マススペクトロメータと、それに関係するイオナイザ及び方法
【解決手段】ある実施例では、小型化された構造とそれに関連する方法が、マススペクトロメータ又は分析器として機能し、変更が加えられるとイオンジェネレータとして機能する。小型化された構造は、略平板である平行に離間された一対の電極と出射口を有しており、電極には突出する壁があって、これら電極は協同して、イオン生成チャンバーを与える。加えられた磁場に垂直に向いた電場を制御することで、イオンビームは、質量電荷比に基づいて複数のビームに分離されて、装置の出口から出る。装置がマススペクトロメータ又は分析器として機能している場合、イオンコレクタの衝撃が応答して、関連するプロセッサに情報を送る。イオナイザとしての機能を有することが望まれる場合、イオンの出口に隣接して配置されるイオンコレクタは除かれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
互いに直交する電場及び磁場内における運動によって、イオン化されたガス粒子を、それらの質量と電荷の比に応じて分離する、所謂、直交電磁場質量分析器とイオナイザに関している。
【背景技術】
【0002】
ガス状、液状又は固状の試験体である構成材料を同定し、それらの量を決定するために、マススペクトロメータを用いることは、長い間知られている。このようなシステムに関して、分子又は原子をイオンに変換し、質量と電荷の比によってイオンを分離し、イオンをディテクタに衝突させることで、真空下で試験体を分析することも知られている。概要については、米国特許第2,882,410号、第3,070,951号、第3,590,243号及び第4,298,795号を参照のこと。また、米国特許第4,882,485号及び第4,952,802号を参照のこと。
【0003】
一般的に、マススペクトロメータは、分析される試験体を受け入れるイオナイザ入口アセンブリと、イオナイザ入口アセンブリと協同する高真空チャンバーと、高真空チャンバー内に配置されて、イオナイザからイオンを受け取るように構成された分析器アセンブリとを含んでいる。検出手段が用いられて、試験体の構成成分の測定がされる。区別する特徴として、質量と電荷の比が利用される。公知である多数の手段の1つによって、イオナイザに含まれるガス状の試験体の分子又は原子は、イオンに変換されて、それらは、このような手段によって分析される。
【0004】
従来技術のサイクロイド型マススペクトロメータは、固定されたコレクタと傾いた電場とを用いており、一度に1つの質量電荷比しか見れない。従来技術の多くのマススペクトロメータシステムでは、それらがサイクロイド型であるか否かに拘わらず、イオナイザは、非常に大きく、結果として、システムに採用されるデザイン及び仕様を左右していた。
【0005】
米国特許5,304,799号は、サイクロイド型マススペクトロメータを開示しており、該マススペクトロメータは、イオン飛行領域を規定するハウジングと、イオン飛行領域内の電場を与える電場ジェネレータと、分析されるガス状の試験体を受け取って、それらをイオンに変換するイオナイザとを有している。イオンは、直交する電場及び磁場を通った後、コレクタに衝突する。このマススペクトロメータは、質量電荷比が異なる複数のイオンが、電場及び磁場の強さに応じてコレクタに衝突するように設計された。サイクロイド型マススペクトロメータ及びイオナイザは小型化されて、小さくて運搬できる装置がもたらされたと述べられている。
【0006】
直交電磁場質量分析は、2種類の分析課題に使用されることが知られている。それは、分子量が大きい分子の同定に使用されてきた。また、それは、同位体の相対量を高精度で測定するために使用されてきた。
【0007】
マススペクトロメータが、ヘリウムリークディテクタや水素分析計内のように、質量電荷比が小さい状況で使用されることも知られている。質量分析は、検出感度のために、マスレンジ内での干渉がほとんどないような状況下で行われてきた。ヘリウムリークディテクタで一般的に使用される分析器は、例えば、セクター型マススペクトロメータのような大きな分析器を小さくしたほとんどコピーであって、製造するのは容易であるが、性能レベルが低く、比較的高価な傾向がある。
【0008】
四重極分析器は小さくて、磁場式セパレータよりも安いが、それらのフィルター性能は、マススケールの下端に行くと減少する。所謂「ゼロブラスト(zero-blast)」は、フィルター特性が弱い結果、四重極分析器が、調整されていない粒子の寄与を示すことである。ヘリウムリークディテクタでは、水素のゼロブラスト部分は、約4amuにてヘリウム信号と干渉する。
【0009】
本発明は、円運動に直線運動が加えられるような、サイクロイド型マススペクトロメータの場の構造に着目する。
【発明の開示】
【0010】
マススペクトロメータ又は質量分析器のように機能できる本発明の1つの実施例では、平板であり略平行な第1及び第2の電極は、それらの間に電場を生成し、略平板である電極の基部と協同する突出した壁を有することで、イオン生成チャンバーを規定する。電極で生成される電場は、当該技術分野における通常の知識を有する者に周知の方法で、永久磁石又は電磁石で生成された磁場と直交するように向いている。いくらかのイオンビームは、質量電荷比に基づいてイオン出口から出て、質量電荷比に基づいて分離されているその他のイオンビームは、イオン生成チャンバー内に残る。イオン出口と動作上関連するイオンコレクタは、それに隣接して配置されており、当該技術分野における通常の知識を有する者に周知な処理手段と共に協同して、分子又は原子が同定される。同じ装置をイオンコレクタを除いて用いると、質量選択式イオンジェネレータとして機能するデバイスが得られる。関連する方法も開示されている。
【0011】
この実施例の装置及び方法は、特に、20amu又はそれ未満のような質量が小さい物質に使用されるように構成される。
【0012】
本発明の目的は、低マスレンジという特別な要求に特に適したマススペクトロメータを提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、マススケールの上端にて高い分解能を与えるのではなく、必ずしも均一に印加されない電場で、マススケールの下端にて質量数の異なるイオンの軌跡を分離するようなマススペクトロメータを提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、独特な場の特徴を3次元でデザインすることで得られる近似によって、実際の集束特性を置き換えることができるようなマススペクトロメータを提供することである。
【0015】
本発明のさらにもう一つの目的は、小さくて、構造が単純で、廉価に作製できる電極を有するマススペクトロメータを提供することである。
【0016】
本発明のさらにもう一つの目的は、所望する結果に物質的な干渉を与えることなく、磁場の不完全さに耐えて、小さくて廉価な磁石を使用できる分析器又はイオナイザを与えることである。
【0017】
本発明のこれら及びその他の目的は、本明細書に添付の図面を参照して、本発明に関する以下の詳細な説明を読むことでより完全に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
従来のマススペクトロメータでは、集束や、「完全な」電場及び磁場の使用や、例えば長さ又は角度のような分離範囲と質量電荷比の線形関係のような特徴が、頻繁に重要視されている。今回加えられる実施例における有利な特徴は、本明細書で説明されるこれらの特徴について最高であることを要求することなく、例えば、水素、ヘリウムや二価イオン窒素のような概ね20amu未満の大きさである質量が小さい分子について、利用可能で信頼できる情報が得られることである。
【0019】
直交電磁場質量分析の開発は、高分子量の分子の同定と、同位体の相対量の精密測定という、2種類の解析問題によって主に推進されてきた。これらの問題の両方とも異なる用途に由来しているが、物理学によれば、それらは同様に考えられてよい。運動方程式が確立されて、イオンの軌跡が予測できるのであれば、これらの問題を解決するために必要とされる高分解能の装置が確実に設計できる。不確定な場による数学的な困難が予期されたので、開発は、好ましくは力線が完全に真っ直ぐである一様な電場及び磁場のような、明確に規定される境界条件から開始した。磁石と、電場を発生する装置とは、多くのマススペクトロメータにおいて最も高価な構成要素であった。精度への要求が増加するにつれて、費用、重量及び大きさも増加した。
【0020】
マススペクトロメータの有用性が確立されたその他の領域には、非常に低い質量電荷比のみが含まれていた。このような利用例としては、ヘリウムリークディテクタと水素分析計がある。この条件における質量分析の利点は、その感度によって、このマスレンジにおける干渉がほどんどないことである。ヘリウムリークディテクタで使用される分析器の大半は、例えば、製造が簡単であるセクター型マススペクトロメータのような、大きな分析器の小型のコピーであって、その性能は低い。それにも拘わらず、これらの分析器は比較的高価である。
【0021】
四重極分析器は小さくて磁場式セパレータよりも安いが、それらのフィルター性能は、マススケールの下端に行くと減少する。所謂「ゼロブラスト(zero-blast)」は、フィルター特性が弱い結果、四重極分析器が調整されていない粒子の寄与を示すことである。ヘリウムリークディテクタでは、1、2及び3原子質量単位からの水素のゼロブラスト部分が、4原子質量単位のヘリウム信号と干渉することになる。
【0022】
質量分析の解析技術は、サンプル導入技術、イオン形成技術、又はイオンが分離される方法に無関係にマススペクトルを生じる。分子がイオン化されると、元の分子を示す特有のイオンが、及び/又は、イオン化された分子のフラグメントであって質量が異なるイオン群が形成される。これらのイオンが分離されると、質量電荷比(m/z)に対する各イオンの相対量のプロットが、マススペクトルを構成する。マススペクトルから分子を同定することを習得することは、その他の如何なるスペクトル情報を用いるよりも容易である。マススペクトルは、分子の質量とその一片の質量とを示す。質量分析は、その他の技術よりも少ないサンプルで、その他の技術よりも多くの分析情報をもたらす。質量分析はまた、質量測定に関する最も高精度な技術である。他の技術と比較した質量分析の唯一の不利益は、サンプルが消費されることである。しかしながら、必要とされるサンプルが非常に少量なので、そのことは重要ではない。
【0023】
図1は、ほぼ平行な電極(104)(106)で生成される一様な電場Eにて、一様な磁場Bが紙面に向かって電場に垂直に作用している場合における、正の荷電粒子(102)の軌跡(100)を示す。磁場は永久磁石又は電磁石によって生成される。図1と以下に続く全ての図において、磁石の部品は、当業者に周知であるので示されていない。その代わりに、Bの方向が記号で示されている。その記号によれば、磁石のN極は常時図面の上にあり、磁石のS極は図面の下にある。出発点(110)で出発した粒子が初期エネルギーを有していない場合、その軌跡はサイクロイドになる。電極(104)(106)は、完全なキャパシタを構成していると仮定されており、均一な場が生成されている。これは、電極領域(104)(106)において、それらの間隔が比較的大きい場合に成り立つ。
【0024】
この原理は、二重収束型の装置であるサイクロイド型マススペクトロメータで利用される。概要については、米国特許第2,882,410号、3,070,951号、3,590,243号及び4,298,795号を参照のこと。出発点の状態が周期的に再現される(112)及び(114)のような場所が、粒子の初期エネルギー又は初期角度に依存しない場合、分析器は二重収束型と言われる。図1と以下に続く全ての図において、特段に示されない場合には、初期エネルギーはゼロである。
【0025】
図2は、質量電荷比が1、2、3及び4であるイオンによる4つの軌跡(120)(122)(124)(126)を夫々示しており、出発点(112)は、電極(114)(116)の間にある。あるサイクロイドのピッチは、周期的に再現される2つの点の間の距離であって、質量電荷比m/zに比例している。故に、m/z=4であるイオンのピッチは、m/z=1であるイオンのピッチの4倍に等しい。これは、サイクロイド型質量分析器における物理的な分離効果である。図2では、1サイクロイドの後、イオンは、夫々コレクタ(130)(132)(134)(136)と衝突して、放電する。結果としてコレクタに流れる電流は、単位時間当たりに当たるイオンの数として測定される。
【0026】
m/zの比が異なるイオンを分離するために、二重収束特性を得るのに必要とされる完全なサイクロイドを飛行することは要求されない。図2では、分離は、運動が開始すると直ちに開始している。図3では、軌跡(150)(152)(154)(156)が、m/z=2、m/z=3、及びm/z=4のイオンの完全なサイクロイドにならないように、コレクタ(136)(137)(138)(139)は、電極(140)(144)の間に配置されている。粒子は、電場が一様である完全なキャパシタ内を飛行する。図3の配置の明らかな利益は、分析器の大きさを縮めることである。不利益は、軌跡が短いので、分解能を損なうことと、コレクタ(137)(138)(139)が焦点から外れるのでイオンビームが広がることである。m/z比が同じイオンが、異なるエネルギーと異なる角度で発せられると、それらは、異なる位置にてコレクタ面に当たる。この効果は、図4に示されており、10個のイオンは、m/z=4であるが、出発点(170)にて初期エネルギーが異なっており、それらの軌跡は異なっている。その結果、広がったイオンビームの一部のみが、コレクタ(188)に当たる。結果として、分解能にさらなる損失が加わり、感度が減少するだろう。
【0027】
図4では、ほぼ平行な電極(172)(174)の間にある出発点(170)において、運動の方向についてイオンの初速度が大きくなるほど、イオンは外側のサイクロイド(180)へと偏向する。これに対して、初速度がより小さい又は負であるイオンは、内側のサイクロイド(182)に近づく。電場は、適切な方法で変化して、イオンの初速度に応じたイオンの偏向を補正すべきことが、直感的に理解できる。初期エネルギーが大きいイオンが飛ぶ場合、領域内にて場が強くならなくてはならないことは定性的に明らかである。そして、この場は、イオンの初期エネルギーに拘わらずに、コレクタ(188)に、又は、以後に説明されるようにコレクタのスリットにイオンを集束する。
【0028】
図1乃至図4は、Idaho National Engineering Laboratory及びLockheed Idaho Technology Company によるイオン飛行シミュレーションプログラムSIMION 3D V6.0で作成された。電極端が3次元の作業空間の境界に延びているように定められた場合において、一様な電場が容易にシミュレーションできた。その際、そのプログラムは、電極が無限に延びていると仮定している。SIMIONが使用されて、場を生成する電極構造が発見された。SIMIONは、サイクロイドの軌跡の部分について理想的な収束場を概算できる。
【0029】
発見された最も簡単な構造は、平行な2つの平板から成る「不完全」キャパシタである。「不完全」は、電極間の間隔が電極の領域と比較して大きいことを意味する。それらキャパシタは、付随的な(fringing)場を生成して、電極の端の近くで場が強くなる。
【0030】
図5では、電極(190)(192)の大きさは有限であって、これら電極は、+及び−と付記されているように電源に接続されている。生成された場は、等電位線で示してある。円で示した領域(300)では、場の強さの増加に伴って、曲率半径が増加している。m/z比が同じであるが、出発点(302)の初期エネルギーが異なるイオンの群について、電圧は、電極領域の物理的な端にイオンが達するまでに、イオンがサイクロイド(304)の半分を飛ぶように選択できる。
【0031】
簡単なモデリングによる実験は、前々から顕著な集束傾向を示していた。z方向(イオンの軌跡を含む平面に垂直)について、場の曲率の向きが誤ることは認められなかった。これは、意図した軌跡から離れるようにイオンを加速し、検出過程においてイオンを損失させる。
【0032】
平板キャパシタから始めて、電極の形状は、シミュレーションプロセスにおいて連続近似によって改良された。平板電極をU字状電極で置き換えてz方向の曲率を修正し、各々の電極に2枚のフェースプレートを加えることで、収束特性は改善された。最終的に、全ての寸法が逐次変更されて、最適な組合せが得られた。これら電極で生成された場の特徴は、以下で説明される。
【0033】
好ましい形態である電極の最終形状は、図6に示してある。電極は、金属製の薄板、若しくはコーティングされたセラミックで作製され、又は、金属塊を機械加工して作製される。全体の構造は、例えば基部(312)と平行な2枚の側壁(314)(316)とを有する第1の略U字状部(310)と、U字状部(310)に接続されたフェースプレート(320)とを含んでいる。第2の略U字状電極(326)は、基部(328)と平行な2枚の側壁(330)(332)とを有している。さらに、フェースプレート(336)も、略U字状電極(326)に接続されている。一方の電極(326)には、オリフィス(340)(344)があり、それらは、ガス分子又はガス原子をイオン化する電子ビームの入出口となる。他方の電極(310)では、フェースプレート(320)にスリット(350)があって、イオンがコレクタに達する前にイオンが通る出射口となる。絶縁体(図示せず)が挿入された適当なホルダに電極(310)(326)を組み付けた後の状態、又は、電極(310)(326)が最終位置にて互いに空隙で離されるような適当なホルダに電極(310)(326)を組み付けた後の状態を、図7に示す。図7では、電極が絶縁されており、(310)の電極部は、電極(326)の隣接部と、小さな隙間(370)(372)(374)(376)(378)で離されている。
【0034】
この構成では、電極は立方体状になっている。第1の試作品の典型的な大きさは、x方向に14mm、y方向に8mm、z方向に7mmである。大きさが適合すべき制限範囲はない。別の試作品では、例えば、7mm×4mm×3.5mmにされた。各寸法の比は変更されていないので、基本的な作用は影響を受けない。電極に印加される電圧は、2乗の減衰因子で減少して、定性的に同じ分析動作が得られる。しかしながら、実際の用途では、熱運動の影響と、製造の不完全性と、電磁場のゆがみとが、場の強さが低減するにつれて重要になる。
【0035】
分析器の完全な構成は、図8に示されている。磁石及び真空チャンバーは、当該技術分野における通常の知識を有する者には周知であるので、図示していない。ガス分子をイオン化する方法は、セパレータに影響を与えない。しかしながら、この分析器は、特に電子衝撃イオン化に適している。フィラメント端子(500)(502)に接続された電流源(図示せず)はフィラメント(504)を加熱し、熱放射によって電子が放出される。フィラメント(504)の電位は、電極に対して負にされて、電子は、入射口(340)に向けて加速される。電子ビーム(510)は非常に狭く、電子は磁場の力線に平行に飛行することから、立方体の内部空間を横切る。電子ビーム(510)は、入射口(344)を通って出て、アノード(520)に衝突する。アノード(520)は、端子(526)に接続されて、電極(326)に対して正の電位にされる(図示せず)。
【0036】
フラグメント(504)と電極(326)間の電位差が、原子又は分子のイオン化エネルギーよりも大きいと、イオン化が起こる。一般的に用いられるイオン化エネルギーは70eVであって、大半のガスでイオン化効果が最大になる。
【0037】
電子ビームで生成されたイオンは、サイクロイドの半分のような軌跡(530)を飛行する。電場と磁場が一様で互いに垂直である場合に、イオンは、数学的に正しいサイクロイドを飛行する。イオンのm/z比が、印加された場で与えられる条件に適合する場合、イオンは、出口スリット(350)へと収束し、コレクタ(534)に衝突する。コレクタ(534)が応答すると、関連するマイクロプロセッサ(図示せず)に信号が出される。m/z比が低い又は高いイオンは、スリットを外れる。
【0038】
イオナイザは、説明したように、イオンを放つ物理的なアパーチャを有していない。領域全体でイオンが生成されるのではなく、電極内に電子ビームの空間があって、電極は、イオンビームがイオン源から離れるのに貢献する。電場の結像特性は、分解能へのビーム径の影響を低減する。これは図9から図13に示されており、これらの図は、図8に示す分析器の寸法が、14mm(x)、7mm(y)及び4mm(z)である場合に関するシミュレーションを示す。m/z=4である10個のイオンについて、出発点のx位置(図9)、y位置(図10)及びz位置(図11)が変化している。図9では、イオンの軌跡(540)は点(544)に収束し、図10のイオン軌跡では、y方向の初期の広がりが30%低減しており、図11では、z方向における軌跡の分布の影響が最小になっている。
【0039】
図12は、z方向の閉じ込め能力を説明している。本図は、y−z平面への図11のイオンビーム(560)の写像である。30個のイオンが異なる位置(566)から出発しており、それらがコレクタのスリット位置(568)に到達する前に、分析器の中心においてx−y平面に偏向される。
【0040】
図13では、m/z比が小さい場合の分離特性がシミュレーションされている。m/z比が1乃至4である4本のイオンビーム(570)(572)(574)(576)が、領域(584)にて出発している。電極(310)(326)(図8)に特定の電圧が印加されると、m/z比が適切であるイオンのみが、図13ではm/z=4であるイオンが、コレクタスリット(586)を通過して、コレクタ(590)に衝突できる。
【0041】
m/z比の逆数であるz/mが、コレクタスリットにヒットするのに必要な電圧に比例しているという事実を用いて、分析器は、その他のm/z比について調整される。図13に示すm/z=4に調整された分析器の電圧を倍にすると、システムは、m/z=2に調整され、図14に示すように、(592)から出発する軌跡(594)(596)(598)(700)が得られる。
【0042】
m/z=1から20までの軌跡(704)(706)が、図15にプロットされている。分析器は、m/z=4に調整されている。平面(702)内の離間間隔は、もはやm/z比の線形関数ではない。場の形は、m/zが小さい範囲で広がっている。
【0043】
先に示した寸法であって、コレクタスリット幅が5mmであるようなこの分析器では、図16に示すように、利用可能なマスレンジは、m/z=18で終わる。m/z比が17、18及び19であるイオン(720)(722)(724)は、同じ位置(728)より出発する。イオナイザが、このシミュレーションプロットに示すようなm/z=17に調整されて、m/z=17であるイオンがコレクタスリット(586)の真ん中を通って出る場合、m/z=16及びm/z=18であるイオンは、コレクタ(590)に到達できない。
【0044】
図17は、水素、ヘリウム、酸素、窒素及びアルゴンを含む試験ガスについて、4m/z=1amuからm/z=40amuまでのマススペクトルを示す。低m/z比において、分析器は、十分な分解能を示しており、例えば、水素分析計やヘリウムリークディテクタに使用できる。
【0045】
図18(a)〜(f)、図19(a)〜(f)及び図20(a)〜(f)は、分析器内の異なる平面における等電位線を示す。電位の線図の右側にある図は、仮想面が配置されている場所を示す。
【0046】
図18から、中心の周囲にある場(730)は、粗い近似で一様な場になって、以前にサイクロイドで示した軌跡と同じようになることが結論できる。コレクタ(732)の付近で曲率が増加すると、エネルギー収束の損失が補償される。
【0047】
図19は、z方向に極端な位置から出発するイオンは、非常に損なわれた電場を体験することを示唆している。上述の軌跡は、イオンの出発点が、場が一様であると近似できる中心の限定された領域にある場合に得られる。
【0048】
図20(c)の領域(742)は、中心に近い電場が一様になることを確かにしている。図20(a)に見られる閉じ込め特性に関して、電位は、図20(a)の円(744)に示すように曲げられている。
【0049】
構造が簡単であり、物理的寸法が小さいので、本明細書で説明した分析器は、低コストで高性能のイオン源として機能し、イオンをマススペクトロメータに導入する。同じ構成でコレクタを無くすと、イオン源としての全能力がもたらされる。それがマススペクトロメータが調整されるm/z位置に適切に調整されると、その質量選択性によって、マススペクトロメータの分析器から送られる不要なイオンの大半が阻止される。これによって、あらゆるマススペクトロメータにて分解能が改善される。四重極フィルタと組み合わされると、ゼロブラストが効果的に抑制される。
【0050】
立方体デザインのもう1つの利点は、閉じたイオン源として使用できることである。閉じたイオン源は、低分子流コンダクタンスで、分析器の真空と繋がれる。その結果、イオン源の圧力が、分析器の圧力よりも高くなって、感度が増加する。この目的のためには、図8に示す隙間は、非常に狭くすべきか、さらに絶縁体でシールされるのが好ましい。ガス状のサンプルは、電極近くの任意の位置にある薄い管で導入できる。
【0051】
図1乃至図20のに示す実施例において、小型のマススペクトロメータ、分析器又はイオナイザが、磁場内における電場を調整することで制御されるような質量電荷比を利用しする効果的な手段を与えることで、どの質量電荷比のイオンビームが放出される又は出口を通って放出可能であるかと、どの質量電荷比のイオンビームがそうでないかを測定できることが理解できるだろう。この分離装置と方法の様々な利用には、例えば、ヘリウム又は窒素を用いるリーク検出がある。さらに、システムは、サイクロイドのイオンビームの一部で効果的に機能するようにデザインされる。システムは、例えば、20amu又はそれ未満の大きさの質量が小さい物質について測定を行うのに、特に適している。この全てが達成できる一方で、非常に小さいハウジングが使用されている。
【0052】
説明を目的として、本明細書にて、本発明の特定の実施例が開示されてきたが、当該技術分野における通常の知識を有する者には、添付の特許請求の範囲に記載された発明から逸脱することなく、細部について様々な変更がなされてよいことは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、磁場に垂直な電場における正の荷電粒子の軌跡を示す。
【図2】図2は、質量電荷比が異なる4つのイオンの軌跡を示す。
【図3】図3は、質量電荷比が異なるイオンの軌跡と、イオンによって完全なサイクロイドが描かれる前に配置されている関連したコレクタとを示している。
【図4】図4は、初速が異なるイオンと、隣接する一対の電極に関したそれらイオンの軌跡とを示す。
【図5】図5は、離間した一対の電極によって生成される電場の等電位線を示す。
【図6】図6は、本発明に係る離間した一対の電極の斜視図を示す。
【図7】図7は、比較的近い位置における図27の電極の斜視図である。
【図8】図8は、本発明の分析器を部分的に示す概略図である。
【図9】図9は、イオンが出発するx位置を変化させた分析器を示す。
【図10】図10は、イオンが出発するy位置を変化させた分析器を示す。
【図11】図11は、イオンが出発するz位置を変化させた分析器を示す。
【図12】図12は、z方向における閉じ込め能力を示す。
【図13】図13は、質量電荷比が低い異なる4つのイオンビームと共に、分析器の断面図を示す。
【図14】図14は、図13と似た図であるが、図13の場合と比較して電圧を2倍にした場合の軌跡を示す。
【図15】図15は、質量電荷比が異なる20のイオンについて軌跡をプロットした図である。
【図16】図16は、同じ位置から出発し、質量電荷比が異なる一群のイオンの軌跡を示す。
【図17】図17は、本発明の分析器によって測定された試験ガス混合体の質量電荷比に対する強度のプロットを示す。
【図18】図18(a)及び図18(b)は、分析器を通る仮想面における等電位線と、その仮想面を示す。図18(c)及び図18(d)は、分析器を通る仮想面における等電位線と、その仮想面を示す。図18(e)及び図18(f)は、分析器を通る仮想面における等電位線と、その仮想面を示す。
【図19】図19(a)及び図19(b)は、分析器を通る仮想面における等電位線と、その仮想面を示す。図19(c)及び図19(d)は、分析器を通る仮想面における等電位線と、その仮想面を示す。
【図20】図20(a)、図20(b)、図20(c)、図20(d)、図20(e)及び図20(f)は、分析器を破断する3つの仮想面と、それら仮想面に関する電場の等電位線を示す。
【技術分野】
【0001】
互いに直交する電場及び磁場内における運動によって、イオン化されたガス粒子を、それらの質量と電荷の比に応じて分離する、所謂、直交電磁場質量分析器とイオナイザに関している。
【背景技術】
【0002】
ガス状、液状又は固状の試験体である構成材料を同定し、それらの量を決定するために、マススペクトロメータを用いることは、長い間知られている。このようなシステムに関して、分子又は原子をイオンに変換し、質量と電荷の比によってイオンを分離し、イオンをディテクタに衝突させることで、真空下で試験体を分析することも知られている。概要については、米国特許第2,882,410号、第3,070,951号、第3,590,243号及び第4,298,795号を参照のこと。また、米国特許第4,882,485号及び第4,952,802号を参照のこと。
【0003】
一般的に、マススペクトロメータは、分析される試験体を受け入れるイオナイザ入口アセンブリと、イオナイザ入口アセンブリと協同する高真空チャンバーと、高真空チャンバー内に配置されて、イオナイザからイオンを受け取るように構成された分析器アセンブリとを含んでいる。検出手段が用いられて、試験体の構成成分の測定がされる。区別する特徴として、質量と電荷の比が利用される。公知である多数の手段の1つによって、イオナイザに含まれるガス状の試験体の分子又は原子は、イオンに変換されて、それらは、このような手段によって分析される。
【0004】
従来技術のサイクロイド型マススペクトロメータは、固定されたコレクタと傾いた電場とを用いており、一度に1つの質量電荷比しか見れない。従来技術の多くのマススペクトロメータシステムでは、それらがサイクロイド型であるか否かに拘わらず、イオナイザは、非常に大きく、結果として、システムに採用されるデザイン及び仕様を左右していた。
【0005】
米国特許5,304,799号は、サイクロイド型マススペクトロメータを開示しており、該マススペクトロメータは、イオン飛行領域を規定するハウジングと、イオン飛行領域内の電場を与える電場ジェネレータと、分析されるガス状の試験体を受け取って、それらをイオンに変換するイオナイザとを有している。イオンは、直交する電場及び磁場を通った後、コレクタに衝突する。このマススペクトロメータは、質量電荷比が異なる複数のイオンが、電場及び磁場の強さに応じてコレクタに衝突するように設計された。サイクロイド型マススペクトロメータ及びイオナイザは小型化されて、小さくて運搬できる装置がもたらされたと述べられている。
【0006】
直交電磁場質量分析は、2種類の分析課題に使用されることが知られている。それは、分子量が大きい分子の同定に使用されてきた。また、それは、同位体の相対量を高精度で測定するために使用されてきた。
【0007】
マススペクトロメータが、ヘリウムリークディテクタや水素分析計内のように、質量電荷比が小さい状況で使用されることも知られている。質量分析は、検出感度のために、マスレンジ内での干渉がほとんどないような状況下で行われてきた。ヘリウムリークディテクタで一般的に使用される分析器は、例えば、セクター型マススペクトロメータのような大きな分析器を小さくしたほとんどコピーであって、製造するのは容易であるが、性能レベルが低く、比較的高価な傾向がある。
【0008】
四重極分析器は小さくて、磁場式セパレータよりも安いが、それらのフィルター性能は、マススケールの下端に行くと減少する。所謂「ゼロブラスト(zero-blast)」は、フィルター特性が弱い結果、四重極分析器が、調整されていない粒子の寄与を示すことである。ヘリウムリークディテクタでは、水素のゼロブラスト部分は、約4amuにてヘリウム信号と干渉する。
【0009】
本発明は、円運動に直線運動が加えられるような、サイクロイド型マススペクトロメータの場の構造に着目する。
【発明の開示】
【0010】
マススペクトロメータ又は質量分析器のように機能できる本発明の1つの実施例では、平板であり略平行な第1及び第2の電極は、それらの間に電場を生成し、略平板である電極の基部と協同する突出した壁を有することで、イオン生成チャンバーを規定する。電極で生成される電場は、当該技術分野における通常の知識を有する者に周知の方法で、永久磁石又は電磁石で生成された磁場と直交するように向いている。いくらかのイオンビームは、質量電荷比に基づいてイオン出口から出て、質量電荷比に基づいて分離されているその他のイオンビームは、イオン生成チャンバー内に残る。イオン出口と動作上関連するイオンコレクタは、それに隣接して配置されており、当該技術分野における通常の知識を有する者に周知な処理手段と共に協同して、分子又は原子が同定される。同じ装置をイオンコレクタを除いて用いると、質量選択式イオンジェネレータとして機能するデバイスが得られる。関連する方法も開示されている。
【0011】
この実施例の装置及び方法は、特に、20amu又はそれ未満のような質量が小さい物質に使用されるように構成される。
【0012】
本発明の目的は、低マスレンジという特別な要求に特に適したマススペクトロメータを提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、マススケールの上端にて高い分解能を与えるのではなく、必ずしも均一に印加されない電場で、マススケールの下端にて質量数の異なるイオンの軌跡を分離するようなマススペクトロメータを提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、独特な場の特徴を3次元でデザインすることで得られる近似によって、実際の集束特性を置き換えることができるようなマススペクトロメータを提供することである。
【0015】
本発明のさらにもう一つの目的は、小さくて、構造が単純で、廉価に作製できる電極を有するマススペクトロメータを提供することである。
【0016】
本発明のさらにもう一つの目的は、所望する結果に物質的な干渉を与えることなく、磁場の不完全さに耐えて、小さくて廉価な磁石を使用できる分析器又はイオナイザを与えることである。
【0017】
本発明のこれら及びその他の目的は、本明細書に添付の図面を参照して、本発明に関する以下の詳細な説明を読むことでより完全に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
従来のマススペクトロメータでは、集束や、「完全な」電場及び磁場の使用や、例えば長さ又は角度のような分離範囲と質量電荷比の線形関係のような特徴が、頻繁に重要視されている。今回加えられる実施例における有利な特徴は、本明細書で説明されるこれらの特徴について最高であることを要求することなく、例えば、水素、ヘリウムや二価イオン窒素のような概ね20amu未満の大きさである質量が小さい分子について、利用可能で信頼できる情報が得られることである。
【0019】
直交電磁場質量分析の開発は、高分子量の分子の同定と、同位体の相対量の精密測定という、2種類の解析問題によって主に推進されてきた。これらの問題の両方とも異なる用途に由来しているが、物理学によれば、それらは同様に考えられてよい。運動方程式が確立されて、イオンの軌跡が予測できるのであれば、これらの問題を解決するために必要とされる高分解能の装置が確実に設計できる。不確定な場による数学的な困難が予期されたので、開発は、好ましくは力線が完全に真っ直ぐである一様な電場及び磁場のような、明確に規定される境界条件から開始した。磁石と、電場を発生する装置とは、多くのマススペクトロメータにおいて最も高価な構成要素であった。精度への要求が増加するにつれて、費用、重量及び大きさも増加した。
【0020】
マススペクトロメータの有用性が確立されたその他の領域には、非常に低い質量電荷比のみが含まれていた。このような利用例としては、ヘリウムリークディテクタと水素分析計がある。この条件における質量分析の利点は、その感度によって、このマスレンジにおける干渉がほどんどないことである。ヘリウムリークディテクタで使用される分析器の大半は、例えば、製造が簡単であるセクター型マススペクトロメータのような、大きな分析器の小型のコピーであって、その性能は低い。それにも拘わらず、これらの分析器は比較的高価である。
【0021】
四重極分析器は小さくて磁場式セパレータよりも安いが、それらのフィルター性能は、マススケールの下端に行くと減少する。所謂「ゼロブラスト(zero-blast)」は、フィルター特性が弱い結果、四重極分析器が調整されていない粒子の寄与を示すことである。ヘリウムリークディテクタでは、1、2及び3原子質量単位からの水素のゼロブラスト部分が、4原子質量単位のヘリウム信号と干渉することになる。
【0022】
質量分析の解析技術は、サンプル導入技術、イオン形成技術、又はイオンが分離される方法に無関係にマススペクトルを生じる。分子がイオン化されると、元の分子を示す特有のイオンが、及び/又は、イオン化された分子のフラグメントであって質量が異なるイオン群が形成される。これらのイオンが分離されると、質量電荷比(m/z)に対する各イオンの相対量のプロットが、マススペクトルを構成する。マススペクトルから分子を同定することを習得することは、その他の如何なるスペクトル情報を用いるよりも容易である。マススペクトルは、分子の質量とその一片の質量とを示す。質量分析は、その他の技術よりも少ないサンプルで、その他の技術よりも多くの分析情報をもたらす。質量分析はまた、質量測定に関する最も高精度な技術である。他の技術と比較した質量分析の唯一の不利益は、サンプルが消費されることである。しかしながら、必要とされるサンプルが非常に少量なので、そのことは重要ではない。
【0023】
図1は、ほぼ平行な電極(104)(106)で生成される一様な電場Eにて、一様な磁場Bが紙面に向かって電場に垂直に作用している場合における、正の荷電粒子(102)の軌跡(100)を示す。磁場は永久磁石又は電磁石によって生成される。図1と以下に続く全ての図において、磁石の部品は、当業者に周知であるので示されていない。その代わりに、Bの方向が記号で示されている。その記号によれば、磁石のN極は常時図面の上にあり、磁石のS極は図面の下にある。出発点(110)で出発した粒子が初期エネルギーを有していない場合、その軌跡はサイクロイドになる。電極(104)(106)は、完全なキャパシタを構成していると仮定されており、均一な場が生成されている。これは、電極領域(104)(106)において、それらの間隔が比較的大きい場合に成り立つ。
【0024】
この原理は、二重収束型の装置であるサイクロイド型マススペクトロメータで利用される。概要については、米国特許第2,882,410号、3,070,951号、3,590,243号及び4,298,795号を参照のこと。出発点の状態が周期的に再現される(112)及び(114)のような場所が、粒子の初期エネルギー又は初期角度に依存しない場合、分析器は二重収束型と言われる。図1と以下に続く全ての図において、特段に示されない場合には、初期エネルギーはゼロである。
【0025】
図2は、質量電荷比が1、2、3及び4であるイオンによる4つの軌跡(120)(122)(124)(126)を夫々示しており、出発点(112)は、電極(114)(116)の間にある。あるサイクロイドのピッチは、周期的に再現される2つの点の間の距離であって、質量電荷比m/zに比例している。故に、m/z=4であるイオンのピッチは、m/z=1であるイオンのピッチの4倍に等しい。これは、サイクロイド型質量分析器における物理的な分離効果である。図2では、1サイクロイドの後、イオンは、夫々コレクタ(130)(132)(134)(136)と衝突して、放電する。結果としてコレクタに流れる電流は、単位時間当たりに当たるイオンの数として測定される。
【0026】
m/zの比が異なるイオンを分離するために、二重収束特性を得るのに必要とされる完全なサイクロイドを飛行することは要求されない。図2では、分離は、運動が開始すると直ちに開始している。図3では、軌跡(150)(152)(154)(156)が、m/z=2、m/z=3、及びm/z=4のイオンの完全なサイクロイドにならないように、コレクタ(136)(137)(138)(139)は、電極(140)(144)の間に配置されている。粒子は、電場が一様である完全なキャパシタ内を飛行する。図3の配置の明らかな利益は、分析器の大きさを縮めることである。不利益は、軌跡が短いので、分解能を損なうことと、コレクタ(137)(138)(139)が焦点から外れるのでイオンビームが広がることである。m/z比が同じイオンが、異なるエネルギーと異なる角度で発せられると、それらは、異なる位置にてコレクタ面に当たる。この効果は、図4に示されており、10個のイオンは、m/z=4であるが、出発点(170)にて初期エネルギーが異なっており、それらの軌跡は異なっている。その結果、広がったイオンビームの一部のみが、コレクタ(188)に当たる。結果として、分解能にさらなる損失が加わり、感度が減少するだろう。
【0027】
図4では、ほぼ平行な電極(172)(174)の間にある出発点(170)において、運動の方向についてイオンの初速度が大きくなるほど、イオンは外側のサイクロイド(180)へと偏向する。これに対して、初速度がより小さい又は負であるイオンは、内側のサイクロイド(182)に近づく。電場は、適切な方法で変化して、イオンの初速度に応じたイオンの偏向を補正すべきことが、直感的に理解できる。初期エネルギーが大きいイオンが飛ぶ場合、領域内にて場が強くならなくてはならないことは定性的に明らかである。そして、この場は、イオンの初期エネルギーに拘わらずに、コレクタ(188)に、又は、以後に説明されるようにコレクタのスリットにイオンを集束する。
【0028】
図1乃至図4は、Idaho National Engineering Laboratory及びLockheed Idaho Technology Company によるイオン飛行シミュレーションプログラムSIMION 3D V6.0で作成された。電極端が3次元の作業空間の境界に延びているように定められた場合において、一様な電場が容易にシミュレーションできた。その際、そのプログラムは、電極が無限に延びていると仮定している。SIMIONが使用されて、場を生成する電極構造が発見された。SIMIONは、サイクロイドの軌跡の部分について理想的な収束場を概算できる。
【0029】
発見された最も簡単な構造は、平行な2つの平板から成る「不完全」キャパシタである。「不完全」は、電極間の間隔が電極の領域と比較して大きいことを意味する。それらキャパシタは、付随的な(fringing)場を生成して、電極の端の近くで場が強くなる。
【0030】
図5では、電極(190)(192)の大きさは有限であって、これら電極は、+及び−と付記されているように電源に接続されている。生成された場は、等電位線で示してある。円で示した領域(300)では、場の強さの増加に伴って、曲率半径が増加している。m/z比が同じであるが、出発点(302)の初期エネルギーが異なるイオンの群について、電圧は、電極領域の物理的な端にイオンが達するまでに、イオンがサイクロイド(304)の半分を飛ぶように選択できる。
【0031】
簡単なモデリングによる実験は、前々から顕著な集束傾向を示していた。z方向(イオンの軌跡を含む平面に垂直)について、場の曲率の向きが誤ることは認められなかった。これは、意図した軌跡から離れるようにイオンを加速し、検出過程においてイオンを損失させる。
【0032】
平板キャパシタから始めて、電極の形状は、シミュレーションプロセスにおいて連続近似によって改良された。平板電極をU字状電極で置き換えてz方向の曲率を修正し、各々の電極に2枚のフェースプレートを加えることで、収束特性は改善された。最終的に、全ての寸法が逐次変更されて、最適な組合せが得られた。これら電極で生成された場の特徴は、以下で説明される。
【0033】
好ましい形態である電極の最終形状は、図6に示してある。電極は、金属製の薄板、若しくはコーティングされたセラミックで作製され、又は、金属塊を機械加工して作製される。全体の構造は、例えば基部(312)と平行な2枚の側壁(314)(316)とを有する第1の略U字状部(310)と、U字状部(310)に接続されたフェースプレート(320)とを含んでいる。第2の略U字状電極(326)は、基部(328)と平行な2枚の側壁(330)(332)とを有している。さらに、フェースプレート(336)も、略U字状電極(326)に接続されている。一方の電極(326)には、オリフィス(340)(344)があり、それらは、ガス分子又はガス原子をイオン化する電子ビームの入出口となる。他方の電極(310)では、フェースプレート(320)にスリット(350)があって、イオンがコレクタに達する前にイオンが通る出射口となる。絶縁体(図示せず)が挿入された適当なホルダに電極(310)(326)を組み付けた後の状態、又は、電極(310)(326)が最終位置にて互いに空隙で離されるような適当なホルダに電極(310)(326)を組み付けた後の状態を、図7に示す。図7では、電極が絶縁されており、(310)の電極部は、電極(326)の隣接部と、小さな隙間(370)(372)(374)(376)(378)で離されている。
【0034】
この構成では、電極は立方体状になっている。第1の試作品の典型的な大きさは、x方向に14mm、y方向に8mm、z方向に7mmである。大きさが適合すべき制限範囲はない。別の試作品では、例えば、7mm×4mm×3.5mmにされた。各寸法の比は変更されていないので、基本的な作用は影響を受けない。電極に印加される電圧は、2乗の減衰因子で減少して、定性的に同じ分析動作が得られる。しかしながら、実際の用途では、熱運動の影響と、製造の不完全性と、電磁場のゆがみとが、場の強さが低減するにつれて重要になる。
【0035】
分析器の完全な構成は、図8に示されている。磁石及び真空チャンバーは、当該技術分野における通常の知識を有する者には周知であるので、図示していない。ガス分子をイオン化する方法は、セパレータに影響を与えない。しかしながら、この分析器は、特に電子衝撃イオン化に適している。フィラメント端子(500)(502)に接続された電流源(図示せず)はフィラメント(504)を加熱し、熱放射によって電子が放出される。フィラメント(504)の電位は、電極に対して負にされて、電子は、入射口(340)に向けて加速される。電子ビーム(510)は非常に狭く、電子は磁場の力線に平行に飛行することから、立方体の内部空間を横切る。電子ビーム(510)は、入射口(344)を通って出て、アノード(520)に衝突する。アノード(520)は、端子(526)に接続されて、電極(326)に対して正の電位にされる(図示せず)。
【0036】
フラグメント(504)と電極(326)間の電位差が、原子又は分子のイオン化エネルギーよりも大きいと、イオン化が起こる。一般的に用いられるイオン化エネルギーは70eVであって、大半のガスでイオン化効果が最大になる。
【0037】
電子ビームで生成されたイオンは、サイクロイドの半分のような軌跡(530)を飛行する。電場と磁場が一様で互いに垂直である場合に、イオンは、数学的に正しいサイクロイドを飛行する。イオンのm/z比が、印加された場で与えられる条件に適合する場合、イオンは、出口スリット(350)へと収束し、コレクタ(534)に衝突する。コレクタ(534)が応答すると、関連するマイクロプロセッサ(図示せず)に信号が出される。m/z比が低い又は高いイオンは、スリットを外れる。
【0038】
イオナイザは、説明したように、イオンを放つ物理的なアパーチャを有していない。領域全体でイオンが生成されるのではなく、電極内に電子ビームの空間があって、電極は、イオンビームがイオン源から離れるのに貢献する。電場の結像特性は、分解能へのビーム径の影響を低減する。これは図9から図13に示されており、これらの図は、図8に示す分析器の寸法が、14mm(x)、7mm(y)及び4mm(z)である場合に関するシミュレーションを示す。m/z=4である10個のイオンについて、出発点のx位置(図9)、y位置(図10)及びz位置(図11)が変化している。図9では、イオンの軌跡(540)は点(544)に収束し、図10のイオン軌跡では、y方向の初期の広がりが30%低減しており、図11では、z方向における軌跡の分布の影響が最小になっている。
【0039】
図12は、z方向の閉じ込め能力を説明している。本図は、y−z平面への図11のイオンビーム(560)の写像である。30個のイオンが異なる位置(566)から出発しており、それらがコレクタのスリット位置(568)に到達する前に、分析器の中心においてx−y平面に偏向される。
【0040】
図13では、m/z比が小さい場合の分離特性がシミュレーションされている。m/z比が1乃至4である4本のイオンビーム(570)(572)(574)(576)が、領域(584)にて出発している。電極(310)(326)(図8)に特定の電圧が印加されると、m/z比が適切であるイオンのみが、図13ではm/z=4であるイオンが、コレクタスリット(586)を通過して、コレクタ(590)に衝突できる。
【0041】
m/z比の逆数であるz/mが、コレクタスリットにヒットするのに必要な電圧に比例しているという事実を用いて、分析器は、その他のm/z比について調整される。図13に示すm/z=4に調整された分析器の電圧を倍にすると、システムは、m/z=2に調整され、図14に示すように、(592)から出発する軌跡(594)(596)(598)(700)が得られる。
【0042】
m/z=1から20までの軌跡(704)(706)が、図15にプロットされている。分析器は、m/z=4に調整されている。平面(702)内の離間間隔は、もはやm/z比の線形関数ではない。場の形は、m/zが小さい範囲で広がっている。
【0043】
先に示した寸法であって、コレクタスリット幅が5mmであるようなこの分析器では、図16に示すように、利用可能なマスレンジは、m/z=18で終わる。m/z比が17、18及び19であるイオン(720)(722)(724)は、同じ位置(728)より出発する。イオナイザが、このシミュレーションプロットに示すようなm/z=17に調整されて、m/z=17であるイオンがコレクタスリット(586)の真ん中を通って出る場合、m/z=16及びm/z=18であるイオンは、コレクタ(590)に到達できない。
【0044】
図17は、水素、ヘリウム、酸素、窒素及びアルゴンを含む試験ガスについて、4m/z=1amuからm/z=40amuまでのマススペクトルを示す。低m/z比において、分析器は、十分な分解能を示しており、例えば、水素分析計やヘリウムリークディテクタに使用できる。
【0045】
図18(a)〜(f)、図19(a)〜(f)及び図20(a)〜(f)は、分析器内の異なる平面における等電位線を示す。電位の線図の右側にある図は、仮想面が配置されている場所を示す。
【0046】
図18から、中心の周囲にある場(730)は、粗い近似で一様な場になって、以前にサイクロイドで示した軌跡と同じようになることが結論できる。コレクタ(732)の付近で曲率が増加すると、エネルギー収束の損失が補償される。
【0047】
図19は、z方向に極端な位置から出発するイオンは、非常に損なわれた電場を体験することを示唆している。上述の軌跡は、イオンの出発点が、場が一様であると近似できる中心の限定された領域にある場合に得られる。
【0048】
図20(c)の領域(742)は、中心に近い電場が一様になることを確かにしている。図20(a)に見られる閉じ込め特性に関して、電位は、図20(a)の円(744)に示すように曲げられている。
【0049】
構造が簡単であり、物理的寸法が小さいので、本明細書で説明した分析器は、低コストで高性能のイオン源として機能し、イオンをマススペクトロメータに導入する。同じ構成でコレクタを無くすと、イオン源としての全能力がもたらされる。それがマススペクトロメータが調整されるm/z位置に適切に調整されると、その質量選択性によって、マススペクトロメータの分析器から送られる不要なイオンの大半が阻止される。これによって、あらゆるマススペクトロメータにて分解能が改善される。四重極フィルタと組み合わされると、ゼロブラストが効果的に抑制される。
【0050】
立方体デザインのもう1つの利点は、閉じたイオン源として使用できることである。閉じたイオン源は、低分子流コンダクタンスで、分析器の真空と繋がれる。その結果、イオン源の圧力が、分析器の圧力よりも高くなって、感度が増加する。この目的のためには、図8に示す隙間は、非常に狭くすべきか、さらに絶縁体でシールされるのが好ましい。ガス状のサンプルは、電極近くの任意の位置にある薄い管で導入できる。
【0051】
図1乃至図20のに示す実施例において、小型のマススペクトロメータ、分析器又はイオナイザが、磁場内における電場を調整することで制御されるような質量電荷比を利用しする効果的な手段を与えることで、どの質量電荷比のイオンビームが放出される又は出口を通って放出可能であるかと、どの質量電荷比のイオンビームがそうでないかを測定できることが理解できるだろう。この分離装置と方法の様々な利用には、例えば、ヘリウム又は窒素を用いるリーク検出がある。さらに、システムは、サイクロイドのイオンビームの一部で効果的に機能するようにデザインされる。システムは、例えば、20amu又はそれ未満の大きさの質量が小さい物質について測定を行うのに、特に適している。この全てが達成できる一方で、非常に小さいハウジングが使用されている。
【0052】
説明を目的として、本明細書にて、本発明の特定の実施例が開示されてきたが、当該技術分野における通常の知識を有する者には、添付の特許請求の範囲に記載された発明から逸脱することなく、細部について様々な変更がなされてよいことは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、磁場に垂直な電場における正の荷電粒子の軌跡を示す。
【図2】図2は、質量電荷比が異なる4つのイオンの軌跡を示す。
【図3】図3は、質量電荷比が異なるイオンの軌跡と、イオンによって完全なサイクロイドが描かれる前に配置されている関連したコレクタとを示している。
【図4】図4は、初速が異なるイオンと、隣接する一対の電極に関したそれらイオンの軌跡とを示す。
【図5】図5は、離間した一対の電極によって生成される電場の等電位線を示す。
【図6】図6は、本発明に係る離間した一対の電極の斜視図を示す。
【図7】図7は、比較的近い位置における図27の電極の斜視図である。
【図8】図8は、本発明の分析器を部分的に示す概略図である。
【図9】図9は、イオンが出発するx位置を変化させた分析器を示す。
【図10】図10は、イオンが出発するy位置を変化させた分析器を示す。
【図11】図11は、イオンが出発するz位置を変化させた分析器を示す。
【図12】図12は、z方向における閉じ込め能力を示す。
【図13】図13は、質量電荷比が低い異なる4つのイオンビームと共に、分析器の断面図を示す。
【図14】図14は、図13と似た図であるが、図13の場合と比較して電圧を2倍にした場合の軌跡を示す。
【図15】図15は、質量電荷比が異なる20のイオンについて軌跡をプロットした図である。
【図16】図16は、同じ位置から出発し、質量電荷比が異なる一群のイオンの軌跡を示す。
【図17】図17は、本発明の分析器によって測定された試験ガス混合体の質量電荷比に対する強度のプロットを示す。
【図18】図18(a)及び図18(b)は、分析器を通る仮想面における等電位線と、その仮想面を示す。図18(c)及び図18(d)は、分析器を通る仮想面における等電位線と、その仮想面を示す。図18(e)及び図18(f)は、分析器を通る仮想面における等電位線と、その仮想面を示す。
【図19】図19(a)及び図19(b)は、分析器を通る仮想面における等電位線と、その仮想面を示す。図19(c)及び図19(d)は、分析器を通る仮想面における等電位線と、その仮想面を示す。
【図20】図20(a)、図20(b)、図20(c)、図20(d)、図20(e)及び図20(f)は、分析器を破断する3つの仮想面と、それら仮想面に関する電場の等電位線を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ平板である第1電極と、
前記第1電極から離間して、前記第1電極にほぼ平行に配置されたほぼ平板である第2電極とを具えており、
前記第1電極と前記第2電極は、それらの間に電場を生成するように構成されており、
前記電場にほぼ垂直に向けられた磁場を生成するように構成された磁場生成部を具えており、
前記第1電極と前記第2電極の各々は、基部と、互いの電極にほぼ向かうように突出する壁部とを有し、イオン生成チャンバーを規定するように協同しており、
幾つかのイオンが前記チャンバーから出ることを可能とするイオン出口と、
前記イオン出口の外に、前記イオン出口に隣接して配置されており、前記イオン出口を通過するイオンを受け取るイオンコレクタとを具えているマススペクトロメータ。
【請求項2】
前記第1電極と前記第2電極の各々の前記壁部は、略平行な一対の上側壁及び下側壁と、端壁とを有している、請求項1のマススペクトロメータ。
【請求項3】
前記第1電極は、前記第2電極と電気的に絶縁されている、請求項1のマススペクトロメータ。
【請求項4】
前記第1電極と前記第2電極の間には絶縁する空隙がある、請求項3のマススペクトロメータ。
【請求項5】
電気的に絶縁する材料が、前記第1電極と前記第2電極の間に挿入されている、請求項3のマススペクトロメータ。
【請求項6】
分子量が小さいイオンを処理するように構成された、請求項1のマススペクトロメータ。
【請求項7】
分子量が小さい前記イオンは、20amuよりも分子量が小さい、請求項6のマススペクトロメータ。
【請求項8】
サイクロイドの一部であるイオンビームを処理するように構成されている、請求項1のマススペクトロメータ。
【請求項9】
前記第1電極と前記第2電極は、長さが約7〜14mmであり、幅が約4〜8mmであり、高さが約3.5〜7mmである前記イオン生成チャンバーを規定するように協同している、請求項1のマススペクトロメータ。
【請求項10】
リークディテクタとして機能するように構成された、請求項1のマススペクトロメータ。
【請求項11】
ヘリウム及び水素からなる群から選択されるガスを検出するように構成された、請求項1のマススペクトロメータ。
【請求項12】
前記イオンビームは電子衝撃イオン化により生成される、請求項1のマススペクトロメータ。
【請求項13】
ほぼ平板である第1電極と、
前記第1電極から離間して、前記第1電極にほぼ平行に配置されたほぼ平板である第2電極とを具えており、
前記第1電極と前記第2電極は、それらの間に電場を生成するように構成されており、
前記電場にほぼ垂直に向けられた磁場を生成するように構成された磁場生成部を具えており、
前記第1電極と前記第2電極の各々は、基部と、互いの電極にほぼ向かうように突出する壁部とを有し、イオン生成チャンバーを規定するように協同しており、
幾つかのイオンが前記チャンバーから出ることを可能とするイオン出口を具えているイオナイザ。
【請求項14】
前記第1電極と前記第2電極の各々の前記壁部は、略平行な一対の上側壁及び下側壁と、端壁とを有している、請求項13のイオナイザ。
【請求項15】
前記第1電極は、前記第2電極と電気的に絶縁されている、請求項13のイオナイザ。
【請求項16】
電気的に絶縁された前記第1電極と前記第2電極の間には絶縁する空隙がある、請求項15のイオナイザ。
【請求項17】
電気的に絶縁する材料が、前記第1電極と前記第2電極の間に挿入されている、請求項15のイオナイザ。
【請求項18】
分子量が小さいイオンを処理するように構成された、請求項13のイオナイザ。
【請求項19】
分子量が小さい前記イオンは、20amuよりも分子量が小さい、請求項18のイオナイザ。
【請求項20】
サイクロイドの一部であるイオンビームを処理するように構成されている、請求項13のイオナイザ。
【請求項21】
前記第1電極と前記第2電極は、長さが約7〜14mmであり、幅が約4〜8mmであり、高さが約3.5〜7mmである前記イオン生成チャンバーを規定するように協同している、請求項13のイオナイザ。
【請求項22】
リークディテクタとして機能するように構成された、請求項13のイオナイザ。
【請求項23】
ヘリウム及び水素からなる群から選択されるガスを検出するように構成された、請求項13のイオナイザ。
【請求項24】
前記イオンビームは電子衝撃イオン化により生成される、請求項13のイオナイザ。
【請求項25】
ほぼ平行に向いて離間して配置されており、ほほ平板である第1電極及び第2電極であって、突出する壁部を有する第1電極及び第2電極を設けて、イオン生成チャンバーを規定する工程と、
前記チャンバーに電場を加える工程と、
前記イオン生成チャンバーに、前記電場にほぼ垂直に向いた磁場を加える工程と、
質量電荷比に従ってイオンを分離する工程と、
質量電荷比に基づいて幾つかのイオンを前記チャンバーから出す工程とを具えるガスの分析方法。
【請求項26】
質量が小さいイオンを用いる、請求項25の方法。
【請求項27】
質量が20amuよりも小さいイオンを用いる、請求項26の方法。
【請求項28】
前記電場を調整することで、前記イオンの質量電荷比に基づいて前記イオンビームの軌跡を与える工程を含む、請求項25の方法。
【請求項29】
サイクロイドの一部であるイオンビームの軌跡によって、所望の質量電荷比を有するイオンを出す、請求項25の方法。
【請求項30】
前記イオン生成チャンバーは、長さが約7〜14mmであり、幅が約4〜8mmであり、高さが約3.5〜7mmである、請求項25の方法。
【請求項31】
ほぼ平行に向いて離間して配置されており、ほぼ平板である第1電極及び第2電極であって、壁部が突出する第1電極及び第2電極を設けて、イオン生成チャンバーを規定する工程と、
前記チャンバーに電場を加える工程と、
前記イオン生成チャンバーに、前記電場にほぼ垂直に向いた磁場を加える工程と、
質量電荷比に従ってイオンを分離する工程と、
質量電荷比に基づいて幾つかのイオンを前記チャンバーから出す工程とを具えるイオンの生成方法。
【請求項32】
質量が小さいイオンを用いる、請求項31の方法。
【請求項33】
質量が20amuよりも小さいイオンを用いる、請求項32の方法。
【請求項34】
前記電場を調整することで、前記イオンの質量電荷比に基づいて前記イオンビームの軌跡を与える工程を含む、請求項31の方法。
【請求項35】
サイクロイドの一部であるイオンビームの軌跡によって、所望の質量電荷比を有するイオンを出す、請求項31の方法。
【請求項36】
前記イオン生成チャンバーは、長さが約7〜14mmであり、幅が約4〜8mmであり、高さが約3.5〜7mmである、請求項31の方法。
【請求項1】
ほぼ平板である第1電極と、
前記第1電極から離間して、前記第1電極にほぼ平行に配置されたほぼ平板である第2電極とを具えており、
前記第1電極と前記第2電極は、それらの間に電場を生成するように構成されており、
前記電場にほぼ垂直に向けられた磁場を生成するように構成された磁場生成部を具えており、
前記第1電極と前記第2電極の各々は、基部と、互いの電極にほぼ向かうように突出する壁部とを有し、イオン生成チャンバーを規定するように協同しており、
幾つかのイオンが前記チャンバーから出ることを可能とするイオン出口と、
前記イオン出口の外に、前記イオン出口に隣接して配置されており、前記イオン出口を通過するイオンを受け取るイオンコレクタとを具えているマススペクトロメータ。
【請求項2】
前記第1電極と前記第2電極の各々の前記壁部は、略平行な一対の上側壁及び下側壁と、端壁とを有している、請求項1のマススペクトロメータ。
【請求項3】
前記第1電極は、前記第2電極と電気的に絶縁されている、請求項1のマススペクトロメータ。
【請求項4】
前記第1電極と前記第2電極の間には絶縁する空隙がある、請求項3のマススペクトロメータ。
【請求項5】
電気的に絶縁する材料が、前記第1電極と前記第2電極の間に挿入されている、請求項3のマススペクトロメータ。
【請求項6】
分子量が小さいイオンを処理するように構成された、請求項1のマススペクトロメータ。
【請求項7】
分子量が小さい前記イオンは、20amuよりも分子量が小さい、請求項6のマススペクトロメータ。
【請求項8】
サイクロイドの一部であるイオンビームを処理するように構成されている、請求項1のマススペクトロメータ。
【請求項9】
前記第1電極と前記第2電極は、長さが約7〜14mmであり、幅が約4〜8mmであり、高さが約3.5〜7mmである前記イオン生成チャンバーを規定するように協同している、請求項1のマススペクトロメータ。
【請求項10】
リークディテクタとして機能するように構成された、請求項1のマススペクトロメータ。
【請求項11】
ヘリウム及び水素からなる群から選択されるガスを検出するように構成された、請求項1のマススペクトロメータ。
【請求項12】
前記イオンビームは電子衝撃イオン化により生成される、請求項1のマススペクトロメータ。
【請求項13】
ほぼ平板である第1電極と、
前記第1電極から離間して、前記第1電極にほぼ平行に配置されたほぼ平板である第2電極とを具えており、
前記第1電極と前記第2電極は、それらの間に電場を生成するように構成されており、
前記電場にほぼ垂直に向けられた磁場を生成するように構成された磁場生成部を具えており、
前記第1電極と前記第2電極の各々は、基部と、互いの電極にほぼ向かうように突出する壁部とを有し、イオン生成チャンバーを規定するように協同しており、
幾つかのイオンが前記チャンバーから出ることを可能とするイオン出口を具えているイオナイザ。
【請求項14】
前記第1電極と前記第2電極の各々の前記壁部は、略平行な一対の上側壁及び下側壁と、端壁とを有している、請求項13のイオナイザ。
【請求項15】
前記第1電極は、前記第2電極と電気的に絶縁されている、請求項13のイオナイザ。
【請求項16】
電気的に絶縁された前記第1電極と前記第2電極の間には絶縁する空隙がある、請求項15のイオナイザ。
【請求項17】
電気的に絶縁する材料が、前記第1電極と前記第2電極の間に挿入されている、請求項15のイオナイザ。
【請求項18】
分子量が小さいイオンを処理するように構成された、請求項13のイオナイザ。
【請求項19】
分子量が小さい前記イオンは、20amuよりも分子量が小さい、請求項18のイオナイザ。
【請求項20】
サイクロイドの一部であるイオンビームを処理するように構成されている、請求項13のイオナイザ。
【請求項21】
前記第1電極と前記第2電極は、長さが約7〜14mmであり、幅が約4〜8mmであり、高さが約3.5〜7mmである前記イオン生成チャンバーを規定するように協同している、請求項13のイオナイザ。
【請求項22】
リークディテクタとして機能するように構成された、請求項13のイオナイザ。
【請求項23】
ヘリウム及び水素からなる群から選択されるガスを検出するように構成された、請求項13のイオナイザ。
【請求項24】
前記イオンビームは電子衝撃イオン化により生成される、請求項13のイオナイザ。
【請求項25】
ほぼ平行に向いて離間して配置されており、ほほ平板である第1電極及び第2電極であって、突出する壁部を有する第1電極及び第2電極を設けて、イオン生成チャンバーを規定する工程と、
前記チャンバーに電場を加える工程と、
前記イオン生成チャンバーに、前記電場にほぼ垂直に向いた磁場を加える工程と、
質量電荷比に従ってイオンを分離する工程と、
質量電荷比に基づいて幾つかのイオンを前記チャンバーから出す工程とを具えるガスの分析方法。
【請求項26】
質量が小さいイオンを用いる、請求項25の方法。
【請求項27】
質量が20amuよりも小さいイオンを用いる、請求項26の方法。
【請求項28】
前記電場を調整することで、前記イオンの質量電荷比に基づいて前記イオンビームの軌跡を与える工程を含む、請求項25の方法。
【請求項29】
サイクロイドの一部であるイオンビームの軌跡によって、所望の質量電荷比を有するイオンを出す、請求項25の方法。
【請求項30】
前記イオン生成チャンバーは、長さが約7〜14mmであり、幅が約4〜8mmであり、高さが約3.5〜7mmである、請求項25の方法。
【請求項31】
ほぼ平行に向いて離間して配置されており、ほぼ平板である第1電極及び第2電極であって、壁部が突出する第1電極及び第2電極を設けて、イオン生成チャンバーを規定する工程と、
前記チャンバーに電場を加える工程と、
前記イオン生成チャンバーに、前記電場にほぼ垂直に向いた磁場を加える工程と、
質量電荷比に従ってイオンを分離する工程と、
質量電荷比に基づいて幾つかのイオンを前記チャンバーから出す工程とを具えるイオンの生成方法。
【請求項32】
質量が小さいイオンを用いる、請求項31の方法。
【請求項33】
質量が20amuよりも小さいイオンを用いる、請求項32の方法。
【請求項34】
前記電場を調整することで、前記イオンの質量電荷比に基づいて前記イオンビームの軌跡を与える工程を含む、請求項31の方法。
【請求項35】
サイクロイドの一部であるイオンビームの軌跡によって、所望の質量電荷比を有するイオンを出す、請求項31の方法。
【請求項36】
前記イオン生成チャンバーは、長さが約7〜14mmであり、幅が約4〜8mmであり、高さが約3.5〜7mmである、請求項31の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2006−526881(P2006−526881A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515038(P2006−515038)
【出願日】平成16年6月2日(2004.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/017117
【国際公開番号】WO2004/108257
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(501270254)モニター インスツルメンツ カンパニー,エルエルシー (2)
【氏名又は名称原語表記】Monitor Instruments Co.,LLC
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月2日(2004.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/017117
【国際公開番号】WO2004/108257
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(501270254)モニター インスツルメンツ カンパニー,エルエルシー (2)
【氏名又は名称原語表記】Monitor Instruments Co.,LLC
【Fターム(参考)】
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