説明

マスターバッチ組成物、複合材料組成物、複合材料成型体、およびその製造方法

【課題】本発明は、熱可塑性樹脂中の層状化合物の分散性がさらに良好なマスターバッチ組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、成分(A)層状化合物、成分(B)変性熱可塑性樹脂、および成分(C)ビニル芳香族単量体単位および共役ジエン単量体単位を主体とする非変性の水添共重合体、を含有するマスターバッチ組成物であって、前記成分(A)の含有量が5wt%〜70wt%であり、成分(B)の含有量が5wt%〜85wt%であり、且つ前記成分(C)の含有量が3wt%〜70wt%である、マスターバッチ組成物を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂改質用マスターバッチ組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂の諸特性、特に剛性を改良するために、タルクなどの無機フィラーを混合して、その補強効果により諸特性を向上させることが実施されている。例えば、タルクは結晶性熱可塑性樹脂の剛性を向上させることが知られている。しかしながら、十分な剛性を得るためには多量のタルクを添加せねばならず、成形体の軽量化の要求には十分こたえられるものではなかった。そのため、少量の添加で大きな効果を示す無機フィラーが望まれていた。
【0003】
このため、近年、層状化合物の一種である粘土鉱物を無機フィラーとして用い、熱可塑性樹脂と無機層状化合物を含む組成物を、二軸押出機等を用いて溶融混合し、熱可塑性樹脂中に、層状粘土鉱物を層剥離させて、ナノオーダーで分散させることが試みられている。
【0004】
このような複合材料組成物においては、層状化合物を微分散させることが困難なため、予め、層状化合物と熱可塑性樹脂を含む組成物を混合し、マスターバッチ組成物を調整後、他の成分を混合して、複合材料組成物を製造する方法が提案されている。
【0005】
特許文献1には、マスターバッチ組成物として、層状珪酸塩と変性ポリオレフィンを必須成分とし、必要に応じて、非変性のポリオレフィンを含む組成物が提案されている。
【0006】
特許文献2には、マスターバッチ組成物として、層状構造を有するクレー、変性ポリオレフィンおよび非変性のポリオレフィンを含む組成物が提案されている。
【0007】
特許文献3は、マスターバッチ組成物として、層状珪酸塩および非変性のポリプロピレンを含む組成物が提案されている。
【特許文献1】特開2000−281847号公報
【特許文献2】特開2005−307201号公報
【特許文献3】特開2004−51827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、熱可塑性樹脂中の層状化合物の分散性がさらに良好なマスターバッチ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の新規なマスターバッチ組成物を用いれば、熱可塑性樹脂中で層状化合物が十分に分散することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
〔1〕成分(A)層状化合物、成分(B)変性熱可塑性樹脂、および成分(C)ビニル芳香族単量体単位および共役ジエン単量体単位を主体とする非変性の水添共重合体、を含有するマスターバッチ組成物であって、前記成分(A)の含有量が5wt%〜70wt%であり、成分(B)の含有量が5wt%〜85wt%であり、且つ前記成分(C)の含有量が3wt%〜70wt%である、マスターバッチ組成物;
〔2〕前記成分(B)が変性ポリプロピレンである、上記〔1〕に記載のマスターバッチ組成物;
〔3〕前記成分(A)が、有機化処理された層状粘土鉱物である、上記〔1〕また〔は2〕に記載のマスターバッチ組成物;
〔4〕前記成分(C)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(B1)を1つ以上含有する、上記〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物;
〔5〕前記成分(C)の重量平均分子量が5万以上である、上記〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物;
〔6〕上記〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物と、ポリオレフィン系樹脂とを含む複合材料組成物;
〔7〕上記〔1〔から〔5〕のいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物と、ポリオレフィン系樹脂とを含む複合材料成型体;
〔8〕少なくとも、成分(A)層状化合物、成分(B)変性熱可塑性樹脂、および成分(C)ビニル芳香族単量体単位および共役ジエン単量体単位を主体とする非変性の水添共重合体、を含有する組成物を、スクリュー押出し機を用いて混合する工程を含む、マスターバッチ組成物の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のマスターバッチ組成物によれば、熱可塑性樹脂中層状化合物の分散性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係るマスターバッチ組成物は、成分(A)層状化合物と、成分(B)変性熱可塑性樹脂と、成分(C)ビニル芳香族単量体単位および共役ジエン単量体を主体とする非変性の水添共重合体とを必須の構成要素とする。
【0013】
本発明の成分(A)である層状化合物とは、グラファイト、金属カルコゲン化合物、金属酸化物、金属リン酸塩、粘土鉱物等の層状構造を有する化合物を指す。このなかでも、高い層剥離性の点で、層状粘土鉱物が好ましい。
【0014】
層状粘土鉱物としては、モンモリナイト、サポタイト、ハイデライト、ノントライト、ヘクトライト、ステイブンサイト等のスメクタイト系や、バーミキュサイト、ハロイサイト、膨潤性マイカ等が挙げられる。天然又は合成の層状粘土鉱物のいずれも使用することができる。さらに、タルクにフッ素処理を行って膨潤性マイカに合成した化合物、あるいは水熱合成によって上記のような構造を得たものが例示される。また、層間に担持されているカチオンを、ナトリウム、カリウム、リチウム等のイオンで置換した種々の化合物が適用できる。
【0015】
層状粘土鉱物のなかでも、層剥離性および微分散性の点で、有機化処理されたものが特に好ましい。層状粘土鉱物の有機化は、一般に湿式法を用いて行うことができる。層状珪酸塩を水やアルコール等で十分溶媒和させた後、有機カチオンを加え、撹拌し、層状珪酸塩の層間の金属イオンを有機カチオンに置換させる。その後、未置換の有機カチオンを十分に洗浄し、ろ過、乾燥する。その他、有機溶剤中で層状珪酸塩と有機カチオンを直接反応させたり、樹脂などの存在下、層状珪酸塩と有機カチオンを押出機中で加熱混練し反応させることも可能である。
【0016】
層状粘土鉱物の陽イオン交換容量は、有機化処理時に有機カチオンのイオン交換性が高い点では、50ミリ当量/100g以上が好ましく、層間剥離性を高くする点では、200ミリ当量/100g以下が好ましい。
【0017】
層状粘土鉱物の有機化に用いる有機カチオンの例としては、ステアリルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジステアリルアンモニウムイオン、1−ヘキセニルアンモニウムイオン、1−ドデセニルアンモニウムイオン、9−オクタデセルアンモニウムイオン、9,12−オクタデセルアンモニウムイオン、12−アミノドデカン酸と塩酸からなるアンモニウム塩、アルキルプロピレンジアミンと塩酸からなるアンモニウム塩等のアンモニウムイオン、テトラエチルホスフォニウムイオン、トリエチルベンジルフォスホニウムイオン、テトラ−n−ブチルホスフォニウムイオン、トリ−n−ブチルヘキサデシルホスフォニウムイオン等のホスフォニウムイオンが挙げられる。本発明においては、層状粘土鉱物を1種で使用してもよいし、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0018】
複合材料組成物中で、層状化合物は、剛性を高めるために、層剥離した状態で、微分散して存在していることが重要である。具体的には、組成物中において層状化合物の単位層が1枚ずつ剥離しているか、あるいは材料の物性低下を来たさない範囲で数枚または数十枚以下の積層状態のものが、互いに十分な層間距離をもって分散しており、好ましくは、層状化合物の20%以上が50nm以下の厚みで存在している。50nm以下で存在している層状化合物の割合は、例えば、複合材料組成物の成型品を流動方向に垂直に切断し、層状化合物を透過型電子顕微鏡で観察し、層状化合物の厚み、及び幅を測定し、50nm厚み以下の成分の断面積の合計値を、全層状化合物成分の断面積の合計値で割ることによって求められる。
【0019】
マスターバッチ組成物中の成分(A)の含有量は、経済性の点で5wt%以上であることが好ましく、より好ましくは10wt%以上、さらに好ましくは20wt%以上である。一方、マスターバッチ組成物の溶融混合性の点では、70wt%以下であることが好ましく、より好ましくは60wt%以下、さらに好ましくは50wt%以下である。
【0020】
本発明の成分(B)である変性熱可塑性樹脂とは、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する熱可塑性樹脂を指す。
【0021】
この中でも、該官能基を少なくとも1個有する変性ポリオレフィンが好ましい。変性ポリオレフィンに用いられるポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンの単独重合体あるいは2種類以上からなるランダムまたはブロック共重合体が挙げられる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリイソブテン、ポリ3−メチルペンテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−4−メチルペンテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、デセン−1−4−メチルペンテン−1共重合体等である。
【0022】
変性ポリオレフィンとしては、機械的物性、耐熱性等に優れることから、不飽和単量体変性ポリプロピレンが好適に用いられる。また、変性ポリプロピレンに用いられるポリプロピレンとしては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種類以上を同時に用いてもかまわない。
【0023】
変性ポリオレフィンは、例えば、ポリオレフィンに不飽和単量体をグラフト共重合またはブロック共重合する方法によって得ることができる。ここでいう不飽和単量体には、アクリル酸、メタクリル酸や、マレイン酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸およびその無水物である不飽和カルボン酸誘導体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アミノエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;ビニルトリメトキシシランやγ−アクリル酸プロピルトリメトキシシランなどのビニル基をもったアルコキシシランなどが含まれる。これらの中でも、層状化合物の分散性に優れることから、特に無水マレイン酸やメタクリル酸グリシジルが好ましい。
【0024】
ポリオレフィンの変性方法の具体例としては、ポリオレフィンと不飽和単量体との混合物を有機過酸化物などの存在下、押出機中で加熱混練する方法などが挙げられる。また、ポリオレフィンと不飽和単量体との混合物をキシレンなどの有機溶剤へ加熱溶解させ、有機過酸化物を加えて反応させ、アセトンなどの貧溶媒を加えることにより結晶化して得ることも可能である。また、ポリオレフィンに不飽和単量体の存在下で紫外線や放射線を照射する方法、ポリオレフィンに電離性放射線を照射した後に不飽和単量体を接触混合する方法、ポリオレフィンと不飽和単量体との混合物を酸素やオゾンに接触させる方法などが例示される。層状化合物の層剥離性の点では、ポリオレフィンの末端部分が変性されていることが好ましい。
【0025】
本発明で用いられる変性ポリプロピレンの重量平均分子量は、本発明の目的を損なわれなければ、特に限定されないが、重量平均分子量は10,000以上が好ましく、30,000以上がより好ましい。変性ポリプロピレンの重量平均分子量及び分子量分布は、例えば、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー測定(装置:LC−10(島津製作所製、商品名)、カラム:TSKgelGMHXL(4.6mmID×30cm)2本、溶媒:テトラヒドロフラン)によるポリスチレン換算分子量より求めることができる。
【0026】
マスターバッチ組成物中の成分(B)の含有量は、層状化合物の層剥離性を高める点で、5wt%以上であることが必須であり、好ましくは15wt%以上、さらに好ましくは30wt%以上である。一方、耐熱性の点で、85wt%以下であることが必須であり、好ましくは70wt%以下である。
【0027】
本発明の成分(C)の非変性の水添共重合体とは、ビニル芳香族単量体単位および共役ジエン単量体単位を主体として含有する共重合体の水添物である。
【0028】
本発明でいう、「主体とする」とは、50wt%以上を指す。ビニル芳香族単量体単位および共役ジエン単量体単位の含有量は、成分(C)の水添共重合体中80wt%以上であることが好ましく、90wt%以上がより好ましい。
【0029】
本発明に係るマスターバッチでは、ポリオレフィン系樹脂等を混合して得られる複合材料組成物の破壊強度を高めるため、成分(C)と成分(A)の相互作用が少ないように、成分(C)としてカルボン酸基やアミノ基等の官能基を含まない(非変性)ものを使用する必要がある。
【0030】
ビニル芳香族単量体単位としては、例えばスチレン、P−メチルスチレン、第三級ブチルスチレン、α−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレンなどの単量体が挙げられ、中でもスチレンが好ましい。
【0031】
共役ジエン単量体単位としては、ブタジエンやイソプレン等が挙げられ、樹脂組成物の相溶性の点で、ブタジエンが好ましい。
【0032】
水添率は、マスターバッチ組成物の溶融混合時の耐熱性の点で、共役ジエン中の2重結合中の50mol%以上であることが好ましく、より好ましくは70mol%以上、さらに好ましくは85mol%以上である。
【0033】
成分(C)の重量平均分子量は、層状化合物の剥離性の点で、5万以上が好ましく、押出加工性の点で、40万以下が好ましい。8万〜30万の範囲がより好ましく、12万〜26万の範囲がさらに好ましい。
【0034】
成分(C)中の共役ジエン中のビニル含有量は、複合材料組成物の破壊強度を高めるで、15mol%以上が好ましく、30mol以上がさらに好ましい。
【0035】
また、成分(C)中は、層状化合物の層剥離性や複合材料組成物の破壊強度を向上させる点で、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(B1)を1つ以上含有することが好ましい。より好ましくは、重合体ブロック(B1)を2つ以上含有することである。
【0036】
さらに、成分(C)中の重合体ブロック(B1)の含有率は、5wt%〜50wt%の範囲であることが好ましく、より好ましくは10wt%〜40wt%の範囲であり、さらに好ましくは10wt%〜30wt%の範囲である。
【0037】
成分(C)の好ましい構造として、下記の一般式のものが挙げられる。
【0038】
(A−B)n、A−(B−A)n、A−(B−A)n−B、
[(A−B)km−X、[(A−B)k−A]m−X
(上式において、Aはビニル芳香族単量体単位を主体とし、Bは共役ジエンを主体とする水添共重合体ブロックを示す。本発明でいう「主体とする」とは、50重量%以上を指す。Xは例えば四塩化ケイ素、四塩化スズ、エポキシ化大豆油、ポリハロゲン化炭化水素化合物、カルボン酸エステル化合物、ポリビニル化合物、ビスフェノール型エポキシ化合物、アルコキシシラン化合物、ハロゲン化シラン化合物、エステル系化合物等のカップリング剤の残基又は多官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。n、k及びmは、1以上の整数、一般的には1〜5である。)である。また、上記一般式で示される構造体が任意に組み合わされていてもよい。
【0039】
マスターバッチ組成物中の成分(C)の含有量は、層状化合物の層剥離性の点で、3wt%〜70wt%の範囲であることが必須である。5wt%〜40wt%の範囲がより好ましく、8wt%〜20wt%の範囲がさらに好ましい。
【0040】
マスターバッチ組成物の溶融混練時の耐熱性や、複合材料組成物の破壊強度等の改良するために、必要に応じて、マスターバッチ組成物中に、非変性のポリオレフィンを添加しても良い。非変性のポリオレフィンとして、例えば、非変性のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリイソブテン、ポリ3−メチルペンテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−4−メチルペンテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体あるいはデセン−1−4−メチルペンテン−1共重合体を、マスターバッチ組成物中に、3wt%〜30wt%の範囲で添加しても良い。
【0041】
また、少量であれば、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、シラノール基あるいはアルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する水添共重合体を添加しても良い。
【0042】
本発明のマスターバッチ組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を利用できる。例えば、成分(A)〜(C)を含む各成分を、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いて溶融混練する方法、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等が用いられ、特にスクリュー押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の点から好ましい。
【0043】
上述のように得られる本発明のマスターバッチ組成物は、ポリオレフィンを主体とする複合材料組成物に好適であり、かかる複合材料組成物も本発明に包含される。特に、ポリプロピレンを主体とする複合材料組成物に好適である。
【0044】
複合材料組成物は、例えば、ポリプロピレンを主体とする樹脂等と、本発明に係るマスターバッチ組成物とを、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いて溶融混練することにより製造できる。
【0045】
複合材料組成物中における成分(A)層状化合物の含有量は、複合材料組成物の剛性や破壊強度の点で、0.1wt%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3wt%以上であり、さらに好ましくは0.5wt%以上である。一方、複合材料組成物の加工性の点では、10wt%以下であることが好ましく、より好ましくは6wt%以下、さらに好ましくは5wt%以下である。
【0046】
本発明はまた、本発明に係るマスターバッチ組成物とポリオレフィン系樹脂を混合して得られる複合材料成型体も提供する。かかる複合材料成型体は、本発明に係る複合材料組成物を所望の形状に成型することによって得られ、剛性や破壊強度に優れた高品質なものである。
【実施例】
【0047】
以下、参考例、実施例、及び比較例により本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)マスターバッチ組成物の調製
(1−1)成分(A)の層状化合物
ジメチルジアルキルアンモニウム・合成マイカ(有機修飾フッ素化マイカ、ソマシフMAE、コープケミカル(株)製、商品名、有機物量:37wt%)を用いた。
(1−2)成分(B)の変性熱可塑性樹脂
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(ユーメックス1001、三洋化成製、商品名、重量平均分子量:Mw=40,000、酸価:26(JIS K 0017))を用いた。
(1−3)成分(C)の非変性の水添共重合体
下記の(a)あるいは(b)の2種類の水添共重合体を用いた。
(1−3−1)水添触媒の調製
ビニル芳香族単量体単位および共役ジエン単量体単位を主体とする共重合体の水素添加反応に用いた水素添加触媒は下記の方法で調製した。
【0048】
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1Lを仕込み、ビスシクロペンタジエニルチタニウムジクロリド100mmolを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200mmolを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
(1−3−2)非変性水添共重合体(a)
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を使用してバッチ重合を行った。はじめに、シクロヘキサン6.4L、スチレン90gを加え、予めTMEDAをn−ブチルリチウムのLiモル数の0.50倍モルになるように添加し、n−ブチルリチウム開始剤のLiのモル数として13.0mmolとなるように添加し、初期温度65℃で重合し、重合終了後、ブタジエン820gを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22wt%)を60分間かけて一定速度で、連続的に反応器に供給し、重合終了後、スチレン90gを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22wt%)を10分間かけて、一定速度で連続的に反応器に供給し、重合終了後、共重合体を得た。
【0049】
得られた共重合体のスチレン含有量は、18wt%、ブタジエン中の1,2−結合単位は、50wt%であった。
【0050】
得られた共重合体に、上記水素添加触媒をポリマー100重量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度75℃で水素添加反応を行った。得られたポリマー溶液に、安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
【0051】
得られた水添共重合体の重量平均分子量(Mw)は、13万で、分子量分布(Mw/Mn)は、1.1であり、水添共重合体中に含まれるブタジエンの二重結合中の水素添加率は、99%であった。
(1−3−3)非変性水添共重合体(b)
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を使用してバッチ重合を行った。はじめに、シクロヘキサン6.4L、スチレン70gを加え、予めTMEDAをn−ブチルリチウムのLiモル数の1.75倍モルになるように添加し、n−ブチルリチウム開始剤のLiのモル数として8.0mmolとなるように添加し、初期温度65℃で重合し、重合終了後、ブタジエン860gを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22wt%)を60分間かけて一定速度で、連続的に反応器に供給し、重合終了後、スチレン70gを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22wt%)を10分間かけて、一定速度で連続的に反応器に供給し、重合終了後、共重合体を得た。
【0052】
得られた共重合体のスチレン含有量は、14wt%、ブタジエン中の1,2−結合単位は、65%であった。
【0053】
得られた共重合体に、上記水素添加触媒をポリマー100重量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度75℃で水素添加反応を行った。得られたポリマー溶液に、安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
【0054】
得られた水添共重合体の重量平均分子量(Mw)は、24万で、分子量分布(Mw/Mn)は、1.1で、水添共重合体中に含まれるブタジエンの二重結合中の水素添加率は、99%であった。
(1−3−4)非変性水添共重合体の組成構造評価方法
(1−3−4−1)スチレン含有量、1,4−結合/1,2−結合単位、エチレン単位あるいはブチレン単位量
ビニル芳香族単量体単位、ブタジエンの1,4−結合単位および1,2−結合単位、エチレン単位あるいはブチレン単位量は、核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)により測定した。測定機器に、JNM−LA400(JEOL製、商品名)、溶媒に、重水素化クロロホルムを用い、サンプル濃度50mg/ml、観測周波数は400MHz、化学シフト基準に、TMS(テトラメチルシラン)、パルスディレイ2.904秒、スキャン回数64回、パルス幅45°、および測定温度26℃で行った。
(1−3−4−2)重量平均分子量及び分子量分布
装置に、LC−10(島津製作所製、商品名)、カラムに、TSKgelGMHXL(4.6mmID×30cm)2本を使用し、オーブン温度40℃、溶媒にはテトラヒドロフラン(1.0ml/min)で測定を行った。
ポリスチレン換算分子量として重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
(1−4)非変性の熱可塑性樹脂(D)
非変性の熱可塑性樹脂として、ホモポリプロピレンPM600A(サンアロマー社製、商品名)を用いた。
(2)マスターバッチの製造方法
表1に示す割合で各成分を仕込み、30mmφ2軸押出機を用いて混練温度200℃、回転数200rpmにて溶融混合して、ペレットを得た。
(3)マスターバッチ中の層状化合物の微分散性(層剥離性)
(2)で得られたマスターバッチ組成物を、200℃でプレス成型し、層状化合物を配向させた後に、切り出し電子顕微鏡で分散状態を観察した。
【0055】
サンプルは、ミクロトームで、厚み200オングストロームにカットし、塩化ルテニウム染色後に、電子顕微鏡(JEM−1230、JEOL社製、商品名)の加速電圧75kVで測定した。
【0056】
得られた画像を目視で観察し、層状化合物が層剥離している割合が多い方がよく、○とし、層剥離が進んでいないものは、悪く、×とした。
(4)複合材料組成物の製造方法
実施例1〜3および比較例1〜3のマスターバッチ組成物と、ホモポリプロピレンPM600Aとを含む複合材料組成物を製造した。マスターバッチ組成物とホモポリプロピレンPM600Aは、成分(A)の層状化合物量が複合材料組成物全体の4wt%となる割合とした。マスターバッチ組成物とホモポリプロピレンPM600Aを仕込み、30mmφ2軸押出機を用いて混練温度200℃、回転数200rpmにて溶融混合して、ペレットを得た。
(5)複合材料成型体
[結果]
実施例1〜3、比較例1〜3の評価試験結果を表1に記載する。
【0057】
実施例1〜3に示されるように、成分(A)〜(C)を所定の割合で含むマスターバッチ組成物では、層状化合物の高い微分散性が得られた。
【0058】
一方、成分(C)を含まない比較例1、成分(B)を含まない比較例2、および成分(C)を77wt%含む比較例3においては、分散性が不十分であった。
【0059】
また、実施例1〜3のマスターバッチ組成物を利用して製造した複合材料成型体は、比較例1〜3のマスターバッチ組成物を利用して製造した複合材料成型体に比較して、手で曲げた場合に硬く、層状化合物による補強効果が十分に得られていることが確認された。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)層状化合物、
成分(B)変性熱可塑性樹脂、および
成分(C)ビニル芳香族単量体単位および共役ジエン単量体単位を主体とする非変性の水添共重合体、を含有するマスターバッチ組成物であって、
前記成分(A)の含有量が5wt%〜70wt%であり、成分(B)の含有量が5wt%〜85wt%であり、且つ前記成分(C)の含有量が3wt%〜70wt%である、マスターバッチ組成物。
【請求項2】
前記成分(B)が変性ポリプロピレンである、請求項1に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項3】
前記成分(A)が、有機化処理された層状粘土鉱物である、請求項1または2に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項4】
前記成分(C)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(B1)を1つ以上含有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項5】
前記成分(C)の重量平均分子量が5万以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物と、ポリオレフィン系樹脂とを含む複合材料組成物。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物と、ポリオレフィン系樹脂とを含む複合材料成型体。
【請求項8】
少なくとも、
成分(A)層状化合物、
成分(B)変性熱可塑性樹脂、および
成分(C)ビニル芳香族単量体単位および共役ジエン単量体単位を主体とする非変性の水添共重合体、を含有する組成物を、スクリュー押出し機を用いて混合する工程を含む、マスターバッチ組成物の製造方法。


【公開番号】特開2008−50524(P2008−50524A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230752(P2006−230752)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】