当該光変換素子によって提供された高エネルギーの光を投射する投射光学系と、前記加工パターンの入力を受け、入力された加工パターンに応じて、前記光源から照射された光を前記多数の光変換素子によって選択的に変換されるように前記空間光変調器を制御する制御部と、を含み、デジタルマスクを用いることにより、マスク使用によるコストが低減し、加工しようとする対象のスケール変形に対する能動的な対応が容易であるだけでなく、前記装置の活用度及び利用度が拡大される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクレス加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、産業界において用いられている露光装置は、フィルム、ガラス(glass)及び金属などを利用したマスク(Mask)を用いる装備と、空間光変調器(Spatial Light Modulator;SLM)を利用したデジタルマスクを用いる装備と、に大別することができる。
【0003】
ここで、空間光変調器(SLM)を利用したデジタルマスクを用いる露光装置は、所定のマスク物質(例えば、フォトマスクなど)を用いず、光を利用してフィルム(film)、ウェーハ(Wafer)、ガラス及びポリマー(polymer)などの基板に直接パターンを形成する装置である。
【0004】
このようなマスクレス露光装置は、フォトマスクを用いなくても基板にパターンを形成することができるため、高解像度及び大面積のマスクの製作が不要であり、異物または損傷によるマスクの入替が不要であるという長所により、その需要が増加している。
【0005】
この際、前記マスクレス露光装置は、デジタルマスクとして多数の光変換素子で構成されたDMD(Digital Micro Mirror Device)が主に用いられている。
【0006】
しかし、デジタルマスクとしてDMDを用いるためには、DMDに入射する光エネルギーがDMDを損傷させることなく機能を果たすことができるように、各DMDの最大光エネルギー以下で用いなければならない。
【0007】
このような制約のため、DMDを利用したマスクレス露光装置は通常、露光する用途でのみ制限されて用いられており、露光工程より非常に高いエネルギーを要する工程には用いることができないという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような問題点を解決するために導き出されたものであり、デジタルマスクとして用いられた多数の光変換素子の光を集光して一つのピクセルに対応させることにより、各光変換素子を損傷させることなく加工しようとする対象に高エネルギーを提供するマスクレス加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような目的を果たすために、本発明の実施例によるマスクレス加工装置は、基板の加工エネルギーとして用いられる光を提供して前記基板に照射する照明光学系と、多数の光変換素子で構成され、前記照明光学系から照射された光を加工パターンに応じて選択的に反射または透過するように当該光変換素子を調節して光量を変換する空間光変調器と、前記多数の光変換素子が前記基板の一つのピクセルに対応して集光するように配列され、前記空間光変調器により変換された光が入射されると、当該ピクセルに前記多数の当該光変換素子によって提供された高エネルギーの光を投射する投射光学系と、前記加工パターンの入力を受け、入力された加工パターンに応じて、光源から照射された光を前記多数の光変換素子によって選択的に変換されるように前記空間光変調器を制御する制御部と、を含んで構成される。
【0010】
また、前記照明光学系は、前記基板の加工エネルギーとして用いられる光を提供する光源と、前記光源から入射された光を前記空間光変調器に照射できる大きさとエネルギー分布に変換する光源部と、を含むことを特徴とする。
また、前記光源はレーザー(laser)であることを特徴とし、前記光源部は多数の光学レンズであることを特徴とする。
【0011】
また、前記空間光変調器は、多数の光変換素子としてマイクロミラーが用いられ、前記加工パターンに応じて、当該マイクロミラーのオン/オフ及び角度を調節することにより光量を調節する反射型空間変調器であることを特徴とする。
また、前記反射型空間光変調器は、DMD(Digital Micromirror Device)であることを特徴とする。
【0012】
また、前記空間光変調器は、多数の光変換素子としてピクセルが用いられ、前記加工パターンに応じて、当該ピクセルの透過率を調節することにより光量を調節する透過型空間変調器であることを特徴とする。
【0013】
また、前記透過型空間光変調器は、LCD(Liquid Crystal Display)またはLCoS(Liquid Crystal on Silicon)の何れか一つであることを特徴とする。
【0014】
また、前記投射光学系は、前記多数の光変換素子により変換された光の入力を受け、前記基板の一つのピクセルに対応して集光するように配列されたマイクロレンズアレイ(MLA)を含むことを特徴とする。
【0015】
また、前記投射光学系は、前記マイクロレンズアレイ(MLA)と前記基板との間に設けられ、前記マイクロレンズアレイ(MLA)によって集光された光を前記基板に投影する投影レンズをさらに含むことを特徴とする。
また、前記投影レンズは、プロジェクションレンズ(Projection Lens)であることを特徴とする。
本発明の特徴及び利点は添付図面に基づいた以下の詳細な説明によってさらに明らかになるであろう。
【0016】
本発明の詳細な説明に先立ち、本明細書及び請求範囲に用いられた用語や単語は通常的かつ辞書的な意味に解釈されてはならず、発明者が自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則にしたがって本発明の技術的思想にかなう意味と概念に解釈されるべきである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、デジタルマスクを用いることにより、マスク使用によるコストが低減し、加工しようとする対象のスケール変形に対する能動的な対応が容易である効果がある。
【0018】
また、本発明によると、デジタルマスクとして用いられた光変換素子が損傷することなく、加工しようとする対象に高エネルギーを提供することにより、露光工程だけでなく、それ以上の高エネルギーを要する様々な加工工程に用いられるため、その活用度及び利用度が拡大される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例によるマスクレス加工装置のブロック図である。
【図2】図1に図示されたデジタルマスク装備の概略的な斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の目的、特定の長所及び新規の特徴は添付図面に係る以下の詳細な説明及び好ましい実施例によってさらに明らかになるであろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるに際し、同一の構成要素に限っては、たとえ異なる図面に示されても、できるだけ同一の番号を付けるようにしていることに留意するべきである。また、本発明を説明するにあたり、係わる公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例によるマスクレス加工装置のブロック図であり、図2は図1に図示されたデジタルマスク装備の概略的な斜視図である。
【0021】
図1及び図2を参照すると、本発明の一実施例によるマスクレス(maskless)加工装置は、照明光学系10と、空間光変調器(Spatial Light Modulator;SLM)20と、投射光学系30と、基板42と、ステージ44と、制御部50と、を含んで構成される。
【0022】
前記照明光学系10は、加工しようとする基板42に前記基板42の加工エネルギーとして用いられる光15を提供する光源12を含む。前記光源12は、前記基板42に所定のパターンを形成するように、露光または加工するための光を提供する。
このように前記基板42を露光または加工するための光15を提供するための光源12は例えば、レーザー(laser)が用いられることができる。
【0023】
前記照明光学系10は、前記光源12から入射された光が通過しながら、前記空間光変調器20に照射できる大きさとエネルギー分布に変換されるようにすることができる所定の光源部14をさらに含む。このような前記光源部14は例えば、所定のレンズを配列して構成することができる。
このような照明光学系10から照射された光15は空間光変調器(SLM)に入射される。
【0024】
前記空間光変調器(SLM)20は、前記照明光学系10から入射される光15を、入力された加工パターン(例えば、露光パターン)に応じて選択的に反射または透過させる装置であり、多数の光変換素子22a〜22dがマトリックス形態に配列されて構成される。
【0025】
ここで、前記空間光変調器(SLM)20は、前記多数の光変換素子22a〜22dとしてマイクロミラー(micro mirror)が用いられる反射型空間光変調器であることができる。
【0026】
このような反射型空間光変調器は、位置による前記各マイクロミラーのオン/オフ及び当該マイクロミラーの角度を調節することにより光量を調節するものであり、例えばDMD(Digital Micromirror Device)が用いられる。
また、前記空間光変調器(SLM)20は、前記多数の光変換素子22a〜22dとしてピクセルが用いられる透過型空間光変調器であることができる。
【0027】
このような透過型空間光変調器は、前記多数の各ピクセルの透過率を調節することにより光量を調節し、例えばLCD(Liquid Crystal Display)またはLCoS(Liquid Crystal on Silicon)が用いられる。
【0028】
前記空間光変調器(SLM)20は、制御部50を介して形成しようとする加工パターンの入力を受け、前記入力された加工パターンを基板42の各ピクセルに対応する情報に変換させ、当該光変換素子22a〜22dを調節して光量を変換する。このように変換された光25を前記基板42を向けて照射する。
【0029】
即ち、前記空間光変調器(SLM)20は、前記加工パターンに応じて前記基板42の特定領域にあたるパターン形状の入力を予め電気的信号としてを受け、その電気的信号に応じて前記光源12から照射された光15を選択的に反射または透過することができる。
前記空間光変調器(SLM)20により変換された光25は、投射光学系30に入射される。
前記投射光学系30は、前記空間光変調器(SLM)20から反射される光の質を改善して基板に投影する。
【0030】
このような投射光学系30は、多数の光変換素子22a〜22dが前記基板42の一つのピクセル42aに対応して集光するように配列されたマイクロレンズアレイ(Micro Lens Array;MLA)32を含む。
【0031】
前記マイクロレンズアレイ(MLA)32は、夫々のレンズ要素が円形または四角形の球面または非球面レンズであり、前記空間光変調器(SLM)20により加工パターンに応じて変換された光25を前記基板42に集光させる。
【0032】
例えば、前記投射光学系30は、前記空間光変調器(SLM)20により変換された光25が入射されると、当該ピクセル(例えば42a)に前記多数の当該光変換素子(例えば22a〜22d)によって提供された光を集光して、高エネルギーの光を投射する。
【0033】
前記多数の光変換素子と前記基板42のピクセルとを一対一に対応付けて集光する従来の露光装置と異なって、本発明の一実施例によるマスクレス加工装置では、多数の光変換素子22a〜22dが前記基板42の一つのピクセル42aに対応するように、前記マイクロレンズアレイ(MLA)32のサイズと倍率が調節される。これにより、各光変換素子22a〜22dの損傷を防止するために各光変換素子22a〜22dの最大光エネルギー以下の光エネルギーが用いられても、前記基板42の一つのピクセル42aに提供される光35は高エネルギーを有するようになる。
【0034】
従って、本発明によるマスクレス加工装置は、当該光変換素子22a〜22dが損傷することなく、前記基板42の露光工程またはそれ以上のエネルギーを要する工程(例えば、加工パターンに応じる基板のエッチング工程)にも用いることができる。
【0035】
一方、前記投射光学系30は、前記空間光変調器(SLM)20により変換された光25を集光するマイクロレンズアレイ(MLA)32と前記基板42との間に投影レンズ34をさらに設けることができる。
【0036】
前記マイクロレンズアレイ(MLA)32が前記基板42の上面に隣接している場合、パターン材料から出るヒュームによって光35の透過率が低下する可能性がある。
【0037】
従って、前記マイクロレンズアレイ(MLA)32と前記基板42との間に投影レンズ34を設けることにより、前記マイクロレンズアレイ(MLA)32によって集光された光35をそのまま前記基板42に投影できるようになる。
このような投影レンズ34としては、プロジェクションレンズ(Projection Lens)が用いられることができる。
【0038】
また、前記投影レンズ34は、前記マイクロレンズアレイ(MLA)32が前記基板42に隣接して設けられる場合より前記基板42から相対的に遠い距離に離れていても、光35を照射できるようにする。
また、前記投影レンズ34は一定の倍率を有し、その倍率に応じて加工しようとするパターンの精密度及び範囲を選択することができる。
【0039】
前記ステージ44は、加工しようとするパターンが形成される基板42が配置される部分であり、前記ステージ44がスキャン方向に移動しながら、前記加工パターンに応じて露光工程またはさらに高いエネルギーを要する所定の工程を行う。
【0040】
前記制御部50は本発明によるマスクレス加工装置を全体的に制御する。まず、前記制御部50は、所定の入力装置(不図示)を介して前記基板42に加工しようとする加工パターンの入力を受ける。
【0041】
その後、前記制御部50は、入力された加工パターンに応じて、前記照明光学系10を動作させて光源12から前記空間光変調器(SLM)20に光15を入射させ、前記空間光変調器(SLM)20を動作させて当該光変換素子22a〜22dを調節して、光量を変換するように制御する。
【0042】
また、前記制御部50は、前記空間光変調器(SLM)20の多数の光変換素子22a〜22dにより変換された光25を前記基板42の所定位置のピクセルの何れか一つ(例えば、図面符号42a)に集光するためにレンズ倍率やピクセルのサイズを調節するように、前記投射光学系30を制御する。
【0043】
さらに、前記制御部50は、入力された加工パターンに応じて前記基板42の露光工程またはそれ以上の高エネルギーを要する工程を行うように、前記基板42が配置されたステージ44をスキャン方向に移動するように制御する。
【0044】
上述したように、マイクロレンズアレイ(MLA)32を用いることにより、多数の光変換素子22a〜22dが前記基板42の一つのピクセル42aに対応されるため、当該光変換素子22a〜22dの使用限界光量(最大光エネルギー)以下で用いても、前記加工される基板42に最高エネルギーを提供することが可能となる。
【0045】
従って、上述したように、空間光変調器(SLM)20を利用したデジタルマスクを含むマスクレス加工装置を用いることにより、フォトマスクのような物理的マスクの使用によるコストを低減することができ、加工しようとする製品のスケール変形に対する能動的な対応が容易になる。また、デジタルマスク素子が損傷することなく、加工しようとする対象に高エネルギーを提供することにより、露光工程だけでなく、高エネルギーを要する様々な基板加工の工程に用いられるため、その装置の活用度及び利用度が拡大される。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、該当技術分野において通常の知識を有する者であれば、添付の特許請求範囲に記載された本発明の思想及び領域を外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0047】
10 照明光学系
12 光源
14 光源部
20 空間光変調器(SLM)
22a〜22d 光変換素子
30 投射光学系
32 マイクロレンズアレイ(MLA)
34 投影レンズ
42 基板
44 ステージ
50 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の加工エネルギーとして用いられる光を提供して前記基板に照射する照明光学系と、
多数の光変換素子で構成され、前記照明光学系から照射された光を加工パターンに応じて選択的に反射または透過するように当該光変換素子を調節して光量を変換する空間光変調器と、
前記多数の光変換素子が前記基板の一つのピクセルに対応して集光するように配列され、前記空間光変調器により変換された光が入射されると、当該ピクセルに前記多数の当該光変換素子によって提供された高エネルギーの光を投射する投射光学系と、
前記加工パターンの入力を受け、入力された加工パターンに応じて、光源から照射された光を前記多数の光変換素子によって選択的に変換されるように前記空間光変調器を制御する制御部と、
を含むマスクレス加工装置。
【請求項2】
前記照明光学系は、
前記基板の加工エネルギーとして用いられる光を提供する光源と、
前記光源から入射された光を前記空間光変調器に照射できる大きさとエネルギー分布に変換する光源部と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のマスクレス加工装置。
【請求項3】
前記光源はレーザー(laser)であることを特徴とする請求項2に記載のマスクレス加工装置。
【請求項4】
前記光源部は多数の光学レンズであることを特徴とする請求項2に記載のマスクレス加工装置。
【請求項5】
前記空間光変調器は、多数の光変換素子としてマイクロミラーが用いられ、前記加工パターンに応じて、当該マイクロミラーのオン/オフ及び角度を調節することにより光量を調節する反射型空間変調器であることを特徴とする請求項1に記載のマスクレス加工装置。
【請求項6】
前記反射型空間光変調器は、DMD(Digital Micromirror Device)であることを特徴とする請求項5に記載のマスクレス加工装置。
【請求項7】
前記空間光変調器は、多数の光変換素子としてピクセルが用いられ、前記加工パターンに応じて、当該ピクセルの透過率を調節することにより光量を調節する透過型空間変調器であることを特徴とする請求項1に記載のマスクレス加工装置。
【請求項8】
前記透過型空間光変調器は、LCD(Liquid Crystal Display)またはLCoS(Liquid Crystal on Silicon)の何れか一つであることを特徴とする請求項7に記載のマスクレス加工装置。
【請求項9】
前記投射光学系は、
前記多数の光変換素子により変換された光の入力を受け、前記基板の一つのピクセルに対応して集光するように配列されたマイクロレンズアレイ(MLA)を含むことを特徴とする請求項1に記載のマスクレス加工装置。
【請求項10】
前記投射光学系は、前記マイクロレンズアレイ(MLA)と前記基板との間に設けられ、前記マイクロレンズアレイ(MLA)によって集光された光を前記基板に投影する投影レンズをさらに含むことを特徴とする請求項9に記載のマスクレス加工装置。
【請求項11】
前記投影レンズは、プロジェクションレンズ(Projection Lens)であることを特徴とする請求項10に記載のマスクレス加工装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−256013(P2012−256013A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232548(P2011−232548)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】