説明

マスターバッチペレット、およびその作製方法

【課題】作製時に有毒ガスの発生を抑え、作製機等の腐食を防ぐことのできるマスターバッチペレット、およびその作製方法を提供する。
【解決手段】マスターバッチペレットは、樹脂100質量部に対して、フッ素系界面活性剤が0.45〜5質量部、炭化水素系界面活性剤が4〜48質量部配合される。また、上記樹脂は、低密度ポリエチレン系樹脂および/またはエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂からなり、上記炭化水素系界面活性剤は、多価アルコールと脂肪酸との部分エステル類、或はそれらのアルキレンオキサイド付加化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスターバッチペレット、およびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂フィルムを外壁とし金属パイプ等を骨組みとして作られるハウスを利用して農作物の栽培を行う、いわゆるハウス栽培がある。このようなハウスで用いられる外壁として、例えば、ポリ塩化ビニルフィルム等が知られているが、耐候性やハウスの保温性の観点から、ポリオレフィン系樹脂からなるフィルム(以下、単にポリオレフィン系樹脂フィルムと称す)に近年入れ替わりつつある。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂とは、α−オレフィンなどの単独あるいは共重合体である。なお、ポリオレフィン系樹脂の一例として、例えば、低密度ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等を挙げることができる。そして、これらのポリオレフィン系樹脂を射出成形、押出成形、ブロー成形、インフレーション成形等の方法で成形することにより、ハウスの外壁となるポリオレフィン系樹脂フィルムが作製される。
【0004】
ところで、ハウス栽培を行う際、ハウス内外で温度差が生じて霧が発生すると、当該フィルム内側に水滴が生じ光透過性が低下したり、水滴が農作物に落下して成長を阻害したりすることがある。つまり、ハウスの外壁となるポリオレフィン系樹脂フィルムは、ハウスの内外における温度差が大きくなったときに当該ハウス内の水蒸気が霧となってハウス内に満たされ、例えばハウス内で栽培している農作物が濡れることを防止したり、ハウスの内側(ポリオレフィン系樹脂フィルムの内側)に水蒸気が結露して当該ハウス内の農作物に水滴が滴下するのを防止したりする性能を備えていることが望ましい。そのため、ハウスの外壁となるポリオレフィン系樹脂フィルムには、当該ポリオレフィン系樹脂フィルムに上述したような性能を持たせるため、一定量の各種界面活性剤が配合されている。なお、以下の説明において、ハウスの外壁となるポリオレフィン系樹脂フィルムのことを単に農業用フィルムと称す。
【0005】
上記農業用フィルムに各種界面活性剤を配合する方法として、ポリオレフィン系樹脂に上記各種界面活性剤を直接配合する方法がある。また一方で、上記各種界面活性剤を配合したマスターバッチペレットを予め製造し、農業用フィルムの成形時に、当該農業用フィルムのベースとなる樹脂(ポリオレフィン系樹脂)に当該マスターバッチペレットを配合する方法が知られている。なお、マスターバッチペレットは、マスターペレット、マスターバッチと称すこともある。
【0006】
なお、一般的に、農業用フィルムに上記各種界面活性剤を配合する方法として、後者の方法、つまり、マスターバッチペレットを予め製造し、農業用フィルムのベースとなる樹脂(ポリオレフィン系樹脂)に当該マスターバッチペレットを配合する方法が多く用いられている。この理由としては、農業用フィルムのベースとなる樹脂に上記各種界面活性剤を直接配合する場合に比べて、マスターバッチペレットを用いる方法の方が、農業用フィルムのベースとなる樹脂と上記各種界面活性剤との分散性が向上したり、農業用フィルムのベースとなる樹脂に精度良く上記各種界面活性剤を配合することができたりする利点があるからである。
【0007】
なお、界面活性剤を配合したマスターバッチの一例として、例えば、特許文献1に開示されている技術(マスターバッチと当該マスターバッチの製造方法)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−335568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に開示されている技術は、熱可塑性樹脂にフッ素系界面活性剤と塩基性無機化合物とが配合されているマスターバッチである。なお、上記特許文献1に開示されているマスターバッチを従来のマスターバッチと称する。
【0010】
具体的には、従来のマスターバッチは、熱可塑性樹脂100質量部に対してフッ素系化合物(フッ素系界面活性剤)が1〜70質量部、塩基性無機化合物が0.01質量部で配合されている。また、上記特許文献1に開示されている技術は、当該マスターバッチをミキサーで混合し、押出成形機を用いて混練溶融し、ペレット状にする製造方法である。
【0011】
一般的に、フッ素系界面活性剤が、ある程度高い割合でマスターバッチペレットに含有されている場合、当該マスターバッチペレットを混練溶融する際に、当該フッ素系界面活性剤が分解して、フッ化水素が発生することが知られている。そのため、上記特許文献1に開示されている従来のマスターバッチには、当該マスターバッチを混練溶融する際に発生する酸(フッ化水素)を中和するために塩基性無機化合物が配合されている。
【0012】
言い換えると、従来のマスターバッチには、当該マスターバッチを作製する際に、フッ素系界面活性剤が分解し、有毒なフッ化水素が大量に発生したり、さらに発生したフッ化水素により押出成形機を腐食させたりする問題点があった。
【0013】
本発明は上記問題点を解消するものであって、作製時に腐食ガスの発生を抑え、作製機等の腐食を防ぐことのできるマスターバッチペレット、およびその作製方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記のような目的を達成するために、本発明は以下の特徴を有している。すなわち第1の発明は、樹脂とフッ素系界面活性剤と炭化水素系界面活性剤とを含有するマスターバッチペレットである。上記マスターバッチペレットは、樹脂100質量部に対して、フッ素系界面活性剤が0.45〜5質量部、炭化水素系界面活性剤が4〜48質量部配合される。また、上記樹脂は、低密度ポリエチレン系樹脂および/またはエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂からなり、上記炭化水素系界面活性剤は、多価アルコールと脂肪酸との部分エステル類、或はそれらのアルキレンオキサイド付加化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0015】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記炭化水素系界面活性剤の配合量は、上記フッ素系界面活性剤の配合量の少なくとも8倍以上であることを特徴とする。
【0016】
第3の発明は、樹脂とフッ素系界面活性剤と炭化水素系界面活性剤とを含有するマスターバッチペレットの作製方法である。上記作製方法は、二軸押出機の第1ホッパーに投入された低密度ポリエチレン系樹脂および/またはエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂からなる樹脂を上記二軸押出機で溶融状態にする第1の工程と、当該二軸押出機において上記第1ホッパーより下流の第2ホッパーに投入されたフッ素系界面活性剤および炭化水素系界面活性剤を上記二軸押出機に注入する第2の工程と、上記二軸押出機で上記樹脂と上記フッ素系界面活性剤と上記炭化水素系界面活性剤とを混練する第3の工程と、当該第3の工程で混練された上記樹脂と上記フッ素系界面活性剤と上記炭化水素系界面活性剤との混合物を押出しペレット化する第4の工程とを備える。
【0017】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記第2ホッパーに投入される上記炭化水素系界面活性剤は、多価アルコールと脂肪酸との部分エステル類、或はそれらのアルキレンオキサイド付加化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0018】
第5の発明は、上記第3または第4の発明において、上記第2の工程は、加温された上記炭化水素系界面活性剤が上記二軸押出機に注入されることを特徴とする。
【0019】
第6の発明は、上記第3または第4の発明において、上記第2の工程は、50℃〜100℃に加温された上記フッ素系界面活性剤および上記炭化水素系界面活性剤が上記二軸押出機に注入されることを特徴とする。
【0020】
第7の発明は、樹脂とフッ素系界面活性剤と炭化水素系界面活性剤とを含有するマスターバッチペレットの作製方法である。上記方法は、樹脂100質量部に対して、フッ素系界面活性剤が0.45〜5質量部、炭化水素系界面活性剤が4〜48質量部となるように、上記樹脂と上記フッ素系界面活性剤と上記炭化水素系界面活性剤とを溶融混練し押出しペレット化する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、作製時に腐食ガスの発生を抑え、作製機等の腐食を防ぐことのできるマスターバッチペレット、およびその作製方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本出願人は鋭意検討した結果、ポリオレフィン系樹脂にフッ素系界面活性剤および炭化水素系界面活性剤とを配合したマスターバッチペレットを作製した。具体的には、本発明に係るマスターバッチペレットは、ポリオレフィン系樹脂(低密度ポリエチレン系樹脂および/またはエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)100質量部に対して、フッ素系界面活性剤が0.45〜5質量部、炭化水素系界面活性剤が4〜48質量部配合されている。なお、本発明に係るマスターバッチペレットにおける炭化水素系界面活性剤の配合量は、フッ素系界面活性剤の配合量の少なくとも8倍以上が好ましく、より好ましくは20倍以上である。
【0023】
なお、マスターバッチペレットは、マスターペレット、マスターバッチと称すこともあるが、本説明では、マスターバッチペレットと称す。
【0024】
以下、本発明を詳説に説明するがこれらの説明は本発明を限定するものではない。従って、本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【0025】
本発明に係るマスターバッチペレットにおけるポリオレフィン系樹脂は、例えば、低密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等である。なお、本発明に係るマスターバッチペレットにおけるポリオレフィン系樹脂は、上述した樹脂を単独または2種以上使用してもよいが、マスターバッチペレットの成形性等を考慮すると、上記ポリオレフィン系樹脂として、酢酸ビニル含量が5%〜15%程度のエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(以下、EVA樹脂と称す)が好ましい。
【0026】
上記フッ素系界面活性剤は、例えば、アニオン性界面活性剤(パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなど)、カチオン性界面活性剤(パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩など)、ノニオン界面活性剤(パーフルオロアルキル基および親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するウレタンなど)、両性界面活性剤(パーフルオロアルキルベタインなど)、非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。なお、本発明に係るマスターバッチペレットには、フッ素系界面活性剤として、上述した各種界面活性剤を単独で用いてもよいし、2種以上適宜組み合わせてもよい。
【0027】
また、本発明に係るマスターバッチペレットのフッ素系界面活性剤として、例えば、AGCセイミケミカル株式会社製、ダイキン工業株式会社製の公知のフッ素系界面活性剤を用いることができる。なお、商品名等の詳細は後述する。
【0028】
次に、上記炭化水素系界面活性剤は、多価アルコールと脂肪酸とからなる多価アルコール部分エステル系化合物、あるいはそれらのアルキレンオキサイド付加化合物等を挙げることができる。より具体的には、例えば、ソルビタン系界面活性剤(ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノベヘネートなど)、グリセリン系界面活性剤(グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノステアレート、ポリグリセリンラウリン酸エステル、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステルなど)、ポリエチレングリコール系界面活性剤(ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテルなど)、トリメチロールプロパン系界面活性剤(トリメチロールプロパンモノステアレート、トリメチロールプロパンジステアレート、トリメチロールプロパントリステアレートなど)、ペンタエリスリトール系界面活性剤(ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレートなど)、等が挙げられる。本発明に係るマスターバッチペレットには、炭化水素系界面活性剤として、上述した各種界面活性剤を単独で用いてもよいし、2種以上適宜組み合わせてもよい。
【0029】
また、本発明に係るマスターバッチペレットの炭化水素系系界面活性剤として、例えば、理研ビタミン株式会社製の公知の炭化水素系界面活性剤を用いることができる。なお、商品名等の詳細は後述する。
【0030】
なお、本発明に係るマスターバッチペレットには、フッ素系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤に加えて、必要に応じて可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、染料等の添加剤が適宜配合されてもよい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例および比較例に基づき更に詳細に本発明を説明するが、本発明の実施例のみに限定されるのではなく、本発明の効果を損なわない量的質的範囲で、各含有成分の組成の組み合わせや配合量を変更してもよい。
【0032】
表1に記載した配合量に従い、実施例1〜9、および比較例1〜6それぞれに係るマスターバッチペレットを作製し、作製機の腐食について評価した。なお、表1の実1〜9とは実施例1〜9をそれぞれ示し、比1〜6とは比較例1〜6をそれぞれ示す。
【0033】
(マスターバッチペレットの配合成分)
まず、実施例1〜9、および比較例1〜6それぞれに係るマスターバッチペレットの配合成分について説明する。
【0034】
実施例1〜9、および比較例1〜6それぞれに係るマスターバッチペレットの配合成分である、オレフィン系樹脂(樹脂成分)、フッ素系界面活性剤、および炭化水素系界面活性剤は、具体的には以下の通りである。なお、表1の樹脂成分、フッ素系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤は商品名で示し、数値は樹脂成分100質量部に対するフッ素系界面活性剤および炭化水素系界面活性剤の割合を示した。
【0035】
〈樹脂成分〉
NUC−8133:日本ユニカー株式会社製の高圧法低密度ポリエチレン樹脂(密度0.923g/cm3、MFR=1.5g/10分)
ウルトラセン630:東ソー株式会社製のEVA樹脂(酢酸ビニル含量15重量%、MFR=1.5g/10min、融点90℃)
NUC−3250:日本ユニカー株式会社製のEVA樹脂(酢酸ビニル含量5重量%、MFR=1.5g/10min、融点105℃)
【0036】
〈フッ素系界面活性剤〉
DS−403N:ダイキン工業株式会社製のフッ素系界面活性剤
DS−403:ダイキン工業株式会社製のフッ素系界面活性剤
DS−401:ダイキン工業株式会社製のフッ素系界面活性剤
【0037】
また、上記各フッ素系界面活性剤の他に、以下のフッ素系界面活性剤を用いることもできる。
S−121:AGCセイミケミカル株式会社製のフッ素系界面活性剤(カチオン性)
S−131:AGCセイミケミカル株式会社製のフッ素系界面活性剤(両性)
S−141:AGCセイミケミカル株式会社製のフッ素系界面活性剤(非イオン性)
S−381:AGCセイミケミカル株式会社製のフッ素系界面活性剤(非イオン性)
S−382:AGCセイミケミカル株式会社製のフッ素系界面活性剤
【0038】
なお、実施例1〜9、および比較例1〜6それぞれに係るマスターバッチペレットの配合成分である炭化水素系界面活性剤は、表2の処方例1〜4に示すように複数種類の炭化水素系界面活性剤を組み合わせている。具体的には、表2、および以下の通りである。なお、表2の炭化水素系界面活性剤は商品名で示し、数値は重量%である。
【0039】
〈炭化水素系界面活性剤〉
A−631E:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(ソルビタンパルミテート・エチレンオキサイド3モル付加物、融点44℃、HLB値=8.1)
A−648E:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(ソルビタンステアレート・エチレンオキサイド1モル付加物、融点45℃、HLB値=6.9)
AF−004:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(ソルビタンパルミテート・プロピオンオキサイド付加物、融点47℃、HLB値=6.1)
AF−75:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(トリグリセリンステアレート、融点56℃、HLB値=5.6)
O−71−D:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(ジグリセリンオレート、液状、HLB値=5.7)
P−300:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(バルミチン酸の純度が85%のソルビタンパルミテート、融点55℃〜61℃、HLB値=5.6)
SP−250:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(バルミチン酸の純度が70%のソルビタンパルミテート、融点50℃〜56℃、HLB値=4.8)
【0040】
なお、上記各炭化水素系界面活性剤の他に、以下の炭化系界面活性剤を用いることもできる。
A−7412:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(トリグリセリンモノステアレート、融点57℃、HLB値=6.3)
A−7414:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(トリグリセリンジステアレート、融点56℃、HLB値=5.6)
A−7546:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(グリセリンオレート)
AF−75:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(トリグリセリンステアレート、融点56℃、HLB値=5.6)
HC−100:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(ヒドロキシステアリン酸グリセリル)
J−6081:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(ポリグリセリンステアレート、液状、HLB値=9)
L−71−D:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(ジグリセリンラウレート、液状、HLB値=7.3)
M−300:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(グリセリンモノラウレート、融点54℃〜60℃、HLB値=5.4)
OL−100E:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(グリセリンモノオレート、融点37℃〜43℃、HLB値=4.3)
P−100S:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(高純度パルチミン酸モノグリセライド、融点72℃、HLB値=4.3)
S−100A:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(グリセリンモノステアレート、融点63℃〜68℃、HLB値=4.3)
S−200:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(グリセリンモノ・ジステアレート、融点56℃〜62℃、HLB値=3.2)
S−300W:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(ソルビタンステアレート(ソルビトールエステル型)、融点59℃〜63℃、HLB値=5.4)
S−60:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(ソルビタンステアレート(ソルビタンエステル型)、融点50℃〜56℃、HLB値=5)
S−71−D:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(ジグリセリンステアレート、融点55℃〜61℃、HLB値=5.7)
S−72:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(ジグリセリンジステアレート、融点53℃〜59℃、HLB値=4.4)
SA−3355:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(グリセリンステアレート)
S−95:理研ビタミン株式会社製の炭化水素系界面活性剤(グリセリンステアレート、融点55℃〜57℃、HLB値=1.9)
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
(マスターバッチペレットの作製方法)
次に、実施例1〜9、および比較例1〜6それぞれに係るマスターバッチペレットの作製方法について説明する。
【0044】
表1に示した樹脂成分を作製機のホッパーから投入し、上述した各樹脂成分が溶融状態となった後、当該作製機の中間部より、約60〜70℃に加温した上述のフッ素系界面活性剤および炭化水素系界面活性剤を添加した。そして、上記作製機で溶融混練し、当該作製機の先端でホットカットして、実施例1〜9、および比較例1〜6それぞれに係るマスターバッチペレットを作製した。
作製機:株式会社日本製鋼所社製の二軸押出機、商品名TEX65αII
【0045】
(評価)
表1に従って、上記作製機を用いて実施例1〜9、および比較例1〜6それぞれに係るマスターバッチペレットを作製した後、14日後の当該作製機のシリンダーおよびスクリューの色の変化を評価した。具体的には、目視により以下の基準で評価した。
○:変色なし
△:部分的に変色あり
×:全体的に変色
【0046】
表1の「評価」欄に示されている通り、実施例1〜9それぞれに係るマスターバッチペレットの何れも作製機のシリンダーおよびスクリューの色の変化は見られず、シリンダーおよびスクリューは腐食していないことが確認できた。
【0047】
一方、表1の「評価」欄に示されている通り、比較例1〜4それぞれに係るマスターバッチペレットの何れも作製機のシリンダーおよびスクリューの色の変化が確認された。また、特に、比較例1に係るマスターバッチペレットについては、作製機のシリンダーおよびスクリューの全体的に色の変化が確認された。これは、マスターバッチペレット中に配合されているフッ素系界面活性剤が作製機で溶融混練される際に分解し、フッ化水素やジオキサン等が発生したためであると考えられる。
【0048】
また、比較例5に係るマスターバッチペレットは、作製機のシリンダーおよびスクリューの色の変化は見られなかったが、生産性(コスト)に問題がある。つまり、例えば、マスターバッチペレットを用いて農業用フィルムを作製し、当該農業用フィルムがハウスの外壁となる場合、当該ハウス内で栽培している農作物が濡れることを防止したり、ハウスの内側(農業用フィルムの内側)に水蒸気が結露して当該ハウス内の農作物に水滴が滴下するのを防止したりする性能を備えていることが求められる。そのため、農業用フィルムには一定量のフッ素系界面活性剤が配合される必要がある。従って、比較例5に係るマスターバッチペレットは配合されているフッ素系界面活性剤の配合量が比較的少ないため、農業用フィルムにおける一定量のフッ素系界面活性剤を保つために当該農業用フィルムを作製する際に、多くのマスターバッチペレットを必要とするからである。
【0049】
なお、比較例6に係るマスターバッチペレットは、炭化水素系界面活性剤の配合量が多いため、上記作製機を用いて押出することができなかった。
【0050】
このように、実施例1〜9それぞれに係るマスターバッチペレットは、作製時に腐食ガスの発生を抑え、作製機等の腐食を防ぐことができる。また、実施例1〜9それぞれに係るマスターバッチペレットにはフッ素系界面活性剤と炭化水素系界面活性剤とが配合されているため当該マスターバッチペレットを農業用フィルムの作製に用いれば、例えば、フッ素系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤の一方のみしか配合されていないマスターバッチペレットを用いて農業用フィルムを作製した場合と比べ、上述したような農業用フィルムに求められる性能をより得ることができる。また、実施例1〜9それぞれに係るマスターバッチペレットにはフッ素系界面活性剤と炭化水素系界面活性剤とが配合されているため、農業用フィルムを作製する際に、フッ素系界面活性剤と炭化水素系界面活性剤とを別々に配合する手間がなくなり、生産性が向上する。
【0051】
なお、実施例1〜9それぞれに係るマスターバッチペレットを用いて農業用フィルムを作製してもよい。以下、実施例1〜9それぞれに係るマスターバッチペレットを用いた農業用フィルムについて説明する。
【0052】
実施例1〜9それぞれに係るマスターバッチペレットを用いた農業用フィルムは、当該農業用フィルムのベースとなる樹脂(以下、単にベース樹脂と称す)に実施例1〜9それぞれに係るマスターバッチペレットを単独または2種以上、配合して製膜加工することによって作製される。
【0053】
なお、上記ベース樹脂としては、透明で柔軟であるものが好ましく、例えば、EVA樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0054】
また、本発明に係る農業用フィルムにおけるベース樹脂は、これら樹脂を単独または2種以上使用してもよいし、必要に応じて上記ベース樹脂に可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、染料等の添加剤を適宜配合してもよい。なお、成形性等を考慮すると、上記ベース樹脂として、酢酸ビニル含量が10%〜15%程度のエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係るマスターバッチペレット、およびその作製方法は、例えば、金属パイプ等を骨組みとして作られるハウスの外壁となるフィルム等を作製する際のマスターバッチペレット等に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂とフッ素系界面活性剤と炭化水素系界面活性剤とを含有するマスターバッチペレットであって、
前記マスターバッチペレットは、樹脂100質量部に対して、フッ素系界面活性剤が0.45〜5質量部、炭化水素系界面活性剤が4〜48質量部配合され、
前記樹脂は、低密度ポリエチレン系樹脂および/またはエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂からなり、
前記炭化水素系界面活性剤は、多価アルコールと脂肪酸との部分エステル類、或はそれらのアルキレンオキサイド付加化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、マスターバッチペレット。
【請求項2】
前記炭化水素系界面活性剤の配合量は、前記フッ素系界面活性剤の配合量の少なくとも8倍以上であることを特徴とする、請求項1に記載のマスターバッチペレット。
【請求項3】
樹脂とフッ素系界面活性剤と炭化水素系界面活性剤とを含有するマスターバッチペレットの作製方法であって、
二軸押出機の第1ホッパーに投入された低密度ポリエチレン系樹脂および/またはエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂からなる樹脂を前記二軸押出機で溶融状態にする第1の工程と、
前記二軸押出機において前記第1ホッパーより下流の第2ホッパーに投入されたフッ素系界面活性剤および炭化水素系界面活性剤を前記二軸押出機に注入する第2の工程と、
前記二軸押出機で前記樹脂と前記フッ素系界面活性剤と前記炭化水素系界面活性剤とを混練する第3の工程と、
前記第3の工程で混練された前記樹脂と前記フッ素系界面活性剤と前記炭化水素系界面活性剤との混合物を押出しペレット化する第4の工程とを備える、マスターバッチペレットの作製方法。
【請求項4】
前記第2ホッパーに投入される前記炭化水素系界面活性剤は、多価アルコールと脂肪酸との部分エステル類、或はそれらのアルキレンオキサイド付加化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3に記載のマスターバッチペレットの作製方法。
【請求項5】
前記第2の工程は、加温された前記炭化水素系界面活性剤が前記二軸押出機に注入されることを特徴とする、請求項3または4に記載のマスターバッチペレットの作製方法。
【請求項6】
前記第2の工程は、50℃〜100℃に加温された前記フッ素系界面活性剤および前記炭化水素系界面活性剤が前記二軸押出機に注入されることを特徴とする、請求項3または4に記載のマスターバッチペレットの作製方法。
【請求項7】
樹脂とフッ素系界面活性剤と炭化水素系界面活性剤とを含有するマスターバッチペレットの作製方法であって、
樹脂100質量部に対して、フッ素系界面活性剤が0.45〜5質量部、炭化水素系界面活性剤が4〜48質量部となるように、前記樹脂と前記フッ素系界面活性剤と前記炭化水素系界面活性剤とを溶融混練し押出しペレット化する、マスターバッチペレットの作製方法。

【公開番号】特開2011−201967(P2011−201967A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68706(P2010−68706)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】