説明

マタニティブラジャー

【課題】産前および産後の授乳期間中のバストのボリューム変化に柔軟に追従して、バストやアンダーバストをいずれの方向にも圧迫することのない心地よいフィット感を付与する。
【解決手段】カップ部を表カップと裏カップの2層構造とし、前記表カップは縦横斜の全方向へ高伸縮性を有する繊維素材からなると共に、前記裏カップも縦横斜の全方向へ高伸縮性を有する弾性樹脂シートからなり、前記表カップと裏カップとは前側上端縁は互いに縫着せずに離反させると共に、脇側上端縁は互いに縫着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マタニティブラジャーに関するものであり、詳しくは、産前および産後におけるバストに圧迫感を与えることなく、ボリューム変化に柔軟に対応させるものである。
【背景技術】
【0002】
妊娠初期から出産に至るまでの妊娠期間中には、乳腺の発達に伴いバストのボリュームが増大し、通常、妊娠前に比べて、ブラジャーカップサイズで2カップ程度大きくなることが知られている。また、出産後においても、出産直後と授乳期間の経過に応じてバストのボリュームが変化することが知られている。
【0003】
この産前、産後のバスト変化に対応できるブラジャーとして、本出願人は、図5に示すように、伸縮特性を乳頭方向(図中の矢印方向)とした伸縮性素材からなる3片の構成部材2、3、4を縫合することによって左右カップ部5を構成し、カップ部5の下縁湾曲部6に沿って、芯線の外周に複数本の針金状の細線を整列させて螺旋状に捲回したワイヤー(図示せず)を設けた産前用ワイヤーブラジャー1を提案している(特公平4−47041号公報参照)。
【0004】
前記産前用ワイヤーブラジャー1は、カップ部5を構成する3片の構成部材2、3、4の伸縮特性を乳頭方向としているため、乳頭を起点として放射状に伸縮特性が出現し、バストの高さ方向への膨出変化に追従させることができるものである。
【0005】
【特許文献1】特公平4−47041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1のブラジャー1は、バストの高さ方向への変化に追従できる利点を有するが、産前、産後はバストの高さ方向のみならず、バスト基底部方向も含めてバスト全体が大きく膨らみ、乳頭方向のみの伸縮性だけではバストの著しいボリューム変化に対応しきれない場合がある。また、3片の構成部材2、3、4の縫着部分やワイヤーが伸び止めとなって伸縮が抑制されやすいことから、バストやアンダーバストをいずれの方向にも圧迫することなく、産前および授乳期間の産後の全期間にわたって心地よいフィット感を付与する点ではさらに改善の余地が残されている。さらに、また、前記産前用ワイヤーブラジャー1は裏打がなされておらず、バストの安定性や保形性の面でも改良の余地がある。
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、産前および産後の授乳期間中のバストのボリューム変化に柔軟に追従して、バストやアンダーバストをいずれの方向にも圧迫することなく心地よいフィット感を付与することができると共に、大きく重くなるバストを安定状態で保護し、バストの保形性にも優れたマタニティブラジャーの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、カップ部を表カップと裏カップの2層構造とし、
前記表カップは縦横斜の全方向へ高伸縮性を有する繊維素材からなると共に、前記裏カップも縦横斜の全方向へ高伸縮性を有する弾性樹脂シートからなり、
前記表カップと裏カップの前側上端縁は互いに縫着せずに離反させると共に、脇側上端縁は互いに縫着していることを特徴とするマタニティブラジャーを提供している。
【0009】
前記のように、カップ部を表カップと裏カップの2層構造とすることにより、妊娠、出産により大きく膨出するバストを安定状態で保護することができると共に、バストの下垂を防止し保形性を高めることができる。
また、前記2層構造のカップ部を構成する表カップを、縦横斜の全方向へ高伸縮性を有する繊維素材から形成すると共に、裏カップも縦横斜の全方向へ高伸縮性を有する弾性樹脂シートから形成することにより、カップ部を2層構造としても伸びが抑制されることなく、産前および産後の授乳期間中のバストの著しいボリューム変化に柔軟に追従することができ、バストをいずれの方向にも圧迫しない構成とすることができる。
即ち、前記構成とすることにより、乳腺の発達を阻害することなく、産前および産後の授乳期間中の全期間にわたって心地よいフィット感を付与することができると共に、前記したようなバストの安定性、保形性も保持できる。
【0010】
前記表カップおよび裏カップを構成する素材は、共に、縦横斜全方向に2倍以上の伸度を有していることが好ましく、特に、2倍以上3倍以下の伸度を有していることが好ましい。
前記のように、表カップおよび裏カップを構成する素材の伸度が全方向に2倍以上3倍以下であることが好ましいのは、全方向への伸度が2倍未満であると、産前および産後の授乳期間中のバストのボリューム変化に追従できなくなるおそれがある一方、全方向への伸度が3倍を越えると、バストへの追従性は良くても、バストの安定性や保形性が損なわれるおそれがあることによる。
【0011】
表カップに用いられる繊維素材としては、前記のように全方向へ高伸縮性を有した素材であれば特に限定されるものではないが、例えば、スパンデックス糸を用いたストレッチ天竺や、ツーウエイトリコットなどの伸縮性編物素材が好適に用いられる。
また、裏カップに用いられる弾性樹脂シートも、前記のように全方向へ高伸縮性を有した素材であれば特に限定されるものではないが、例えば、伸縮性のよいシート状ウレタンフォームや不織布、或いは、ポリウレタンなどの高弾性糸から編成された厚手シート状の丸編素材(ダンボールニット)などが好適に用いられる。
さらに、前記裏カップの厚みとしては、1.5mm〜3mm程度とすることが好ましい。前記裏カップの厚みを1.5mm〜3mm程度とすることが好ましいのは、裏カップの厚みが1.5mm未満であると、バストの保護や安定性、保形性の面で不十分となるおそれがある一方、厚みが3mmを越えると反発力が増加して、バストのボリューム変化に対する追従性が悪化するおそれがあることによる。
【0012】
また、前記のように、表カップと裏カップとは前側上端縁を互いに縫着せずに離反させる構成とすることにより、縫着による伸縮性低下を回避でき、バストのボリューム変化に一層追従させやすくすることができる。
なお、前記のように表カップと裏カップとを縫着せずに離反させた部分では、肌に直接接触する裏カップの方が表カップより伸びが大きくなる。したがって、表カップの上辺が裏カップの上辺より0.3cm〜1.5cm、好ましくは0.5cm〜1.0cm程度上方に位置するようにして、着用時に裏カップが表カップの上辺からはみ出さないようにしておくことが好ましい。
【0013】
一方、前記のように、表カップと裏カップの脇側上端縁は互いに縫着させることにより、脇側でバストをサポートし、安定感を与えることができる。
なお、表カップと裏カップの脇側上端縁の縫着は、例えば、裏カップの脇側上端縁を表カップの脇側上端縁の布で包み込み、包み込んだ状態の肌側の脇側上端縁に、背面部上端縁から連続させたストレッチテープを重ねて縫着することにより、脇側上端縁の伸縮性が縫着によって低下することなく、良好な追従性を維持させることができる。
【0014】
また、表カップと裏カップの下側周縁は、前記表カップと同一の伸縮性素材からなる土台部と、ワイヤーを介さずに伸縮性テープを用いて縫着し、該土台部は前中心布および脇布からなると共に、脇布は延在させて背面部を形成している。
産前および産後の授乳期間中、バストのボリューム変化に伴い、アンダーバストも通常5cm程度大きくなるが、土台部および土台部に連続する背面部を前記表カップ部と同一の伸縮性素材から形成することによって、アンダーバストの変化にも柔軟に追従し胃部等への圧迫を防止することができる。また、表カップと裏カップの下側周縁と土台部を、ワイヤーを介さずに縫着するので、バストの形状変化に追従させやすく、また、該縫着部の位置が下側にずれてきた場合にもワイヤーがアンダーバストを圧迫することがないため、心地よい着用感が得られる。
前記表カップおよび裏カップの下側周縁と土台部との縫着は、例えば、前記表カップおよび裏カップの下側周縁と土台部の上辺との縫い代部分に、前記伸縮性テープとして伸縮性を有するトリコット等のバイヤステープを重ね、二本針縫いなどによって縫着することにより、前記縫着部分にも伸縮性を持たせた構造とすることが好ましい。
【0015】
このように、カップ部、土台部および背面部のすべてが全方向に伸縮性を有する構成としているため、産前および産後の授乳期間中のバストやアンダーバストの変化に柔軟に追従し、バストやアンダーバストをいずれの方向にも圧迫しない心地よいフィット感を付与することができる。
【0016】
さらに、前記表カップ外側の前側上端縁に沿って高伸縮性弾性部材を縫着して端縁部始末を行うと共に、裏カップの前側上端縁は高伸縮性弾性部材を用いたパイピングにより端縁部始末を行い、かつ、前記表カップと裏カップは上下カップ部から構成し、該表カップの上下接ぎ合せ部はカップ布同士の片倒し接ぎまたは割り接ぎにより縫着すると共に、該裏カップの上下接ぎ合せ部は前記弾性樹脂シートの断面同士をつき合わせた状態で高伸縮性弾性部材を介して縫着し、該表、裏カップの縫着部を含めてカップ部に伸び止め部を存在させずにカップ部全体を全方向に伸縮する構成としていることが好ましい。
【0017】
前記のように、表カップおよび裏カップの前側上端縁の端縁部始末に、高伸縮性弾性部材を用いているため、端縁部始末による伸縮性低下を防止することができる。
前記表カップ外側の前側上端縁に沿わせる高伸縮性弾性部材には、例えば伸縮性を2倍以上有するストレッチテープやストレッチレースなどの伸縮性織編物部材が用いられる。
また、前記裏カップの前側上端縁に用いられるパイピング用の高伸縮性弾性部材には、伸縮性を2倍以上有するストレッチテープや、前記表カップや土台部および背面部に使用する素材をテープ状に裁断したものなどの伸縮性織編物部材が用いられる。
【0018】
また、前記のように、表カップと裏カップを上下カップ部から構成することにより、表、裏カップをバストにフィットさせやすい立体形状とすることができ、特に、上下カップ部の縫着ライン上の凸部に乳頭を位置させることで、発達する乳頭を押さえつけず安定した状態でバストを保護することができる。
【0019】
さらに、前記のように、裏カップの上下カップ部の上下接ぎ合せ部は、前記弾性樹脂シートの断面同士をつき合わせた状態で高伸縮性弾性部材を介して縫着されるため、上下カップ部の縫着による伸縮性低下を防止することができる。
上下カップ部の縫着は、まず、裁断された弾性樹脂シートからなる上カップの下端縁と下カップ上端縁の断面同士をつき合わせ、その上に前記高伸縮性弾性部材をあてがって三点千鳥縫いなどの伸縮性を持たせるステッチにより縫着することにより、該上下カップの縫着部の伸縮性をより高く保持することができる。
前記裏カップの上下接ぎ合せ部に使用する高伸縮性弾性部材には、例えば、伸縮性を2倍以上有する肌触りのよいストレッチテープや、前記表カップに使用する素材をテープ状に裁断したものなどの伸縮性織編物部材が用いられる。
【0020】
さらに、前記のように、表カップも、裏カップと同様に上下カップ部から構成し、乳頭位置を通るラインで上下カップを互いに縫着することが好ましい。この際、上下カップ部の接ぎ合せ部は、例えば、上下カップ部の縫い代を下側へ倒した片倒し接ぎとして、三点千鳥縫いや平二本縫いなどの伸縮性を持たせるステッチで縫着することが好ましく、また、上下カップ部の縫い代を上下に倒した割り接ぎとしてもよい。
【0021】
このように、表、裏カップの縫着部を含めてカップ部に伸び止め部を存在させずにカップ部全体を全方向に伸縮する構成としているので、バストの著しいボリューム変化に対しても、きわめて柔軟に追従することができ、妊娠初期から出産、さらには授乳期に至るまで長期間にわたって着用することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
前述したように、本発明によれば、カップ部を表カップと裏カップの2層構造とすることにより、妊娠、出産により大きく膨出するバストを安定状態で保護することができると共に、バストの下垂を防止し保形性を高めることができる。
また、前記2層構造のカップ部を構成する表カップを、縦横斜の全方向へ高伸縮性を有する繊維素材から形成すると共に、裏カップも縦横斜の全方向へ高伸縮性を有する弾性樹脂シートから形成することにより、カップ部を2層構造としても伸びが抑制されることなく、産前および産後の授乳期間中のバストの著しいボリューム変化に柔軟に追従することができ、バストをいずれの方向にも圧迫しない構成とすることができる。
【0023】
また、前記のように、表カップと裏カップとは前側上端縁を互いに縫着せずに離反させる構成とすることにより、縫着による伸縮性低下を回避でき、バストのボリューム変化に一層追従させやすくすることができる。
一方、表カップと裏カップの脇側上端縁は互いに縫着させることにより、脇側でバストをサポートし、安定感を与えることができる。
【0024】
また、前記のように、土台部および土台部に連続する背面部を前記表カップと同一の伸縮性素材から形成することによって、バストのボリューム変化に伴うアンダーバストの変化にも柔軟に追従し胃部等への圧迫を防止することができる。
さらに、前記のように、表カップと裏カップの下側周縁と土台部を、ワイヤーを介さずに縫着するので、バストの形状変化に追従させやすく、また、該縫着部の位置が下側にずれてきた場合にもワイヤーがアンダーバストを圧迫することがないため、心地よい着用感が得られる。
【0025】
このように、本発明によれば、カップ部、土台部および背面部のすべてが全方向に伸縮性を有する構成としているため、産前および産後の授乳期間中のバストやアンダーバストの変化に柔軟に追従し、バストやアンダーバストをいずれの方向にも圧迫しない心地よいフィット感を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4は本発明の実施形態のマタニティブラジャー10およびその一部を示しており、図1はマタニティブラジャー10の正面図、図2はその背面図、図3は裏カップ(外面側)の概略図、図4は表カップ(内面側)の概略図である。
【0027】
図1、図2に示すように、マタニティブラジャー10は、バストを覆う左右のカップ部11、バージスライン(バスト基底部)に沿ってカップ部11より下部を覆う土台部12、土台部12を延在させてなる左右の背面部13および左右の肩紐14からなり、カップ部11は表カップ15と裏カップ16との2層構造としている。また、表カップ15を上カップ部15aと下カップ部15bとから構成すると共に、裏カップ16も、上カップ部16aと下カップ部16bとから構成している。
【0028】
前記上下カップ部15a、15bからなる表カップ15は、縦横斜の全方向へ2倍以上の伸度を有する高伸縮性の繊維素材から形成し、本実施形態においては、スパンデックス糸を綿糸とナイロン糸でカバーリングしたカバーリングヤーンを用いたストレッチ天竺(全方向への伸度が2.5倍)を用いている。
また、上下カップ部16a、16bからなる裏カップ16も、縦横斜の全方向へ2倍以上の伸度を有する高伸縮性の弾性樹脂シートから形成し、本実施形態においては、ウレタンフォームの両面に高伸縮性のトリコットをラミネートした弾性樹脂シート(厚さが2mmで全方向への伸度が2.5倍)を用いている。
また、前中心布12Xおよび脇布12Yからなる土台部12および脇布12Yを延在させて形成した左右の背面部13には、表カップ15と同一の素材を用いている。
【0029】
図2、3に示すように、裏カップ16を構成する下カップ部16bは、乳頭位置を上端位置として上方に湾曲する上端縁16b−1と、バージスラインに沿って下方に湾曲する下端縁16b−2とで囲まれた形状を有している。
また、裏カップ16を構成する上カップ部16aは、脇側上端縁16a−1と、前側上端縁16a−2と、前記下カップ部16bの上端縁16b−1に対応した曲線よりなる下端縁16a−3とで囲まれた形状を有している。
【0030】
裏カップ16は、前記形状に裁断した上カップ部16aの下端縁16a−3と下カップ部16bの上端縁16b−1の断面同士をつき合わせ、肌側(内面側)の該付き合わせ部分に、高伸縮性弾性部材である前記表カップや土台部および背面部に使用する素材をテープ状に裁断したもの17をあてがい三点千鳥縫いによって縫着することにより上下接ぎ合せ部16Xを形成し、一体化している。
【0031】
また、図1、図4に示すように、表カップ15を構成する下カップ部15bも、乳頭位置を上端位置として上方に湾曲する上端縁15b−1と、バージスラインに沿って下方に湾曲する下端縁15b−2とで囲まれた形状を有し、表カップ15を構成する上カップ部15aも、脇側上端縁15a−1と、前側上端縁15a−2と、前記下カップ部15bの上端縁15b−1に対応した曲線よりなる下端縁15a−3とで囲まれた形状を有している。
表カップ15は、前記形状に裁断した上カップ部15aの下端縁15a−3と下カップ部15bの上端縁15b−1の縫い代部分15cを下側へ倒した片倒しとして、平二本縫いで縫着することにより上下接ぎ合せ部15Xを形成し、一体化している(図4)。
【0032】
表カップ15と裏カップ16の下側周縁である下端縁15b−2、16b−2は、土台部12の上辺12aとワイヤーを介さずに縫着している。具体的には、表カップ15および裏カップ16の下端縁15b−2、16b−2と土台部12の上端縁12aとの縫い代部分に、図2に示すような伸縮性を有するトリコットのバイヤステープ18を重ね、二本針縫いによって縫着することにより、該縫着部分に伸縮性を持たせた構造としている。
【0033】
また、表カップ15と裏カップ16の前側上端縁15a−2、16a−2は、互いに縫着せずに離反させており、表カップ15の前側上端縁15a−2が裏カップ16aの前側上端縁16a−2より0.5〜1.0cm程度上方に位置するようにしている。
また、表カップ15外側の前側上端縁15a−2に沿って、高伸縮性弾性部材であるストレッチレース19を縫着して端縁部始末をしていると共に、裏カップ16の前側上端縁16a−2は高伸縮性弾性部材であるストレッチテープ20を用いたパイピングにより端縁部始末をしている。
【0034】
一方、表カップ15と裏カップ16の脇側上端縁15a−1、16a−1は、互いに縫着している。具体的には、裏カップ16の脇側上端縁16a−1を表カップ15の脇側上端縁15a−1の布で包み込み、包み込んだ状態の肌側の脇側上端縁に、背面部13の上端縁13a端末から連続させたトリコットのストレッチテープ21を重ね合わせて縫着している。
また、背面部13の下端縁13bおよびそれに連続する土台部12の下端縁12bにも、同様のストレッチテープ22を縫着して、背面部13および土台部12の伸縮性を低下させない構成としている。
【0035】
このように、表カップ15と裏カップ16とからなるカップ部11、土台部12および背面部13のすべてが全方向に伸縮性を有する構成とし、カップ部11には、表カップ15、裏カップ16の縫着部を含めて伸び止め部を存在させずに、カップ部11全体を全方向に伸縮する構成としている。
【0036】
また、背面部13にはバストのボリューム変化に合わせて4段階に調節可能なホック23を設けている。
さらに、肩紐14にはストレッチテープを用い、肩紐14のカップ部側先端と、表カップ15の脇側上端とに、2段階に調節可能なホック24を取り付け、表カップ15と裏カップ16からなるカップ部11が前開きできる構成としている。
また、母乳パッドやガーゼ等を裏カップ16の内面側に保持するための保持用テープ25を裏カップ16の上下方向に設け、その上端25aを肩紐14先端のホック24に連結している。
【0037】
前記のように、カップ部11を表カップ15と裏カップ16の2層構造とすることにより、妊娠、出産により大きく膨出するバストを安定状態で保護することができると共に、バストの下垂を防止し保形性を高めることができる。
また、前記2層構造のカップ部11を構成する表カップ15を、縦横斜の全方向へ高伸縮性を有する繊維素材(全方向への伸度が2.5倍であるストレッチ天竺)から形成すると共に、裏カップ16も縦横斜の全方向へ高伸縮性を有する弾性樹脂シート(全方向への伸度が2.5倍であるウレタンフォーム)から形成することにより、カップ部11を2層構造としても伸びが抑制されることなく、産前および産後の授乳期間中のバストの著しいボリューム変化に柔軟に追従することができ、バストをいずれの方向にも圧迫しない構成とすることができる。
【0038】
さらに、前記のように、表カップ15と裏カップ16とは前側上端縁15a−2、16a−2を互いに縫着せずに離反させる構成とすることにより、縫着による伸縮性低下を回避でき、バストのボリューム変化に一層追従させやすくすることができる。
一方、表カップ15と裏カップ16の脇側上端縁15a−1、16a−1は互いに縫着させることにより、脇側でバストをサポートし、安定感を与えることができる。
【0039】
また、前記のように、土台部12および土台部12に連続する背面部13を表カップ15と同一の伸縮性素材から形成することによって、バストのボリューム変化に伴うアンダーバストの変化にも柔軟に追従し胃部等への圧迫を防止することができる。
さらに、前記のように、表カップ15と裏カップ16の下側周縁である下縁端15b−2、16b−2と土台部12を、ワイヤーを介さずに縫着するので、バストの形状変化に追従させやすく、また、該縫着部の位置が下側にずれてきた場合にもワイヤーがアンダーバストを圧迫することがないため、心地よい着用感が得られる。
【0040】
前記のように、表カップ15の前側上端縁15a−2および裏カップ16の前側上端縁16a−2の端縁部始末に、高伸縮性弾性部材であるストレッチレース19およびストレッチテープ20を用いているため、端部始末による伸縮性低下を防止することができる。
【0041】
また、前記のように、表カップ15および裏カップ16を上下カップ部15a、15bおよび16a、16bから構成することにより、表カップ15および裏カップ16をバストにフィットさせやすい立体形状とすることができ、特に、上下カップ部15a、15bおよび16a、16bの縫着ライン15b−1(15a−3)および16b−1(16a−3)が乳頭位置を通るようにすることにより、発達する乳頭を押さえつけず安定した状態でバストを保護することができる。
特に、裏カップ16の上下カップ部16a、16bは、前記のように、上カップ部16aの下端縁16a−3と下カップ部16bの上端縁16b−1の断面同士をつき合わせた状態で、表カップ15や土台部12、背面部13に使用する素材をテープ状に裁断した高伸縮性弾性部材17を介して縫着されるため、上下カップ部の縫着による伸縮性低下を防止することができる。
【0042】
このように、カップ部11、土台部12および背面部13のすべてが全方向に伸縮性を有する構成としているため、妊娠期間中および産後の授乳期間中のバストやアンダーバストの変化に柔軟に追従し、バストやアンダーバストをいずれの方向にも圧迫しない心地よいフィット感を付与することができる。
特に、表カップ15、裏カップ16の縫着部を含めてカップ部11に伸び止め部を存在させずにカップ部11全体を全方向に伸縮する構成としているので、バストの著しいボリューム変化に対しても、きわめて柔軟に追従することができ、妊娠初期から出産、授乳期に至るまで長期間にわたって着用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施形態におけるマタニティブラジャーの正面図である。
【図2】本実施形態におけるマタニティブラジャーの背面図である。
【図3】裏カップの外面側(表カップ側)の概略斜視図である。
【図4】表カップの内面側(裏カップ側)の概略斜視図である。
【図5】従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
10 マタニティブラジャー
11 カップ部
12 土台部
12a 上端縁
12b 下端縁
12X 前中心布
12Y 脇布
13 背面部
13a 上端縁
13b 下端縁
14 肩紐
15 表カップ
15a 上カップ部
15a−1 脇側上端縁
15a−2 前側上端縁
15a−3 下端縁
15b 下カップ部
15b−1 上端縁
15b−2 下端縁
15c 縫い代
15X 上下接ぎ合せ部
16 裏カップ
16a 上カップ部
16a−1 脇側上端縁
16a−2 前側上端縁
16a−3 下端縁
16b 下カップ部
16b−1 上端縁
16b−2 下端縁
16X 上下接ぎ合せ部
17 高伸縮性弾性部材
18 バイヤステープ
19 ストレッチレース
20、21、22 ストレッチテープ
23、24 ホック
25 保持用テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ部を表カップと裏カップの2層構造とし、
前記表カップは縦横斜の全方向へ高伸縮性を有する繊維素材からなると共に、前記裏カップも縦横斜の全方向へ高伸縮性を有する弾性樹脂シートからなり、
前記表カップと裏カップの前側上端縁は互いに縫着せずに離反させると共に、脇側上端縁は互いに縫着していることを特徴とするマタニティブラジャー。
【請求項2】
前記表カップ外側の前側上端縁に沿って高伸縮性弾性部材を縫着して端縁部始末を行うと共に、裏カップの前側上端縁は高伸縮性弾性部材を用いたパイピングにより端縁部始末を行い、かつ、
前記表カップと裏カップは上下カップ部から構成し、該表カップの上下接ぎ合せ部はカップ布同士の片倒し接ぎまたは割り接ぎにより縫着すると共に、該裏カップの上下接ぎ合せ部は前記弾性樹脂シートの断面同士をつき合わせた状態で高伸縮性弾性部材を介して縫着し、該表、裏カップの縫着部を含めてカップ部に伸び止め部を存在させずにカップ部全体を全方向に伸縮する構成としている請求項1に記載のマタニティブラジャー。
【請求項3】
前記表カップと裏カップの下側周縁は、前記表カップと同一の伸縮性素材からなる土台部と、ワイヤーを介さずに伸縮性テープを用いて縫着し、該土台部は前中心布および脇布からなると共に、脇布は延在させて背面部を形成しており、
前記カップ部、土台部及び背面部のすべてが全方向に伸縮性を有する構成としている請求項1または請求項2に記載のマタニティブラジャー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−115487(P2008−115487A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298231(P2006−298231)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(306033379)株式会社ワコール (116)
【Fターム(参考)】