説明

マススペクトロメータ

イオン検出器11を含み、イオンビームを質量分散による2の分離したイオンビームの方向に分割するために反射電極13を用いる、磁場型質量分析器を開示する。前記2のイオンビームは2つの検出器上に向かい、それらは、好ましくは、2つのまたはそれよりも多いコンバージョンダイノード15a、15b、および、前記コンバージョンダイノード15a、15bにより発生させられた電子を検出するための、2つのまたはそれよりも多い対応するマイクロチャンネルプレート検出器14a、14bを含む。前記2つの検出器からのシグナルが実質的に異なる場合、前記イオンビームは妨害イオンを含むと決定することができる。反対に、前記2つの検出器からのシグナルが実質的に等しい場合、前記イオンビームは妨害イオンを実質的に含まないと決定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場型マススペクトロメータおよび質量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁場型マススペクトロメータ(magnetic sector mass spectrometer)は、目的化合物の微量成分分析、精密質量分析、同位対比分析および基礎的なイオン化学研究に普遍的に用いられている。磁場型マススペクトロメータは、特定の質量対イオン比を有するイオンをイオン検出器に伝達するようにアレンジされている。以下でより詳細に記述する通り、イオンは、磁場型質量分析器を、実質的に円の軌道で通過する。磁場型質量分析器は、より正確に、イオン運動量分析器として記述しても良いが、各イオンの初期エネルギーが実質的に等しい場合は、前記イオンは、それらの質量対電荷比にしたがって分離される。
【0003】
質量mおよび電荷zeを有するイオンが電位差Vで加速され、速度vを獲得し、運動エネルギーεを有する場合、
【0004】
【数1】

【0005】
であり、そして、それゆえに、
【0006】
【数2】

【0007】
である。
【0008】
電荷zeを有するイオンが磁場Bを速度vで動いて通ると、前記磁場の方向および前記イオンの運動の方向の両方に垂直な方向に、ローレンツ力Fが働く。前記ローレンツ力Fは、前記イオンに対し向心力を働かせ、その向心力は、前記イオンに対し、半径rmを有する円の軌道での運動を引き起こす。前記ローレンツ力Fは、
【0009】
【数3】

【0010】
で表される。
【0011】
それゆえに、前記磁場を通って運動するイオンの質量対電荷比は、
【0012】
【数4】

【0013】
で与えられ、そして、それゆえに、
【0014】
【数5】

【0015】
である。したがって、上記式からv2を消去すると、質量対電荷比の等式は、
【0016】
【数6】

【0017】
【数7】

【0018】
で与えられる。
【0019】
このことから、磁場Bおよび電位差Vの数値は、イオン源から受け取られた特定の質量対電荷比を有するイオンが扇形磁場(magnetic sector)によりイオン検出器に伝達されるように設定できることが分かる。この方法で、前記扇形磁場は、質量対電荷比フィルターとして働く。それゆえに、磁場Bおよび/または電位差Vをスキャンすることによりマススペクトルを記録することができる。
【0020】
いくつかの応用方法では、複数のイオン検出器を提供し、異なる質量対電荷比を有するイオンを同時に記録し、各イオンが前記扇形磁場中で異なる軌道をとっても良い。そうでなければ、前記マススペクトルの一部を同時に記録するために、検出器の配列を用いても良い。
【0021】
他のアレンジによれば、磁場を実質的に一定に維持し、イオンをその運動量にしたがって分散させても良い。質量m、速度vおよび運動エネルギーεを有するイオンの運動量ρは、
【0022】
【数8】

【0023】
で与えられる。
【0024】
それゆえに、一定の運動エネルギーεを有するイオンは、結果として、それらの質量にしたがって分散される。
【0025】
扇形磁場の形状は、イオン方向収束特性を有するようにデザインすることができる。磁場型質量分析器は、質量分散の方向において、質量分散および方向収束特性の特定のコンビネーションを有するようにデザインしても良い。
【0026】
伝統的な単収束磁場型マススペクトロメータは、イオン源、磁場型質量分析器およびコレクタースリットを含む。前記イオン源は、有限の放出領域またはスリット幅を有し、それにより、前記イオン源から放出されるイオンビーム幅を定義する。前記磁場型質量分析器は、前記磁場型質量分析器の下流にある収束平面(focal plane)上の像点にイオンを収束させるために、収束性の方向収束特性を有していても良い。単収束磁場型マススペクトロメータでは、イオンコレクタースリットは、イオン源のスリットの像点に位置している。前記磁場型質量分析器の前記方向収束特性は、極めて高位にデザインすることができる。しかしながら、前記磁場型質量分析器のイメージング特性は、イオンの初期エネルギーの任意の広がりにより制限される。
【0027】
単収束磁場型マススペクトロメータの質量分散係数Dmは、磁場中のイオンビーム軌道の曲率半径rmに比例する。異なる質量を有し、平均質量mおよび質量差Δmである2のイオンの空間的分離yは、前記質量分散係数Dmに関連し、
【0028】
【数9】

【0029】
で表される。
【0030】
前記磁場型質量分析器下流の像位置におけるイオンビーム幅wbは、イオン源スリット幅ws、像の横倍率Mおよびイメージング収差係数の合計Σαに関連し、
【0031】
【数10】

【0032】
で表される。
【0033】
コレクタースリット幅wcを有する1のコレクタースリットにおける質量分解能m/Δmは、
【0034】
【数11】

【0035】
で与えられる。
【0036】
このように、質量分散係数Dm、イオン源スリット幅ws、およびコレクタースリット幅wcは、磁場型マススペクトロメータの質量分解能決定における最も重要なパラメータである。しかしながら、最終的な質量分解能は、イメージング収差の合計により制限される。
【0037】
上記でディスカッションした通り、扇形磁場は、イオン運動量に関して、そして、それゆえに、前記イオンが単一エネルギーである場合はイオン質量に関して、一定の磁場分散イオンを用いる。しかしながら、イオンは、通常は単一エネルギーではなく、そして、しばしば、前記イオンの発生に用いられるイオン源の特定のタイプに依存して、運動エネルギー幅を有する。イオンエネルギーの広がりは、前記像位置におけるイオンビーム幅wbを広くするように働き、そしてそれは、典型的には、高分解能を達成するための制限要素となる。
【0038】
運動量の分散は、質量分散およびエネルギー分散の組み合わせを含むと考えても良い。扇形電場(electric sector)は、イオンをそれらのエネルギーにしたがって分散させることが知られている。それゆえに、扇形電場を扇形磁場と組み合わせれば、全体のイオンエネルギー分散を変化させることができる。二重収束磁場型質量分析器は、磁場型質量分析器と1またはそれよりも多い扇形電場の組合わせを含み、それにより方向収束が提供され、そして、全体のエネルギー分散がゼロであることが知られている。前記二重収束磁場型質量分析器が、エネルギー分散De1の扇形電場およびエネルギー分散De2の扇形磁場を含み、像の倍率がM2である場合、二重収束磁場型マススペクトロメータ全体のエネルギー分散Deは、
【0039】
【数12】

【0040】
である。
【0041】
前記扇形電場は、前記扇形磁場の前に置いても、もしくは後に置いても良いし、または、そうでなければ、2つのさらに小さい扇形電場を提供し、1つを前記扇形磁場の上流に、および他を下流に置いても良い。全体のエネルギー分散Deがゼロである限りは、前記配列は二重収束磁場型質量分析器であると考えて良い。扇形磁場および扇形電場の組み合わせは、それが、単収束磁場型マススペクトロメータに関連する像の広がりの問題による欠点がないように配置することができる。それゆえに、二重収束磁場型マススペクトロメータは、単収束磁場型マススペクトロメータよりもさらに高分解能を達成するために適している。
【0042】
二重収束磁場型マススペクトロメータを提供するための、扇形磁場と1またはそれよりも多い扇形電場の組み合わせは、比較的高位の収束の達成を可能にするためのデザインの選択に、十分な程度の自由を許容する。二次の方向およびエネルギー収束の全期間がほぼまたは実質的にゼロである二重収束磁場型マススペクトロメータが知られており、そして、そのようなマススペクトロメータは、10%谷間定義(以下でより詳細に記述する)によれば150,000を超える分解能を達成することができる。
【0043】
質量単位Δmのとき、質量mにおけるピーク幅に対する質量分解能は、m/Δmである。ピーク幅wpkがその底部で測定される場合、イオンビーム幅wbおよびコレクタースリット幅wcに対する質量分解能m/Δmは、理論上、
【0044】
【数13】

【0045】
で与えられる。
【0046】
しかしながら、ピーク幅を底部で測定することは実用的でないため、伝統的には、ピーク幅は、ピーク高さの5%の点で測定されている。ピーク高さの5%の点で測定された前記ピーク幅は、分解能計算に用いられている。質量が異なるが強度または高さが等しい2のピークがそれらの高さの5%に等しい点でオーバーラップするかまたは交差する場合、結果として得られるピークプロフィルが2つのピークを示し、それら2つのピークの間の谷間がそれぞれのピークの高さの10%になることが、分解能の10%谷間定義として知られている。例えば、ある磁場型マススペクトロメータが10%谷間定義によれば1000の質量分解能を有する場合、質量1000および1001を有し強度が等しい2のピークは、結果として得られるピークプロフィルにおけるピーク間の谷間が前記各ピークの高さの10%であると解析される。
【0047】
上記でディスカッションした通り、異なる質量を有し、平均質量mおよび質量差Δmである2のイオンの空間的分離yは、前記質量分散係数Dmに関連する。この関係は、コレクタースリットにおけるイオンビームの実際の幅wbを、前記2のイオンにおける分数の質量差Δm/mの式で下記のように表現するために用いることができる。
【0048】
【数14】

【0049】
前記イオンにおける分数の質量差Δm/mの式は無次元であり、そしてそれは、典型的には、百万分率(ppm)で表現される。すなわち、
【0050】
【数15】

【0051】
である。
【0052】
それゆえに、マススペクトロメータにおける前記拡散係数Dmが既知の場合は、前記ビーム幅wbは質量に対するppmで表現しても良い。前記コレクタースリット幅wcもまた、質量に対するppmで下記の通り表現しても良い。
【0053】
【数16】

【0054】
イオンビーム幅wbを、幅wcのコレクタースリットを横切って掃引し、そして、伝達されたイオンを検出および記録する場合、記録されたピークプロフィルは幅wpkを有し、
【0055】
【数17】

【0056】
で表される。
【0057】
前記ピーク幅wpkは、質量に対するppmの式で、
【0058】
【数18】

【0059】
と表現することもできる。
【0060】
前記質量分析器における質量分解能m/Δmの逆数は、質量分解能Δm/mを与える。それゆえに、前記質量分解能は、質量に対するppmで表現されたピーク幅と考えることができる。
【0061】
高分解能に対する二重収束磁場型マススペクトロメータの能力は、精密質量測定のための、および、高分解能選択的イオンレコーディング(High Resolution Selective Ion Recording, "HR-SIR")として知られる技術による高度に特異的な目的化合物の微量成分分析のための、それらの使用につながる。伝統的な高分解能選択的イオンレコーディング技術は、目的化合物からの応答を高分解能および高度の選択性で選択および記録するために、二重収束磁場型マススペクトロメータを用いる。その高分解能は、バックグラウンド化学質量を効果的に除去することを可能とし、そして、結果として、より低い検出レベルの達成を可能にする。高分解能選択的イオンレコーディングは、したがって、より高いデューティーサイクルを、およびそれゆえに、他の伝統的技術と比較して向上した感度を提供する。
【0062】
ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン、および特に2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン("2,3,7,8-TCDD")の検出および定量化は、二重収束磁場型マススペクトロメータの特に重要な応用法である。大規模なクリーンアップ手順にも関わらず、サンプルはなお、重要な化合物と等しい整数質量を有するであろうポリクロロビフェニルおよびベンジルフェニルエーテル等の化合物を含んでいても良い。サンプルは、伝統的には、既知の量の13C同位体ラベル形態2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシンをガスクロマトグラフィー経由で導入してスパイクし、そして、高分解能質料分析で記録する。この測定は、天然ダイオキシンの応答と13Cラベル形態のそれとの比較により定量化し、そして、天然および13Cラベル形態ダイオキシンの両方における主な同位体の比の確認により検証する。分解能10,000(10%谷間定義)では、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシンに対する伝統的な検出レベルは、他の妨害成分の非存在下で約1フェムトグラム(femto-gram)または3アトモル(atto-mole)である。
【0063】
単一のイオン検出器を有する磁場型マススペクトロメータは、走査によるマススペクトルの記録および一連の異なる質量ピークの検出に用いることができる。前記マススペクトルにおける各質量を記録するためのデューティーサイクルは、一般的には比較的不十分であり、そして、分解能が高くなるほど、または質量の範囲が広くなるほど、前記デューティーサイクルは不十分になる。四重極マスフィルターとは異なり、磁場型質量分析器は、いくつかの異なる質量を有するイオンからのシグナルを同時に記録するようにデザインすることができる。これは、普遍的には、並行検出(parallel detection)と呼ばれる。
【0064】
複数の検出器は、2またはそれよりも多い異なる質量の相対存在量を同時に正確に記録する手段を提供する。例えば2の同位体の前記相対存在量を同時に正確に記録することは、この技術が、イオン化源内の揺らぎもしくはドリフトにより、または、例えばクロマトグラフィー中にしばしば遭遇するサンプル濃度の急激な変化により、実質的に影響されないため、特に正確である。複数のコレクタースリットおよび対応する別々に分離したイオン検出器を組み込んだ磁場型マススペクトロメータは、それゆえに、正確な同位対比の決定をするために用いても良い。異なる質量を記録するためには異なるイオン検出器が必要であるが、低分解能、例えば200〜300(10%谷間定義)においてのみである。
【0065】
他の1つの伝統的な配置によれば、アレイ検出器は、ある範囲の質量にわたって同時の獲得を可能にし、それにより、マススペクトル記録に用いる場合のデューティーサイクルを向上させる。分離した電荷感応性検出器または単一のイオン位置感応性検出器における高密度アレイを用いるアレイ検出器は、非常に高感度であるが、通常、サイズが限定される。そのようなアレイ検出器は、マススペクトロメータの収束平面に沿って配置され、そしてそれゆえに、通常通りに磁場型マススペクトロメータ中でイオン検出器と共に使用されるのでなければ、コレクタースリットの位置に置かれる。アレイ中の分離した各検出器は、それゆえに、コレクタースリットの代わりになり、そして、それらの分離した検出器は、マススペクトロメータの分解能を決定する。前記検出器は、実用上、いくつかの質量を同時に記録することが必要とされるため、中程度までの分解能、例えば約2000(10%谷間定義)までの分解能でしか操作できない。そのような分解能は、ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシンの分析のためには、依然として、はるかに低すぎる。
【0066】
微量の2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシンを検出するための伝統的な高分解能選択的イオンレコーディングは、少なくとも4つの異なる質量の、高分解能における反復性の急速な切換え、および、4つの全ての質量に対するシグナル応答の記録に関係する。これは、普遍的には、ガスクロマトグラフィーカラムから溶出する他の同重体成分が分離されたことを確実にするために、約10,000(10%谷間定義)の質量分解能で行なわれる。実用上、通常は、追加の基準物質をマススペクトロメータのイオン源内に連続的に導入し、そのため、分析しようとする微量化合物の質量と近接する追加基準物質の質量ピークが、連続的に存在する。前記追加基準物質は、切換えの連続に含まれており、そのため、質量スケール中の任意のドリフトをモニターし、および補正することができる。前記質量スケール中のドリフトは、前記リファレンス(基準物質)のピークを横切って走査することによりモニターし、ピーク中央の任意のシフトを決定することができる。前記質量スケール中のドリフトがモニターされない場合、前記重要な4つの質量のピーク頂点への切換えは、確実性に必要な程度行なうことができない。各連続の2回目に、切換え操作が正確かつ精密に働いていることを検証するため、リファレンスピークに切換えることも知られている。この工程は、分解能10,000(10%谷間定義)での精密な切換えを確実にする。しかしながら、この工程は感度が良いとは言え、検出された全てのイオンが実際に重要な目標化合物の単独イオンであることを保証しない。それゆえに、妨害イオンをも不注意で検出してしまう可能性がある。
【0067】
妨害イオンは、例えば、意図する分析物イオンに非常に近い質量対電荷比を有するイオン源中の汚染物質、基準物質、ガスクロマトグラフカラムからの流出物質、またはガスクロマトグラフからの他の共溶出成分に依存して検出される可能性がある。これら妨害イオンは、それらが、分解能10,000(10%谷間定義)でさえも前記分析物イオンから完全に分離されない可能性がある場合、そのために検出されるおそれがある。妨害イオンは、より多い存在量で存在する、残りのガス状分子に衝突する他の成分由来のイオンに依存する散乱により生じる可能性もある。
【0068】
重大な妨害の存在を示す主な指標は、同位体比の歪みである。そのような歪みは、通常、標準的な検証工程の一部としてチェックされる。しかしながら、決定された同位体比が歪んでいることの認識により妨害イオンの存在が知られている場合でさえも、前記妨害イオンの存在はバックグラウンドシグナルに寄与し続け、それにより、重要な微量分析物イオンの検出が不明瞭になるおそれがある。ピーク頂点からピーク頂点への切換えは、それ自体では、検出されたイオンが実際に重要なイオンであるかを検証する方法を提供しないのみならず、測定されたイオンシグナルが妨害イオンの有意な存在に依存して拒絶されるべきであるかどうかの決定を助けない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0069】
したがって、進歩した磁場型マススペクトロメータの提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0070】
本発明により、磁場型質量分析器、前記磁場型質量分析器の下流に配置されたコレクタースリット、および、前記コレクタースリットの下流に配置され、前記コレクタースリットを通じて伝達されたイオンビームを少なくとも第1イオンビームおよび第2イオンビームに分割するデバイス、を含む磁場型マススペクトロメータを提供する。前記マススペクトロメータは、前記第1イオンビームの少なくとも一部の強度を測定する第1検出器、および、前記第2イオンビームの少なくとも一部の強度を測定する第2検出器、をさらに含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
前記イオンビームは、第1方向および直行する第2方向を有する。好ましい実施形態では、前記イオンビーム中のイオンが、それらの質量対電荷比にしたがって前記第1方向に分散し、それにより、前記イオンビーム中のイオンの質量対電荷比が前記第1方向に沿って変化する。好ましくは、前記イオンビーム中のイオンが、実質的に、それらの質量対電荷比にしたがって前記第2方向に分散しておらず、それにより、前記イオンビーム中のイオンの質量対電荷比が前記第2方向に沿って実質的に一定である。
【0072】
好ましい実施形態では、前記第1および第2検出器が、前記第1および第2イオンビームの少なくとも一部の強度を実質的に同時に測定する。
【0073】
前記マススペクトロメータは、単収束磁場型マススペクトロメータを含んでいても良いし、または、二重収束磁場型マススペクトロメータを含んでいても良い。
【0074】
好ましい実施形態では、前記コレクタースリットを通じて伝達されたイオンビームを分割するための前記デバイスが、電極を含む。前記電極は、前記第1および第2検出器上へのイオンの反射または偏向を引き起こすような電位に維持される。前記電極は、好ましくは、鋭い刃のあるブレードまたは楔型電極を含み、そして、使用時に、前記刃に近づく前記イオンビーム中の分析物イオンが、実質的に均一におよび/または前記刃に関して対称に分配されるように調整しても良い。前記刃に近づく前記イオンビーム中の妨害イオンは、実質的に不均一におよび/または前記刃に関して非対称に分配されても良い。
【0075】
前記磁場型マススペクトロメータは、電子衝撃(Electron Impact, "EI")イオン源または化学イオン化(Chemical Ionisation, "CI")イオン源を含むことが好ましい。その他には、前記イオン源は、エレクトロスプレー ("ESI") イオン源、大気圧化学イオン化 (Atmospheric Pressure Chemical Ionisation, "APCI") イオン源、大気圧光イオン化 (Atmospheric Pressure Photo Ionisation, "APPI") イオン源、マトリックス支援レーザー脱離イオン化 (Matrix Assisted Laser Desorption Ionisation, "MALDI") イオン源、レーザー脱離イオン化 (Laser Desorption Ionisation, "LDI") イオン源、誘導結合プラズマ (Inductively Coupled Plasma, "ICP") イオン源、高速原子衝突 (Fast Atom Bombardment, "FAB") イオン源、液体二次イオン質量分析 (Liquid Secondary Ions Mass Spectrometry, "LSIMS") イオン源、フィールドイオン化 (Field Ionisation, "FI") イオン源、またはフィールドデソープション (Field Desorption, "FD") イオン源であっても良い。前記イオン源は、連続的イオン源またはパルスイオン源であっても良い。
【0076】
好ましくは、イオンビームを分割するための前記デバイスと前記イオン源の間で、電圧を維持する。前記電圧差は、0-100 V、100-200 V、200-300 V、300-400 V、400-500 V、500-600 V、600-700 V、700-800 V、800-900 V、900-1000 V、または1000 Vより大きくても良い。
【0077】
好ましい磁場型マススペクトロメータは、前記第2イオンビームの少なくとも一部の強度に対する前記第1イオンビームの少なくとも一部の相対的強度を決定するためのプロセッサをさらに含んでいても良い。前記第1および/または第2イオンビームの少なくとも一部の強度が、前記第2および/または第1イオンビームの少なくとも一部の強度と、それぞれxパーセントまたはそれよりも大きく異なる場合、前記イオンビームは有意な割合の妨害イオンを含むと決定しても良い。好ましくは、前記パーセントxは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、または100以上からなる群から選択される。それに代え、またはそれに加え、ある時間tの範囲内で、前記第1検出器により検出されるイオン数が前記第2検出器により検出されるイオン数とy以上異なり、yが、前記時間tの間に前記第1および第2検出器により検出される全イオン数の標準偏差である場合、前記イオンビームは有意な割合の妨害イオンを含むと決定しても良い。好ましくは、前記標準偏差yの数は、0.25、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0、または4.0以上からなる群から選択される。
【0078】
好ましい一実施形態では、前記第1および第2検出器からのシグナルを合計してコンバインドシグナルを生成させ、および、前記コンバインドシグナルに重み因子を掛け算しても良い。好ましくは、前記重み因子は、前記第1検出器からのシグナルが前記第2検出器からのシグナルと実質的に等しい場合は、前記コンバインドシグナルを実質的に減じさせない。それに加え、またはそれに代えて、前記重み因子は、前記第1検出器からのシグナルが前記第2検出器からのシグナルと実質的に異なる場合は、前記コンバインドシグナルを実質的に減じさせても良い。一実施形態では、前記重み因子が、exp(-kyn)の式で表され、kおよびnは定数であり、そして、ある時間tの範囲内に前記第1検出器により検出されるイオン数は、前記第2検出器により検出されるイオン数とy異なり、yは、前記時間tの間に前記第1および第2検出器により検出される全イオン数の標準偏差である。この実施形態では、前記第1および第2検出器により検出されるイオン数の間の差は、正の値、すなわち、前記検出されるイオン数の間の差の絶対値をとる。好ましくは、前記定数kは、0.5-2.0、0.6-1.8、0.7-1.6、0.8-1.4、0.9-1.2、0.95-1.1、または1である。好ましくは、前記定数nは、1.0-3.0、1.2-2.8、1.4-2.6、1.6-2.4、1.8-2.2、1.9-2.1、または2である。
【0079】
好ましい実施形態では、前記イオンビームが有意な割合の妨害イオンを含むと決定した場合、前記第1および/または前記第2検出器からのシグナルを、捨てるか、または、そうでなければ、比較的不正確であると判断する。他に、前記イオンビームが有意な割合の妨害イオンを含まないと決定した場合、前記第1および第2検出器からのシグナルを、合計するか、または、そうでなければ、比較的正確であると判断する。
【0080】
好ましくは、前記磁場型マススペクトロメータは、前記コレクタースリットの下流に配置されたレンズをさらに含む。前記レンズは、前記コレクタースリットの像について前記デバイス上に再び焦点を合わせ、それにより、前記イオンビームを分裂させるか、または、前記イオンビームを実質的に平行にしても良い。
【0081】
他の一実施形態では、イオンを前記デバイス上に導き、前記イオンビームを分裂させるためのスクリーニング管を提供する。前記スクリーニング管は、前記イオンビームを分裂させるために、前記コレクタースリットと前記デバイスの間に配置されていることが好ましく、そして、前記第1および/または前記第2検出器に印可される電圧から前記イオンビームをシールドしても良い。好ましくは、前記第1および/または第2検出器は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10よりも多いマイクロチャンネルプレート検出器を含む。それに加え、またはそれに代えて、前記第1および/または第2検出器は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10よりも多いコンバージョンダイノードを含み、前記コンバージョンダイノードが、それに衝突するイオンに応答して電子を発生させる。前記マススペクトロメータは、前記コンバージョンダイノードにより発生させられた電子を検出するための、1もしくはそれよりも多い電子増倍器(エレクトロンマルチプライヤー)および/または1もしくはそれよりも多いマイクロチャンネルプレート検出器をさらに含んでいても良い。他の一実施形態では、前記マススペクトロメータは、1もしくはそれよりも多い蛍光体(シンチレータ)および/または1もしくはそれよりも多いりん光体(phospher)をさらに含み、それにより、前記コンバージョンダイノードで発生させられた電子が受け取られ、そして、前記1もしくはそれよりも多い蛍光体(シンチレータ)および/または前記1もしくはそれよりも多いりん光体(phospher)が、電子の受け取りに応答して光子を発生させる。前記マススペクトロメータは、前記光子を検出するための、1もしくはそれよりも多い光電子増倍管および/または1もしくはそれよりも多い感光性固体検出器をさらに含んでいても良い。
【0082】
好ましい実施形態では、前記磁場型マススペクトロメータは、前記第1および第2検出器の上流に配置された追加の検出器をさらに含む。この追加の検出器は、コンバージョンダイノードを含んでいても良く、そして、オペレーションにおける1のモードで、イオンビームの少なくとも一部が前記追加の検出器における前記コンバージョンダイノード上に偏向させられ、それに応答して前記コンバージョンダイノードが電子を発生させても良い。前記追加の検出器は、前記コンバージョンダイノードにより発生させられた電子を受け取るための、1もしくはそれよりも多い電子増倍器(エレクトロンマルチプライヤー)および/または1もしくはそれよりも多いマイクロチャンネルプレート検出器をさらに含んでいても良い。前記コンバージョンダイノードで発生させられた電子を受け取り、それに応答して光子を発生させるために、1もしくはそれよりも多い蛍光体(シンチレータ)および/または1もしくはそれよりも多いりん光体(phospher)をさらに提供しても良い。これらの光子は、1もしくはそれよりも多い光電子増倍管および/または1もしくはそれよりも多い感光性固体検出器により検出しても良い。
【0083】
好ましくは、前記第1および/または前記第2検出器の入力に対する出力の割合(ゲイン)は、それぞれ独立に調整可能であり、そして、一実施形態では、前記第1および第2検出器は、それぞれ独立に、可調整電源装置(adjustable power supply)を備える。前記第1および第2検出器は、1もしくはそれよりも多いアナログからデジタルへのコンバータ(Analogue to Digital Converter)および/または1もしくはそれよりも多いイオン計数検出器をさらに含んでいても良い。
【0084】
他の好ましい一実施形態では、前記磁場型マススペクトロメータは、前記イオンビームを前記デバイスの中央に導き、前記イオンビームを分裂させるための調整手段をさらに含む。前記調整手段は、好ましくは、前記コレクタースリットの下流に少なくとも1の偏向電極を含み、前記偏向電極が、前記イオンビームを前記デバイスの方へ動かし、前記イオンビームを分裂させるように配置されている。
【0085】
前記好ましい実施形態にしたがった磁場型マススペクトロメータは、目標化合物の微量成分分析に特に好適である。
【0086】
本発明の他の一側面からは、質量分析方法を提供する。前記方法は、イオンビームを、磁場型質量分析器およびその下流に配置されたコレクタースリットを通じて伝達する工程、前記イオンビームを、前記コレクタースリットの下流で、少なくとも第1イオンビームおよび第2イオンビームに分割する工程、前記第1イオンビームの少なくとも一部の強度を第1検出器で測定する工程、および、前記第2イオンビームの少なくとも一部の強度を第2検出器で測定する工程、を含む。
【0087】
前記イオンビームは、第1方向および直行する第2方向を有する。好ましい実施形態では、前記イオンビーム中のイオンが、それらの質量対電荷比にしたがって前記第1方向に分散し、それにより、前記イオンビーム中のイオンの質量対電荷比が前記第1方向に沿って変化する。好ましくは、前記イオンビーム中のイオンが、実質的に、それらの質量対電荷比にしたがって前記第2方向に分散しておらず、それにより、前記イオンビーム中のイオンの質量対電荷比が前記第2方向に沿って実質的に一定である。
【0088】
好ましい実施形態では、前記第1および第2検出器が、前記第1および第2イオンビームの少なくとも一部の強度を実質的に同時に測定する。前記方法は、好ましくは、前記第2イオンビームの少なくとも一部の強度に対する前記第1イオンビームの少なくとも一部の相対的強度を決定する工程をさらに含む。好ましくは、前記第1および/または第2イオンビームの少なくとも一部の強度が、前記第2および/または第1イオンビームの少なくとも一部の強度と、それぞれxパーセントまたはそれよりも大きく異なる場合、前記イオンビームは有意な割合の妨害イオンを含むと決定しても良い。前記パーセントxは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、または50より大きくても良い。それに代え、またはそれに加え、ある時間tの範囲内で、前記第1検出器により検出されるイオン数が前記第2検出器により検出されるイオン数とy以上異なり、yが、前記時間tの間に前記第1および第2検出器により検出される全イオン数の標準偏差である場合、前記イオンビームは有意な割合の妨害イオンを含むと決定しても良い。好ましくは、前記標準偏差yの数は、0.25、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0、または4.0以上である。
【0089】
好ましい実施形態では、前記方法は、前記第1および第2検出器からのシグナルを合計してコンバインドシグナルを生成させる工程、および、前記コンバインドシグナルに重み因子を掛け算する工程をさらに含む。好ましくは、前記重み因子は、前記第1検出器からのシグナルが前記第2検出器からのシグナルと実質的に等しい場合は、前記コンバインドシグナルを実質的に減じさせない。それに加え、またはそれに代えて、前記重み因子は、前記第1検出器からのシグナルが前記第2検出器からのシグナルと実質的に異なる場合は、前記コンバインドシグナルを実質的に減じさせても良い。一実施形態では、前記重み因子が、exp(-kyn)の式で表され、kおよびnは定数であり、そして、ある時間tの範囲内に前記第1検出器により検出されるイオン数は、前記第2検出器により検出されるイオン数とy異なり、yは、前記時間tの間に前記第1および第2検出器により検出される全イオン数の標準偏差である。この実施形態では、前記第1および第2検出器により検出されるイオン数の間の差は、正の数値をとる。好ましくは、前記定数kは、0.5-2.0、0.6-1.8、0.7-1.6、0.8-1.4、0.9-1.2、0.95-1.1、または1である。好ましくは、前記定数nは、1.0-3.0、1.2-2.8、1.4-2.6、1.6-2.4、1.8-2.2、1.9-2.1または2である。
【0090】
好ましい方法では、前記イオンビームが有意な割合の妨害イオンを含むと決定した場合、前記第1および/または前記第2検出器からのシグナルを、捨てるか、または、そうでなければ、比較的不正確であると判断しても良い。それに代えて、前記イオンビームが有意な割合の妨害イオンを含まないと決定した場合、前記第1および第2検出器からのシグナルを、合計するか、または、そうでなければ、比較的正確であると判断しても良い。
【0091】
本発明の種々の実施形態を、他のアレンジとともに、添付の図面を参照しながら以下に記述するが、これらの実施形態およびアレンジは例示目的で示すに過ぎない。
【0092】
図1は、伝統的な単収束磁場型マススペクトロメータを示す。
【0093】
図2は、伝統的な二重収束磁場型マススペクトロメータを示す。
【0094】
図3は、高分解能選択的イオンレコーディングにより得られた2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシンの伝統的な測定を示す。
【0095】
図4は、本発明の好ましい実施形態にしたがったイオン検出器を示す。
【0096】
図5は、前記好ましい実施形態にしたがったイオン検出器の入口に設けられたコレクタースリットを通過したイオンビームを収束させるために、レンズを用いる一実施形態を示す。
【0097】
図6は、コンバージョンダイノードをマイクロチャンネルプレート検出器と組み合わせて用いてイオンを検出する、特に好ましい実施形態を示す。
【0098】
図7は、反射電極の各側面上に2の検出器を提供した、他の実施形態を示す。
【0099】
図8は、オペレーションにおける1のモードではイオンは好ましいイオン検出器上に向けられても良く、そして、オペレーションにおける他の1のモードではイオンは第2検出器システム上に偏向させられても良い、一実施形態を示す。
【0100】
図9は、伝統的なイオン検出器を用いて観測されることがある典型的なピークプロフィルを例示する。
【0101】
図10は、前記好ましい実施形態にしたがったイオン検出器を用いて観測されることがある典型的なピークプロフィルを例示する。
【0102】
図11は、10,000の高分解能を有する好ましい実施形態にしたがった、イオン検出器のコレクタースリットに入射する20のイオンを含むイオンビームの、位置の小シフト効果を例示する。そして、
図12は、2000の低分解能を有する好ましい実施形態にしたがった、イオン検出器のコレクタースリットに入射する100のイオンを含むイオンビームの、位置の小シフト効果を例示する。
【0103】
図1に、伝統的な単収束磁場型マススペクトロメータを示す。このマススペクトロメータは、イオン源1、磁場型質量分析器2、および、イオン検出器(図示せず)の上流に隣接して配置されたコレクタースリット3を含む。前記イオン源1はスリット4を有し、このスリット4は、前記イオン源1から出たイオンビームの幅を規定する。図1に示す磁場型質量分析器2は、収束性の方向収束特性を有する。イオンコレクタースリット3は、前記イオン源スリット4の像点に位置し、単収束磁場型マススペクトロメータを提供する。前記単収束磁場型マススペクトロメータの方向収束特性は極めて高位にデザインすることができるが、そのイメージング特性は、前記イオン源1から放出されるイオンのエネルギーの任意の広がりにより限定される。
【0104】
図2は、伝統的な二重収束マススペクトロメータを示す。このマススペクトロメータは、源スリット4を有するイオン源1を含む。前記イオン源1からのイオンは、第1扇形電場5を通過し、そして、第1中間像6へ運ばれる。前記イオンは、続いて、磁場型質量分析器2を通過し、そして、第2中間像7へ運ばれ、その後、第2扇形電場8を通過し、さらにその後、前記イオンはコレクタースリット3上に収束させられる。前記扇形電場5、8は、異なるエネルギーを有するイオンの分散を減少させる働きをするか、そうでなければ像幅の広がりを引き起こし、そしてそれゆえに、マススペクトロメータの分解能を制限する。
【0105】
図3は、保持時間の関数としてのシグナル強度の伝統的測定を示す。この測定は、ガスクロマトグラフ中、5 fgの2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシンを含む溶液について、10,000の分解能(10%谷間定義)を有する伝統的な二重収束磁場型マススペクトロメータを用いて分析し、モニターイオンが分子量321.8936を有するようにセットした。この測定から、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシンの検出レベルは、コレクタースリットを通過する他のイオンにより生成されるノイズのために制限されていることが分かる。前記他のイオンのうちいくらかは、前記分析物と同じ整数質量を有する化合物であろう。この例では、前記検出レベルは、約1 fg(3アトモル)に制限されていることが分かる。
【0106】
図4および5を参照しながら、以下、本発明の好ましい実施形態について記述する。前記好ましい実施形態にしたがったマススペクトロメータは、2またはそれよりも多い数の分離した検出器14a、14bを有するスプリットイオン検出器11を含み、このスプリットイオン検出器11は、単一のコレクタースリット3(図5参照)と共に提供されている。前記単一のコレクタースリット3を通過して伝達されたイオンは、スプリットイオン検出器11内部を通り、そして、反射電極13により質量分散の方向に分割される。前記イオンが分割される方向は、前記イオンの位置および前記イオンが向いている方向に依存し、前記反射電極13の片側または他の側になる。前記反射電極13により反射されたイオンは、2またはそれよりも多い検出器14a、14bのうち1つに向けられる。
【0107】
前記コレクタースリット3の全域にわたって均一に分配されている、および/または、前記コレクタースリット3のほぼ中央に対して対称に分配されている、イオンビームは、実質的に等しく分割され、それにより、前記イオンビーム中のイオンの実質的に半分が反射電極13により反射されて前記検出器14a;14bのうち1つに入射する。一方、前記イオンビーム中のイオンの他の半分は、反射電極13により反射されて前記14a;14bのうちの他の検出器に入射する。逆に、前記コレクタースリット3の全域にわたって均一に分配されていない、および/または、前記コレクタースリット3のほぼ中央に対して対称に分配されていない、イオンビームは、前記電極13により不均等に分割され、それにより、前記2の検出器14a、14bからのシグナルは、実質的に異なる。
【0108】
好ましい実施形態によれば、前記コレクタースリット3は、重要な分析物イオンのみが前記コレクタースリット3の全域にわたって均一に分配され、および/または、前記コレクタースリット3のほぼ中央に対して対称に分配されるように、正確に位置している。それゆえに、重要な分析物イオンのみが前記反射電極13の全域にわたって均一におよび/または対称に分配され、そしてそれゆえに、前記重要な分析物イオンの実質的に50%が、前記検出器14a;14bのうち1つに入射し、一方、前記分析物イオンのうち実質的に50%は、前記14a;14bのうち他の検出器に入射する。しかしながら、妨害イオンは、若干異なる軌道で磁場型質量分析器を通過し、そしてそれゆえに、前記コレクタースリットの全域にわたって均一にまたは対称には分配されない。それゆえに、前記妨害イオンは、前記反射電極13の全域にわたって均一にまたは対称には分配されず、そしてそれゆえに、前記妨害イオンは、前記2つの検出器14a、14bの間で等しくは分配されない。したがって、その後前記2つの検出器14a、14bから発せられるイオンシグナルは、実質的に異なる。それゆえに、前記2つの検出器14a、14bからのシグナルの相対強度を測定することで、前記イオンビーム全体が前記コレクタースリット3の全域にわたって均一に分配されているか否か、および/または、前記イオンビームが前記コレクタースリット3のほぼ中央に対して対称に分配されているか否か、決定することが可能である。このことは、続いて、検出されたイオンビームが妨害イオンの重要な特性を含むか否か、決定することを可能にする。前記2つのイオン検出器14a、14bからのシグナルが実質的に同一である場合、続いて、前記シグナルを合計および記録することが可能であり、そうでなければ、前記シグナルを無視しまたは捨てることができる。または、前記2つのイオン検出器からのシグナルを合計し、さらに重み因子を掛け算しても良い。前記重み因子は、好ましくは、exp(-kyn)の式で表され、式中、kは好ましくは1であり、nは好ましくは2であり、そして、yは、ある時間tの間に前記第1および第2検出器により検出される全イオン数の標準偏差である。
前記重み因子は、好ましくは、前記複数のシグナルが実質的に等しい場合は前記合計したシグナルの有意性を保持する効果を有し、そして、前記複数のシグナルが強度において有意差を有する場合、前記合計したシグナルの有意性を、減少させるか、または、そうでなければ、実質的に抑制する。
【0109】
前記反射電極13は、好ましくは、鋭い刃のあるブレードまたは楔型電極を含む。前記反射電極13は、好ましくは、前記イオンビームを質量分散の方向に分割するように、前記コレクタースリット3の平面に対して実質的に垂直に、および、磁場の方向に対して実質的に並行に配置されている。前記イオンビームは、好ましくは、2つの分離したイオンビームに分割され、それらは、続いて、2またはそれよりも多い検出器14a、14b上に向けられる。好ましくは、前記反射電極13には、イオン源と比較して高い電圧をかけ、それにより、イオンは、前記反射電極13からそらされ、そして、前記刃状電極13のちょうど中心に対してどちらの方向に前記イオンが位置しおよび向いているかに依存し、片側または他方の側に分けられる。前記イオンビームおよび/または前記反射電極13の調整は、好ましくは、前記イオンビームを前記コレクタースリット3の中央に調整しても良く、そして、それにより、前記イオンビーム中央のイオンが前記反射電極13のビーム分割刃に向かって正確に方向付けられることが可能である。スプリットイオン検出器11内を通る全てのイオンは、好ましくは、前記イオンが2またはそれよりも多い検出器14a、14bにより検出されるように、前記反射電極13の片側または他の側に偏向させられる。
【0110】
イオンは、好ましくは、スクリーニング管12(図4に示した通り)を通って前記スプリットイオン検出器に入り、そして、スクリーニング管12から出て、好ましくは、直ちに前記反射電極13に直面する。前記スクリーニング管12は、好ましくは、少なくとも部分的に、好ましくは実質的に、前記スプリットイオン検出器11を通過するイオンを、前記検出器14a、14bにかけられる電圧から生じる任意の電場からシールドする働きをする。前記反射電極13により遅れて生成させられる電場は、前記イオンを分け、そして、前記スクリーニング管12のいずれかの側に位置する2またはそれよりも多い検出器14a、14bの方に戻るように反射する。前記2の検出器14a、14bは、好ましくは、マイクロチャンネルプレートを含み、前記マイクロチャンネルプレートは、その背後に位置するアノードを有する。前記マイクロチャンネルプレートのうち1つに到達する各イオンは、電子のパルスを生じさせ、そのパルスは、前記電子が前記マイクロチャンネル背後のアノードにより受け取られるように放出される。前記アノードに入射する電子のパルスの各々は、アナログからデジタルへのコンバータ(Analogue to Digital Converter)を用い、計数するかまたは積分し、そして次に測定しても良い。前記イオン検出器14a、14bは、それぞれ別々のダイノード電子増倍器を含んでいても良く、または、以下でより詳細に記述する連続的ダイノードチャネルトロンを含んでいても良い。
【0111】
図5に、本発明の一実施形態にしたがい、前記コレクタースリット3および前記スプリットイオン検出器11の間におけるマススペクトロメータの一部について、より詳細に示す。レンズ9は、好ましくは、前記コレクタースリット3の下流かつ前記スプリットイオン検出器11の上流に提供される。前記レンズ9は、好ましくは、前記コレクタースリット3の像について、前記スプリットイオン検出器11の入口に再び焦点を合わせる。好ましくは、コレクタースリット3の前記再び焦点を合わせられた像は、拡大され、それにより、前記コレクタースリット3を通過して前記スプリットイオン検出器11に到達するイオンの空間的寄与を増大させる。
【0112】
図6に、本発明の特に好ましい実施形態を例示する。同図では、反射電極13で反射されたイオンは、2つのコンバージョンダイノード15a、15b上へ向かって加速させられる。前記コンバージョンダイノード15a、15bに衝突するイオンは、前記コンバージョンダイノード15a、15bによる二次電子の発生を引き起こす。発生した二次電子は、続いて、2つの検出器14a、14bを用いて検出される。前記2つの検出器14a、14bは、好ましくは、マイクロチャンネルプレートイオン検出器を含む。最初にイオンを検出する際に前記コンバージョンダイノード15a、15bを用いることの、マイクロチャンネルプレートを用いる場合に対する利点の1つは、イオン検出効率の100%近くまでの増大が可能なことである。マイクロチャンネルプレートは、典型的には、60〜70%の有効なイオン受容面積を有し、そこへのイオンの衝突は、二次電子の発生につながる。それゆえに、マイクロチャンネルプレートのイオン検出効率は、事実上、約60〜70%に限定される。対照的に、コンバージョンダイノード15a、15bは、約100%のイオン検出効率を有し、そして、典型的には、それぞれのコンバージョンダイノード15a、15bに入射するイオン1個につき2個〜6個の間の電子が得られる。それゆえに、図6に示す通り配置されたマイクロチャンネルプレート14a、14bが、前記コンバージョンダイノード15a、15bへのイオン衝突に応答して前記コンバージョンダイノード15a、15bから発生し放出される二次電子のうち少なくとも1個を検出する確率は、実質的に100%である。
【0113】
上記ほどではないが、他の好ましい一実施形態によれば、イオンは、コンバージョンダイノード15a、15bから加速され、そして、1もしくはそれよりも多い蛍光体(シンチレータ)および/または1もしくはそれよりも多いりん光体(phospher)(図示せず)に受け取られても良い。得られた光子は、続いて、好ましくは、1もしくはそれよりも多い光電子増倍管(photo-multiplier tubes, "PMT")および/または1もしくはそれよりも多い感光性固体検出器(図示せず)を用いて検出しても良い。
【0114】
図7に、さらなる実施形態を示す。同図では、2つの検出器14a、14c;14b、14dが、反射電極13の各側に位置し、それにより、全部で4個のイオン検出器が提供されている。この実施形態では、イオンビームの一部は中央の反射電極13の片側に偏向させられ、それは2個のイオン検出器14a、14cにより受け取られる。同様に、前記イオンビームの一部は、前記中央の反射電極13の他の側に偏向させられ、それは他の2個のイオン検出器14b、14dにより受け取られる。この実施形態は、イオンビームの、前記反射電極13に対する(そしてそれゆえにコレクタースリット3に対する)任意の非対称性をさらに正確に決定することを可能にする。図示しないさらなる実施形態によれば、6、8、10、12または任意の数のさらなるイオン検出器を提供しても良いことを企図する。
【0115】
図8に、さらなる実施形態を例示する。同図では、好ましいスプリットイオン検出器11は、第2検出器システム16、17、18の下流に提供されている。前記第2検出器システム16、17、18は、好ましくは、イオンビームの軸を外れて提供されており、それにより、前記イオンビーム中の中性粒子は、好ましくは、前記第2検出器システム16、17、18により妨害されない。
【0116】
この実施形態では、上流のイオン検出器は、好ましくは、コンバージョンダイノード16、1またはそれよりも多い収束型環状電極17、蛍光体(またはりん光体)および光電子増倍管18を含む。前記第2検出器システムにかけられる電圧がOFFに切換えられた場合、イオンは、前記第2検出器システムを直接通過して移動し、妨害されることなく前記好ましいスプリットイオン検出器11上にたどり着く。前記第2検出器システムにかけられる電圧がONに切換えられた場合、イオンは、好ましくは、前記コンバージョンダイノード16上に偏向させられる。イオンは、コンバージョンダイノード16に衝突し、そして、二次電子の放出を引き起こす。前記二次電子は、続いて、好ましくは、加速され、そして、前記1またはそれよりも多い環状レンズ17により前記蛍光体またはりん光体18上に収束される。それに代え、前記イオンは、マイクロチャンネルプレート検出器(図示せず)上に直接偏向させても良い。
【0117】
他の一実施形態では、前記好ましいスプリットイオン検出器11および前記第2検出器システム16、17、18は、イオンが静電気的および/または磁気的な場により2つの検出器のうち1のまたは他の検出器に直接向かうことができるように、配置されていても良い。
【0118】
さらなる実施形態では、オペレーションにおける1のモードで、実質的に全てのイオンが、電場および/または磁場により、前記好ましいスプリットイオン検出器11における前記検出器14a、14b、14c、14d上へ直接向かっても良い。
【0119】
ある特定の質量対電荷比を有するイオンを含むイオンビームをコレクタースリット3全体にわたって走査する場合、得られるシグナルプロフィルは、普遍的には、ピークプロフィルとみなす。前記イオンビームを前記コレクタースリット3全体にわたって走査すると、前記イオンビームの前縁が前記コレクタースリット3の第1の端に到達した時に、イオンは前方のイオン検出器に伝達され始める。続いて、イオンは、前記イオンビームの後縁が前記コレクタースリット3の反対側の第2の端に到達するまで、前記コレクタースリット3を通じて前記イオン検出器に伝達され続ける。それゆえに、前記ピークプロフィルの幅は、前記イオンビームの幅wbを前記コレクタースリットの幅wcと合計した値となる。前記イオンビーム幅wbが前記コレクタースリット3の幅wcと実質的に等しい場合、前記ピークプロフィルは、前記イオンビームが前記コレクタースリット3のほぼ中央に対して対称に分配される場合に対応する最大値を有する。前記ピークプロフィルは、前記イオンビームの相対幅wbおよび前記コレクタースリット3の幅wcに依存して変化する。前記ピークプロフィルは、前記イオンビームのイオン強度プロフィルにも依存して変化する。
【0120】
微量の2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシンの検出方法として前述した高分解能選択的イオンレコーディング測定は、普遍的には、10,000の質量分解能(10%谷間定義)で実行する。最大強度の5%で測定した場合に質量の100 ppmの幅を有する質量ピークは、10,000の質量分解能(10%谷間定義)を有するであろう。100 ppm幅の質量ピークは、通常、前記コレクタースリット幅wcが前記イオンビーム幅wbとちょうど等しい場合に、すなわち、前記コレクタースリット3および前記イオンビームがそれぞれ50 ppmの幅を有する場合に、最大の伝達(maximum transmission)を有する。この条件下では、源スリット幅wsは、前記コレクタースリット3に到達するビームをちょうど全て伝達する前記コレクタースリット3に対し、および、100 ppmのピーク幅(wb+wc)に対し、可能な限り広い。
【0121】
図9に、ピークプロフィルPの例を示す。同図に示す前記ピークプロフィルPは、ビーム幅wbが50 ppmであるイオンビームBを、幅wcが50 ppmであるコレクタースリット3全体にわたって走査して得られる。結果として観測されるピークプロフィルPは、100 ppmの幅を有し、そして、前記イオンビームと前記コレクタースリット3の中心が一致する場合に対応する最大値を有する。前記イオンビームプロフィルBは、前記コレクタースリット3と中心を一致させた位置で示している。典型的なビームプロフィルは余弦分布にしたがう場合があるが、前記イオンビームプロフィルBは、マススペクトロメータのデザインにおいて、いくつかのパラメータにしたがって変化しても良い。図9に示した例では、前記イオンビームプロフィルBは余弦分布を有し、そして、結果として観測されるピークプロフィルPは、伝統的な単一のイオン検出器により検出され、余弦二乗分布を有する。
【0122】
高分解能選択的イオンレコーディング実験では、イオンビームは中心位置に切換えられ、そこでは、前記イオンビームの実質的に100%が、コレクタースリットを通過してマススペクトロメータに伝達される。前記イオンビームは前記コレクタースリット全体にわたって走査はされないため、このアプローチは、得られるピークプロフィルについて任意の理解を可能にすることはない。前記ピークプロフィルは、例えば、図9にPとして示したような形態をとり得るのみである。例えば、前記ピークが正しい質量対電荷比を精密に有していないことに依存し、または、非常にわずかな差の質量対電荷比を有しかつランダムに散乱したイオンの測定を前記ピークが含むために、前記ピークプロフィルが期待通りでない場合は、前記ピークプロフィルを知ることはできず、そして、分析物イオンの測定に妨害イオンが含まれるであろう。しかしながら、前記好ましい実施形態にしたがい、コレクタースリットを通過して伝達されるイオンビームが2またはそれよりも多いイオンビームに分割され、2またはそれよりも多い検出器により検出される場合は、以下でさらに詳細に記述する通り、状況は全く異なる。
【0123】
図10に、ピークプロフィルP1,P2,Psumの例を示す。これらピークプロフィルP1,P2,Psumは、前記好ましい実施形態にしたがい、プロフィルBを有し幅wbが50 ppmであるイオンビームが、幅wcが50 ppmであるコレクタースリット3に入射し、スプリットイオン検出器11を用いて検出されることで観測される。得られて前記好ましいスプリットイオン検出器11における2つの検出器に記録されたピークプロフィルP1,P2は、それぞれ幅が75 ppmであり、互いに対して25 ppmずれている。前記2のピークプロフィルP1,P2が合計されると、得られたピークプロフィルPsumは、幅が100 ppmであり、そして、図9に示した伝統的な単一イオン検出器に記録されたプロフィルと実質的に同じプロフィルを有する。
【0124】
イオンビームが中心位置に切換えられる高分解能選択的イオンレコーディング実験では、前記好ましいスプリットイオン検出器11における2つの検出器の各々に記録されるイオンシグナルは、前記イオンビームが前記コレクタースリット3のほぼ中央に対して対称に分配される場合に提供されるシグナルと実質的に同じとなるであろう。しかしながら、例えば、イオンがわずかな質量対電荷比の差を有する妨害散乱イオンを含むために、または、イオンが同じ質量対電荷比を有しかつランダムに散乱したイオンを含むために、前記ピークプロフィルが期待通りでなかった場合、前記好ましいスプリットイオン検出器11における2つの検出器により検出されるイオンシグナルは等しくならない。それゆえに、前記好ましい実施形態における前記スプリットイオン検出器11は、妨害イオンが望ましい分析物イオンとともに検出されるか否か(および実際にどの程度検出されるか)の、およびそれゆえに、前記イオンシグナルが信頼できるか否かの決定を可能にする。同様に、前記イオンビームに妨害イオンが実質的に存在しない場合は、前記2つの検出器からのイオンシグナルは実質的に等しくなり、そして、意図した分析物イオンが、前記分析物イオンの強度測定に影響する望ましくない妨害イオンなしで検出されたことを、高い信頼度で結論づけることができる。
【0125】
前記イオンビームが中心位置に切換えられた場合、前記好ましいスプリットイオン検出器11における各検出器はイオンの最大数を検出せず、前記イオンビームが12.5 ppmシフトした場合に検出するであろうことが、図10から分かる。
それゆえに、前記イオンビームは、前記好ましいスプリットイオン検出器11における2つの検出器のそれぞれにおける前記ピークプロフィルP1,P2のピークを合計したピークプロフィルPsumのピーク頂点に位置する場合でさえも、前記個々の検出器のそれぞれについてピーク頂点に位置しない。このことは、前記イオンビーム位置の極めて小さいシフトが、前記検出器のうち1つのシグナルの増加および同時に他の検出器のシグナルの減少を引き起こすことを意味する。それゆえに、前記好ましいスプリットイオン検出器11は、イオンビーム位置の小さいシフトに対し非常に高感度であり、かつ、妨害イオンの存在に対し非常に高感度である。
【0126】
図11を参照しながら、前記イオンビーム位置の小シフトの効果について例示する。図11に示す表によると、前記好ましいイオン検出器11の分解能は10,000(10%谷間定義)であるとみなすことができ、かつ、20のイオンのみが前記コレクタースリット3を通過して伝達され、そして、前記好ましいイオン検出器11により実質的に検出される。この例示では、前記イオンビームおよび前記コレクタースリット3の両方が50 ppmの幅を有し、結果として、観測されるピークプロフィル幅は100 ppmである。
【0127】
図11の第1欄は、前記コレクタースリット中央からそれたイオンビームのシフトのシリーズを、ppm単位で表に記入する。第2欄は、第1欄で列挙したイオンビームの対応するシフトについて、前記好ましいスプリットイオン検出器11の第1検出器で検出されるイオンの対応する数を表にする。第3欄は、同様に、前記イオンビームの対応する同じシフトについて、第2検出器で検出されるイオン数を表にする。
【0128】
第4欄は、前記第1および第2検出器により検出される全イオン数、すなわち第2欄および第3欄の合計を表にする。前記イオンビーム位置の中央からのシフト量が増大すると、検出される全イオン数が減少することが分かる。これは、前記イオンビームおよび前記コレクタースリット3の幅が等しく、そして、前記イオンビームが中央から動くにつれて、前記イオンビーム中のイオンの全てが前記コレクタースリット3には入射されず、そしてそれゆえに、前記イオンの全てが前方には伝達されないためである。
【0129】
第5欄は、中央に位置する前記イオンビームが第4欄で報告された全イオン数を与えた場合の、前記第1および第2検出器の各々により検出されると予期されるイオン数の平均を表にする。言い換えると、第5欄は、単に、第4欄でイオンビームシフトの各数値について報告した全イオン数の半分を報告する。第6欄は、第5欄で報告した、前記第1および第2検出器の各々について予期されるイオン数の、1つの標準偏差を表にする。
【0130】
第7欄は、第2欄で報告した前記第1検出器の実際のイオン数と、第5欄で報告した予期されるイオン数との間の差を表にする。そしてそれは、第6欄で表にした予期されるイオン数の標準偏差の数値の表現で表している。第8欄は、同様に、第3欄で報告した前記第2検出器の実際のイオン数と、第5欄で報告した予期されるイオン数との間の差を、標準偏差の表現で表にする。そしてそれは、再度、第6欄で表にした予期されるイオン数の標準偏差の数値の表現で表している。
【0131】
第9欄は、前記予期される平均からのイオン数差が、第7欄で前記第1検出器について報告した実際のイオン数差と等しいかまたはそれより少ない確率P1のパーセンテージを、自然分布またはガウス分布とみなして表にする。同様に、第10欄は、第8欄で前記第2検出器について報告したイオン数差の同様な確率P2のパーセンテージを表にする。それゆえに、第9欄および第10欄は、第4欄で報告した電子数を有するイオンビームが前記コレクタースリットの中央にある場合に、第7欄および第8欄でそれぞれ報告されている相対標準偏差について観測される測定の確率のパーセンテージを報告する。最後に、第11欄は、第7欄で報告した相対標準偏差の外側における測定、および第8欄で報告した相対標準偏差の外側における測定の両方の観測についての、確率のパーセンテージの結合Pを表にする。言い換えると、第11欄は、前記第1および第2検出器により記録された2つのイオン数の観測における確率のパーセンテージを、前記2つの分離したイオン数の合計と等しい全イオン数を有し中央に位置するピークについて報告する。
【0132】
図11から、20のイオンのみを含みちょうど5 ppmシフトしているイオンビームに対応する前記2つの検出器によるイオン数については、前記イオンビームが中央に位置する場合に前記観測されるイオン数が観測可能である確率は約13%しかないことが分かる。さらに、20のイオンのみを含みちょうど10 ppmシフトしているイオンビームに対応する前記2つの検出器によるイオン数については、前記イオンビームが中央に位置する場合に前記観測されるイオン数が観測可能である確率は1%しかない。同様に、前記イオンビームが15 ppmシフトしている場合は、前記イオンビームが中央に位置する場合に前記観測されるイオン数が観測可能である確率は、わずか0.1%である。
【0133】
この例では、前記好ましい実施形態にしたがったスプリットイオン検出器の使用による利点が明らかである。その利点とは、ちょうど20のイオンを含むイオンビームの測定について、イオンビームのわずか10 ppmのずれにより、観測された質量ピークが妨害ピークではないことを99%の信頼性で確実にできるという点である。それに代え、前記イオンビームの15 ppmのずれにより、観測された質量ピークが妨害質量ピークではないことを99.9%の信頼性で確実にできる。
【0134】
対照的に、伝統的なイオン検出器を用いた場合、同様の特定性を達成するためには、5%高さにおける約20 ppmの質量ピーク幅で操作することが必要である。これは、約50,000(10%谷間定義)のきわめて高い分解能に対応し、前記好ましい実施形態にしたがった10,000とは対照的である。それゆえに、この例では、前記好ましい実施形態にしたがった前記スプリットイオン検出器が、類似の伝統的なイオン検出器と比較して約5倍に増加した特定性を提供することは明らかである。
【0135】
それに代えて、前記好ましいスプリットイオン検出器は、マススペクトロメータの分解能が10,000から50,000(10%谷間定義)に5倍増加すると、その結果、それが感度をロスしやすい場合と比べて、同じ特定性を提供するが5〜25倍高感度であると考えることもできる。
【0136】
図12に、好ましいイオン検出器に入射するイオンビームの位置の小シフト効果についての、別の一例を示す。この例における前記好ましいイオン検出器の分解能は、2000(10%谷間定義)に減少させている。結果として、伝達が5倍増加したとみなすことができ、それにより、前記好ましいスプリットイオン検出器により検出されるイオンの全数は100に増加している。この例示では、前記イオンビームおよび前記コレクタースリット3の幅は、両方とも250 ppmであり、結果として、ピーク幅は500 ppmである。図12から、中央から20 ppmシフトしているイオンビームによる前記2つの検出器上のイオン数については、前記イオンビームが前記コレクタースリットの中央に位置している場合に前記観測されるイオン数が観測可能である確率はわずか1%であることが分かる。この例は、前記好ましい実施形態にしたがったスプリットイオン検出器の使用による利点を示す。その利点とは、ちょうど100のイオンに対応するピークの分解能2000(10%谷間定義)における測定について、わずか20 ppmのずれにより、前記ピークが妨害ピークではないことを99%の信頼性で確実にできるという点である。対照的に、伝統的なイオン検出器を用いた場合、同様の特定性を達成するためには、5%高さにおける40 ppmのピーク幅で操作することが必要である。これは、前記好ましい実施形態にしたがったちょうど2000の分解能と比較すると、25,000(10%谷間定義)という高い分解能に対応する。さらにまた、前記好ましいスプリットイオン検出器が、伝統的なイオン検出器の分解能10,000(10%谷間定義)における操作で達成可能な感度および特定性と比較して増大した感度および増大した特定性の両方を有するということが、結果として起こる。
【0137】
前記好ましい実施形態にしたがった前記イオン検出器が、感度のロスなしに質料分析の特定性を向上させることが可能であるか、または、特定性のロスなしに向上した感度を提供することが可能であるか、または、感度および特定性の両方の向上を実際に提供できることを示した。さらに、バックグラウンドノイズを構成するランダムに散乱したイオンは、実質的に、または、そうでなければ少なくとも部分的に、除去することができる。
【0138】
本発明について、好ましい実施形態を参照しながら記述してきたが、添付の請求の範囲に記載されている本発明の範囲から逸脱しない限り形態および詳細において種々の変更が可能であることは、当業者には理解可能である。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】伝統的な単収束磁場型マススペクトロメータを示す。
【図2】伝統的な二重収束磁場型マススペクトロメータを示す。
【図3】高分解能選択的イオンレコーディングにより得られた2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシンの伝統的な測定を示す。
【図4】本発明の好ましい実施形態にしたがったイオン検出器を示す。
【図5】前記好ましい実施形態にしたがったイオン検出器の入口に設けられたコレクタースリットを通過したイオンビームを収束させるために、レンズを用いる一実施形態を示す。
【図6】コンバージョンダイノードをマイクロチャンネルプレート検出器と組み合わせて用いてイオンを検出する、特に好ましい実施形態を示す。
【図7】反射電極の各側面上に2の検出器を提供した、他の実施形態を示す。
【図8】オペレーションにおける1のモードではイオンは好ましいイオン検出器上に向けられても良く、そして、オペレーションにおける他の1のモードではイオンは第2検出器システム上に偏向させられても良い、一実施形態を示す。
【図9】伝統的なイオン検出器を用いて観測されることがある典型的なピークプロフィルを例示する。
【図10】前記好ましい実施形態にしたがったイオン検出器を用いて観測されることがある典型的なピークプロフィルを例示する。
【図11】10,000の高分解能を有する好ましい実施形態にしたがった、イオン検出器のコレクタースリットに入射する20のイオンを含むイオンビームの、位置の小シフト効果を例示する。
【図12】2000の低分解能を有する好ましい実施形態にしたがった、イオン検出器のコレクタースリットに入射する100のイオンを含むイオンビームの、位置の小シフト効果を例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場型質量分析器、
前記磁場型質量分析器の下流に配置されたコレクタースリット、
前記コレクタースリットの下流に配置され、前記コレクタースリットを通じて伝達されたイオンビームを少なくとも第1イオンビームおよび第2イオンビームに分割するデバイス、
前記第1イオンビームの少なくとも一部の強度を測定する第1検出器、および、
前記第2イオンビームの少なくとも一部の強度を測定する第2検出器、
を含む、磁場型マススペクトロメータ。
【請求項2】
前記イオンビームが、第1方向および直行する第2方向を有する、請求項1に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項3】
前記イオンビーム中のイオンが、それらの質量対電荷比にしたがって前記第1方向に分散し、それにより、前記イオンビーム中のイオンの質量対電荷比が前記第1方向に沿って変化する、請求項2に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項4】
前記イオンビーム中のイオンが、実質的に、それらの質量対電荷比にしたがって前記第2方向に分散しておらず、それにより、前記イオンビーム中のイオンの質量対電荷比が前記第2方向に沿って実質的に一定である、請求項2または3に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項5】
使用時に、前記第1および第2検出器が、前記第1および第2イオンビームの少なくとも一部の強度を実質的に同時に測定する、請求項1〜4のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項6】
単収束磁場型マススペクトロメータを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項7】
二重収束磁場型マススペクトロメータを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項8】
前記デバイスが電極を含み、前記電極が、前記第1および第2検出器上へのイオンの反射または偏向を引き起こす、請求項1〜7のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項9】
前記電極が、鋭い刃のあるブレードを含む、請求項8に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項10】
前記電極が、楔型電極を含む、請求項8または9に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項11】
前記電極が刃を含み、そして、使用時に、前記刃に近づく前記イオンビーム中の分析物イオンが、実質的に均一におよび/または前記刃に関して対称に分配されるように調整される、請求項8、9または10に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項12】
前記電極が刃を含み、そして、使用時に、前記刃に近づく前記イオンビーム中の妨害イオンが、実質的に不均一におよび/または前記刃に関して非対称に分配されるように調整される、請求項8〜11のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項13】
電子衝撃(Electron Impact, "EI")イオン源をさらに含む、請求項1〜12のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項14】
化学イオン化(Chemical Ionisation, "CI")イオン源をさらに含む、請求項1〜12のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項15】
(i) エレクトロスプレー ("ESI") イオン源; (ii) 大気圧化学イオン化 (Atmospheric Pressure Chemical Ionisation, "APCI") イオン源; (iii) 大気圧光イオン化 (Atmospheric Pressure Photo Ionisation, "APPI") イオン源; (iv) マトリックス支援レーザー脱離イオン化 (Matrix Assisted Laser Desorption Ionisation, "MALDI") イオン源; (v) レーザー脱離イオン化 (Laser Desorption Ionisation, "LDI") イオン源; (vi) 誘導結合プラズマ (Inductively Coupled Plasma, "ICP") イオン源; (vii) 高速原子衝突 (Fast Atom Bombardment, "FAB") イオン源; (viii) 液体二次イオン質量分析 (Liquid Secondary Ions Mass Spectrometry, "LSIMS") イオン源; (ix) フィールドイオン化 (Field Ionisation, "FI") イオン源; および (x) フィールドデソープション (Field Desorption, "FD") イオン源からなる群から選択されるイオン源をさらに含む、請求項1〜12のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項16】
連続的イオン源をさらに含む、請求項1〜15のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項17】
パルスイオン源をさらに含む、請求項1〜15のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項18】
使用時に、前記デバイスと前記イオン源の間の電圧差が、(i) 0-100 V; (ii) 100-200 V; (iii) 200-300 V; (iv) 300-400 V; (v) 400-500 V; (vi) 500-600 V; (vii) 600-700 V; (viii) 700-800 V; (ix) 800-900 V; (x) 900-1000 V; および (xi) > 1000 Vからなる群から選択されるいずれかに維持される、請求項13〜17のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項19】
プロセッサをさらに含み、前記プロセッサが、使用時に、前記第2イオンビームの少なくとも一部の強度に対する前記第1イオンビームの少なくとも一部の相対的強度を決定する、請求項1〜18のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項20】
前記第1イオンビームの少なくとも一部の強度が前記第2イオンビームの少なくとも一部の強度とx %以上異なる場合、前記イオンビームは有意な割合の妨害イオンを含むと決定し、xが、(i) 1; (ii) 2; (iii) 3; (iv) 4; (v) 5; (vi) 6; (vii) 7; (viii) 8; (ix) 9; (x) 10; (xi) 15; (xii) 20; (xiii) 25; (xiv) 30; (xv) 35; (xvi) 40; (xvii) 45; (xviii) 50; (xix) 55; (xx) 60; (xxi) 65; (xxii) 70; (xxiii) 75; (xxiv) 80; (xxv) 85; (xxvi) 90; (xxvii) 95; (xxviii) 100; および (xxix) > 100からなる群から選択される、請求項1〜19のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項21】
前記第2イオンビームの少なくとも一部の強度が前記第1イオンビームの少なくとも一部の強度とx %以上異なる場合、前記イオンビームは有意な割合の妨害イオンを含むと決定し、xが、(i) 1; (ii) 2; (iii) 3; (iv) 4; (v) 5; (vi) 6; (vii) 7; (viii) 8; (ix) 9; (x) 10; (xi) 15; (xii) 20; (xiii) 25; (xiv) 30; (xv) 35; (xvi) 40; (xvii) 45; (xviii) 50; (xix) 55; (xx) 60; (xxi) 65; (xxii) 70; (xxiii) 75; (xxiv) 80; (xxv) 85; (xxvi) 90; (xxvii) 95; (xxviii) 100; および (xxix) > 100からなる群から選択される、請求項1〜20のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項22】
ある時間tの範囲内で、前記第1検出器により検出されるイオン数が前記第2検出器により検出されるイオン数とy以上異なる場合、前記イオンビームは有意な割合の妨害イオンを含むと決定し、yは、前記時間tの間に前記第1および第2検出器により検出される全イオン数の標準偏差であり、yが、(i) 0.25; (ii) 0.5; (iii) 0.75; (iv) 1.0; (v) 1.25; (vi) 1.5; (vii) 1.75; (viii) 2.0; (ix) 2.25; (x) 2.5; (xi) 2.75; (xii) 3.0; (xiii) 3.25; (xiv) 3.5; (xv) 3.75; (xvi) 4.0; および (xvii) >4.0からなる群から選択される、請求項1〜21のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項23】
前記第1および第2検出器からのシグナルを合計してコンバインドシグナルを生成させ、および、前記コンバインドシグナルに重み因子を掛け算する、請求項1〜22のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項24】
前記重み因子が、
(i) 前記第1検出器からのシグナルが前記第2検出器からのシグナルと実質的に等しい場合は、前記コンバインドシグナルを実質的に減じさせず、および/または
(ii) 前記第1検出器からのシグナルが前記第2検出器からのシグナルと実質的に異なる場合は、前記コンバインドシグナルを実質的に減じさせる、
請求項23に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項25】
前記重み因子が、exp(-kyn)の式で表され、kおよびnは定数であり、そして、ある時間tの範囲内に前記第1検出器により検出されるイオン数は、前記第2検出器により検出されるイオン数とy異なり、yは、前記時間tの間に前記第1および第2検出器により検出される全イオン数の標準偏差である、請求項23または24に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項26】
kが、(i) 0.5-2.0; (ii) 0.6-1.8; (iii) 0.7-1.6; (iv) 0.8-1.4; (v) 0.9-1.2; (vi) 0.95-1.1; および (vii) 1からなる群から選択される請求項25に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項27】
nが、(i) 1.0-3.0; (ii) 1.2-2.8; (iii) 1.4-2.6; (iv) 1.6-2.4; (v) 1.8-2.2; (vi) 1.9-2.1; および (vii) 2からなる群から選択される請求項25または26に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項28】
前記イオンビームが有意な割合の妨害イオンを含むと決定した場合、前記第1および/または前記第2検出器からのシグナルを、捨てるか、または、そうでなければ、比較的不正確であると判断する、請求項1〜27のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項29】
前記イオンビームが有意な割合の妨害イオンを含まないと決定した場合、前記第1および第2検出器からのシグナルを、合計するか、または、そうでなければ、比較的正確であると判断する、請求項1〜28のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項30】
前記コレクタースリットの下流に配置されたレンズをさらに含む、請求項1〜29のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項31】
前記レンズが、前記コレクタースリットの像について前記デバイス上に再び焦点を合わせる、請求項30に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項32】
前記レンズが、前記イオンビームを実質的に平行にする、請求項30に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項33】
イオンを前記デバイス上に導くためのスクリーニング管をさらに含む、請求項1〜32のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項34】
前記スクリーニング管が、前記コレクタースリットと前記デバイスの間に配置されている、請求項33に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項35】
前記スクリーニング管が、前記第1および/または前記第2検出器に印可される電圧から前記イオンビームをシールドする、請求項33または34に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項36】
前記第1検出器が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10よりも多いマイクロチャンネルプレート検出器を含む、請求項1〜35のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項37】
前記第1検出器が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10よりも多いコンバージョンダイノードを含み、前記コンバージョンダイノードが、それに衝突するイオンに応答して電子を発生させる、請求項1〜36のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項38】
前記コンバージョンダイノードにより発生させられた電子を検出するための、1もしくはそれよりも多い電子増倍器(エレクトロンマルチプライヤー)および/または1もしくはそれよりも多いマイクロチャンネルプレート検出器をさらに含む、請求項37に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項39】
1もしくはそれよりも多い蛍光体(シンチレータ)および/または1もしくはそれよりも多いりん光体(phospher)をさらに含み、それにより、前記コンバージョンダイノードで発生させられた電子が使用時に受け取られ、そして、前記1もしくはそれよりも多い蛍光体(シンチレータ)および/または前記1もしくはそれよりも多いりん光体(phospher)が、電子の受け取りに応答して光子を発生させる、請求項37に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項40】
前記光子を検出するための、1もしくはそれよりも多い光電子増倍管および/または1もしくはそれよりも多い感光性固体検出器をさらに含む、請求項39に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項41】
前記第2検出器が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10よりも多いマイクロチャンネルプレート検出器を含む、請求項1〜40のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項42】
前記第2検出器が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10よりも多いコンバージョンダイノードを含み、前記コンバージョンダイノードが、それに衝突するイオンに応答して電子を発生させる、請求項1〜41のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項43】
前記コンバージョンダイノードにより発生させられた電子を検出するための、1もしくはそれよりも多い電子増倍器(エレクトロンマルチプライヤー)および/または1もしくはそれよりも多いマイクロチャンネルプレート検出器をさらに含む、請求項42に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項44】
1もしくはそれよりも多い蛍光体(シンチレータ)および/または1もしくはそれよりも多いりん光体(phospher)をさらに含み、それにより、前記コンバージョンダイノードで発生させられた電子が使用時に受け取られ、そして、前記1もしくはそれよりも多い蛍光体(シンチレータ)および/または前記1もしくはそれよりも多いりん光体(phospher)が、電子の受け取りに応答して光子を発生させる、請求項42に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項45】
前記光子を検出するための、1もしくはそれよりも多い光電子増倍管および/または1もしくはそれよりも多い感光性固体検出器をさらに含む、請求項44に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項46】
前記第1および第2検出器の上流に配置された追加の検出器をさらに含む、請求項1〜45のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項47】
前記追加の検出器がコンバージョンダイノードを含む、請求項46に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項48】
オペレーションにおける1のモードで、イオンビームの少なくとも一部が前記コンバージョンダイノード上に偏向させられ、そして、それに応答して前記コンバージョンダイノードが電子を発生させる、請求項47に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項49】
前記コンバージョンダイノードにより発生させられた電子を受け取るための、1もしくはそれよりも多い電子増倍器(エレクトロンマルチプライヤー)および/または1もしくはそれよりも多いマイクロチャンネルプレート検出器をさらに含む、請求項48に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項50】
1もしくはそれよりも多い蛍光体(シンチレータ)および/または1もしくはそれよりも多いりん光体(phospher)をさらに含み、それにより、前記コンバージョンダイノードで発生させられた電子が使用時に受け取られ、そして、前記1もしくはそれよりも多い蛍光体(シンチレータ)および/または前記1もしくはそれよりも多いりん光体(phospher)が、電子の受け取りに応答して光子を発生させる、請求項48に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項51】
前記光子を検出するための、1もしくはそれよりも多い光電子増倍管および/または1もしくはそれよりも多い感光性固体検出器をさらに含む、請求項50に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項52】
前記第1および/または前記第2検出器の入力に対する出力の割合(ゲイン)を、それぞれ独立に調整可能な、請求項1〜51のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項53】
前記第1および第2検出器が、それぞれ独立に、可調整電源装置(adjustable power supply)を備える、請求項52に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項54】
前記第1および第2検出器が、1もしくはそれよりも多いアナログからデジタルへのコンバータ(Analogue to Digital Converter)および/または1もしくはそれよりも多いイオン計数検出器をさらに含む、請求項1〜53のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項55】
前記イオンビームを前記デバイスの中央に導くための調整手段をさらに含む、請求項1〜54のいずれかに記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項56】
前記調整手段が、前記コレクタースリットの下流に少なくとも1の偏向電極を含み、前記偏向電極が、前記イオンビームを前記デバイスの方へ動かすように配置されている、請求項55に記載の磁場型マススペクトロメータ。
【請求項57】
イオンビームを、磁場型質量分析器およびその下流に配置されたコレクタースリットを通じて伝達する工程、
前記イオンビームを、前記コレクタースリットの下流で、少なくとも第1イオンビームおよび第2イオンビームに分割する工程、
前記第1イオンビームの少なくとも一部の強度を第1検出器で測定する工程、および、
前記第2イオンビームの少なくとも一部の強度を第2検出器で測定する工程、
を含む、質量分析方法。
【請求項58】
前記イオンビームが、第1方向および直行する第2方向を有する、請求項57に記載の質量分析方法。
【請求項59】
前記イオンビーム中のイオンが、それらの質量対電荷比にしたがって前記第1方向に分散し、それにより、前記イオンビーム中のイオンの質量対電荷比が前記第1方向に沿って変化する、請求項58に記載の質量分析方法。
【請求項60】
前記イオンビーム中のイオンが、実質的に、それらの質量対電荷比にしたがって前記第2方向に分散しておらず、それにより、前記イオンビーム中のイオンの質量対電荷比が前記第2方向に沿って実質的に一定である、請求項58または59に記載の質量分析方法。
【請求項61】
使用時に、前記第1および第2検出器が、前記第1および第2イオンビームの少なくとも一部の強度を実質的に同時に測定する、請求項57〜60のいずれかに記載の質量分析方法。
【請求項62】
前記第2イオンビームの少なくとも一部の強度に対する前記第1イオンビームの少なくとも一部の相対的強度を決定する工程をさらに含む、請求項57〜61のいずれかに記載の質量分析方法。
【請求項63】
前記第1イオンビームの少なくとも一部の強度が前記第2イオンビームの少なくとも一部の強度とx %以上異なる場合、前記イオンビームは有意な割合の妨害イオンを含むと決定し、xが、(i) 1; (ii) 2; (iii) 3; (iv) 4; (v) 5; (vi) 6; (vii) 7; (viii) 8; (ix) 9; (x) 10; (xi) 15; (xii) 20; (xiii) 25; (xiv) 30; (xv) 35; (xvi) 40; (xvii) 45; (xviii) 50; (xix) 55; (xx) 60; (xxi) 65; (xxii) 70; (xxiii) 75; (xxiv) 80; (xxv) 85; (xxvi) 90; (xxvii) 95; (xxviii) 100; および (xxix) > 100からなる群から選択される、請求項57〜62のいずれかに記載の質量分析方法。
【請求項64】
前記第2イオンビームの少なくとも一部の強度が前記第1イオンビームの少なくとも一部の強度とx %以上異なる場合、前記イオンビームは有意な割合の妨害イオンを含むと決定し、xが、(i) 1; (ii) 2; (iii) 3; (iv) 4; (v) 5; (vi) 6; (vii) 7; (viii) 8; (ix) 9; (x) 10; (xi) 15; (xii) 20; (xiii) 25; (xiv) 30; (xv) 35; (xvi) 40; (xvii) 45; (xviii) 50; (xix) 55; (xx) 60; (xxi) 65; (xxii) 70; (xxiii) 75; (xxiv) 80; (xxv) 85; (xxvi) 90; (xxvii) 95; (xxviii) 100; および (xxix) > 100からなる群から選択される、請求項57〜63のいずれかに記載の質量分析方法。
【請求項65】
ある時間tの範囲内で、前記第1検出器により検出されるイオン数が前記第2検出器により検出されるイオン数とy以上異なる場合、前記イオンビームは有意な割合の妨害イオンを含むと決定し、yは、前記時間tの間に前記第1および第2検出器により検出される全イオン数の標準偏差であり、yが、(i) 0.25; (ii) 0.5; (iii) 0.75; (iv) 1.0; (v) 1.25; (vi) 1.5; (vii) 1.75; (viii) 2.0; (ix) 2.25; (x) 2.5; (xi) 2.75; (xii) 3.0; (xiii) 3.25; (xiv) 3.5; (xv) 3.75; (xvi) 4.0; および (xvii) >4.0からなる群から選択される、請求項57〜64のいずれかに記載の質量分析方法。
【請求項66】
前記第1および第2検出器からのシグナルを合計してコンバインドシグナルを生成させる工程、および、
前記コンバインドシグナルに重み因子を掛け算する工程、
をさらに含む、請求項57〜65のいずれかに記載の質量分析方法。
【請求項67】
前記重み因子が、
(i) 前記第1検出器からのシグナルが前記第2検出器からのシグナルと実質的に等しい場合は、前記コンバインドシグナルを実質的に減じさせず、および/または
(ii) 前記第1検出器からのシグナルが前記第2検出器からのシグナルと実質的に異なる場合は、前記コンバインドシグナルを実質的に減じさせる、
請求項66に記載の質量分析方法。
【請求項68】
前記重み因子が、exp(-kyn)の式で表され、kおよびnは定数であり、そして、ある時間tの範囲内に前記第1検出器により検出されるイオン数は、前記第2検出器により検出されるイオン数とy異なり、yは、前記時間tの間に前記第1および第2検出器により検出される全イオン数の標準偏差である、請求項66または67に記載の質量分析方法。
【請求項69】
kが、(i) 0.5-2.0; (ii) 0.6-1.8; (iii) 0.7-1.6; (iv) 0.8-1.4; (v) 0.9-1.2; (vi) 0.95-1.1; および (vii) 1からなる群から選択される請求項68に記載の質量分析方法。
【請求項70】
nが、(i) 1.0-3.0; (ii) 1.2-2.8; (iii) 1.4-2.6; (iv) 1.6-2.4; (v) 1.8-2.2; (vi) 1.9-2.1; および (vii) 2からなる群から選択される請求項68または69に記載の質量分析方法。
【請求項71】
前記イオンビームが有意な割合の妨害イオンを含むと決定した場合、前記第1および/または前記第2検出器からのシグナルを、捨てるか、または、そうでなければ、比較的不正確であると判断する、請求項57〜70のいずれかに記載の質量分析方法。
【請求項72】
前記イオンビームが有意な割合の妨害イオンを含まないと決定した場合、前記第1および第2検出器からのシグナルを、合計するか、または、そうでなければ、比較的正確であると判断する、請求項57〜71のいずれかに記載の質量分析方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2006−506786(P2006−506786A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552831(P2004−552831)
【出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004658
【国際公開番号】WO2004/047143
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(504142097)マイクロマス ユーケー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】