説明

マスターバッチ型硬化剤組成物、それを用いる一液性エポキシ樹脂組成物及び成形品、並びにマスターバッチ型硬化剤組成物の製造方法

【課題】短時間硬化性、耐溶剤性及び貯蔵安定性に優れるマスターバッチ型硬化剤組成物を提供すること。
【解決手段】コアと、前記コアを被覆するシェルと、を有するマイクロカプセル型硬化剤(a)、及びエポキシ樹脂(b)を含む組成物を加熱処理して得られ、前記加熱処理前の前記組成物のDSC測定ピーク(ピークII)の半値幅に対する、前記加熱処理後の前記組成物のDSC測定ピーク(ピークI)の半値幅の割合(I/II)が、50〜95%の範囲であるマスターバッチ型硬化剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスターバッチ型硬化剤組成物、それを用いる一液性エポキシ樹脂組成物及び成形品、並びにマスターバッチ型硬化剤組成物の製造方法に関する。より詳しくは、マスターバッチ型硬化剤組成物、それを用いる一液性エポキシ樹脂組成物、ペースト状組成物、フィルム状組成物及び成形品、並びにマスターバッチ型硬化剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、その硬化物が、機械的特性、電気的特性及び熱的特性等の点で優れた性能を有することから、塗料、電気電子用絶縁材料、接着剤等の幅広い用途に利用されている。このような用途に利用されるエポキシ樹脂組成物としては、従来使用時にエポキシ樹脂と硬化剤の二成分を混合して硬化させる、いわゆる二成分系エポキシ樹脂組成物(以下、「二液性エポキシ樹脂組成物」という場合もある。)が挙げられる。
【0003】
しかしながら、液性エポキシ樹脂組成物は、保存時にはエポキシ樹脂と硬化剤を別々に保管し、使用時には両者を計量・混合する必要がある。そのため、取り扱いが煩雑であり、可使用時間が限られているため、予め大量に混合しておくことができず、配合頻度が多くなり、能率の低下を免れないという問題がある。その後より改良を重ねて、いくつかの一成分系エポキシ樹脂組成物(以下、「一液性エポキシ樹脂組成物」という場合もある。)が提案されている。一液性エポキシ樹脂組成物としては、例えば、ジシアンジアミド、BF3−アミン錯体、アミン塩、変性イミダゾール化合物等の潜在性硬化剤を、エポキシ樹脂に配合したものが挙げられる。
【0004】
しかし、これらの一液性エポキシ樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れているものは短時間硬化性に劣る傾向になり(硬化のために高温又は長時間の加熱が必要とされる)、短時間硬化性に優れるものは耐溶剤性に劣る傾向になる等、短時間硬化性と耐溶剤性の両立させることは困難である。例えば、ジシアンジアミドを配合した一液性エポキシ樹脂組成物は、常温保存の場合に耐溶剤性を実現し得る。しかし、一液性エポキシ樹脂組成物は、170℃以上といった高い硬化温度を必要とする場合がある。そこで、硬化温度を下げるために、一液性エポキシ樹脂組成物に硬化促進剤を配合することが考えられる。これによって硬化温度は130℃程度まで低下し得るが、室温での貯蔵安定性が低下する傾向になり、低温で貯蔵する必要がある。
【0005】
そこで、短時間硬化性と耐溶剤性の両立が可能なエポキシ樹脂組成物として、特許文献1には、潜在性硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物を加熱処理する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−093187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物は、貯蔵安定性が不十分であるという問題が存在することがわかった。したがって、短時間硬化性や耐溶剤性だけでなく、貯蔵安定性にも優れるエポキシ樹脂組成物やこれに用いるマスターバッチ型硬化剤組成物の開発が望まれている。
【0008】
特に、近年、回路の高密度化や接続信頼性の向上、モバイル機器の軽量化、生産性の大幅な改善等といった観点から、接続材料の一つとして用いられる一液性エポキシ樹脂組成物には、耐溶剤性を損なわずに低温硬化での接着強度を一層向上させることが望まれている。このことから、特に電子機器分野において、一液性エポキシ樹脂組成物やこれに用いるマスターバッチ型硬化剤組成物に関しては、短時間硬化性、耐溶剤性及び貯蔵安定性のいずれもが、高い次元で両立可能であることが求められている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、短時間硬化性、耐溶剤性及び貯蔵安定性に優れるマスターバッチ型硬化剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、意外にも、コアと、前記コアを被覆するシェルと、を有するマイクロカプセル型硬化剤(a)、及びエポキシ樹脂組成物(b)を含む組成物を加熱処理することで、前記加熱処理前の前記組成物のDSC測定ピーク(「ピークII」)の半値幅に対して、前記加熱処理後の前記組成物のDSC測定ピーク(「ピークI」)の半値幅が減少することを見出した。さらに、このような加熱処理にて得られる組成物は、マスターバッチ型硬化剤組成物として、短時間硬化性、耐溶剤性及び貯蔵安定性に優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明は以下のとおりである。
〔1〕
コアと、前記コアを被覆するシェルと、を有するマイクロカプセル型硬化剤(a)、及びエポキシ樹脂(b)を含む組成物を加熱処理して得られ、
前記加熱処理前の前記組成物のDSC測定ピーク(ピークII)の半値幅に対する、前記加熱処理後の前記組成物のDSC測定ピーク(ピークI)の半値幅の割合(I/II)が、50〜95%の範囲であるマスターバッチ型硬化剤組成物。
〔2〕
前記加熱処理前の前記組成物のDSC測定ピーク(ピークII)が、120℃以下に存在する〔1〕に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物。
〔3〕
前記加熱処理の温度が、30℃以上である〔1〕又は〔2〕に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物。
〔4〕
前記エポキシ樹脂(b)が、グリシジルアミン化合物に由来する構造を含む〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物。
〔5〕
前記エポキシ樹脂(b)として、平均官能基数が2より大きいエポキシ樹脂を含む〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物。
〔6〕
前記エポキシ樹脂(b)として、3官能以上のエポキシ樹脂を含む〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物。
〔7〕
前記エポキシ樹脂(b)として、4官能以上のエポキシ樹脂を含む〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物。
〔8〕
前記マイクロカプセル型硬化剤(a)として、イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤及びアミン系マイクロカプセル型硬化剤を含む〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物。
〔9〕
前記マイクロカプセル型硬化剤(a)の前記コアとして、イミダゾール系硬化剤及びアミン系硬化剤を含む〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物。
〔10〕
〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物100質量部と、
エポキシ樹脂(c)10〜10000質量部と、
を含む一液性エポキシ樹脂組成物。
〔11〕
〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物、又は〔10〕に記載の一液性エポキシ樹脂組成物を含むペースト状組成物。
〔12〕
〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物、又は〔10〕に記載の一液性エポキシ樹脂組成物を含むフィルム状組成物。
〔13〕
〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物、〔10〕に記載の一液性エポキシ樹脂組成物、〔11〕に記載のペースト状組成物、又は〔12〕に記載のフィルム状組成物を含む成形品。
〔14〕
前記成形品は、接着剤、接合用ペースト、接合用フィルム、導電性材料、異方導電性材料、絶縁性材料、封止材料、コーティング用材料、塗料組成物、プリプレグ、熱伝導性材料、燃料電池用セパレータ材、及びフレキシブル配線基板用オーバーコート材からなる群より選択されるいずれか1種である〔13〕に記載の成形品。
〔15〕
コアと、前記コアを被覆するシェルと、を有するマイクロカプセル型硬化剤(a)、及びエポキシ樹脂(b)を含む組成物を、加熱処理することにより、前記加熱処理前の前記組成物のDSC測定ピーク(ピークII)の半値幅に対する、前記加熱処理後の前記組成物のDSC測定ピーク(ピークI)の半値幅の割合(I/II)が、50〜95%の範囲である、マスターバッチ型硬化剤組成物を得る工程を有する、マスターバッチ型硬化剤組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマスターバッチ型硬化剤組成物は、短時間硬化性、耐溶剤性及び貯蔵安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物は、コアと、前記コアを被覆するシェルと、を有するマイクロカプセル型硬化剤(a)、及びエポキシ樹脂(b)を含む組成物を加熱処理して得られ、前記加熱処理前の前記組成物の示差走査熱量測定ピーク(以下、「DSC測定ピーク」という。以下、このDSC測定ピークを「ピークII」という場合がある。)の半値幅に対する、前記加熱処理後の前記組成物のDSC測定ピーク(以下、このDSC測定ピークを「ピークI」という場合がある。)の半値幅の割合(I/II)が、50〜95%の範囲である、マスターバッチ型硬化剤組成物である。
【0015】
DSC測定ピークの半値幅とは、DSC測定ピークのピークトップ(頂点)から半分の高さのピーク(山)の幅を意味し、半値全幅(FWHM;Full Width at Half Maximum)と呼ばれることもある。加熱処理前の組成物のDSC測定ピーク(ピークII)の半値幅に対する、加熱処理後の組成物のDSC測定ピーク(ピークI)の半値幅の割合(I/II)は、加熱処理前後の組成物のDSC測定ピークの半値幅を測定することにより算出することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。加熱前後の組成物に関してDSC測定ピークが複数存在する場合は、加熱処理前後で対応するピークの少なくとも1組が上記の関係を満たせばよい。ここでいう、対応するピークとは、同じ成分由来のピークのことを意味する。
【0016】
マイクロカプセル型硬化剤(a)及びエポキシ樹脂(b)を含む組成物を加熱処理することで、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物となる。即ち、加熱処理後の上記組成物は、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物に相当する。
【0017】
上記組成物を加熱処理することにより、ピークIIの半値幅に対するピークIの半値幅の割合(I/II)を50〜95%とすることができ、かかる特性を有するマスターバッチ型硬化剤組成物は、優れた貯蔵安定性を維持しながら、短時間硬化性及び耐溶剤性に優れる。その作用機構は定かではないが、以下のように推測される。まず、加熱処理によりマイクロカプセル型硬化剤(a)中のコアとシェルの反応が起こり、エポキシ結合が形成されることで、シェルのガラス転移温度(Tg)が上昇する。また、後述するように、マイクロカプセル型硬化剤(a)中のコアとシェルの反応は、緩やかであることが好ましい。そして、後述するように、シェル中には、ウレタン結合やエポキシ結合とった官能基が含まれることが好ましく、上記コアとシェルの反応により、比較的硬い成分に相当するエポキシ結合の含有割合が増えることとなる。これによって、コアを被覆するシェルがより硬くなるので、加熱などによる硬化反応時にシェルが割れ易くなり、コアの溶け出しが急激に進行することにより硬化反応速度が向上するだけでなく、シェルが硬く強化されることによりマイクロカプセル型硬化剤の耐溶剤性が向上するものと考えられる。短時間硬化性及び耐溶剤性の観点から、ピークIIの半値幅に対するピークIの半値幅の割合(I/II)は、好ましくは60〜90%であり、より好ましくは70〜85%である。
【0018】
また、加熱処理前の組成物のDSC測定ピーク(ピークII)は、120℃以下に存在することが好ましく、115℃以下であることがより好ましく、110℃以下であることが更に好ましい。ピークIIが複数存在する場合は、少なくとも1つのピークが120℃以下に存在すればよい。ここでいうピークが120℃以下であるとは、当該ピークのピークトップが120℃以下に存在することを意味する。上記範囲にピークIIが存在する組成物を用いることにより、加熱処理後の組成物のDSC測定ピーク(ピークI)の半値幅をより減少させることができる傾向にあり、さらには、ピークIのピークトップの温度をより低下させることができる傾向にある。その結果、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物の短時間硬化性、耐溶剤性及び貯蔵安定性のバランスを一層優れたものとすることができる。
【0019】
加熱処理の方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることもできる。加熱処理の方法としては、例えば、空気、水、油等の媒体中に浴した容器中で、上記組成物(マイクロカプセル型硬化剤(a)及びエポキシ樹脂(b)を含む、熱処理前の組成物)を加熱するといった簡便な方法を採用することができる。加熱時間は、処理温度との関係で適宜選択することができるが、高温になるほど処理時間は短縮できる傾向にある。加熱温度は、最終製品であるマスターバッチ型硬化剤組成物の保存温度以上であることが好ましい。例えば、通常であれば、保存温度に近い30℃以上であることが好ましく、35〜80℃がより好ましく、40〜70℃が更に好ましい。この場合、マスターバッチの性質によっては、例えば、酸素を遮断する目的で窒素等の不活性ガスの還流下で加熱処理を行ったり、多湿度下で加熱処理を行ったりすることもできる。ここで行う加熱処理の方法として、熱の移動が緩やかである空気を媒体とした加熱処理方法が好ましい。
【0020】
以下、マイクロカプセル型硬化剤(a)について具体的に説明する。本実施形態では、マイクロカプセル型硬化剤(a)は、コアと、コアを被覆するシェルとを有するマイクロカプセル型の硬化剤である。
【0021】
[マイクロカプセル型硬化剤(a)のコア]
マイクロカプセル型硬化剤(a)のコアは、アミンアダクトを含むことが好ましい。ここでいう、アミンアダクトとは、少なくともアミン構造を有するアダクトであればよい。ここでいう、アダクトとは、2つ以上の分子の付加によって得られる生成物を意味する。例えば、エポキシ樹脂とアミン性活性水素化合物とを反応させ、エポキシ基を消費させると、残留活性水素を持つアミンアダクトを得ることができる。通常、アミンアダクトはある程度分子量が大きいので、低揮発性成分による臭いが少なく、樹脂への配合量を多くすることができ、秤量誤差が少ないといった利点がある。なお、アミンアダクトの原料は上記したエポキシ樹脂に限定されず、種々の化合物を用いることができる。アミンアダクトの原料としては、例えば、イミダゾール化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、イソシアネート化合物、尿素化合物及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。アミンアダクトの原料として用いられる、イミダゾール化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、イソシアネート化合物、尿素化合物及びエポキシ樹脂の具体例を以下に示す。
【0022】
イミダゾール化合物としては、例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、1−アリルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、4−フォルミルイミダゾール、2−ブチル−4−フォルミルイミダゾール、2−ブチル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−ブチル−4−クロロ−5−フォルミルイミダゾール、2−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、2−ヒドロキシメチル−1−ベンジルイミダゾール、4−ヒドロキシメチル−2−メチルイミダゾール、4−フォルミル−1−メチルイミダゾール、5−フォルミル−1−メチルイミダゾール、4−フォルミル−5−メチルイミダゾール、4−フォルミル−1−トリチルイミダゾール、4−カルボキシメチルイミダゾール、4−カルボキシエチルイミダゾール、4−カルボン酸イミダゾール、2−アミノイミダゾール硫酸塩、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フォルミルイミダゾール、1−ベンジル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−ベンジル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチルイミダゾール4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾール等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
アミン化合物としては、例えば、脂肪族炭化水素基に1つ以上の第1級アミノ基を有するアミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、テトラメチレンアミン、1,5−ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリエチルヘキサメチルジアミン、1,2−ジアミノプロパン等が挙げられる。直鎖状の脂肪族炭化水素基に1つ以上の第1級アミノ基と1つ以上の第2級アミノ基を有するアミン化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンが挙げられる。
【0024】
脂環式炭化水素基に1つ以上の第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するアミン化合物としては、例えば、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、アミノエチルピペラジン、ジエチルアミノプロピルアミン等が挙げられる。
【0025】
脂肪族又は脂環式炭化水素基に1つ以上の第2級アミノ基を有するアミン化合物のとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペラジン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
カルボン酸化合物としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、ダイマー酸等が挙げられる。
【0027】
スルホン酸化合物としては、例えば、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0028】
イソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂肪族トリイソシアネート、ポリイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環式ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、4−4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,4−イソシアナトシクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、1,3−ビス(2−イソシアナトプロピル−2−イル)−シクロヘキサン等が挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族トリイソシアネートとしては、1,3,6−トリイソシアネートメチルヘキサン、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸−2−イソシアナトエチル等が挙げられる。ポリイソシアネートとしては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートや上記ジイソシアネート化合物より誘導されるポリイソシアネート等が挙げられる。上記ジイソシアネート化合物より誘導されるポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、ウレタン型ポリイソシアネート、アロハネート型ポリイソシアネート、カルボジイミド型ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0029】
尿素化合物としては、例えば、尿素、メチル尿素、ジメチル尿素、エチル尿素、t−ブ
チル尿素等が挙げられる。
【0030】
エポキシ樹脂としては、例えば、モノエポキシ化合物、多価エポキシ化合物、又はそれらの混合物等が挙げられる。モノエポキシ化合物としては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、パラ−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、パラキシリルグリシジルエーテル、グリシジルアセテート、グリシジルブチレート、グリシジルヘキソエート、グリシジルベンゾエート等が挙げられる。多価エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等;多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂;4,4−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂等のグリシジル型エポキシ樹脂と、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイド等が挙げられる。
【0031】
上記したアミンアダクトの原料として用いられる、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、イソシアネート化合物、尿素化合物及びエポキシ樹脂の中でも、短時間硬化性及び貯蔵安定性に優れるという観点から、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の中でも、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物の貯蔵安定性をより高める観点から、多価エポキシ化合物がより好ましい。多価エポキシ化合物の中でも、アミン化合物の生産性が高いという観点から、グリシジル型エポキシ樹脂が更に好ましく、マスターバッチ型硬化剤組成物の接着性や硬化物の耐熱性に優れるという観点から、多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂がより更に好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂がより一層好ましく、ビスフェノールAをグリシジル化したエポキシ樹脂、ビスフェノールFをグリシジル化したエポキシ樹脂がより一層更に好ましく、ビスフェノールAをグリシジル化したエポキシ樹脂がより一層更に好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
また、マイクロカプセル型硬化剤(a)のコアとしては、例えば、上記したアミンアダクトを主成分とするコアを用いることができる。アミンアダクトを主成分とするコアは、アミンアダクトを主成分とする塊状のコアを適宜粉砕すること等により得ることができる。ここでいう主成分とは、60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは99%以上含有されている成分を意味する。この範囲とすることによりマイクロカプセル型硬化剤(a)のコアとして一層優れた効果を奏する。
【0033】
マイクロカプセル型硬化剤(a)のコアとしては、2種類以上の硬化剤を併用することが好ましい。2種類以上の硬化剤としては、短時間硬化性の観点から、アミン系硬化剤又はイミダゾール系硬化剤のいずれかを含むことが好ましく、アミン系硬化剤及びイミダゾール系硬化剤の両方を含むことがより好ましい。この場合、アミン系硬化剤及びイミダゾール系硬化剤等の2種類以上の硬化剤を溶融混合し、必要に応じて粉砕し、マイクロカプセル化されたマイクロカプセル型硬化剤(a)とする形態が好ましい。
【0034】
詳細な作用機構は不明であるが、マイクロカプセル型硬化剤(a)のコアとして、硬化を促進させるという効果を有する硬化剤を2種類以上含むことで、後に加熱した際に、溶融したいずれかの硬化剤が、他の硬化剤の硬化を更に促進させるという効果を得ることができると考えられる。マイクロカプセル型硬化剤(a)自身は本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物中で良好な分散状態を維持できるが、それに加えて上記したアミン系硬化剤及びイミダゾール系硬化剤をマイクロカプセル型硬化剤(a)のコア内に含むことで、マイクロカプセル型硬化剤(a)のマイクロカプセル内でこれら硬化剤の分散性が高まる。この理由は定かではないが、上記したアミン系硬化剤及びイミダゾール系硬化剤が加熱されることで、それぞれが軟化し、その後硬化していくが、各々の硬化剤の軟化スピード及び硬化スピードが異なるため、最初に軟化し始めた方の硬化剤が硬化する時の発熱により、後から軟化し始める硬化剤のエポキシ環の開環が促進される。このように、最初に軟化し始める硬化剤が後に硬化し始める硬化剤に対して触媒的な働きをすることで、全体として硬化が低温で完了することとなる。つまり、マイクロカプセル型硬化剤(a)におけるBステージ(半硬化状態)への移行が低温で達成することができる。アミン系硬化剤とイミダゾール系硬化剤が、マイクロカプセル型硬化剤(a)のコアに含まれている場合には、例えば、アミン系硬化剤が先に硬化を開始し、後から軟化を開始したイミダゾール系硬化剤に対して触媒的な働きをすることで、全体の硬化が低温で完了することとなる。特に、加熱処理(エージング)により上記の効果はさらに加速されるものと考えられる(但し、本実施形態の作用はこれに限定されない。)。加熱処理(エージング)の条件としては、特に限定されず、通常、大気圧、空気雰囲気下で行うことができる。
【0035】
溶融混合の場合には、いずれか1種類の硬化剤の粉砕性を他の硬化剤が改質することにより、粉砕作業が容易となりうる。例えば、粉砕が困難な硬化剤と粉砕が容易な硬化剤を均一に混合して粉砕することにより両者の粉砕性を制御でき、適度な条件により収率よく粉砕を行うことができる。具体的には化学的結合、水素結合、ファンデルワールス力などにより凝集した粉砕困難な硬化剤中に、他の硬化剤が入り込むことにより、それらの凝集力が弱まり、全体としての粉砕性が向上する。あるいは、1種類の硬化剤が容易に粉砕可能であるために所望のメジアン径以下となってしまう場合は、他の硬化剤を均一に混合することにより粉砕性のバランスをとることで、所望のメジアン径の粉砕物を得ることができる。
【0036】
2種類以上の硬化剤を加熱融解状態で混合する方法としては、各々の溶融液を混合する方法や、一方の溶融液にもう一方の固体を溶解させる等の方法がある。本実施形態の2種類以上の硬化剤を有するマイクロカプセル型硬化剤(a)を得る方法としては、例えば、下記(1)〜(9)の方法等が考えられる。
(1) 1種以上の硬化剤を加熱して溶融状態としたところに、1種以上の硬化剤を加熱溶融状態で添加する方法。
(2) 1種以上の硬化剤を加熱して溶融状態としたところに、1種以上の硬化剤を溶剤に溶解した溶液状態で添加した後、溶剤を除去する方法。
(3) 1種以上の硬化剤を加熱して溶融状態としたところに、1種以上の硬化剤粉末を添加、攪拌後、回収・冷却して固体状の混合物として得る方法。
(4) 1種以上の硬化剤を溶剤に溶解した状態で、1種以上の硬化剤を溶剤に溶解した状態で添加した後、それぞれの溶剤を除去する方法。
(5) 1種以上の硬化剤を気化した状態で、1種以上の硬化剤を気化又は液化した状態で混合する方法。
(6) 1種類以上の硬化剤の製造途中における溶媒除去直前の反応液を、1種以上の硬化剤の製造途中において反応液を混合して溶媒を除去する方法。
(7) 1種類以上の硬化剤の製造途中における溶媒除去直前の反応液を、1種以上の硬化剤の製造途中における溶媒除去直前の反応液を混合して溶媒を除去する方法。
(8) 1種類以上の硬化剤の製造途中における溶媒除去直前の反応液を、1種類以上の液状又は固形の硬化剤に混合して溶媒を除去する方法。
(9) 1種類以上の硬化剤を粉砕し、1種類以上の粉砕した硬化剤と混合する方法。
【0037】
上記方法の中で溶剤を用いる場合、使用できる溶剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類;水等が挙げられる。これらの溶剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記方法により得られるマイクロカプセル型硬化剤(a)における2種類以上の硬化剤の状態は、特に限定されず、マイクロカプセル型硬化剤(a)の中に2種類以上の硬化剤各々が独立に存在している状態(以下、「状態(A)」という場合がある。)であってもよいし、双方の分子骨格内に2種類以上の硬化剤が反応して取り込まれた状態(以下、「状態(B)」という場合がある。)であってもよい。状態(A)は、上記(1)〜(5)、(7)〜(9)の方法により実現可能であり、状態(B)は上記(6)の方法により実現可能である。例えば、上記(1)〜(5)、(7)、(8)の方法を用いる場合は、各々の硬化剤がより均一に分散するため、上記2種類以上の硬化剤の分散性が高いマイクロカプセル型硬化剤を得ることができる。また(9)の方法を用いる場合は、同種又は異種の硬化剤が凝集したものも存在するマイクロカプセル型硬化剤(a)を得ることができる。特に、上記(6)の場合は硬化剤が分子レベルで、各々の硬化剤が取り込まれることで、均一な混合状態を得ることができる。
【0039】
特に、各々の硬化剤が分子レベルで均一に分散しやすく、短時間硬化が可能であるという観点から、上記2種類以上の硬化剤は液状で混合されることが好ましい。この場合、上記(1)〜(5)、(7)、(8)に記載されたような溶融混合法を採用することができる。この場合、マイクロカプセル型硬化剤(a)の固体を得るには、上記した溶融混合法の後に、上記溶融液を冷却すればよい。冷却方法としては、特に限定されず、例えば、水冷、空冷などが挙げられるが、急激な温度変化を避ける観点から、デシケーター中での空冷が好ましい。あるいは、上記溶融液に溶剤を用いる場合、各々の硬化剤を同時に溶解させる溶剤を用いて均一溶液とした後、溶剤を蒸留等で除去する方法やスプレードライ法等がある。用いられた溶剤は蒸留等により除去されることが好ましい。硬化剤混合物の均一性が優れる観点、及び、混合物の純度が優れるという観点から、融解混合法((1)〜(5)、(7)、(8))が好ましい。
【0040】
マイクロカプセル型硬化剤(a)のコアとしてアミンアダクトを含む場合、マイクロカプセル型硬化剤(a)に含まれるアミンアダクトのメジアン径で定義される平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは0.25μmを超えて12μm以下であり、より好ましくは1μm〜10μmであり、更に好ましくは1.5μm〜5μmである。平均粒径を12μm以下とすることで、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物を硬化させた際に均質な硬化物を得られ易くなる傾向にある。また、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物とした際に、大粒径の凝集物が生成し難くなり、硬化物の物性の低下を一層防止できる。平均粒径を0.25μmよりも大きくすることで、製造時における材料粒子間の凝集を効果的に防止でき、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤の短時間硬化性に寄与するシェルの形成が容易となる傾向にある。その結果、コアの表面上にシェルを均一かつ完全に形成することができ、マスターバッチ型硬化剤組成物の短時間硬化性、耐溶剤性及び貯蔵安定性、並びに得られる硬化物の物性を一層向上できる傾向になる。
【0041】
本実施形態において平均粒径とは、特に断りがない限り、メジアン径で定義される平均粒径を意味する。より具体的には、粒度分布計(堀場製作所社製、「HORIBA LA−920」)を用いて、レーザー回析・光散乱法により測定されるストークス径を指す。
【0042】
シェルを含めたマイクロカプセル型硬化剤(a)全体の大きさは、特に限定されないが、シェルを含めたマイクロカプセル型硬化剤(a)全体のメジアン径で定義される平均粒径は、好ましくは0.3μmを超えて13μm以下であり、より好ましくは1μm〜11μmであり、更に好ましくは1.5μm〜6μmである。平均粒径を13μm以下とすることで、均質な硬化物を得られ易くなる傾向にある。また、マイクロカプセル型硬化剤(a)をエポキシ樹脂(b)等と配合して組成物とする際に、大粒径の凝集物が生成し難くなり、硬化物の物性を損なうことを防止できる。平均粒径を0.3μm以上とすることで、粒子の凝集を効果的に防止でき、マスターバッチ型硬化剤組成物の貯蔵安定性や耐溶剤性を一層向上できる傾向になる。
【0043】
ここで、マイクロカプセル型硬化剤のコアの平均粒径を調整する方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用することもできる。例えば、塊状のコアについて、粉砕の精密な制御を行う方法;粉砕として粗粉砕と微粉砕を行い、さらに精密な分級装置により所望の範囲のものを得る方法;液状又はスラリー状のコア、あるいは溶媒に溶解させたコアを、空気中に噴霧して急速に乾燥させることで、乾燥粉体を得る方法(噴霧乾燥法)等が挙げられる。
【0044】
粉砕に用いる粉砕装置としては、必要に応じて、ボールミル、アトライタ、ビーズミル、ジェットミル等を使用できるが、衝撃式粉砕装置を用いることが好ましい。衝撃式粉砕装置としては、例えば、旋回式流粉体衝突型ジェットミル、粉体衝突型カウンタージェットミル等のジェットミルが挙げられる。ジェットミルは、空気等を媒体とした高速のジェット流により、固体材料同士を衝突させて微粒子化する装置である。粉砕の精密な制御方法としては、粉砕時の温度、湿度、単位時間当たりの粉砕量等を制御することが挙げられる。
【0045】
粉砕物の分級方法としては、塊状のコアを粉砕した後に、分級により所定サイズの粉粒体を得るため、篩(例えば、325メッシュや250メッシュ等の標準篩)や分級機を用いて分級する方法(スクリーンを使用する方法)、その粒子の比重に応じて、風力による分級を行う方法(比重差を利用する方法)、噴霧乾燥装置を用いる方法等が挙げられる。使用できる分級機としては、特に限定されないが、一般には乾式分級機が好ましい。かかる乾燥分級機としては、例えば、日鉄鉱業社製「エルボージェット」、ホソカワミクロン社製「ファインシャープセパレーター」、三協電業社製「バリアブルインパクタ」、セイシン企業社製「スペディッククラシファイア」、日本ドナルドソン社製「ドナセレック」、安川商事社製「ワイエムマイクロカセット」、日清エンジニアリング社製「ターボクラシファイア」、その他各種エアーセパレータ、ミクロンセパレーター、ミクロブレックス、アキュカット等が使用できる。噴霧乾燥装置としては、例えば、通常のスプレードライ装置等が使用できる。噴霧乾燥装置は高温気流中に液状物質を噴霧させて瞬間的に乾燥させる方法であり、かかる装置としてはヤマト科学社製「ADL311−A/311S−A」、大川原化工機社製「L/OC型」等が使用できる。
【0046】
また、マイクロカプセル型硬化剤(a)のコアの平均粒径を調整する別の方法としては、特定の平均粒径と特定の粒径含有率とを有するコアを複数種個別に形成し、それらを混合機等を用いて適宜混合する方法等が挙げられる。混合されたコアは、必要に応じて、更に分級してもよい。このような目的で使用する混合機としては、混合する粉体の入った容器本体を回転させる容器回転型、粉体の入った容器本体は回転させず機械攪拌や気流攪拌で混合を行う容器固定型、粉体の入った容器を回転させ、他の外力も使用して混合を行う複合型が挙げられる。
【0047】
マイクロカプセル型硬化剤(a)のコアの形状は、特に限定されず、例えば、球状、顆粒状、粉末状、不定形のいずれであってもよい。これらの中でも、後述する一液性エポキシ樹脂組成物の低粘度化の観点から、球状であることが好ましい。ここでいう「球状」とは、真球は勿論のこと、不定形の角が丸みを帯びた形状をも包含する。
【0048】
マイクロカプセル型硬化剤(a)のコアの軟化点は、特に限定されず、好ましくは50〜120℃、より好ましくは55〜105℃、更に好ましくは60〜110℃である。コアの軟化点を上記範囲とすることで、所望の粒径の粒子を一層経済的に得ることができ、短時間硬化性、耐溶剤性及び貯蔵安定性に一層優れるマスターバッチ型硬化剤組成物を得ることができる。コアの軟化点を50℃以上とすることで、該コアの平均粒径を制御することが容易となり、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物及び一液性エポキシ樹脂組成物の耐溶剤性及び貯蔵安定性を一層優れたものにすることができる。コアの軟化点を120℃以下とすることで、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物及び一液性エポキシ樹脂組成物の短時間硬化性を一層優れたものにすることができる。
【0049】
マイクロカプセル型硬化剤(a)のコアの120℃溶融粘度は、好ましくは500Pa・s以下であり、より好ましくは400Pa・s以下であり、更に好ましくは300Pa・s以下である。120℃溶融粘度を500Pa・s以下とすることで、短時間硬化性に一層優れるマスターバッチ型硬化剤組成物及び一液性エポキシ樹脂組成物を得ることができる。120℃溶融粘度を0.1mPa・s以上とすることで、貯蔵安定性に一層優れるマスターバッチ型硬化剤組成物及び一液性エポキシ樹脂組成物を得ることができる。ここで、120℃溶融粘度は、ディスクプレート上にサンプル約0.5gを載せ、ローターとプレートとの間隔を0.1mmとして回転させ、測定雰囲気温度が120℃で安定となる粘度を測定することによって求めることができる。
【0050】
マイクロカプセル型硬化剤(a)のコアの赤外線吸収スペクトルにおいて、脂肪族炭化水素基に結合したアミノ基のうち、C−N伸縮振動に由来する1050〜1150cm-1の間のピーク高さ(P1)に対する、1655cm-1のピーク高さ(P2)の比(P2/P1)が1.0以上3.0未満にあることが好ましく、1.2以上2.8以下であることがより好ましく、1.5以上2.5以下であることが更に好ましい。ここで、赤外線吸収は、赤外分光光度計を用いて測定することができ、例えば、フーリエ変換式赤外分光光度計(以下「FT−IR」という場合がある。)を用いることができる。上記ピーク高さの比(P2/P1)を1.0以上とすることで、短時間硬化性を一層優れたものにすることができる。上記ピーク高さの比(P2/P1)を3.0未満とすることで、マイクロカプセル型硬化剤のコアをシェルが効率よく被覆することができるという観点や、形成されるシェル(膜)のウレタン結合やウレア結合の緻密さや均一さを制御する観点から好適であり、マスターバッチ型硬化剤組成物や一液性エポキシ樹脂組成物等を製造する際に、粒径が大きい2次粒子が生成することを効果的に防止することもできる。その結果、短時間硬化性、耐溶剤性及び貯蔵安定性に極めて優れたマスターバッチ型硬化剤組成物を実現することができる。
【0051】
[マイクロカプセル型硬化剤(a)のシェル]
本実施形態におけるマイクロカプセル型硬化剤(a)において、コアの表面を被覆するシェルの形成方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することもできる。例えば、以下の方法を採用することができる。
(i)シェル成分を分散媒である溶剤に溶解し、シェル成分の粒子を分散媒に分散させて、シェル成分の溶解度を下げることで、コアの表面にシェルを析出させる方法。
(ii)コアの出発材料である塊状のコアを分散媒に分散させ、この分散媒にシェルを形成する材料の原料を添加して、塊状のコア粒子上にシェルを析出させるとともにコアをシェルで被覆する方法。
(iii)シェルを形成する材料の原料を分散媒に添加し、コアとなる粒子の表面を反応の場として、そこでシェルを形成する材料を生成させるとともにコアをシェルで被覆する方法。
【0052】
ここで、上記(ii)、(iii)の方法は、シェル形成とコア表面の被覆を同時に行うことができ、緻密な膜が形成しやすくなるので好ましい。なお、使用できる分散媒としては、溶剤、樹脂、可塑剤等が挙げられる。
【0053】
溶剤としては、特に限定されず、例えば、上記した溶剤等が挙げられる。
【0054】
樹脂としては、特に限定されず、例えば、上記したエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0055】
可塑剤としては、特に限定されず、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニフフタレート、エチルフタリルエチレングリコレート、トリス(2−エチルヘキシル)トリメリテート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ビス[2−(2−ブトキシエトキシエチル)アジペート]、ビス(2−エチルヘキシル)アセレート、ジブチルセバケート、ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジエチルサクシネート等が挙げられる。
【0056】
また、分散媒としてエポキシ樹脂を用いると、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物に含まれるエポキシ樹脂(b)として機能させることもできるので、シェル形成及び被覆と同時に、マスターバッチ型硬化剤組成物を得ることができるため好適である。
【0057】
なお、シェルの形成反応は、通常、−10℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃の温度範囲で、10分間〜72時間、好ましくは30分間〜24時間の反応時間で行われる。
【0058】
マイクロカプセル型硬化剤(a)の表面に官能基が存在する場合、その官能基については、メジアン径で定義される平均粒径が0.3μmを超えて12μm以下である粒子を出発材料としてコアが形成され、前記シェルが、波数1630〜1680cm-1の赤外線を吸収する結合基(x)と波数1680〜1725cm-1の赤外線を吸収する結合基(y)及び波数1730〜1755cm-1の赤外線を吸収する結合基(z)を少なくとも表面に有することが好ましい。
【0059】
かかる結合基(x)の中で、好ましいものとして、ウレア結合、アミド結合が挙げられる。結合基(y)の中で、好ましいものとして、ビュレット結合、イミド結合が挙げられる。結合基(z)の中で、好ましいものとしては、ウレタン結合が挙げられる。これらの結合の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することもできる。
【0060】
結合基(x)、(y)及び(z)がマイクロカプセル型硬化剤(a)のコアの表面に少なくとも存在していることは、顕微−FT−IRを用いて確認することができる。
【0061】
ここで、上記シェルが有する、波数1630〜1680cm-1の赤外線を吸収する結合基(x)、波数1680〜1725cm-1の赤外線を吸収する結合基(y)、波数1730〜1755cm-1の赤外線を吸収する結合基(z)は、マイクロカプセル型硬化剤(a)1kgに対して、それぞれ1〜1000meq/kg、1〜1000meq/kg及び1〜200meq/kgの範囲の含有量を有していることが好ましい。
【0062】
結合基(x)の含有量が1meq/kg以上の場合、機械的剪断力に対して高い耐性を有するマイクロカプセル型硬化剤(a)を得るのに有利である。また、1000meq/kg以下の場合、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物が高い硬化性を得るのに有利である。より好ましい結合基(x)の含有量は、10〜300meq/kgである。
【0063】
結合基(y)の含有量が1meq/kg以上の場合、機械的剪断力に対して高い耐性を有するマイクロカプセル型硬化剤(a)を得るのに有利である。また、1000meq/kg以下の場合、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物が高い硬化性を得るのに有利である。より好ましい結合基(y)の含有量は、10〜200meq/kgである。
【0064】
結合基(z)の含有量が1meq/kg以上の場合、機械的剪断力に対して高い耐性を有するシェルを形成するのに有利である。また、200meq/kg以下の場合、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物が高い硬化性を得るのに有利である。より好ましい結合基(z)の含有量は、5〜100meq/kgである。
【0065】
シェルが有する結合基(x)、(y)及び(z)が、それぞれ、ウレア基、ビュレット基、ウレタン基であり、かつ、結合基(x)、(y)及び(z)の合計の含有量(Cx+Cy+Cz)に対する結合基(x)の含有量(Cx)の比(Cx/(Cx+Cy+Cz))が、0.50以上0.75未満であることが好ましい。結合基(x)の上記含有量比を0.50以上とすることで、耐溶剤性を一層優れたものにできる。また、結合基(x)の上記濃度比を0.75未満とすることで、シェル形成反応において、マイクロカプセル型硬化剤(a)のコアの粒子同士の融着・凝集を効果的に防止することができ、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物を安定した品質で管理することが容易となり、貯蔵安定性が一層向上する。
【0066】
結合基(x)、(y)及び(z)の濃度の定量、並びに結合基の濃度比の定量は、以下に示す方法にて定量することができる。
【0067】
まず、結合基(x)、(y)及び(z)を定量する検量線の作成方法として、日本分光社製、「FT−IR−410」を使用して、標準物質としてテトラメチルコハク酸ニトリル
【化1】

を準備する。さらに結合基(x)を有するが、結合基(y)及び(z)を有しないモデル化合物(1)、
【化2】

同様に、結合基(y)を有するが、結合基(x)及び(z)を有しないモデル化合物(2)、
【化3】

結合基(z)を有するが、結合基(x)及び(y)を有しないモデル化合物(3)
【化4】

を準備する。
【0068】
そして、標準物質とモデル化合物(1)、(2)、(3)のそれぞれを、任意の割合で、精密に秤量して混合した混合物を、例えば、臭化カリウム(KBr)粉末とともに粉砕して錠剤成形機を用いてFT−IR測定用検量サンプル錠剤を調製する。標準物質のテトラメチルコハク酸ニトリルの2240〜2260cm-1の吸収帯の面積に対して、モデル化合物(1)の1630〜1680cm-1の吸収帯の面積比を求める。即ち、縦軸にモデル化合物(1)と標準物質との混合物である検量サンプルにおける質量比を、横軸にモデル化合物(1)における1630〜1680cm-1の吸収帯の面積と標準物質のテトラメチルコハク酸ニトリルの2240〜2260cm-1の吸収帯の面積比として、赤外線吸収帯の面積比と含有物の質量比の関係を直線回帰することにより検量線を作成する。
【0069】
同様に、モデル化合物(2)及び(3)についても、それぞれの実測値より、赤外線吸収帯の面積比と含有物の質量比の関係を直線回帰することにより検量線を作成する。
【0070】
結合基(x)、(y)及び(z)の含有量比は以下の方法で求めることができる。まず、マイクロカプセル型硬化剤(a)を40℃で真空乾燥して、その質量を求める。さらにマイクロカプセル型硬化剤(a)より分離したシェルを40℃で真空乾燥して、マイクロカプセル型硬化剤(a)より得られるシェルの質量を測定する。マイクロカプセル型硬化剤(a)よりシェルを分離する方法は、マイクロカプセル型硬化剤(a)を、メタノールを用いて、コアがなくなるまで洗浄とろ過を繰り返し、50℃以下の温度でメタノールを完全に除去乾燥する方法により行うことができる。このようにして得られたサンプル3gに、標準物質であるテトラメチルコハク酸ニトリルを10mg加えて、メノウ乳鉢で粉砕混合して混合物とし、その混合物2mgにKBr粉末50mgを加えて錠剤成形機を用いてFT−IR測定用錠剤を作製し、日本分光社製、「FT−IR−410」により赤外線スペクトルを得る。得られた赤外線スペクトルと検量線より、結合基(x)、(y)及び(z)のサンプル中の各含有量を求めて、マイクロカプセル型硬化剤1kg当たりの各結合基の各含有量及びその含有量比を求めることができる。
【0071】
本実施形態において、シェルが有する結合基(x)、(y)及び(z)の含有量の総量((Cx+Cy+Cz))の値を所望の範囲にする方法としては、特に限定されず、例えば、シェルの形成反応において、使用する原材料の仕込み量を制御する方法、各原材料の配合比率を制御する方法、シェルの形成反応の反応温度及び/又は反応時間を制御する方法等が挙げられる。特に、結合基(x)であるウレア結合、結合基(y)であるビュレット結合を生成するためにイソシアネート化合物を用いる場合や、結合基(z)であるウレタン結合を生成するために1分子中に1個以上の水酸基を有する化合物を用いる場合、これらの化合物の仕込み量を制御することが効果的である。
【0072】
分散媒としてエポキシ樹脂を用いる場合、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物に用いられるエポキシ樹脂(b)としても機能させることができるため、シェル形成と同時に、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物を得ることができるため好適である。
【0073】
シェルが有する結合基(x)、(y)及び(z)の平均層厚は、5〜1000nmであることが好ましく、10〜1000nmであることがより好ましい。平均層厚を5nm以上とすることで、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物の貯蔵安定性を得ることができ、1000nm以下とすることで、実用的な硬化性を得ることができる。なお、ここでいう層の厚みは、透過型電子顕微鏡により測定することができる。これらの結合基の合計厚みが、シェル自体の厚みとなることが、保存安定性および耐溶剤性と短時間硬化性のバランスの観点から、好ましい。
【0074】
マイクロカプセル型硬化剤(a)におけるシェルの厚さに対するコアの直径の比(コアの直径/シェルの厚さ)は、好ましくは0.3〜2400、より好ましくは1.0〜2000、更に好ましくは1.5〜1000である。この範囲とすることで、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物の貯蔵安定性と耐溶剤性のバランスを一層優れたものにできる。
【0075】
ここで、結合基(x)の1種であるウレア結合や結合基(y)の1種であるビュレット結合を形成するために使用されるイソシアネート化合物としては、特に限定されず、アミンアダクトの説明において、アミン化合物と反応させることができるイソシアネート化合物として説明したものが使用できる。
【0076】
結合基(z)の1種であるウレタン結合を形成するために使用される上記活性水素化合物としては、例えば、水、少なくとも1個の第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有する化合物、少なくとも1個の水酸基を有する化合物等が挙げられる。
【0077】
少なくとも1個の第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有する化合物としては、例えば脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミンを使用することができる。
【0078】
脂肪族アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアルキルアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミン;ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のポリオキシアルキレンポリアミン類等が挙げられる。
【0079】
脂環式アミンとしては、例えば、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0080】
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、べンジルアミン、ナフチルアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0081】
少なくとも1個の水酸基を有する化合物としては、例えば、アルコール化合物、フェノール化合物等が挙げられる。
【0082】
アルコール化合物としては、例えば、メチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドテシルアルコール、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、べンジルアルコール、シンナミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチル等のモノアルコール類;エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、水添ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物と、少なくとも1個の水酸基、カルボキシル基、第1級又は第2級アミノ基、メルカプト基を有する化合物との反応により得られる、第2級水酸基を1分子中に2個以上有する化合物等の多価アルコール類;等が挙げられる。これらのアルコール化合物においては、第1級、第2級、又は第3級アルコールのいずれでもよい。
【0083】
フェノール化合物としては、例えば、石炭酸、クレゾール、キシレノール、カルバクロール、モチール、ナフトール等のモノフェノール類、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ピロガロール、フロログルシン等の多価フェノール類を挙げられる。
【0084】
これら少なくとも1個の水酸基を有する化合物としては、潜在性や耐溶剤性の観点から、多価アルコール類や多価フェノール類等が好ましく、多価アルコール類がより好ましい。
【0085】
上記コアとして用いられるイミダゾール系硬化剤やアミン系硬化剤等の硬化剤は、上記したエポキシ樹脂とアミン化合物との反応により得られるアミンアダクトを主成分とする硬化剤と同一であってもよいし、異なっていてもよいが、生産性の観点から同一であることが好ましい。
【0086】
[マイクロカプセル型硬化剤(a)の種類]
本実施形態では、(a)成分として、上記した種々のコアやシェルを有するマイクロカプセル型硬化剤を用いることができ、(a)成分としては、イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤及び/又はアミン系マイクロカプセル型硬化剤を含むことが好ましく、短時間硬化性の観点から、これらを両方含むことがより好ましい。また、本実施形態では、(a)成分として、2種類以上のマイクロカプセル型硬化剤を併用することが好ましく、上記のようにイミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤及びアミン系マイクロカプセル型硬化剤の併用することがより好ましい。(a)成分として、イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤とアミン系マイクロカプセル型硬化剤を併用することにより、本実施形態の効果が一層顕著になる傾向にある。その作用機構は定かではないが、アミン系マイクロカプセル型硬化剤に含まれるアミン系硬化剤がまず硬化を開始し、イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤に含まれるイミダゾール化合物が促進剤として有効に働く。即ち、後から軟化を開始したイミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤が触媒的な働きをすることで、本実施形態のマイクロカプセル型硬化剤組成物全体の硬化が低温で完了できると考えられる。即ち、イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤の熱処理前のDSC測定ピークが低下する傾向になるため、上記した2種類のマイクロカプセル型硬化剤を含んだ上で加熱処理を行うことによって、イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤はアミン系マイクロカプセル型硬化剤のアミン化合物により硬化反応が促進される。これにより、短時間硬化性が更に加速されるものと考えられる。また、上記した2種類のマイクロカプセル型硬化剤を含むことで、硬化物の弾性率等が改善され、硬化物の靱性等が一層向上する傾向にある。2種類の硬化剤は硬化メカニズムが異なるために、単一の硬化剤を使用するよりも、樹脂の硬化率が向上する傾向にある。さらに、上記した2種類のマイクロカプセル型硬化剤はいずれも塩基性であるので、マイクロカプセル型硬化剤(a)としてこれらの硬化剤を含有することで、マイクロカプセル同士の凝集を効果的に抑制することができる。通常、上記した2種類のマイクロカプセル型硬化剤の硬化温度は近傍であるため、硬化ムラを一層効果的に抑制することもできると推測される(但し、本実施形態の作用はこれに限定されない。)。
【0087】
上記効果が一層顕著になるという観点から、イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤の硬化温度は、アミン系マイクロカプセル型硬化剤の硬化温度よりも高いほうが好ましい。具体的には、イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤の硬化温度は、アミン系マイクロカプセル型硬化剤の硬化温度よりも、10〜60℃高いことが好ましく、20〜40℃高いことがより好ましい。イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤の硬化温度を上記温度範囲とすることにより、アミン系マイクロカプセル型硬化剤の硬化が起こる直後にイミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤の硬化を引き起こすことができ、適切なタイミングで反応を進行させることができる。その結果、より均一な硬化物を得ることができる。
【0088】
イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤とアミン系マイクロカプセル型硬化剤を共に含有する場合、イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤とアミン系マイクロカプセル型硬化剤の質量比(イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤:アミン系マイクロカプセル型硬化剤)は、特に限定されないが、短時間硬化性の観点から、1:99〜99:1の範囲が好ましく、5:95〜90:10の範囲がより好ましく、10:90〜50:50の範囲が更に好ましく、12:88〜35:65の範囲がより更に好ましく、15:85〜22:78の範囲が一層好ましい。
【0089】
イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤及びアミン系マイクロカプセル型硬化剤を含むマイクロカプセル型硬化剤(a)は、種々の方法で得ることができる。例えば、これらの2種類以上のマイクロカプセル型硬化剤を公知の方法で混合することにより得ることができる。以下、イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤及びアミン系マイクロカプセル型硬化剤のそれぞれの製造方法の一例を説明する。
【0090】
イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤を得るためのアミンアダクト(イミダゾールアダクト)としては、例えば、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物単体;2−メチルイミダゾールとビスフェノールA型エポキシ樹脂との反応生成物;2−エチル−4−メチルイミダゾールとビスフェノールA型エポキシ樹脂との反応生成物等が挙げられる。これらの中でも、アダクトの貯蔵安定性と反応性に優れるという観点から、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾールが好ましく、活性点に対する立体障害が少ないという観点から、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾールがより好ましい。
【0091】
アミン系マイクロカプセル型硬化剤を得る場合、そのアミンアダクトは、例えば、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、イソシアネート化合物、尿素化合物及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、アミン化合物との反応により得られる。イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤を得る場合、そのアミンアダクトは、例えば、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、イソシアネート化合物、尿素化合物及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、イミダゾール系化合物との反応により得られる。
【0092】
アミン系マイクロカプセル型硬化剤を得るためのアミンアダクトの出発物質としては、例えば、脂肪族又は脂環式炭化水素基に、1つ以上の第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するアミン化合物等が挙げられる。
【0093】
脂肪族炭化水素基に1つ以上の第1級アミノ基を有するアミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、テトラメチレンアミン、1,5−ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリエチルヘキサメチルジアミン、1,2−ジアミノプロパン等が挙げられる。直鎖状の脂肪族炭化水素基に1つ以上の第1級アミノ基と1つ以上の第2級アミノ基を有するアミン化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。
【0094】
脂環式炭化水素基に1つ以上の第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するアミン化合物としては、例えば、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、アミノエチルピペラジン、ジエチルアミノプロピルアミン等が挙げられる。
【0095】
脂肪族又は脂環式炭化水素基に1つ以上の第2級アミノ基を有するアミン化合物のとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペラジン等が挙げられる。
【0096】
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0097】
上記アミン化合物は、脂肪族又は脂環式炭化水素基に、1つ以上の第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有していればよい。例えば、マイクロカプセル型硬化剤(a)がエポキシ樹脂(b)と反応する前に、上記アミン化合物が、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、尿素化合物、イソシアネート化合物、チオール化合物等と反応していてもよい。
【0098】
上記アミン化合物としては、貯蔵安定性と短時間硬化性のバランスにより優れるアミンアダクトを得る観点から、直鎖状の脂肪族炭化水素基に1つ以上の第1級アミノ基と1つ以上の第2級アミノ基を有するアミン化合物が好ましい。これらの中でも、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンがより好ましく、1分子あたりの全アミン量が多いという観点から、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンが更に好ましい。
【0099】
アミン系マイクロカプセル型硬化剤のアミンアダクト(イミダゾール系アダクト以外のアミンアダクト)における全アミン量は、短時間硬化性と吸湿性のバランスの観点から、3質量%〜50質量%が好ましく、4質量%〜45質量%がより好ましく、5質量%〜40質量%が更に好ましい。ここでいう「全アミン量」は、JIS K7245:2000の全アミノ基窒素含有量を意味する。
【0100】
本実施形態に用いられるアミンアダクトにおけるアミン化合物の添加量は特に限定されないが、例えばエポキシ樹脂とアミン化合物のアミンアダクトの場合、エポキシ樹脂1モルに対して、アミン化合物が好ましくは0.02〜20倍モル当量、より好ましくは0.1〜15倍モル当量、更に好ましくは0.2〜10倍モル当量の範囲である。エポキシ樹脂に対するアミン化合物の添加量を0.02倍モル当量以上にすることで、分子量分布が7以下のアダクトを得るのに有利であり、該分子量分布においてはエポキシ樹脂の硬化性が良好となる。エポキシ樹脂に対するアミン化合物の添加量を20倍モル当量以下にすることで、未反応のアミン化合物の回収を効率よく行うことができ、経済的である。
【0101】
エポキシ樹脂とアミン化合物の反応条件は特に限定されず、例えば、必要に応じて溶剤の存在下において、50〜250℃の温度で0.1〜10時間反応させることで得ることができる。上記反応温度及び反応時間であれば安定的に反応が進行するので、所望の生成物を得るのに有利である。
【0102】
エポキシ樹脂と、アミン化合物又はイミダゾール化合物とからアミンアダクトを得る反応において、必要に応じて用いられる溶剤としては、特別に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類;水等が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。反応終了後、溶剤は蒸留等により除去されていることが好ましい。
【0103】
なお、本実施形態では、上記したマイクロカプセル型硬化剤(a)以外にも、種々のエポキシ樹脂用硬化剤を更に添加することもできる。このようなエポキシ樹脂用硬化剤としては、マイクロカプセル型でない硬化剤等を用いることもできる。マイクロカプセル型硬化剤(a)以外に用いる硬化剤は、特に限定されず、公知の硬化剤を用いることもできる。マイクロカプセル型硬化剤(a)以外の硬化剤としては、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物の接着強度、ガラス転移点(Tg)及び配合容易性等の観点から、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、グアニジン系硬化剤、チオール系硬化剤及びイミダゾリン系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂用硬化剤が好ましい。これらは潜在性硬化剤であってもよい。
【0104】
上記酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水−3−クロロフタル酸、無水−4−クロロフタル酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水ジメチルコハク酸、無水ジクロールコハク酸、メチルナジック酸、ドテシルコハク酸、無水クロレンデック酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0105】
上記フェノール系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック等が挙げられる。
【0106】
上記ヒドラジド系硬化剤としては、例えば、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドテレフタル酸ジヒドラジド、p−オキシ安息香酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、フェニルアミノプロピオン酸ヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0107】
上記グアニジン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、メチルグアニジン、エチルグアニジン、プロピルグアニジン、ブチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トルイルグアニジン等が挙げられる。
【0108】
上記チオール系硬化剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、ジペンタエリスリトールポリ(β−チオプロピオネート)等のポリオールとメルカプト有機酸のエステル化反応によって得られるチオール化合物や、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,10−デカンジチオール等のアルキルポリチオール化合物、末端チオール基含有ポリエーテル、末端チオール基含有ポリチオエーテル、エポキシ化合物と硫化水素の反応によって得られるチオール化合物、ポリチオールとエポキシ化合物との反応によって得られる末端チオール基を有するチオール化合物等が挙げられる。
【0109】
上記イミダゾリン系硬化剤としては、例えば、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−フェニルイミダゾリン、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾリン、2−メチルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2−ベンジルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−(o−トリル)−イミダゾリン、テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,2−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,3−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−4−メチルイミダゾリン等が挙げられる。
【0110】
[エポキシ樹脂(b)]
本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物に含まれるエポキシ樹脂(b)は、特に限定されず、公知のものも採用することができる。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂が挙げられる。
【0111】
上記の中でも、エポキシ樹脂(b)は、グリシジルアミン化合物に由来する構造を含むことが好ましい。グリシジルアミン化合物に由来する構造とは、窒素原子にグリシジル基が2つ結合された構造及びその誘導体が挙げられる。具体的には、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン等が挙げられる。この構造を含むことによって、グリシジルアミンの窒素原子がエポキシ基に作用することによって硬化反応を加速することができる。
【0112】
また、エポキシ樹脂(b)は、短時間硬化性の観点から、平均官能基数が2より大きいエポキシ樹脂を含むことが好ましい。例えば、官能基数aの化合物がxモル、官能基数bの化合物がyモル含有するエポキシ樹脂の場合エポキシ樹脂の平均官能基数は(ax+by)/(x+y)で表される。そのため、平均官能基数は必ずしも整数でなくてもよい。
【0113】
本実施形態で用いられる平均官能基数が2より大きいエポキシ樹脂(以下、「多官能エポキシ樹脂」という場合がある。)としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスAノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン/フェノールエポキシ樹脂、脂環式アミンエポキシ樹脂、脂肪族アミンエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0114】
また、エポキシ樹脂(b)は、低温での短時間硬化性が更に向上する観点から、3官能以上の多官能エポキシ樹脂を含むことが好ましく、4官能以上の多官能エポキシ樹脂を含有することが特に好ましい。該多官能エポキシ樹脂が反応する詳細な作用機構は明らかでないが、多官能エポキシ樹脂を加熱処理することによって上記効果はさらに加速されるものと考えられる。
【0115】
3官能エポキシ樹脂としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−m−クレゾール、N,N,O−トリグリシジル−5−アミノ−o−クレゾール、1,1,1−(トリグリシジルオキシフェニル)メタンが挙げられる。
【0116】
4官能エポキシ樹脂としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−4,4−(4−アミノフェニル)−p−ジイソピルベンゼン、1,1,2,2−(テトラグリシジルオキシフェニル)エタン、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,2,2−テトラビス(ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、トリフェニルグリシジルエーテルメタン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0117】
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0118】
上記の中でも、分散性の観点から、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンが特に好ましい。
【0119】
他の多官能以上のエポキシ樹脂としては、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチルプロパノールグリシジルエーテル、ペンタエリストールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、三菱化学社製、商品名「jER−152」、「jER−154」、「jER−157S70」、「jER−1031S」、「jER−1032H60」、「jER−604」、「jER−630」、DIC製、商品名「EPICLON5500」、「EPICLON5800」、「EPICLON5300−70」、「EPICLON5500−60」、東都化成社製、商品名「YH−434」、「YH−434L」、ナガセケムテックス製、商品名「デナコールEX−313」、「デナコールEX−314」、「デナコールEX−321」、「デナコールEX−411」、「デナコールEX−421」、「デナコールEX−512」、「デナコールEX−521」、「デナコールEX−611」、「デナコールEX−612」、「デナコールEX−614」、「デナコールEX−614B」、「デナコールEX−622」等の市販品を用いることもできる。
【0120】
また、マスターバッチ型硬化剤組成物における多官能エポキシ樹脂の総含有量は、特に限定されないが、通常0.1〜99質量%、好ましくは0.5〜95%質量、より好ましくは1.0〜90質量%、更に好ましくは5.0〜80質量%である。多官能エポキシ樹脂の総含有量が0.1質量%以上であることにより、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物の接着強度が向上し、得られる硬化物の強度が向上する。多官能エポキシ樹脂の総含有量が99質量%以下であることにより、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物の貯蔵安定性が向上する。
【0121】
多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、短時間硬化性と接着強度の観点から、好ましくは50〜1000g/eq、より好ましくは60〜900g/eq、更に好ましくは70〜800g/eqである。
【0122】
本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物は、エポキシ樹脂(c)を更に含むことにより、一液性エポキシ樹脂組成物とすることができる。このエポキシ樹脂(c)は、マスターバッチ型硬化剤組成物を希釈して、一液性エポキシ樹脂とするために用いることができる。なお、本実施形態では、エポキシ樹脂(c)は、一液性エポキシ樹脂とするために用いられるものであればよく、エポキシ樹脂(b)と同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。したがって、エポキシ樹脂(b)として上記したものを同様に用いることができることは勿論であるが、以下具体例を挙げてより詳細に説明する。
【0123】
エポキシ樹脂(c)としては、例えば、モノエポキシ化合物、多価エポキシ化合物、又はそれらの混合物等が挙げられる。モノエポキシ化合物としては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、パラ−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、パラキシリルグリシジルエーテル、グリシジルアセテート、グリシジルブチレート、グリシジルヘキソエート、グリシジルベンゾエート等が挙げられる。多価エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等;多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂;4,4−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂等のグリシジル型エポキシ樹脂と、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイ等が挙げられる。これらの中でも、Bis−A型、Bis−F型、アルコール型等のグリシジルエーテル;芳香族アミン型、フェノール型等のグリシジルアミン;ヒドロフタル酸型、ダイマー型等のグリシジルエステルが好ましい。さらに、希釈性の観点から、エポキシ樹脂(c)は、分子内に1〜2官能のグリシジル基を有するものがより好ましい。
【0124】
エポキシ樹脂(c)の粘度は、特に限定されないが、希釈性の観点から、25℃で0.1〜1000Pa・sであることが好ましい。エポキシ樹脂(c)の重量平均分子量は、特に限定されないが、希釈性の観点から、1000以下であることが好ましい。この粘度は、JIS K 7233に準じて測定することができる。
【0125】
マスターバッチ型硬化剤組成物と、上述したエポキシ樹脂(c)との質量比は、特に限定されないが、マスターバッチ型硬化剤組成物100質量部に対して、エポキシ樹脂(c)は10〜10000質量部であることが好ましく、50〜5000質量部であることがより好ましく、100〜1000質量部であることが更に好ましい。かかる範囲とすることで、一液性エポキシ樹脂組成物の硬化性を一層優れたものにできるだけでなく、得られる硬化物の硬化ムラの更なる抑制やガラス転移温度(Tg)の更なる向上等も実現することができる。
【0126】
本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物や一液性エポキシ樹脂組成物は、これを含むペースト状組成物やフィルム状組成物とすることができる。ここでいう、ペースト状とは、流動性のある液状のものをいい、フィルム状(シート状と呼ばれる場合もある。)とは、流動性のない可撓性のある固形であるものをいう。本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物、一液性エポキシ樹脂組成物、ペースト状及びフィルム状組成物は、公知の方法にて適宜成形すること等によって、成形品として使用できる。ここでいう、成形品には、上記した各組成物を、必要に応じて硬化させたもの(硬化体)も包含される。
【0127】
上記成形品は、接着剤、接合用ペースト、接合用フィルム、導電性材料、異方導電性材料、絶縁性材料、封止材料、コーティング用材料、塗料組成物、プリプレグ、熱伝導性材料、燃料電池用セパレータ材及びフレキシブル配線基板用オーバーコート材からなる群より選択されるいずれか1種であることが好ましい。本実施形態にて得られる成形品は、従来のエポキシ樹脂組成物よりも短時間にて硬化できるという優れた特性を有するので、これらの材料や部材として特に好適である。
【0128】
上記成形品の形状や用途としては、特に限定されないが、具体的には接着剤、接合用ペースト、接合用フィルム、導電性材料、異方導電性材料、絶縁性材料、封止材料、コーティング用材料、塗料組成物、プリプレグ、熱伝導性材料、燃料電池用セパレータ材及びフレキシブル配線基板用オーバーコート材からなる群より選択されるいずれか1種であることが好ましい。
【0129】
接着剤、接合用ペースト、接合用フィルムとしては、液状接着剤やフィルム状接着剤、ダイボンディング材等として有用である。接合用フィルムの製造方法としては、特に限定されず、公知の方法も採用できる。接合用フィルムの製造方法の一例としては、以下の方法が挙げられる。
【0130】
固形エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂及び固形のウレタン樹脂を、これらの総量が50質量%になるように、トルエン中に溶解、分散させた溶液を作製する。続いて、本実施形態のエポキシ樹脂組成物を、溶液に対して30質量%となるように添加・分散させてワニスを調製する。このワニスを、例えば、厚さ50μmの剥離用ポリエチレンテレフタレート基材に、トルエンが乾燥した後に厚さ30μmとなるように塗布する。トルエンを乾燥させることにより、常温では不活性であり、加熱することにより潜在性硬化剤の作用で接着性を発揮する、接合用フィルムを得ることができる。
【0131】
導電性材料としては、導電性フィルム、導電性ペースト等が挙げられる。また、本実施形態のエポキシ樹脂組成物を用いた異方導電性材料としては、異方導電性フィルム、異方導電性ペースト等が挙げられる。上記した導電性材料や異方導電性材料の製造方法の一例としては、例えば、上述の接合用フィルムの製造において、上記のワニスの調製時に導電性材料や異方導電性材料である導電粒子を混合・分散させて、剥離用の基材に塗布後、乾燥することにより製造することができる。
【0132】
導電粒子としては、半田粒子、ニッケル粒子、ナノサイズの金属結晶粒子、金属の表面を他の金属で被覆した粒子、銅と銀の傾斜粒子等の金属粒子、樹脂粒子(例えば、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等)に導電性薄膜(金、ニッケル、銀、銅、半田等)で被覆を施した粒子等が使用される。一般に、これらの導電粒子は、1〜20μm程度の球形の微粒子である。
【0133】
フィルムにする場合の基材としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂製の基材を用いることができる。
【0134】
絶縁性材料としては、絶縁性接着フィルム、絶縁性接着ペースト等が挙げられる。上述の接合用フィルムを用いることで、絶縁性材料である絶縁性接着フィルムを得ることができる。また、封止材を用いることの他、上記の充填剤のうち、絶縁性の充填剤を配合することで、絶縁性接着ペーストを得ることができる。
【0135】
封止材としては、固形封止材、液状封止材及びフィルム状封止材等として有用である。液状封止材としては、アンダーフィル材、ポッティング材、ダム材等として有用である。封止材の製造方法の一例としては、以下の方法が挙げられる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂、硬化剤として、例えば、酸無水物硬化剤である無水メチルヘキサヒドロフタル酸、さらに球状溶融シリカ粉末を加えて均一に混合し、それに本実施形態のエポキシ樹脂組成物を加えて均一に混合することにより、封止材を得ることができる。
【0136】
コーティング用材料としては、例えば、電子材料のコーティング材、プリント配線版のカバー用のオーバーコート材、プリント基板の層間絶縁用樹脂組成物等が挙げられる。コーティング用材料の製造方法の一例としては、以下の方法が挙げられる。充填剤からシリカ等を選定し、フィラーとして、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の他、フェノキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂等を配合し、さらに本実施形態のエポキシ樹脂組成物を配合し、メチルエチルケトン(MEK)で50%の溶液を調製する。これをポリイミドフィルム上に50μmの厚さでコーティングし、銅箔を重ねて60〜150℃でラミネートし、当該ラミネートを180〜200℃で加熱硬化させることにより、層間がエポキシ樹脂組成物によりコーティングされた積層板を得ることができる。
【0137】
塗料組成物の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法も採用できる。塗料組成物の製造方法の一例としては、以下の方法が挙げられる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂に、二酸化チタン、タルク等を配合し、混合溶剤としてメチルイブチルケトン(MIBK)/キシレンの1:1混合溶剤を添加、攪拌して主剤とする。これに本実施形態のエポキシ樹脂組成物を添加し、均一に分散させることにより、塗料組成物を得ることができる。
【0138】
プリプレグの製造方法としては、特に限定されず、公知の方法も採用できる。例えば、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物を補強基材に含浸し、加熱することにより得ることができる。含浸させるワニスの溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、エチルセルソルブ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられ、これらの溶剤はプリプレグ中に残存しないことが好ましい。なお、補強基材の種類としては、特に限定されないが、例えば、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド布、液晶ポリマー等が挙げられる。上記組成物と補強基材の割合は特に限定されないが、プリプレグ中の樹脂分含有量は20〜80質量%であることが好ましい。
【0139】
熱伝導性材料の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法も採用できる。熱伝導性材料の製造方法の一例としては、以下の方法が挙げられる。熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂、硬化剤としてフェノールノボラック硬化剤、熱伝導フィラーとしてグラファイト粉末を配合して均一に混練する。これに本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物等を配合することにより熱伝導性材料を得ることができる。
【0140】
燃料電池用セパレータ材の作製方法としては、特に限定されず、公知の方法も採用できる。例えば、上記したエポキシ樹脂やその他の樹脂(例えば、フェノールノボラック樹脂等)に、人造黒鉛、離型剤及び滑剤等を配合して均一に混練する。これに本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物を加えて、3本ロール等により均一に混合し、燃料電池用セパレータ材用金型を用いて加圧成形する方法等が挙げられる。
【0141】
フレキシブル配線基板用オーバーコート材の作製方法としては、特に限定されず、公知の方法も採用できる。例えば、上記したエポキシ樹脂と、エポキシ基と反応する樹脂(マレイン化変性ポリブタジエン樹脂等)と、本実施形態のマスターバッチ型硬化剤組成物等を配合して、3本ロールで均一に混合する。さらにMEK等の溶剤を加えて、ミキサーで均一になるまで攪拌混合して溶解分散させて、オーバーコート用接着剤溶液とする。そして、溶液を乾燥させて、フレキシブル配線基板用オーバーコート材とする方法が挙げられる。
【実施例】
【0142】
本発明を更に詳細に説明するために、以下に、実施例及び比較例を示すが、これらの実施例及び比較例は、本発明を何ら制限するものではない。
【0143】
(1)全アミン量(全アミノ基窒素含有量)
JIS K7245:2000に準拠して測定した。
【0144】
(2)軟化点
JIS K7234に準拠し、グリセリン浴を用いて、軟化点測定器(明峰社製作所製、「MEIHOHSHA SOFTNING POINT TETSTER ASP−M2SP」)を用いて、環球法による軟化点測定を行った。軟化点は、塊状のエポキシ樹脂用硬化剤の軟化点を測定した。
【0145】
(3)粉砕性
後述するアダクトを、以下の条件で粗砕・粉砕し、その粉砕性を評価した。まず、粉砕機(ホソカワミクロン社製、「ロートプレックス」)により、0.1〜2mm程度に粗砕した。次に、得られた粗砕物を、5.0kg/hrの供給量で、気流式ジェットミル(日清エンジニアリング社製、「CJ25型」)に供給し、0.6MPa・sの粉砕圧で粉砕した。なお、粉砕性は以下の基準に基づき評価し、「A」であれば、粉砕性は十分であると評価した。
「A」:外観にブロッキングがない。
「B」:外観にダマが多く、容易に崩壊しない。
「C」:外観にダマがあり光沢を有する、ダマは粘性を有する。
【0146】
(4)メジアン径
試料4mgをスルホコハク酸系界面活性剤(三井サイテック社製、商品名「エアロゾルOT−75」)のシクロヘキサン溶液32g(界面活性剤の濃度:1質量%)に入れ、超音波洗浄器(本田電子社製、「MODEL W−211」)で5分間超音波照射して分散液を得た。このときの超音波洗浄器内の水温は19±2℃に調整した。得られた分散液の一部を取り、粒度分布計(堀場製作所社製、「HORIBA LA−920」)にて、平均粒径及び粒度分布(小粒径含有率測定)を測定した。
【0147】
(5)貯蔵安定性
後述するマスターバッチ型硬化剤組成物を40℃で1週間保存した前後の粘度を測定し、その粘度上昇倍率を求め、以下の基準に基づきマスターバッチ型硬化剤組成物の貯蔵安定性を評価した。なお、粘度は、25℃でBM型粘度計を使用して測定し、「A」及び「B」であれば、貯蔵安定性は十分であると評価した。
「A」:保存後の粘度上昇率が2倍未満のもの
「B」:2倍以上5倍未満のもの
「C」:5倍以上10倍未満のもの
「D」:10倍以上又はゲル化したもの
【0148】
(6)耐溶剤性
後述するマスターバッチ型硬化剤組成物80質量部、トルエン15質量部、酢酸エチル5質量部を混合してサンプルを調製した。得られたサンプルを40℃で6時間加温し、加温後のサンプルの粘度を測定し、以下の基準に基づきマスターバッチ型硬化剤組成物の耐溶剤性を評価した。「A」、「B」及び「C」であれば、耐溶剤性は十分であると評価した。
「A」:粘度が200mPa・s未満のもの
「B」:200mPa・s以上1000mPa・s未満のもの
「C」:1000mPa・s以上20000mPa・s未満のもの
「D」:20000mPa・s以上2000000mPa・s未満のもの
「E」:2000000mPa・s以上のもの
【0149】
(7)短時間硬化性
上記(6)のサンプルをPETフィルム上(リンテック社製、商品名「PW50T090」;厚み50μm)に塗布し、70℃で10分間熱風乾燥させて、溶媒を除いた。これにより、試験用のフィルムを得た(厚さ20μm)。続いて、模擬回路接続体を以下のようにして作製した。まず、プリント配線板(ピッチ0.5mm、ライン/スペースの配置間隔=1/1)上に、前記フィルムを仮付けした。仮付けの条件は、圧力0.1MPa、加熱温度70℃、熱圧着時間3秒とした。次いで、仮付けされたフィルムの上に同じフレキシブルプリント配線板(ピッチ0.5mm、ライン/スペースの配置間隔=1/1、ポリイミド製)をもう1枚載置した。この際、プリント配線板の回路電極とフレキシブルプリント配線板の回路電極とが対向する位置となるように、フィルムを介して両配線板を重ね合わせた。その後、圧力0.3MPa、加熱温度180℃、熱圧着時間5秒の条件で熱圧着を行うことによって模擬回路接続体を得た。得られた模擬回路接続体を手で引っ張り、以下の基準に基づき、短時間硬化性を評価した。なお、「A」、「B」及び「C」であれば、短時間硬化性は十分であると評価した。
「A」:剥離不可能なもの
「B」:剥離可能であるがPETフィルムあるいはプリント配線板が破壊されたもの
「C」:剥離可能であるが樹脂成分が硬化しているもの
「D」:剥離可能で樹脂成分にべとつきが残っているもの
【0150】
<エポキシ樹脂>
[EP1]
EP1としてエポキシ当量189eq/g、全塩素量1500ppmのビスフェノールA型のエポキシ樹脂(旭化成エポキシ社製、商品名「AER260」)を用いた。なお、全塩素量は、JIS K7243−3に準拠して測定した。
【0151】
[EP2]
EP2としてエポキシ当量185eq/g、全塩素量350ppmのビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名「YL980を使用」)を用いた。
【0152】
[EP3]
EP3としてエポキシ当量175eq/g、全塩素量350ppmのビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名「YL983Uを使用」)を用いた。
【0153】
[EP4]
EP4としてエポキシ当量143eq/g、全塩素量800ppmのナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製、商品名「HP4032Dを使用))を用いた。
【0154】
[EP5]
EP5としてエポキシ当量345eq/g、全塩素量1500ppmのビスフェノールA型のエポキシ樹脂(旭化成エポキシ社製、商品名「AER4152」)を用いた。
【0155】
使用したエポキシ樹脂EP1〜EP5の特性を表1に示す。
【表1】

【0156】
<イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤の原料となるイミダゾールアダクトの製造>
[IA1]
エポキシ樹脂EP1を1当量及び2−メチルイミダゾール(2MZ)を0.7当量(モル比換算)とし、樹脂分が50質量%となるように計量し、n−ブタノールとトルエンの質量比1/1混合溶媒中に投入し、80℃で加熱した。その後、減圧下で2−メチルイミダゾールの含有量が0.5質量%になるまで溶剤とともに留去し、25℃で固体状のイミダゾールアダクトIA1を得た。得られたアダクトを粉砕したところメジアン径は全て2μmであった。
【0157】
<アミン系マイクロカプセル型硬化剤の原料となるアミンアダクトの製造>
[AA1]
エポキシ樹脂EP5を0.6当量、エポキシ樹脂EP5を0.4当量、及びトリエチレンテトラミンを1.2当量(モル比換算)とし、樹脂分が50質量%となるように計量し、n−ブタノールとトルエンの質量比1/1混合溶媒中に投入し、80℃で加熱した。その後、減圧下でトリエチレンテトラミンの含有量が0.5質量%になるまで溶剤とともに留去し、25℃で固体状のアミンアダクトAA1を得た。AA1の全アミン基窒素含有量は12.0%であった。得られたアダクトを粉砕したところメジアン径は全て2μmであった。
【0158】
<溶融混合のアダクト製造>
[MA1,2]
上記で得られたイミダゾールアダクト(IA1)とアミンアダクト(AA1)を、表2示す比率で配合して、溶融混合アダクト(MA1、MA2)をそれぞれ製造した。例えば、溶融混合アダクトMA1の場合、イミダゾールアダクトIA1を15質量部、アミンアダクトAA1を85質量部混合し、150℃で溶融混合したものを、メジアン径2μmとなるように粉砕して、溶融混合アダクトMA1を得た。なお、溶融混合アダクトMA2のメジアン径も2μmであった。
【0159】
得られたアダクトの特性を表2に示す。
【表2】

【0160】
[製造例1]
エポキシ樹脂EP3を20質量部、エポキシ樹脂EP4を180質量部、アダクトIA1を100質量部、水を1質量部、及びポリメチレンフェニレンポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製、商品名「MR200」)を2質量部混合し、40℃で攪拌しながら3時間反応を続け、加熱処理前の組成物MB1(以下、「組成物MB1」という場合がある。以下同様。)を得た。なお、得られた組成物MB1がマイクロカプセル化されていることは、示差走査熱量測定(DSC)により確認した。測定は、示差走査熱量測定機(エスアイアイナノテクノロジー社製、示差走査熱量測定システム、「EXSTAR6000」)を用いて、サンプル量10mgを、昇温速度10℃/分で、40℃から250℃まで昇温させて、窒素気流下にて測定した。より具体的には、アダクトAA1のみの場合のDSC曲線と、組成物MB1のDSC曲線とを比較し、組成物MB1のピークがシャープになっていることにより、組成物MB1がマイクロカプセル化されていることを確認した。以下、同様の方法により、各製造例の組成物MB2〜MB13がマイクロカプセル化されていることを確認した。
【0161】
[製造例2]
製造例1で用いたポリメチレンフェニレンポリイソシアネートを3質量部に変更した以外は、製造例1と同様に製造して、加熱処理前の組成物MB2を得た。
【0162】
[製造例3]
製造例1で用いたポリメチレンフェニレンポリイソシアネートを6質量部とした以外は、製造例1と同様に製造して、加熱処理前の組成物MB3を得た。
【0163】
[製造例4]
製造例1で用いたポリメチレンフェニレンポリイソシアネートを7質量部に、水を2質量部に変更した以外は、製造例1と同様に製造して、加熱処理前の組成物MB4を得た。
【0164】
[製造例5]
製造例1で用いたポリメチレンフェニレンポリイソシアネートを9質量部に変更した以外は、製造例1と同様に製造して、加熱処理前の組成物MB5を得た。
【0165】
[製造例6]
製造例1で用いたポリメチレンフェニレンポリイソシアネートを12質量部に変更した以外は、製造例1と同様に製造して、加熱処理前の組成物MB6を得た。
【0166】
[製造例7]
製造例1で用いたポリメチレンフェニレンポリイソシアネートを15質量部に変更した以外は、製造例1と同様に製造して加熱処理前の組成物MB7を得た。
【0167】
[製造例8]
エポキシ樹脂EP3を20質量部、エポキシ樹脂EP4を180質量部、アダクトAA1を100質量部、水を1質量部、及びポリメチレンフェニレンポリイソシアネートを2質量部混合し、40℃で攪拌しながら3時間反応を続け、加熱処理前の組成物MB8を得た。
【0168】
[製造例9]
エポキシ樹脂EP3を20質量部、エポキシ樹脂EP4を180質量部、アダクトMA1を100質量部、水を1質量部、及びポリメチレンフェニレンポリイソシアネートを2質量部混合し、40℃で攪拌しながら3時間反応を続け、加熱処理前の組成物MB9を得た。
【0169】
[製造例10]
エポキシ樹脂EP3を20質量部、エポキシ樹脂EP4を180質量部、アダクトMA2を100質量部、水を1質量部、及びポリメチレンフェニレンポリイソシアネートを2質量部混合し、40℃で攪拌しながら3時間反応を続け、加熱処理前の組成物MB10を得た。
【0170】
[製造例11]
製造例1で用いたエポキシ樹脂EP4の180質量部を、エポキシ樹脂EP4を100質量部及びソルビトール変性ポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコールEX622」、平均官能基数3.8;以下「EX−622」という場合がある。)を80質量部に変更した以外は、マスターバッチ型硬化剤MB1と同様に作製し、加熱処理前の組成物MB11を得た。
【0171】
[製造例12]
製造例11のEX−622をトリグリシジル−p−アミノフェノール(三菱化学社製、商品名「jER630」、トリグリシジル−p−アミノフェノール、官能基数3.0;以下「TGAP−LSD」という場合がある。)に変更した以外は、製造例11と同様に作製し、加熱処理前の組成物MB12を得た。
【0172】
[製造例13]
製造例11のEX−622をテトラグリシジルメタキシレンジアミン(三菱瓦斯化学社製、商品名「TETRAD−X」、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、官能基数4.0;以下、「TGXDA」という場合がある。)に変更した以外は、製造例11と同様に作製し、加熱処理前の組成物MB13を得た。
【0173】
得られた組成物MB1〜13の組成を表3に示す。
【表3】

【0174】
[各実施例及び各比較例のマスターバッチ型硬化剤組成物の作製]
上記各製造例にて作製した加熱処理前の組成物MB1〜MB13を必要に応じて加熱処理してマスターバッチ型硬化剤組成物を作製し、その物性を評価した。まず、組成物MB1〜MB13を5g入れた容器を、小型高温チャンバー(ESPEC社製、商品名「ST−110」)内に入れて密閉し、表4〜7に示す加熱条件(加熱温度30〜50℃、加熱時間30〜50時間)で加熱処理を行った。なお、比較例1〜4、6、8、10〜14は加熱処理を行っていない。
【0175】
マスターバッチ型硬化剤組成物について、加熱処理前の組成物MBのDSCピーク(ピークII)の活性化温度と、加熱処理後のマスターバッチ型硬化剤組成物のDSCピーク(ピークI)の活性化温度は、示差走査熱量測定機(エスアイアイナノテクノロジー社製、示差走査熱量測定システム、商品名「EXSTAR6000」)を用いて、サンプル量10mgを昇温速度10℃/分、40℃から250℃まで昇温させて、窒素気流下にて測定した。なお、比較例1〜4、6、8、10〜14は、加熱処理を行っていないので、マスターバッチ型硬化剤組成物のピークIIの活性化温度のみを表に記載した。
【0176】
ピークIの半値幅とピークIIの半値幅は、示差走査熱量測定機(エスアイアイナノテクノロジー社製、示差走査熱量測定システム、商品名「EXSTAR6000」)に付属のソフトウェア「Muse標準解析」により測定した。発熱ピークの始めと終わりはそれぞれdW/dt≒0となる箇所を採用した。そして、ピークIIの半値幅に対するピークIの半値幅の割合(I/II)を半値幅変化率(%)として算出した。なお、比較例1〜4、6、8、10〜14については、熱処理を行っていないので、半値幅変化率は100%とした。
【0177】
各実施例及び各比較例のマスターバッチ型硬化剤組成物の評価結果を、表4〜7に示す。
【0178】
【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【0179】
表4〜7に示されるように、各実施例のマスターバッチ型硬化剤組成物は、貯蔵安定性、耐溶剤性及び短時間硬化性のいずれも良好であることが確認された。一方、各比較例のマスターバッチ型硬化剤組成物は、貯蔵安定性、耐溶剤性及び短時間硬化性のいずれかは劣っていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明に係るマスターバッチ型硬化剤組成物、一液性エポキシ樹脂組成物、ペースト状組成物、フィルム状組成物及びこれらの成形品は、各種接着剤、接合用ペースト、接合用フィルム、導電性材料、異方導電性材料、絶縁性材料、コーティング用材料、塗料組成物、プリプレグ、熱伝導性材料、燃料電池用セパレータ材、フレキシブル配線基板用オーバーコート材等としての産業上利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアを被覆するシェルと、を有するマイクロカプセル型硬化剤(a)、及びエポキシ樹脂(b)を含む組成物を加熱処理して得られ、
前記加熱処理前の前記組成物のDSC測定ピーク(ピークII)の半値幅に対する、前記加熱処理後の前記組成物のDSC測定ピーク(ピークI)の半値幅の割合(I/II)が、50〜95%の範囲であるマスターバッチ型硬化剤組成物。
【請求項2】
前記加熱処理前の前記組成物のDSC測定ピーク(ピークII)が、120℃以下に存在する請求項1に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物。
【請求項3】
前記加熱処理の温度が、30℃以上である請求項1又は2に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂(b)が、グリシジルアミン化合物に由来する構造を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂(b)として、平均官能基数が2より大きいエポキシ樹脂を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂(b)として、3官能以上のエポキシ樹脂を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂(b)として、4官能以上のエポキシ樹脂を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物。
【請求項8】
前記マイクロカプセル型硬化剤(a)として、イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤及びアミン系マイクロカプセル型硬化剤を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物。
【請求項9】
前記マイクロカプセル型硬化剤(a)の前記コアとして、イミダゾール系硬化剤及びアミン系硬化剤を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物100質量部と、
エポキシ樹脂(c)10〜10000質量部と、
を含む一液性エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物、又は請求項10に記載の一液性エポキシ樹脂組成物を含むペースト状組成物。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物、又は請求項10に記載の一液性エポキシ樹脂組成物を含むフィルム状組成物。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のマスターバッチ型硬化剤組成物、請求項10に記載の一液性エポキシ樹脂組成物、請求項11に記載のペースト状組成物、又は請求項12に記載のフィルム状組成物を含む成形品。
【請求項14】
前記成形品は、接着剤、接合用ペースト、接合用フィルム、導電性材料、異方導電性材料、絶縁性材料、封止材料、コーティング用材料、塗料組成物、プリプレグ、熱伝導性材料、燃料電池用セパレータ材、及びフレキシブル配線基板用オーバーコート材からなる群より選択されるいずれか1種である請求項13に記載の成形品。
【請求項15】
コアと、前記コアを被覆するシェルと、を有するマイクロカプセル型硬化剤(a)、及びエポキシ樹脂(b)を含む組成物を、加熱処理することにより、前記加熱処理前の前記組成物のDSC測定ピーク(ピークII)の半値幅に対する、前記加熱処理後の前記組成物のDSC測定ピーク(ピークI)の半値幅の割合(I/II)が、50〜95%の範囲である、マスターバッチ型硬化剤組成物を得る工程を有する、マスターバッチ型硬化剤組成物の製造方法。

【公開番号】特開2013−1875(P2013−1875A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136689(P2011−136689)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】