説明

マスク検査方法、マスク検査装置、およびマスク製造方法

【課題】マスクブランクに存在する位相欠陥とEUVL用マスクを製造した後に残存する位相欠陥との両方を感度良く検出する方法を提供する。
【解決手段】マスクブランクを検査する場合は、中心遮蔽NA以内で大きい照明NAを有するEUV光を照射し、EUVL用マスクを検査する場合は、EUV光を遮蔽する中心遮蔽部と、中心遮蔽部の直径よりも小さい幅を有し、EUV光を遮断する線状遮蔽部とをその瞳面に有する暗視野結像光学系を用いて、線状遮蔽部の幅と同じ照明NAまたは線状遮蔽部の幅よりも小さい照明NAを有するEUV光を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の回路パターンを形成するために用いるリソグラフィ用のマスクの製造技術に関し、特に、波長が10〜15nm程度のいわゆる極端紫外線(EUV(Extreme Ultra-Violet)光)露光を用いたリソグラフィ工程で使用される極端紫外線露光用マスクの検査方法および検査装置、ならびにマスク製造方法に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス(半導体集積回路装置)は、回路パターンが描かれた原版であるマスクに露光光を照射し、上記回路パターンを、縮小投影光学系を介して半導体基板(以下、ウェハと称する)の主面上に転写する光リソグラフィを繰り返し用いることによって生産されている。
【0003】
しかし、近年は、半導体デバイスの微細化への要求に応じて、光リソグラフィの露光に用いる光よりも波長の短いEUV光を用いるEUVリソグラフィ(以下、EUVLと称する)の開発が進められている。このEUVLを用いることによって解像度を向上でき、より微細な回路パターンを転写することができる。
【0004】
EUV光の波長域(例えば中心波長13.5nm)では、透過マスクが物質の光吸収の関係で使えないため、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)などの多層膜による反射を利用した多層膜反射基板がEUVL用マスクブランクス(以下、マスクブランクと称する)として使用される。このマスクブランクの表面に吸収体パターンを形成して、EUVL用マスクを構成する(例えば非特許文献1)。
【0005】
また、透過型のレンズを用いることができないため、例えば特開2007−158828号公報(特許文献1)に記載されているように、縮小投影光学系には、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)とを交互に積層した多層膜反射面のみからなる反射型露光光学系(反射型結像光学系、EUV光学系)が用いられる。光源からの光は反射型の照明光学系を介して均一化されてEUVL用マスクに照射される。EUVL用マスクに照射された光は、EUVL用マスクで反射し、反射型の投影光学系を経てウェハに到達して、EUVL用マスクの吸収体パターンがウェハの主面上に投影される。
【0006】
EUVLでは、マスクブランクの表面にわずか数nm程度の高さの異常が発生した場合でも、その高さ異常によりEUV反射光に大きな位相変化を与え、吸収体パターンのウェハの主面上への転写の際に寸法変化または解像不良などの欠陥を生じさせる。このような位相変化を与える欠陥を位相欠陥と呼ぶ。そこで、吸収体パターンを被着させる前のマスクブランクの段階において位相欠陥を検出することが必要である。
【0007】
一般的なマスクブランクの検査方法としては、レーザ光をマスクブランクに照射し、乱反射する光から異物を検出する方法、または明視野像(顕微鏡像)を検出する方法がある。しかし、位相欠陥の影響は多層膜の内部構造にも依存するので、露光に用いるEUV光と同じ波長の検出光を用いて欠陥を検出する同波長(at wavelength)検査法が相応しいと考えられる。この方法の一例として、暗視野検査像を用いる方法が、例えば特開2003−114200号公報(特許文献2)に開示されている。また、位相欠陥の表面の凹凸を区別する検査手法が、例えば特開2007−219130号公報(特許文献3)に開示されている。さらに、位相欠陥が既に存在したまま吸収体パターンを形成した場合は、吸収体パターンの輪郭を修正して、露光装置でパターンを転写したときの投影像を改善する技術が、例えば特表2002−532738号公報(特許文献4)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−158828号公報
【特許文献2】特開2003−114200号公報
【特許文献3】特開2007−219130号公報
【特許文献4】特表2002−532738号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】田邊功、竹花洋一、法元盛久著、「入門フォトマスク技術」、工業調査会、2006年12月発行、p.266−268
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献2に記載されたEUV光を用いる暗視野検出法では、マスクブランクの位相欠陥を輝点として感度良く検出することができる。さらに、吸収体パターンを有するEUVL用マスクを検査する場合には、検査信号のバックグランドレベルを大きくする原因となる回折光成分の影響を避けるため、所定形状の遮蔽部を検査光学系に追加して設けることが開示されている。しかし、遮蔽部を追加して配置すると位相欠陥に起因する散乱光の透過量が低下するので位相欠陥の検出感度が低下する恐れがある。
【0011】
また、上記特許文献3に記載された検査手法では、マスクブランクの表面の欠陥の有無と凹凸の区別の判定はできる。しかし、吸収体パターンを有するEUVL用マスクを検査する場合に発生する回折光の影響については考慮されていない。
【0012】
また、上記特許文献4に記載された検査方法は、吸収体パターンを形成した後に位相欠陥が残存しても、そのEUVL用マスクを良品として取り扱える方法が開示されている。しかし、吸収体パターンを形成した後に残存する位相欠陥の検査手法については記載されていない。
【0013】
このように、上述した何れの検査方法でも、マスクブランクに存在する位相欠陥と、EUVL用マスクを製造した後に実質的に残存する位相欠陥との両方を感度良く検出することは困難である。
【0014】
また、修正が困難な多層膜の位相欠陥が検出された場合は、たとえ微小サイズの欠陥であっても吸収体パターンを形成する工程に進むことなく、そのマスクブランクは不良品として取り扱われ、処分されることになる。本発明者らの知見では、位相欠陥が吸収体パターンを形成した後に被覆されるような位置にあれば、そのマスクブランクは使用可能になり得る。しかしながら、検出された位相欠陥の総数によっては、全ての位相欠陥を被覆することは困難であり、被覆されずにEUVL用マスクに残存する欠陥を特定しなければならない。結局、吸収体パターンの回折光の影響を避けて位相欠陥を検出する必要が生じ、これを高感度で行うことは前述したように困難である。
【0015】
本発明の目的は、マスクブランクに存在する位相欠陥とEUVL用マスクを製造した後に残存する位相欠陥との両方を感度良く検出する方法を提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の目的は、マスクブランクに存在する位相欠陥とEUVL用マスクを製造した後に残存する位相欠陥との両方を感度良く検出する欠陥検査装置を提供することにある。
【0017】
また、本発明の他の目的は、マスクブランクとEUVL用マスクとを同一の欠陥検査装置で検出することによって、EUVL用マスクに残存する致命的な位相欠陥を除去できるEUVL用マスク製造方法を提供することにある。
【0018】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0020】
この実施の形態は、EUV用マスクの検査方法であって、マスクにEUV光を照射する工程と、マスクから反射するEUV光を、暗視野結像光学系を介して画像検出器の受光面に結像して、受光面に暗視野検査像を形成する工程と、画像検出器で得られる検出信号から、マスクに存在する位相欠陥の検出信号を検出する工程と含み、マスクにEUV光を照射する際には、マスクに吸収体パターンが存在する場合と、マスクに吸収体パターンが存在しない場合とによって、EUV光の照明NA(開口数)を変えるものである。
【0021】
また、この実施の形態は、EUVL用マスクの検査装置であって、EUVL用マスクを載置してX方向およびY方向に移動できるステージと、EUV光を発生させる光源と、EUVL用マスクにEUV光を照射する照明光学系と、EUV光をEUVL用マスクに照射する際に、照明NA(開口数)を変化させる照明絞りと、マスクからの散乱光を捕集して、暗視野検査像を形成する暗視野結像光学系と、暗視野検査像を画素信号として取得する画像検出器と、吸収体パターンの情報を基に照明絞りを調整する絞り駆動部とを有するものである。
【0022】
また、この実施の形態は、EUVL用マスクの製造方法であって、(a)基板の主面上にEUV光を反射する多層膜が形成されたマスクブランクを準備する工程と、(b)EUV光をマスクブランクに照射して、マスクブランクの位相欠陥を検出する工程と、(c)前記(b)工程で検出された位相欠陥の位置座標を記憶し、かつ位相欠陥にパターン転写に与える影響の度合いを表す優先順位を付与する工程と、(d)優先順位の高い順にマスクブランクの位相欠陥を被覆しながら、マスクブランクの多層膜上に吸収体パターンを形成してマスクを形成する工程と、(e)EUV光を検査光とする検査装置を用いて、マスクの位相欠陥を検出する工程とを含むものである。
【発明の効果】
【0023】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0024】
マスクブランクに存在する位相欠陥とEUVL用マスクを製造した後に残存する位相欠陥との両方を感度良く検出する方法を提供することができる。
【0025】
また、マスクブランクに存在する位相欠陥とEUVL用マスクを製造した後に残存する位相欠陥との両方を感度良く検出する欠陥検査装置を提供することができる。
【0026】
また、マスクブランクとEUVL用マスクとを同一の欠陥検査装置で検出することによって、EUVL用マスクに残存する致命的な位相欠陥を除去できるEUVL用マスク製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は本発明の実施の形態1によるEUVL用マスクの吸収体パターンが形成された面の要部平面図、(b)は同図(a)のA−A線に沿った一部を拡大して示す要部断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1によるEUV投影露光装置の概略図である。
【図3】(a)は本発明の実施の形態1による位相欠陥を有するマスクブランクの要部断面図、(b)は本発明の実施の形態1による位相欠陥を有するマスクブランクに吸収体パターンおよびバッファ層が形成されたEUVL用マスクの要部断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1によるEUV光を用いてマスクブランクまたはEUVL用マスクの暗視野検査像を収集するマスク検査装置の全体の構成を示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態1によるマスクブランクに位相欠陥が存在するときの暗視野検査像とシュバルツシルド光学系の瞳面を通過する散乱光との関係について説明する図である。(a)は暗視野結像光学系およびマスクブランクを含む部分の拡大図、(b)は暗視野結像光学系の瞳面を示す模式図、(c)は線状遮蔽部を有する暗視野結像光学系の瞳面を示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態1による暗視野結像光学系を用いてマスクブランクに存在する位相欠陥を観察した結果について説明する図である。(a)は位相欠陥が存在する領域の暗視野検査像の光強度分布を示す図、(b)は2次元アレイセンサー受光面に結像された位相欠陥の暗視野検査像とピクセルとの関係を説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態1による吸収体パターンを有するEUVL用マスクの観察において、隣り合う吸収体パターンの間に存在する位相欠陥を観察した結果について説明する図である。(a)は暗視野結像光学系およびマスクブランクを含む部分の拡大図(吸収体パターンから回折するEUV光と暗視野結像光学系との関係を説明する図)、(b)は位相欠陥と吸収体パターンを含む場合の位相欠陥が存在する領域の暗視野検査像の光強度分布を示す図、(c)は吸収体パターンのみの暗視野検査像の光強度分布を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1による吸収体パターンを有するEUVL用マスクの観察において、隣り合う吸収体パターンの間に存在する位相欠陥を観察した結果について説明する図である。(a)は暗視野結像光学系の瞳面と吸収体パターンのエッジからの回折光成分との関係を説明する図、(b)は画素信号列として得られる検出信号強度分布を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1によるマスク欠陥検査のフローを説明する工程図である。
【図10】本発明の実施の形態2によるマスクブランクの検査方法を用いて検出されたマスクブランク上の位相欠陥の一例を示す図である。
【図11】(a)は本発明の実施の形態2による位相欠陥が吸収体パターンで完全に被覆された例を示すマスクの要部平面図、(b)は本発明の実施の形態2による位相欠陥が吸収体パターンに被覆されていない例を示すマスクの要部平面図である。
【図12】本発明の実施の形態2によるマスク製造方法のフローを説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0029】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0030】
また、以下の実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。また、以下の実施の形態において、ウェハと言うときは、Si(Silicon)単結晶ウェハを主とするが、それのみではなく、SOI(Silicon On Insulator)ウェハ、集積回路をその上に形成するための絶縁膜基板等を指すものとする。その形も円形またはほぼ円形のみでなく、正方形、長方形等も含むものとする。
【0031】
また、以下の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0032】
(実施の形態1)
本実施の形態1によるEUVL用マスクの検査方法の意義を明確にするために、まず、EUVL用マスクの構成およびEUVL露光装置に備わる投影光学系(縮小投影光学系、反射型露光光学系、反射型結像光学系、EUV光学系)の構成について図1(a)および(b)ならびに図2を用いて説明する。図1(a)はEUVL用マスクの吸収体パターンが形成された面の要部平面図、図1(b)は同図(a)のA−A線に沿った一部を拡大して示す要部断面図である。また、図2はEUV投影露光装置の概略図である。
【0033】
図1(a)に示すように、EUVL用マスクMの中央部には、半導体集積回路装置の回路パターンを有するデバイスパターンエリアMDEを有し、周辺部には、EUVL用マスクMの位置合わせのためのマークまたはウエハアライメントマークなどを含むアライメントマークエリアMA1,MA2,MA3,MA4が配置されている。
【0034】
また、図1(b)に示すように、EUVL用マスクMのマスクブランクは、石英ガラスまたは低熱膨張ガラスからなる基板MSと、基板MSの主面に形成されたモリブデン(Mo)とシリコン(Si)とを交互に積層(例えば各層が40層程度)した多層膜MLと、多層膜ML上に形成されたキャッピング層CAPと、基板MSの裏面(主面と反対側の面)に形成されたEUVL用マスクMを静電チャックするためのメタル膜CFとにより構成されている。基板MSの厚さは、例えば7〜8mm程度であり、多層膜MLの厚さは、例えば300nm程度である。さらに、キャッピング層CAP上にバッファ層BUFを介して吸収体パターンABSが形成されている。吸収体パターンABSの厚さは、例えば50〜70nm程度である。
【0035】
次に、EUVL用マスクを用いるEUV投影露光装置について、その概念を示す図2を用いて説明する。
【0036】
図2に示すように、光源1から発する中心波長13.5nmのEUV光は、多層膜反射鏡からなる照明光学系2を介してEUVL用マスクMの吸収体パターンが形成された面(以下、パターン面という)を照射する。パターン面からの反射光は多層膜反射鏡からなる縮小投影光学系3を通過して、ウェハ4の主面上にパターンを転写する。ウェハ4はステージ5に搭載されており、ステージ5の移動とパターン転写の繰り返しにより、ウェハ4の所望の領域にパターンを多数転写する。
【0037】
次に、EUVL用マスクのマスクブランクに生じる位相欠陥について図3(a)および(b)を用いて説明する。図3(a)は位相欠陥を有するマスクブランクの要部断面図、図3(b)は位相欠陥を有するマスクブランクに吸収体パターンおよびバッファ層が形成されたEUVL用マスクの要部断面図である。
【0038】
図3(a)に示したマスクブランクの要部断面図は、基板MS上に多層膜MLを被着させる際に、基板MSの主面に微細な窪みが存在したまま上記多層膜MLを被着させた結果、凹形状の位相欠陥PDが生じた一例を示している。
【0039】
この位相欠陥PDを残したままバッファ層BUFおよび吸収体パターンABSを形成すると、図3(b)に示すように、隣り合う吸収体パターンABSの間にそのまま凹形状の位相欠陥PDが残存する。2〜3nm程度の位相欠陥PDの窪みが存在すると、EUVLではウェハの主面上に転写するパターン投影像が乱れて、ウェハの主面上の転写パターンに欠陥が生ずる。図3(a)および(b)では、窪みの欠陥の一例を示したが、微小な突起の欠陥でも同様の位相欠陥となる。
【0040】
従来の光リソグラフィ用マスクでは、透過型マスクブランクの表面に数nm程度の凹凸があっても、これを無視することができる。従って、EUVL用マスクと従来の光リソグラフィ用マスクとでは、欠陥転写に関して実質的に大きな差があり、EUVL用マスクでは、位相差を与えるマスクブランクの位相欠陥PDの発生を回避しなければならない。そのため、EUVL用マスクでは、吸収体パターンABSおよびバッファ層BUFを形成する前のマスクブランクの段階で、マスクブランクの位相欠陥PDを検出する必要がある。
【0041】
次に、本実施の形態1によるマスク検査装置の全体の構成について図4を用いて説明する。図4はEUV光を用いてマスクブランクまたはEUVL用マスクの暗視野検査像を収集するマスク検査装置の全体の構成を示す概略図である。ここでは、マスクブランクの検査に用いるマスク検査装置を例に挙げてその全体の構成について説明するが、EUVL用マスクも同様の構成のマスク検査装置を用いる。
【0042】
マスク検査装置は、EUV光(EUV検査光、照明光、照射光)BMを発生する光源(EUV光源、プラズマ光源)6、マスクブランクMBを載置するためのマスクステージ7、照明光学系CIO、結像光学系DPO、2次元アレイセンサー(画像検出器)SE、センサー回路8、パターンメモリ9、信号処理回路10、タイミング制御回路11、マスクステージ制御回路12、および装置全体の動作を制御するシステム制御コンピュータ13などで構成されている。また、マスクパターンに関する種々のデータを格納するデータファイル14が備えられている。
【0043】
光源6には、必要に応じて波長選択フィルター、圧力隔壁手段、または飛散粒子抑制手段などが備えられている。結像光学系DPOは凹面鏡L1と凸面鏡L2とから構成され、例えば集光NA(numerical aperture;開口数)が0.2、中心遮蔽NAが0.1、倍率が26倍の暗視野結像光学系を構成するシュバルツシルド光学系である。
【0044】
位相欠陥の有無が検査されるマスクブランクMBは、XYZの3軸方向に移動可能であるマスクステージ7上に載置される。光源6から発する中心波長13.5nmのEUV光BMは、照明光学系CIOを通して収束ビームに変換された後、ビームサイズを調整する開口部APTを通過し、多層膜ミラーPMで折り曲げられてマスクブランクMBの所定の領域を照射する。ここで、開口部APTは照明NAを変化させる照明絞りとしての役割を果たし、開口部APTの大きさ、すなわち照明絞りの大きさは照明絞りを調整する絞り駆動部(図示せず)により制御される。マスクブランクMBの位置は、マスクステージ7に固定されたミラー15の位置をレーザ測長器16で読み込むことにより、マスクステージ7の位置情報として得られる。この位置情報は位置回路17に送られ、システム制御コンピュータ13で認識することができる。一方、ビームスプリッタBSPによりEUV光BMの一部を分岐してEUV光用センサー18で光量をモニタし、照明強度補正回路19において信号処理のための閾値を設定することができる。このビームスプリッタBSPは、例えばモリブデン(Mo)とシリコン(Si)とを交互に数対から10対程度積層した多層膜で構成することができる。EUV光BMの一部を分岐してEUV光用センサー18に導く手段はビームスプリッタBSPに限定されるものではない。例えばEUV光BMの光束のうち周辺部の一部分のEUV光のみを所定方向に反射させる多層膜ミラーを配置し、その一部分のEUV光をEUV光用センサー18に導いても良い。
【0045】
マスクブランクMBからの反射光のうち位相欠陥PDで散乱した光は、結像光学系DPOを介して収束ビームSLIを形成し、2次元アレイセンサー(画像検出器)SEに集光する。すなわち、2次元アレイセンサーSEには、マスクブランクMBの暗視野検査像が形成され、その結果、マスクブランクMBに残存する位相欠陥PDは検査画像の中で輝点として検出される。検出された位相欠陥PDについては、その位置および欠陥信号の大きさなどの情報が記憶装置20に記憶されるとともに、種々の情報をパターンモニタ21または画像出力部22を介して観察することができる。
【0046】
次に、本実施の形態1によるマスク検査方法について詳細に説明する。
【0047】
≪マスクブランクの検査方法≫
まず、マスクブランクに位相欠陥が存在するときの暗視野検査像とシュバルツシルド光学系の瞳面を通過する散乱光との関係について図5(a)、(b)および(c)を用いて説明する。
【0048】
図5(a)は、前述の図4に示す結像光学系DPOおよびマスクブランクMBを含む部分の拡大図である。EUV光BMは、多層膜ミラーPMで折り曲げられてマスクブランクMBの所定の領域を照射する。マスクブランクMBの表面の位相欠陥PDから反射散乱する光30のうち、凹面鏡L1の内側かつ凸面鏡L2の外側の領域として定義される輪帯領域の方向31−1に向かう光は、凹面鏡L1で反射して方向31−2に示す内側方向に進み、さらに凸面鏡L2で反射して方向31−3に示す一方向に進んで2次元アレイセンサーSEに向かう。
【0049】
図5(b)は、本実施の形態1による結像光学系DPOの瞳面を示す模式図である。前述の図5(a)で説明した凹面鏡L1の内側から凸面鏡L2の外側の領域として定義される輪帯領域とは、集光NA(符号NAOU)と中心遮蔽NA(符号NAIN)との間の領域に相当する。中心遮蔽NA(符号NAIN)は凸面鏡L2によって遮られる領域に相当し、この凸面鏡L2は3本の梁32−1,32−2,32−3によって保持されている。これらの梁32−1,32−2,32−3は結像光学系DPOを通過する散乱光に対して遮蔽物となるので、細い形状とするとともに、特定の方向の散乱光に限定して遮蔽することの無い様にX方向の軸(X軸)およびY方向の軸(Y軸)からずれた位置に設けてある。同図における符号NAILLは、EUV光BMがEUVL用マスクを照射するときの照明NAを示している。
【0050】
図5(c)は、本実施の形態1による線状遮蔽部を有する結像光学系DPOの瞳面を示す模式図である。図5(c)に示すように、結像光学系DPOの瞳面において、X軸およびY軸それぞれに沿って線状遮蔽部33−1,33−2,33−3,33−4が設けられており、その幅Wを中心遮蔽NA(符号NAIN)の直径より小さい値としている。これらの線状遮蔽部33−1,33−2,33−3,33−4は、挿入や離脱が可能な態様でも良いし、凸面鏡L2を支える梁構造を兼ねた態様でも良い。
【0051】
図5(b)に示した瞳面を有する暗視野結像光学系または図5(c)に示した瞳面を有する暗視野結像光学系を用いてマスクブランクに存在する位相欠陥を観察した結果について図6(a)および(b)を用いて説明する。図6(a)は位相欠陥が存在する領域の暗視野検査像の光強度分布を示す図、図6(b)は2次元アレイセンサー受光面に結像された位相欠陥の暗視野検査像とピクセルとの関係を説明する図である。
【0052】
前述の図5を用いて説明した結像光学系DPOを用いてマスクブランクMBに存在する位相欠陥(例えば前述の図3(a)に示す位相欠陥PDに相当)を観察すると、図6(a)に示すような暗視野検査像の光強度分布34が得られる。実際に2次元アレイセンサーSEで得られる信号は、これらのような暗視野検査像の光強度分布ではなく、ピクセルごとに蓄積されるピクセル光強度の羅列として得られる。
【0053】
ここで、マスクブランクMBを観察する際には、前述の図5(b)または図5(c)に示した結像光学系DPOの瞳面において、中心遮蔽NA(符号NAIN)以内であって、線状遮蔽部の幅Wよりも大きい光束となる照明NAを有するEUV光をマスクブランクMBに照射し、ピクセル信号として得られる暗視野検査像のコントラストを向上させる。
【0054】
図6(b)は、26倍に拡大されて2次元アレイセンサーSEの受光面に結像された、位相欠陥の拡大像(光強度分布34)を含む暗視野検査像とピクセルとの関係を説明する図である。図中、符号Pxyはピクセルの一辺のサイズ、符号35はピクセルの境界を表し、符号36は位相欠陥の拡大像を含むピクセル、符号37は位相欠陥の拡大像を含まないピクセルを示している。位相欠陥の拡大像(光強度分布34)を含むピクセル36に蓄積される光量は、位相欠陥の拡大像を含まないピクセル37に蓄積される光量と比べて多い量となるので、位相欠陥を含むピクセルの位置を特定することができる。
【0055】
≪EUVL用マスクの検査方法≫
次に、吸収体パターンを有するEUVL用マスクMの観察において、隣り合う吸収体パターンの間に存在する位相欠陥(例えば前述の図3(b)に示す位相欠陥PDに相当)を観察した結果について図7(a)、(b)および(c)ならびに図8(a)および(b)を用いて説明する。図7(a)は前述の図4に示す結像光学系DPOおよびEUVL用マスクMを含む部分の拡大図(吸収体パターンから回折するEUV光と暗視野結像光学系との関係を説明する図)、図7(b)は位相欠陥と吸収体パターンを含む場合の位相欠陥が存在する領域の暗視野検査像の光強度分布を示す図、図7(c)は吸収体パターンのみの暗視野検査像の光強度分布を示す図である。また、図8(a)は結像光学系DPOの瞳面と吸収体パターンのエッジからの回折光成分との関係を説明する図、図8(b)は画素信号列として得られる検出信号強度分布を示す図である。
【0056】
図7(a)に示すように、EUVL用マスクMのパターン面から反射する光は、位相欠陥による散乱光のほか、吸収体パターンの周期性に依存して生成される高次の回折光成分38,39が凹面鏡L1に捕らえられ、2次元アレイセンサーSEの受光面に暗視野検査像を生成する。その結果、図7(b)に示すように、位相欠陥の暗視野検査像の光強度分布40と吸収体パターンのエッジからの回折光強度分布41が得られる。図7(c)は、位相欠陥の暗視野検査像を含まず、吸収体パターンのエッジからの回折光成分のみが得られた場合の暗視野検査像の光強度分布を示している。
【0057】
ここで、EUVL用マスクMを観察する際には、前述の図5(c)に示した結像光学系DPOの瞳面において、X軸およびY軸それぞれに沿って設けられた線状遮蔽部の太さ(幅)と同じか、または線状遮蔽部の太さ(幅)よりも小さい光束となる照明NAを有するEUV光をEUVL用マスクMに照射する。
【0058】
図8(a)は、結像光学系DPOの瞳面と吸収体パターンのエッジからの回折光成分との関係を説明する図である。円形領域43−1は照明NAおよびEUVL用マスクMのパターン面からの0次の反射成分の大きさを表しており、中心遮蔽部で遮蔽されている。さらに、吸収体パターンのエッジからの1次回折光成分43−2、2次回折光成分43−3、3次回折光成分43−4、4次回折光成分43−5、ならびに−1次回折光成分43−6、−2次回折光成分43−7、−3次回折光成分43−8、−4次回折光成分43−9は、ほとんど線状遮蔽部で遮蔽される。
【0059】
その結果、図8(b)に示すように、線状遮蔽部が無い場合に得られる検出信号44に対して、線状遮蔽部が有る場合に得られる検出信号45は、信号強度レベルは低下するものの、相対的に位相欠陥を含むピクセル強度が周囲より明るくなるピクセル信号として検出される。すなわち、線状遮蔽部が在る場合に得られる検出信号45では、位相欠陥を含まないピクセル信号は充分に小さい値となるので、検出画像のコントラストが向上する。
【0060】
大半の半導体デバイスの各パターンは、X方向およびY方向に配置されるパターン群を基本とするので、前述の線状遮蔽部は、結像光学系DPOの瞳面のX方向およびY方向の両方向に沿って配置すれば充分である。
【0061】
照明NAをマスクブランク検査と同様に、中心遮蔽NAの大きさと同等とすると、高次の回折光成分は線状遮蔽部で遮光しきれずに結像光学系DPOの瞳面を通過し、結果としてピクセル信号として得られる暗視野検査像のコントラストが低下する。しかし、照明NAを絞ることにより、暗視野検査像のコントラストを向上できて、感度の高い位相欠陥検出を行うことができる。
【0062】
以上に説明した本実施の形態1のマスク欠陥検査のフローを、前述の図4に示した検査装置および図9に示すフローチャートを用いて説明する。
【0063】
<ステップS101>
まず、被検査試料であるマスクブランクまたはEUVL用マスクを、検査装置のステージ7の上に載置する。必要に応じてEUVL用マスク上の基準マークを読み取り、マスクステージ制御回路12によってステージ7を位置決めする。この位置をレーザ側長器(レーザ干渉計)16で読み取って、EUVL用マスク上の基準座標として記憶する。
【0064】
<ステップS102>
被検査試料の情報、すなわち吸収体パターンを設ける前のマスクブランクか、または吸収体パターンを有するEUVL用マスク(吸収体パターン付マスク)かの判断情報を入力する。EUVL用マスクである場合、もし検査すべき領域が限定されることが分かっていれば、必要に応じて検査領域の情報もあわせて入力する。
【0065】
<ステップS103→ステップS104>
被検査試料がマスクマスクブランクの場合は、EUV光の照明NAを規定する照明絞り、すなわちアパーチャAPTを絞り駆動部にて制御して照明NAを中心遮断NA以内で大きい値に設定して、マスクブランクを照射する。
【0066】
<ステップS105>
その後、マスクブランク全面にわたって位相欠陥の検出を行い、検出した位相欠陥の位置情報および信号強度情報を記憶する。位相欠陥の位置情報は、位相欠陥を含む信号が得られたピクセルの位置情報から算出することができる。
【0067】
<ステップS106>
さらに、信号強度の大きい順に番号を付与し、これを位相欠陥が転写パターンに与える影響の大きさの度合いを示す優先順位として、あわせて記憶するようにする。
【0068】
<ステップS103→ステップS107>
一方、ステップS103において、被検査試料が吸収体パターンを有するEUVL用マスクの場合は、EUV光の照明NAを規定するアパーチャAPTを制御して照明NAを中心遮蔽NAより充分小さくし、線状遮蔽部(前述の図5(c)参照)の幅と同じか、または線状遮蔽部の幅よりも小さい値に設定して、EUVL用マスクを照射する。
【0069】
<ステップS108>
予め入力された検査すべき領域の範囲内で、EUVL用マスクの位相欠陥の検出を行う。もし、マスクブランクの段階で位相欠陥が存在しても、位相欠陥が吸収体パターンで被覆されていれば実質的な欠陥とはならず、位相欠陥の検出信号も得られない。
【0070】
<ステップS109>
残存する位相欠陥(吸収体パターンに被覆されず、パターン転写に実質的に影響を与える位相欠陥)の情報を記憶する。位相欠陥が吸収体パターンで被覆されていれば、この時点で位相欠陥の検出信号は得られない。被覆されていなければEUVL用マスクに残存する位相欠陥として検出される。
【0071】
このように、本実施の形態1によれば、吸収体パターンを形成する前のマスクブランク、および吸収体パターンを有するEUVL用マスクのいずれであっても、多層膜反射面に残存する位相欠陥を高い検出感度で検出することができる。
【0072】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、前述の実施の形態1において説明したマスクブランクの位相欠陥の検査工程と、EUVL用マスクに残存する位相欠陥の検査工程を含み、残存する位相欠陥が吸収体パターンの転写に影響を与えると判断した場合は位相欠陥の近傍の吸収体パターンの形状を修正することにより、見かけ上、位相欠陥の影響を低減または消滅させることを可能とするEUVL用マスクの製造方法について説明する。
【0073】
まず、マスクブランクMBを準備する。図10は、前述の実施の形態1において説明したマスクブランクの欠陥検査を用いて検出されたマスクブランクMB上の位相欠陥の一例を示す図である。位相欠陥46−1,46−2,46−3,46−4は、マスクブランクMB上に形成される吸収体パターンを投影露光装置によってウェハの主面上に転写する際に致命的な影響を与える欠陥であり、高い優先順位が付与された位相欠陥である。一方、位相欠陥47−1,47−2,47−3は、低い優先順位が付与された位相欠陥である。これらの位相欠陥は全て、マスクブランクMB上に設けられた基準マーク48−1,48−2,48−3,48−4で規定された座標系において、その位置が求められている。
【0074】
次に、マスクブランクMB上に吸収体パターンを形成してEUVL用マスクを形成する。最終的にはEUVL用マスクの構造は前述の実施の形態1の図1において示した構造と同じ構造となる。このときに、前述の優先順位の高い番号が付与された位相欠陥を吸収体パターンで最大限に被覆できるように、吸収体パターンの形成位置を基準マーク48−1,48−2,48−3,48−4に対して決定して、吸収体パターンを形成する。
【0075】
その欠陥の一例を図11(a)および(b)に示す。図11(a)は、優先順位の高い位相欠陥51−1,51−2が、いずれも吸収体パターンABSで完全に被覆された例を示すマスクの要部平面図である。すなわち、位相欠陥はEUVL用マスク上では消滅したことになる。一方、図11(b)は、位相欠陥52−1,52−2が吸収体パターンABSに被覆されず、EUVL用マスク上に残存した例を示すマスクの要部平面図である。優先順位が高い欠陥でも、吸収体パターンの形成の際に位置誤差が生じると、吸収体パターンABSに被覆されない場合もありうる。
【0076】
このような吸収体パターンを形成したEUVL用マスクにおいて位相欠陥が被覆されたか否かの検証は、EUV光を検査光とする検査装置を用いて行われる。特に、前述の実施の形態1で示したEUVL用マスクの検査方法が有益である。このとき、EUVL用マスクの検査領域は、前述のマスクブランク検査で位相欠陥が検出された位置を含む狭い領域でも充分である。残存した位相欠陥の処理が課題になるが、ここで、例えば位相欠陥52−1は吸収体パターンから充分離れているので影響は少ないと考えられる。もし、影響が大きい場合は、位相欠陥のみ局所的に吸収体パターンを形成することにより、位相欠陥の影響を低減することができる。
【0077】
また、隣り合う吸収体パターンの間に残存する位相欠陥52−2については、例えば特表2002−532738号公報(特許文献4)に開示された方法、すなわち位相欠陥と隣り合う吸収体パターンの輪郭を修正することにより、露光装置でパターン転写したときの影響を低減することができる。
【0078】
以上の吸収体パターンの形成または輪郭変更を行っても、位相欠陥の影響を低減できない場合、そのEUVL用マスクは不良品となるが、多くの場合、致命的な位相欠陥は吸収体パターンで被覆されるので、EUVL用マスクに残存する位相欠陥の影響は充分に低減される。
【0079】
以上に説明した本実施の形態2のマスク製造方法のフローを、図12に示すフローチャートを用いて説明する。
【0080】
<ステップS201>
まず、基板に多層膜とキャッピング層を被着したマスクブランクを準備する。
【0081】
<ステップS202>
前述の実施の形態1において説明した検査方法を用いてマスクブランクを検査する。
【0082】
<ステップS203→ステップS204>
マスクブランクに位相欠陥が存在する場合は、検出した位相欠陥に優先順位を付与すると同時に、優先順位と所定の基準マークに対する位相欠陥の位置座標(欠陥座標)を記憶する。
【0083】
<ステップS205>
マスクブランク上に吸収体パターンを形成する。その際、前述の優先順位の高い位相欠陥が吸収体パターンに最大限被覆されるように吸収体パターンの位置を算出し、パターン形成を行う。
【0084】
<ステップS206>
吸収体パターンの欠陥検査を行う。もし、吸収体パターンに位相欠陥が存在する場合は、その修正すべき箇所と修正量を別途算出する。
【0085】
<ステップS207>
前述の実施の形態1において説明した検査方法を用いて吸収体パターンを有するEUVL用マスクを検査する。この検査では、必ずしもEUVL用マスク全面を検査する必要はなく、ステップS204で優先順位を付与して記憶した位相欠陥の位置座標およびその近傍の限られた領域でもよい。
【0086】
<ステップS208→ステップS209>
ステップS207の検査の結果、EUVL用マスクに致命的な位相欠陥が残存すると判断した場合は、位相欠陥の影響を低減するため、前述の吸収体パターンの局所的な修正すべき箇所と修正量を算出する。
【0087】
<ステップS212→ステップS213>
以上の工程が終了した後、吸収体パターンに修正すべき箇所が存在する場合は、前述の局所的な吸収体パターンの修正を行う。修正が妥当に行われたかどうかは、再度EUV光を検査光とする検査を行うか、実際の露光評価を行うなど、適宜チェックすればよい。以上の工程によりEUVL用マスクの製造工程を終了する。
【0088】
<ステップS203→ステップS210>
一方、ステップS203において、マスクブランクに位相欠陥は存在しないと判断された場合は、通常の工程で吸収体パターンを形成してEUVL用マスクを製造する。
【0089】
<ステップS211>
その後、従来の吸収体パターンの欠陥検査を行う。もし、吸収体パターンに位相欠陥が存在する場合は、その修正すべき箇所と修正量を別途算出する。以後、ステップS212に移行して前述と同様の工程を経て、最終的にEUVL用マスクの製造工程を終了する。
【0090】
このように、本実施の形態2によるマスク製造方法によれば、製造したEUVL用マスクに実質的に存在する位相欠陥を大幅に低減できると同時に、EUVL用マスクの多層膜に残存する位相欠陥に起因するパターン投影像の欠陥発生を、吸収体パターンの修正によって回復することができる。その結果、マスクブランクに位相欠陥が存在しても、EUVL用マスクが完成する段階では実質的に無欠陥となり、これを良品として使用できる頻度が増大する。従って、EUVL用マスクの製造歩留まりを大幅に向上させることができ、EUVL用マスクのコスト低減に寄与することができる。
【0091】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、EUV光を検査光とするEUVL用マスクの検査方法および検査装置、さらに、EUVL用マスクの製造方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 光源
2 照明光学系
3 縮小投影光学系
4 ウェハ
5 ステージ
6 光源(EUV光源、プラズマ光源)
7 マスクステージ
8 センサー回路
9 パターンメモリ
10 信号処理回路
11 タイミング制御回路
12 マスクステージ制御回路
13 システム制御コンピュータ
14 データファイル
15 ミラー
16 レーザ側長器(レーザ干渉計)
17 位置回路
18 EUV光用センサー
19 照明強度補正回路
20 記憶装置
21 パターンモニタ
22 画像出力部
30 光
31−1,31−2,31−3 方向
32−1,32−2,32−3 梁
33−1,33−2,33−3,33−4 線状遮蔽部
34 光強度分布
35 ピクセルの境界
36 位相欠陥の像を含むピクセル
37 位相欠陥の像を含まないピクセル
38,39 高次の回折光成分
40 位相欠陥の暗視野検査像の光強度分布
41 回折光強度分布
43−1 円形領域
43−2,43−3,43−4,43−5 回折光成分
43−6,43−7,43−8,43−9 回折光成分
44,45 検出信号
46−1,46−2,46−3,46−4 位相欠陥
47−1,47−2,47−3 位相欠陥
48−1,48−2,48−3,48−4 基準マーク
51−1,51−2 位相欠陥
ABS 吸収体パターン
APT 開口部
BM EUV光(EUV検査光、照明光、照射光)
BSP ビームスプリッタ
BUF バッファ層
CAP キャッピング層
CIO 照明光学系
CF メタル膜
DPO 結像光学系
L1 凹面鏡
L2 凸面鏡
M EUVL用マスク
MA1,MA2,MA3,MA4 アライメントマークエリア
MB マスクブランク
MDE デバイスパターンエリア
ML 多層膜
MS 基板
NAILL 照明NA
NAIN 中心遮蔽NA
NAOU 集光NA
PD 位相欠陥
PM 多層膜ミラー
Pxy ピクセルの一辺のサイズ
SE 2次元アレイセンサー(画像検出器)
SLI 収束ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むEUV光を反射するマスクのマスク検査方法:
(a)前記マスクに前記EUV光を照射する工程;
(b)前記マスクから反射する前記EUV光を、暗視野結像光学系を介して画像検出器の受光面に結像して、前記受光面に暗視野検査像を形成する工程;
(c)前記画像検出器で得られる検出信号から、前記マスクに存在する位相欠陥の検出信号を検出する工程、
さらに、前記(a)工程は、以下の工程を含む:
(a1)前記マスクの検査領域に吸収体パターンが存在するか否かの情報を入力する工程;
(a2)前記吸収体パターンが存在する場合と、前記吸収体パターンが存在しない場合とによって、前記EUV光の照明NAを変える工程。
【請求項2】
請求項1記載のマスク検査方法において、
前記暗視野結像光学系は複数の多層膜反射ミラーで構成される拡大光学系であり、かつ、前記暗視野結像光学系の瞳面には、前記瞳面の中心に配置され、前記EUV光を遮蔽する中心遮蔽部と、X軸および前記X軸と直交するY軸に沿ってそれぞれ配置され、前記中心遮蔽部の直径よりも小さい幅を有し、前記EUV光を遮断する線状遮蔽部とが設けられており、
前記吸収体パターンが存在しない場合は、中心遮蔽NA以内で、かつ前記線状遮蔽部の幅よりも大きい照明NAを有する前記EUV光を照射し、
前記吸収体パターンが存在する場合は、前記線状遮蔽部の幅と同じ照明NAまたは前記線状遮蔽部の幅よりも小さい照明NAを有する前記EUV光を照射して、
前記マスクに存在する前記位相欠陥を検出することを特徴とするマスク検査方法。
【請求項3】
吸収体パターンを有するマスクを載置してX方向および前記X方向と直交するY方向に移動できるステージと、
EUV光を発生させる光源と、
前記マスクに前記EUV光を照射する照明光学系と、
前記EUV光を前記マスクに照射する際に、照明NAを変化させる照明絞りと、
前記マスクからの散乱光を捕集して、暗視野検査像を形成する暗視野結像光学系と、
前記暗視野検査像を画素信号として取得する画像検出器と、
前記吸収体パターンの情報を基に前記照明絞りを調整する絞り駆動部と、
を有することを特徴とするマスク検査装置。
【請求項4】
請求項3記載のマスク検査装置において、
前記暗視野結像光学系の瞳面には、前記瞳面の中心に配置され、前記EUV光を遮蔽する中心遮蔽部と、X軸および前記X軸と直交するY軸に沿ってそれぞれ配置され、前記中心遮蔽部の直径よりも小さい幅を有し、前記EUV光を遮断する線状遮蔽部とが設けられていることを特徴とするマスク検査装置。
【請求項5】
以下の工程を含むマスク製造方法:
(a)基板の主面上に多層膜が形成されたマスクブランクを準備する工程;
(b)第1EUV光を前記マスクブランクに照射して、前記マスクブランクの位相欠陥を検出する工程;
(c)前記(b)工程で検出された前記マスクブランクの前記位相欠陥の位置座標を記憶し、かつ前記マスクブランクの前記位相欠陥に、パターン転写に与える影響の度合いを表す優先順位を付与する工程;
(d)前記多層膜上に吸収体パターンを形成してマスクを形成する工程;
(e)第2EUV光を検査光とする検査装置を用いて、前記マスクの位相欠陥を検出する工程、
さらに、前記(b)工程は、以下の工程を含む:
(b1)前記マスクブランクに、中心遮蔽NA以内の照明NAを有する前記第1EUV光を照射する工程;
(b2)前記マスクブランクから反射する前記第1EUV光を、第1暗視野結像光学系を介して第1画像検出器の第1受光面に結像して、前記第1受光面に第1暗視野検査像を形成する工程;
(b3)前記第1画像検出器で得られる検出信号から、前記マスクブランクの前記位相欠陥の検出信号を検出する工程、
さらに、前記(d)工程は、以下の工程を含む:
(d1)前記優先順位の高い順に従って、前記マスクブランクの前記位相欠陥を前記吸収体パターンにより被覆する工程。
【請求項6】
請求項5記載のマスク製造方法において、
前記(e)工程に用いる前記検査装置の第2暗視野結像光学系は、前記第2暗視野結像光学系の瞳面の中心に配置され、前記第2EUV光を遮蔽する中心遮蔽部と、X軸および前記X軸と直交するY軸に沿ってそれぞれ配置され、前記中心遮蔽部の直径よりも小さい幅を有し、前記第2EUV光を遮断する線状遮蔽部とを有し、
前記(b1)工程における前記照明NAは、前記中心遮蔽NA以内で、かつ前記線状遮蔽部の幅よりも大きいことを特徴とするマスク製造方法。
【請求項7】
請求項5記載のマスク製造方法において、
前記(e)工程に用いる前記検査装置の第2暗視野結像光学系は、前記第2暗視野結像光学系の瞳面の中心に配置され、前記第2EUV光を遮蔽する中心遮蔽部と、X軸および前記X軸と直交するY軸に沿ってそれぞれ配置され、前記中心遮蔽部の直径よりも小さい幅を有し、前記第2EUV光を遮断する線状遮蔽部とを有し、
さらに、前記(e)工程は、以下の工程を含む:
(e1)前記マスクに、前記線状遮蔽部の幅と同じ照明NAまたは前記線状遮蔽部の幅よりも小さい照明NAを有する前記第2EUV光を照射する工程;
(e2)前記マスクから反射する前記第2EUV光を、前記第2暗視野結像光学系を介して第2画像検出器の第2受光面に結像して、前記第2受光面に第2暗視野検査像を形成する工程;
(e3)前記第2画像検出器で得られる検出信号から、前記マスクの前記位相欠陥の検出信号を検出する工程。
【請求項8】
請求項5記載のマスク製造方法において、さらに以下の工程を含む:
(f)前記吸収体パターンに被覆されずに前記マスクに残存する位相欠陥を検出する工程;
(g)前記マスクに残存する前記位相欠陥が転写像に与える影響を予測する工程;
(h)前記影響が低減できる位相欠陥を検出し、前記影響が低減できる前記位相欠陥に隣り合う前記吸収体パターンの形状を修正する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−26253(P2013−26253A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156288(P2011−156288)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】