マスタ体及び磁気記録媒体
【課題】磁気複製に適した特殊パターンを持ったマスタ体を作成し、磁気複製において高精度なサーボ情報の複製を行えるマスタ体及び磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】本発明のマスタ体は、磁気記録媒体に転写後に磁気的に安定、即ち磁気くずれやノイズの発生や磁束強度の不均一の発生を防止することができる特殊なサーボパターンを有することを特徴とする。具体的には、磁化単位同士が点で接する場合はこれを所定のパターンに置き換えて点で接しないようにして磁気くずれを防止し、同一パターンの磁化単位が連続する場合は、該同一パターンの磁化単位の間に異なるパターンを挿入してノイズの発生を防止し、対向する斜線で構成されるサーボパターンにおいては、該斜線が磁気記録媒体のトラック接線に対して一定の角度を保つようにして、転写後のサーボパターンの磁束強度が一様とし、読み取りの安定性、精度を確保することができる。
【解決手段】本発明のマスタ体は、磁気記録媒体に転写後に磁気的に安定、即ち磁気くずれやノイズの発生や磁束強度の不均一の発生を防止することができる特殊なサーボパターンを有することを特徴とする。具体的には、磁化単位同士が点で接する場合はこれを所定のパターンに置き換えて点で接しないようにして磁気くずれを防止し、同一パターンの磁化単位が連続する場合は、該同一パターンの磁化単位の間に異なるパターンを挿入してノイズの発生を防止し、対向する斜線で構成されるサーボパターンにおいては、該斜線が磁気記録媒体のトラック接線に対して一定の角度を保つようにして、転写後のサーボパターンの磁束強度が一様とし、読み取りの安定性、精度を確保することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボパターンが記録されており、磁気記録媒体に接近させて磁界を印加することにより該サーボパターンを該磁気記録媒体に転写するマスタ体及び磁気記録媒体に関し、特に、磁気記録媒体へのサーボパターンの転写を容易にするマスタ体及び磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置は大容量化のために年々記録密度が増し、ヘッドを位置決めするための位置決め情報であるサーボ情報を専用の装置を使用して高い精度で作成することが困難となってきている。また、磁気ディスクの製造コストを抑制するためにも、高精度のサーボ情報を容易に作成することが必要となってきている。
【0003】
そこで、磁性体部分がパターンニングされたマスタ体を用いて、これをスレーブ体である磁気記録媒体に密着・磁界印加することにより、サーボ情報のサーボパターンをマスタ体からスレーブ体へ磁気的に転写・複製する方法が開発されている。
【0004】
前述のサーボ情報のサーボパターンの転写・複製方法に使用されるマスタ体の作成方法は、特許文献1などに開示されている。この作成方法により、磁気記録媒体にサーボ情報の磁気転写に使用する凹凸パターン(サーボパターン)を有するマスタ体を、簡易にかつ安価に精度良く作成できる。そして前述の作成方法により作成されたマスタ体を使用すると、マスタ体からスレーブ体へ、安価で処理時間を短縮して、サーボ情報を一括して磁気的に転写・複製して磁気複製を作成することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−256644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に代表される技術を利用して作成されたマスタ体を使用したとしても、磁気転写・複製において問題点があった。例えば互いに異なる磁化方向を持つ二種類の磁化パターンを用いてサーボ情報のオン・オフを表現する場合に、磁化方向が同一の磁化パターンが角部同士など点で接する場合に、磁気転写・複製されたサーボパターンが安定せず崩れやすいという性質がある。
【0007】
また、同じく、互いに異なる磁化方向を持つ二種類の磁化パターンを用いてサーボ情報のオン・オフを表現する場合に、同一種類の磁化パターンが連続すると、この磁化パターンの連続部において、磁気転写・複製されたサーボパターンが安定せず崩れやすくなり、ノイズの発生を招きやすい。
【0008】
また、境界線に対して一定角度を持つ斜線が該境界線を挟んで対向するように構成される斜線パターンによりサーボ情報が表現される場合に、該境界線に対して斜線の角度が一定のため、斜線パターンは磁気ディスクの外周ほど該磁気ディスクのトラック円周に沿った格好となり、サーボ情報の磁気転写の印加磁界の余弦方向の磁化成分(即ち、トラック接線成分)が小さく、磁化の強度が相対的に弱くなり、またサーボ情報の読み取り時においても、磁気情報の読み取りの余弦方向の磁束成分が小さく、読み取りに困難を伴うという問題があった。
【0009】
これらのことから、マスタ体を用いて、より容易、高精度かつ安定した磁気複製を作成できるようにすることが極めて重要な課題となってきている。即ち、マスタ体からスレーブ体へ、安価で処理時間を短縮して、サーボ情報を一括して磁気的に転写・複製して磁気複製を作成することができるというサーボ情報の磁気複製作成方法のメリットを最大限に引き出すためにも、前述の問題点の解決が重要となってきている。
【0010】
本発明は、上記問題点(課題)を解決するためになされたものであって、磁気複製に適した特殊パターンを持ったマスタ体を作成し、磁気複製において高精度なサーボ情報の複製を行えるマスタ体及び磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した問題を解決し、目的を達成するため、本発明は、磁気記録媒体に接近させて磁界を与えることにより、記録されているサーボパターンが該磁気記録媒体に転写されるマスタ体であって、前記サーボパターンは、前記磁気記録媒体に容易に転写可能かつ転写後に磁気的に安定するパターンであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンのくずれを防止するパターンであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおけるノイズの発生を防止するパターンであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記サーボパターンは、第1サブビット同士を並べて組み合わせた第3ビットと、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第4ビットとにより表現され、前記第3ビットが連続する場合に、該連続する前記第3ビットのうちの少なくとも一つが前記第4ビットに置き換えられていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記発明において、前記サーボパターンは、対向する斜線から構成され、前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおいて一様に磁化されているパターンであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記発明において、前記斜線が前記磁気記録媒体のトラックの接線に対して常に一定角度を保っていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、磁気記録媒体に接近させて磁界を与えることにより、記録されているサーボパターンが該磁気記録媒体に転写されるマスタ体であって、前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、サーボパターンが記録されたマスタ体を接近させて磁界を与えることにより該サーボパターンが転写される磁気記録媒体であって、前記サーボパターンは、該磁気記録媒体に容易に転写可能かつ転写後に磁気的に安定するパターンであることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上記発明において、前記磁気的に安定するパターンは、転写されたサーボパターンのくずれを防止するパターンであることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、上記発明において、前記サーボパターンは、対向する斜線から構成され、前記磁気的に安定するパターンは、転写されたサーボパターンにおいて一様に磁化されているパターンであることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、サーボパターンが記録されたマスタ体を接近させて磁界を与えることにより該サーボパターンが転写される磁気記録媒体であって、前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、サーボパターンは、磁気記録媒体に転写後に磁気的に安定するパターンであるので、サーボパターンの磁気転写を容易にし、延いてはサーボ情報の磁気複製作成方法のメリットを最大限に引き出すという効果を奏する。
【0024】
また、本発明によれば、磁気的に安定するパターンは、磁気記録媒体に転写されたサーボパターンのくずれを防止するパターンであるので、サーボパターンの磁気転写を容易にしかつ転写された状態の持続的保持を可能とし、延いてはサーボ情報の磁気複製作成方法のメリットを最大限に引き出すという効果を奏する。
【0025】
また、本発明によれば、隣り合うトラックにて第1ビット及び第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられているので、磁気記録媒体に転写されたサーボパターンのくずれを防止し、サーボパターンの磁気転写を容易にしかつ転写された状態の持続的保持を可能とし、延いてはサーボ情報の磁気複製作成方法のメリットを最大限に引き出すという効果を奏する。
【0026】
また、本発明によれば、磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおけるノイズの発生を防止するパターンであるので、サーボパターンの磁気転写を容易にしかつ転写された状態の持続的保持を可能とし、延いてはサーボ情報の磁気複製作成方法のメリットを最大限に引き出すという効果を奏する。
【0027】
また、本発明によれば、連続する第3ビットのうちの少なくとも一つが第4ビットに置き換えられているので、磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおけるノイズの発生を防止し、サーボパターンの磁気転写を容易にしかつ転写された状態の持続的保持を可能とし、延いてはサーボ情報の磁気複製作成方法のメリットを最大限に引き出すという効果を奏する。
【0028】
また、本発明によれば、対向する斜線パターンから構成されるサーボパターンを有し、磁気的に安定するパターンは、磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおいて一様に磁化されているパターンであるので、サーボ情報の磁気転写の磁化の強度が弱まり、またサーボ情報の読み取り時においても、磁気情報の読み取りの余弦方向の磁束成分が小さく、読み取りに困難を伴うという問題を克服するという効果を奏する。
【0029】
また、本発明によれば、斜線が磁気記録媒体の同心円上に存在するトラックに対する接線に対して常に一定角度を保っているので、磁気記録媒体の半径上の位置を問わず、一定の安定した磁束強度でサーボ情報を読み取ることができ、サーボ情報の読み取りの安定性を向上させ、読み取り精度を向上させることができ、延いてはサーボ情報の磁気複製作成方法のメリットを最大限に引き出すという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るマスタ体及び磁気記録媒体の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の実施例1では、互いに異なる磁化方向を持つ二種類の磁化パターンを用いてサーボ情報のオン・オフを表現する場合に、磁化方向が同一の磁化パターンが角部同士など点で接する場合に、サーボパターンが安定するように、点で接する磁化パターンを別のパターンへ置き換える実施例を示す。また、実施例2では、互いに異なる磁化方向を持つ二種類の磁化パターンを用いてサーボ情報のオン・オフを表現する場合に、同一種類の磁化パターンが連続するとき、この磁化パターンの連続部においてサーボパターンが安定し、ノイズの発生を抑制するように、磁化パターンの連続部を別のパターンへ置き換える実施例を示す。また、実施例3では、斜線が境界線を挟んで対向するように構成される斜線パターンによりサーボ情報が表現される場合に、サーボ情報を一様の磁束を持つように磁気転写でき、かつサーボ情報の読み取りに困難を伴わないようにする実施例を示す。
【実施例1】
【0031】
図1は、本発明の実施例1に係る磁気記録媒体駆動装置100の外観を概略的に示す図である。この磁気記録媒体駆動装置100は、箱型の筐体101を有する。筐体101は、例えば平板な直方体の、磁気記録媒体収納空間を有する箱型の筐体本体102を有する。筐体本体102は、アルミニウムなどの金属から鋳造により成形されるものである。筐体本体102には、カバー103が取り付けられる。カバー103により筐体本体102の磁気記録媒体収納空間は密閉される。カバー103は、例えばプレス加工により1枚の金属板から成形されるものである。該金属板は、例えば振動吸収性の積層材から構成されていてもよいものである。
【0032】
筐体本体102の外側には、プリント基板104が取り付けられる。プリント基板104には、図示しないCPUやハードディスクコントローラ等のLSIチップのほか、コネクタ105が取り付けられる。該CPUやハードディスクコントローラの作動により磁気記録媒体駆動装置100の全体制御が実現する。コネクタ105には、例えば当該磁気記録媒体駆動装置100が搭載されるコンピュータシステムのメインボードからの制御信号用ケーブルや電源用ケーブル(共に図示せず)が接続される。CPUやハードディスクコントローラは電源用ケーブルから供給される電力により作動する。
【0033】
次に、図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部構造を概略的に説明する。図2は、図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部構造を概略的に示す図である。同図に示すように、当該磁気記録媒体駆動装置100のカバー103を取り外すと、磁気記録媒体収納空間に記録媒体としての磁気ディスク117が少なくとも1枚収納されていることがわかる。磁気ディスク117は、スピンドルモータ118の回転軸に軸着される。スピンドルモータ118は、例えば7,200rpmや10,000rpmといった高速度で磁気ディスク117を回転させることができる。
【0034】
さらに磁気記録媒体収納空間には、ヘッドアクチュエータ119が収納されている。このヘッドアクチュエータ119は、垂直方向に延びる支軸121に回転自在に支持されるアクチュエータブロック122を有する。アクチュエータブロック122には、支軸121から水平方向に剛体のアクチュエータアーム123が延設される。アクチュエータブロック122は、例えば鋳造によりアルミニウムから成形されている。
【0035】
アクチュエータアーム123の先端には、ヘッドサスペンション125が取り付けられる。ヘッドサスペンション125は、アクチュエータアームの先端123から前方に向かって延びる。そして、ヘッドサスペンション125の先端には、浮上ヘッドスライダ126が支持されている。このようにして浮上ヘッドスライダ126は、アクチュエータブロック122に連結されることとなる。浮上ヘッドスライダ126は、磁気ディスク117の表面に向き合うこととなる。
【0036】
浮上ヘッドスライダ126にはいわゆる磁気ヘッド、即ち、図示しない電磁変換素子が搭載される。この電磁変換素子は、例えばスピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化を利用して磁気ディスク117から情報を読み出す巨大磁気抵抗効果(GMR)素子やトンネル接合磁気抵抗効果(TMR)素子といった読み出し素子と、薄膜コイルパターンで生成される磁界を利用して磁気ディスク117に情報を書き込む薄膜磁気ヘッドといった書き込み素子とで構成されることとなる。
【0037】
浮上ヘッドスライダ126には、ヘッドサスペンション125から磁気ディスク117の表面に向かって押圧力が作用する。磁気ディスク117の回転により磁気ディスク117の表面で生成される気流の働きで浮上ヘッドスライダ126には浮力が発生する。ヘッドサスペンション125の押圧力と浮力とのバランスで磁気ディスク117の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ126は浮上し続けることができる。
【0038】
アクチュエータブロック122には例えばボイスコイルモータ(VCM)等の動力源127が接続される。この動力源127の働きでアクチュエータブロック122は支軸121を中心として回転することができる。こうしたアクチュエータブロック122の回転によりアクチュエータアーム123およびヘッドサスペンション125の揺動は実現される。浮上ヘッドスライダ126の浮上中に支軸121回りでアクチュエータアーム123が揺動すると、浮上ヘッドスライダ126は半径方向に磁気ディスク117の表面を横切ることができる。複数枚の磁気ディスク117が筐体本体113内に組み込まれる場合には、隣接する磁気ディスク117同士の間で2本のアクチュエータアーム123すなわち2個のヘッドサスペンション125が配置されることとなる。
【0039】
次に、図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部の磁気記録媒体収納空間に収納される磁気ディスク117の表面にパターンニングされるサーボ情報について説明する。図3は、図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部の磁気記録媒体収納空間に収納される磁気ディスク117の表面にパターンニングされるサーボ情報の概略を示す図である。サーボ情報とは、磁気ヘッドを位置決めするための情報である。同図に示すように、磁気ディスク117には、回転中心から半径方向に円弧状に延びるサーボ情報200が磁気パターンとして記録される。
【0040】
同図に示すように、磁気ディスク117の表面において、サーボ情報200は、該磁気ディスク117の中心から外周へ、略半径方向に沿った円弧として、等間隔に配置されている。サーボ情報200が円弧状となるのは、次の理由による。即ち、先端に磁気ヘッドを有する浮上ヘッドスライダ126が取り付けられたヘッドアクチュエータ119は、支軸121の中心軸121cを回転軸として扇状に半回転するが、磁気ヘッドが端点201と端点202との間のサーボ情報200をなぞる場合に、中心軸121cから磁気ヘッドまでの距離が一定となるようにするためである。
【0041】
次に、図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部の磁気記録媒体収納空間に収納される磁気ディスク117の表面にサーボ情報が磁気転写・複製される工程を説明する。
図4は、図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部の磁気記録媒体収納空間に収納される磁気ディスク117の表面にサーボ情報が磁気転写・複製される工程を示す図である。
【0042】
図4(a)に示すように、先ず、磁気ディスク117は、媒体初期化の工程を経る。この媒体初期化の工程では、磁気ディスク117の全面にわたり、一様に磁界を印加して磁化する。印加磁界方向は、図4(a)に示すとおりである。
【0043】
次に、図4(b)に示すように、磁気ディスク117はマスタ体116により上表面を被覆されるマスタ重ねの工程を経る。この状態にあるとき、磁気ディスク117は、マスタ体116に対してスレーブ体とも呼ばれる。
【0044】
次に、図4(c)に示すように、磁気ディスク117にマスタ体116を重ねた状態で、磁気ディスク117の全面にわたり、一様に磁界を印加する。このときの印加磁界方向は、図4(a)の印加磁界方向と正反対方向(180度反対方向)である。この工程がサーボ情報の磁気パターンの転写・複製の工程である。この図4(a)〜(c)の工程を経て、図4(d)に示すように、サーボ情報200が記録されるサーボゾーンが形成される。
【0045】
次に、図4に示したサーボ情報の磁気パターンの転写・複製の概略を説明する。図5は、図4(c)に示したサーボ情報の磁気パターンの転写・複製の概略を示す図である。同図に示すように、磁気ディスク117にマスタ体116を重ねた状態で、同図に示す磁石で矢印の方向に一定の外部磁界をかける。磁気ディスク117は、媒体初期化により、予め同図に向かって左から右方向へ一様に磁化されていたが、磁石で矢印の方向に一定の外部磁界をかけられると、マスタ体116のパターンニングされた磁性部分で覆われている部分は磁化の方向は変わらないが、該磁性部分で覆われていない部分は、かけられた外部磁界の方向に沿う磁束により磁化される。よって、磁性部分で覆われていない部分は、媒体初期化の磁化方向とは正反対の、外部磁界の方向と同じく同図に向かって左から右方向へ磁化される。この磁化方向が逆転した部分により、サーボ情報200が記録されるサーボゾーンを構成する、複製されたサーボパターンが形成されることとなる。
【0046】
なお、図1〜5を参照して説明した磁気記録媒体駆動装置100の外観、磁気記録媒体駆動装置100の内部構造、磁気ディスク117の表面にパターンニングされるサーボ情報、磁気ディスク117の表面にサーボ情報が磁気転写・複製される工程及びサーボ情報の磁気パターンの転写・複製の概略は、後述の実施例2及び3においても同様である。
【0047】
次に、実施例1のビットとサブビットとの関係を説明する。図6は、本発明の実施例1のビットとサブビットとの関係を示す図である。同図に示すように、デジタル情報の情報単位である“0”及び“1”で表現されるビットは、磁気ディスク117上では、“□(白抜き四角)”及び“■(黒塗り四角)”の所定の並びで表現される。“□”及び“■”は、磁化方向の違いによってそれぞれ区別される。例えば“□”は向かって右側をN極、左側をS極として、左から右へ磁力線が出ており、向かって右から左の方向を磁界の方向とするものである。また、“■”は向かって右側をS極、左側をN極として、右から左へ磁力線が出ており、向かって左から右の方向を磁界の方向とするものである。これら“□”及び“■”をサブビットと呼ぶこととする。これらのサブビットを使用して、同図に示すように、実施例1では、“0”を“□■”で表現し、“1”を“■□”で表現することとする。なお、“0”及び“1”をデータパターン、“□”及び“■”を書き込みパターンともいう。書き込みパターンとは、磁気ディスク117へ実際に書き込む形式のパターンであることを意味する。なお、“□”及び“■”は、極性を持つ磁化単位である。そして、磁化単位同士は、角などの点で接する場合がある。これは、磁化単位の密集により生じる問題である。
【0048】
次に、実施例1の特定のサブビットの配列を置換する置換例(その1)を説明する。図7は、本発明の実施例1の特定のサブビットの配列を置換する置換例(その1)を示す図である。同図の上段の図によれば、“□■”又は“■□”により“0”又は“1”が表現されている。ここで同図の上段の図での破線で囲んだ部分に注目すると、“■”が対角線上の位置関係にあり、“■”の角である点で隣接していることが分かる。これを「隣接するパターン角部」という。なお、ここで、「対角線」とは、“■”及び“□”を2行2列に配置した正方形における対角線である。
【0049】
さて、“■”同士は同じ方向に磁力線を出すので、“■”が対角線上の位置関係にあり、“■”の角である点で隣接していても、磁力線の作用により、面での隣接へ遷移しようとする遷移作用を受ける。この遷移作用が“磁気くずれ”と呼ばれるものである。即ち点で隣接するようにパターンニングされている状態を崩してしまい、転写・複写されたサーボ情報の磁気パターンの正確性がくずれてしまうのである。
【0050】
そこで、図7の下段の図に示すように、“□■”を“□□”へ置換する。即ち、サーボ情報の転写・複製においては“□■”を“□□”として転写・複製し、逆にサーボ情報の読み出し時には“□□”を“□■”として読み出すこととする。このような置換を行うと、“磁気くずれ”が発生する、“■”同士が角である点で隣接する状況を回避することができる。このようにサーボ情報を複製可能なサーボパターンを有するマスタ体を作成し、該マスタ体を使用してサーボパターンを複製すると、サーボ情報の磁気パターンの“磁気くずれ”が発生することを防止することができる。
【0051】
次に、実施例1の特定のサブビットの配列を置換する置換例(その2)を説明する。図8は、本発明の実施例1の特定のサブビットの配列を置換する置換例(その2)を示す図である。同図の上段の図によれば、“□■”又は“■□”により“0”又は“1”が表現されている。ここで同図の上段の図での破線で囲んだ部分に注目すると、“■”が対角線上の位置関係にあり、“■”の角である点で隣接していることが分かる。そして図7と同様に、“■”の角である点で隣接する箇所、即ち隣接角部では、“磁気くずれ”が発生しやすい。
【0052】
そこで、図8の下段の図に示すように、“□■”を“■■”へ置換する。即ち、サーボ情報の転写・複製においては“□■”を“■■”として転写・複製し、逆にサーボ情報の読み出し時には“■■”を“□■”として読み出すこととする。このような置換を行うと、“磁気くずれ”が発生する、“■”同士が角である点で隣接する状況を回避することができる。このようにサーボ情報を複製可能なサーボパターンを有するマスタ体を作成し、該マスタ体を使用してサーボパターンを複製すると、サーボ情報の磁気パターンの“磁気くずれ”が発生することを防止することができる。
【0053】
なお、上記“□□”を読み出して“□■”の情報へと変換するアルゴリズム又は“■■”を読み出して“□■”の情報へと変換するアルゴリズムは、所定の制御プログラムとして磁気記録媒体駆動装置100のプリント基板104のLSIチップに格納され、実行される。
【実施例2】
【0054】
次に、実施例2のビットとサブビットとの関係を説明する。図9は、本発明の実施例2のビットとサブビットとの関係を示す図である。同図に示すように、デジタル情報の情報単位である“0”及び“1”で表現されるビットは、磁気ディスク117上では、“□”及び“■”の所定の並びで表現される。サブビット“□”及び“■”は、実施例1と同様に、磁化方向の違いによってそれぞれ区別される。例えば“□”は向かって右側をN極、左側をS極として、左から右へ磁力線が出ており、向かって右から左の方向を磁界の方向とするものである。また、“■”は向かって右側をS極、左側をN極として、右から左へ磁力線が出ており、向かって左から右の方向を磁界の方向とするものである。同図に示すように、実施例2では、“0”を“□□”で表現し、“1”を“■□”で表現することとする。
【0055】
次に、実施例2の特定のサブビットの配列を置換する置換例を説明する。図10は、本発明の実施例2の特定のサブビットの配列を置換する置換例を示す図である。同図の上段の図によれば、“□□”又は“■□”により“0”又は“1”が表現されている。ここで同図の上段の図での破線で囲んだ部分及びその付近に注目すると、“□□”が4列にわたって連続していることが分かる。例えば“□□”が3列以上にわたって連続している部分を「パターン間隔が広い部分」という。
【0056】
さて、磁力線はS極からN極へ出るが、連続する“□□”の極はその連続の両端であるので、自ずとS極とN極との距離が離れた格好となる。そして、磁力線の強さは、両極の距離が離れれば離れるほど弱くなると言う性質がある。このため、“□□”が連続する場合(例えば、“□□”が3個以上連続する場合)に、S極からN極への磁力線が弱まり、“磁気ノイズ”が発生しやすくなる。この“磁気ノイズ”は、サーボパターンのパターンニングを崩してしまい、転写・複写されたサーボ情報の磁気パターンの正確性がくずれてしまうのである。
【0057】
そこで、図10の下段の図に示すように、“□□”が例えば3個以上連続する箇所において少なくとも一つの“□□”を“□■”へ置換して、“□□”の連続を切断する。即ち、サーボ情報の転写・複製においては“□□”を“□■”として転写・複製し、逆にサーボ情報の読み出し時には“□■”を“□□”として読み出すこととする。このような置換を行うと、“磁気ノイズ”が発生しやすい、“□□”が連続する状況を回避することができる。このようにサーボ情報を複製可能なサーボパターンを有するマスタ体を作成し、該マスタ体を使用してサーボパターンを複製すると、サーボ情報の磁気パターンの“磁気ノイズ”が発生することを防止することができる。
【0058】
さらに、図10を参照して説明したように、“□□”が3個以上連続する箇所において少なくとも一つの“□□”を“□■”へ置換して、“□□”の連続を切断するとともに、実施例1で示した“■”が角で隣接している場合に、“□■”を“□□”へ置換、若しくは“□■”を“■■”へ置換するようにすると、“磁気くずれ”の発生も防止することができる。
【0059】
なお、上記“□□”を読み出して“□■”の情報へと変換するアルゴリズムは、所定の制御プログラムとして磁気記録媒体駆動装置100のプリント基板104のLSIチップに格納され、実行される。
【実施例3】
【0060】
次に、本発明の実施例3の斜線パターンの概略を説明するに先立って、従来の斜線パターンの概略を説明する。斜線パターンとは、サーボ情報を構成するサーボパターンであって、境界線を境に対向する斜線により構成される、磁気ヘッドの位置決めのためのサーボパターンのことである。磁気ヘッドの位置決めは、図11は、従来の斜線パターンの概略を示す図である。斜線パターンは、境界線を境に対向する斜線同士の位相差に基づいて決まるものである。従来の斜線パターンは、斜線パターン境界線205に対して斜線が常に一定の角度であるものである。
【0061】
同図を参照すると、磁気ディスク117に配置されているサーボ情報200の、磁気ディスク117の半径の中心付近のサーボパターンの拡大図は、図11(a)の図のようになる。即ち、斜線パターン境界線205は、半径方向と並行でありかつ接線方向と垂直である。ここで接線とは、磁気ディスク117のトラックに対する接線である。そして、サーボパターンの全ての斜線は、斜線パターン境界線205とθ1の角度で交差する。
【0062】
また、磁気ディスク117に配置されているサーボ情報200の、磁気ディスク117の半径の中心付近のサーボパターンの拡大図は、図11(b)の図のようになる。即ち、斜線パターン境界線205は、半径方向及び接線方向と角度をなして交差している。特に、半径方向となす角度をSkew角という。そして、サーボパターンの全ての斜線は、図11(a)と同様に、斜線パターン境界線205とθ1の角度をなす。
【0063】
即ち、従来のサーボ情報を構成するサーボパターンの斜線は、磁気ディスク117上の何れの位置においても、斜線パターン境界線205と常にθ1の角度をなして交差するものであった。このために、磁気ディスク117の中心付近や外周付近では、斜線が磁気ディスク117のトラックの接線方向に対してより鋭角をでなして交差するため、サーボパターンから発せられる磁束の強度の該接線方向の成分が小さくなっていた。このため、サーボパターンの転写・複写時に、磁気ディスク117の中心付近や外周付近では該サーボパターンの磁化強度が弱くなり、またサーボ情報の読み取り時に、該サーボパターンの読取方向である接線方向の磁束強度の成分が弱くなるために、サーボ情報の読み取りに困難を伴うことがあった。即ち、サーボ情報の磁気転写の印加磁界の余弦方向の磁化成分(即ち、トラック接線成分)が小さく、磁化の強度が相対的に弱くなり、またサーボ情報の読み取り時においても、磁気情報の読み取りの余弦方向の磁束成分が小さく、読み取りに困難を伴うという問題があった。本発明の実施例3は、このサーボ情報の読み取りの困難を克服するためになされたものである。
【0064】
次に、本発明の実施例3の斜線パターンの概略を説明する。図12は、実施例3の斜線パターンの概略を示す図である。実施例3の斜線パターンは、磁気ディスク117のトラックの接線方向に対して斜線が常に一定の角度であるものである。
【0065】
同図を参照すると、実施例3の磁気ディスク117に配置されているサーボ情報200の、磁気ディスク117の半径の中心付近のサーボパターンの拡大図は、図12(a)の図のようになる。即ち、斜線パターン境界線205は、半径方向と並行でありかつ接線方向と垂直である。接線とは、磁気ディスク117のトラックに対する接線である。そして、サーボパターンの全ての斜線は、接線方向とθ2の角度をなす。
【0066】
また、実施例3の磁気ディスク117に配置されているサーボ情報200の、磁気ディスク117の半径の外周付近のサーボパターンの拡大図は、図12(b)の図のようになる。即ち、斜線パターン境界線205は、接線方向に対してSkew角をもつものの、サーボパターンの全ての斜線は、図12(a)と同様に、接線方向とθ2の角度をなす。
【0067】
即ち、実施例3のサーボ情報を構成するサーボパターンの斜線は、磁気ディスク117上の何れの位置においても、接線方向と常にθ1の角度をなして交差するものである。よって、磁気ディスク117の中心付近や外周付近にかかわらず、斜線が磁気ディスク117のトラックの接線方向に対して一定角度をなすため、サーボパターンから発せられる磁束の強度の該接線方向の成分も一定となっている。即ち、Skew角度や半径によらず、斜線角度が一定になっている。このため、サーボパターンの転写・複写時に、磁気ディスク117の位置にかかわらず該サーボパターンの磁化強度が一様となり、サーボパターンの磁気複製が容易となる。また、サーボパターンまたサーボ情報の読み取り時に、該サーボパターンの読取方向である接線方向の磁束強度の成分も一定となるために、サーボ情報の読み取り時に困難を伴うことがない。なお、実施例3のサーボパターンにおいても、斜線パターン境界線205を境界にして対向する斜線同士がなす角度は従来のものと同様であり、Skew角度や半径によらず、1トラックに収まる斜線の線分の長さが一定であるために、通常の磁気ヘッド位置決めパターンと同様に機能する。
【0068】
本発明のマスタ体は、磁気記録媒体に転写後に磁気的に安定、即ち磁気くずれやノイズの発生や磁束強度の不均一の発生を防止することができる特殊なサーボパターンを有することを特徴とする。具体的には、磁化単位同士が点で接する場合はこれを所定のパターンに置き換えて点で接しないようにして磁気くずれを防止し、同一パターンの磁化単位が連続する場合は、該同一パターンの磁化単位の間に異なるパターンを挿入してノイズの発生を防止し、対向する斜線で構成されるサーボパターンにおいては、該斜線が磁気記録媒体のトラック接線に対して一定の角度を保つようにして、転写後のサーボパターンの磁束強度が磁気ディスク117のトラック位置、半径位置によらず一定とし、読み取りの安定性、精度を確保することができる。
【0069】
(付記1)磁気記録媒体に接近させて磁界を与えることにより、記録されているサーボパターンが該磁気記録媒体に転写されるマスタ体であって、
前記サーボパターンは、前記磁気記録媒体に容易に転写可能かつ転写後に磁気的に安定するパターンであることを特徴とするマスタ体。
【0070】
(付記2)前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンのくずれを防止するパターンであることを特徴とする付記1に記載のマスタ体。
【0071】
(付記3)前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、
前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする付記2に記載のマスタ体。
【0072】
(付記4)前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおけるノイズの発生を防止するパターンであることを特徴とする付記1に記載のマスタ体。
【0073】
(付記5)前記サーボパターンは、第1サブビット同士を並べて組み合わせた第3ビットと、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第4ビットとにより表現され、
前記第3ビットが連続する場合に、該連続する前記第3ビットのうちの少なくとも一つが前記第4ビットに置き換えられていることを特徴とする付記4に記載のマスタ体。
【0074】
(付記6)前記磁気記録媒体の隣り合うトラックの境界線に関して前記第4ビット同士がサブビット1個分ずれて隣接する場合に、その一方の第4ビットが前記第3ビット又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする付記5に記載のマスタ体。
【0075】
(付記7)前記サーボパターンは、対向する斜線から構成され、
前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおいて一様に磁化されているパターンであることを特徴とする付記1に記載のマスタ体。
【0076】
(付記8)前記斜線が前記磁気記録媒体のトラックの接線に対して常に一定角度を保っていることを特徴とする付記7に記載のマスタ体。
【0077】
(付記9)磁気記録媒体に接近させて磁界を与えることにより、記録されているサーボパターンが該磁気記録媒体に転写されるマスタ体であって、
前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、
前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とするマスタ体。
【0078】
(付記10)サーボパターンが記録されたマスタ体を接近させて磁界を与えることにより該サーボパターンが転写される磁気記録媒体であって、
前記サーボパターンは、該磁気記録媒体に容易に転写可能かつ転写後に磁気的に安定するパターンであることを特徴とする磁気記録媒体。
【0079】
(付記11)前記磁気的に安定するパターンは、転写されたサーボパターンのくずれを防止するパターンであることを特徴とする付記10に記載の磁気記録媒体。
【0080】
(付記12)前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、
同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする付記11に記載の磁気記録媒体。
【0081】
(付記13)前記磁気的に安定するパターンは、転写されたサーボパターンにおけるノイズの発生を防止するパターンであることを特徴とする付記10に記載の磁気記録媒体。
【0082】
(付記14)前記サーボパターンは、第1サブビット同士を並べて組み合わせた第3ビットと、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第4ビットとにより表現され、
前記第3ビットが連続する場合に、該連続する前記第3ビットのうちの少なくとも一つが前記第4ビットに置き換えられていることを特徴とする付記13に記載の磁気記録媒体。
【0083】
(付記15)隣り合うトラックの境界線に関して前記第4ビット同士がサブビット1個分ずれて隣接する場合に、その一方の第4ビットが前記第3ビット又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする付記14に記載の磁気記録媒体。
【0084】
(付記16)前記サーボパターンは、対向する斜線から構成され、
前記磁気的に安定するパターンは、転写されたサーボパターンにおいて一様に磁化されているパターンであることを特徴とする付記10に記載の磁気記録媒体。
【0085】
(付記17)前記斜線がトラックの接線に対して常に一定角度を保っていることを特徴とする付記16に記載の磁気記録媒体。
【0086】
(付記18)サーボパターンが記録されたマスタ体を接近させて磁界を与えることにより該サーボパターンが転写される磁気記録媒体であって、
前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、
前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする磁気記録媒体。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、マスタ体を用いて、より容易、高精度かつ安定したサーボ情報の磁気複製を作成したい場合に有用であり、特に、サーボ情報をあらわすサーボパターンの磁気くずれの抑制、ノイズ混入の発生の抑制及びサーボパターンの安定かつ高精度の読み取りを可能とするサーボ情報の磁気複製を作成したい場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施例1に係る磁気記録媒体駆動装置100の外観を概略的に示す図である。
【図2】図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部構造を概略的に示す図である。
【図3】図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部の磁気記録媒体収納空間に収納される磁気ディスク117の表面にパターンニングされるサーボ情報の概略を示す図である。
【図4】図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部の磁気記録媒体収納空間に収納される磁気ディスク117の表面にサーボ情報が磁気転写・複製される工程を示す図である。
【図5】図4に示したサーボ情報の磁気パターンの複製の概略を示す図である。
【図6】本発明の実施例1のビットとサブビットとの関係を示す図である。
【図7】本発明の実施例1の特定のサブビットの配列を置換する置換例(その1)を示す図である。
【図8】本発明の実施例1の特定のサブビットの配列を置換する置換例(その2)を示す図である。
【図9】本発明の実施例2のビットとサブビットとの関係を示す図である。
【図10】本発明の実施例2の特定のサブビットの配列を置換する置換例を示す図である。
【図11】従来の斜線パターンの概略を示す図である。
【図12】本発明の実施例3の斜線パターンの概略を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
100 磁気記録媒体駆動装置
116 マスタ体
117 磁気ディスク
200 サーボ情報
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボパターンが記録されており、磁気記録媒体に接近させて磁界を印加することにより該サーボパターンを該磁気記録媒体に転写するマスタ体及び磁気記録媒体に関し、特に、磁気記録媒体へのサーボパターンの転写を容易にするマスタ体及び磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置は大容量化のために年々記録密度が増し、ヘッドを位置決めするための位置決め情報であるサーボ情報を専用の装置を使用して高い精度で作成することが困難となってきている。また、磁気ディスクの製造コストを抑制するためにも、高精度のサーボ情報を容易に作成することが必要となってきている。
【0003】
そこで、磁性体部分がパターンニングされたマスタ体を用いて、これをスレーブ体である磁気記録媒体に密着・磁界印加することにより、サーボ情報のサーボパターンをマスタ体からスレーブ体へ磁気的に転写・複製する方法が開発されている。
【0004】
前述のサーボ情報のサーボパターンの転写・複製方法に使用されるマスタ体の作成方法は、特許文献1などに開示されている。この作成方法により、磁気記録媒体にサーボ情報の磁気転写に使用する凹凸パターン(サーボパターン)を有するマスタ体を、簡易にかつ安価に精度良く作成できる。そして前述の作成方法により作成されたマスタ体を使用すると、マスタ体からスレーブ体へ、安価で処理時間を短縮して、サーボ情報を一括して磁気的に転写・複製して磁気複製を作成することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−256644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に代表される技術を利用して作成されたマスタ体を使用したとしても、磁気転写・複製において問題点があった。例えば互いに異なる磁化方向を持つ二種類の磁化パターンを用いてサーボ情報のオン・オフを表現する場合に、磁化方向が同一の磁化パターンが角部同士など点で接する場合に、磁気転写・複製されたサーボパターンが安定せず崩れやすいという性質がある。
【0007】
また、同じく、互いに異なる磁化方向を持つ二種類の磁化パターンを用いてサーボ情報のオン・オフを表現する場合に、同一種類の磁化パターンが連続すると、この磁化パターンの連続部において、磁気転写・複製されたサーボパターンが安定せず崩れやすくなり、ノイズの発生を招きやすい。
【0008】
また、境界線に対して一定角度を持つ斜線が該境界線を挟んで対向するように構成される斜線パターンによりサーボ情報が表現される場合に、該境界線に対して斜線の角度が一定のため、斜線パターンは磁気ディスクの外周ほど該磁気ディスクのトラック円周に沿った格好となり、サーボ情報の磁気転写の印加磁界の余弦方向の磁化成分(即ち、トラック接線成分)が小さく、磁化の強度が相対的に弱くなり、またサーボ情報の読み取り時においても、磁気情報の読み取りの余弦方向の磁束成分が小さく、読み取りに困難を伴うという問題があった。
【0009】
これらのことから、マスタ体を用いて、より容易、高精度かつ安定した磁気複製を作成できるようにすることが極めて重要な課題となってきている。即ち、マスタ体からスレーブ体へ、安価で処理時間を短縮して、サーボ情報を一括して磁気的に転写・複製して磁気複製を作成することができるというサーボ情報の磁気複製作成方法のメリットを最大限に引き出すためにも、前述の問題点の解決が重要となってきている。
【0010】
本発明は、上記問題点(課題)を解決するためになされたものであって、磁気複製に適した特殊パターンを持ったマスタ体を作成し、磁気複製において高精度なサーボ情報の複製を行えるマスタ体及び磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した問題を解決し、目的を達成するため、本発明は、磁気記録媒体に接近させて磁界を与えることにより、記録されているサーボパターンが該磁気記録媒体に転写されるマスタ体であって、前記サーボパターンは、前記磁気記録媒体に容易に転写可能かつ転写後に磁気的に安定するパターンであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンのくずれを防止するパターンであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおけるノイズの発生を防止するパターンであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記サーボパターンは、第1サブビット同士を並べて組み合わせた第3ビットと、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第4ビットとにより表現され、前記第3ビットが連続する場合に、該連続する前記第3ビットのうちの少なくとも一つが前記第4ビットに置き換えられていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記発明において、前記サーボパターンは、対向する斜線から構成され、前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおいて一様に磁化されているパターンであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記発明において、前記斜線が前記磁気記録媒体のトラックの接線に対して常に一定角度を保っていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、磁気記録媒体に接近させて磁界を与えることにより、記録されているサーボパターンが該磁気記録媒体に転写されるマスタ体であって、前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、サーボパターンが記録されたマスタ体を接近させて磁界を与えることにより該サーボパターンが転写される磁気記録媒体であって、前記サーボパターンは、該磁気記録媒体に容易に転写可能かつ転写後に磁気的に安定するパターンであることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上記発明において、前記磁気的に安定するパターンは、転写されたサーボパターンのくずれを防止するパターンであることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、上記発明において、前記サーボパターンは、対向する斜線から構成され、前記磁気的に安定するパターンは、転写されたサーボパターンにおいて一様に磁化されているパターンであることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、サーボパターンが記録されたマスタ体を接近させて磁界を与えることにより該サーボパターンが転写される磁気記録媒体であって、前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、サーボパターンは、磁気記録媒体に転写後に磁気的に安定するパターンであるので、サーボパターンの磁気転写を容易にし、延いてはサーボ情報の磁気複製作成方法のメリットを最大限に引き出すという効果を奏する。
【0024】
また、本発明によれば、磁気的に安定するパターンは、磁気記録媒体に転写されたサーボパターンのくずれを防止するパターンであるので、サーボパターンの磁気転写を容易にしかつ転写された状態の持続的保持を可能とし、延いてはサーボ情報の磁気複製作成方法のメリットを最大限に引き出すという効果を奏する。
【0025】
また、本発明によれば、隣り合うトラックにて第1ビット及び第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられているので、磁気記録媒体に転写されたサーボパターンのくずれを防止し、サーボパターンの磁気転写を容易にしかつ転写された状態の持続的保持を可能とし、延いてはサーボ情報の磁気複製作成方法のメリットを最大限に引き出すという効果を奏する。
【0026】
また、本発明によれば、磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおけるノイズの発生を防止するパターンであるので、サーボパターンの磁気転写を容易にしかつ転写された状態の持続的保持を可能とし、延いてはサーボ情報の磁気複製作成方法のメリットを最大限に引き出すという効果を奏する。
【0027】
また、本発明によれば、連続する第3ビットのうちの少なくとも一つが第4ビットに置き換えられているので、磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおけるノイズの発生を防止し、サーボパターンの磁気転写を容易にしかつ転写された状態の持続的保持を可能とし、延いてはサーボ情報の磁気複製作成方法のメリットを最大限に引き出すという効果を奏する。
【0028】
また、本発明によれば、対向する斜線パターンから構成されるサーボパターンを有し、磁気的に安定するパターンは、磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおいて一様に磁化されているパターンであるので、サーボ情報の磁気転写の磁化の強度が弱まり、またサーボ情報の読み取り時においても、磁気情報の読み取りの余弦方向の磁束成分が小さく、読み取りに困難を伴うという問題を克服するという効果を奏する。
【0029】
また、本発明によれば、斜線が磁気記録媒体の同心円上に存在するトラックに対する接線に対して常に一定角度を保っているので、磁気記録媒体の半径上の位置を問わず、一定の安定した磁束強度でサーボ情報を読み取ることができ、サーボ情報の読み取りの安定性を向上させ、読み取り精度を向上させることができ、延いてはサーボ情報の磁気複製作成方法のメリットを最大限に引き出すという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るマスタ体及び磁気記録媒体の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の実施例1では、互いに異なる磁化方向を持つ二種類の磁化パターンを用いてサーボ情報のオン・オフを表現する場合に、磁化方向が同一の磁化パターンが角部同士など点で接する場合に、サーボパターンが安定するように、点で接する磁化パターンを別のパターンへ置き換える実施例を示す。また、実施例2では、互いに異なる磁化方向を持つ二種類の磁化パターンを用いてサーボ情報のオン・オフを表現する場合に、同一種類の磁化パターンが連続するとき、この磁化パターンの連続部においてサーボパターンが安定し、ノイズの発生を抑制するように、磁化パターンの連続部を別のパターンへ置き換える実施例を示す。また、実施例3では、斜線が境界線を挟んで対向するように構成される斜線パターンによりサーボ情報が表現される場合に、サーボ情報を一様の磁束を持つように磁気転写でき、かつサーボ情報の読み取りに困難を伴わないようにする実施例を示す。
【実施例1】
【0031】
図1は、本発明の実施例1に係る磁気記録媒体駆動装置100の外観を概略的に示す図である。この磁気記録媒体駆動装置100は、箱型の筐体101を有する。筐体101は、例えば平板な直方体の、磁気記録媒体収納空間を有する箱型の筐体本体102を有する。筐体本体102は、アルミニウムなどの金属から鋳造により成形されるものである。筐体本体102には、カバー103が取り付けられる。カバー103により筐体本体102の磁気記録媒体収納空間は密閉される。カバー103は、例えばプレス加工により1枚の金属板から成形されるものである。該金属板は、例えば振動吸収性の積層材から構成されていてもよいものである。
【0032】
筐体本体102の外側には、プリント基板104が取り付けられる。プリント基板104には、図示しないCPUやハードディスクコントローラ等のLSIチップのほか、コネクタ105が取り付けられる。該CPUやハードディスクコントローラの作動により磁気記録媒体駆動装置100の全体制御が実現する。コネクタ105には、例えば当該磁気記録媒体駆動装置100が搭載されるコンピュータシステムのメインボードからの制御信号用ケーブルや電源用ケーブル(共に図示せず)が接続される。CPUやハードディスクコントローラは電源用ケーブルから供給される電力により作動する。
【0033】
次に、図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部構造を概略的に説明する。図2は、図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部構造を概略的に示す図である。同図に示すように、当該磁気記録媒体駆動装置100のカバー103を取り外すと、磁気記録媒体収納空間に記録媒体としての磁気ディスク117が少なくとも1枚収納されていることがわかる。磁気ディスク117は、スピンドルモータ118の回転軸に軸着される。スピンドルモータ118は、例えば7,200rpmや10,000rpmといった高速度で磁気ディスク117を回転させることができる。
【0034】
さらに磁気記録媒体収納空間には、ヘッドアクチュエータ119が収納されている。このヘッドアクチュエータ119は、垂直方向に延びる支軸121に回転自在に支持されるアクチュエータブロック122を有する。アクチュエータブロック122には、支軸121から水平方向に剛体のアクチュエータアーム123が延設される。アクチュエータブロック122は、例えば鋳造によりアルミニウムから成形されている。
【0035】
アクチュエータアーム123の先端には、ヘッドサスペンション125が取り付けられる。ヘッドサスペンション125は、アクチュエータアームの先端123から前方に向かって延びる。そして、ヘッドサスペンション125の先端には、浮上ヘッドスライダ126が支持されている。このようにして浮上ヘッドスライダ126は、アクチュエータブロック122に連結されることとなる。浮上ヘッドスライダ126は、磁気ディスク117の表面に向き合うこととなる。
【0036】
浮上ヘッドスライダ126にはいわゆる磁気ヘッド、即ち、図示しない電磁変換素子が搭載される。この電磁変換素子は、例えばスピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化を利用して磁気ディスク117から情報を読み出す巨大磁気抵抗効果(GMR)素子やトンネル接合磁気抵抗効果(TMR)素子といった読み出し素子と、薄膜コイルパターンで生成される磁界を利用して磁気ディスク117に情報を書き込む薄膜磁気ヘッドといった書き込み素子とで構成されることとなる。
【0037】
浮上ヘッドスライダ126には、ヘッドサスペンション125から磁気ディスク117の表面に向かって押圧力が作用する。磁気ディスク117の回転により磁気ディスク117の表面で生成される気流の働きで浮上ヘッドスライダ126には浮力が発生する。ヘッドサスペンション125の押圧力と浮力とのバランスで磁気ディスク117の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ126は浮上し続けることができる。
【0038】
アクチュエータブロック122には例えばボイスコイルモータ(VCM)等の動力源127が接続される。この動力源127の働きでアクチュエータブロック122は支軸121を中心として回転することができる。こうしたアクチュエータブロック122の回転によりアクチュエータアーム123およびヘッドサスペンション125の揺動は実現される。浮上ヘッドスライダ126の浮上中に支軸121回りでアクチュエータアーム123が揺動すると、浮上ヘッドスライダ126は半径方向に磁気ディスク117の表面を横切ることができる。複数枚の磁気ディスク117が筐体本体113内に組み込まれる場合には、隣接する磁気ディスク117同士の間で2本のアクチュエータアーム123すなわち2個のヘッドサスペンション125が配置されることとなる。
【0039】
次に、図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部の磁気記録媒体収納空間に収納される磁気ディスク117の表面にパターンニングされるサーボ情報について説明する。図3は、図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部の磁気記録媒体収納空間に収納される磁気ディスク117の表面にパターンニングされるサーボ情報の概略を示す図である。サーボ情報とは、磁気ヘッドを位置決めするための情報である。同図に示すように、磁気ディスク117には、回転中心から半径方向に円弧状に延びるサーボ情報200が磁気パターンとして記録される。
【0040】
同図に示すように、磁気ディスク117の表面において、サーボ情報200は、該磁気ディスク117の中心から外周へ、略半径方向に沿った円弧として、等間隔に配置されている。サーボ情報200が円弧状となるのは、次の理由による。即ち、先端に磁気ヘッドを有する浮上ヘッドスライダ126が取り付けられたヘッドアクチュエータ119は、支軸121の中心軸121cを回転軸として扇状に半回転するが、磁気ヘッドが端点201と端点202との間のサーボ情報200をなぞる場合に、中心軸121cから磁気ヘッドまでの距離が一定となるようにするためである。
【0041】
次に、図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部の磁気記録媒体収納空間に収納される磁気ディスク117の表面にサーボ情報が磁気転写・複製される工程を説明する。
図4は、図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部の磁気記録媒体収納空間に収納される磁気ディスク117の表面にサーボ情報が磁気転写・複製される工程を示す図である。
【0042】
図4(a)に示すように、先ず、磁気ディスク117は、媒体初期化の工程を経る。この媒体初期化の工程では、磁気ディスク117の全面にわたり、一様に磁界を印加して磁化する。印加磁界方向は、図4(a)に示すとおりである。
【0043】
次に、図4(b)に示すように、磁気ディスク117はマスタ体116により上表面を被覆されるマスタ重ねの工程を経る。この状態にあるとき、磁気ディスク117は、マスタ体116に対してスレーブ体とも呼ばれる。
【0044】
次に、図4(c)に示すように、磁気ディスク117にマスタ体116を重ねた状態で、磁気ディスク117の全面にわたり、一様に磁界を印加する。このときの印加磁界方向は、図4(a)の印加磁界方向と正反対方向(180度反対方向)である。この工程がサーボ情報の磁気パターンの転写・複製の工程である。この図4(a)〜(c)の工程を経て、図4(d)に示すように、サーボ情報200が記録されるサーボゾーンが形成される。
【0045】
次に、図4に示したサーボ情報の磁気パターンの転写・複製の概略を説明する。図5は、図4(c)に示したサーボ情報の磁気パターンの転写・複製の概略を示す図である。同図に示すように、磁気ディスク117にマスタ体116を重ねた状態で、同図に示す磁石で矢印の方向に一定の外部磁界をかける。磁気ディスク117は、媒体初期化により、予め同図に向かって左から右方向へ一様に磁化されていたが、磁石で矢印の方向に一定の外部磁界をかけられると、マスタ体116のパターンニングされた磁性部分で覆われている部分は磁化の方向は変わらないが、該磁性部分で覆われていない部分は、かけられた外部磁界の方向に沿う磁束により磁化される。よって、磁性部分で覆われていない部分は、媒体初期化の磁化方向とは正反対の、外部磁界の方向と同じく同図に向かって左から右方向へ磁化される。この磁化方向が逆転した部分により、サーボ情報200が記録されるサーボゾーンを構成する、複製されたサーボパターンが形成されることとなる。
【0046】
なお、図1〜5を参照して説明した磁気記録媒体駆動装置100の外観、磁気記録媒体駆動装置100の内部構造、磁気ディスク117の表面にパターンニングされるサーボ情報、磁気ディスク117の表面にサーボ情報が磁気転写・複製される工程及びサーボ情報の磁気パターンの転写・複製の概略は、後述の実施例2及び3においても同様である。
【0047】
次に、実施例1のビットとサブビットとの関係を説明する。図6は、本発明の実施例1のビットとサブビットとの関係を示す図である。同図に示すように、デジタル情報の情報単位である“0”及び“1”で表現されるビットは、磁気ディスク117上では、“□(白抜き四角)”及び“■(黒塗り四角)”の所定の並びで表現される。“□”及び“■”は、磁化方向の違いによってそれぞれ区別される。例えば“□”は向かって右側をN極、左側をS極として、左から右へ磁力線が出ており、向かって右から左の方向を磁界の方向とするものである。また、“■”は向かって右側をS極、左側をN極として、右から左へ磁力線が出ており、向かって左から右の方向を磁界の方向とするものである。これら“□”及び“■”をサブビットと呼ぶこととする。これらのサブビットを使用して、同図に示すように、実施例1では、“0”を“□■”で表現し、“1”を“■□”で表現することとする。なお、“0”及び“1”をデータパターン、“□”及び“■”を書き込みパターンともいう。書き込みパターンとは、磁気ディスク117へ実際に書き込む形式のパターンであることを意味する。なお、“□”及び“■”は、極性を持つ磁化単位である。そして、磁化単位同士は、角などの点で接する場合がある。これは、磁化単位の密集により生じる問題である。
【0048】
次に、実施例1の特定のサブビットの配列を置換する置換例(その1)を説明する。図7は、本発明の実施例1の特定のサブビットの配列を置換する置換例(その1)を示す図である。同図の上段の図によれば、“□■”又は“■□”により“0”又は“1”が表現されている。ここで同図の上段の図での破線で囲んだ部分に注目すると、“■”が対角線上の位置関係にあり、“■”の角である点で隣接していることが分かる。これを「隣接するパターン角部」という。なお、ここで、「対角線」とは、“■”及び“□”を2行2列に配置した正方形における対角線である。
【0049】
さて、“■”同士は同じ方向に磁力線を出すので、“■”が対角線上の位置関係にあり、“■”の角である点で隣接していても、磁力線の作用により、面での隣接へ遷移しようとする遷移作用を受ける。この遷移作用が“磁気くずれ”と呼ばれるものである。即ち点で隣接するようにパターンニングされている状態を崩してしまい、転写・複写されたサーボ情報の磁気パターンの正確性がくずれてしまうのである。
【0050】
そこで、図7の下段の図に示すように、“□■”を“□□”へ置換する。即ち、サーボ情報の転写・複製においては“□■”を“□□”として転写・複製し、逆にサーボ情報の読み出し時には“□□”を“□■”として読み出すこととする。このような置換を行うと、“磁気くずれ”が発生する、“■”同士が角である点で隣接する状況を回避することができる。このようにサーボ情報を複製可能なサーボパターンを有するマスタ体を作成し、該マスタ体を使用してサーボパターンを複製すると、サーボ情報の磁気パターンの“磁気くずれ”が発生することを防止することができる。
【0051】
次に、実施例1の特定のサブビットの配列を置換する置換例(その2)を説明する。図8は、本発明の実施例1の特定のサブビットの配列を置換する置換例(その2)を示す図である。同図の上段の図によれば、“□■”又は“■□”により“0”又は“1”が表現されている。ここで同図の上段の図での破線で囲んだ部分に注目すると、“■”が対角線上の位置関係にあり、“■”の角である点で隣接していることが分かる。そして図7と同様に、“■”の角である点で隣接する箇所、即ち隣接角部では、“磁気くずれ”が発生しやすい。
【0052】
そこで、図8の下段の図に示すように、“□■”を“■■”へ置換する。即ち、サーボ情報の転写・複製においては“□■”を“■■”として転写・複製し、逆にサーボ情報の読み出し時には“■■”を“□■”として読み出すこととする。このような置換を行うと、“磁気くずれ”が発生する、“■”同士が角である点で隣接する状況を回避することができる。このようにサーボ情報を複製可能なサーボパターンを有するマスタ体を作成し、該マスタ体を使用してサーボパターンを複製すると、サーボ情報の磁気パターンの“磁気くずれ”が発生することを防止することができる。
【0053】
なお、上記“□□”を読み出して“□■”の情報へと変換するアルゴリズム又は“■■”を読み出して“□■”の情報へと変換するアルゴリズムは、所定の制御プログラムとして磁気記録媒体駆動装置100のプリント基板104のLSIチップに格納され、実行される。
【実施例2】
【0054】
次に、実施例2のビットとサブビットとの関係を説明する。図9は、本発明の実施例2のビットとサブビットとの関係を示す図である。同図に示すように、デジタル情報の情報単位である“0”及び“1”で表現されるビットは、磁気ディスク117上では、“□”及び“■”の所定の並びで表現される。サブビット“□”及び“■”は、実施例1と同様に、磁化方向の違いによってそれぞれ区別される。例えば“□”は向かって右側をN極、左側をS極として、左から右へ磁力線が出ており、向かって右から左の方向を磁界の方向とするものである。また、“■”は向かって右側をS極、左側をN極として、右から左へ磁力線が出ており、向かって左から右の方向を磁界の方向とするものである。同図に示すように、実施例2では、“0”を“□□”で表現し、“1”を“■□”で表現することとする。
【0055】
次に、実施例2の特定のサブビットの配列を置換する置換例を説明する。図10は、本発明の実施例2の特定のサブビットの配列を置換する置換例を示す図である。同図の上段の図によれば、“□□”又は“■□”により“0”又は“1”が表現されている。ここで同図の上段の図での破線で囲んだ部分及びその付近に注目すると、“□□”が4列にわたって連続していることが分かる。例えば“□□”が3列以上にわたって連続している部分を「パターン間隔が広い部分」という。
【0056】
さて、磁力線はS極からN極へ出るが、連続する“□□”の極はその連続の両端であるので、自ずとS極とN極との距離が離れた格好となる。そして、磁力線の強さは、両極の距離が離れれば離れるほど弱くなると言う性質がある。このため、“□□”が連続する場合(例えば、“□□”が3個以上連続する場合)に、S極からN極への磁力線が弱まり、“磁気ノイズ”が発生しやすくなる。この“磁気ノイズ”は、サーボパターンのパターンニングを崩してしまい、転写・複写されたサーボ情報の磁気パターンの正確性がくずれてしまうのである。
【0057】
そこで、図10の下段の図に示すように、“□□”が例えば3個以上連続する箇所において少なくとも一つの“□□”を“□■”へ置換して、“□□”の連続を切断する。即ち、サーボ情報の転写・複製においては“□□”を“□■”として転写・複製し、逆にサーボ情報の読み出し時には“□■”を“□□”として読み出すこととする。このような置換を行うと、“磁気ノイズ”が発生しやすい、“□□”が連続する状況を回避することができる。このようにサーボ情報を複製可能なサーボパターンを有するマスタ体を作成し、該マスタ体を使用してサーボパターンを複製すると、サーボ情報の磁気パターンの“磁気ノイズ”が発生することを防止することができる。
【0058】
さらに、図10を参照して説明したように、“□□”が3個以上連続する箇所において少なくとも一つの“□□”を“□■”へ置換して、“□□”の連続を切断するとともに、実施例1で示した“■”が角で隣接している場合に、“□■”を“□□”へ置換、若しくは“□■”を“■■”へ置換するようにすると、“磁気くずれ”の発生も防止することができる。
【0059】
なお、上記“□□”を読み出して“□■”の情報へと変換するアルゴリズムは、所定の制御プログラムとして磁気記録媒体駆動装置100のプリント基板104のLSIチップに格納され、実行される。
【実施例3】
【0060】
次に、本発明の実施例3の斜線パターンの概略を説明するに先立って、従来の斜線パターンの概略を説明する。斜線パターンとは、サーボ情報を構成するサーボパターンであって、境界線を境に対向する斜線により構成される、磁気ヘッドの位置決めのためのサーボパターンのことである。磁気ヘッドの位置決めは、図11は、従来の斜線パターンの概略を示す図である。斜線パターンは、境界線を境に対向する斜線同士の位相差に基づいて決まるものである。従来の斜線パターンは、斜線パターン境界線205に対して斜線が常に一定の角度であるものである。
【0061】
同図を参照すると、磁気ディスク117に配置されているサーボ情報200の、磁気ディスク117の半径の中心付近のサーボパターンの拡大図は、図11(a)の図のようになる。即ち、斜線パターン境界線205は、半径方向と並行でありかつ接線方向と垂直である。ここで接線とは、磁気ディスク117のトラックに対する接線である。そして、サーボパターンの全ての斜線は、斜線パターン境界線205とθ1の角度で交差する。
【0062】
また、磁気ディスク117に配置されているサーボ情報200の、磁気ディスク117の半径の中心付近のサーボパターンの拡大図は、図11(b)の図のようになる。即ち、斜線パターン境界線205は、半径方向及び接線方向と角度をなして交差している。特に、半径方向となす角度をSkew角という。そして、サーボパターンの全ての斜線は、図11(a)と同様に、斜線パターン境界線205とθ1の角度をなす。
【0063】
即ち、従来のサーボ情報を構成するサーボパターンの斜線は、磁気ディスク117上の何れの位置においても、斜線パターン境界線205と常にθ1の角度をなして交差するものであった。このために、磁気ディスク117の中心付近や外周付近では、斜線が磁気ディスク117のトラックの接線方向に対してより鋭角をでなして交差するため、サーボパターンから発せられる磁束の強度の該接線方向の成分が小さくなっていた。このため、サーボパターンの転写・複写時に、磁気ディスク117の中心付近や外周付近では該サーボパターンの磁化強度が弱くなり、またサーボ情報の読み取り時に、該サーボパターンの読取方向である接線方向の磁束強度の成分が弱くなるために、サーボ情報の読み取りに困難を伴うことがあった。即ち、サーボ情報の磁気転写の印加磁界の余弦方向の磁化成分(即ち、トラック接線成分)が小さく、磁化の強度が相対的に弱くなり、またサーボ情報の読み取り時においても、磁気情報の読み取りの余弦方向の磁束成分が小さく、読み取りに困難を伴うという問題があった。本発明の実施例3は、このサーボ情報の読み取りの困難を克服するためになされたものである。
【0064】
次に、本発明の実施例3の斜線パターンの概略を説明する。図12は、実施例3の斜線パターンの概略を示す図である。実施例3の斜線パターンは、磁気ディスク117のトラックの接線方向に対して斜線が常に一定の角度であるものである。
【0065】
同図を参照すると、実施例3の磁気ディスク117に配置されているサーボ情報200の、磁気ディスク117の半径の中心付近のサーボパターンの拡大図は、図12(a)の図のようになる。即ち、斜線パターン境界線205は、半径方向と並行でありかつ接線方向と垂直である。接線とは、磁気ディスク117のトラックに対する接線である。そして、サーボパターンの全ての斜線は、接線方向とθ2の角度をなす。
【0066】
また、実施例3の磁気ディスク117に配置されているサーボ情報200の、磁気ディスク117の半径の外周付近のサーボパターンの拡大図は、図12(b)の図のようになる。即ち、斜線パターン境界線205は、接線方向に対してSkew角をもつものの、サーボパターンの全ての斜線は、図12(a)と同様に、接線方向とθ2の角度をなす。
【0067】
即ち、実施例3のサーボ情報を構成するサーボパターンの斜線は、磁気ディスク117上の何れの位置においても、接線方向と常にθ1の角度をなして交差するものである。よって、磁気ディスク117の中心付近や外周付近にかかわらず、斜線が磁気ディスク117のトラックの接線方向に対して一定角度をなすため、サーボパターンから発せられる磁束の強度の該接線方向の成分も一定となっている。即ち、Skew角度や半径によらず、斜線角度が一定になっている。このため、サーボパターンの転写・複写時に、磁気ディスク117の位置にかかわらず該サーボパターンの磁化強度が一様となり、サーボパターンの磁気複製が容易となる。また、サーボパターンまたサーボ情報の読み取り時に、該サーボパターンの読取方向である接線方向の磁束強度の成分も一定となるために、サーボ情報の読み取り時に困難を伴うことがない。なお、実施例3のサーボパターンにおいても、斜線パターン境界線205を境界にして対向する斜線同士がなす角度は従来のものと同様であり、Skew角度や半径によらず、1トラックに収まる斜線の線分の長さが一定であるために、通常の磁気ヘッド位置決めパターンと同様に機能する。
【0068】
本発明のマスタ体は、磁気記録媒体に転写後に磁気的に安定、即ち磁気くずれやノイズの発生や磁束強度の不均一の発生を防止することができる特殊なサーボパターンを有することを特徴とする。具体的には、磁化単位同士が点で接する場合はこれを所定のパターンに置き換えて点で接しないようにして磁気くずれを防止し、同一パターンの磁化単位が連続する場合は、該同一パターンの磁化単位の間に異なるパターンを挿入してノイズの発生を防止し、対向する斜線で構成されるサーボパターンにおいては、該斜線が磁気記録媒体のトラック接線に対して一定の角度を保つようにして、転写後のサーボパターンの磁束強度が磁気ディスク117のトラック位置、半径位置によらず一定とし、読み取りの安定性、精度を確保することができる。
【0069】
(付記1)磁気記録媒体に接近させて磁界を与えることにより、記録されているサーボパターンが該磁気記録媒体に転写されるマスタ体であって、
前記サーボパターンは、前記磁気記録媒体に容易に転写可能かつ転写後に磁気的に安定するパターンであることを特徴とするマスタ体。
【0070】
(付記2)前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンのくずれを防止するパターンであることを特徴とする付記1に記載のマスタ体。
【0071】
(付記3)前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、
前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする付記2に記載のマスタ体。
【0072】
(付記4)前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおけるノイズの発生を防止するパターンであることを特徴とする付記1に記載のマスタ体。
【0073】
(付記5)前記サーボパターンは、第1サブビット同士を並べて組み合わせた第3ビットと、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第4ビットとにより表現され、
前記第3ビットが連続する場合に、該連続する前記第3ビットのうちの少なくとも一つが前記第4ビットに置き換えられていることを特徴とする付記4に記載のマスタ体。
【0074】
(付記6)前記磁気記録媒体の隣り合うトラックの境界線に関して前記第4ビット同士がサブビット1個分ずれて隣接する場合に、その一方の第4ビットが前記第3ビット又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする付記5に記載のマスタ体。
【0075】
(付記7)前記サーボパターンは、対向する斜線から構成され、
前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおいて一様に磁化されているパターンであることを特徴とする付記1に記載のマスタ体。
【0076】
(付記8)前記斜線が前記磁気記録媒体のトラックの接線に対して常に一定角度を保っていることを特徴とする付記7に記載のマスタ体。
【0077】
(付記9)磁気記録媒体に接近させて磁界を与えることにより、記録されているサーボパターンが該磁気記録媒体に転写されるマスタ体であって、
前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、
前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とするマスタ体。
【0078】
(付記10)サーボパターンが記録されたマスタ体を接近させて磁界を与えることにより該サーボパターンが転写される磁気記録媒体であって、
前記サーボパターンは、該磁気記録媒体に容易に転写可能かつ転写後に磁気的に安定するパターンであることを特徴とする磁気記録媒体。
【0079】
(付記11)前記磁気的に安定するパターンは、転写されたサーボパターンのくずれを防止するパターンであることを特徴とする付記10に記載の磁気記録媒体。
【0080】
(付記12)前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、
同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする付記11に記載の磁気記録媒体。
【0081】
(付記13)前記磁気的に安定するパターンは、転写されたサーボパターンにおけるノイズの発生を防止するパターンであることを特徴とする付記10に記載の磁気記録媒体。
【0082】
(付記14)前記サーボパターンは、第1サブビット同士を並べて組み合わせた第3ビットと、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第4ビットとにより表現され、
前記第3ビットが連続する場合に、該連続する前記第3ビットのうちの少なくとも一つが前記第4ビットに置き換えられていることを特徴とする付記13に記載の磁気記録媒体。
【0083】
(付記15)隣り合うトラックの境界線に関して前記第4ビット同士がサブビット1個分ずれて隣接する場合に、その一方の第4ビットが前記第3ビット又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする付記14に記載の磁気記録媒体。
【0084】
(付記16)前記サーボパターンは、対向する斜線から構成され、
前記磁気的に安定するパターンは、転写されたサーボパターンにおいて一様に磁化されているパターンであることを特徴とする付記10に記載の磁気記録媒体。
【0085】
(付記17)前記斜線がトラックの接線に対して常に一定角度を保っていることを特徴とする付記16に記載の磁気記録媒体。
【0086】
(付記18)サーボパターンが記録されたマスタ体を接近させて磁界を与えることにより該サーボパターンが転写される磁気記録媒体であって、
前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、
前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする磁気記録媒体。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、マスタ体を用いて、より容易、高精度かつ安定したサーボ情報の磁気複製を作成したい場合に有用であり、特に、サーボ情報をあらわすサーボパターンの磁気くずれの抑制、ノイズ混入の発生の抑制及びサーボパターンの安定かつ高精度の読み取りを可能とするサーボ情報の磁気複製を作成したい場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施例1に係る磁気記録媒体駆動装置100の外観を概略的に示す図である。
【図2】図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部構造を概略的に示す図である。
【図3】図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部の磁気記録媒体収納空間に収納される磁気ディスク117の表面にパターンニングされるサーボ情報の概略を示す図である。
【図4】図1に示した磁気記録媒体駆動装置100の内部の磁気記録媒体収納空間に収納される磁気ディスク117の表面にサーボ情報が磁気転写・複製される工程を示す図である。
【図5】図4に示したサーボ情報の磁気パターンの複製の概略を示す図である。
【図6】本発明の実施例1のビットとサブビットとの関係を示す図である。
【図7】本発明の実施例1の特定のサブビットの配列を置換する置換例(その1)を示す図である。
【図8】本発明の実施例1の特定のサブビットの配列を置換する置換例(その2)を示す図である。
【図9】本発明の実施例2のビットとサブビットとの関係を示す図である。
【図10】本発明の実施例2の特定のサブビットの配列を置換する置換例を示す図である。
【図11】従来の斜線パターンの概略を示す図である。
【図12】本発明の実施例3の斜線パターンの概略を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
100 磁気記録媒体駆動装置
116 マスタ体
117 磁気ディスク
200 サーボ情報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体に接近させて磁界を与えることにより、記録されているサーボパターンが該磁気記録媒体に転写されるマスタ体であって、
前記サーボパターンは、前記磁気記録媒体に容易に転写可能かつ転写後に磁気的に安定するパターンであることを特徴とするマスタ体。
【請求項2】
前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンのくずれを防止するパターンであることを特徴とする請求項1に記載のマスタ体。
【請求項3】
前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、
前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする請求項2に記載のマスタ体。
【請求項4】
前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおけるノイズの発生を防止するパターンであることを特徴とする請求項1に記載のマスタ体。
【請求項5】
前記サーボパターンは、第1サブビット同士を並べて組み合わせた第3ビットと、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第4ビットとにより表現され、
前記第3ビットが連続する場合に、該連続する前記第3ビットのうちの少なくとも一つが前記第4ビットに置き換えられていることを特徴とする請求項4に記載のマスタ体。
【請求項6】
前記サーボパターンは、対向する斜線から構成され、
前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおいて一様に磁化されているパターンであることを特徴とする請求項1に記載のマスタ体。
【請求項7】
前記斜線が前記磁気記録媒体のトラックの接線に対して常に一定角度を保っていることを特徴とする請求項6に記載のマスタ体。
【請求項8】
磁気記録媒体に接近させて磁界を与えることにより、記録されているサーボパターンが該磁気記録媒体に転写されるマスタ体であって、
前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、
前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とするマスタ体。
【請求項9】
サーボパターンが記録されたマスタ体を接近させて磁界を与えることにより該サーボパターンが転写される磁気記録媒体であって、
前記サーボパターンは、該磁気記録媒体に容易に転写可能かつ転写後に磁気的に安定するパターンであることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項10】
前記磁気的に安定するパターンは、転写されたサーボパターンのくずれを防止するパターンであることを特徴とする請求項9に記載の磁気記録媒体。
【請求項11】
前記サーボパターンは、対向する斜線パターンから構成され、
前記磁気的に安定するパターンは、転写されたサーボパターンにおいて一様に磁化されているパターンであることを特徴とする請求項9に記載の磁気記録媒体。
【請求項12】
サーボパターンが記録されたマスタ体を接近させて磁界を与えることにより該サーボパターンが転写される磁気記録媒体であって、
前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、
前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項1】
磁気記録媒体に接近させて磁界を与えることにより、記録されているサーボパターンが該磁気記録媒体に転写されるマスタ体であって、
前記サーボパターンは、前記磁気記録媒体に容易に転写可能かつ転写後に磁気的に安定するパターンであることを特徴とするマスタ体。
【請求項2】
前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンのくずれを防止するパターンであることを特徴とする請求項1に記載のマスタ体。
【請求項3】
前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、
前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする請求項2に記載のマスタ体。
【請求項4】
前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおけるノイズの発生を防止するパターンであることを特徴とする請求項1に記載のマスタ体。
【請求項5】
前記サーボパターンは、第1サブビット同士を並べて組み合わせた第3ビットと、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第4ビットとにより表現され、
前記第3ビットが連続する場合に、該連続する前記第3ビットのうちの少なくとも一つが前記第4ビットに置き換えられていることを特徴とする請求項4に記載のマスタ体。
【請求項6】
前記サーボパターンは、対向する斜線から構成され、
前記磁気的に安定するパターンは、前記磁気記録媒体に転写されたサーボパターンにおいて一様に磁化されているパターンであることを特徴とする請求項1に記載のマスタ体。
【請求項7】
前記斜線が前記磁気記録媒体のトラックの接線に対して常に一定角度を保っていることを特徴とする請求項6に記載のマスタ体。
【請求項8】
磁気記録媒体に接近させて磁界を与えることにより、記録されているサーボパターンが該磁気記録媒体に転写されるマスタ体であって、
前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、
前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とするマスタ体。
【請求項9】
サーボパターンが記録されたマスタ体を接近させて磁界を与えることにより該サーボパターンが転写される磁気記録媒体であって、
前記サーボパターンは、該磁気記録媒体に容易に転写可能かつ転写後に磁気的に安定するパターンであることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項10】
前記磁気的に安定するパターンは、転写されたサーボパターンのくずれを防止するパターンであることを特徴とする請求項9に記載の磁気記録媒体。
【請求項11】
前記サーボパターンは、対向する斜線パターンから構成され、
前記磁気的に安定するパターンは、転写されたサーボパターンにおいて一様に磁化されているパターンであることを特徴とする請求項9に記載の磁気記録媒体。
【請求項12】
サーボパターンが記録されたマスタ体を接近させて磁界を与えることにより該サーボパターンが転写される磁気記録媒体であって、
前記サーボパターンは、第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第1ビットと、前記第1ビットとは異なる極性を持つように前記第1サブビット及び第2サブビットを1個ずつ並べて組み合わせた第2ビットとにより表現され、
前記磁気記録媒体の同一半径上の隣り合うトラックにて前記第1ビット及び前記第2ビットが隣接する場合に、その一方のビットが第1サブビット同士を並べた組み合わせ又は第2サブビット同士を並べた組み合わせに置き換えられていることを特徴とする磁気記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−179705(P2007−179705A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380038(P2005−380038)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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