説明

マッサージ機及びこのマッサージ機を備えた乗り物

【課題】使用者に新たな体感を与えることのできるマッサージ機を提供する。
【解決手段】マッサージ動作を行なうエアセル15と、音響信号を音として再生することができる楽曲再生器と、エアセル15を動作させるための動作制御信号を前記音響信号から作成する信号作成部と、前記動作制御信号に基づいてエアセル15の動作を制御する動作制御部と、楽曲再生器を制御する再生制御部とを備えている。再生制御部は、音響信号から作成した動作制御信号に基づいて動作制御部がエアセルの動作を制御してマッサージ動作をさせている動作状態で、当該音響信号を音として楽曲再生器が再生するのを禁止する機能を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ機、及び、このマッサージ機を備えた乗り物に関する。
【背景技術】
【0002】
音響信号に基づいてマッサージを行なうマッサージ機がある(例えば、特許文献1参照)。このマッサージ機は、空気袋(エアセル)と、この空気袋に対して給気及び排気を行なう給排気装置と、この給排気装置の動作を制御する制御装置とを備えている。そして、マッサージ機は、音響信号に基づいて制御信号を生成し、この制御信号によって給排気装置の動作を制御することで空気袋を膨縮動作させると共に、音響信号を音として再生するように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−79687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、空気袋を動作させると共に、音響信号を音として再生することで、使用者にリラックス感を与えることができる。そして、近年では、さらに新たな感覚を使用者に与えることができる技術的手段が求められている。
そこで、本発明は、使用者に新たな感覚を与えることのできるマッサージ機、及び、このマッサージ機を備えた乗り物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するための本発明のマッサージ機は、マッサージ動作を行なうマッサージ部と、音響信号を音として再生することができる再生部と、前記マッサージ部を動作させるための動作制御信号を前記音響信号から作成する信号作成部と、前記動作制御信号に基づいて前記マッサージ部の動作を制御する動作制御部と、前記再生部を制御すると共に、前記音響信号から作成した前記動作制御信号に基づいて前記動作制御部が前記マッサージ部の動作を制御してマッサージ動作をさせている動作状態で、当該音響信号を音として前記再生部が再生するのを禁止する再生制御部とを備えている。
【0006】
このマッサージ機によれば、音響信号から作成された動作制御信号に基づいて動作制御部がマッサージ部を動作させている動作状態で、当該音響信号を音として再生部が再生するのを、再生制御部によって禁止することにより、使用者に対し音響信号を音ではなくてマッサージ部によるマッサージ動作として体感させることができる。
【0007】
また、前記マッサージ機において、前記音響信号には当該音響信号を使用者に識別させるための識別情報が含まれており、複数の前記音響信号を記憶する音響信号記憶部と、前記マッサージ動作に使用する前記音響信号を使用者に選択させるために前記識別情報を表示する表示部と、使用者が前記識別情報を選択する操作を行なわせる操作部と、選択された前記識別情報に対応する前記音響信号を、前記信号作成部に前記動作制御信号を作成させる対象信号として、選定する選定部とを更に備えているのが好ましい。
このマッサージ機によれば、表示部に表示されている識別情報に基づいて使用者が操作部を操作し識別情報を選択すると、選定部は、選択された識別情報に対応する音響信号を、信号作成部に動作制御信号を作成させる対象信号として、選定する。これにより、使用者は表示部に表示されている識別情報を見て、マッサージ動作に使用する音響信号を選択することができる。
【0008】
また、前記マッサージ機の前記信号作成部は、予め設定された閾値と前記音響信号のレベルとを比較すると共に、当該レベルが当該閾値を下に又は上に超えた回数が複数回に達した状態となってから当該閾値を上に又は下に超えると前記マッサージ部によるマッサージ動作を切り替える前記動作制御信号を作成するように構成するのが好ましい。
このマッサージ機によれば、音響信号のレベルが閾値を超えて変化し、閾値を下に又は上に超えた回数が複数回に達した状態となってから当該閾値を上に又は下に超えると、信号作成部はマッサージ動作を切り替えるように動作制御信号を作成する。すなわち、音響信号のレベルが閾値を下に又は上に超えた回数が複数回に達しないと、マッサージ動作を切り替える動作制御信号が作成されないため、例えば、前記マッサージ部を空気の給排によって膨縮するエアセルとした場合において、極めて短時間に音響信号が変化する場合であっても、マッサージ動作を切り替えないことから十分な量の空気をエアセルに供給することができ、エアセルの膨張による押圧力が得られる。したがって、使用者の体感をよくすることができる。さらに、音響信号のレベルが閾値を下に又は上に超えた回数が複数回に達した状態となってから当該閾値を上に又は下に超えると、マッサージ部によるマッサージ動作が切り替わるので、音響信号の変化に対する応答性を良くすることができる。
【0009】
また、前記再生制御部は、前記動作状態で、前記音響信号を音として前記再生部が再生するのを禁止する無音状態と、前記音響信号を音として前記再生部が再生する再生状態とのいずれか一方に切り替える切替部を有しているのが好ましい。
このマッサージ機によれば、前記動作状態で、音を再生させた状態又は音の再生を禁止した状態とのいずれか一方を、切り替えることができる。
また、このマッサージ機は、前記信号作成部が前記音響信号に基づいて作成した前記動作制御信号を記憶する制御信号記憶部を更に備え、作成された前記動作制御信号を前記制御信号記憶部が記憶し終わってから、当該動作制御信号に基づいて、前記動作制御部は前記マッサージ部を動作させる構成とすることができる。
この場合、制御信号記憶部が動作制御信号を記憶し終わってから、この動作制御信号に基づいて動作制御部はマッサージ部を動作させるので、この動作制御信号の開始と音響信号の音としての再生とを同時に開始させた場合、両者の時間ズレを防ぐことができる。
【0010】
または、前記マッサージ機は、前記信号作成部が前記音響信号に基づいて前記動作制御信号を作成しながら、前記動作制御部は当該動作制御信号に基づいて前記マッサージ部を動作させる構成とすることができる。
この場合、信号作成部が動作制御信号を作成しながら、動作制御部はマッサージ部を動作させるので、マッサージ部を動作させるために作成した動作制御信号の全てを記憶させておく必要がないため、記憶容量が小さくても良い。
【0011】
また、本発明の乗り物は、前記マッサージ機を備え、前記マッサージ部が座席に設けられている。この乗り物によれば、座席に座っている使用者に対して、音響信号を音ではなくてマッサージ部によるマッサージ動作として体感させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、使用者に対して、音響信号を音ではなくてマッサージ部によるマッサージ動作として体感させることができ、新たな感覚を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のマッサージ機の実施の一形態を示す説明図である。この実施の形態のマッサージ機30は、図2に示しているように、自動車10に搭載されている。車内には複数の座席が設けられており、図2では前部の座席(特に助手席)と後部の座席とにマッサージ機30がそれぞれ設けられている。なお、図1は後部の座席11に設けられているマッサージ機30を示している。
【0014】
マッサージ機30は、搭乗者(使用者)に対してマッサージ動作を行なうマッサージ部5と、マッサージ部5を動作させる動力部9(図1参照)と、音響信号(楽曲信号)を音として再生することができる楽曲再生器(再生部)7(図1参照)と、マッサージ機30の各種制御を実行する制御装置6と、使用者に各種操作を行なわせる操作装置(操作部)4と、使用者に各種の情報を表示する表示装置(表示部)8とを備えている。
【0015】
図1において、座席11は、使用者を着座させる座部1と、使用者を凭れさせる背凭れ部2とを有している。また、後部の座席11は、脚を載せるフットレスト3を有している。前記マッサージ部5は、自動車10の座席(椅子本体部)11内に設けられている。マッサージ部5は、空気の給気又は排気により膨張又は収縮して使用者の身体を押圧するエアセル15である。エアセル15を動作させる動力部9として、エアセル15に空気を供給したりエアセル15から空気を排気させたりする給排気装置16が座部1の下部に設けられている。
【0016】
図3は座席11を正面から見た模式図である。エアセル15は、座部1、背凭れ部2及びフットレスト3にそれぞれ設けられている。座部1の左右方向の中央部でかつ前部に、左右のエアセル15A−1,15A−2が設けられており、座部1の左右方向の側部に、エアセル15A−3,15A−4が設けられている。背凭れ部2の内の使用者の首に対応する部分に、左右のエアセル15B−1,15B−2が設けられており、肩に対応する部分に、左右のエアセル15B−3,15B−4が設けられており、腰の中央部に対応する部分に、上下左右のエアセル15B−5,15B−6,15B−7,15B−8が設けられており、腰(上半身)の側部に対応する部分に、エアセル15B−9,15B−10が設けられている。そして、フットレスト3に、左右のエアセル15C−1,15C−2が設けられている。これらエアセル15は独立して膨縮可能となるように給排気装置16とエア配管(図示せず)を介して接続されている。
【0017】
図2において、前記楽曲再生器7は、自動車に搭載されているカーオーディオ装置であり、楽曲再生器7は音響信号を音として発するスピーカ7aを有している。スピーカ7aは、自動車10のドア及び座席11の一方又は双方に設けられている。楽曲再生器7は、CD、MD、DVD、ハードディスク等の記憶媒体に記録された音響信号及び外部入力部(図示せず)から入力された音響信号を読み取る機能を有し、読み取った音響信号を音として再生することができる機能を有している。また、自動車10のアンテナ(図示せず)が受信した放送(例えばラジオ放送)による音響信号を読み取り、再生する機能を有している。
【0018】
前記操作装置4は、前記制御装置6及び前記楽曲再生器7を機能させる際に、使用者が操作するものであり、制御装置6及び楽曲再生器7との間で各種信号の通信(無線通信又は有線通信)を行なう。操作装置4は、前部座席用の操作装置4aと、後部座席用の操作装置4bとからなる。
前記表示装置8は、使用者に各種情報を表示するモニタ部を有し、前部座席用の表示装置8aと、後部座席用の表示装置8bとからなる。前部座席用の表示装置8aは、楽曲再生器7と一体又は別体として車内に設けられている。後部座席用の表示装置8bは、前記後部座席用の操作装置4bに設けられている。
【0019】
図4は、本発明のマッサージ機のブロック図である。前記制御装置6は、CPU及び記憶部を有しているプログラマブルなマイコンからなる。制御装置6は、所定の各機能を実行するプログラムが制御装置6の主記憶部19に格納されており、制御装置6は、このプログラムが実行する機能部として、受信部20、信号作成部21、動作制御部22、再生制御部23、選定部24、切替部25、パターン選択部26及び入力切替部27を備えている。これらの機能部については後に説明する。また、制御装置6は、音響信号を記憶する音響信号記憶部17と、エアセル15を動作させるための動作制御信号を記憶する制御信号記憶部18とを有している。
【0020】
前記受信部20は、楽曲再生器7から、図示しないアンプ、周波数フィルタやローパスフィルタ等のフィルタ及びA/D変換部を介して音響信号を受信することができる。受信部20が受信した音響信号をデジタル信号として音響信号記憶部17は記憶することができる。なお、受信部20が前記アンプ等を備えていても良い。
【0021】
音響信号には言うまでもなく楽曲に応じて音の強さの強弱が存在している。音響信号はデジタル信号とされていることで、音の強さの強弱は、音響信号のレベル(電圧)となって表れる。また、音響信号には、当該音響信号を使用者に識別させるための識別情報が含まれている。すなわち、音響信号には、識別情報として楽曲名についての情報が含まれている。そして、音響信号記憶部17が記憶している複数の音響信号の楽曲名を、前記表示装置8は表示することができる。
【0022】
前記信号作成部21は、前記エアセル15を動作させるための動作制御信号を、音響信号記憶部17が記憶している音響信号から作成する。この動作制御信号は、エアセル15の動作に関するプログラムであり、エアセル15はこのプログラムにしたがって動作する。動作制御信号を作成する手段(作成方法)については後に説明する。そして、信号作成部21が音響信号に基づいて作成した動作制御信号を、制御信号記憶部18が記憶する。
また、信号作成部21によって音響信号から作成された動作制御信号は、当該音響信号と同期した信号とすることができる。すなわち、音響信号を音として再生した場合の再生開始から終了までの時間と、この音響信号から作成した動作制御信号に基づいてマッサージ動作をする場合の動作開始から終了までの時間とは同じである。また、後に説明するが、音響信号のレベルに所定の変化が表れることによってマッサージ動作を切り替える動作制御信号を、信号作成部21は作成するが、この音響信号のレベルの変化のタイミングと、マッサージ動作の切り替わりのタイミングとは同時となる。
【0023】
前記動作制御部22は、信号作成部21が作成した動作制御信号に基づいて、エアセル15の動作を制御する。動作制御部22は動作制御信号に基づいて前記給排気装置16に動作指令信号を送信し、給排気装置16を動作させ、所定のエアセル15に空気を供給したり、所定のエアセル15を排気可能な状態とさせたりする。そして、後に説明するが、音響信号のレベルに所定の変化が表れるとエアセル15の動作が切り替わるような動作制御信号が作成され、このようにして作成された動作制御信号に基づいて、動作制御部22はエアセル15を動作させるため、当該エアセル15の動作を複雑に変化させることが可能となる。なお、音響信号から作成した動作制御信号に基づいて、動作制御部22がエアセル15の動作を制御してマッサージ動作をさせている状態を、以下「動作状態」と呼ぶ。
【0024】
前記再生制御部23は、楽曲再生器7を制御するものであり、主に楽曲再生器7のスピーカ7aからの音の発生の制御を行なう機能を有している。再生制御部23は、機能の一部として前記切替部25を有している。この切替部25は、前記動作状態で、音響信号を音として楽曲再生器7が再生するのを禁止する無音状態と、音響信号を音として楽曲再生器7が再生する再生状態とのいずれか一方に切り替える。前記操作装置4に、音の発生についての切り替えスイッチ(図示せず)が設けられており、このスイッチを使用者が操作することによって、前記無音状態と前記再生状態との切り替えが実行される。
無音状態が選択されると、再生制御部23は、音響信号から作成した動作制御信号に基づいて動作制御部22がエアセル15の動作を制御してマッサージ動作をさせている前記動作状態で、当該音響信号を音として楽曲再生器7が再生するのを禁止する。つまり、音響信号に基づいてエアセル15がマッサージ動作しているにもかかわらず、当該音響信号を音としてスピーカ7aから発していない状態とすることができる。
【0025】
前記音響信号記憶部17には複数の音響信号が記憶されている。これら音響信号は、マッサージ機を製造する際に(製造者が)予め記憶させたもの以外に、使用者が好みに応じて前記楽曲再生器7を通じて追加的に記憶させたものがある。そして、マッサージ動作に使用する音響信号を使用者に選択させるために、つまり、前記信号作成部21が動作制御信号を作成する対象とする音響信号を選択させるために、前記表示装置8に、これら音響信号の前記識別情報(楽曲名)が表示される。そして、使用者は、表示装置8を見ながら、前記操作装置4を操作することにより、複数の識別情報(音響信号)の内から所望のものを選択することができる。
【0026】
前記選定部24が、使用者が操作装置4を操作することにより選択された識別情報に対応する音響信号を、信号作成部21に動作制御信号を作成させる対象信号として選定する。例えば、音響信号記憶部17に記憶させてある複数の音響信号(楽曲)から、使用者が所望の音響信号として「楽曲X」を選択すると、選定部24は、この「楽曲X」の音響信号を対象信号として選定し、この対象信号から動作制御信号を信号作成部21によって作成させる。そして、作成された動作制御信号を、制御信号記憶部18は記憶する。
【0027】
前記パターン選択部26は、前記信号作成部21が作成する動作制御信号の作成パターンを複数から選択し決定する機能を有している。つまり、操作装置4には複数の選択ボタンが設けられており(図示せず)、使用者が選択ボタンを選択すると、操作装置4からパターン選択部26は信号を受け、選択されたボタン(受信した信号)に応じて、パターン選択部26は、信号生成部21によって作成させる動作制御信号の作成パターンを決定する。パターン選択部26には、選択ボタンそれぞれに応じて作成パターンが設定されており、例えば、第一の選択ボタンに対応する作成パターンは、使用者の脚から足先に向かってマッサージ動作が行われ、この動作を繰り返すように動作制御信号を作成するパターンである。第二の選択ボタンに対応する作成パターンは、間隔を有する(離れた)位置にある一組のエアセルを交互に動作させ、かつ、動作させる一組のエアセルを変更するように動作制御信号を作成するパターンである。第三の選択ボタンに対応する作成パターンは、動作するエアセルがランダムに変更されるように動作制御信号を作成するパターンである。このようなパターン選択部26によれば、使用者の好みに応じてエアセルの動作パターンを選択することが可能となる。
【0028】
前記入力切替部27は、楽曲再生器7から出力され受信部20が受信している音響信号に基づいて信号作成部21によって動作制御信号を作成させエアセル15を動作させる外部入力状態と、音響信号記憶部17に予め記憶させておいた音響信号に基づいて信号作成部21によって動作制御信号を作成させエアセル15を動作させる内部入力状態と、の内のいずれかに切り替えることができる。つまり、前記外部入力状態では、受信部20が受信している音響信号を音響信号記憶部17が記憶するか否かに関わらず、受信部20が受信している音響信号に基づいて信号作成部21は動作制御信号を作成する。なお、入力切替部27における前記状態の切り替えは、操作装置4における使用者による操作ボタンの選択によって実行される。
【0029】
以上のように構成されたマッサージ機30によって行なわれる動作制御信号の作成と、この動作制御信号に基づいてエアセル15が実行するマッサージ動作について説明する。
図4において、音響信号記憶部17に複数の音響信号が記憶されている。表示装置8はこれら音響信号の識別情報として楽曲名を複数表示する。使用者は、操作装置4を操作することによって、マッサージ動作をさせるために使用する楽曲名を選択し、操作装置4にある決定ボタンを押すことで、選択された楽曲名の決定情報が選定部24へ送信される。選定部24は、決定情報を受信すると、音響信号記憶部17から、選定された楽曲名に対応する音響信号を選定し、選定されたこの音響信号に基づいて信号作成部21は動作制御信号を作成する。このように、使用者は表示装置8に表示される楽曲名を見て、マッサージ動作に使用する音響信号を自由に選択することができる。なお、信号作成部21による動作制御信号の作成は、パターン選択部26によって選択された作成パターンに応じて、実行される。
【0030】
信号作成部21による動作制御信号を作成する手段(作成方法)について説明する。図5は、音響信号、動作制御信号及びこの動作制御信号に基づくエアセルの動作を説明する説明図である。図4と図5とにおいて、楽曲再生器7が読み込んだ音響信号はデジタル信号とされ音響信号記憶部17に記憶されている。そして、信号作成部21は、この音響信号を一定のサンプリング時間(例えば5msec)毎に取得する。図5(a)は、一定のサンプリング時間毎に取得した音響信号を示しており、横軸は時間を表し、縦軸は音響信号のレベル(電圧)を表している。図5(a)の各ドットは、前記サンプリング時間毎に取得した信号を示している。
【0031】
また、制御装置6の主記憶部19は予め設定された閾値αを記憶している。この閾値αは電圧値であり、音響信号の前記レベル(電圧)と比較される。そして、信号作成部21は、前記閾値αと、音響信号のレベルとを比較する機能を有している。
図5(a)において、信号作成部21は、始め音響信号が閾値αよりも大きいと判定することができる。信号作成部21は、音響信号のレベルが連続して閾値αを下に超えた回数が、所定の複数回数に達した状態(この状態が後述の動作切り替え可能状態となる)となってから、さらに、当該閾値αを上に超えると、エアセル15によるマッサージ動作を切り替える動作制御信号を作成する。なお、前記所定の複数回数は、図5では5回であるが、この回数は任意の回数とすることができる。これを具体的に説明すると、図5(a)において、音響信号の開始から時刻t1では、音響信号のレベルが閾値αを下に超えているが、その回数が一回(前記所定の複数回数以下)であるため、信号作成部21は、マッサージ動作を切り替えることが可能となる動作切り替え可能状態とはならず、マッサージ動作を切り替える動作制御信号を作成しない。すなわち、図5(b)に示しているように、信号作成部21は、始め、エアセル15に所定の動作Aを実行させる動作制御信号を作成する。この動作Aは、図5(c)に示しているように、エアセル15A(例えば図3の座部1のエアセル15A−1〜15A−4)を膨張させ、エアセル15Aとは異なるエアセル15B(例えば図3の背凭れ部2のエアセル15B−1〜15B−10)を収縮させる動作である。
【0032】
そして、音響信号の開始から時刻t2では、音響信号のレベルが閾値αを下に超えた回数が、連続して5回に達しているので、動作切り替え可能状態となり、さらに、その後の時刻t3で音響信号のレベルが閾値αを上に超えているので、信号作成部21は、エアセル15によるマッサージ動作を切り替える動作制御信号を作成する。すなわち、図5(b)に示しているように、信号作成部21は、音響信号の開始から時刻t3で、前記動作Aを、当該動作Aとは異なる動作Bへ切り替える動作制御信号を作成する。つまり、図5(c)に示しているように、動作Bは、収縮していたエアセル15Bを膨張させ、膨張していたエアセル15Aを収縮させる動作である。このように、音響信号のレベルが閾値αを連続して下に超える回数が、所定の回数に達し、かつ、その後閾値αを上に超えるまで、一つのマッサージ動作が継続する。すなわち、音響信号のレベルが閾値αを、所定の回数超えるのに要する時間が長くなると、一つのマッサージ動作の継続時間が長くなる。
【0033】
さらに、音響信号の開始から時刻t4では、音響信号のレベルが閾値αを下に超えた回数が、連続して5回に達しているので、動作切り替え可能状態となり、さらに、時刻t5で音響信号のレベルが閾値αを上に超えるので、信号作成部21は、エアセル15によるマッサージ動作を切り替える動作制御信号を作成する。すなわち、図5(b)に示しているように、信号作成部21は、音響信号の開始から時刻t5で、前記動作Bを、当該動作Bとは異なる動作Cへ切り替える動作制御信号を作成する。つまり、図5(c)に示しているように、動作Cは、収縮していたエアセル15Aを膨張させ、膨張していたエアセル15Bを収縮させる動作である。
以下、同様にして、信号作成部21は、音響信号の最後まで動作制御信号を作成する。なお、この実施形態では、閾値αを一つとしたが、複数の閾値が設定されていてもよい。
【0034】
このように、信号作成部21は、音響信号のレベルが閾値αを下に超えて変化し、その変化が複数回について継続すると、つまり音響信号のレベルが変化した状態が所定時間について継続すると、動作切り替え可能状態となり、この状態となっていることを条件としてさらに音響信号のレベルが閾値αを上に超えると、マッサージ動作を切り替えるように動作制御信号を作成する。これにより、音響信号のレベルが変化すると、エアセル15によるマッサージ動作を切り替えることができ、使用者は、音響信号の変化を、エアセル15によるマッサージ動作の変化として体感することができる。そして、動作切り替え可能状態で、音響信号のレベルが閾値αを超えた際に(閾値αを超えたと同時期に)、マッサージ部によるマッサージ動作が切り替わるので、音響信号の変化に対する応答性を良くすることができる。
また、音響信号のレベルが閾値αを下に超えた回数が複数回に達しないと、動作切り替え可能状態とならず、マッサージ動作を切り替える動作制御信号が作成されないため、極めて短時間に音響信号が変化する場合であっても、マッサージ動作を切り替えないことから十分な量の空気をエアセル15に供給することができ、エアセル15の膨張による押圧力が得られる。したがって、使用者の体感をよくすることができる。
【0035】
また、信号作成部21は、音響信号のレベルが閾値を連続して複数回超えることによりマッサージ動作を切り替えた後は、所定の時間(例えば25msec)について当該切り替えたマッサージ動作を継続するように動作制御信号を作成する。つまり、図5(a)に示しているように、音響信号のレベルが閾値αを5回超えることによりマッサージ動作を動作Bから動作Cへ切り替えた時刻t5の後、直ぐに(時刻t6で)音響信号のレベルが閾値αを下に超え、5回連続していても、所定の時間について切り替えた動作Cを継続するように動作制御信号を作成する。これは、エアセル15が動作Cに切り替えられた後、当該動作Cを使用者に体感させることができる程度のマッサージ動作時間を確保するためである。
【0036】
なお、前記実施形態では、信号作成部21は、予め設定された閾値αと、音響信号のレベルとを比較すると共に、当該レベルが当該閾値αを下に超えた回数が複数回に達した状態となってから当該閾値αを上に超えるとマッサージ動作を切り替える動作制御信号を作成する場合を説明した。つまり、動作切り替え可能状態で、音響信号が閾値αを上に超えた場合にマッサージ動作を切り替えている。本発明では、この形態以外として、信号作成部21は、予め設定された閾値αと、音響信号のレベルとを比較すると共に、当該レベルが当該閾値αを上に超えた回数が複数回に達した状態(動作切り替え可能状態)となってから当該閾値αを下に超えるとマッサージ動作を切り替える動作制御信号を作成するように構成してもよい。つまり、この場合では、動作切り替え可能状態で、音響信号が閾値αを下に超えた場合にマッサージ動作を切り替えている。
【0037】
次に、信号作成部21が作成する動作制御信号に基づいてエアセル15が実行するマッサージ動作について説明する。
[第一の形態]
前記のようにして作成された動作制御信号の全てを、制御信号記憶部18が記憶し終わってから、この動作制御信号に基づいて、動作制御部22はエアセル15を動作させ、使用者にマッサージを施す。すなわち、使用者がマッサージ機30によってマッサージを受ける前に、音響信号記憶部17に記憶させてある音響信号に基づいて、信号作成部21は予め動作制御信号を作成し、作成した動作制御信号を制御信号記憶部18に記憶させておく。この場合、信号作成部21は、使用者がエアセル15によってマッサージを受けていない時間帯に、動作制御信号の作成を実行する。
そして、座席11に着座した使用者が、操作装置4のマッサージ動作開始ボタンを選択すると、動作制御部22は、既に作成し制御信号記憶部18が記憶している動作制御信号に基づいて、エアセル15によるマッサージ動作を切り替えながら、当該エアセル15を膨縮動作させる。なお、エアセル15によるマッサージ動作の切り替えの例は、例えば、図5(b)(c)で示した動作の切り替えがある。
【0038】
前記のとおり、信号作成部21によって音響信号から作成された動作制御信号は、当該音響信号と同期した信号である。そして、この第一の形態では、動作制御信号の全てを制御信号記憶部18が記憶し終わってから、この動作制御信号に基づいてエアセル15を動作させている。このため、動作制御部22及び再生制御部23によって、この動作制御信号の開始と音響信号の音としての再生の開始とを同時とする制御が行なわれると、動作制御信号と音としての再生との間に時間ズレが生じてしまうことを防ぐことができる。すなわち、音響信号の音としてのレベルの変化と、エアセル15によるマッサージ動作の切り替えとが同期する。音の変化とエアセル15の切り替わりとに時間ズレが生じると、使用者に違和感を与えるが、この第一の形態によれば、使用者に違和感を与えることを防止することができる。なお、この場合、エアセル15によって行なわれるマッサージ動作モードは、前記切替部25によって、前記動作状態で音響信号を音として楽曲再生器7が再生する再生状態に切り替えられている。
【0039】
[第二の形態]
信号作成部21及び動作制御部22の機能により、信号作成部21が音響信号に基づいて動作制御信号を作成しながら、動作制御部22は、作成されたばかりの動作制御信号に基づいてエアセル15を動作させることができる。この第二の形態では、座席11に着座した使用者が、操作装置4のマッサージ動作開始ボタンを選択すると、エアセル15をマッサージ動作させながら、次に行なわれるマッサージ動作のための動作制御信号を作成している。すなわち、マッサージ動作中に当該マッサージ動作のための動作制御信号を作成している。
【0040】
この第二の形態によれば、音響信号記憶部17に記憶させた音響信号(内部入力状態にによる音響信号)又は楽曲再生器7から取り込まれた音響信号(外部入力状態による音響信号)に基づいて信号作成部21が動作制御信号を作成しながら、動作制御部22がエアセル15を膨縮動作させている。つまり、エアセル15を動作させる都度、その直前に動作制御信号を作成している。このため、エアセル15を膨縮動作させるために作成した動作制御信号の全てを記憶させておく必要がない。このため、記憶部の記憶容量が小さくても良い。なお、この場合、エアセル15によって行なわれるマッサージ動作モードは、前記動作状態で、音響信号を音として楽曲再生器7が再生する再生状態であってもよく、又は、音響信号を音として楽曲再生器7が再生するのを禁止する無音状態であってもよい。また、前記入力切替部27(図4参照)によって、前記内部入力状態と前記外部入力状態との内のいずれかに切り替えられている。
【0041】
そして、前記第一の形態と前記第二の形態との切り替えは、制御装置6が自動的に行なっても良く、又は、使用者が操作装置4を操作することで行なっても良い。又は、第一の形態と第二の形態とのうちのいずれか一方のみが行なわれるように制御装置6が設定されていてもよい。
【0042】
エアセル15によるマッサージ動作の切り替えについて説明する。エアセル15によるマッサージ動作の切り替えは、図5(c)に示したように、動作するエアセルが別のエアセルに切り替えられる場合の他に、同じエアセルにおける動作が切り替えられる場合がある。
動作するエアセルが別のエアセルに切り替えられる場合のその他の具体例としては、図3において、上(首部)から下(脚部)へと向かって、膨張するエアセル15が順番に切り替わる場合である。または、順番に切り替えるのではなくランダムに切り替えても良い。この動作は、給排気装置16が空気を供給する対象とするエアセルを変更する動作制御信号によって得られる。
また、同じエアセルにおける動作が切り替えられる場合の具体例としては、例えば、始め、所定のエアセル15はゆっくりした周期で膨張と収縮を繰り返しているが、動作制御信号に基づいてマッサージ動作が切り替えられると、前記所定のエアセル15が早い周期で膨張と収縮を繰り返す場合である。この動作は、所定のエアセル15に対して給排気装置16が空気の供給と排気とを繰り返す周期を変更する動作制御信号によって得られる。
【0043】
このように、音の強弱に変化のある音響信号に基づいて動作制御信号を作成し、この動作制御信号に基づいてエアセル15を動作させることによって、使用者は音響信号の変化をマッサージ動作として体で感じることができる。また、音響信号に応じて動作制御信号が作成されているため、変化に富んだマッサージ動作を使用者に与えることができる。
さらに、本発明によれば、音響信号から作成された動作制御信号に基づいて動作制御部22がエアセル15を動作させている動作状態で、再生制御部23の切替部25は、前記音響信号を音として楽曲再生器7が再生するのを禁止する無音状態と、前記音響信号を音として楽曲再生器7が再生する再生状態とのいずれか一方に切り替えることが可能である。このため、使用者の好みで選択して再生状態又は無音状態とのいずれか一方に、切り替えることができる。
【0044】
そして、再生制御部23は、楽曲再生器7を制御することによって、前記動作状態で、音響信号を音として楽曲再生器7のスピーカ7aから音が出ることを禁止することができるため、この場合、使用者に対し音響信号を、音ではなくてエアセル15によるマッサージ動作として体感させることができる。特に、使用者が音響信号の楽曲を知っている場合、使用者はその楽曲を音ではなくてマッサージ動作として楽しむことができる。
【0045】
また、本発明は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。図2の実施形態では、前部の座席(特に助手席)と後部の座席との双方にマッサージ機30が設けられている場合を説明したが、一方であってもよい。また、座席(椅子本体部)11は、脚を載せるフットレスト3を備えている場合を説明したが、このフットレスト3を省略したものであってもよい。
また、前記実施形態では、マッサージ機30を自動車10に搭載させた場合を説明したが、これ以外に、図6に示しているように、前記マッサージ機30を、椅子本体部11を有する家庭用の椅子型マッサージ機として構成してもよい。さらには、本発明のマッサージ機30を、図示しないが、座席(椅子本体部)ではなく、ベッドに設けてもよい。
また、前記実施形態では、マッサージ部5をエアセル15として説明したが、マッサージ部5は、モータによって揉みや叩き等の動作を行なう揉み玉であってもよく、また、マッサージ部5は、このような揉み玉とエアセル15との双方を有している構成であってもよい。揉み玉とエアセル15との双方を有している場合、揉み玉とエアセル15との間でマッサージ動作を切り替えることができる。
また、前記実施形態では、座席を有する乗り物として自動車10を説明したが、本発明の乗り物は、自動車以外であってもよく、座席を有する電車、飛行機又は船舶等とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のマッサージ機の実施の一形態を示す説明図である。
【図2】本発明のマッサージ機が設けられている自動車の説明図である。
【図3】座席を正面から見た模式図である。
【図4】本発明のマッサージ機のブロック図である。
【図5】音響信号、動作制御信号及びこの動作制御信号に基づくエアセルの動作を説明する説明図である。
【図6】本発明のマッサージ機を家庭用の椅子型マッサージ機とした構成の説明図である。
【符号の説明】
【0047】
4 操作装置(操作部)
5 マッサージ部
6 制御装置
7 楽曲再生器(再生部)
7a スピーカ
8 表示装置(表示部)
10 自動車
11 座席(椅子本体部)
15 エアセル
16 給排気装置
17 音響信号記憶部
18 制御信号記憶部
20 受信部
21 信号作成部
22 動作制御部
23 再生制御部
24 選定部
25 切替部
30 マッサージ機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッサージ動作を行なうマッサージ部と、
音響信号を音として再生することができる再生部と、
前記マッサージ部を動作させるための動作制御信号を前記音響信号から作成する信号作成部と、
前記動作制御信号に基づいて前記マッサージ部の動作を制御する動作制御部と、
前記再生部を制御すると共に、前記音響信号から作成した前記動作制御信号に基づいて前記動作制御部が前記マッサージ部の動作を制御してマッサージ動作をさせている動作状態で、当該音響信号を音として前記再生部が再生するのを禁止する再生制御部と、
を備えていることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
前記音響信号には当該音響信号を使用者に識別させるための識別情報が含まれており、
複数の前記音響信号を記憶する音響信号記憶部と、
前記マッサージ動作に使用する前記音響信号を使用者に選択させるために前記識別情報を表示する表示部と、
使用者が前記識別情報を選択する操作を行なわせる操作部と、
選択された前記識別情報に対応する前記音響信号を、前記信号作成部に前記動作制御信号を作成させる対象信号として、選定する選定部と、
を更に備えている請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項3】
前記信号作成部は、予め設定された閾値と前記音響信号のレベルとを比較すると共に、当該レベルが当該閾値を下に又は上に超えた回数が複数回に達した状態となってから当該閾値を上に又は下に超えると前記マッサージ部によるマッサージ動作を切り替える前記動作制御信号を作成する請求項1又は2に記載のマッサージ機。
【請求項4】
前記再生制御部は、前記動作状態で、前記音響信号を音として前記再生部が再生するのを禁止する無音状態と、前記音響信号を音として前記再生部が再生する再生状態とのいずれか一方に切り替える切替部を有している請求項1〜3のいずれか一項に記載のマッサージ機。
【請求項5】
前記信号作成部が前記音響信号に基づいて作成した前記動作制御信号を記憶する制御信号記憶部を更に備え、
作成された前記動作制御信号を前記制御信号記憶部が記憶し終わってから、当該動作制御信号に基づいて、前記動作制御部は前記マッサージ部を動作させる請求項1〜4のいずれか一項に記載のマッサージ機。
【請求項6】
前記信号作成部が前記音響信号に基づいて前記動作制御信号を作成しながら、前記動作制御部は当該動作制御信号に基づいて前記マッサージ部を動作させる請求項1〜4のいずれか一項に記載のマッサージ機。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の前記マッサージ機を備え、前記マッサージ部が座席に設けられていることを特徴とする乗り物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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