説明

マスタシリンダ装置

【課題】車両に搭載するときのレイアウトの自由度を高めることができるマスタシリンダ装置を提供することを課題とする。
【解決手段】ブレーキ操作子への入力をブレーキ液圧に変換するマスタシリンダ1と、マスタシリンダ1に接続される給液穴3aを有するリザーバ3と、を備えるマスタシリンダ装置A1であって、マスタシリンダ1の基体10には、ピストンが挿入される第一シリンダ穴11a(マスタシリンダ穴)と、給液穴3aが接続されるリザーバユニオンポート13aと、一端はリザーバユニオンポート13aの底面に開口し、他端は第一シリンダ穴11aの内周面に開口している連通穴13dと、が形成され、リザーバユニオンポート13aの中心軸線O3は、第一シリンダ穴11aの中心軸線O1から離れた位置を通っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスタシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ブレーキシステムに用いられるマスタシリンダ装置は、ブレーキ操作子への入力をブレーキ液圧に変換するマスタシリンダと、マスタシリンダに接続されるリザーバと、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−099057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来のマスタシリンダ装置では、車両に搭載するときのレイアウトの自由度を高めることが望ましい。特に、ブレーキ操作子周辺に配置されるマスタシリンダの基体周辺の空間を有効に利用することが望まれていた。なお、マスタシリンダに取り付けられたECUのハウジングを避けるように、リザーバの形状を形成して取り付けた構成では、リザーバ形状の複雑化やレイアウト性が良くないという問題がある。
【0005】
本発明は、車両に搭載するときのレイアウトの自由度を高めることができるマスタシリンダ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、ブレーキ操作子への入力をブレーキ液圧に変換するマスタシリンダと、前記マスタシリンダに接続される給液穴を有するリザーバと、を備えるマスタシリンダ装置であって、前記マスタシリンダの基体には、ピストンが挿入されるマスタシリンダ穴と、前記給液穴が接続されるリザーバユニオンポートと、一端は前記リザーバユニオンポートの底面に開口し、他端は前記マスタシリンダ穴の内周面に開口している連通穴と、が形成されている。そして、前記リザーバユニオンポートの中心軸線は、前記マスタシリンダ穴の中心軸線から離れた位置を通っている。
【0007】
この構成では、リザーバが基体の一方側に寄ることになるため、リザーバの形状が基体に取り付けられた部品を避けるような複雑な形状で形成されていなくても、基体の他方側においてリザーバの側方に大きな空間を確保することができるため、基体周辺の空間を有効に利用することができる。
また、リザーバの形状を、例えば、リザーバの中心位置の下方に基体との接続部位を設けた簡素な形状とすることができる。
【0008】
前記リザーバユニオンポートの中心軸線を法線とする投影面に、前記リザーバユニオンポートの底面と前記マスタシリンダ穴とを投影したときに、前記リザーバユニオンポートの底面の少なくとも一部が前記マスタシリンダ穴に重なるように構成することが好ましい。
この構成では、リザーバユニオンポートとマスタシリンダ穴とを連通させる連通穴を、リザーバユニオンポートの軸方向に形成することができるため、基体に対して連通穴を容易に加工することができる。
【0009】
また、部品が収容されたハウジングが、前記基体に取り付けられている場合には、前記リザーバユニオンポートの中心軸線を、前記マスタシリンダ穴の中心軸線に対して、前記ハウジング側の反対側にずらすことで、ハウジングの設置スペースを確保して、ハウジングに接続されるケーブルの取り回しの自由度を高めることができる。
【0010】
また、前記ブレーキ操作子に擬似的な操作反力を発生させるストロークシミュレータが、前記基体に設けられている場合には、前記リザーバユニオンポートの開口部の中心軸線を、前記マスタシリンダ穴の中心軸線に対して、前記ストロークシミュレータ側にずらすことで、配管やケーブルが少ないストロークシミュレータ側の空間にリザーバを配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のマスタシリンダ装置では、マスタシリンダの基体周辺の空間を有効に利用することができるため、車両に搭載するときのレイアウトの自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一実施形態のマスタシリンダ装置を用いた車両用ブレーキシステムを示した全体構成図である。
【図2】第一実施形態の初動装置を車体固定部側から見た斜視図である。
【図3】第一実施形態の初動装置を配管接続部側から見た斜視図である。
【図4】第一実施形態の初動装置の断面図である。
【図5】第一実施形態におけるリザーバユニオンポートと第一シリンダ穴との位置関係を示した投影図である。
【図6】第二実施形態の初動装置の断面図である。
【図7】第二実施形態におけるリザーバユニオンポートと第一シリンダ穴との位置関係を示した投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。
各実施形態では、本発明のマスタシリンダ装置である初動装置を、図1に示す車両用ブレーキシステムAに適用した場合を例として説明する。
【0014】
[第一実施形態]
図1に示す車両用ブレーキシステムAは、原動機(エンジンやモータ等)の起動時に作動するバイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムと、非常時や原動機の停止時などに作動する油圧式のブレーキシステムの双方を備えるものである。
車両用ブレーキシステムAは、ブレーキペダル(ブレーキ操作子)Pの踏力によってブレーキ液圧を発生させる初動装置A1(特許請求の範囲における「マスタシリンダ装置」)と、電動モータ(図示略)を利用してブレーキ液圧を発生させるモータシリンダ装置A2と、車両挙動の安定化を支援するビークルスタビリティアシスト装置A3(以下「液圧制御装置A3」という)と、を備えている。
初動装置A1、モータシリンダ装置A2および液圧制御装置A3は、別ユニットとして構成されており、外部配管を介して連通している。
【0015】
車両用ブレーキシステムAは、エンジン(内燃機関)のみを動力源とする自動車のほか、モータを併用するハイブリッド自動車やモータのみを動力源とする電気自動車・燃料電池自動車などにも搭載することができる。
【0016】
初動装置A1は、タンデム式のマスタシリンダ1と、ストロークシミュレータ2と、リザーバ3と、常開型遮断弁4,5と、常閉型遮断弁6と、圧力センサ7,8と、メイン液圧路9a,9bと、連絡液圧路9c,9dと、分岐液圧路9eとを備えている。
【0017】
マスタシリンダ1は、ブレーキペダルPの踏力をブレーキ液圧に変換するものであり、第一シリンダ穴11a(特許請求の範囲における「マスタシリンダ穴」)の底面側に配置された第一ピストン1aと、プッシュロッドに接続された第二ピストン1bと、第一ピストン1aと第一シリンダ穴11aの底面との間に配置された第一リターンスプリング1cと、両ピストン1a,1bの間に配置された第二リターンスプリング1dとを備えている。
第二ピストン1bは、プッシュロッドを介してブレーキペダルPに連結されている。両ピストン1a,1bは、ブレーキペダルPの踏力を受けて摺動し、圧力室1e,1f内のブレーキ液を加圧する。圧力室1e,1fは、メイン液圧路9a,9bに通じている。
【0018】
ストロークシミュレータ2は、擬似的な操作反力を発生させるものであり、第二シリンダ穴11b内を摺動するピストン2aと、ピストン2aを付勢する大小二つのリターンスプリング2b,2cとを備えている。
ストロークシミュレータ2は、メイン液圧路9aおよび分岐液圧路9eを介して圧力室1eに通じており、圧力室1eで発生したブレーキ液圧によって作動する。
【0019】
リザーバ3は、ブレーキ液を貯溜する容器であり、マスタシリンダ1に接続される給液穴3a,3bと、メインリザーバ(図示略)から延びるホースが接続される管接続口3cと、を備えている。
【0020】
常開型遮断弁4,5は、メイン液圧路9a,9bを開閉するものであり、いずれもノーマルオープンタイプの電磁弁からなる。
一方の常開型遮断弁4は、メイン液圧路9aと分岐液圧路9eとの交差点からメイン液圧路9aと連絡液圧路9cとの交差点に至る区間においてメイン液圧路9aを開閉する。
他方の常開型遮断弁5は、メイン液圧路9bと連絡液圧路9dとの交差点よりも上流側においてメイン液圧路9bを開閉する。
【0021】
常閉型遮断弁6は、分岐液圧路9eを開閉するものであり、ノーマルクローズタイプの電磁弁からなる。
【0022】
圧力センサ7,8は、ブレーキ液圧の大きさを検知するものであり、メイン液圧路9a,9bに通じるセンサ装着穴(図示略)に装着されている。
一方の圧力センサ7は、常開型遮断弁4よりも下流側に配置されており、常開型遮断弁4が閉じられた状態(=メイン液圧路9aが遮断された状態)にあるときに、モータシリンダ装置A2で発生したブレーキ液圧を検知する。
他方の圧力センサ8は、常開型遮断弁5よりも上流側に配置されており、常開型遮断弁5が閉じられた状態(=メイン液圧路9bが遮断された状態)にあるときに、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧を検知する。
圧力センサ7,8で取得された情報は、図示せぬ電子制御ユニット(ECU)に出力される。
【0023】
メイン液圧路9a,9bは、マスタシリンダ1を起点とする液圧路である。メイン液圧路9a,9bの終点である出力ポート15a,15bには、液圧制御装置A3に至る管材Ha,Hbが接続されている。
【0024】
連絡液圧路9c,9dは、入力ポート15c,15dからメイン液圧路9a,9bに至る液圧路である。入力ポート15c,15dには、モータシリンダ装置A2に至る管材Hc,Hdが接続されている。
【0025】
分岐液圧路9eは、一方のメイン液圧路9aから分岐し、ストロークシミュレータ2に至る液圧路である。
【0026】
初動装置A1は、管材Ha,Hbを介して液圧制御装置A3に連通しており、常開型遮断弁4,5が開弁状態にあるときにマスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧は、メイン液圧路9a,9bおよび管材Ha,Hbを介して液圧制御装置A3に入力される。
【0027】
モータシリンダ装置A2は、図示は省略するが、シリンダ内を摺動するスレーブピストンと、電動モータおよび駆動力伝達部を有するアクチュエータ機構と、シリンダ内にブレーキ液を貯溜するリザーバとを備えている。
電動モータは、図示せぬ電子制御ユニットからの信号に基づいて作動する。駆動力伝達部は、電動モータの回転動力を進退運動に変換したうえでスレーブピストンに伝達する。スレーブピストンは、電動モータの駆動力を受けてシリンダ内を摺動し、シリンダ内のブレーキ液を加圧する。
モータシリンダ装置A2で発生したブレーキ液圧は、管材Hc,Hdを介して初動装置A1に入力され、連絡液圧路9c,9dおよび管材Ha,Hbを介して液圧制御装置A3に入力される。リザーバには、メインリザーバ(図示略)から延びるホースが接続される。
【0028】
液圧制御装置A3は、車輪のスリップを抑制するアンチロックブレーキ制御(ABS制御)、車両の挙動を安定化させる横滑り制御やトラクション制御などを実行し得るような構成を具備しており、管材を介してホイールシリンダWに接続されている。
なお、図示は省略するが、液圧制御装置A3は、電磁弁やポンプ等が設けられた液圧ユニット、ポンプを駆動するためのモータ、電磁弁やモータ等を制御するための電子制御ユニットなどを備えている。
【0029】
次に車両用ブレーキシステムAの動作について概略説明する。
車両用ブレーキシステムAが正常に機能する正常時には、常開型遮断弁4,5が弁閉状態となり、常閉型遮断弁6が弁開状態となる。
かかる状態でブレーキペダルPを操作すると、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧は、ホイールシリンダWに伝達されずにストロークシミュレータ2に伝達され、ピストン2aが変位することにより、ブレーキペダルPのストロークが許容されるとともに、擬似的な操作反力がブレーキペダルPに付与される。
【0030】
また、図示しないストロークセンサ等によってブレーキペダルPの踏み込みが検知されると、モータシリンダ装置A2の電動モータが駆動され、スレーブピストンが変位することによりシリンダ内のブレーキ液が加圧される。
図示せぬ電子制御ユニットは、モータシリンダ装置A2から出力されたブレーキ液圧(圧力センサ7で検知されたブレーキ液圧)とマスタシリンダ1から出力されたブレーキ液圧(圧力センサ8で検知されたブレーキ液圧)とを対比し、その対比結果に基づいて電動モータの回転数等を制御する。
【0031】
モータシリンダ装置A2で発生したブレーキ液圧は、液圧制御装置A3を介して各ホイールシリンダWに伝達され、各ホイールシリンダWが作動することにより各車輪に制動力が付与される。
【0032】
なお、モータシリンダ装置A2が作動しない状況(例えば、電力が得られない場合や非常時など)においては、常開型遮断弁4,5がいずれも弁開状態となり、常閉型遮断弁6が弁閉状態となるので、マスタシリンダ1で発生したブレーキ液圧は、ホイールシリンダWに伝達されるようになる。
【0033】
次に、初動装置A1の具体的な構造を説明する。
第一実施形態の初動装置A1は、前記の各種部品を図2の基体10の内部あるいは外部に組み付けるとともに、電気によって作動する部品(常開型遮断弁4,5、常閉型遮断弁6および圧力センサ7,8)をハウジング20で覆うことによって形成されている。
【0034】
基体10は、アルミニウム合金製の鋳造品であり、シリンダ部11と、車体固定部12と、リザーバ取付部13と、ハウジング取付部14と、配管接続部15とを備えている。また、基体10の内部には、メイン液圧路9a,9bや分岐液圧路9eとなる孔(図示略)などが形成されている。
【0035】
シリンダ部11には、マスタシリンダ用の第一シリンダ穴11aと、ストロークシミュレータ用の第二シリンダ穴11bとが形成されている。両シリンダ穴11a,11bは、いずれも有底円筒状であり、車体固定部12に開口するとともに、配管接続部15に向けて延在している。
第一シリンダ穴11aには、マスタシリンダ1(図1参照)を構成する部品(第一ピストン1a、第二ピストン1b、第一リターンスプリング1cおよび第二リターンスプリング1d)が挿入され、第二シリンダ穴11bには、ストロークシミュレータ2を構成する部品(ピストン2aおよびリターンスプリング2b,2c)が挿入される。
【0036】
車体固定部12は、トーボードなどの車体に固定される部位であり、基体10の後面部に形成されている。車体固定部12は、フランジ状を呈している。車体固定部12の周縁部(シリンダ部11から張り出した部分)には、ボルト挿通孔12aが形成されている。
【0037】
リザーバ取付部13は、リザーバ3の取付座となる部位であり、基体10の上面部に形成されている。リザーバ取付部13には、二つのリザーバユニオンポート13a,13bと、連結部13cと、が形成されている。
【0038】
リザーバユニオンポート13a,13bは、いずれも円筒状を呈しており、シリンダ部11の上面に突設されている。リザーバユニオンポート13a,13bは、図4に示すように、その底面から第一シリンダ穴11aに向かって延びる連通穴13dを介して、第一シリンダ穴11aと連通している。
なお、二つのリザーバユニオンポート13a,13bの構成は同じであるため、以下の説明では、図4に示すリザーバユニオンポート13aについて詳細に説明し、他のリザーバユニオンポート13bの説明は省略する。
【0039】
第一実施形態の連通穴13dは、リザーバユニオンポート13aの軸方向に沿って延ばされている。連通穴13dの上端はリザーバユニオンポート13aの底面に開口し、下端は第一シリンダ穴11aの内周面に開口している。
【0040】
リザーバユニオンポート13aの上部空間には、リザーバ3の下面に突設された円筒状の給液部3hが挿入されており、リザーバユニオンポート13aの上端には、リザーバ3の容器本体3eが載置される。
リザーバ3の給液部3hには、容器本体3eの貯溜空間3gに連通する給液穴3aが上下方向に貫通している。
【0041】
貯溜空間3gと第一シリンダ穴11aとは、給液穴3a、リザーバユニオンポート13aの下部空間、連通穴13dを介して接続されている。
【0042】
連結部13cは、リザーバユニオンポート13a,13bの間に形成されている。連結部13cは、シリンダ部11の上面に突設されており、ハウジング取付部14の上端部と対向している。
【0043】
ハウジング取付部14は、ハウジング20の取付座となる部位であり、基体10の側面部に形成されている。ハウジング取付部14は、図3に示すように、フランジ状を呈している。
ハウジング取付部14の上端部および下端部は、シリンダ部11の上下に張り出している。ハウジング取付部14の上端部および下端部(シリンダ部11から張り出した部分)には、雌ネジが形成されている。
図示は省略するが、ハウジング取付部14には、三つの弁装着穴と二つのセンサ装着穴とが形成されている。三つの弁装着穴には、常開型遮断弁4,5および常閉型遮断弁6(図1参照)が組み付けられ、二つのセンサ装着穴には、圧力センサ7,8(図1参照)が組み付けられる。
【0044】
配管接続部15は、管取付座となる部位であり、基体10の前面部に形成されている。配管接続部15には、二つの出力ポート15a,15bと、二つの入力ポート15c,15dが形成されている。
出力ポート15a,15bには、液圧制御装置A3に至る管材Ha,Hb(図1参照)が接続され、入力ポート15c,15dには、モータシリンダ装置A2に至る管材Hc,Hd(図1参照)が接続される。
【0045】
ハウジング20は、ハウジング取付部14に組み付けられた部品(常開型遮断弁4,5、常閉型遮断弁6および圧力センサ7,8)を液密に覆うハウジング本体21と、ハウジング本体21の周囲に形成されたフランジ部22と、ハウジング本体21に突設された二つのコネクタ23,24とを備えている。
【0046】
ハウジング本体21の内部には、図示は省略するが、常開型遮断弁4,5および常閉型遮断弁6を駆動するための電磁コイルが収容されているほか、電磁コイルや圧力センサ7,8に至るバスバーなどが収容されている。
【0047】
フランジ部22は、ハウジング取付部14に圧着される部位である。フランジ部22には、ハウジング取付部14の雌ネジに合わせてネジ挿通孔が形成されている。
【0048】
コネクタ23,24は、いずれも筒状であり、ハウジング本体21の前面に突設されている。コネクタ23,24には、電磁コイルに通じるケーブルと、圧力センサ7,8に通じるケーブルとが接続される。
【0049】
リザーバ3は、給液穴3a,3b(図1参照)のほか、図2に示すように、管接続口3cと、連結フランジ3dとを備えている。本実施形態のリザーバ3の形状は、容器本体3eの中心位置の下方に、基体10との接続部位を設けた簡素な形状となっている。
管接続口3cは、ブレーキ液を貯溜する容器本体3eから前方に向けて突出している。管接続口3cには、メインリザーバ(図示略)から延びるホースが接続される。
連結フランジ3dは、容器本体3eの下面に突設されている。連結フランジ3dは、リザーバ取付部13の連結部13cに重ねられ、スプリングピン3fによって連結部13cに固定される。
【0050】
第一実施形態では、図5に示すように、二つのリザーバユニオンポート13a,13bの底面の中心位置O2,O2を結ぶ直線は、第一シリンダ穴11aの中心軸線O1と平行である。なお、図5は、リザーバユニオンポート13a,13bの中心軸線O3を法線とする投影面(仮想平面)に、リザーバユニオンポート13a,13bの底面と第一シリンダ穴11aの壁面とを投影した図である。
【0051】
リザーバユニオンポート13a,13bの中心位置O2,O2は、前記投影面において、ハウジング20から遠ざかるように、第一シリンダ穴11aの中心軸線O1に対して、ストロークシミュレータ2側にずれている。つまり、前記投影面において、リザーバユニオンポート13a,13bの中心位置O2,O2が、第一シリンダ穴11aの中心軸線O1に重ならないように配置されている。
【0052】
これにより、図4に示すように、リザーバ3は基体10のストロークシミュレータ2側に寄せて取り付けられている。
したがって、前記投影面において、リザーバユニオンポート13a,13bの中心位置O2,O2を、第一シリンダ穴11aの中心軸線O1に重ねて配置した構成、つまり、中心軸線O3が中心軸線O1を通る構成に比べて、基体10のハウジング20側においてリザーバ3の側方の空間Vが大きくなっている。
【0053】
また、図5に示すように、前記投影面において、リザーバユニオンポート13a,13bの底面全体が第一シリンダ穴11aに重なっている。当然に、前記投影面においては、連通穴13dも第一シリンダ穴11aに重なっている。
【0054】
以上のような第一実施形態の初動装置A1(マスタシリンダ装置)では、図4に示すように、リザーバ3が基体10のストロークシミュレータ2側に寄ることで、リザーバ3の容器本体3eの形状が、基体10に取り付けられたハウジング20を避けるような複雑な形状で形成されていなくても、基体10のハウジング20側においてリザーバ3の側方の空間Vが大きくなる。したがって、基体10周辺の空間を有効に利用することができるため、初動装置A1を車両に搭載するときのレイアウトの自由度を高めることができる。
【0055】
また、リザーバ3は、基体10の周辺空間において配管やケーブルが少ないストロークシミュレータ2側(ハウジング20側の反対側)に寄せられているため、ハウジング20の設置スペースを確保して、ハウジング20に接続されるケーブルの取り回しの自由度を高めることができる。
【0056】
また、図5に示すように、前記投影面において、リザーバユニオンポート13a,13bの底面が第一シリンダ穴11aに重なっており、連通穴13dがリザーバユニオンポート13a,13bの軸方向に形成されているため、基体10に対して連通穴13dを容易に形成することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記第一実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、第一実施形態では、図5に示すように、前記投影面において、リザーバユニオンポート13a,13bの底面全体が第一シリンダ穴11aに重なっているが、リザーバユニオンポート13a,13bの底面の少なくとも一部が第一シリンダ穴11aに重なるように構成し、その重複領域に連通穴13dを形成してもよい。
さらに、前記投影面において、リザーバユニオンポート13a,13bの底面が第一シリンダ穴11aに重なっていなくてもよい。
【0058】
また、第一実施形態では、連通穴13dの軸方向がリザーバユニオンポート13a,13bの軸方向に平行に形成されているが、連通穴13dの軸方向をリザーバユニオンポート13a,13bの軸方向に対して傾斜させてもよい。
また、リザーバユニオンポート13a,13bの軸方向が図4の上下方向(鉛直方向)に形成されているが、リザーバユニオンポート13a,13bの軸方向を傾斜させてもよい。
【0059】
[第二実施形態]
第二実施形態の初動装置は、第一実施形態の初動装置A1(図4参照)と略同様の構成であり、図6および図7に示すように、リザーバユニオンポート13a,13bの中心位置O4,O4(中心軸線O5)と、第一シリンダ穴11aの中心軸線O1との間隔L2が、第一実施形態におけるリザーバユニオンポート13a,13bの中心位置O2,O2(中心軸線O3)と、第一シリンダ穴11aの中心軸線O1との間隔L1(図4参照)よりも大きい点が異なっている。
【0060】
第二実施形態の初動装置A1では、図6に示すように、リザーバ3が基体10のストロークシミュレータ2側に大きく寄せられており、基体10のハウジング20側においてリザーバ3の側方の空間Vが大きいため、基体10周辺の空間をより有効に利用することができる。
【0061】
また、図7に示すように、リザーバユニオンポート13a,13bの中心軸線O5を法線とする投影面において、連通穴13dは、リザーバユニオンポート13a,13bの底面においてハウジング20側の側端部に形成されるとともに、第一シリンダ穴11aのストロークシミュレータ2側の側端部に配置されている。したがって、基体10に対する連通穴13dの加工性を損なうことなく、リザーバユニオンポート13a,13bをストロークシミュレータ2側に大きく寄せることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 マスタシリンダ
2 ストロークシミュレータ
3 リザーバ
3a,3b 給液穴
3c 連結フランジ
3d 管接続口
3e 容器本体
4,5 常開型遮断弁
6 常閉型遮断弁
7,8 圧力センサ
9a,9b メイン液圧路
9c 分岐液圧路
10 基体
11 シリンダ部
11a 第一シリンダ穴(マスタシリンダ穴)
11b 第二シリンダ穴
12 車体固定部
13 リザーバ取付部
13a,13b リザーバユニオンポート
13c 連結部
14 ハウジング取付部
15 配管接続部
15a,15b 出力ポート
15c,15d 入力ポート
20 ハウジング
A 車両用ブレーキシステム
A1 初動装置(マスタシリンダ装置)
A2 モータシリンダ装置
A3 液圧制御装置
P ブレーキペダル(ブレーキ操作子)
W ホイールシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ操作子への入力をブレーキ液圧に変換するマスタシリンダと、
前記マスタシリンダに接続される給液穴を有するリザーバと、を備えるマスタシリンダ装置であって、
前記マスタシリンダの基体には、
ピストンが挿入されるマスタシリンダ穴と、
前記給液穴が接続されるリザーバユニオンポートと、
一端は前記リザーバユニオンポートの底面に開口し、他端は前記マスタシリンダ穴の内周面に開口している連通穴と、が形成されており、
前記リザーバユニオンポートの中心軸線が、前記マスタシリンダ穴の中心軸線から離れた位置を通ることを特徴とするマスタシリンダ装置。
【請求項2】
前記リザーバユニオンポートの中心軸線を法線とする投影面に、前記リザーバユニオンポートの底面と前記マスタシリンダ穴とを投影したときに、前記リザーバユニオンポートの底面の少なくとも一部が前記マスタシリンダ穴に重なることを特徴とする請求項1に記載のマスタシリンダ装置。
【請求項3】
前記基体には、部品が収容されたハウジングが取り付けられており、
前記リザーバユニオンポートの中心軸線が、前記マスタシリンダ穴の中心軸線に対して、前記ハウジング側の反対側にずれていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマスタシリンダ装置。
【請求項4】
前記基体には、前記ブレーキ操作子に擬似的な操作反力を発生させるストロークシミュレータが設けられており、
前記リザーバユニオンポートの開口部の中心軸線が、前記マスタシリンダ穴の中心軸線に対して、前記ストロークシミュレータ側にずれていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のマスタシリンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−112083(P2013−112083A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258350(P2011−258350)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】