説明

マスフローコントローラの取付構造

【課題】 ベースの締付け固定時に発生する応力を吸収緩和することでセンサに歪などの悪影響が及ばないようにして、本来の性能を安定よく確保でき、しかも、複数のセンサ等が設置される場合も低コストで十分な応力緩和機能を発揮できるようにする。
【解決手段】 内部に流体流路を有する本体ブロック1の外面1Aに、圧力センサ7を設置する中央取付部6aを有するセンサ取付用ベース(マスフローコントローラ用ベース)6をその長手方向の両端においてボルト11,11を介して金属ガスケット13を押圧変形させるように締付け固定してなるマスフローコントローラの取付構造であって、ベース6の長手方向両端の固定部位6b,6bより中央取付部6a側寄りの二箇所に、流体導入流路9と干渉しないように切り込み溝14,14を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスフローコントローラの取付構造に関する。詳しくは、内部に流体流路及びこの流体流路に一端が連通され他端が外面に開口された分岐流路を有する本体ブロックの外面に、流体流量もしくは圧力測定用のセンサ及び/又は流体流量もしくは圧力制御用の流体制御機器を設置する中央取付部を有するマスフローコントローラ用ベースが、その長手方向の両端部においてネジ部材を介して締付け固定され、このマスフローコントローラ用ベースの内部には一端が前記本体ブロックの分岐流路の他端開口に対応して開口され他端が前記センサ及び/又は流体制御機器設置用の中央取付部にまで延びる流体導入路が形成されており、前記本体ブロックの外面とこれに対向する前記ベースの取付面との間には前記流体導入流路の一端開口と前記本体ブロックの分岐流路の他端開口との接続部周りを取り囲むようにシールリングが介在されているマスフローコントローラの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のマスフローコントローラの取付構造では、全長及び全幅に亘って厚みが一定のマスフローコントローラ用ベースを用い、この厚み一定のマスフローコントローラ用ベースの長手方向の両端部に挿通させたボルトなどのネジ部材を本体ブロックにねじ込むことにより、マスフローコントローラ用ベースを本体ブロックに締付け固定する。この固定時の締付け力を本体ブロックの外面とマスフローコントローラ用ベースの取付面間で分岐流路の他端開口と流体導入流路の一端開口との接続部周りを取り囲むように介在させたシールリングに作用させて該シールリングを押圧変形させることにより、シールリングをベースおよびブロックの対向面に密着させて前記接続部からの流体漏れを防ぐように構成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2589318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のマスフローコントローラの取付構造においては、ボルトなどのネジ部材のねじ込みに伴う締付け力によってマスフローコントローラ用ベースに応力が発生する。特に、本体ブロック側の分岐流路の他端開口とマスフローコントローラ用ベース側の流体導入流路の一端開口との接続部からの流体漏れを確実に防止するために、シールリングとして、SUS製のOリングやC形シール等の金属ガスケットを用いた場合は、これを押圧変形させるために大きな締付け力が必要となり、それに伴いマスフローコントローラ用ベースに発生する応力も非常に大きくて該ベースに機械的な歪を生じ、その結果、マスフローコントローラ用ベースの中央取付部に設置されるセンサ及び/又は流体制御機器に歪などの悪影響を及ぼし、それらセンサ及び/又は流体制御機器の本来性能が損なわれてしまうという問題があった。
【0005】
また、マスフローコントローラ用ベースの締付け固定時に発生する応力およびそれに伴う歪などの悪影響がセンサ及び/又は流体制御機器に及ばないようにするために、センサ及び/又は流体制御機器のマスフローコントローラ用ベースに対する取付部に個別的に応力緩和構造を採用することも考えられるが、この場合は、センサや流体制御機器の設置数が複数である場合、それに対応して複数の応力緩和構造を設ける必要があって、コストの上昇を招く。また、センサや流体制御機器の形態や構造上の制約などによっては個別的な応力緩和構造を採れないものや、十分な応力緩和機能を発揮させることができないものがあり、本来性能の低下は避けられないという問題がある。
【0006】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、ベースの締付け固定時に発生する応力を吸収緩和することでセンサ及び/又は流体制御機器に歪などの悪影響が及ばないようにして、本来の性能を安定よく確保でき、しかも、センサや流体制御機器が複数設置される場合でも低コストで十分な応力緩和機能を発揮させることができるマスフローコントローラの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るマスフローコントローラの取付構造は、内部に流体流路及びこの流体流路に一端が連通され他端が外面に開口された分岐流路を有する本体ブロックの外面に、流体流量もしくは圧力測定用のセンサ及び/又は流体流量もしくは圧力制御用の流体制御機器を設置する中央取付部を有するマスフローコントローラ用ベースが、その長手方向の両端部においてネジ部材を介して締付け固定され、このマスフローコントローラ用ベースの内部には一端が前記本体ブロックの分岐流路の他端開口に対応して開口され他端が前記センサ及び/又は流体制御機器設置用の中央取付部にまで延びる流体導入路が形成されており、前記本体ブロックの外面とこれに対向する前記ベースの取付面との間には前記流体導入流路の一端開口と前記本体ブロックの分岐流路の他端開口との接続部周りを取り囲むようにシールリングが介在されているマスフローコントローラの取付構造であって、前記マスフローコントローラ用ベースの長手方向両端部の締付け固定部位よりも前記中央取付部側寄りの二箇所に、前記流体導入流路と干渉しないように切り込み溝を設けていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
上記のような特徴構成を採用した本発明によれば、ネジ部材を介してマスフローコントローラ用ベースを本体ブロックの外面に締付け固定するときに該マスフローコントローラ用ベースに発生する応力を切り込み溝で吸収緩和させて、つまり、応力を切り込み溝周辺のみに集中的に作用させてその溝周辺部にのみ歪を発生させて、その締付け応力がベースの中央取付部に設置されるセンサ及び/又は流体制御機器に伝わることを無くする、あるいは、極減することができる。このような応力緩和作用によりセンサ及び/又は流体制御機器に歪などの悪影響が出ることを抑制し、それらセンサ及び/又は流体制御機器の本来性能を長期に亘り安定よく確保することができる。しかも、マスフローコントローラ用ベースの中央取付部に複数のセンサや流体制御機器を設置する場合でも、そのベースの本体ブロックに対する締付け固定箇所に応力緩和用の切り込み溝を設けるだけでよいから、センサ及び/又は流体制御機器個々のベースに対する取付部に個別的に応力緩和構造を採用する場合に比べて、構造簡単かつ低コストに所定どおりの応力緩和機能を発揮させることができるという効果を奏する。
【0009】
本発明に係るマスフローコントローラの取付構造において、シールリングとしては、弾性ゴム製のOリングを使用してもよいが、特に、請求項2に記載のように、金属ガスケットを使用する場合に有効である。すなわち、金属ガスケットを使用する場合は、大きな締付け力を必要とし、その大きな締付け力によってマスフローコントローラ用ベースに発生する応力も非常に大きくなるが、その非常に大きな応力であってもそれを切り込み溝で吸収緩和することが可能であり、したがって、金属ガスケットの使用による優れた流体漏洩防止性能と、センサ及び/又は流体制御機器を長期に亘り安定よい性能の確保とを両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るマスフローコントローラの取付構造を示す外観側面図であり、同図において、1は本体ブロックで、この本体ブロック1の両端には流体入口用の接続部材2と流体出口用の接続部材3が取り付けられ、これら接続部材2,3との間の本体ブロック1の内部中心部には流体流路4が形成されているとともに、この流体流路4の一側寄り箇所には一端が前記流体流路4に連通され他端が本体ブロック1の外面1Aに開口5aされた分岐流路5が形成されている。
【0011】
6は長方形状のマスフローコントローラ用ベースの一例となるセンサ取付用ベースで、このベース6の長手方向の中央部には流体圧力を測定する圧力センサ7を固定設置する中央取付部6aが形成されているとともに、ベース6内部には一端が前記本体ブロック1の外面1Aにおける分岐流路5の他端開口5aに対応して開口9aされ他端が前記中央取付部6aにまで延びる流体導入流路9が形成されている。
【0012】
そして、前記センサ取付用ベース6は、図2に明示するように、その長手方向の両端部で前記流体導入流路9の一端開口9aを挟む両側位置に貫設された孔10,10を挿通するネジ部材、つまり、ボルト11,11を本体ブロック1の外面1Aに形成された雌ねじ部12,12にねじ込むことにより、前記本体ブロック1に締付け固定されている。この締付け固定時において前記本体ブロック1の外面1Aとこれに対向するセンサ取付用ベース6の取付面6Aとの間には前記分岐流路5の他端開口5aと前記流体導入流路9の一端開口9aとの接続部周りを取り囲むように、シールリングの一例となる金属ガスケット13が介在されており、前記ボルト11,11のねじ込みに伴って金属ガスケット13を押圧変形させることにより、該金属ガスケット13を前記ベース6および本体ブロック1の対向面6A,1Aに密着させて前記接続部からの流体漏れを防止するように構成されている。
【0013】
また、前記本体ブロック1の外面1Aで前記センサ取付用ベース6の固定位置よりも下流側位置には、前記圧力センサ7により測定された流体圧力に応じて流体流路4を流れる流体の流量または圧力を自動制御するための流体制御機器、たとえばバルブ15が固定設置されている。
【0014】
このようなマスフローコントローラの取付構造において、前記センサ取付用ベース6の長手方向両端部の締付け固定部位6b,6bよりも前記中央取付部6a側寄りの二箇所には、図3(a),(b)に示すように、その外面側から取付面6A側に向けて適宜深さで前記流体導入流路9と干渉しないように切り込み溝14,14が形成されている。なお、これら切り込み溝14,14はそれの形成箇所に寸法上余裕がない場合、例えばワイヤー放電加工等によって0.2mm以下の細幅に形成すればよい。
【0015】
上記したようにセンサ取付用ベース6の長手方向両端部の締付け固定部位6b,6bよりも前記中央取付部6a側寄りの二箇所に、流体導入流路9と干渉しないよう状態で切り込み溝14,14を設けることによって、ボルト11,11のねじ込みに伴いセンサ取付用ベース6の両端締付け固定部位6b,6bを、金属ガスケット13が押圧変形されて前記接続部からの流体漏れを確実に防止するように本体ブロック1の外面1Aに強力に締付け固定するとき、該センサ取付用ベース6に発生する応力を切り込み溝14,14で吸収緩和(つまり、応力を切り込み溝14,14周辺のみに集中的に作用させてその溝周辺部にのみ歪を発生)させて、その締付け応力がベース6の中央取付部6aに設置される圧力センサ7に伝わることを無くする、あるいは、極減し、圧力センサ7に歪などの悪影響が出ることを抑制することが可能である。これによって、圧力センサ7本来の圧力測定性能を長期に亘り安定よく確保することができる。
【0016】
なお、上記実施の形態では、マスフローコントローラ用ベースとして、中央取付部6aに圧力センサ7を設置したセンサ取付用ベースについて説明したが、その中央取付部6aに流体流量を測定する自己発熱型のサーマルセンサを設置するもの、二つの圧力センサを設置するもの、圧力センサなどのセンサとバルブなどの流体制御機器とを並列的に設置するもの、等の各種ベースに適用してもよく、上記実施の形態と同様な効果を奏することが可能である。
【0017】
また、上記実施の形態のように、圧力センサ7とは別個に本体ブロック1の外面1Aに流体制御機器設置用のベースを締付け固定する場合において、そのベース両端部の固定部位の内側寄り箇所に応力緩和用切り込み溝を設けることにより、同様な効果を奏することが可能である。
【0018】
さらに、センサ取付用ベース(マスフローコントローラ用ベース)6端部の締付け固定部位6bよりも中央取付部6a側寄り箇所に切り込み溝14を設けるにあたっては、図4に示すように、ベース6の幅方向の両側からそれぞれ幅中央部に向けて切り込み溝14a,14aを設ける、あるいは、図5に示すように、ベース6の厚み方向の両側からそれぞれ厚み中央部に向けて切り込み溝14a,14aを設けるといった具合に、流体導入流路9と干渉しないように設ける限り、切り込み溝の幅、深さ、数は限定されるものでない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るマスフローコントローラの取付構造の実施の形態を示す外観側面図である。
【図2】同上実施の形態における要部の拡大斜視図である。
【図3】(a),(b)は図2のX−X線での拡大断面図とその平面図である。
【図4】本発明に係るマスフローコントローラの取付構造の他の実施の形態における要部の拡大平面図である。
【図5】本発明に係るマスフローコントローラの取付構造のもう一つの実施の形態における要部の拡大側面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 本体ブロック
1A 本体ブロックの外面
4 流体流路
5 分岐流路
5a 分岐流路の他端開口
6 センサ取付用ベース(マスフローコントロール用ベースの一例)
6A ベースの取付面
6a 中央取付部
6b 締付け固定部位
7 圧力センサ(センサの一例)
9 流体導入流路
9a 流体導入流路の一端開口
11 ボルト(ネジ部材)
13 金属ガスケット(シールリングの一例)
14 切り込み溝
15 バルブ(流体制御機器の一例)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体流路及びこの流体流路に一端が連通され他端が外面に開口された分岐流路を有する本体ブロックの外面に、流体流量もしくは圧力測定用のセンサ及び/又は流体流量もしくは圧力制御用の流体制御機器を設置する中央取付部を有するマスフローコントローラ用ベースが、その長手方向の両端部においてネジ部材を介して締付け固定され、このマスフローコントローラ用ベースの内部には一端が前記本体ブロックの分岐流路の他端開口に対応して開口され他端が前記センサ及び/又は流体制御機器設置用の中央取付部にまで延びる流体導入路が形成されており、前記本体ブロックの外面とこれに対向する前記ベースの取付面との間には前記流体導入流路の一端開口と前記本体ブロックの分岐流路の他端開口との接続部周りを取り囲むようにシールリングが介在されているマスフローコントローラの取付構造であって、
前記マスフローコントローラ用ベースの長手方向両端部の締付け固定部位よりも前記中央取付部側寄りの二箇所に、前記流体導入流路と干渉しないように切り込み溝を設けていることを特徴とするマスフローコントローラの取付構造。
【請求項2】
前記シールリングとして、金属ガスケットを使用している請求項1に記載のマスフローコントローラの取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−343883(P2006−343883A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167552(P2005−167552)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000127961)株式会社堀場エステック (88)
【Fターム(参考)】