説明

マスク

【課題】シートから耳掛け部が形成されたマスクにおいて、耳掛け部を形成するシートの素材選択の自由度を確保した上で、着用者に応じて耳掛け有効長さを長くすることができるマスクを提供すること。
【解決手段】着用時に顔の一部又は全部を覆うマスク本体2と、マスク本体2の両側部に設けられ且つ着用時に耳を掛ける一対の耳掛け部3とを備えたマスク1であって、耳掛け部3は、基材シート31に、マスク本体2寄りの第1開口部4及び第1開口部4よりも外側の第2開口部5が設けられて形成されており、第1開口部4と第2開口部5とは、基材シート31における介在領域32により分離していると共に、介在領域32を破断することにより連結し得るようになっており、着用時に、第1開口部4のみを利用して、又は連結した第1開口部4及び第2開口部5を利用して、耳掛け部3に耳を掛け得るように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートから耳掛け部が形成されたマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
マスクにおける耳掛け部としては、紐から形成されたものが一般的であるが、シートに切れ込みを設けて開口部を形成し、この開口部を利用して耳を掛けられるようにしたものも知られている(例えば、下記特許文献1,2参照)。
マスクの耳掛け部は、適切な有効長さ(以下「耳掛け有効長さ」という)を有していることが望ましい。耳掛け有効長さとは、着用時において、一方の耳掛け部の開口部の外縁部からマスク本体(マスクにおける顔を覆う本体部分)を経由し、他方の耳掛け部の開口部の外縁部までの長さである。
【0003】
この耳掛け有効長さが適切に設定されていないと、マスクを着用する際に不具合が生じてしまう。例えば、耳掛け有効長さが短過ぎるとマスクを着用することができす、耳掛け有効長さが長過ぎると、マスク本体が顔面から離れ、装着時に不安定となることがある。
特許文献1,2に記載のマスクにおいては、設計上(非伸長状態)の前記耳掛け有効長さは一定であり、耳掛け部を形成するシートを伸縮性シートから構成することで、着用時における耳掛け有効長さを、設計上よりも長くできるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−198231号公報
【特許文献2】特開2006−191964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1,2に記載のマスクにおいては、耳掛け有効長さを長くできるように、耳掛け部を形成するシートを伸縮性シートから構成する必要があるため、耳掛け部を形成するシートの素材選択に制限があり、設計面、コスト面等から好ましくない。
また、耳掛け部を形成するシートを伸縮性シートから構成した場合、耳における、耳掛け部が装着された部分や耳の後ろ部分(根元)に締め付け力が常時加わるため、当該部分が痛くなるという問題点もある。この問題点は、頭が大きく、耳間距離(右耳から顔面を経由し左耳に亘る長さ)が長い着用者において特に顕著となる。また、耳の位置や大きさには個人差があるため、前記問題点は、顔面に対する耳の高さや耳の大きさにも影響を受ける。
【0006】
従って、本発明の目的は、シートから耳掛け部が形成されたマスクにおいて、耳掛け部を形成するシートの素材選択の自由度を確保した上で、着用者に応じて耳掛け有効長さを長くすることができるマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、着用時に顔の一部又は全部を覆うマスク本体と、該マスク本体の両側部に設けられ且つ着用時に耳を掛ける一対の耳掛け部とを備えたマスクであって、前記耳掛け部は、基材シートに、前記マスク本体寄りの第1開口部及び該第1開口部よりも外側の第2開口部が設けられて形成されており、該第1開口部と該第2開口部とは、前記基材シートにおける介在領域により分離していると共に、該介在領域を破断することにより連結し得るようになっており、着用時に、前記第1開口部のみを利用して、又は連結した該第1開口部及び前記第2開口部を利用して、前記耳掛け部に耳を掛け得るように構成されているマスクを提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のマスクによれば、シートから耳掛け部が形成されたマスクにおいて、耳掛け部を形成するシートの素材選択の自由度を確保した上で、着用者に応じて耳掛け有効長さを長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、それぞれ、本発明のマスクの第1実施形態を示す正面図及び背面図である。
【図2】図2は、図1に示すII−II線断面図である。
【図3】図3は、第1実施形態のマスクについて、耳掛け部をマスク本体の背面側に閉じた状態を示す背面図である。
【図4】図4は、第1開口部と第2開口部とが分離した状態の耳掛け部を示す図である。
【図5】図5は、第1開口部と第2開口部とが連結した状態の耳掛け部を示す図である。
【図6】図6は、第1実施形態のマスクを着用した状態を示す図である。
【図7】図7は、本発明の第2実施形態のマスクにおける耳掛け部を示す図(図4対応図)である。
【図8】図8は、本発明の第3実施形態のマスクにおける耳掛け部を示す図(図4対応図)である。
【図9】図9は、本発明の第4実施形態のマスクにおける耳掛け部を示す図(図4対応図)である。
【図10】図10は、本発明の第5実施形態のマスクにおける耳掛け部を示す図(図4対応図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のマスクについて、その好ましい一実施形態である第1実施形態に基づき、図面を参照しながら説明する。本発明のマスクは、着用時に顔の一部又は全部を覆うために用いるもので、例えば、口や鼻を覆う(一般的な)マスク、目を覆うマスク(アイマスク)、顔全体を覆うマスク(フェイスマスク)に適用することができる。第1実施形態は、本発明のマスクをアイマスク(目用マスク)に適用したものである。
図1(a)及び図1(b)には、それぞれ、第1実施形態のマスクの正面図及び背面図が示されている。図2には、図1(a)に示すII−II線断面図が示され、図3には、第1実施形態のマスクについて、耳掛け部をマスク本体の背面側に閉じた状態の背面図が示されている。
【0011】
第1実施形態のマスク1は、図1〜図3に示すように、着用時に顔の一部又は全部を覆うマスク本体2と、マスク本体2の両側部に設けられ且つ着用時に耳を掛ける一対の耳掛け部3,3とを備えている。
また、耳掛け部3は、基材シート31に、マスク本体2寄りの第1開口部4及び第1開口部4よりも外側の第2開口部5が設けられて形成されている。第1開口部4と第2開口部5とは、図4に示すように、基材シート31における介在領域32により分離していると共に、図5に示すように、介在領域32を破断することにより連結し得るようになっている。
【0012】
そして、第1実施形態のマスク1は、着用時に、第1開口部4のみを利用して、又は連結した第1開口部4及び第2開口部5を利用して、耳掛け部3に耳を掛け得るように構成されている。
アイマスクは、一般的には、明るい場所で眠る際に遮光するために用いるものであって、本発明はそのような遮光用のアイマスクを含むものであるが、第1実施形態では、マスク本体2に蒸気温熱機能を具備させており、蒸気温熱アイマスクとして用いることができる。
以下に、第1実施形態のマスク1について詳述する。
【0013】
マスク本体2は、略扁平状で、目及び目周囲を覆うに足る形状及び大きさを有している。蒸気温熱機能を具備するマスク本体(以下「蒸気温熱本体」ともいう)2は、目及び目周囲の広い範囲に亘って水蒸気を伴う熱を付与するものである。ここで、「目周囲」とは、開眼状態における眼瞼裂の外側の領域をいい、眼窩の領域を含み且つそれよりも広い領域を指す。また、熱の付与とは、蒸気温熱本体を肌へ直接接触させて熱を付与すること、及び水蒸気の透過が可能な介在物を介して間接的に肌へ接触させて熱を付与することの双方を包含する。
【0014】
マスク本体2は、図1及び図2に示すように、蒸気温熱発生材21及びこれを収容する収容部22を備えている。収容部22は、シート材26,27を所定位置で接合して、扁平状の密閉空間が形成されたもので、その内部に蒸気温熱発生材21を収容することができる。扁平状のマスク本体2は、着用者の肌に近い側に位置する第1の面(背面)23及びそれと反対側に位置し且つ着用者の肌から遠い側に位置する第2の面(正面)24を有している。シート材26,27は、それぞれ第1の面23及び第2の面24を形成する。
マスク本体2の詳細については、後述する。
【0015】
耳掛け部3は、図1及び図3に示すように、マスク本体2の第1の面23の両側部に、耳掛け部連結部11を介して一対設けられている。一対の耳掛け部連結部11,11は、図1に示すように、そのマスク本体2の横方向(図1(a)に示すX方向)の内端部11A,11Aが、マスク本体2の縦方向(図1(a)に示すY方向)に対して下方に向けて窄まっている。耳掛け部連結部11の内端部11Aは、下端部11B(図3参照)を除き略直線状で、マスク本体2の横(X)方向の両外端部よりも横方向内側の位置において、その下端部11Bがその上端部よりも横方向内側に位置するように傾斜して延びている。耳掛け部連結部11の外端部は、マスク本体2の外端部と一致している。
【0016】
耳掛け部3の上縁及び下縁は、図3に示すように、耳掛け部連結部11を折り返し線として、耳掛け部3をマスク本体2の第1の面23側に閉じた状態においては、マスク本体2の上縁及び下縁と一致している。尚、耳掛け部3がこのような形状を有していると、製造時においてマスク本体2及び耳掛け部3の外周を同時に切断して形成できる利点がある。
【0017】
また、耳掛け部3は、図3に示すように閉じた状態から、耳掛け部連結部11を折り返し線として展開すると、図1に示すように、耳掛け部3の全体形状が外側下方に傾斜して展開する。このような、マスク本体2に対する耳掛け部3の傾斜は、アイマスクの場合に適当なものであり、マスクの種類によって適宜設定される。
【0018】
耳掛け部連結部11は、図3に示すように、そのマスク本体2の横(X)方向の内端部11Aの下端部11Bが、マスク本体2の横(X)方向外側に後退するように丸みを帯びている。耳掛け部連結部11の内端部11Aの下端部11Bは、使用時(耳掛け部3を展開して装着する際)に最も負荷が掛かる部分であるため、負荷を逃がし、基材シート31の素材の破れや解れ(ほつれ)等を防止することが好ましい。そのため、耳掛け部連結部11の内端部11Aの下端部11Bが丸みを帯びていると、負荷を逃がし、基材シート31の素材の解れ等を効果的に防止することができる。
【0019】
丸みを帯びた下端部11Bの幅(マスク本体2の横(X)方向の幅)は、着用時における耳掛け部3のきつさに影響を与えない観点から、好ましくは0.5mm以上、特に1mm以上である。また、略直線状の内端部11Aがマスク本体2の横(X)方向外側に後退し始める部分は、マスク本体2の縦(Y)方向の高さが、マスク本体2の下縁から好ましくは1mm以上であり、特に好ましくは3〜30mmであり、さらに好ましくは5〜20mmである。
【0020】
耳掛け部3は、基材シート31に第1開口部4及び第2開口部5が設けられて形成されている。
基材シート31は、伸縮性シート、実質的に非伸縮性で伸長性を有するシート又は実質的に非伸縮性で伸長性も有していないシートの何れから形成されていてもよい。本発明のマスクは、基材シート31を非伸縮性で伸長性も有していないシートから形成したとしても耳掛け有効長さを長くすることができるので、コストが安く、製造面でも有利な非伸縮性で伸長性も有していないシートを好ましく用いることができる。具体的には、基材シート31の素材としては、例えば、不織布、織布、紙、樹脂フィルムが挙げられる。
【0021】
第1開口部4及び第2開口部5の形状は、耳を掛けることができれば特に制限はなく、第1実施形態及び後述する別の実施形態のように、種々の形状とすることができる。
また、第1開口部4及び第2開口部5の開口面積は、耳を掛けることができれば特に制限はない。第1実施形態における第1開口部4及び第2開口部5は、実質的に開口面積を有していない(つまり実質的に開口面積が0(ゼロ)の)切れ込みからなる。
【0022】
第1開口部4は、マスク本体2寄りに位置しており、後述するように、耳掛け部3に耳を掛ける際に必ず使用される。第1実施形態においては、第1開口部4は、T字形状を有し、T字の縦棒部分41の根元がマスク本体2側(マスク本体2に近い場所)に位置し、T字の横棒部分42がマスク本体2とは反対側(マスク本体2に対して、縦棒部分41を介して遠い側)に位置している。
【0023】
縦棒部分41は、(単体状態の)基材シート31を上下方向に2分するように幅方向に延びている。縦棒部分41の長さは、例えば40〜70mmが好ましく、50〜65mmが特に好ましい。 横棒部分42は、(単体状態の)基材シート31の上下方向に沿って延びている。横棒部分42は、その中点で縦棒部分41と連結し、T字形状を形成している。横棒部分42の長さは、例えば10〜50mmが好ましく、特に20〜40mmが好ましい。
【0024】
尚、第1実施形態においては、T字形状の第1開口部4は、縦棒部分41及び/又は横棒部分42に直接繋がる1つ又は複数の短いスリット(図示せず)を有しても良い。つまり、第1開口部4に短いスリットが繋がっていることで、第1開口部4全体としてT字形状を有していなくても、T字形状の部分を含んでいれば、「T字形状部分を含む第1開口部4」に該当する。第1実施形態における第1開口部4は、全体としてT字形状を有している。
【0025】
第2開口部5は、第1開口部4よりも外側に設けられている。ここでいう「第1開口部4よりも外側」とは、第1開口部4を基準にして、マスク1の幅方向外側及び上下方向外側の一方又は両方を意味する。「マスク1の幅方向」とは、一対の耳掛け部3,3を結ぶ方向(図1におけるX方向)であり、「マスク1の上下方向」とは、マスク1の幅方向と直交し且つマスク本体2の厚み方向とも直交する方向(即ち着用時における上下方向。図1におけるY方向)である。
【0026】
第2開口部5は、短直線形状を有し、T字形状の第1開口部4における横棒部分42の両端部に近接して一対設けられている。第2開口部5の長さは、例えば1〜20mmが好ましく、5〜10mmが特に好ましい。また、一対の第2開口部5は、マスク1の幅方向外側に向けて間隔が狭くなるように傾斜している。
【0027】
尚、第1実施形態における第2開口部5は、短直線形状、すなわち開口部を有さない形状であるが、その長さが上記範囲内であれば、開口部を有する形状、例えば楕円や長方形、ひし形等であっても良い。
【0028】
また、第1実施形態においては、短直線形状の第2開口部5は、これに直接繋がる1つ又は複数の短いスリット(図示せず)を有しても良い。つまり、第2開口部5に短いスリットが繋がっていることで、第2開口部5全体として短直線形状を有していなくても、短直線形状の部分を含んでいれば、「短直線形状部分を含む第2開口部5」に該当する。第1実施形態における第2開口部5は、全体として短直線形状を有している。
【0029】
また、第1開口部4と第2開口部5とは、使用前及び第1開口部4のみを利用して耳掛け部3に耳を掛ける場合には、図4に示すように、基材シート31における介在領域32により分離している。介在領域32は、第1開口部4と第2開口部5との間の領域である。
一方、第1開口部4と第2開口部5とは、第1開口部4及び第2開口部5の両方を利用して耳掛け部3に耳を掛ける場合には、図5に示すように、介在領域32を破断することにより連結し得るようになっている。
【0030】
介在領域32の長さは、第1開口部4と第2開口部5とを連結させるための条件(介在領域32を破断させるために要する力等)を決める重要な要因であり、例えば1〜10mmが好ましく、特に1〜5mmが好ましい。介在領域32は、短い方が装着時に破断し易く、サイズ調整(耳掛け有効長さの調整)を容易に行うことができる。介在領域32の長さとは、第1開口部4と第2開口部5との最短距離(間隔)であり、第1実施形態の場合には、第1開口部4の横棒部分42の端部と第2開口部5との最短距離である。
【0031】
次に、マスク本体(蒸気温熱本体)2における蒸気温熱機能について詳述する。蒸気温熱発生材21は、被酸化性金属を含んでおり、被酸化性金属が酸素と接触することによる酸化反応で生じた熱を利用して、所定温度に加熱された水蒸気を発生する材である。
【0032】
第1の面23は空気及び水蒸気の透過が可能な面になっている。つまり、第1の面23は通気面になっている。第2の面24は、第1の面23と同様に空気及び水蒸気の透過が可能な面になっているか、または、第1の面23よりも空気及び水蒸気の透過の程度が低い面、つまり、難通気面になっている。さらに、第2の面24は、空気及び水蒸気が実質的に透過しない面、すなわち非通気面になっていてもよい。
【0033】
蒸気温熱本体2は、その第1の面23の側が着用者の肌面に対向し、第2の面24の側が外方を向くように使用される。蒸気温熱発生材21の発熱によって発生した水蒸気は、第1の面23を通じ、対象物である肌面に付与されるようになっている。
【0034】
蒸気温熱本体2における第1の面23及び第2の面24は、図1及び図2に示すように、それぞれシート材26,27から構成されている。蒸気温熱本体2の収容部22は、シート材26,27の所定位置を収容部周縁接合部25によって接合することで形成される。収容部周縁接合部25は、周状で、蒸気温熱本体2の幅方向中央部において、上下方向に括れ、略瓢箪形状となっている。そのため、収容部22は、蒸気温熱本体2の幅方向中央部において連通した形態で、2個の領域に区画されている。この領域ごとに1個の蒸気温熱発生材21が配設されている。
【0035】
収容部周縁接合部25の両側縁部は、蒸気温熱本体2(シート材26,27)の横(X)方向の両外端部よりも横方向内側に位置しており、更には耳掛け部連結部11の内端部11Aよりも横方向内側に位置している。蒸気温熱本体2における収容部周縁接合部25の両側縁部よりも外側は、耳掛け部連結部11又は接着剤(図示せず)により接合されている。
【0036】
第1実施形態における蒸気温熱本体2においては、第1の面23及び第2の面24の通気度を適切に調整することで、第1の面23を通じて水蒸気が優先的に放出されるようになっている。これに加えて、第1の面23及び第2の面24の通気度を適切に調整することで、蒸気温熱の発生の持続時間を前記の範囲内とすることが容易となる。また、蒸気温熱本体2が適用された皮膚表面の温度を前記の範囲内とすることが容易となる。具体的には、第1実施形態においては、第2の面24の通気度を、第1の面23の通気度と同じか、より大きくしている。
【0037】
JIS P8117によって測定される通気度は、一定の圧力のもとで100mlの空気が6.42cm2の面積を通過する時間で定義されるものである。この通気度が大きい
ことは、空気の通過に時間が掛かることを意味している。即ち通気性が低いことを意味している。逆に、通気度が小さいことは、通気性が高いことを意味している。このように、通気度の大小と通気性の高低とは逆の関係になっている。通気性に関して第1の面23及び第2の面24を比較すると、第1の面23の通気度が、第2の面24の通気性よりも高くなっている。つまり、第2の面24は、非通気性であるか、又は難通気性(即ち、通気性を有するものの、第1の面23よりも低い通気性を有している)である。
【0038】
例えば、第2の面24が通気性である場合には、該面24の通気度を好ましくは100〜60000秒、更に好ましくは4000〜40000秒とする。また、第2の面24の通気度が第1の面23の通気度よりも十分に大きい場合には、第2の面24の通気度を、第1の面23の通気度の5倍以上、特に10倍以上、とりわけ100倍以上とすることが好ましい。
さらに、第1の面23の通気度そのものは、0.01〜15000秒、特に0.01〜10000秒であることが好ましい。
【0039】
さらに、第1の面23及び第2の面24に用いるシート材は、シート材の通気度、透湿度、風合い、肌触り、強度、被酸化性金属等の粉体についての漏れ出し防止等を考慮して適宜決定すればよい。通気度を支配し且つ粉体の漏れ出しを防止するシート材としては、メルトブローン不織布や透湿性フィルムが挙げられる。透湿性フィルムは、熱可塑性樹脂及び該樹脂と相溶性のない有機又は無機のフィラーの溶融混練物をフィルム状に成形し、一軸又は二軸延伸して得られたものであり、微細な多孔質構造になっている。
【0040】
強度を付与する目的で用いられるシート材としては、スパンボンド不織布が挙げられる。また風合いを良好にする目的で用いられるシート材としては、サーマルボンド不織布が挙げられる。種々の通気度及び透湿度を有するシート材を組み合わせて積層シートを構成することで、各通気面の通気度及び透湿度を所望の値に設定する自由度が増す。一例として、三層構造の積層シートにおいて、最内層としてスパンボンド不織布を用い、中間層としてメルトブローン不織布を用い、最外層としてサーマルボンド不織布を用いることができる。
【0041】
収容部22に収容される蒸気温熱発生材21は、被酸化性金属、反応促進剤、電解質及び水を含む。そのような蒸気温熱発生材21は、例えば発熱シート又は発熱粉体からなる。蒸気温熱発生材21が発熱シートからなる場合には、発熱シートは被酸化性金属、反応促進剤、繊維状物、電解質及び水を含む繊維シートから構成されていることが好ましい。つまり、発熱シートは、被酸化性金属、反応促進剤、繊維状物及び電解質を含む繊維シートが含水状態となっているものであることが好ましい。特に、発熱シートは、被酸化性金属、反応促進剤及び繊維状物を含有する成形シートに、電解質水溶液を含有させて構成されていることが好ましい。
【0042】
発熱シートとしては、湿式抄造により得られたシート状物や、発熱粉体を紙等で挟持してなる積層体等が挙げられる。そのような発熱シートは、例えば本出願人の先の出願に係る特開2003−102761号公報に記載の湿式抄造法や、ダイコーターを用いたエクストルージョン法を用いて製造することができる。一方、蒸気温熱発生材21が発熱粉体からなる場合には、発熱粉体は、被酸化性金属、反応促進剤、保水剤、電解質及び水を含んで構成されていることが好ましい。発熱シート及び発熱粉体のうち、どのような姿勢においても目及び目周囲へ蒸気温熱を均一に適用し得る点から、発熱シートを用いることが好ましい。また、発熱シートは、発熱粉体に比較して、発熱の温度分布を均一化することが容易であり、また、被酸化性金属の担持能力が優れている点からも有利である。
【0043】
蒸気温熱発生材21が発熱シートからなる場合、該発熱シートは60〜90重量%の被酸化性金属、5〜25重量%の反応促進剤及び5〜35重量%の繊維状物を含む成形シートに、該成形シート100重量部に対して、1〜15重量%の電解質を含む電解質水溶液が20〜80重量部含有されて構成されていることが好ましい。一方、蒸気温熱発生材21が発熱粉体からなる場合、該発熱粉体は、30〜80重量%の被酸化性金属、1〜25重量%の反応促進剤、3〜25重量%の保水剤を含む固形分100重量部に対して、0.3〜10重量%の電解質を含む電解質水溶液が20〜70重量部、30〜60重量部の水から構成されていることが好ましい。発熱シートや発熱粉体を構成する各種材料としては、当該技術分野において通常用いられているものと同様のものを用いることができる。また、先に述べた特開2003−102761号公報に記載の材料を用いることもできる。
【0044】
第1実施形態のマスク1は、例えば図6に示すように、耳掛け部3を利用して耳に掛けられ、使用される。このような使用形態とすることで、着用者の姿勢(例えば仰臥位や座位等)によらず、蒸気温熱本体2から発生した蒸気温熱を着用者に均一に適用することができる。このことは、蒸気温熱本体2を備えたマスク1の使用形態の汎用性が向上する点から有利である。一例として、家で寝転んだ状態で、蒸気温熱本体2を備えたマスク1を使用することができる。また、デスクワーク中に目の疲れを感じたときに直ちに使用することも可能である。更に、出張時の移動時(例えば、電車、飛行機、自動車等の中)にも手軽に使用できる。
【0045】
次に、第1実施形態のマスク1の一使用方法について説明し、併せて第1実施形態のマスク1の効果についても説明する。
第1実施形態においては、耳掛け部3は、基材シート31に、マスク本体2寄りの第1開口部4及び第1開口部4よりも外側の第2開口部5が設けられて形成されており、第1開口部4と第2開口部5とは、基材シート31における介在領域32により分離していると共に、介在領域32を破断することにより連結し得るようになっている。
【0046】
そのため、着用者の頭が小さく、右耳から顔面(第1実施形態においては、目周囲部)を経由し左耳に亘る長さが短い場合には、図4に示すように、第1開口部4と第2開口部5とが介在領域32により分離した状態で、第1開口部4のみを利用して、耳掛け部3に耳を掛けることができる。
【0047】
一方、着用者の頭が大きく、右耳から顔面を経由し左耳に亘る長さが長い場合には、耳掛け部3の第1開口部4に耳を掛けると、第1開口部4と第2開口部5とを分離している介在領域32に大きな引き裂き力が加わる。その結果、介在領域32が破断すると、図5に示すように、第1開口部4と第2開口部5とが連結し、マスク1における耳掛け有効長さが長くなる。その後、第1開口部4に掛けられていた耳の根元は、第1開口部4よりも外側の第2開口部5側において掛かることになる。つまり、連結した第1開口部4及び第2開口部5を利用して、耳掛け部3に耳を掛けることができる。
【0048】
このように、基材シート31を伸縮性シートから形成しても又は形成しなくても(つまり、耳掛け部3を形成するシートの素材選択の自由度を確保した上で)、着用者の頭の大きさ、つまり、前記耳間距離(右耳から顔面を経由し左耳に亘る長さ)に応じて、耳掛け有効長さを当初の短い長さから長くすることができる。
【0049】
次に、本発明のマスクの別の実施形態について説明する。別の実施形態については、第1実施形態と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。特に説明しない点については、第1実施形態についての説明が適宜適用される。別の実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0050】
第2実施形態のマスク1は、図7に示すように、第1実施形態に比して、第2開口部5の形状が異なる。具体的には、第2開口部5は、T字形状の第1開口部4における横棒部分42よりも長さが長く、横棒部分42と略平行に設けられている。つまり、第2開口部5は、第1開口部4における横棒部分42よりも長さが長い直線形状部分を含んでいる。
【0051】
また、第2開口部5は、その両端部52近傍がそれぞれマスク本体2側に屈曲した形状を有し、屈曲した両端部52近傍が、T字形状の第1開口部4における横棒部分42の両端部に近接して、すなわち第2開口部5により横棒部分42を覆うように設けられている。ここでいう「第2開口部5の長さ」とは、第1開口部4の横棒部分42が延びる方向に測定した長さであり、従って、第2開口部5における略平行部分51だけでなく、屈曲した両端部52近傍を含めた長さとする。
【0052】
第2開口部5の長さは、例えば20〜90mmが好ましく、40〜70mmが特に好ましい。第2開口部5における略平行部分51の長さは、例えば10〜50mmが好ましく、20〜40mmが特に好ましい。
尚、第2実施形態における第2開口部5には、複数の短いスリット(図示せず)を形成しても良い。第2開口部5にこのような短いスリットを形成することにより、耳への耳掛け部3のあたりを柔らかくすることができる。
【0053】
第2実施形態によれば、介在領域32を破断させて、第1開口部4と第2開口部5とを連結させると、第2開口部5における屈曲した両端部52近傍のみならず、略平行部分51にも耳を掛けることができる。
尚、介在領域32の破断後、第1開口部4と第2開口部5とで包囲された領域は、トリムとなり、基材シート31から分離する。
【0054】
第3実施形態のマスク1は、図8に示すように、第1実施形態に比して、第2開口部5の形状が異なる。具体的には、第2開口部5は、T字形状を有し、T字の縦棒部分53の根元がマスク本体2側に位置し、T字の横棒部分54がマスク本体2とは反対側に位置している。つまり、第1開口部4及び第2開口部5の両方がT字形状を有している。また、介在領域32は、第2開口部5の縦棒部分53の根元と第1開口部4の横棒部分42との間に位置している。
【0055】
第1開口部4の縦棒部分41と第2開口部5の縦棒部分53とは、介在領域32を挟んで、一直線上に配列している。介在領域32の長さは、例えば1〜10mmが好ましく、1〜5mmが特に好ましい。介在領域32の長さが短いほど、装着時に違和感を与えることなく、サイズ調整を容易に行うことができる。第2開口部5の横棒部分54は、第1開口部4の横棒部分42と平行になっており、また第1開口部4の横棒部分42よりも長くなっている。
【0056】
第2開口部5の横棒部分54の長さは、例えば10〜50mmが好ましく、20〜40mmが特に好ましい。第1開口部4の横棒部分42の長さは、例えば10〜50mmが好ましく、20〜40mmが特に好ましい。第2開口部5の横棒部分54は、第1開口部4の横棒部分42と同じ長さでもよく、異なる長さでもよい。
【0057】
尚、第3実施形態においては、T字形状の第2開口部5は、縦棒部分53及び/又は横棒部分54に直接繋がる1つ又は複数の短いスリット(図示せず)を有しても良い。つまり、第2開口部5に短いスリットが繋がっていることで、第2開口部5全体としてT字形状を有していなくても、T字形状の部分を含んでいれば、「T字形状部分を含む第2開口部5」に該当する。第3実施形態における第2開口部5は、全体としてT字形状を有している。
【0058】
第4実施形態のマスク1は、図9に示すように、第3実施形態に比して、第1開口部4の形状が異なる。具体的には、第1開口部4は、I字形状を有し、I字の一端部がマスク本体2側に位置し、I字の他端部がマスク本体2とは反対側に位置している。つまり、第1開口部4はT字形状を有していない。第1開口部4と第2開口部5の縦棒部分53とは、介在領域32を挟んで、一直線上に配列している。また、介在領域32は、第1開口部4の他端部と第2開口部5の縦棒部分53の根元との間に位置する。I字形状の第1開口部4の長さは、例えば40〜70mmが好ましく、50〜65mmが特に好ましい。
【0059】
尚、上記の第1〜第4実施形態においては、第1開口部4は、実質的に開口面積を有さないT字形状又はI字形状であるが、その他の開口面積を有さない形状、例えば十字形状やY字形状等の耳を掛ける空間を形成し得る形状とすることもできる。
【0060】
第5実施形態のマスク1は、図10に示すように、前記各実施形態に比して、第1開口部4の形状が異なる。具体的には、第1開口部4は、非着用時(着用前)において開口面積を有している。つまり、第1開口部4は、切れ込みではなく、くり抜かれて形成された開口部である。第1開口部4の開口面積は、例えば200〜2500mm2が好ましい。
第5実施形態においては、耳掛け部3を展開した状態において、第1開口部4は、マスク1の内側に向けて先が細くなった雫状の形状を有している。第2開口部5は、第1開口部4における、マスク本体2とは反対側の端部近傍の上方及び下方に位置している。第2開口部5は、(単体状態の)基材シート31の上下方向に沿って延びている。
【0061】
本発明のマスクは、前述した実施形態に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
例えば、第2開口部5も開口面積を有していてもよく(つまり、くり抜かれて形成されていてもよく)、その場合には、その開口面積は、例えば200〜2500mm2が好ま
しい。
【0062】
開口面積を有する第1開口部4及び第2開口部5は、楕円形や多角形であってもよい。
また、前記各実施形態においては、耳掛け部3に第1開口部4及び第2開口部5が設けられ、耳掛け有効長さを2段階に変更できるようになっているが、本発明においては、耳掛け部3に更に開口部(例えば、第3開口部、第4開口部・・・)を設け、耳掛け有効長さを3段階以上に変更できるように構成することもできる。
【符号の説明】
【0063】
1 マスク
11 耳掛け部連結部
2 マスク本体
21 蒸気温熱発生材
22 収容部
23 第1の面
24 第2の面
3 耳掛け部
31 基材シート
32 介在領域
4 第1開口部
41 縦棒部分
42 横棒部分
5 第2開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用時に顔の一部又は全部を覆うマスク本体と、該マスク本体の両側部に設けられ且つ着用時に耳を掛ける一対の耳掛け部とを備えたマスクであって、
前記耳掛け部は、基材シートに、前記マスク本体寄りの第1開口部及び該第1開口部よりも外側の第2開口部が設けられて形成されており、該第1開口部と該第2開口部とは、前記基材シートにおける介在領域により分離していると共に、該介在領域を破断することにより連結し得るようになっており、
着用時に、前記第1開口部のみを利用して、又は連結した該第1開口部及び前記第2開口部を利用して、前記耳掛け部に耳を掛け得るように構成されているマスク。
【請求項2】
前記第1開口部及び前記第2開口部は、実質的に開口面積を有していない切れ込みからなる請求項1記載のマスク。
【請求項3】
前記第1開口部は、T字形状部分を含み、T字の縦棒部分の根元が前記マスク本体側に位置し、T字の横棒部分が該マスク本体とは反対側に位置している請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
前記第2開口部は、前記第1開口部における前記横棒部分の両端部に近接して設けられている一対の短直線形状部分を含む請求項3記載のマスク。
【請求項5】
前記第2開口部は、前記第1開口部における前記横棒部分よりも長さが長く、該横棒部分と略平行に設けられている直線形状部分を含む請求項3記載のマスク。
【請求項6】
前記第2開口部は、その両端部近傍がそれぞれ前記マスク本体側に屈曲した形状を有し、屈曲した両端部近傍が、前記第1開口部における前記横棒部分の両端部に近接して設けられている請求項5記載のマスク。
【請求項7】
前記第1開口部は、I字形状を有し、I字の一端部が前記マスク本体側に位置し、I字の他端部が該マスク本体とは反対側に位置している請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項8】
前記第2開口部は、T字形状部分を含み、T字の縦棒部分の根元が前記マスク本体側に位置し、T字の横棒部分が該マスク本体とは反対側に位置している請求項1、2、3又は7に記載のマスク。
【請求項9】
前記第1開口部は、着用前において開口面積を有している請求項1記載のマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−20175(P2012−20175A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227747(P2011−227747)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【分割の表示】特願2007−146681(P2007−146681)の分割
【原出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】