説明

マスク

【課題】インフルエンザ等の呼吸系感染症の感染者からインフルエンザウィルス等の病原体が外部に放出されることを防止することができるマスクの提供。
【解決手段】着用者の鼻及び口を含む顔面下部を覆う本体部と、前記本体部に結合され、前記本体部を着用者の顔面下部に固定する固定部とを具備し、前記本体部が、内面シートと、病原体不活性化層と、外面シートとが着用者側からこの順で積層された積層体を有し、前記積層体の通気度が所定値以上である積層部と、前記積層部の下部に設けられた、通気度が所定値以下であるシート部材により構成され、着用者の下あごの先端部を収容する空間を形成する下部ポケット部と、前記積層部の上部に設けられた、通気度が所定値以下であるシート部材により構成され、着用者の鼻を収容する空間を形成する上部ポケット部等とを有する、マスク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、耐性結核、ウィルス性肺炎、インフルエンザ等の呼吸系感染症が流行し、それによる被害が世界的に広がっている。特に、いわゆる新型インフルエンザは、人類が抗体を持っていないため、急速に感染が伝播し、パンデミック状態に至りやすい。このような大流行を予防すべく、うがい、手洗いに加えてマスクの着用が勧められている。
しかしながら、インフルエンザに対処するためのマスクについては、外科手術用マスク(サージカルマスク)について行われているような基礎検討及び規格化が行われていない。よって、花粉用、粉塵用のマスクやサージカルマスクを転用しているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
インフルエンザは、季節性インフルエンザ及び新型インフルエンザのいずれであっても、感染者の唾液や鼻水に含まれるインフルエンザウィルスが、他人の口、鼻等の呼吸器系から体内に侵入することにより感染する。
そこで、本発明者は、従来の花粉用、粉塵用のマスクやサージカルマスクでは実現することのできなかった、インフルエンザの感染者からインフルエンザウィルスが外部に放出されることを防止することにより、インフルエンザの大流行を抑制することができると考えた。
したがって、本発明は、インフルエンザ等の呼吸系感染症の感染者からインフルエンザウィルス等の病原体が外部に放出されることを防止することができるマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、新規構造を有するマスクを完成させた。
【0005】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(19)を提供する。
(1)着用者の鼻及び口を含む顔面下部を覆う本体部と、前記本体部に結合され、前記本体部を着用者の顔面下部に固定する固定部と
を具備し、
前記本体部が、
内面シートと、病原体不活性化層と、外面シートとが着用者側からこの順で積層された積層体を有し、前記積層体のフラジール形法による通気度が15cm3/(cm2・s)以上である積層部と、
前記積層部の下部に設けられた、フラジール形法による通気度が2cm3/(cm2・s)以下であるシート部材により構成され、着用者の下あごの先端部を収容する空間を形成する下部ポケット部と、
前記積層部の上部に設けられた、フラジール形法による通気度が2cm3/(cm2・s)以下であるシート部材により構成され、着用者の鼻を収容する空間を形成する上部ポケット部と、前記積層部の上部に設けられた、着用者の鼻の形状に沿って変形しうるテープ部材と、前記積層部の上部に設けられた、着用者の鼻の形状に沿って変形しうるワイヤー部材とからなる群から選ばれる少なくとも一つと
を有する、マスク。
(2)前記下部ポケット部の縁部の少なくとも一部に弾性材料が設けられている、上記(1)に記載のマスク。
(3)前記下部ポケット部の前記縁部の少なくとも一部に設けられている前記弾性材料が、着用時に、着用者の下あごの下側に位置するように配置されている、上記(2)に記載のマスク。
(4)前記上部ポケット部の縁部の少なくとも一部に弾性材料が設けられている、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のマスク。
【0006】
(5)前記病原体不活性化層が、複数枚のシート状材料から構成されている、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のマスク。
(6)前記病原体不活性化層を構成する前記複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、折りたたまれている、上記(5)に記載のマスク。
(7)前記病原体不活性化層を構成する前記複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、無荷重下での厚さが0.5mm以上、見掛け比重が0.1以下である、上記(5)又は(6)に記載のマスク。
(8)前記病原体不活性化層を構成する前記複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、抗ウィルス性能を有する合成繊維を用いた不織布である、上記(5)〜(7)のいずれかに記載のマスク。
(9)前記病原体不活性化層を構成する前記複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、セルロース系繊維を用いた親水性の不織布である、上記(5)〜(8)のいずれかに記載のマスク。
(10)前記病原体不活性化層を構成する前記複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、超微細セルロースを用いた不織布である、上記(5)〜(9)のいずれかに記載のマスク。
(11)前記病原体不活性化層を構成する前記複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、金属イオンを担持した無機物を含有するシートである、上記(5)〜(10)のいずれかに記載のマスク。
(12)前記金属イオンを担持した無機物を含有するシートが、超微細セルロースを用いた不織布である、上記(11)に記載のマスク。
(13)前記金属イオンがCuイオン、Agイオン、Znイオン、Tiイオン、Auイオン、Ptイオン、Mnイオン、Feイオン及びZrイオンからなる群から選ばれた少なくとも1種である、上記(11)又は(12)に記載のマスク。
(14)前記無機物がゼオライト、ドロマイト、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、活性炭、活性アルミナ、二酸化チタン、シラスバルーン、シリカゲル及びモレキュラーシーブからなる群から選ばれた少なくとも1種である、上記(11)〜(13)のいずれかに記載のマスク。
【0007】
(15)前記固定部が、着用者の耳に掛けるループ状の伸縮性材料により構成されており、前記伸縮性材料が、エラストマーフィルムの両面を不織布で積層した一方向伸張性の弾性複合体にスリット又は切り欠きを設けたものである、上記(1)〜(14)のいずれかに記載のマスク。
(16)前記内面シートが多孔性である、上記(1)〜(15)のいずれかに記載のマスク。
(17)前記内面シートが表面に畝状の凹凸構造を有する、上記(1)〜(16)のいずれかに記載のマスク。
(18)前記本体部が、前記積層部の前記内面シートの着用者側に、更に、着脱可能な交換用シート部材を有する、上記(1)〜(17)のいずれかに記載のマスク。
(19)前記本体部の前記下部ポケット部及び前記上部ポケット部と前記固定部とが、一つのシート部材で成形されている、上記(1)〜(18)のいずれかに記載のマスク。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマスクは、インフルエンザ等の呼吸系感染症の感染者からインフルエンザウィルス等の病原体が外部に放出されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のマスクの例を示す模式図である。
【図2】本発明のマスクの積層部を示す模式的な分解下面図である。
【図3】本発明のマスクの本体部の例を示す模式図である。
【図4】本発明のマスクの本体部の別の例を示す模式的な縦端面図である。
【図5】本発明のマスクの本体部の別の例を示す模式的な縦端面図である。
【図6】本発明のマスクの別の例を示す模式図である。
【図7】本発明のマスクの更に別の例を示す模式図である。
【図8】本発明のマスクの更に別の例を示す模式図である。
【図9】種々の固定部を具備する本発明のマスクの別の例を内側から見た模式的な平面図である。
【図10】種々の固定部を具備する本発明のマスクの別の例を内側から見た模式的な平面図である。
【図11】種々の固定部を具備する本発明のマスクの別の例を示す模式図である。
【図12】マスクのリーク率を測定する装置を示す模式図である。
【図13】マスクのリーク率の測定に用いるアルコール含有空気を調製する装置を示す模式図である。
【図14】マスクのリーク率の測定に用いるマスク装着治具を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のマスクを添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、本明細書においては、本発明のマスクを実際に着用した場合に、着用者の肌に近い側を「内」といい、遠い側を「外」という。また、本発明のマスクを実際に着用した場合に、着用者の体の上側に対応する側を「上」といい、下側に対応する側を「下」という。また、各図中、理解を容易にするために、実際には接触している部材を離間させて示すことがある。
【0011】
図1は、本発明のマスクの例を示す模式図である。図1(A)は斜視図であり、図1(B)は本発明のマスクを内側から見た平面図であり、図1(C)は図1(B)中のIC−IC線に沿った縦端面図である。なお、添付した図面中の各平面図においては、図の上側にマスク等の上側が位置するように図示してある。また、添付した図面中の各縦端面図においては、図の左側にマスク等の上側が位置するように図示してある。
【0012】
本発明のマスク100は、基本的に、着用者の鼻及び口を含む顔面下部を覆う本体部10と、本体部10に結合され、本体部10を着用者の顔面下部に固定する固定部90とを具備する。
本体部10は、
内面シートと、病原体不活性化層と、外面シートとが着用者側からこの順で積層された積層体30を有し、積層体30のフラジール形法による通気度が15cm3/(cm2・s)以上である積層部20と、
積層部20の下部に設けられた、フラジール形法による通気度が2cm3/(cm2・s)以下であるシート部材により構成され、着用者の下あごの先端部を収容する空間S1を形成する下部ポケット部40と、
積層部20の上部に設けられた、フラジール形法による通気度が2cm3/(cm2・s)以下であるシート部材により構成され、着用者の鼻を収容する空間S2を形成する上部ポケット部50と
を有する。
【0013】
図2は、本発明のマスク100の積層部を示す模式的な分解下面図である。
積層部20は、内面シート32と、病原体不活性化層34と、外面シート36とが着用者側(図中、上側)からこの順で積層された積層体30を有する。
図2に示される積層体30は、各1層の内面シート32と、病原体不活性化層34と、外面シート36とで構成され、3層構造となっている。病原体不活性化層は、後述するように、複数枚のシート状材料から構成されているのが好ましい。この場合、内面シートと外面シートが各1層であると、病原体不活性化層が2層のシート状材料から構成されているときには、積層体は4層構成となり、病原体不活性化層が3層のシート状材料から構成されているときには、積層体は5層構成となる。
マスクは、たとえていえば、機能や原理は空気清浄機のフィルターやろ過装置と同様であり、多層構造にしたり、ある程度の厚さを持たせたりすることによって、例えば、以下に挙げるような効果を奏して、安定的な使用が実現されるのである。
(1)排気された気体と接触する表面積を増大させる効果
(2)嵩高で内部に空気が含有される状態をつくり、その空気と排気される気体とを置換させることにより気体の流速を低下させる効果
(3)排気された気体がバイパスすることを防ぎ、フィルター機能を効率的に機能させる効果
(4)排気された気体が病原体不活性化層と接触する頻度を増やし、不活性化を効率的に行う効果
【0014】
内面シート32は、本体部が後述する交換用シート部材を有しない場合は、着用時に、着用者と接した状態となって用いられる。
内面シート32は、後述する積層体30のフラジール形法による通気度が15cm3/(cm2・s)以上になるものであれば特に材料を限定されない。例えば、乾式不織布、湿式不織布、スパンメルト不織布、スパンレース不織布等の不織布類;化合繊製織物;ニット類を用いることができる。中でも、目付量の低いものが、通気性が優れたものになる点で好ましい。
中でも、内面シート32が多孔性であるのが好ましい態様の一つである。多孔性の材料としては、具体的には、例えば、ネット状、メッシュ状又はガーゼ状の不織布;開口フィルム;化合繊フィラメントを交織し又は編織して得られるネット、メッシュ又はレース類が挙げられる。内面シート32が多孔性であると、皮膚との接触面積が小さくなり、着用者の装着感が優れたものになる。
また、内面シート32が表面に畝状の凹凸構造を有するのも好ましい態様の一つである。この態様においては、皮膚との接触面積が小さくなり、かつ、クッション性を有するため、いわゆる「ソフトタッチ」な感触を得ることができ、着用者の装着感が優れたものになる。
さらに、内面シート32が、本発明者が特開2002−238946号公報で提案したような漏斗型の開口フィルムであるのも好ましい態様の一つである。この態様においては、排出された呼気を分配整流化する効果があり、積層体30の表面の全体を効率的に利用することが容易となる。
【0015】
内面シート32を構成する材料は、親水性であってもよく、疎水性であってもよい。
内面シート32を構成する材料としては、防汚処理、抗菌処理、撥水処理等を施した材料を用いることもできる。
内面シート32を構成する材料は、その材料が着用者の口から体内に摂取される可能性もあるので、安全性の高いものであるのが好ましい。
内面シート32を構成する材料は、使用中に摩擦等によって粉塵、脱落繊維くず等を発生させないものであるのが好ましい。
内面シート32を構成する材料は、着用者の口唇に接して体脂肪や口紅などの化粧品が付着したり汚れたりしにくいものであるのが好ましい。
内面シート32を構成する材料は、その表面で着用者から排出された病原体や常在菌が繁殖しにくいものであるのが好ましい。
【0016】
内面シート32は、図2においては、積層体30の全面にわたって配置されているが、例えば、積層体30のうち口唇部周辺に当接する部分のみに配置するなど、部分的に配置することもできる。
内面シート32は、図2においては、病原体不活性化層34の上に単に積層して配置されているが、内面シート32の表面と病原体不活性化層34の表面とは接合されて一体化されていてもよい。
内面シート32と病原体不活性化層34とが単に積層されている場合には、後述するように、両者を分離して、内面シート32を交換しうる態様とすることが容易である。この態様は、例えば、本発明のマスクを長時間継続して使用する場合に、食事、入浴等のためにマスクを取り外す際に内面シート32を交換することにより、清潔な状態を保持するとともに、未使用品の優れた装着感を得ることができる。
【0017】
本体部が、積層部の内面シートの着用者側に、更に、着脱可能な交換用シート部材を有するのが本発明の好ましい態様の一つである。
交換用シート部材は、後述する積層体30のフラジール形法による通気度が15cm3/(cm2・s)以上になるものであれば特に材料を限定されないが、吸水性に優れる材料であるのが好ましい。吸収性に優れる材料としては、例えば、綿ガーゼ、不織布(例えば、旭化成社製のベンリーゼ、フタムラ化学社製のTCF)が挙げられる。
交換用シート部材は、1枚であってもよいし、複数枚を重ねて用いてもよい。中でも、1枚又は2枚であるのが好ましい。
交換用シート部材は、着用時に、着用者の口の周囲を被覆しうる大きさ及び位置とするのが好ましい。交換用シート部材を有する場合、清潔な状態を保持するという衛生上の効果を奏するとともに、口から排気される圧力を持った呼気が積層体に衝突する速度を緩和する、緩衝材としての効果も奏する。本発明のマスクのように高通気性の積層部を有するマスクでは、呼気が直接積層部に排出されると、その部位での呼気の通過量が過大となり、その部位の不活性化の負荷が高くなるため、不活性化されない病原体が通過してしまう確率が高くなることがある。交換用シート部材を有する場合、呼気の排出部の近傍に緩衝材が設けられることになるため、呼気がマスクの積層部の一部に片寄らず、積層部の表面全体に行き渡りやすくなるので、病原体の不活性化がより効率的になる。
交換用シート部材は、洗濯することにより再使用することもできるが、汚れやすくウィルスの付着しやすい部位であるので、密閉して衛生的に廃棄するのが好ましい。
本体部が交換用シート部材を有する態様は、例えば、本発明のマスクを長時間継続して使用する場合に、食事、入浴等のためにマスクを取り外す際に交換用シート部材を交換することにより、清潔な状態を保持するとともに、未使用品の優れた装着感を得ることができる。中でも、内面シートが他の部材(例えば、病原体不活性化層)と分離することが困難である場合に、上記効果を得ることができるので、好ましい。
【0018】
外面シート36は、後述する積層体30のフラジール形法による通気度が15cm3/(cm2・s)以上になるものであれば特に材料を限定されない。例えば、乾式不織布、湿式不織布、スパンメルト不織布、スパンレース不織布等の不織布類;化合繊製織物;ニット類を用いることができる。これらの中でも、緻密な組織を有し、構成繊維繊度の比較的細かいものが、着用者の呼気が外部に排出される際の飛沫等を捕捉するため、また、着用者が外気を吸い込む際の塵等を捕捉するため、好ましい。
中でも、PE、PP、PET、EVA、PE/PP複合繊維、PE/PET複合繊維等の合成繊維のスパンメルト不織布が好ましく、メルトブローンの複層体であるSMS、SMMSがより好ましい。
【0019】
外面シート36を構成する材料は、親水性であってもよく、疎水性であってもよい。
外面シート36を構成する材料としては、防汚処理、抗菌処理、撥水処理等を施した材料を用いることもできる。
外面シート36を構成する材料は、本発明のマスクの着脱時に手で表面に触れても、表面が汚れにくいように、表面が平滑であるのが好ましい。
外面シート36を構成する材料は、使用中に摩擦等によって粉塵、毛羽抜け等を発生させないものであるのが好ましい。
【0020】
外面シート36は、図2においては、積層体30の全面にわたって配置されているが、部分的に配置することもできる。
外面シート36は、図2においては、病原体不活性化層34の下に単に積層して配置されているが、外面シート36の表面と病原体不活性化層34の表面とは接合されて一体化されていてもよい。
【0021】
病原体不活性化層34は、病原体を不活性化させるための層である。
本発明において、病原体とは、結核、インフルエンザ、肺炎、気管支炎、咽頭炎等の呼吸器疾患を生じさせる微生物、ウィルス等の総称である。具体的には、例えば、細菌類、カビ類、リケッチャ類、ダニ類、ウィルス類が挙げられる。
本発明において、不活性化とは、病原体の活性を無害化、無毒化、無力化等することを意味する。不活性化の具体的な手段としては、例えば、ろ過除去、吸着除去、熱変性、化学変性、抗体反応が挙げられる。以下、これらの手段についてより詳細に説明する。
【0022】
(i)ろ過除去
ろ過除去は、病原体をその大きさより小さい細孔を有するフィルターでろ過することにより除去する手段である。
ウィルス類は、大きさが100nm程度以下であるので、例えば、数十nmの細孔を有する細孔フィルム又はミクロポーラスフィルムをフィルターとして用いると確実にろ過することができるので好ましい。フィルターを折りたたみやアコーデオン状に成形すると、表面積が大きくなり、積層体30のフラジール形法による通気度を15cm3/(cm2・s)以上としつつ、ろ過の効率を高くすることが容易になるので、好ましい。
【0023】
(ii)吸着除去
吸着除去は、多孔質の無機物等の吸着剤に病原体を吸着させて除去する手段である。吸着除去は、一般に、病原体を除去するだけでなく、消臭効果も奏する点で好ましい。
多孔質の無機物としては、例えば、ゼオライト、ドロマイト、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、活性炭、活性アルミナ、二酸化チタン、シラスバルーン、シリカゲル及びモレキュラーシーブからなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。中でも、ゼオライト、ドロマイト、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、活性炭及び活性アルミナからなる群から選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。
吸着除去の具体的な方法としては、多孔質の無機物が一般的に粉末状又は粒状を呈しているために、多孔質の無機物をシート状基材に担持させ、かつ、脱離しないように固定化して用いるのが好ましい。本発明に用いられるより具体的な方法については、後述する。
【0024】
(iii)熱変性
熱変性は、タンパク質から構成されている病原体を高温下、例えば、100℃以上の湿熱下で処理し、タンパク質を変性させる手段である。
【0025】
(iv)化学変性
化学変性は、有機物、金属イオン等を病原体と反応させて変性させる手段である。
有機物質としては、例えば、抗ウィルス剤、抗菌剤、殺菌剤、消毒剤等として用いられる、クレゾール液、ホルマリン液、ポピドンヨード、トリクロサンが挙げられる。
金属イオンとしては、例えば、Cuイオン、Agイオン、Znイオン、Tiイオン、Auイオン、Ptイオン、Mnイオン、Feイオン及びZrイオンからなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。中でも、Cuイオン、Agイオン、Znイオン及びTiイオンからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
化学変性の具体的な方法としては、シート状基材に、有機物、金属イオン等を含浸、塗布等により固定化させて用いるのが本発明においては好ましい。
【0026】
金属イオンを用いる場合には、吸着剤に担持させ安定化させた状態で用いる方法が、吸着剤による吸着除去と金属イオンによる化学変性の両者による病原体の不活性化が行われる点、及び、金属イオンが着用者に直接接触することを防止することができる点で、好ましい。吸着剤としては、上述した吸着除去に用いられるものを好適に用いることができる。
金属イオンを吸着剤に担持させ安定化させたものは、例えば、抗菌剤として用いられているものが挙げられる。具体的には、例えば、ゼオミック(シナネンゼオミック社製)、バクテキラー(富士ケミカル社製)、ATOMYBALL(日揮触媒化成社製)が挙げられる。担持される金属イオンとしては、例えば、Cuイオン、Agイオン、Znイオン、Tiイオン(TiO2として担持される。)が挙げられる。
また、Ptをコロイド状とした液も好適に用いられる。
金属イオンは、タンパク質やRNAの構成成分であるシスチン等の含硫黄アミノ酸と反応する。インフルエンザウィルスの場合は、ウィルス本体がエンベロープで覆われているところ、エンベロープはシスチンを大量に含むことから、金属イオンがこのエンベロープを攻撃しウィルスを化学変性させる。
【0027】
(v)抗体反応
抗体反応は、ワクチン等により着用者に抗体を生じさせ、病原体と抗原抗体反応させる手段である。
抗原抗体反応は、種特異性に基づくものであるため、1種のワクチンでは変種等には対応することが困難であるが、例えば、パンデミック状態となることが予想されるような特定された病原体がある場合には、その病原体に対応する抗体を生じさせるワクチンを用いることがパンデミックの防止に有用である。
抗体反応の具体的な方法としては、シート状基材に、ワクチン等を含浸、塗布等により固定化させて用いるのが好ましい。
【0028】
病原体不活性化層は、病原体を不活性化させる機能を奏するものであれば、構成を特に限定されないが、1枚以上のシート状材料から構成されているのが好ましく、複数枚のシート状材料から構成されているのがより好ましい。
この場合、病原体不活性化層を構成する複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、折りたたまれているのが好ましい態様の一つである。この態様においては、折り畳まれているシート状材料の折りたたまれる前の面積を折りたたまれた状態での面積で除して得られる折りたたみ率が、1.5以上であるのが好ましく、2.0以上であるのがより好ましい。
また、病原体不活性化層を構成する複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、無荷重下での厚さが0.5mm以上、見掛け比重が0.1以下であるのが好ましい態様の一つである。病原体不活性化層を1枚のシート状材料で構成する場合には、無荷重下での厚さが1.0mm以上であり、及び/又は、コルゲート状であるのが好ましい。
また、病原体不活性化層を構成する複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、抗ウィルス性能を有する合成繊維を用いた不織布であるのが好ましい態様の一つである。
また、病原体不活性化層を構成する複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、セルロース系繊維を用いた親水性の不織布であるのが好ましい態様の一つである
また、病原体不活性化層を構成する複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、超微細セルロースを用いた不織布であるのが好ましい態様の一つである。
また、病原体不活性化層を構成する複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、金属イオンを担持した無機物を含有するシートであるのが好ましい態様の一つである。この態様においては、金属イオンを担持した無機物を含有するシートが、超微細セルロースを用いた不織布であるのがより好ましい態様の一つである。
【0029】
本発明においては、病原体不活性化層として、以下の(a)及び(b)の不活性化シートの少なくとも一つを用いるのが好ましい態様である。
(a)抗菌性及び/又は抗ウィルス性を有する繊維を含有する不織布により構成される不活性化シート
抗菌性及び/又は抗ウィルス性を有する繊維を含有する不織布に用いられる繊維類は、特に限定されず、例えば、再生繊維(例えば、再生セルロース繊維)、半合成繊維(例えば、アセテート繊維)、合成繊維、無機繊維が挙げられる。
繊維は、抗菌性及び/又は抗ウィルス性を有するものは、そのまま用いることができ、抗菌性及び/又は抗ウィルス性を有しないものは、抗菌性及び/又は抗ウィルス性を有する物質を含有させることにより、抗菌性及び/又は抗ウィルス性を持たせることができる。
抗菌性及び/又は抗ウィルス性を有する物質としては、例えば、上述した化学変性に用いられる物質を用いることができる。
抗菌性及び/又は抗ウィルス性を有する繊維の具体例としては、キトサンを含有するレーヨン繊維、Znイオンを担持したTiO2を含有するレーヨン繊維等の抗菌性を有する繊維;Cuイオンを担持したゼオライトを含有するポリエステル繊維、Agイオンを担持したヒドロキシアパタイトを含有するアクリル繊維等の抗菌性及び抗ウィルス性を有する合成繊維が挙げられる。
繊維に抗菌性及び/又は抗ウィルス性を持たせる方法は、特に限定されず、例えば、繊維の紡糸原液の中に金属イオンを担持した無機物を分散させ、又は無機物のマスターバッチを作って混合させた後、湿式紡糸、乾式紡糸、溶融紡糸等の手段によって繊維に成形する方法を用いることができる。
【0030】
抗菌性及び/又は抗ウィルス性を有する繊維を含有する不織布は、抗菌性及び/又は抗ウィルス性を有する繊維を原料にして製造することができる。抗菌性及び/又は抗ウィルス性を有する繊維は、Tow状、フィラメント状、短繊維状(ステープル状)のいずれのものも用いることができる。
不織布に用いられる繊維は、繊度が3d以下であるのが好ましく、2d以下であるのがより好ましい。上記範囲であると、表面積が十分に大きくなり、病原体を不活性化する効率がより高くなる。
不織布に用いられる繊維は、繊度が0.1d程度であると、カード機によるウェブ形成が困難になるため、カード機通過時までは繊度が太く高圧水流によって細かく分割されるような、いわゆる分割繊維であるのが好ましい。分割繊維としては、具体的には、例えば、ユニチカ社製のE91が挙げられる。
不織布に用いられる繊維は、繊維長が75mm以下であるのが好ましく、60mm以下であるのがより好ましく、また、15mm以上であるのが好ましい。繊維長が75mm以下であると、不織布が均一になりやすい。繊維長が15mm以上であると、リントが発生しにくい。
不織布は、目付が15〜60g/m2であるのが好ましい。上記範囲であると、コストが安くなり、また、通気性のコントロールが容易となる。
不織布は、見かけ比重が0.1g/cm3以下であるのが好ましく、0.07g/cm3以下であるのがより好ましい。上記範囲であると、嵩高さ及び表面積が十分に保たれ、病原体を不活性化する効率がより高くなる。
不織布は、無荷重下の厚さが0.5mm以上であるのが好ましく、1.0mm以上であるのがより好ましい。上記範囲であると、表面積が十分に大きくなり、病原体を不活性化する効率がより高くなる。
【0031】
抗菌性及び/又は抗ウィルス性を有する繊維を含有する不織布の製造方法は、特に限定されないが、例えば、短繊維状の抗菌性及び/又は抗ウィルス性を有する繊維(A)と抗菌性及び/又は抗ウィルス性を有しない繊維(B)とを混合させてカード機によりウェブを形成し、これを高圧の水流により水流交絡して不織布とする方法が好適に挙げられる。
上記繊維(A)と上記繊維(B)との混合比は、繊維(A)の病原体に対する不活性化の作用の程度によっても異なるが、例えば、繊維(A)がCuイオンを担持したゼオライトを含有するポリエステル繊維である場合には、繊維(A)と繊維(B)の質量の合計に対する繊維(A)の質量の比が20〜80%であるのが好ましい。
繊維(B)は、特に限定されないが、例えば、レーヨン、リヨセル、PVA、アセテート、コットン等の親水性繊維;PE、PP、PET、EVA等の合成繊維;PE/PP、PE/PET等の複合繊維;複合繊維を更に組み合せた易分割繊維が挙げられる。
【0032】
所定量の繊維(A)と繊維(B)の混合繊維のカードウェブをそのまま水流交絡して不織布とする場合、目付の高い状態で全体を水流交絡させると密度が高く稠密になりやすいので、目付が20g/m2以下の薄いウェブに細かなメッシュ状のパターニングを行って、2枚以上の多層に重ね合わせるのが好ましい態様の一つである。
【0033】
また、ネット状をしたSB、SMS等のフィラメント不織布の薄い基材上に繊維(A)と繊維(B)の混合繊維のウェブを水流又はニードリングで植毛状に積層させる方法も好ましい態様の一つである(以下この方法で得られた不織布を「水流植毛不織布」という。)。基材となる不織布は、特に限定されないが、例えば、PP樹脂を原料にしたSB不織布の開繊ネット(例えば、目付13g/m2)を好適に用いることができる。混合繊維のウェブは、特に限定されないが、例えば、繊維(A)としてCuイオンを担持したゼオライトを含有するポリエステル繊維を用いたウェブ(例えば、繊度1.5d、繊維長42mm、目付30g/m2)を好適に用いることができる。
この態様においては、開繊ネットの上に混合繊維のウェブを重ねて全面で高圧水流交絡処理する方法を用いることができる。また、本発明者らが提案した特開2007−277748号公報に記載されている交絡装置を用いると、畝状、コルゲート状の交絡部と未交絡部とが交互に配置された極めて嵩高な不織布を製造することができるので好ましい。
【0034】
さらに、基材に繊維ウェブを水流で積層した後に、基材の反対側の面に別の繊維ウェブを更に水流で積層して、3層構造を持った不織布を製造する方法も好ましい態様の一つである。このような不織布の構造及びその製造方法としては、本発明者らが提案した特開平7−138858号公報及び特開平7−265397号公報に記載されているものを用いることができる。
この態様の不織布は、2種の繊維ウェブにおいて、抗菌性及び/又は抗ウィルス性の程度、抗菌性及び/又は抗ウィルス性の対象となる病原体等を異ならせることができる。
例えば、内側に抗菌性及び/又は抗ウィルス性の程度の比較的弱い繊維ウェブを配置し、外側に比較的強い繊維ウェブを配置することができる。これにより、着用者に対する作用を抑制しつつ、病原体に対する不活性化の効果を得ることができる。
また、2種の繊維ウェブにおいて、抗菌性及び/又は抗ウィルス性の対象となる病原体を異ならせることにより、より多くの病原体に対して不活性化の効果を発揮させることができる。
【0035】
(b)超微細セルロースが複合化した不織布又は超微細セルロースと金属イオンを担持した無機物とを含有する不織布により構成される不活性化シート
超微細セルロースが複合化した不織布により構成される不活性化シートは、超微細セルロースを表面にコーティングされた不織布等の超微細セルロースを用いた不織布により構成される。
超微細セルロースを表面にコーティングされた不織布は、通気性が優れると同時に優れたバイオバリヤー性を備えている。中でも、有機溶媒と水との混合溶媒系で微細セルロースを表面にコーティングされた不織布は、多孔質で、高通気性を保ち、その細孔の中にウィルスを含む病原体を安定に吸着することができる。超微細セルロースを表面にコーティングされた不織布としては、例えば、本発明者が提案した特開平10−248872号公報及び特開2007−230139号公報に記載されているものを用いることができる。
超微細セルロースは、親水性の微細繊維であり、例えば、微生物起源のセルロースであるバクテリアセルロース、木材パルプを微細化した微細フィブリル化セルロース(Microfibrillated Cellulose:MFC)が挙げられる。例えば、国際公開第2004/009902号パンフレットに記載されているものを好適に用いることができる。
超微細セルロースは、通常、直径20〜100nm、繊維長20〜100μmであり、比表面積が極めて大きく、微細なポーラス構造を有している。超微細セルロースは、水素結合力が強く、乾燥すると極めて強固に結合するが、水分散系又は有機溶媒と水との混合溶媒分散系で極めて安定で、しかも強い構造粘性を示し、優れたコーティング材料とすることができる。
上述したように、超微細セルロースが複合化した不織布は、比表面積が極めて大きく、微細なポーラス構造を有しているため、ろ過除去及び吸着除去による不活性化の効果を奏するが、更に、化学変性による不活性化の効果を得るために、ポピドンヨード、トリクロサン、グルコン酸クロルヘキシジン等の消毒剤、殺菌剤;キトサン、金属イオン等の抗菌剤等と複合化することができる。具体的には、例えば、消毒剤、殺菌剤、抗菌剤等の水溶液を超微細セルロースの分散液に含有させてから不織布にコーティングする方法により、複合化を行うことができる。
【0036】
超微細セルロースと金属イオンを担持した無機物とを含有する不織布により構成される不活性化シートは、超微細セルロース及び金属イオンを担持した無機物との混合物を表面にコーティングされた不織布等の超微細セルロースを用いた不織布により構成される。
このような不織布は、高通気性を有するとともに、ウィルスを代表とする病原体を安定的に吸着し、効率よく不活性化し、また、各種の臭気成分を吸着するなどして臭気を抑制する効果も奏する。
超微細セルロースと金属イオンを担持した無機物との混合物を表面にコーティングされた不織布は、大きな構造粘性を示す超微細セルロースの水分散液又は有機溶媒と水との混合分散液に、アパタイト、ゼオライト、ドロマイト、シリカ、活性炭等の無機物;Fe、Au、Ag、Zn等の金属微粉;金属イオンを担持した無機物等を分散させて、超微細セルロースと金属イオンを担持した無機物との混合物のスラリーを得て、このスラリーを不織布の表面にコーティングすることにより得ることができる。
この場合、超微細セルロースの量は、1g/m2以上であるのが好ましく、また、10g/m2以下であるのが好ましい。上記範囲であると、均一なコーティングが容易となり、また、嵩高な不活性化シートを容易に得ることができる。
また、金属イオンを担持した無機物の量は、例えば、Agイオンを担持したゼオライトの場合、超微細セルロースに対して2〜20質量%であるのが好ましい。上記範囲であると、不活性化の効果がより優れたものとなり、また、コストを抑制することができる。
【0037】
超微細セルロースと金属イオンを担持した無機物とを含有する不織布により構成される不活性化シートに用いられる不織布としては、以下の(i)〜(iii)の不織布が好適に用いられる。
(i)PE、PP、PET又はこれらの複合ポリマーを溶融繊維化して得られるSB、SMS、SMMS等のスパンメルト不織布であって、目付が10〜30g/m2程度の疎水性の不織布
上記不織布を基材として、超微細セルロースとAgイオンを担持したゼオライトとの混合物のスラリーで表面加工すると、超微細セルロースにより全体が親水化され、静電気の蓄積性が消失する。
この不織布を用いる場合、得られる不活性化シートは、薄くて比較的通気性が低くなるため、比表面積を大きくする加工を行うのが好ましい。具体的には、例えば、プリーツ加工、アコーデオン状の折りたたみ加工、クレープ紙状加工、コルゲート状の折りたたみ加工が挙げられる。
【0038】
(ii)ティッシュ、湿式不織布等のセルロース系成分を含む不織布であって、目付が10〜30g/m2程度の親水性の不織布
上記不織布を基材として、超微細セルロースとAgイオンを担持したゼオライトとの混合物のスラリーで表面加工すると、超微細セルロースと不織布のセルロース系成分とが水素結合を形成して、極めて安定したコーティング層が得られる。
この不織布を用いる場合、得られる不活性化シートは、硬く、かつ、薄くて比較的通気性が低くなるため、比表面積を大きくする加工を行うのが好ましい。具体的には、例えば、プリーツ加工、アコーデオン状の折りたたみ加工、クレープ紙状加工、コルゲート状の折りたたみ加工が挙げられる。
【0039】
(iii)エアースルー不織布、スパンレース不織布、水流植毛不織布、レーヨンスパンボンド(例えば、フタムラ化学社製のTCF)等の不織布であって、目付が20g/m2程度以上の嵩高で多孔性の不織布
上記不織布を基材として、超微細セルロースとAgイオンを担持したゼオライトとの混合物のスラリーで表面加工すると、超微細セルロースとAgイオンを担持したゼオライトとが不織布の構成繊維に絡みついた状態で複合化され、通気性に優れ、内部の比表面積の大きい不活性化シートが得られる。
この不織布を用いる場合、得られる不活性化シートは、比表面積が大きいため、比表面積を大きくする加工を行わずに用いることができるが、上記と同様に、そのような加工を行って用いてもよい。
【0040】
積層体30は、図2に示されるように、内面シート32と、病原体不活性化層34と、外面シート36とが着用者側からこの順で積層されているが、本発明においては、内面シート、病原体不活性化層及び外面シート以外の部材が積層されていてもよい。
【0041】
積層体30の積層方法は、特に限定されない。
【0042】
積層体30は、フラジール形法による通気度が15cm3/(cm2・s)以上である。
本発明者は、マスクの呼気の漏れについて鋭意検討した結果、現在市販されているマスクでは呼気の多くの部分がマスクと着用者の肌との間から漏れてしまうこと、及び、呼気の漏れが発生する原因が主に以下の3種類であることを見出した。
第1は、着用者の顔とマスクとの間に隙間が存在することである。着用者の顔は複雑な3次元的形状であり、また、個人差も大きい。そのため、着用者の顔とマスクとの間に隙間が生じやすかった。
第2は、マスク本体部の通気性が悪いことである。マスク本体部の通気性がよければ、着用者の顔とマスクとの間に多少の隙間があっても、実質的な呼気の漏れは少なくなるが、通気性が悪いと、通気抵抗により呼気は抵抗のない隙間に集中し、たとえ隙間が小さくても漏れは多くなる。
第3は、着用者の顔とマスクとの間の隙間をブロックする材料の通気性が高いことである。一般に、隙間の発生しやすい鼻の両側面を、クッション材、シール材等によりブロックすることも行われているが、その材料によっては、呼気が漏れる原因となる。従来のマスクでは、外部からの異物の吸入を防ぐために、クッション材、シール材等として、連続気泡を持つウレタンフォームや不織布のマットが用いられているが、これらは通気性が高く、漏れの原因となっている。
本発明者は、上記の検討結果に基づき、マスク本体部の通気性の指標としてフラジール形法による通気度(単位:cm3/(cm2・s))を用いると、呼気の漏れの評価を適切に行うことができることを見出した上、積層体30の通気性をフラジール形法による通気度で15cm3/(cm2・s)以上とし、後述する通気性の低い下部ポケット部を設け、更に、着用者の顔とマスクとの間に隙間が生じないように、後述する通気性の低い上部ポケット部と、着用者の鼻の形状に沿って変形しうるテープ部材と、着用者の鼻の形状に沿って変形しうるワイヤー部材とからなる群から選ばれる少なくとも一つを設けることにより、本発明を完成させたのである。
なお、一般的に透気度の指標として用いられるガーレ法を指標とすると、その測定の下限値である2〜3s/100cm3レベルでも、着用者は息苦しさを感じる。10s/100cm3レベル以上になるとほとんど呼吸をすることができなくなる。よって、ガーレ法による測定値は、本発明のマスクの本体部の通気性の指標とすることができない。
【0043】
本発明者は、種々の市販のマスク、本発明のマスク(実施例1で得られたもの)、並びに、本発明のマスクにおいて下部ポケット部及び上部ポケット部に通気性素材を組み入れたものについて、マスク本体部と着用者の肌との間の隙間から漏れる空気の割合(リーク率)を測定した。
図12は、マスクのリーク率を測定する装置を示す模式図であり、図13は、マスクのリーク率の測定に用いるアルコール含有空気を調製する装置を示す模式図であり、図14は、マスクのリーク率の測定に用いるマスク装着治具を示す模式図であり、図14(A)は平面図、図14(B)は測定時の上面図である。図14(B)における矢印は、エタノール含有空気の流れを示す。
マスクのリーク率の測定は、具体的には、図12に示される装置において、図14に示される表面がシリコンゴムでできているフェイスマネキンを細工したマスク装着治具140(約5cm×約1cmの大きさの開口部を有する。)に、マスク(種々の市販のマスク、本発明のマスク、並びに、本発明のマスクにおいて下部ポケット部及び上部ポケット部に通気性素材を組み入れたもの)160をそれぞれ装着させた後に、ゴム風船136から気体供給ノズル144を用いてエタノール含有空気を連続的にマスク装着治具140の開口部の裏側に流し、マスク160を透過してきたエタノール含有空気を排気捕集ファネル146で捕集して、排気捕集ファネル146内のエタノールの濃度をエタノール検知管148により測定した。排気捕集ファネル146内の空気はエアーポンプ150で連続的に吸引していた。マスク本体部の気体透過率(A)が大きく、リーク率(B)が小さいものは、排気捕集ファネル146内の空気は、本体部を透過した空気が大部分を占めて、マスク160と排気捕集ファネル146の入口との隙間から入り込む外気による希釈の程度が低いため、高濃度のエタノールが検知されるが、気体透過率(A)が小さく、リーク率(B)が大きいものは、外気による希釈の程度が多くなるため、低濃度のエタノールが検知される。
気体透過率(A)は、マスク装着治具140に何も装着しないで測定した場合の排気捕集ファネル146内のエタノール濃度に対するマスク160を装着して測定した場合の検知エタノール濃度の割合を百分率で表現した(下記式参照。)。
【0044】
A(%)=(マスク装着時のエタノール濃度/マスク非装着時のエタノール濃度)×100(%)
【0045】
また、リーク率(B)は、下記式で求められる。
【0046】
B(%)=100−A(%)
【0047】
より具体的な測定手順を以下に示す。
(1)エタノール含有空気の調製及びエタノール含有空気で充填したゴム風船の用意
図13に示される、頭頂部に活栓付きガラス管130を設置した、一辺の長さが約50cmのほぼ立方体の蓋付きメタクリル樹脂製の箱131を用意した。箱131の底部には、直径約10cmのろ紙を敷いたシャーレ132を5個並べて、そのシャーレ132に、局方アルコールと蒸留水とで調製した75質量%エタノール水溶液を約30mLずつ注いだ後、蓋で密閉して、25℃の室内に約24時間放置して、箱131内にエタノール含有空気を充満させた。
活栓付きガラス管130にウレタンゴム製のチューブ133を結合し、そのチューブ133を、エアーポンプ134及び活栓付きガラス管135を介してゴム風船136に結合させ、ゴム風船136に約2Lのエタノール含有空気を充填させた。充填後、活栓付きガラス管135の開閉弁を閉じた。ゴム風船136は2個用意しておき、1個は試料測定用に、もう1個は無負荷時の基準濃度測定用に供した。
エタノール含有空気を採取した後の箱131には、減圧した分だけの空気を流入させ、数時間放置して、次の測定に備えた。
【0048】
(2)試料マスクの装着及び排気捕集ファネルのセッティング
マスク装着治具140は、フェイスマネキンの口部分に短径1cm×長径5cmの楕円状開口部を形成し、その裏側に漏斗状の気体供給ノズルを直結させて得た。
マスク装着治具140に、マスク160を装着した。装着は、市販品のマスクの場合は、その使用説明書に従った方法で行い、本発明のマスクの場合は、下部ポケット部の空間が下あごの先端部を、上部ポケット部の空間が鼻を、それぞれ収容するように行った。
マスク160を装着した後、排気捕集ファネル146の吸入口の縁部が、マスク160の表面に接触しない範囲で、マスク160に近づけて位置決めした。排気捕集ファネル146の吸入口の縁部は、縦約6cm、横約10cmの楕円型で、顔の形に沿って、鼻とあごに当たる部分に凹状にカーブをつけた3次元形状をなしているので、吸入口はマスク160の本体部をほぼ覆い、マスク160の本体部から排気される空気の大部分は捕集される構造であった。排気捕集ファネル146の内部容量は約250mLであり、排気捕集ファネル146の排気口には排気用のエアーポンプ150を連結して、毎分3Lの速度で空気を排気させた。また、排気捕集ファネル146の排気口の手前には、サンプリング用開閉孔を設け、エタノール検知管148を差し込んだ。
【0049】
(3)気体透過率の測定
マスク160を装着したマスク装着治具140の気体供給ノズル144の供給口に、エタノール含有空気を充填したゴム風船136を、活栓付きガラス管135を介して取り付け、活栓付きガラス管135の開閉弁を開き、かつ、エアーポンプ150を運転させて、エタノール含有空気を、マスク装着治具140の開口部からマスク160に向けて吹き付けさせた。エタノール含有空気の供給時間は、ほぼ15秒であった。
エタノール含有空気の供給開始から10秒後にエアーポンプ150を止め、排気捕集ファネル146内のエタノールの濃度を均一化するために、更に10秒間静置した。その後、サンプリング用開閉孔に差し込んだエタノール検知管148により、排気捕集ファネル146内のエタノール濃度を測定した。
つぎに、マスク装着治具140からマスク160だけを取り外し、用意したもう1個のエタノール含有空気を充填したゴム風船を用いて、上記と同様の操作を行って、無負荷時の基準エタノール濃度を測定した。気体透過率及びリーク率は、上述した計算方法で算出した。
なお、測定は、各マスクにつき5回繰り返して行い、その変動範囲を含めて測定結果とした。
結果を第1表に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
第1表に示されるように、ガーゼマスク(No.1)は、隙間が上下、左右に存在するものの、マスク本体部の通気性がよいためリーク率は15%以下であった。しかし、そのガーゼマスクに高密度のメルトブローン不織布層を追加した場合(No.2)、マスク本体部の通気性が悪くなり、リーク率は2倍以上となった。
また、立体型(超立体型)マスク(No.3)は、本体に剛性があり大きな隙間が存在する上に、高密度メルトブローン不織布を構成材料としているためマスク本体部の通気性が悪く、リーク率が50%以上であった。このマスクから高密度メルトブローン不織布を除去した場合(No.4)、リーク率は半減した。
本発明のマスク(No.5)は、通気性に優れる積層体を本体部に用い、通気性の低いシート部材(PEフィルムにSMS不織布(目付12g/m2)を積層したもの)により構成された下部ポケット部及び上部ポケット部を設けたものであるため、リーク率が極めて低かった。しかし、このマスクのシート部材を、通気性の高いシート部材(SMS不織布(目付12g/m2))により構成した場合(No.6)、リーク率は2倍以上となった。
【0052】
積層体30は、フラジール形法による通気度が15cm3/(cm2・s)以上であり、20cm3/(cm2・s)以上であるのが好ましく、30cm3/(cm2・s)以上であるのがより好ましい。上記範囲であると、着用者が大量に息を吐き出した場合等であっても、本体部10と着用者の肌との間から呼気が漏れ出す割合が低くなるため、着用者から他人へのインフルエンザ等の感染を抑制することができる。また、上記範囲であると、着用者が呼吸する際にも息苦しさを感じにくい。
【0053】
積層部20は、積層体30以外の部材を有していてもよい。
【0054】
下部ポケット部40は、積層部20の下部に設けられ、フラジール形法による通気度が2cm3/(cm2・s)以下であるシート部材により構成され、着用者の下あごの先端部を収容する空間S1を形成する。
下部ポケット部40に用いられるシート部材は、フラジール形法による通気度が2cm3/(cm2・s)以下であれば特に材料を限定されないが、着用者の下あごを収容するため、感触がソフトで薄くてフレキシブルである材料が好ましい。具体的には、例えば、PE、EVA、PP等のフィルム;伸縮性を有するポリウレタン、SEBS等のエラストマーフィルム;紙おむつのバックシートに用いられるようなマイクロポーラスフィルムと感触を改良するための不織布とを積層したものが好適に用いられる。
シート部材は、厚さが50μm以下であるのが好ましく、30μm以下であるのがより好ましく、また、10μm以上であるのが好ましい。上記範囲であると、フレキシブルで、本体部10全体の剛性に影響を与えにくく、また、下部ポケット部40の強度が十分となる。
【0055】
下部ポケット部40は、着用者の下あごの先端部を収容する空間S1を形成するように、積層部20の下部に設けられる。
具体的には、下部ポケット部40を構成するシート部材と積層部20とを結合させることにより、ポケット状の空間S1を形成させることができる。
結合の方法は、特に限定されず、例えば、ホットメルト、粘着剤、超音波シール、ヒートシールが挙げられる。また、積層部20を構成する部材の一部が積層部20の下端で折り返されて下部ポケット部40となることにより、シート部材と積層部20とが結合した状態となっていてもよい。
例えば、積層部20を構成する部材の一部を積層部20の下端で折り返してシート部材として用いた上、図1(B)中の網掛け部で結合部が示されているように、下部ポケット部40を構成するシート部材の下端縁部付近から左右両側の縁部付近にかけて、積層部20の下側部分の表面と結合させることにより、シート部材の上端縁部のみが積層部20の表面と結合しない状態となり、シート部材と積層部20とで、ポケット状の空間S1を形成させることができる。中でも、図1(B)中の網掛け部で示される結合部のように、下部ポケット部40を構成するシート部材の中央部より左右両側において上側で積層部20の下側部分の表面と結合させると、ポケット状の空間S1の左右方向の中央部が深く、左右両側が浅くなり、安定的に着用者の下あごの先端部を収容することができる点で、好ましい。
このようにシート部材を積層部20に結合させることにより、下部ポケット部40が、常に着用者の肌に密着して顔の動きに追従する一方、積層部20を着用者の顔に対して常に定位置に保持させることができる。
【0056】
下部ポケット部40は、その縁部の少なくとも一部に弾性材料が設けられているのが好ましい。
弾性材料は、特に限定されず、例えば、紙おむつのレッグギャザーのように複数のウレタンフィラメントを帯状に配置したもの、テープ状のポリウレタンフィルム、ポリウレタンの発泡フォーム、ポリエステルとポリウレタンの交織ネット、チューブ状のウリー加工ナイロン、これらを低通気性材料又は非通気性材料で被覆して複合化したものが好適に用いられる。
下部ポケット部40の縁部の少なくとも一部に弾性材料を設ける方法は、特に限定されず、例えば、下部ポケット部40を構成するシート部材に、弾性材料を結合させることにより設けることができる。結合の方法は、特に限定されず、上述した方法を用いることができる。この場合、下部ポケット部40を構成するシート部材の縁部を折り返して、折り返し部分に弾性材料を挟んだ状態で結合させるのが好ましい態様の一つである。この態様は、低通気性材料又は非通気性材料で被覆して複合化されていない弾性材料を用いる場合に特に好ましい。下部ポケット部40は、全体を弾性材料で構成することもできる。
この弾性材料は、着用時に、着用者の下あごの下側に位置するように配置されている、のが好ましい。これにより、着用者の顔の動き等による本体部10のずれが効果的に抑制される。
【0057】
従来のマスクにおいては、本体部の上下端部に弾性材料を設けることにより、着用者の顔との密着性を得ようとする試みが数多く行われてきた。
しかしながら、このような方法では、着用時に本体部の変形が大きくなり、マスク本来の機能が十分に発揮することができなくなったり、また、かえって密着性が悪くなり、着用者の顔との間の隙間が大きくなったりするという問題があり、結果的に、現在市場にある商品には採用されていない。
本発明のマスクは、上述したように、本体部10の積層部20に結合された下部ポケット部40の縁部の少なくとも一部に弾性材料が設けられているのが好ましい態様であり、この態様においては、密着性が極めて良好に得られ、インフルエンザ等の呼吸系感染症の感染者からインフルエンザウィルス等の病原体が外部に放出されることをより効果的に防止することができる。
【0058】
上部ポケット部50は、積層部20の上部に設けられ、フラジール形法による通気度が2cm3/(cm2・s)以下であるシート部材により構成され、着用者の鼻を収容する空間S2を形成する。
上部ポケット部50に用いられるシート部材は、上述した下部ポケット部40に用いられるシート部材と同様である。
【0059】
上部ポケット部50は、着用者の鼻を収容する空間S2を形成するように、積層部20の上部に設けられる。空間S2は、着用者の鼻の鼻孔の周囲の部分を収容するものであれば、鼻の一部を収容するものであってもよく、鼻の全体を収容するものであってもよい。
具体的には、上部ポケット部50を構成するシート部材と積層部20とを結合させることにより、ポケット状の空間S2を形成させることができる。
結合の方法は、特に限定されず、例えば、ホットメルト、粘着剤、超音波シール、ヒートシールが挙げられる。また、積層部20を構成する部材の一部が積層部20の上端で折り返されて上部ポケット部50となることにより、シート部材と積層部20とが結合した状態となっていてもよい。
例えば、積層部20を構成する部材の一部を積層部20の上端で折り返してシート部材として用いた上、図1(B)中の網掛け部で結合部が示されているように、上部ポケット部40を構成するシート部材の左右両側の縁部付近において、積層部20の上側部分の表面と結合させることにより、シート部材の下端縁部のみが積層部20の表面と結合しない状態となり、シート部材と積層部20とで、ポケット状の空間S2を形成させることができる。
このようにシート部材を積層部20に結合させることにより、上部ポケット部50が、常に着用者の肌に密着して顔の動きに追従する一方、積層部20を着用者の顔に対して常に定位置に保持させることができる。
【0060】
上部ポケット部50は、その縁部の少なくとも一部に弾性材料が設けられているのが好ましい。
弾性材料は、特に限定されず、例えば、下部ポケット部40に用いられるものと同様のものが好適に用いられる。
上部ポケット部50の縁部の少なくとも一部に弾性材料を設ける方法は、特に限定されず、例えば、上部ポケット部50を構成するシート部材に、弾性材料を結合させることにより設けることができる。結合の方法は、特に限定されず、上述した方法を用いることができる。この場合、上部ポケット部50を構成するシート部材の縁部を折り返して、折り返し部分に弾性材料を挟んだ状態で結合させるのが好ましい態様の一つである。この態様は、低通気性材料又は非通気性材料で被覆して複合化されていない弾性材料を用いる場合に特に好ましい。下部ポケット部50は、全体を弾性材料で構成することもできる。
この弾性材料は、着用時に、着用者の鼻の鼻頭の上側に位置するように配置されている、のが好ましい。これにより、着用者の顔の動き等があっても、鼻孔を確実に上部ポケット部50の形成する空間S2の内部に位置させることができる。
【0061】
ポケット状の空間S1及びS2の大きさは、下部ポケット部40及び上部ポケット部50の幅と高さとによって規定される。
図3は、本発明のマスクの本体部の例を示す模式図である。図3(A)は本発明のマスクの本体部を内側から見た平面図であり、図3(B)は図3(A)中のIIIB−IIIB線に沿った縦端面図である。
積層部20の左右方向の長さ(L0)は、通常、13〜20cmとする。
下部ポケット部40の左右方向の長さ(L1)は、通常、12〜18cmとする。L1は、L0≧L1を満たすのが好ましい。
上部ポケット部50の左右方向の長さ(L2)は、通常、11〜16cmとする。L2は、L0≧L2を満たすのが好ましい。
1とL2との関係は、特に限定されないが、着用者の下あごの先端部と鼻の左右方向の長さを考慮すると、L1≧L2であるのが好ましい。
積層部20の上下方向の長さ(W0)は、通常、8〜15cmとする。
下部ポケット部40の上下方向の長さ(W1)は、通常、2〜10cmとする。
上部ポケット部50の上下方向の長さ(W2)は、1cm以上であるのが好ましく、2cm以上であるのがより好ましく、また、5cm以下であるのが好ましい。上記範囲であると、上部ポケット部50の空間S2が着用者の鼻を収容した際に、隙間が生じにくい。
1とW2との関係は、特に限定されないが、着用者の下あごの先端部の深さと鼻の前後方向の長さを考慮すると、W1≧W2であるのが好ましい。
空間S1及びS2の開口端部での高さ(D1、D2)は、開口端部に設けられる弾性材料の有無、設けられた場合の張力等により、適宜設定することができる。
下部ポケット部40の空間S1の大きさが深く大きいと、着用者の下あご全体を収容することができ、浅いと下あごの先端部のみを収容させることができる。すなわち、本発明のマスクは、下部ポケット部が形成する空間が、着用者の下あごの先端部のみを収容するものであってもよく、下あごの先端部以外の部分も含めて収容するものであってもよい。
また、空間S1及びS2は、排出された呼気を一時的に貯留する効果、すなわち、「空気溜め」としての効果も奏する。
【0062】
下部ポケット部及び上部ポケット部は、着用者の呼気が病原体不活性化層を通過するように積層部に接合させて配置する。
図4及び図5は、それぞれ、本発明のマスクの本体部の別の例を示す模式的な縦端面図である。
図4(A)に示される本体部10aは、同じ大きさの内面シート32aと病原体不活性化層34aと外面シート36aとが積層された積層体30a自体が積層部20aを構成している。本体部10aにおいては、内面シート32aと下部ポケット部40a及び上部ポケット部50aとがそれぞれ接合部38aを介して接合している。
図4(B)に示される本体部10bは、同じ大きさの内面シート32bと病原体不活性化層34bと、これらより大きい外面シート36bとが積層され、外面シート36bが内面シート32b及び病原体不活性化層34bの下端及び上端を被覆して、内面シート32bまで至った状態の積層体30b自体が積層部20bを構成している。本体部10bにおいては、外面シート36bと下部ポケット部40b及び上部ポケット部50bとがそれぞれ接合部38bを介して接合している。
これらのように、病原体不活性化層が積層部の上下方向の全面にわたって存在している場合には、下部ポケット部及び上部ポケット部を内面シートに接合させてもよく、外面シートに接合させてもよい。
【0063】
図5(A)に示される本体部10cは、内面シート32cと病原体不活性化層34cと外面シート36cとが積層された積層体30cの下端方向及び上端方向に内面シート32c及び外面シート36cがそれぞれ延在して積層部20cを構成している。本体部10cにおいては、下部ポケット部40c及び上部ポケット部50cを構成するシート部材が内面シート32cの延在部(外側に病原体不活性化層34cが存在しない部分)を内側から被覆するように、下部ポケット部40c及び上部ポケット部50cがそれぞれ接合部38cを介して接合している。
図5(B)に示される本体部10dは、内面シート32dと病原体不活性化層34dと外面シート36dとが積層された積層体30dの下端方向及び上端方向に内面シート32d及び外面シート36dがそれぞれ延在して積層部20dを構成している。本体部10dにおいては、下部ポケット部40d及び上部ポケット部50dを構成するシート部材が内面シート32dの延在部(外側に病原体不活性化層34dが存在しない部分)を内側から被覆するように、かつ、外面シート36dの外側に至るように、下部ポケット部40d及び上部ポケット部50dがそれぞれ接合部38dを介して接合している。
図5(C)に示される本体部10eは、内面シート32eと病原体不活性化層34eと外面シート36eとが積層された積層体30eの下端方向及び上端方向に内面シート32e及び外面シート36eがそれぞれ延在して積層部20eを構成している。本体部10eにおいては、下部ポケット部40e及び上部ポケット部50eを構成するシート部材が外面シート36eの延在部(内側に病原体不活性化層34eが存在しない部分)を外側から被覆するように、下部ポケット部40e及び上部ポケット部50eがそれぞれ接合部38eを介して接合している。
これらのように、病原体不活性化層が積層部の上下方向の全面にわたって存在していない場合には、下部ポケット部及び上部ポケット部を構成するシート部材により、病原体不活性化層の存在しない部分を被覆するように、下部ポケット部及び上部ポケット部を設けることにより、着用者の呼気が病原体不活性化層を通過するようにすることができる。
【0064】
下部ポケット部40及び上部ポケット部50の縁部付近は、着用時に、着用者の顔と密着するのが好ましい。高い密着性を得るため、下部ポケット部40及び上部ポケット部50の縁部付近には、化粧品材料として使用可能な植物性バター(例えば、カカオバター、シアーバター)、ワセリン、オリーブオイル、アボガドオイル、海草ゲル等を塗布することができる。
【0065】
本体部10は、積層部20、下部ポケット部40及び上部ポケット部50以外の部材を有していてもよい。
【0066】
本体部10は、図1に示されるように、上部ポケット部50を有しているが、本発明のマスクにおいては、上述した上部ポケット部の代わりに、積層部の上部に設けられた、着用者の鼻の形状に沿って変形しうるテープ部材や、前記積層部の上部に設けられた、着用者の鼻の形状に沿って変形しうるワイヤー部材を用いることもできる。すなわち、本発明のマスクは、上述した上部ポケット部と、積層部の上部に設けられた、着用者の鼻の形状に沿って変形しうるテープ部材と、積層部の上部に設けられた、着用者の鼻の形状に沿って変形しうるワイヤー部材とからなる群から選ばれる少なくとも一つを有する。
【0067】
着用者の鼻の形状に沿って変形しうるテープ部材及び着用者の鼻の形状に沿って変形しうるワイヤー部材は、積層部の上部に設けられる。鼻の突起部は形状の起伏が大きいため、また、鼻頭には強いテンションが掛かりやすいために、鼻の根元には隙間が生じやすい。これらは、このような隙間が生じることを抑制する。
着用者の鼻の形状に沿って変形しうるテープ部材及び着用者の鼻の形状に沿って変形しうるワイヤー部材は、特に限定されず、例えば、従来のマスクに用いられているノーズフィット用のテープ部材やワイヤー部材を用いることができる。具体的には、例えば、アルミニウム等の金属テープ、合成樹脂製ロッドが挙げられる。
【0068】
図6は、本発明のマスクの別の例を示す模式図である。図6(A)は内側から見た平面図であり、図6(B)は図6(A)中のVIB−VIB線に沿った縦端面図であり、図6(C)は図6(A)中のVIC−VIC線に沿った横端面図である。
図6に示されるマスク102は、基本的に、図1に示されるマスク100と同様であるが、積層部20の上部において、上部ポケット部50の代わりにワイヤー部材70が設けられている点、及び、積層部20の左右両側に側部ポケット部60を有している点で異なる。
ワイヤー部材70は、着用者の鼻の形状に沿って変形しうる。マスク102の着用時にワイヤー部材70を着用者の鼻の形状に沿って変形させることによって、鼻の付近における隙間が生じることを抑制することができる。
側部ポケット部60は、積層部20の左右両側に設けられ、フラジール形法による通気度が2cm3/(cm2・s)以下であるシート部材により構成される。側部ポケット部60は、左右両側からの呼気の漏れを効果的に防止する。本発明においては、本体部が側部ポケット部を有するのが好ましい態様の一つである。
【0069】
図7は、本発明のマスクの更に別の例を示す模式図である。図7(A)は内側から見た平面図であり、図7(B)は図7(A)中のVIIB−VIIB線に沿った縦端面図であり、図7(C)は図7(A)中のVIIC−VIIC線に沿った横端面図である。
図7に示されるマスク104は、基本的に、図1に示されるマスク100と同様であるが、本体部14が立体型に成形してある点で異なる。具体的には、本体部14において積層部20fが中央部で外側に凸状となり、下部ポケット部40fが形成する空間S1及び上部ポケット部50fが形成する空間S2が、それぞれ着用者の下あご及び鼻を収容しやすくなる形状となっている。
一般に、立体型に成形されたマスクの本体部は、その形状を維持させるためにかなりの剛性を持たせてあり、着用者の顔には本体部の周縁部しか接触しないため、顔との間に隙間が生じやすく、漏れが生じやすい。
図7に示されるマスク104は、下部ポケット部40fが形成する空間S1及び上部ポケット部50fが形成する空間S2がそれぞれ着用者の下あご及び鼻を収容しやすくなる形状となっているため、上述した隙間の影響が少ない。
【0070】
図8は、本発明のマスクの更に別の例を示す模式図である。図8(A)は内側から見た平面図であり、図8(B)は図8(A)中のVIIIB−VIIIB線に沿った縦端面図であり、図8(C)は図8(A)中のVIIIC−VIIIC線に沿った横端面図である。
図8に示されるマスク106は、基本的に、図1に示されるマスク100と同様であるが、本体部16の積層部20gに設けられた下部ポケット部40g及び上部ポケット部50gと左右の固定部90hとが、連続した一つの通気性が低く伸縮性を持つシート部材で成形してある点で異なる。
このような構造は、固定部90hを構成する伸縮性材料の左右に、耳かけ用のスリット又は切り欠きを設け、更に中央部付近にもスリット又は切り欠きを設けて、本体部16の積層部20gとその周囲で接合することにより得ることができる。使用される伸縮性材料は、フラジール形法による通気度が2cm3/(cm2・s)以下のシート部材であり、そのため後述するような、エラストマーフィルムの少なくとも片面、好ましくは両面を不織布で積層した一方向伸張性の複合弾性体を用いるのが、好ましい態様の一つである。
中でも、エラストマーフィルム(例えば、合成ゴムフィルム)の両面を、畝状に成形された不織布で積層して貼り合わせた一方向伸張性の複合弾性体を用いるのが好ましい態様の一つである。この態様においては、長時間着用しても、着用者の皮膚がかぶれる心配が少ない。また、「空気溜め」として機能する空間が、マスク本体部の全周囲にわたって形成されているため、排気された呼気の流速を効率的に緩和し、呼気を積層部の全体に移動させることができる。
図8に示されるマスク106においては、1枚の伸縮性シート部材で下部ポケット部40gと上部ポケット部50gと固定部90hとを構成しているが、本発明はこれに限定されず、例えば、これを上下2枚のシートで成形し、固定部の左右両端で結合して、耳かけ部を構成することもできる。
【0071】
固定部90は、本体部10に結合され、本体部10を着用者の顔面下部に固定する。
固定部90は、着用者の耳に掛けるループ状の伸縮性材料により構成されている。伸縮性材料は、特に限定されず、例えば、ゴム糸と綿との交織帯、ウレタンフィラメントとポリエステルフィラメントとの交編ネット、チューブ状に編成したウリーナイロン、伸縮性不織布が挙げられる。
中でも、本発明者が特開平6−328600号公報及び特開平7−252762号公報で提案した、一方向伸張性の複合弾性体にスリット又は切り欠きを設けたものが好ましく、エラストマーフィルムの片面又は両面を不織布で積層した一方向伸張性の複合弾性体にスリット又は切り欠きを設けたものであるのがより好ましい。この場合、着用時に安定的に本体部を固定することができ、また、着用者の肌に跡が残りにくい。
【0072】
図9は、種々の固定部を具備する本発明のマスクの別の例を内側から見た模式的な平面図である。
図9(A)に示されるマスク100aは、本体部12aに結合され、本体部12aを着用者の顔面下部に固定する固定部90aを具備する。固定部90aは、着用者の耳に掛けるループ状のゴム紐により構成されている。
図9(B)に示されるマスク100bは、本体部12bに結合され、本体部12bを着用者の顔面下部に固定する固定部90bを具備する。固定部90bは、伸縮性不織布に切り欠き92を設けて得られる、着用者の耳に掛けるループ状の伸縮性材料により構成されている。
図9(C)に示されるマスク100cは、本体部12cに結合され、本体部12cを着用者の顔面下部に固定する固定部90cを具備する。固定部90cは、伸縮性不織布にスリット94を設けて得られる、着用者の耳に掛けるループ状の伸縮性材料により構成されている。
【0073】
本発明においては、固定部は、ループ状の伸縮性材料に限定されない。例えば、本体部の左右両側にそれぞれ設けられ、互いに結ぶことにより、着用者の耳に掛けることができるようにした2本の紐、眼鏡のツルの部分のように、着用者の耳に上側から掛けるようにした構造体、眼帯に用いられているのと同様の着用者の頭部に掛けるループ状のヘッドバンド、着用者の頬等で密着させる粘着材が挙げられる。
図10は、種々の固定部を具備する本発明のマスクの別の例を内側から見た模式的な平面図である。
図10(A)に示されるマスク100dは、本体部12dに結合され、本体部12dを着用者の顔面下部に固定する固定部90dを具備する。固定部90dは、本体部12dの左右両側にそれぞれ設けられ、互いに結ぶことにより、着用者の耳に掛けることができるようにした2本の紐により構成されている。
図10(B)に示されるマスク100eは、本体部12eに結合され、本体部12eを着用者の顔面下部に固定する固定部90eを具備する。固定部90eは、着用者の耳に上側から掛けるようにした構造体により構成されている。
図11は、種々の固定部を具備する本発明のマスクの別の例を示す模式図である。図11(A)は、外側から見た斜視図であり、図11(B)は、内側から見た平面図である。
図11(A)に示されるマスク100fは、本体部12fに結合され、本体部12fを着用者の顔面下部に固定する固定部90fを具備する。固定部90fは、着用者の頭部に掛けるループ状のヘッドバンドにより構成されている。
図11(B)に示されるマスク100gは、本体部12gに結合され、本体部12gを着用者の顔面下部に固定する固定部90gを具備する。固定部90gは、着用者の頬等で密着させる粘着材により構成されている。マスク100gにおいては、本体部12gの下部ポケット部42により形成される空間が着用者の下あご全体を収容するため、ずれにくくなり、粘着材の使用部位の面積を小さくしても安定的に固定することができる。
【0074】
従来のマスクにおいては、顔面への固定はいわゆる「耳掛け部」のみで行っていたため、本体部と着用者の顔との間に隙間が生じないように密着させて固定すると、耳が時間が経つにつれて痛くなり、また、耳掛け部の跡が残るようになる。さらに、長時間着用する場合には、カブレが発生することもある。そのため、耳掛け部の材料として、幅広の不織布を用いたり、本体部に粘着材を設けて顔面に固定したりするなど、様々な工夫がなされてきた。
本発明のマスクにおいては、本体部の下部ポケット部と積層部とで形成される空間に着用者の下あごの先端部を収容することができるため、本体部がずれにくく、また、隙間も生じにくいので、固定部により強く固定する必要がないという利点がある。
【0075】
本発明のマスク100は、上述した各種部材を一体化させて得ることができる。一体化の方法は、特に限定されず、例えば、ミシン糸等による縫合;ホットメルト等による接着;ヒートシール、超音波シール等による溶結が挙げられる。ミシン糸による縫合の場合には、ミシン目に対して、樹脂、粘着テープ等による目止め処理を行うことができる。
【0076】
本発明のマスクは、使用後はティシュに包んだり、PE製等の袋に入れたりして使い捨てにするのが好ましいが、適切な滅菌処理、例えば、比較的熱安定性が高いことを利用して水蒸気滅菌処理を行うことによって、繰り返し使用することもできる。繰り返し使用する回数は、2〜3回であるのが好ましい。
例えば、上述したように、本体部が、積層部の内面シートの着用者側に、更に、着脱可能な交換用シート部材を有する場合には、積層部はそのままに、例えば、マスクを外すごとに交換用シートのみを交換することができ、この場合、2〜3回の繰り返し使用には何ら問題がない。
交換用シートを有しない場合や、交換用シートを有していても、本体部に目に見える汚れがついたり、長時間使用で病原体汚染のおそれがあったりする場合には、例えば、洗剤等は使用せずに、バットに水を流しながら、固定部を持って水中で軽く振りながら本体部の表面の汚れを洗い流し、揉まないようにして軽く絞って風乾させた後、ガーゼのような清潔なもので軽くくるんで、家庭用の蒸し器に入れて20分前後水蒸気滅菌処理することにより、安心して再使用することができる。
【0077】
以上、本発明のマスクを図示の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、例えば、各部の構成は、同様の機能を発揮しうる任意の構成と置換することができる。
また、各実施形態における各部の構成を任意に組み合わせて、別の実施形態とすることもできる。
【0078】
本発明のマスクは、種々の用途に好適に用いられる。中でも、着用者から病原体が外部に放出されることを防止するためのマスクとして好適に用いられる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明について実施例を用いてより詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に限定されない。例えば、以下に示す実施例においては、MFCを利用した不活性化シートのみを用いたが、本発明者らが提案した特開平7−138858号公報及び特開平7−265397号公報の記載を参照して、抗菌性の合成繊維を用いた不活性化シートを用いてもよい。
【0080】
1.MFCとCuイオンを担持するゼオライトとを含有する不活性化シートの製造
(1)MFCの調製
国際公開第2004/009902号パンフレットに記載されている条件に従い、LBKP(St.Croix、Bonster社製)を原料にして、DDRを60サイクル通過させて、MFCの3.5質量%水分散液を得た。性状は以下のとおりであった。
【0081】
(a)数平均繊維長
スパチュラーを用いて極少量の水分散液を採取し、イオン交換水を添加して約0.03質量%の水分散液を得た。この水分散液を500mL容ビーカーに採取して測定用試料とした。
数平均繊維長を、カヤーニ繊維長分布測定機(フィンランドKajaani社製)を用い、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.52「パルプおよび紙−繊維長試験方法−光学的自動計測法」に準じて測定した。
数平均繊維長は、測定用試料中に存在するすべてのセルロース繊維の長さを積算した数値を、その本数で除して求めた。
測定の結果、数平均繊維長は、0.15mmであった。
【0082】
(b)抱水量
「抱水量」とは、単位質量のMFCが保持しうる水の体積を表す値であり、具体的には、以下のようにして求めた。
すなわち、抱水量とは、温度20℃、濃度1.5質量%のMFCの水分散液50mLを遠心分離可能な試験管(内径30mm×長さ100mm、目盛表示容積50mL)中に量り採り、2000G(3,300rpm)で10分間遠心分離した後、沈積物の体積を読み取って、下記式(1)により求めた。なお、MFCの絶乾質量は、沈積物を熱乾燥させて恒量状態に達したところで秤量して求めた。
測定の結果、抱水量は、30mL/gであった。
【0083】
抱水量(mL/g)=沈積物の体積(mL)/MFCの絶乾質量(g) (1)
【0084】
(c)0.50質量%水分散液粘度
60mL前後の水分散液を採取し、イオン交換水を添加して0.50質量%の水分散液を得た。この水分散液500mLを500mL容ビーカーに採取して20℃に調整し、測定用試料とした。
測定用試料の粘度を、JIS Z8803「粘度測定方法」に規定されている単一円筒型回転粘度計である、ブルックフィールド型回転粘度計を用いて測定した。測定はNo.2ローターを用いて行い、12rpmで回転させ、回転開始から30秒後の値を粘度(mPa・s)とした。粘度の測定は、5回行い、その平均値を求めた。
測定の結果、0.50質量%水分散液粘度は、320mPa・sであった。
【0085】
(2)MFCとCuイオンを担持するゼオライトとを含有する混合スラリーの調製
上記で得られたMFCの3.5質量%水分散液をエタノール(一級試薬、和光純薬工業社製)で希釈し、Cuイオンを担持するゼオライト(バクテキラー、富士ケミカル社製、粉末状)を添加し、かくはんして以下の組成の混合スラリーを調製した。得られた混合スラリーは3時間前後放置しても相分離せず、また、Cuイオンを担持するゼオライトがママコになることなく、均一に分散していた。
【0086】
・MFC:0.9質量%
・Cuイオンを担持するゼオライト:0.5質量%
・エタノール/水=70/30(質量比)
【0087】
(3)混合スラリーの基材への塗工
ハンド塗工装置を用いて、基材であるSMMS不織布(Avgol社製、目付15.0g/m2、PP製)の上に、エタノールと水との混合溶媒(エタノール/水=70/30(質量比))によりプリコートを行った後、上記で得られた混合スラリーを塗工した。塗工後のSMMS不織布を、ろ紙を重ねたマット上に置いて余分な溶媒を吸い取った後に、常温で風乾し、不活性化シートを得た。
得られた不活性化シートは、表面が平滑で粉末の脱離もなく、良好なコーティング状態であった。
得られた不活性化シートの構成は以下のとおりであった。
【0088】
・SMMS不織布:15.0g/m2
・MFC:4.1g/m2
・Cuイオンを担持するゼオライト:2.3g/m2
・全目付:21.4g/m2
【0089】
(4)不活性化シートの抗菌テスト
得られた不活性化シートを、普通寒天培地培養法による抗菌テストを実施したところ、強い抗菌性を示したことが確認された。
【0090】
(5)折りたたみ効果の測定
得られた不活性化シートについて、種々の形状に折りたたみ、フラジール形法による通気度を測定した。ここで、フラジール形法による通気度は、折りたたまれた状態での面積に基づき算出した。
結果を第2表に示す。第2表中、「形状」の欄は、不活性化シートの模式的な端面形状を示し、「折りたたみ率」の欄は、折りたたまれる前の面積を折りたたまれた状態での面積で除して算出した値を示す。
【0091】
【表2】

【0092】
第2表から、折りたたみ率が高くなるにつれ、ほぼ比例的に通気度は高くなる。
しかし、プリーツ状の場合には、重なり合った部分において空気の透過抵抗が大きくなり、表面積の増大による効果が表れにくく、通気度があまり高くならない。そのため、クレープティシュを合紙にしてプリーツに空隙を作って空気の通路を確保するようにすると、通気度が大幅に向上することが分かる。
【0093】
2.MFCとAgイオンを担持するゼオライトとを含有する不活性化シートの製造
(1)MFCとAgイオンを担持するゼオライトとを含有する混合スラリーの調製
上記と同様の方法により得られたMFCの3.5質量%水分散液をエタノール(一級試薬、和光純薬工業社製)で希釈し、Agイオンを担持するゼオライト(ゼオミック、シナネンゼオミック社製、粉末状)を添加し、かくはんして以下の組成の混合スラリーを調製した。得られた混合スラリーは3時間前後放置しても相分離せず、また、Agイオンを担持するゼオライトがママコになることなく、均一に分散していた。
【0094】
・MFC:0.8質量%
・Agイオンを担持するゼオライト:1.0質量%
・エタノール/水=70/30(質量比)
【0095】
(2)混合スラリーの基材への塗工
ハンド塗工装置を用いて、基材であるレーヨンスパンボンド(TCF#403、フタムラ化学社製、目付30.0g/m2)の上に、エタノールと水との混合溶媒(エタノール/水=70/30(質量比))によりプリコートを行った後、上記で得られた混合スラリーを塗工した。塗工後のレーヨンスパンボンドを、ろ紙を重ねたマット上に置いて余分な溶媒を吸い取った後に、常温で風乾し、不活性化シートを得た。
得られた不活性化シートは、表面に少しざらつきがあるものの均一で、粉末の脱離も発生しなかった。
得られた不活性化シートの構成は以下のとおりであった。
【0096】
・レーヨンスパンボンド:30.0g/m2
・MFC:3.6g/m2
・Agイオンを担持するゼオライト:4.5g/m2
・全目付:38.1g/m2
【0097】
(3)不活性化シートの抗ウィルス特性
得られた不活性化シートについて、財団法人北里環境科学センターに依頼して、H1N1型のインフルエンザウィルスを用いてウィルスの不活性化テストを実施した。
その結果、初期ウィルス感染価に対する24時間後の感染価は、5.2Log10以上の急激な減少が認められ、ウィルスが大幅に減少し不活性化されたことが確認された。なお、ウィルスの不活性化テストを実施するのに先立って、この不活性化シートを、普通寒天培地培養法による抗菌テストを実施したところ、強い抗菌性を示したことが確認された。
【0098】
3.MFCとAgイオンを担持するゼオライトとを含有する面とキトサンを含有する面とを有する不活性化シートの製造
(1)キトサン含有エマルジョンの基材への塗工
ハンド塗工装置を用いて、基材であるコットンスパンレース(コットンエース、ユニチカ社製、目付50.0g/m2)の上に、キトサン含有エマルジョンをキトサン塗布量が1.2g/m2になるように塗工した。塗工後のコットンスパンレースを常温で風乾した。
【0099】
(2)混合スラリーの基材への塗工
ハンド塗工装置を用いて、コットンスパンレースのキトサン含有エマルジョン(UF−55F、高松油脂社製、7質量%水溶液)を塗布された面と反対側の面上に、エタノールと水との混合溶媒(エタノール/水=70/30(質量比))によりプリコートを行った後、上記と同様の方法により得られたMFCとAgイオンを担持するゼオライトとを含有する混合スラリーを塗工した。塗工後のレーヨンスパンボンドを、ろ紙を重ねたマット上に置いて余分な溶媒を吸い取った後に、常温で風乾し、不活性化シートを得た。
得られた不活性化シートは、表面が平滑で粉末の脱離もなく、良好なコーティング状態であった。
得られた不活性化シートの構成は以下のとおりであった。
【0100】
・コットンスパンレース:50.0g/m2
・キトサン:1.2g/m2
・MFC:3.2g/m2
・Agイオンを担持するゼオライト:4.0g/m2
・全目付:58.4g/m2
【0101】
4.マスクの製造
(実施例1)
内面シートとなるPE製不織布(DELNET、三昌社製、目付20g/m2)と、上記で得られたMFCとAgイオンを担持するゼオライトとを含有する不活性化シートを折りたたみ率が1.8倍となるようにクレープ状に加工したものと、上記で得られたMFCとCuイオンを担持するゼオライトとを含有する不活性化シートを折りたたみ率が1.8倍となるようにクレープ状に加工したものと、外面シートとなるSMMS不織布(Avgol社製、目付13g/m2、PP製)とを、この順に積層した。上記二つの不活性化シートについては、未塗工面を内側に向けて配置した。四辺をミシンにより一体化させて、4層構造の積層体を得た。
【0102】
上記で得られた積層体の下部及び上部に、通気性フィルム(トクヤマ社製、目付17g/m2)とPE/PETスパンボンド(エルベス、ユニチカ社製、目付15g/m2)との複層品を、深さ40mmに結合して得られたシート部材(フラジール形法による通気度1cm3/(cm2・s)以下、ガーレ法で450s/100cm3)を用いて、下部ポケット部及び上部ポケット部を設けた。
ついで、下部ポケット部及び上部ポケット部のそれぞれの縁部に弾性材料であるポリウレタンフィラメント(ライクラ、デュポン社製、800d)を4本並列に並べて8mm幅にしたものを設けた。
さらに、積層体の左右両端部に、厚さ50μmのSEBSフィルム(クレイトン社製)の両面をPE/PETスパンボンドで積層した一方向伸張性の複合弾性体にスリットを設けたものを設けた。このようにして、着用者の耳に掛けるループ状の伸縮性材料により構成された固定部を設け、図1に示されるマスク(ただし、積層体は4層構造)を得た。
【0103】
(実施例2)
内面シートとなるPE製開口フィルム(トレドガー社製、目付25g/m2)と、上記で得られたMFCとAgイオンを担持するゼオライトとを含有する面とキトサンを含有する面とを有する不活性化シート(折りたたんでいないもの)と、上記で得られたMFCとCuイオンを担持するゼオライトとを含有する不活性化シートを折りたたみ率が1.8倍となるようにクレープ状に加工したものと、外面シートとなるSMMS不織布(Avgol社製、目付13g/m2、PP製)とを、この順に積層した。上記キトサンを含有する面を有する不活性化シートについては、キトサン塗工面を内側に向けて配置した。四辺をミシンにより一体化させて、4層構造の積層体を得た。
上記で得られた積層体を用い、実施例1と同様の方法により、図1に示されるマスク(ただし、積層体は4層構造)を得た。
【0104】
5.実施例で得られたマスクの抗ウィルス特性の推定
上述したように、本発明のマスクの構成部材である不活性化シートの抗菌性及び抗ウィルス特性については、専門機関による効果測定を行ったが、マスクとしてのウィルスに対する不活性化評価については、現時点での評価方法は確立しておらず、また、粉塵の防護基準であるN−95及びN−99の評価を行うような測定専門機関もないので、本発明者は以下のように推定した。
すなわち、実施例1及び2で得られたマスクは、
(1)本体部がCu含有シートとAgイオン含有シート又はキトサンとAgイオン含有シートというように、不活性化シートを2重にして使用していること、
(2)呼気及び吸気のいずれも、主に4層の本体部を透過して、漏れが生じにくいように設計されていること(図4及び図5並びにそれらの説明部分参照。)、
(3)本体部が通気性の高い積層部と非通気性の下部ポケット部及び上部ポケット部とによって構成され、呼気リーク率を極限まで低下させている構造であること
から、従来にない優れた抗菌性及び抗ウィルス特性を持つものと推定した。
【0105】
6.通気度の測定
実施例1及び2で得られたマスクについて、積層体のフラジール形法による通気度を測定した。また、市販のマスクについても、本体部の中央付近においてフラジール形法による通気度を測定した。
その結果、実施例1で得られたマスクは35cm3/(cm2・s)、実施例2で得られたマスクは25cm3/(cm2・s)であった。
一方、ユニチャーム社製のウィルスガードマスクN−95は23cm3/(cm2・s)、ユニチャーム社製の高通気性マスクは40cm3/(cm2・s)、第一三共社製のパンデミック対応マスクは26cm3/(cm2・s)、アース製薬社製のウィルガードバイラマスクは13cm3/(cm2・s)であった。なお、通気度が13cm3/(cm2・s)のアース製薬社製のマスクは、2〜3時間着用すると若干息苦しさを感じた。
【0106】
7.着用時の隙間の発生状態等の評価
第1表に示される種々の市販のマスク、本発明のマスク(実施例1で得られたもの)、並びに、本発明のマスクにおいて下部ポケット部及び上部ポケット部に通気性素材を組み入れたものについて、着用時の隙間の発生状態と、深呼吸時のマスク上部からのリークの程度を評価した。なお、市販のマスクは、いずれも着用者の鼻の形状に沿って変形しうるワイヤー部材を有するものであった。
被験者は、成人5名(男性2名、女性3名)で行い、最も共通的な事象を表記した。なお、深呼吸時のマスク上部からのリークの程度は、着用者の目の下に鏡を水平に保持し、被験者が深呼吸を繰り返した場合の水蒸気による鏡のくもり度合を観察して評価した。
結果を第3表に示す。
【0107】
【表3】

【0108】
8.着用感の評価
実施例1及び2で得られたマスクについて、上記着用者の隙間の発生状態等の評価の被験者5名に着用させ、着用感を評価した。
その結果、いずれのマスクについても、本体部と顔との間に隙間が生じず、また、口を意図的に動かしても本体部がずれなかった。また、いずれのマスクについても、呼吸を繰り返しても息苦しいと感じなかった。
本発明品のマスクは、ウィルス感染者が着用して、外部へのウィルスの拡散を防ぐ目的で開発されたものであるが、自明のことであるが、未感染者や医療従事者が感染防止用に着用しても差し支えのないことも確認できた。
【符号の説明】
【0109】
10、10a、10b、10c、10d、10e、12、12a、12b、12c、12d、12e、12f、12g、14、16 本体部
20、20a、20b、20c、20d、20e、20f、20g 積層部
30、30a、30b、30c、30d、30e 積層体
32、32a、32b、32c、32d、32e 内面シート
34、34a、34b、34c、34d、34e 原体不活性化層
36、36a、36b、36c、36d、36e 外面シート
38a、38b、38c、38d、38e 接合部
40、40a、40b、40c、40d、40e、40f、40g、42 下部ポケット部
50、50a、50b、50c、50d、50e、50f、50g 上部ポケット部
60 側部ポケット部
70 ワイヤー部材
90、90a、90b、90c、90d、90e、90f、90g、90h 固定部
92 切り欠き
94 スリット
100、100a、100b、100c、100d、100e、100f、100g、102、104、106、160 マスク
130 活栓付きガラス管
131 箱
132 シャーレ
133 チューブ
134、150 エアーポンプ
135 活栓付きガラス管
136 ゴム風船
140 マスク装着治具
144 気体供給ノズル
146 排気捕集ファネル
148 エタノール検知管
S1、S2 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の鼻及び口を含む顔面下部を覆う本体部と、前記本体部に結合され、前記本体部を着用者の顔面下部に固定する固定部と
を具備し、
前記本体部が、
内面シートと、病原体不活性化層と、外面シートとが着用者側からこの順で積層された積層体を有し、前記積層体のフラジール形法による通気度が15cm3/(cm2・s)以上である積層部と、
前記積層部の下部に設けられた、フラジール形法による通気度が2cm3/(cm2・s)以下であるシート部材により構成され、着用者の下あごの先端部を収容する空間を形成する下部ポケット部と、
前記積層部の上部に設けられた、フラジール形法による通気度が2cm3/(cm2・s)以下であるシート部材により構成され、着用者の鼻を収容する空間を形成する上部ポケット部と、前記積層部の上部に設けられた、着用者の鼻の形状に沿って変形しうるテープ部材と、前記積層部の上部に設けられた、着用者の鼻の形状に沿って変形しうるワイヤー部材とからなる群から選ばれる少なくとも一つと
を有する、マスク。
【請求項2】
前記下部ポケット部の縁部の少なくとも一部に弾性材料が設けられている、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記下部ポケット部の前記縁部の少なくとも一部に設けられている前記弾性材料が、着用時に、着用者の下あごの下側に位置するように配置されている、請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
前記上部ポケット部の縁部の少なくとも一部に弾性材料が設けられている、請求項1〜3のいずれかに記載のマスク。
【請求項5】
前記病原体不活性化層が、複数枚のシート状材料から構成されている、請求項1〜4のいずれかに記載のマスク。
【請求項6】
前記病原体不活性化層を構成する前記複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、折りたたまれている、請求項5に記載のマスク。
【請求項7】
前記病原体不活性化層を構成する前記複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、無荷重下での厚さが0.5mm以上、見掛け比重が0.1以下である、請求項5又は6に記載のマスク。
【請求項8】
前記病原体不活性化層を構成する前記複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、抗ウィルス性能を有する合成繊維を用いた不織布である、請求項5〜7のいずれかに記載のマスク。
【請求項9】
前記病原体不活性化層を構成する前記複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、セルロース系繊維を用いた親水性の不織布である、請求項5〜8のいずれかに記載のマスク。
【請求項10】
前記病原体不活性化層を構成する前記複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、超微細セルロースを用いた不織布である、請求項5〜9のいずれかに記載のマスク。
【請求項11】
前記病原体不活性化層を構成する前記複数枚のシート状材料のうち少なくとも1枚が、金属イオンを担持した無機物を含有するシートである、請求項5〜10のいずれかに記載のマスク。
【請求項12】
前記金属イオンを担持した無機物を含有するシートが、超微細セルロースを用いた不織布である、請求項11に記載のマスク。
【請求項13】
前記金属イオンがCuイオン、Agイオン、Znイオン、Tiイオン、Auイオン、Ptイオン、Mnイオン、Feイオン及びZrイオンからなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項11又は12に記載のマスク。
【請求項14】
前記無機物がゼオライト、ドロマイト、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、活性炭、活性アルミナ、二酸化チタン、シラスバルーン、シリカゲル及びモレキュラーシーブからなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項11〜13のいずれかに記載のマスク。
【請求項15】
前記固定部が、着用者の耳に掛けるループ状の伸縮性材料により構成されており、前記伸縮性材料が、エラストマーフィルムの両面を不織布で積層した一方向伸張性の弾性複合体にスリット又は切り欠きを設けたものである、請求項1〜14のいずれかに記載のマスク。
【請求項16】
前記内面シートが多孔性である、請求項1〜15のいずれかに記載のマスク。
【請求項17】
前記内面シートが表面に畝状の凹凸構造を有する、請求項1〜16のいずれかに記載のマスク。
【請求項18】
前記本体部が、前記積層部の前記内面シートの着用者側に、更に、着脱可能な交換用シート部材を有する、請求項1〜17のいずれかに記載のマスク。
【請求項19】
前記本体部の前記下部ポケット部及び前記上部ポケット部と前記固定部とが、一つのシート部材で成形されている、請求項1〜18のいずれかに記載のマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−125494(P2011−125494A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286803(P2009−286803)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(592034744)株式会社日本吸収体技術研究所 (28)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】