説明

マッコリ風味飲料用粉末又は顆粒、及びそれを用いる飲料の調製方法

【課題】 消化酵素等を生成する麹、糖類の発酵を促す酵母及び優れた整腸作用を示す乳酸菌を、より美味しく摂取できる食品の提供。
【解決手段】 麹、活性酵母及び活性乳酸菌を含有することを特徴とする、マッコリ風味飲料用粉末又は顆粒。この粉末又は顆粒を冷水等に溶解及び/又は分散させることにより、マッコリ風味のノン・アルコール飲料を調製することができる。また、この粉末又は顆粒を温水等に溶解及び/又は分散させ、その溶液及び/又は分散液を10℃乃至45℃に保持してアルコール発酵を行わせることにより、マッコリ風味のアルコール飲料を調製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性液体に溶解及び/又は分散させることにより、マッコリ風味を示す飲料となる粉末又は顆粒と、その粉末又は顆粒を用いるノン・アルコール飲料及びアルコール飲料の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車を運転する人などをターゲットとした、ビール風味のノン・アルコール飲料が開発され、販売されている。一方、韓国の伝統酒の一種であるマッコリが、我が国においても流行してきている。マッコリは、米、小麦を主原料とするアルコール発酵飲料である。
【0003】
発酵に関わる成分としては、麹、酵母、乳酸菌等が知られている。これらの中で、麹は、消化酵素等を生成し、酵母は糖類の発酵を促し、また乳酸菌は優れた整腸作用を示す。したがって、これら自体を健康補助食品として摂取させようとの試みも知られてはいる。しかし、これらはいずれも、風味がよいとはいえない。したがって、これらの混合物をその主成分とする食品は知られていない。特許文献1には、酵母に由来するエキスと乳酸菌を同時に使用して、機能性食品を製造する方法が提案されているが、これも、酵母自体と乳酸菌とが併用されてなる食品ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−166870
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の実情に鑑み、本発明は、麹、酵母、乳酸菌等を用いる、マッコリ風味飲料を提供できる粉末又は顆粒の提供を目的とする。また、そのような粉末又は顆粒を用いた、ノン・アルコール飲料及びアルコール飲料の調製方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、優れた作用を示す麹、酵母、乳酸菌等をより美味しく摂取できる食品を提供すべく、鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、麹、活性酵母及び活性乳酸菌を含有することを特徴とする、マッコリ風味飲料用粉末又は顆粒に関する。
【0007】
この飲料用粉末又は顆粒は、さらに、添加された糖類、コラーゲン類及びアミノ酸類からなる群から選択される少なくとも一種を含むものであってもよい。
【0008】
本発明は、マッコリ風味のノン・アルコール飲料を調製するための、本発明に係る飲料用粉末又は顆粒の使用、及び、マッコリ風味のアルコール飲料を調製するための、本発明に係る飲料用粉末又は顆粒の使用にも関する。
【0009】
ノン・アルコール飲料を調製するに際しては、本発明に係る飲料用粉末又は顆粒を、アルコールを含まない水性液体に溶解及び/又は分散させる。本発明に係る飲料用粉末又は顆粒には、麹中の澱粉質から麹に由来する酵素によって生成された糖(発酵性又は酵母資化性糖)が含有されている。よって、ノン・アルコール飲料を調製するに際しては、この糖のアルコール発酵が生じ難い、好ましくは生じない条件を選択する必要がある。
【0010】
糖のアルコール発酵が生じ難い又は生じない条件の一つは、水性液体の温度をアルコール発酵が生じ難い又は生じない温度とすることである。そのような温度とは、通常は0℃超且つ15℃以下であり、好ましくは0℃超且つ10℃未満である。糖のアルコール発酵が生じ難い又は生じない他の条件として、本発明に係る飲料用粉末又は顆粒の、水性液体への溶解及び/又は分散から、得られた飲料の飲用までの時間を短時間とすることが挙げられる。この場合には、水性液体として、より高温のものを使用してもよい。そのような場合であっても、麹中の酵素が失活せず、活性酵母及び活性乳酸菌が死滅しない温度であることが好ましいので、使用する水性液体の温度は、45℃以下であることが好ましく、15℃超且つ45℃以下であることがさらに好ましい。
【0011】
一方、アルコール飲料を調製するに際しては、本発明に係る飲料用粉末又は顆粒を、水性液体に溶解及び/又は分散させ、得られた溶液及び/又は分散液を、10℃乃至45℃、好ましくは15℃超且つ45℃以下に放置してアルコール発酵を行わせる。アルコール飲料の調製には糖(発酵性又は酵母資化性糖)が必要であるが、本発明の飲料用粉末又は顆粒には、麹中の澱粉質から麹に由来する酵素によって生成された糖が含有されている。したがって、本発明に係る飲料用粉末又は顆粒を水性液体に溶解及び/又は分散させ、得られた溶液及び/又は分散液を適切な温度に保持すれば、アルコール発酵が進む。なお、アルコール発酵を促進させたい場合には、本発明に係る飲料用粉末又は顆粒として、添加された、適当量の発酵性(酵母資化性)糖類を含むものを使用するか、又は、上記の溶液及び/又は分散液に、適当量の発酵性(酵母資化性)糖類を加えるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、優れた作用を示す麹、酵母、乳酸菌等をより美味しく摂取できるようになる。また、例えば車の運転をする人も、マッコリ風味飲料(ノン・アルコールのもの)を愉しむことが出来るようになる。
【0013】
本発明の粉末又は顆粒を用いれば、家庭で手軽に、マッコリ風味のアルコール飲料を製造することも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る飲料用粉末又は顆粒は、麹、活性酵母及び活性乳酸菌を含有する。なお、「顆粒」の概念には、「細粒」も含まれる。
【0015】
麹とは、穀物や糠などに、食品発酵に有用なカビを中心とした微生物を繁殖させたものである。麹の種類は、使用する穀物等の種類と、麹菌の種類によって分類される。使用する穀物等の種類の点からは、米麹、麦麹及び豆麹等に分類される。
【0016】
麹の主成分である麹菌は、学名で、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus orizae)及びモナスカス(Monascus)等に分類される。アスペルギルス・ニガーに属する麹菌の例としては、黒麹菌(Aspergillus awamoriともいう)及び白麹菌(Aspergillus usamiiともいう)が挙げられる。アスペルギルス・オリザエに属する麹菌の例としては、黄麹菌及び醤油麹菌(Aspergillus soyaともいう)が挙げられる。モナスカス属の麹菌の例としては、紅麹菌が挙げられる。
【0017】
黒麹に含まれている黒麹菌は、泡盛の醸造に使用されているコウジカビであり、クエン酸発酵を盛んに行う。白麹に含まれている白麹菌は、泡盛黒麹菌の白色変異株である。黄麹に含まれている黄麹菌は、みそ、醤油、日本酒、焼酎、酢、味醂の製造に使用されている。その中でも、アミラーゼ力価の高いものは酒造用に、プロテアーゼ力価の高いものはみそ、醤油の醸造用に使用されている。醤油麹に含まれている醤油麹菌は、プロテアーゼ力価が高く、したがってタンパク質の分解力が強いので、主として醤油の醸造に使用されている。紅麹に含まれている紅麹菌は、中国の紅酒を造るのに使用されている。紅麹菌は黄麹菌と同様のアミラーゼやプロテアーゼを産生するので、日本酒やみそなども作ることが出来る。
【0018】
本発明では、アルペルギルス属に属する麹菌を含む麹、具体的には、黒麹、白麹及び黄麹からなる群から選択される少なくとも一種の麹を使用することが好ましい。
【0019】
麹菌類は、α−アミラーゼ、α−グルコシダーゼ、グルコアミラーゼ等のアミラーゼ群の酵素や、プロテアーゼ群の酵素、リパーゼ群の酵素を、大量に体外に分泌する。これらの酵素により、澱粉、タンパク質、脂質が加水分解され、低分子量の物質に変換される。本発明では、本発明の粉末又は顆粒が体内に摂取された後、体内、具体的には胃腸系において、これらの酵素が活性を示すように、凍結乾燥又は常温で噴霧乾燥された麹を用いることが好ましい。また、その性状は、粉末や顆粒に加工できるものであればよい。
【0020】
酵母とは、広義には、生活環の一定期間において栄養体が単細胞性を示す真菌類の総称である。本発明における「酵母」とは、そのような広義の酵母の中で、例えば食品の加工に利用されているものであって、ほ乳類に対して毒性を示さないものを指す。その例を挙げると、サッカロミセス セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae;出芽酵母)等のサッカロミセス属(Saccharomyces)のもの、シゾサッカロミセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe;分裂酵母)等のシゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)のもの等が挙げられる。より具体的には、清酒酵母、焼酎酵母、ビール酵母、ワイン酵母、パン酵母、トルラ酵母等である。本発明では、出芽酵母を用いることが好ましく、清酒酵母、焼酎酵母及びパン酵母からなる群から選択される少なくとも一種を用いることがさらに好ましい。
【0021】
本発明においては、活性酵母、すなわち、生きているものを使用する。また、その性状は、凍結乾燥や噴霧乾燥によって乾燥させてなる粉末又は顆粒(例えばドライ・イースト)であることが好ましく、もしくは、粉末や顆粒に加工できる性状である。
【0022】
活性酵母は、糖類のアルコール発酵に寄与する。加えて、酵母の細胞壁に含まれているβ−グルカンが、免疫力向上に寄与する。
【0023】
乳酸菌とは、乳酸発酵を行う菌の総称であり、糖から乳酸のみを作るホモ発酵乳酸菌と、糖から乳酸と酢酸と二酸化炭素を作るヘテロ発酵乳酸菌とがある。また、乳酸菌は、細菌学的位置づけからみると、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)及びロイコノストック属(Leuconostoc)等に属するものがある。乳酸菌は、それが働く対象によっても分類される。すなわち、乳酸菌には、植物系と動物系とがあり、植物系乳酸菌の代表例は、漬け物の製造に使用されるもの(Lactobacillus plantarum, Lactobacillus brevis)や日本酒の製造中に出現するもの(Leuconostoc mesenteroides,Lactobacillus sakei等)であり、動物系乳酸菌の代表例は、ヨーグルト等の乳製品の製造に使用されるもの(Lactobacillus casei,Streptococcus lactis, Bifidobacterium等)である。
【0024】
本発明では、Lactobacillus sakei、Lactobacillus acidophilis、Lactobacillus plantarum、Bifidobacterium longum、Lactobacillus casei及びStreptococcus lactisからなる群から選択される少なくとも一種の乳酸菌を使用することが好ましい。また、本発明では、活性乳酸菌、すなわち、生きているものを使用するが、中でも、生きたまま腸に届く乳酸菌株を使用することが特に好ましい。活性乳酸菌の性状は、粉末又は顆粒に加工できるものであればよい。
【0025】
本発明の飲料用粉末又は顆粒の必須成分は、上記の麹、活性酵母及び活性乳酸菌である。その配合割合は、この粉末又は顆粒を、例えば水に溶解及び/又は分散させた場合に、マッコリのような風味を示す限り、特に限定されない。好ましい範囲は、これら3種の必須成分の合計を100重量%としたときに、麹は、好ましくは10乃至80重量%、さらに好ましくは20乃至70重量%である。また、活性酵母は、これら3種の必須成分の混合物1gあたり、好ましくは10乃至10cfuとなる量であり、さらに好ましくは10乃至10cfuとなる量である。活性乳酸菌は、これら3種の必須成分の混合物1gあたり、好ましくは10乃至10cfuとなる量であり、さらに好ましくは10乃至10cfuとなる量である。
【0026】
本発明の飲料用粉末又は顆粒は、上記の必須成分に加え、コラーゲン類、アミノ酸類、及び外部から添加された糖類からなる群から選択される一種以上の成分を含有するものであってもよい。
【0027】
コラーゲンは、真皮、靱帯、腱、骨、軟骨などを構成するタンパク質の一種であるが、食品として摂取されると、体内で分解されてペプチドとなる。また、変性コラーゲンであるゼラチンや、アテロコラーゲン、コラーゲンを酵素処理して低分子化したコラーゲンペプチドも、本願発明におけるコラーゲンの定義に包含される。コラーゲンペプチドは、体内で分解され易いために、アミノ酸にまで分解し得る。本発明では、市販のコラーゲン製品を使用することができる。
【0028】
本発明の飲料用粉末又は顆粒中におけるコラーゲンの量は、特に限定されないが、上記の必須成分三種の合計重量100重量部としたときに、5乃至70重量部であることが好ましく、15乃至60重量部であることがさらに好ましい。
【0029】
アミノ酸類も、市販の各種製品を使用することができる。本発明の飲料用粉末又は顆粒中におけるアミノ酸の量は、特に限定されないが、上記の必須成分三種の合計重量100重量部としたときに、2乃至15重量部であることが好ましく、5乃至10重量部であることがさらに好ましい。
【0030】
糖類とは、例えば、シュークロース、グルコース、マルトース、ラクトース、フルクトース、各種オリゴ糖類、難消化性デキストリン等である。これらの中、発酵性又は酵母資化性の糖類は、水溶液中では酵母によるアルコール発酵を受ける。また、そのままでは酵母資化性ではない糖であっても、麹が産生する酵素によって分解されて単糖を生ずるものがある。そのような麹由来の酵素によって産生された糖類(発酵性又は酵母資化性糖類)も、水溶液中では酵母によるアルコール発酵を受ける。
【0031】
アルコール発酵を促進するためには、シュークロース、グルコース、マルトース及びフルクトースからなる群から選択される少なくとも一種の糖を使用することが好ましい。
【0032】
糖類の量は、特に限定されないが、上記の必須成分三種の合計重量100重量部としたときに、10乃至100重量部であることが好ましく、15乃至90重量部であることがさらに好ましい。
【0033】
本発明の飲料用粉末又は顆粒は、その原料がいずれも粉末又は顆粒である場合には、原料を混合するのみで調製することができる。粉末でも顆粒でもない原料がある場合には、原料を混合した後に、得られた混合物を噴霧乾燥、凍結乾燥、顆粒への造粒処理等に供すればよい。
【0034】
本発明の飲料用粉末又は顆粒は、マッコリ風味のノン・アルコール飲料の調製、及び、マッコリ風味のアルコール飲料の調製に使用することができる。これらの飲料は、具体的には、次のようにして調製する。
【0035】
(ノン・アルコール飲料の調製)
本発明の飲料用粉末又は顆粒を、アルコールを含まない水性液体に溶解及び/又は分散させることにより、マッコリ風味のノン・アルコール飲料を得ることができる。
【0036】
使用する水性液体は、飲用に供することができるものであって、アルコールを含まないものである限り、特に限定されない。その具体例としては、水、炭酸水、果汁又はその希釈液、ノン・アルコール飲料(例えば、ビール風味のノン・アルコール飲料)又はその希釈液、その他の糖類飲料(例えば、蜂蜜やメープルシロップ飲料)等が挙げられる。
【0037】
使用する水性液体の温度は、アルコール発酵が生じ難い又は生じない温度であることが好ましい。そのような温度とは、通常は0℃超且つ15℃以下、好ましくは0℃超且つ10℃未満である。なお、飲料の調製から飲用までの時間が短時間である場合、すなわち、アルコール発酵が生じないうちに飲用してしまう場合には、水性液体としてより高温のものを使用してもよい。但し、麹中の酵素が失活せず、酵母や乳酸菌が死滅しないような温度であることが好ましい。そのような温度とは、45℃以下であり、したがって、より高温の水性液体を使用する場合には、その温度は、15℃超且つ45℃以下であることが好ましい。
【0038】
例えばマッコリ風味を愉しむことのみを目的とする場合であって、飲料の調製から飲用までの時間が短時間である場合には、水性液体の温度は、さらに高温であってもよい。なお、例えば乳酸菌は、生きたままで腸に届かなくても、すなわち死滅菌体も、疾病予防効果を示すとの報告があるので、麹中の酵素が失活し、酵母や乳酸菌が死滅するような温度の水性液体を使用した場合にも、何らかの健康増進効果は得られる可能性がある。
【0039】
調製されるノン・アルコール飲料中の本発明の飲料用粉末又は顆粒の割合は、特に限定されないが、通常は1乃至40重量%、好ましくは2乃至30重量%程度である。
【0040】
(アルコール飲料の調製)
本発明の飲料用粉末又は顆粒を、水性液体に溶解及び/又は分散させ、得られた溶液及び/又は分散液を10℃乃至45℃に、好ましくは15℃超且つ45℃以下に放置してアルコール発酵を行わせることにより、マッコリ風味のアルコール飲料を得ることができる。
【0041】
使用する水性液体は、飲用に供することができるものである限り、特に限定されない。その具体例としては、水、炭酸水、果汁又はその希釈液、酒類(例えば、ワイン、ビール、焼酎)又はその希釈液、ノン・アルコール飲料又はその希釈液、その他の糖類飲料(例えば、蜂蜜やメープルシロップ飲料)等が挙げられる。なお、水性液体として酒類を使用すれば、アルコール発酵を行わなくても、マッコリ風味のアルコール飲料を得ることができる。
【0042】
本発明の飲料用粉末又は顆粒中の酵母は、グルコース、シュークロース、マルトース、フルクトース等を分解してエタノールを生じる。すなわち、アルコール飲料の調製に際しては、酵母によってアルコール発酵される糖が存在する必要がある。本発明の飲料用粉末又は顆粒は、麹中の澱粉質から麹に由来する酵素によって生成された糖類を含有するものであるので、別途、糖類を添加しなくても、水の存在下でアルコール発酵は生じる。しかし、本発明の飲料用粉末又は顆粒として、別途加えた発酵性(酵母資化性)糖類を含むものを使用したり、及び/又は、本発明の飲料用粉末又は顆粒の溶液及び/又は分散液の調製の際に、そのような糖類を添加することにより、調製されるアルコール飲料のアルコール濃度を高くすることが可能であり、あるいは、短時間でアルコール飲料を調製することが可能となる。
【0043】
アルコール発酵の際の温度は、通常は10℃乃至45℃程度である。発酵温度を、好ましくは15℃超且つ30℃以下、より好ましくは15℃超且つ25℃以下とすると、香り及び味が更に良好となる。また、アルコール発酵に供する時間も特に限定されないが、通常は24乃至120時間程度である。発酵時間を24乃至72時間程度とすると、甘味が残る。
【0044】
調製されるアルコール飲料中の本発明の飲料用粉末又は顆粒の割合は、特に限定されないが、通常は1乃至40重量%、好ましくは2乃至15重量%程度である。また、アルコール発酵をスムーズに進行させるためには、発酵性(酵母資化性)糖類が、本発明の飲料用粉末又は顆粒に含まれている活性酵母の、2乃至4重量倍程度の量で含有されていることが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例により、本発明を具体的に説明する。
【0046】
(実施例1) 本発明のマッコリ風味飲料用粉末(その1)
(1)粉末の調製
以下の配合処方で、原料粉末を混合し、本発明のマッコリ風味飲料用粉末を調製した。
【0047】
【表1】

【0048】
(2)飲料の調製
(1)で調製した粉末10gを常温の水90mlに溶解し、飲料(A)を得た。
(1)で調製した粉末10gをぬるま湯(約40℃)90mlに溶解し、得られた溶液を約30℃に30時間保持し、飲料(B)を得た。約30℃に30時間保持している間に、麹中の澱粉質が酵素によって糖化され、その糖を活性酵母がアルコール発酵させ、また、その糖の一部を乳酸菌が乳酸発酵させた。
【0049】
(3)粉末及び飲料の風味
(1)で調製した粉末をそのまま口腔内に含むと、比較的良好な黄麹の香りと味がし、その香りと味は、マッコリに類似するものであった。
飲料(A)は、粉末をそのまま口腔内に含んだ場合と同様の香り及び味であった。
飲料(B)は、飲料(A)と比べ、マッコリ様の香味がより強く醸し出されていた。
【0050】
(4)アルコール濃度の測定
(1)で調製した粉末20gを冷水180mlに溶解した。溶解直後の溶液全量を丸底フラスコに取り、これに蒸留水100mlを加えた後、簡易単式蒸留器により蒸留し、その流出液100乃至150mlを回収した。回収した流出液が冷却されたら、200mlにメスアップし、そのアルコール濃度を酒精計により測定した。その結果、アルコール濃度は0%であった。
【0051】
(実施例2) 本発明のマッコリ風味飲料用粉末(その2)
(1)粉末の調製
以下の配合処方で、原料粉末を混合し、本発明のマッコリ風味飲料用粉末を調製した。
【0052】
【表2】

【0053】
(2)飲料の調製
(1)で調製した粉末10gを常温の水90mlに溶解し、飲料(C)を得た。
(1)で調製した粉末10gをぬるま湯(約40℃)90mlに溶解し、約30℃に12時間保持し、飲料(D)を得た。
【0054】
(3)粉末及び飲料の風味
(1)で調製した粉末をそのまま口腔内に含むと、黒麹の酸味と黄麹の甘味が感じられ、且つ、爽やかさもあった。その風味は、マッコリと似ていた。なお、粉末の色彩は灰色であった。
飲料(C)も、マッコリ風味が醸し出されていた。
飲料(D)は、ほど良いアルコール発酵臭と酸味が有り、まさにマッコリ様の香味が醸し出されていた。
【0055】
(実施例3) 本発明のマッコリ風味飲料用粉末(その3)
(1)粉末の調製
以下の配合処方で、原料粉末を混合し、本発明のマッコリ風味飲料用粉末を調製した。
【0056】
【表3】

【0057】
(2)飲料の調製
(1)で調製した粉末10gを常温の水90mlに溶解し、飲料(E)を得た。
(1)で調製した粉末10gをぬるま湯(約40℃)90mlに溶解し、約30℃に5時間保持し、飲料(F)を得た。同様に、約30℃に12時間保持し、飲料(G)を得た。同様に、約30℃に3日間保持し、飲料(H)を得た。
【0058】
(3)粉末及び飲料の風味
(1)で調製した粉末をそのまま口腔内に含むと、麹の香味、甘味、酸味があり、マッコリ様の程良い香味が感じられた。この粉末は、色調も良好である。
飲料(E)は、粉末をそのまま口腔内に含んだ場合と同様のよい風味があり、爽やかな飲料であった。
飲料(F)は、アルコールのほのかな香りが立ち、飲料(E)よりもさらにマッコリ様の香味が醸し出されていた。
飲料(G)は、アルコールの香りが立ち、飲料(F)よりもさらにマッコリ様の香味が醸し出されていた。
【0059】
本発明の飲料用粉末を使用すれば、甘口好みの人は余り発酵させず、辛口好みの人は3日間程度発酵させるなどにより、味も自在に調整することができる。
【0060】
(4)アルコール濃度の測定
(1)で調製した粉末20gを冷水180mlに溶解した。溶解直後の溶液全量を丸底フラスコに取り、これに蒸留水100mlを加えた後、簡易単式蒸留器により蒸留し、その流出液100乃至150mlを回収した。回収した流出液が冷却されたら、200mlにメスアップし、そのアルコール濃度を酒精計により測定した。その結果、アルコール濃度は0%であった。
【0061】
飲料(H)200mlを調製し、これを丸底フラスコに取り、蒸留水100mlを加えた後、簡易単式蒸留器により蒸留し、その流出液150乃至180mlを回収した。回収した流出液が冷却されたら、200mlにメスアップし、そのアルコール濃度を酒精計により測定した。その結果、飲料(H)のアルコール濃度は3乃至4%であった。
【0062】
(実施例4) 本発明のマッコリ風味飲料用粉末(その4)
(1)粉末の調製
以下の配合処方で、原料粉末を混合し、本発明のマッコリ風味飲料用粉末を調製した。
【0063】
【表4】

【0064】
(2)飲料の調製
(1)で調製した粉末10gを常温の水90mlに溶解し、飲料(I)を得た。
(1)で調製した粉末10gをぬるま湯(約40℃)90mlに溶解し、約30℃に5時間保持し、飲料(J)を得た。また、約30℃に12時間保持し、飲料(K)を得た。さらに、約30℃に3日間保持し、飲料(L)を得た。
【0065】
(3)粉末及び飲料の風味
(1)で調製した粉末をそのまま口腔内に含むと、麹の香味、甘味、酸味があり、マッコリ様の程良い香味が感じられた。この粉末は、色調もよい。
飲料(I)は、粉末をそのまま口腔内に含んだ場合と同様のよい風味があり、爽やかな飲料であった。
飲料(J)は、アルコールのほのかな香りが立ち、飲料(I)よりもさらにマッコリ様の香味が醸し出されていた。
飲料(K)は、アルコールの香りが立ち、飲料(I)よりもさらにマッコリ様の香味が醸し出されていた。
【0066】
本発明の飲料用粉末を使用すれば、甘口好みの人は余り発酵させず、辛口好みの人は3日間程度発酵させるなどにより、味も自在に調整することができる。また、コラーゲンは、麹由来の酵素によって分解され、低分子化されて吸収されやすくなることから、コラーゲンを含む本発明の飲料の飲用により、肌の保湿性向上効果や肌の張りが期待できる。
【0067】
(4)アルコール濃度の測定
(1)で調製した粉末20gを冷水180mlに溶解した。溶解直後の溶液全量丸底フラスコに取り、これに蒸留水100mlを加えた後、簡易単式蒸留器により蒸留し、その流出液150至180mlを回収した。回収した流出液が冷却されたら、200mlにメスアップし、そのアルコール濃度を酒精計により測定した。その結果、アルコール濃度は0%であった。
【0068】
飲料(L)200mlを調製し、これを丸底フラスコに取り、蒸留水100mlを加えた後、簡易単式蒸留器により蒸留し、その流出液150乃至180mlを回収した。回収した流出液が冷却されたら、200mlにメスアップし、そのアルコール濃度を酒精計により測定した。その結果、飲料(L)のアルコール濃度は2乃至2.5%であった。
【0069】
(実施例5) 本発明のマッコリ風味飲料用粉末(その5)
(1)粉末の調製
実施例3と同様の処方で、原料粉末を混合し、本発明のマッコリ風味飲料用粉末を調製した。
【0070】
(2)飲料の調製
(1)で調製した粉末20乃至40gを、常温の炭酸水100mlに溶解し、発泡性飲料(M20)乃至発泡性飲料(M40)を得た。
(1)で調製した粉末20乃至40gを、オレンジ果汁100mlに溶解し、飲料(N20)乃至飲料(N40)を得た。
【0071】
(3)飲料の風味
発泡性飲料(M20)乃至発泡性飲料(M40)は、いずれも、美味しい発泡性のマッコリ様飲料であった。
飲料(N20)乃至飲料(N40)は、いずれも、カクテル風であった。
【0072】
(実施例6) 本発明のマッコリ風味飲料用粉末(その6)
(1)粉末の調製
以下の配合処方で、原料粉末を混合し、本発明のマッコリ風味飲料用粉末を調製した。
【0073】
【表5】

【0074】
(2)飲料の調製(その1)
(1)で調製した粉末40gを、ぬるま湯(約40℃)100mlに溶解し、約30℃に36時間保持し、飲料(O)を得た。
【0075】
(3)飲み比べ(その1)
(2)で調製した飲料(O)と、韓国製市販マッコリ飲料との飲み比べを行った。市販マッコリには、ノンカロリー甘味料のアスパルティームが使用されていたが、その甘味の後引きの影響か、甘味のキレが悪い結果となり、パネル10人中9人が、飲料(O)の方が良いと評価し、残り1人は同等と評価した。
【0076】
また、市販マッコリ中では、酵母や乳酸菌は生きていないことから、生感覚が無く発酵本来の呈味にも欠けるきらいがあった。
【0077】
(4)飲料の調製(その2)
(1)で調製した粉末40gを、冷水(約10℃)100mlに溶解し、飲料(P)を得た。
【0078】
(5)飲み比べ(その2)
(4)で調製した飲料(P)(粉末を溶解した直後のもの;ノンアルコール飲料)と、韓国製市販マッコリ飲料との飲み比べを行った。パネル10人中7人が、飲料(P)をマッコリ同様に飲用可能と評価し、3人は、アルコールの香りが欲しいが充分に飲用可能であると評価した。
【0079】
(実施例7) 本発明のマッコリ風味飲料用粉末(その7)
(1)粉末の調製
実施例4と同様の処方で、原料粉末を混合し、本発明のマッコリ風味飲料用粉末を調製した。
【0080】
(2)飲用試験
25乃至28歳の女性10名のボランティアに、1日2回(朝、晩の食後)、(1)で調製した粉末2gを水道水約50mlに溶解したものを飲用させた。試験期間は、4週間であった。
この年代の女性は、比較的便秘症が多く、便秘症による吹き出物も多いことから、それらの諸症状の改善効果や体重変化について調査した。
【0081】
その結果、便秘症であると回答した7人全員が、飲用3日目以降、毎日お通じがあり、快調となった。便秘症ではなかった残り3人は、毎日1回以上、通常のお通じがあり、軟便などの特別な変化は生じなかった。
お通じが改善された7人(試験開始時の平均体重:55kg)は、試験開始から3週間後の体重が、試験開始時からみて−1.2kg(平均値)であった。最大減少者は、−4.0kgであった。
また、5人が、飲用後の朝の洗顔時につるつる感が出た、夜の化粧落しが楽になり、肌の張りが違ったなどの感想を持ち、8人が、肌にシットリ感が出たとの感想を持った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
麹、活性酵母及び活性乳酸菌を含有することを特徴とする、マッコリ風味飲料用粉末又は顆粒。
【請求項2】
さらに、コラーゲン類及びアミノ酸類からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載のマッコリ風味飲料用粉末又は顆粒。
【請求項3】
さらに、添加された糖類を含む、請求項1又は2に記載のマッコリ風味飲料用粉末又は顆粒。
【請求項4】
マッコリ風味のノン・アルコール飲料を調製するための、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマッコリ風味飲料用粉末又は顆粒の使用。
【請求項5】
マッコリ風味のアルコール飲料を調製するための、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマッコリ風味飲料用粉末又は顆粒の使用。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマッコリ風味飲料用粉末又は顆粒を、アルコールを含まない水性液体に溶解及び/又は分散させることを特徴とする、マッコリ風味のノン・アルコール飲料の調製方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマッコリ風味飲料用粉末又は顆粒を水性液体に溶解及び/又は分散させ、得られた溶液及び/又は分散液を10℃乃至45℃に放置してアルコール発酵を行わせることを特徴とする、マッコリ風味のアルコール飲料の調製方法。

【公開番号】特開2013−34444(P2013−34444A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174574(P2011−174574)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(510004169)有限会社ラヴィアンサンテ (1)
【Fターム(参考)】