説明

マスコンクリートの養生装置および養生方法

【課題】マスコンクリートの養生装置および養生方法を提供すること。
【解決手段】マスコンクリートの中心部となる部分に通水パイプ2の中間部が埋め込み配置され、その通水パイプ2には、マスコンクリートの外側に位置した部分に給水口と排出口とが設けられ、排出口と、マスコンクリート表面に設置された散水管または散水用ホース11とが接続管を介して接続され、散水されたマスコンクリート表面における養生水の下流側に、養生水の集水設備およびろ過器が設けられ、前記集水設備と通水パイプの給水口は送水管路およびポンプを介して接続されている。マスコンクリートの中心部となる部分に中間部が埋め込み配置された通水パイプ内を通って暖められた温水を、マスコンクリートの表面を散水養生させる養生水とし、散水養生して冷却された養生水をろ過器によりろ過した後、前記通水パイプにもどして、マスコンクリートの中心部を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠内に配置される通水パイプにより、型枠内に打設されるマスコンクリートの中心部を冷却すると共に水和熱により暖められた冷却水をマスコンクリート表面を養生する養生水として利用するマスコンクリートの養生装置および養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柱頭部等のように断面寸法が大きなコンクリート構造物におけるひび割れ対策としてさまざまな方法がとられている。特に、マスコンクリートにおいては、その水和熱によるコンクリート中心部と、マスコンクリート表面を含む周辺部の温度差に起因するひび割れ、乾燥収縮によるひび割れ対策にさまざまな方法がとられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
また、マスコンクリートの内部に配管して冷却することも知られている。
また、マスコンクリート表面を養生する散水養生は、コンクリート表面に水をかけ続ける方法で行っていたが、近年、環境への配慮が注目を集め、アルカリ性のコンクリートに散水した水を周辺に流す場合は、その水質に配慮しなければならないという問題もある。
【特許文献1】特開平6−137364号公報
【特許文献2】特開平6−285832号公報
【特許文献2】特開平6−129095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記問題を解決する手段として、散水養生と断熱養生を組み合わせたものが考えられている。しかし、マスコンクリートの場合、そのマスコンクリートの中心部は水和熱によりかなりの高温となり周辺部との温度差が大きく、温度応力によるひび割れの可能性が大きくなる。
そこに、散水養生を行うと一時的であってもマスコンクリート表面を含む周辺部温度を下げてしまうという結果となり、マスコンクリートの中心部とマスコンクリートの表面を含む周辺部の温度を拡大させてしまうため、ますます温度応力によるひび割れの可能性が大きくなるという問題があった。
本発明は前記の課題を有利に解消することができるマスコンクリートの養生装置および養生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明のマスコンクリートの養生装置においては、マスコンクリートの中心部となる部分に通水パイプの中間部が埋め込み配置され、その通水パイプには、マスコンクリートの外側に位置した部分に給水口と排出口とが設けられ、前記排出口と、マスコンクリート表面に設置された散水管または散水用ホースとが接続管を介して接続されていることを特徴とする。
第2発明では、第1発明におけるマスコンクリートの養生装置において、散水管または散水用ホースから散水されたマスコンクリート表面における養生水の下流側に、養生水の集水設備およびろ過器が設けられ、前記集水設備と通水パイプの給水口は送水管路およびポンプを介して接続されていることを特徴とする請求項1に記載のマスコンクリートの養生装置。
第3発明のマスコンクリートの養生方法においては、マスコンクリートの中心部となる部分に中間部が埋め込み配置された通水パイプ内を通って暖められた温水を、マスコンクリートの表面を散水養生させる養生水として利用することを特徴とする。
第4発明では、第3発明のマスコンクリートの養生方法であって、散水養生して冷却された養生水をろ過器によりろ過した後、前記通水パイプにもどして、マスコンクリートの中心部を冷却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
第1発明のマスコンクリートの養生装置によると、マスコンクリートの中心部となる部分に埋め込み配置された通水パイプに、マスコンクリート表面に設置された散水管または散水用ホースが接続管を介して接続されている簡単な構造の養生装置とすることができる。またそのような簡単な構造の養生装置により、マスコンクリートの中心部を冷却しマスコンクリート周辺部を暖める養生装置とすることができる。
また、簡単な構造の養生装置を使用して、マスコンクリート表面を養生する養生水を、マスコンクリートの中心部を冷却して暖められた養生水(温水)とすることができ、マスコンクリートの中心部を冷却した水を経済的に温めて、マスコンクリートの表面を含む周辺部を暖めて養生するための養生水として利用することができ、そのため、マスコンクリート中心部の温度とマスコンクリート周辺部の温度差を、前記従来の場合よりも小さくすることができる。
マスコンクリートの中心部の温度と、マスコンクリート表面を含む周辺部の温度との温度差を小さくして、温度応力および乾燥収縮によるひび割れを抑制または防止することができる。
また、マスコンクリート全体の養生温度を安定させて養生することができるので、硬化したマスコンクリートは品質の高いコンクリートとすることができる。
また、第2発明のような養生装置にすると、マスコンクリートの中心部を冷却することにより暖められた水を、マスコンクリートの表面を流すことによりマスコンクリート表面を暖める一方、養生水を冷却した上、ろ過して、養生水を循環使用することができ、冷却水および養生水を少なくすることができ、経済的にマスコンクリートの中心部を冷却し、マスコンクリートの表面部を含む周辺部を暖めて、養生することができる。そのため、マスコンクリート全体の養生温度を安定させて養生することができるので、硬化したマスコンクリートは品質の高いコンクリートとすることができる。
また、冷却水または養生水として、限られた水を使い、また限られた水のろ過処理をすればよく、また、限られた水の水質に配慮するだけでよいという2重の効果が得られる。
また、第3発明によると、マスコンクリートの中心部となる部分に中間部が埋め込み配置された通水パイプ内を通って暖められた温水を、マスコンクリートの表面を散水養生させる養生水として利用するので、マスコンクリートの中心部を冷却した水を経済的に温めて、マスコンクリートの表面を含む周辺部を暖めて養生するための養生水として利用することができ、そのため、マスコンクリート中心部の温度とマスコンクリート周辺部の温度差を、前記従来の場合よりも小さくすることができる。そのため、マスコンクリート全体の養生温度を安定させて養生することができるので、硬化したマスコンクリートは品質の高いコンクリートとすることができる。
また、簡単な方法により、マスコンクリートの中心部の温度と、マスコンクリート表面を含む周辺部の温度との温度差を小さくして、温度応力によるひび割れを防止することができる。
また、第4発明によると、マスコンクリートの中心部となる部分に中間部が埋め込み配置された通水パイプ内を通って暖められた温水を、マスコンクリートの表面を散水養生させる養生水として利用し、散水養生して冷却された前記養生水をろ過器によりろ過した後、前記通水パイプにもどして、マスコンクリートの中心部を冷却するように養生させるので、限られた水を使い、また限られた水のろ過処理をすればよく、また、限られた水の水質に配慮するだけでよいという2重の利点を有するろ過装置とすることができる効果が得られる。しかも、マスコンクリート全体の養生温度を安定させて養生することができるので、硬化したマスコンクリートは品質の高いコンクリートとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0007】
図1〜図3は、本発明の一実施形態のマスコンクリートの養生装置1の一実施形態を示すものであって、橋梁におけるコンクリート製柱頭部3の中心部となる部分に通水パイプ2が型枠(図示を省略した)内に連続して屈曲配置された状態で、柱頭部のマスコンクリート4が充填されることにより、コンクリート製柱頭部3内に通水パイプ2の中間部が埋め込み配置されている。
【0008】
前記の通水パイプ2は、適宜短尺パイプ等が継手により接続されて、連続して横方向に屈曲配置されると共に上下方向に複数段に屈曲配置されたり、または、縦方向に屈曲配置されると共に左右方向に連続して複数列に屈曲配置されて、通水パイプ2(冷却水通水管路)の中間部がマスコンクリート4の中心部からマスコンクリート4の周縁部に埋め込み配置され、これにより、マスコンクリート4の水和熱によるマスコンクリート4の中心部の温度上昇を抑制可能にされていると共に、マスコンクリート4の中心部とそこから離れた位置の周縁部の温度差を小さくしている。
前記の中心部および周縁部は、マスコンクリート4の中心位置を含む少なくとも一つの断面において、それぞれ前記マスコンクリート4の中心部および周縁部となっていればよい。
【0009】
柱頭部直上の上床版5用のコンクリート4aが打設されている場合には、その上床版用コンクリート4aの上面に、湿潤養生用マット6を備えたコンクリート養生用マット8が敷設され、前記コンクリート養生用マット8上に、養生水供給管7が敷設されていると共に、前記養生水供給管7の長手方向に間隔をおいて複数(図示の場合は、4本または5本)の散水管または散水用ホース11の基端側が、適宜、給水バルブ(図示を省略した)を介して接続されている。
【0010】
前記の散水用ホース11には、その長手方向の両側または片側に、長手方向に間隔をおいて散水孔が設けられている。前記の散水用ホース11として、合成樹脂(例えば、塩化ビニル)製の市販のホ−スを使用すると、安価であり、散水孔の穿設も容易に形成することができる。
【0011】
前記の散水用ホース11の中間部から先端部は、湿潤養生用マット6の上に、適宜位置決め支承部材(図示を省略した)を介して配置され、また、前記の各散水用ホース11の先端部は閉塞されている。前記の散水用ホース11は橋軸直角方向(図示の場合)または橋軸方向(図示を省略した)に延長すると共に、橋軸直角方向に間隔をおいて平行に多数設置されている。
【0012】
上床版5における橋軸方向(または図示省略の直角方向)の両側には、適宜、橋軸直角方向(または図示省略の橋軸方向)に延長する水止め用堰板12が橋軸直角方向(または図示省略の橋軸方向)に延長するように設けられて、湿潤養生可能にされている。
【0013】
前記散水用ホース11から散水される養生水が流下する下流側(図示の場合には、橋体幅方向の端部フランジ下端)には、集水樋13がその長手方向に僅かに傾斜した状態で設けられ、集水樋13の下流側端部には、ろ過器22が設けられて、養生コンクリートから溶出されて養生還水に含まれる有害成分が除去されて、前記ろ過器22に接続する貯水タンクとしての集水用タンク14に貯水される。
【0014】
前記のろ過器22により、橋体表面のコンクリートから溶出されるアルカリ性成分等の有害成分を含む養生水中に含まれる前記の有害成分をろ過除去処理(あるいは中性化処理)される。
【0015】
前記の集水用タンク14は、桁幅方向端部から僅かに離れた位置に、適宜、地上またはワーゲン(移動式作業車)における作業足場等に設置された支持部材により支持される(図示を省略した)。
【0016】
前記のように処理された養生水は、集水用タンク(貯水タンク)14に貯水される。集水用タンク14には、送水管路9の一端側が接続され、その送水管路9の中間部には電動式送水ポンプ15が介在され(必要に応じ、電動式送水ポンプ15および必要に応じ養生水温制御装置が介在され)、前記送水管路9の他端側は、通水パイプ2の入り口2aに接続されている。
【0017】
なお、前記の養生水温制御装置には、外気温検知装置および水温検知装置並びに養生水加熱装置あるいは養生水冷却装置あるいは養生水加熱兼冷却装置が装備され、外気温および送水中の還流養生水の温度を検知して、養生水の温度制御が可能にされるものを使用するようにしてもよい。
【0018】
また養生水温制御装置をさらに介在させた場合には、その養生水温制御装置により、養生水の温度を、作業場所、作業季節あるいは作業時間あるいは、作業場所に合わせて設定することができるため、季節あるいは養生時間に応じて、適宜、養生水の温度を制御化能にすることもできる。
【0019】
前記の通水パイプ2の排出口2bには、排水管路10の入り口10aが接続され、その排水管路10の出口は、柱頭部上に一体に築造された上床版5の上面5aに、橋軸方向(図示の場合)または橋軸直角方向(図示を省略)に延長するように敷設された養生水供給管7の入り口に接続されている。
【0020】
散水用ホース11を覆うように、橋体上には、断熱シート18が設けられている。これにより、断熱された状態で柱頭部のマスコンクリート4および柱頭部直上の床版5の上面は、断熱養生されていると共に、湿潤養生されている。なお、柱頭部の橋軸直角方向の側面は、適宜断熱養生するようにする。
【0021】
また、湿潤養生用マット6からなる養生用マット8に代えて、図4に示すように、下面側に配置される湿潤養生用マット6と上面側に配置される保湿養生用マット19との間に、橋軸方向に延長すると共に、橋軸直角方向に間隔をおいて平行に配置された散水用ホース11を備えた2層構造の養生用マット8bを使用するようにしてもよい。そのような2層構造の養生用マット8bを使用する場合には、散水用ホース11等を含む新設コンクリートの橋面全体を覆うシートとしては、断熱性のないシート18bとしたり、シート18bを省略することもできる。
【0022】
前記のように散水用ホース11から散水される養生水により、湿潤養生用マット6は常時、水で潤された状態となり、コンクリート表面が乾燥してひび割れる恐れを排除することができる。また、連続して通水して湿潤養生または湿潤・断熱養生が可能にされているので、橋面全体を覆うシート(断熱シート18,あるいはシート18b)を省略することもできる。
【0023】
前記の湿潤用マットとしては、板状の保水材とその外側を包囲する透水性シート材により構成するようにすればよい。
【0024】
また、断熱用マットとしては、帯板状の断熱部材の外側を包む袋状の防水性シート材とにより構成すればよい。また、前記の湿潤用マットと保湿用マットの間に間隔をおいて平行に散水用ホースを介在させた状態で重合し接着または逢着により一体化した2層構造の湿潤・保湿養生用マットとしてもよい。
【0025】
前記の断熱養生シートとしては、例えば、2枚の熱可塑性樹脂フィルムの間に空気を円筒状に密封してなる空気セルを所定間隔で複数設けた気泡シートの両面に、補強防水シートを接着または逢製加工などで貼着した断熱養生シートを使用することできる。
【0026】
前記の送水管路9には、適宜、主動式等の給水バルブ(図示を省略した)が設けられ、流量調整するようにしてもよい。
【0027】
なお、マスコンクリート4の周側面部は、型枠内側または外側に設けられる断熱材により、断熱養生させるようにしてもよい。
【0028】
前記実施形態の装置では、マスコンクリート4の中心部の部分に通水パイプ2が配置されているために、通水パイプ2内を流れる潤滑水により、マスコンクリート4中心部の水和熱を吸収して、マスコンクリート中心部を確実に冷却しながら養生させることができる。そのため、マスコンクリート中心部の養生精度を高めることができ、養生品質の高い養生方法とすることができる。
また、マスコンクリート4の中心部では、均質で品質のよいマスコンクリートとすることができる。
【0029】
次に、前記のようなマスコンクリートの養生装置1を使用して、図1に示す柱頭部のマスコンクリート4およびその直上の橋体を構成している上床版5の養生方法について説明する。
【0030】
ポンプ15を駆動して通水パイプ2に通水すると、柱頭部のマスコンクリート4の中心部を含む内部に配管された通水パイプ2内に通水される水は、徐々にマスコンクリート4の水和熱を奪ってマスコンクリート4の中心部を冷却(パイプクーリング)しながら暖められ、暖められた冷却水からの温水は、上床版5上面に設置されている散水用ホース11から散水され、マスコンクリート4の上表面を形成している上床版5の上面を温めながら養生するための温水の養生水としている。
【0031】
前記のような温水の養生水により、マスコンクリート4の表面を暖めながら養生する。したがって、マスコンクリート4部分の内外の温度差を、図5の2点鎖線で示すように小さくすることができ、マスコンクリート4部分全体にわたり、その中心部および周縁部の養生温度差を小さくした状態で養生することができ、マスコンクリート全体にわたり均質なコンクリートとすることができる。
【0032】
なお、図5における実線は、従来の場合で、橋体の表面のみを養生した場合(通常養生)のマスコンクリート部分における内外温度差を示し、マスコンクリートの内外温度差が大きくなっている。また、図5における点線は、マスコンクリート内に通水パイプを配置しマスコンクリート内のみを冷却(パイプクーリング)した場合を示す。
【0033】
図5から分かるように、本発明の場合は、材齢が経過しても、マスコンクリート4部分の内外温度差が、前記の他の場合よりも小さいことがわかる。
【0034】
図6は、マスコンクリート4中心を通った通水パイプ2の排出口の水の温度(排出温度)を解析したもので、材齢1日前後で30℃弱の最高温度を示した後、材齢3日程度まで緩やかに排出口の水の温度が低下していることが分かる。
解析条件として、通水とパイプとの熱伝達率は、105kcal/hrm
冷却水の通水温度は、20℃
冷却水の通水速度は、15cm/sec
として解析した。
図6から、通水パイプ2の排出口の水の温度(排出温度)は、30℃以上になることはなく、材齢3日過ぎに、ほぼ排出口の水の排出温度(℃)が25℃になっており、安定した養生温度になることがわかる。
【0035】
図7は、本発明のマスコンクリートの養生装置1を、柱頭部3に配置した状態の概略斜視図を示す、図8は、本発明の方法により養生した場合の温度応力状態を示す説明図であり、図9は、通水パイプ2のみによりマスコンクリート4を冷却した場合の温度応力状態を示す説明図であり、図10は、通水パイプ2を配置しないで冷却しない場合の温度応力状態を示す説明図である。図中、「ハッチングのみの領域」よりは「点々入りの領域」の方が、引張応力が高く、「点々の領域」よりは「ハッチングおよび点々入りの領域」の方が、引張応力が高いことが示されている。
さらに、図8と図9または図10を比較して分かるように、図10、図9、図8の順に、
橋軸方向で端部側が、引張応力が小さくなっていることが分かる。
すなわち、本発明のように、通水パイプ2によりマスコンクリート4の中心部の冷却を図ると共に、中心部を冷却することにより暖められた温水により、上床版5を散水養生した場合には、図9あるいは図10に示す形態よりも、マスコンクリート4中心部と、その周縁部のコンクリートとの温度差を小さくすることができ、橋軸方向端部側の引張応力を小さくすることができる。
【0036】
本発明のように、柱頭部のマスコンクリート4の中心部を含む内部に通水パイプ2を埋め込み配置すると共に、通水パイプ2内に冷却水を流して冷却する一方、冷却水2を温めて温水にすることができ、その温水を養生水として柱頭部直上の上床版5の上面に対して、流すので、経済的に養生水を温めることができ、また、その温水とされた養生水を上床版5上面に流して、上床版5を暖めながら散水養生することができ、柱頭部におけるマスコンクリート4の中心部を含む内部と、マスコンクリート4の中心部の外面側の周縁部との温度差を小さくして養生することができる。
【0037】
また、前記実施形態のように、コンクリートの表面に散水する場合、コンクリートの表面の水上から散水し、水下に受け樋を設けておき、集水して再び流入口へ送り込むにすると、限られた養生水を繰り返し利用できるので、経済的にマスコンクリートを養生させることができる。
なお、本発明を実際に実施する場合、前記の実施形態のように、マスコンクリート中心部に配置されるパイプの配置形態は、FEM解析を行い、マスコンクリートの中心部の温度を均一に水に熱交換できるように設計するとよい。
【0038】
本発明を実施する場合、マスコンクリートの養生後に、鋼製パイプ等の通水パイプ2内に、モルタルあるいはコンクリート等の硬化性充填材などを充填して、冷却循環パイプ2内の中空部による断面欠損をなくして、圧縮耐力等の終局耐力を向上させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のマスコンクリートの養生装置を使用してコンクリート製柱頭部の養生を行っている状態を示す概略斜視図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】散水養生している状態を示す縦断側面図である。
【図4】他の形態により散水養生している状態を示す縦断側面図である。
【図5】各種の養生方法とマスコンクリート内外の温度差との関係を示すグラフである。
【図6】養生水の排出温度と排出水温履歴との関係を示すグラフである。
【図7】コンクリート製柱頭部の配管状態を示す概略図である。
【図8】本発明の養生装置を使用して、本発明の養生方法により養生した場合の温度応力状態を解析した解析図である。 柱頭部の温度応力状態の説明図である。
【図9】柱頭部におけるマスコンクリート内部に配管して養生した場合の温度応力状態を解析した図である。
【図10】柱頭部におけるマスコンクリートの表面側のみ養生した場合の温度応力状態を解析した説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 マスコンクリートの養生装置
2 通水パイプ
3 コンクリート製柱頭部
4 コンクリート
5 上床版
6 湿潤養生用マット
7 養生水供給管
8 コンクリート養生用マット
9 送水管路
10 排水管路
10a 排水管路の入り口
11 散水管または散水用ホース
12 水止め用堰板
13 集水樋
14 集水用タンク(貯水タンク)
15 ポンプ
19 保湿養生用マット
22 ろ過器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスコンクリートの中心部となる部分に通水パイプの中間部が埋め込み配置され、その通水パイプには、マスコンクリートの外側に位置した部分に給水口と排出口とが設けられ、前記排出口と、マスコンクリート表面に設置された散水管または散水用ホースとが接続管を介して接続されていることを特徴とするマスコンクリートの養生装置。
【請求項2】
散水管または散水用ホースから散水されたマスコンクリート表面における養生水の下流側に、養生水の集水設備およびろ過器が設けられ、前記集水設備と通水パイプの給水口は送水管路およびポンプを介して接続されていることを特徴とする請求項1に記載のマスコンクリートの養生装置。
【請求項3】
マスコンクリートの中心部となる部分に中間部が埋め込み配置された通水パイプ内を通って暖められた温水を、マスコンクリートの表面を散水養生させる養生水として利用することを特徴とするマスコンクリートの養生方法。
【請求項4】
請求項3のマスコンクリートの養生方法であって、散水養生して冷却された養生水をろ過器によりろ過した後、前記通水パイプにもどして、マスコンクリートの中心部を冷却することを特徴とするマスコンクリートの養生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−101569(P2009−101569A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275104(P2007−275104)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000103769)オリエンタル白石株式会社 (136)
【Fターム(参考)】