説明

マッコリ風味飲料

【課題】発酵工程を設けることなく、十分な香味を持つアルコール分1%(v/v)未満のマッコリ風味飲料を提供することを目的とする。
【解決手段】農産物糖化品を原料として用い、Ref.Brixが8%(w/w)以上40%(w/w)未満、pHが3.5以上4.6以下、エチルアルコールの含有量が100μL/L以上4,000μL/L以下、イソアミルアルコールの含有量が50μL/L以上1,000μL/L以下であることを特徴とするアルコール分1%(v/v)未満のマッコリ風味飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール分1%(v/v)未満のマッコリ風味飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
マッコリは、韓国の伝統的なアルコール飲料であり、我が国では近年の韓流ブームと相まってその販売量が急速に伸びている。マッコリの基本的な製法は、まず米や小麦の澱粉質を麹により糖化してブドウ糖とし、次に酵母を加えてブドウ糖をエチルアルコールとし、更に乳酸発酵により一部のブドウ糖を乳酸とする。本品は米や小麦に由来するタンパク質、ビタミン、ミネラルに富んだ健康飲料としても注目されている。
【0003】
一方、近年酒類の風味を付与した清涼飲料水の販売量も急速に伸びている。その背景として、飲酒運転に対する罰則が強化されたこと、また従来品が1%(v/v)未満のアルコールを含んでいたのに対し、近年発売されたアルコール分0.00%(v/v)の飲料は、発酵させずに製造されているために、アルコールがほぼ含まれていないことが大きな理由と考えられる。自動車の運転者のみならず、妊婦や健康上の理由によりアルコールを摂取できない人の需要まで取り込んで、ブームとなっている。
【0004】
上記の酒類の風味を付与した清涼飲料水は、一般にノンアルコール飲料と呼ばれる。ノンアルコール飲料に対する法的な定義はないが、酒税法では、アルコール分1%(v/v)以上の飲料(希釈または溶解によりアルコール分1%(v/v)以上の飲料とすることができるものを含む)が「酒類」とされている。アルコール分1%(v/v)未満であれば、香料や酸により酒類の風味を再現した飲料であっても「酒類」に該当せず、食品衛生法に基づき清涼飲料水、炭酸飲料などの表示を行うことで販売することができる。ここでいうアルコール分とは、温度15℃の時において原容量百分中に含有するエチルアルコールの容量をいう。
【0005】
市販されているアルコール分0.00%(v/v)のビール風味ノンアルコール飲料は、ビールの原料の一つであるホップ由来の香気成分などを添加することで、発酵させずにビールに近い風味を再現していると考えられる。一方、マッコリは、その風味が主として発酵により生成し、香気成分も多岐にわたる。またマッコリは、粗くろ過した「濁り酒」であるため、原料由来の固形分が残っており、これも風味に寄与している。このため、ビール風味ノンアルコール飲料と同様に香味を添加する方法では、十分な風味を持つマッコリ風味のノンアルコール飲料を製造することは困難であった。
【0006】
また、発酵を利用して、アルコール分1%(v/v)未満のノンアルコール飲料を製造する方法は、発酵工程でアルコール分1%(v/v)未満の発酵度に留める方法、発酵後に生成したエチルアルコールを除去する方法の2通りが考えられる。
発酵工程でアルコール分1%(v/v)未満の発酵度に留める方法としては、発酵工程前の糖化工程で糖質約1%(w/w)とする方法がある。エチルアルコールは糖質の発酵により生成するので、糖化工程で糖質約1%(w/w)とすれば、アルコール分1%(v/v)未満とすることができる。しかし、糖質約1%(w/w)の条件と酵母の至適生育条件とは大きく異なるため、添加する酵母量を極端に増やす必要があり、その分生産コストがかかる上、オフフレーバーが生成することも多い。すなわち、高価格な上、不味い製品となってしまい、この方法は飲料の製造方法としては事実上不可能である。
また糖化工程で、糖質濃度を10〜20%(w/w)に調整し、発酵工程において、アルコール分1%(v/v)未満の段階で発酵を止める方法もあるが、発酵の管理が煩雑となるばかりでなく、発酵が不十分なため、発酵で生成する香気成分が少なく、風味が不十分となり、この方法も製造方法として事実上不可能である。
【0007】
次に発酵後、生成したエチルアルコールを取り除いてアルコール分1%(v/v)未満にする方法として、蒸留によりエチルアルコールを取り除く方法と逆浸透膜により取り除く方法がある。
蒸留により取り除く方法は、小規模な実験室レベルならよいが、大規模に生産する場合、大型かつ高価な装置が必要で初期投資が大きいのみならず、留去する上で相当な熱量が必要であり、多くの二酸化炭素も出るため、コスト・環境の観点から著しく不利である。また、エチルアルコールを留去する際、エステル系の香気成分も除去されてしまい、風味が著しく劣る商品となる。
一方、逆浸透膜による方法も、初期投資が過大であり、かつ分子量が近いイソプロパノール等の香気成分が取り除かれてしまい、風味が著しく劣る商品となる。
【0008】
清酒に含まれる香気成分については深く研究されている(例えば、非特許文献1参照。)。また、実際に低アルコールの清酒にカプロン酸エチル、イソアミルアルコール、ノルマルプロパノール、イソブタノールを一定範囲にすることにより、清酒の香味が保持できることが示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、これらの香りを添加してもマッコリらしさを保持することはできない。これは、清酒とマッコリは、米を原料として酵母により発酵したアルコール飲料という点では共通するが、マッコリの多くは米のほかに原料に小麦を併用していること、発酵度が低いこと、乳酸菌発酵させている点で清酒とは異なり、風味が相当異なるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3035592号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】財団法人 日本醸造協会、「醸造物の成分」、財団法人 日本醸造協会発行、平成11年12月10日、p.21〜33
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、発酵工程を設けることなく、十分な香味を持つアルコール分1%(v/v)未満のマッコリ風味飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明は、以下の態様を有する。
[1]農産物糖化品を原料として用い、Ref.Brixが8%(w/w)以上40%(w/w)未満、pHが3.5以上4.6以下、エチルアルコールの含有量が100μL/L以上4,000μL/L以下、イソアミルアルコールの含有量が50μL/L以上1,000μL/L以下であることを特徴とするアルコール分1%(v/v)未満のマッコリ風味飲料。
[2]前記農産物糖化品が、米糖化品である[1]記載のマッコリ風味飲料。
なお、本発明でのアルコール分とは、上記と同様に温度15℃の時において原容量百分中に含有するエチルアルコールの容量をいう。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発酵工程を設けることなく、十分な香味を持つアルコール分1%(v/v)未満のマッコリ風味飲料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のマッコリ風味飲料は、農産物糖化品を原料として用い、Ref.Brixが8%(w/w)以上40%(w/w)未満、pHが3.5以上4.6以下、エチルアルコールの含有量が100μL/L以上4,000μL/L以下、イソアミルアルコールの含有量が50μL/L以上1,000μL/L以下となるように調整し得られるものである。
農産物糖化品は、水分を除いた成分中に澱粉質を50質量%以上含有する農産物を原料とし、その澱粉質を糖まで分解することにより得られる。農産物の水分を除いた成分中の澱粉質が50質量%未満では、製品部分より残渣部分のほうが多くなり、歩留まりが低下し、環境面でも問題となる。また、残渣の廃棄費用も生じるため、生産コストが著しく高くなる。
水分を除いた成分中に澱粉質50質量%以上含む農産物としては、米、小麦、大麦、ソルガム、トウモロコシ等の穀物、サツマイモ等のイモ類等が挙げられる。
また、水分を除いた成分中に澱粉質50質量%以上含む農産物の他に、農産物全体の水分を除いた成分中の澱粉質含有率が50質量%未満にならない範囲で、豆類、野菜、果物等の農産物(以下、これらの農産物を「他の農産物」と総称する。)を使用しても良い。他の農産物としては、黒豆、大豆、そらまめ、トマト、オレンジ、桃等が挙げられる。他の農産物により、風味や機能を付加することができる。
澱粉質の分解方法としては、触媒として酵素、液化・糖化酵素を含有している麦芽または麹、酸のいずれを用いてもよく、触媒に限るものではない。
農産物糖化品は、農産物由来のタンパク質、ビタミン、ミネラルを多く含むため、これを含んだマッコリ風味飲料は、マッコリと同様に健康飲料としての効果も予測できる。
農産物糖化品のうち、米はマッコリに使用されている原料であるため、米の澱粉質を分解することにより得られる米糖化品を用いることが好ましい。
【0015】
米糖化品の原料となる米は、粉砕していない丸米を用いても、粉砕し粉状とした米粉を用いてもよい。米粉を原料として使用したほうが使いやすいため好ましい。丸米を原料として使用しても、澱粉質の糖化に時間がかかるが、時間をかけて糖化することにより、米粉を使用した場合と同様の糖化品を得ることができる。
原料として米粉を、触媒として酵素を使用し米糖化品を製造する場合、米粉に水を加えて分散させ、これに液化酵素を加えて70℃以上に加熱することにより澱粉質を分解して液化させ、糖化酵素の至適温度まで温度を下げた後、糖化酵素を加えて一定時間反応させることにより糖化し、米糖化品を得ることができる。
液化酵素は一般的に液化型α−アミラーゼを使用する。
また使用する糖化酵素により、生成する糖を自由にコントロールすることができ、最終製品の甘さを調整することや機能性糖類である難消化性オリゴ糖を生成させることもできるため、糖化酵素は目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、糖化酵素としてグルコアミラーゼを使用すれば糖質をブドウ糖中心に、β−アミラーゼを使用すれば麦芽糖中心に、トランスグルコシダーゼを使用すれば難消化性オリゴ糖中心にすることができる。
【0016】
原料として米粉を、触媒として塩酸を使用し米糖化品を製造する場合、米粉に水を加えて分散させた後、塩酸を加えてpHを2に調整し、加熱すると澱粉質が分解され、米糖化品を得ることができる。
【0017】
農産物糖化品は、液状の糖化液でも、液状の糖化液を乾燥して製造した、粉末状の糖化粉体でも使用することができる。粉末状にするための乾燥方法としては、公知の方法であってよい。たとえばスプレードライ方式、フリーズドライ方式、膜分離等が挙げられる。糖化粉体は、乾燥するのにエネルギーがかかるためコスト高となるが、長期保存することができる、常温で流通できる等のメリットがある。糖化粉体を使用する場合は、水に溶解して用いれば、糖化液と同様に用いることができる。
【0018】
農産物糖化品が液状の場合は水で希釈または濃縮することにより、また農産物糖化品が粉末状の場合は、溶解する水の量を調節することにより、得られるマッコリ風味飲料のRef.Brixを調節することができる。
液状の農産物糖化品を濃縮する方法としては、公知の方法が利用でき、たとえば煮沸濃縮、真空濃縮、凍結濃縮、膜濃縮等が挙げられる。
糖化液を製造する工程で、農産物と水の量を調整することにより、Ref.Brixを調整してもよいが、農産物の量が少なすぎると糖化液の生産性が落ちるため、糖化液を得た後に調整することが生産性の面から好ましい。
【0019】
本発明のマッコリ風味飲料のRef.Brixは、8%(w/w)以上40%(w/w)未満である。8%(w/w)未満の場合、水っぽくなり、40%(w/w)以上であると重さを感じ、それぞれ飲料には適さない。
通常、マッコリは、Ref.Brix4〜5%(w/w)であるが、アルコール分による重みがある。一方、本発明品はアルコール分を含まないため、Ref.Brixをマッコリに比べて高い、8%(w/w)以上40%(w/w)未満に設定することにより、重みを補うことができる。
【0020】
マッコリは乳酸菌発酵しているため、酸味がある。この酸味がマッコリの特徴であるため、本発明のマッコリ風味飲料ではpHが重要となる。
本発明のマッコリ風味飲料のpHは3.5以上、4.6以下であり、酸により調整することができる。
pHが3.5より低いと酸味が強すぎ、pHが4.6より高いと酸味がほとんどなく、マッコリ風味が出ない。
pHを調整する酸としては、食品添加物に指定しているものならいずれも使用することができ、乳酸、クエン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、コハク酸、フマル酸、DL−リンゴ酸、塩酸等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
本発明のマッコリ風味飲料は、香気成分としてエチルアルコールを100μL/L以上4,000μL/L以下、かつイソアミルアルコールを50μL/L以上1,000μL/L以下含むことを特徴とする。これらの成分がどちらか一方のときは、マッコリ風味が得られず、前記範囲でこれらの成分が両方とも含まれるとマッコリ風味が得られる。
エチルアルコールの含有量が100μL/L未満ではアルコールの風味が感じられず、4,000μL/Lを超えるとアルコールの風味が強すぎ、いずれもマッコリ風味にならない。
また、イソアミルアルコールの含有量が50μL/L未満では風味が弱く、1,000μL/Lを超えると溶剤臭として感じられるようになり、いずれもマッコリ風味にならない。
エチルアルコールを100μL/L以上4,000μL/L以下、かつイソアミルアルコールを50μL/L以上1,000μL/L以下含むことにより、マッコリ風味を感じるようになる。
【0022】
香気成分として、エチルアルコール、イソアミルアルコールの他に、その他の香気成分を添加しても良い。その他の香気成分としては、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、活性アミルアルコール、β−フェネチルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酪酸エチル、乳酸エチル、酢酸イソアミル、カプリル酸エチル、酢酸フェネチル、カプリン酸エチル等のエステル類、その他ケトン類やアルデヒド類等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
その他の香気成分を添加することで、より豊かな香気を持つマッコリ風味飲料を得ることができる。
【0023】
本発明のマッコリ風味飲料には、増粘多糖類や機能性成分を適量加えてもよい。増粘多糖類は、その種類に限定されるものではなく、ペクチン、グアガム、タマリンドガム、カラギーナン、大豆多糖類等の植物由来のもの、キサンタンガム等の微生物由来のもの、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース等の化学合成品のものなど幅広く使用することができる。機能成分としては、ポリフェノール、イソフラボンが挙げられる。
【0024】
本発明のマッコリ風味飲料は、上記の条件に調整した後、殺菌することにより得られる。殺菌は、主として加熱殺菌により行うのが通常だが、これに限定されるものではない。殺菌条件は、食品衛生法により、pH4.0未満では中心部温度が65℃で10分間加熱する必要が、pH4.0以上4.6未満では中心部温度を85℃で30分間加熱する必要があるが、通常はさらに厳しい殺菌条件で行う。低温殺菌(例えば、中心温度が65℃で30分間加熱)、高温殺菌(例えば、中心温度が78℃で15秒間加熱)、超高温殺菌(例えば、中心温度が120℃で3秒間加熱)があり、また、連続式、バッチ式があるが、特にこれらに限定されるものではない。また、加熱殺菌のほかに、紫外線殺菌やフィルター除菌を行ってもよい。
このように、本発明のマッコリ風味飲料は、発酵工程を設けずに製造することができる。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
Ref.Brixは、屈折計(アタゴ社製、「RX−5000α」)を用いて20℃で測定した。
pHは、pHメーター(堀場製作所「F52」)を用いて、20℃の液を測定した。
タンパク質はマクロケルダール法により測定した。
ミネラルは550℃で灰化後、塩酸で溶解したものをICP発光分光により測定した。
【0026】
(米糖化液の調整)
[調製例1]
ジャケット付のステンレス製容器に純水26.2kgを入れ、これに米粉13.8kg、液化型α−アミラーゼを添加してスターラーで分散させた。ジャケットに90℃以上の温水を廻して液温を徐々に上げて、液温を90℃以上にして液化した。次にジャケットに水を廻して60℃に冷却後、β−アミラーゼを添加して12時間反応させることにより、Ref.Brix32%(w/w)の米糖化液Aを調製した。得られた米糖化液Aのタンパク質、ミネラルを測定した結果、タンパク質は2.9%(w/v)、カリウム140mg/L、カルシウム30mg/L、リン60mg/L、マグネシウム30mg/Lであった。
【0027】
[調製例2]
米糖化液をエバポレーターでRef.Brix50%(w/w)まで濃縮し、米糖化液Bを調製した。
【0028】
(風味飲料)
<風味飲料の官能評価>
得られた風味飲料について、パネラー16名により、「美味しさ」と「マッコリらしさ」について官能評価を実施した。
「美味しさ」の評価は、1:すごく不味い、2:不味い、3:どちらでもない、4:美味しい、5:すごく美味しい、の5段階で評価し、16人の平均値を官能評価とした。
「マッコリらしさ」の評価も、1:著しくマッコリらしくない、2:マッコリらしくない、3:どちらでもない、4:マッコリらしい、5:著しくマッコリらしい、の5段階で評価し、16人の平均値を官能評価とした。
【0029】
<Ref.Brixの影響について>
[実施例1]
1000mLメスフラスコにて、米糖化液A281gと純水約650gを混合した後、乳酸を適量加えてpH4.0とした。pH調整後、エチルアルコール500μLとイソアミルアルコール125μLを添加した後、純水を加えて全体量を1000mLに調製した。調製後、メジウム瓶に充填し蓋をしめて、沸騰水中で30分間殺菌し、風味飲料を得た。
【0030】
[実施例2]
米糖化液A375gと純水約550gを混合した以外は実施例1と同様にして風味飲料を得た。
【0031】
[実施例3]
米糖化液A469gと純水約500gを混合した以外は実施例1と同様にして風味飲料を得た。
【0032】
[実施例4]
米糖化液A625gと純水約350gを混合した以外は実施例1と同様にして風味飲料を得た。
【0033】
[実施例5]
米糖化液A781gと純水約200gを混合した以外は実施例1と同様にして風味飲料を得た。
【0034】
[実施例6]
米糖化液A938gと純水約60gを混合した以外は実施例1と同様にして風味飲料を得た。
【0035】
[実施例7]
米糖化液B700gと純水約250gを混合した以外は実施例1と同様にして風味飲料を得た。
【0036】
[比較例1]
米糖化液A156gと純水約800gを混合した以外は実施例1と同様にして風味飲料を得た。
【0037】
[比較例2]
米糖化液B900gと純水約50gを混合した以外は実施例1と同様にして風味飲料を得た。
【0038】
実施例1〜7及び比較例1〜2で得られた風味飲料のRef.Brix、pHを測定し、エチルアルコールの含有量、イソアミルアルコールの含有量、アルコール分を香気成分の添加量から算出した。また、得られた風味飲料の官能評価を行った。これらの結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示すとおり、Ref.Brixが本発明の範囲内の実施例1〜7では、Ref.Brixが本発明の範囲外の比較例1及び2に比べて、官能評価の「美味しさ」と「マッコリらしさ」が共に優れていることが確認できた。
なお、実施例で使用した糖化液には、タンパク質及びミネラル分が豊富に含まれるため、製造した風味飲料もこれらが豊富に含まれる。
【0041】
<pH、及び酸種の影響について>
[実施例8]
乳酸を適量加えてpHを3.7に調整した以外は実施例5と同様にして風味飲料を得た。
【0042】
[実施例9]
乳酸を適量加えてpHを4.4に調整した以外は実施例5と同様にして風味飲料を得た。
【0043】
[実施例10]
DL−リンゴ酸を適量加えてpHを4.4に調整した以外は実施例5と同様にして風味飲料を得た。
【0044】
[実施例11]
クエン酸を適量加えてpHを4.4に調整した以外は実施例5と同様にして風味飲料を得た。
【0045】
[実施例12]
塩酸を適量加えてpHを4.4に調整した以外は実施例5と同様にして風味飲料を得た。
【0046】
[比較例3]
乳酸を適量加えてpHを3.0に調整した以外は実施例5と同様にして風味飲料を得た。
【0047】
[比較例4]
乳酸を適量加えてpHを3.4に調整した以外は実施例5と同様にして風味飲料を得た。
【0048】
[比較例5]
乳酸を適量加えてpHを4.6に調整した以外は実施例5と同様にして風味飲料を得た。
【0049】
[比較例6]
乳酸を適量加えてpHを5.0に調整した以外は実施例5と同様にして風味飲料を得た。
【0050】
実施例9〜12及び比較例3〜6で得られた風味飲料のRef.Brix、pHを測定し、エチルアルコールの含有量、イソアミルアルコールの含有量、アルコール分を香気成分の添加量から算出した。また、得られた風味飲料の官能評価を行った。これらの結果及び参考として実施例5の結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
表2に示すとおり、pHが本発明の範囲内の実施例5、8〜12では、pHが本発明の範囲外の比較例3〜6に比べて、官能評価の「美味しさ」と「マッコリらしさ」が共に優れていることが確認できた。
また、実施例9〜12において、pH調整の酸の種類を変更しても、官能評価が優れていることが確認できた。
【0053】
<エチルアルコール及びイソアミルアルコールの含有量の影響について>
[実施例13]
エチルアルコール100μLとイソアミルアルコール125μLを添加すること以外は実施例4と同様にして風味飲料を得た。
【0054】
[実施例14]
エチルアルコール250μLとイソアミルアルコール125μLを添加すること以外は実施例4と同様にして風味飲料を得た。
【0055】
[実施例15]
エチルアルコール1,000μLとイソアミルアルコール125μLを添加すること以外は実施例4と同様にして風味飲料を得た。
【0056】
[実施例16]
エチルアルコール4,000μLとイソアミルアルコール125μLを添加すること以外は実施例4と同様にして風味飲料を得た。
【0057】
[実施例17]
エチルアルコール500μLとイソアミルアルコール50μLを添加すること以外は実施例4と同様にして風味飲料を得た。
【0058】
[実施例18]
エチルアルコール500μLとイソアミルアルコール750μLを添加すること以外は実施例4と同様にして風味飲料を得た。
【0059】
[実施例19]
エチルアルコール750μL、イソアミルアルコール500μL、酢酸イソアミル60μLとβ−フェネチルアルコール60μLとイソアミルアルコール125μLを添加すること以外は実施例4と同様にして風味飲料を得た。
【0060】
[比較例7]
エチルアルコールを添加せず、イソアミルアルコール125μLのみを添加すること以外は実施例4と同様にしてマッコリ風味飲料を得た。
【0061】
[比較例8]
エチルアルコールを60μLとイソアミルアルコール125μLを添加すること以外は実施例4と同様にして風味飲料を得た。
【0062】
[比較例9]
エチルアルコール8,000μLとイソアミルアルコール125μLを添加すること以外は実施例4と同様にして風味飲料を得た。
【0063】
[比較例10]
エチルアルコール500μLを添加し、イソアミルアルコールを添加しないこと以外は実施例4と同様にして風味飲料を得た。
【0064】
[比較例11]
エチルアルコール500μLとイソアミルアルコール1,500μLを添加すること以外は実施例4と同様にして風味飲料を得た。
【0065】
実施例13〜19及び比較例8〜11で得られた風味飲料のRef.Brix、pHを測定し、エチルアルコールの含有量、イソアミルアルコールの含有量、アルコール分を添加量から算出した。また、得られた風味飲料の官能評価を行った。これらの結果及び参考として実施例4の結果を表3に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
表3に示すとおり、エチルアルコールの含有量及びイソアミルアルコールの含有量が本発明の範囲内の実施例4、13〜19では、これらの含有量が本発明の範囲外の比較例7〜11に比べて、官能評価の「美味しさ」と「マッコリらしさ」が共に優れていることが確認できた。
また、他の香気成分を加えた実施例19では、加えない実施例4と比べて、官能評価の「美味しさ」と「マッコリらしさ」が共により優れていることが確認できた。
【0068】
以上より、農産物糖化品を原料として用い、Ref.Brixが8%(w/w)以上40%(w/w)未満、pHが3.5以上4.6以下、エチルアルコールの含有量が100μL/L以上4,000μL/L以下、イソアミルアルコールの含有量が50μL/L以上1,000μL/L以下のすべての条件を満たせば、十分な香味を持つアルコール分1%未満のマッコリ風味飲料を得ることができる。
しかし、これらの条件のどれか一つでも満たさなければ、十分な香味を持つマッコリ風味飲料を得ることができない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農産物糖化品を原料として用い、Ref.Brixが8%(w/w)以上40%(w/w)未満、pHが3.5以上4.6以下、エチルアルコールの含有量が100μL/L以上4,000μL/L以下、イソアミルアルコールの含有量が50μL/L以上1,000μL/L以下であることを特徴とするアルコール分1%(v/v)未満のマッコリ風味飲料。
【請求項2】
前記農産物糖化品が、米糖化品である請求項1記載のマッコリ風味飲料。

【公開番号】特開2013−5739(P2013−5739A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139143(P2011−139143)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000165000)群栄化学工業株式会社 (108)