説明

マッサージ機構、及びこのマッサージ機構を備えたマッサージ機

【課題】効果的な叩き動作を行うことができるマッサージ機構を提供する。
【解決手段】モータ14と、被施療部の施療面と交差する方向を軸方向として配置され、モータ14の回転に基づいて偏心回転する偏心軸部36を有する対の揉み軸17,17と、モータ14の回転に基づいて回転する叩き軸19と、揉み軸17と叩き軸19を連結するリンク部材20と、被施療部をマッサージするマッサージ部材11と、を有している。マッサージ部材11は、偏心軸部36の偏心回転に追従して揉み動作を行うとともに、叩き軸19の回転に追従してリンク部材20が動作することにより、対の揉み軸17,17が揉み軸17の軸方向に沿って交互に進退して叩き動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被施療部の施療面と交差する方向を軸方向として配置された揉み軸の回転に追従して揉み動作を行うマッサージ機構において、効果的な叩き動作も行うことができるマッサージ機構、及びこのマッサージ機構を備えたマッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被施療部の施療面に交差する方向を軸方向とする軸心部9回りに施療子用ギア7,8を回転させて、施療子用ギア7,8の軸心から偏心した位置に設けられた揉み用施療子2c,2dにより揉みマッサージを行うマッサージ機が知られている(例えば、特許文献1の図1及び図2参照)。しかも、特許文献1のマッサージ機は、施療子用ギア7,8の中空の軸心部9から貫通して設けられ、軸心部9の軸方向に出没する叩き用施療子2a,2bにより叩きマッサージを行うこともできるし、この叩き用施療子2a,2bを突出した状態にして、施療子用ギア7,8を回転させて叩き用施療子2a,2bに対しても揉みマッサージを行わせることができる。
【0003】
また、特許文献1と同様に、被施療部の施療面に交差する方向を軸方向とする軸心回りにギア3,3を回転させて、ギア3,3の軸心から偏心した位置に設けられたマッサージ子1,1により揉みマッサージを行うマッサージ機が知られている(例えば、特許文献2の図3及び図5参照)。しかも、特許文献2のマッサージ機は、対のマッサージ子1,1を取り付ける基板2を軸支5回りに前後揺動させることにより、対のマッサージ子1,1をまとめて押し出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−272800号公報
【特許文献2】特開昭63−79655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されたマッサージ機においては、叩きマッサージは、叩き用施療子2a,2bの中心軸12,13をその軸方向に動作させる手段は、対の中心軸12,13の端部に固定された弾性体20をカム付きギア27の回転により押し下げる構造を採用している。従って、叩きマッサージを行う駆動軸である回転軸4と中心軸12,13は連結されていないため、被施療者からの反力が叩き用施療子2a,2bへ作用することにより、叩き用施療子2a,2bを含む中心軸12,13は常時押し下げられた状態となり、効果的な叩きマッサージを行うことができないという問題があった。
また、上記特許文献2に開示されたマッサージ機においては、対のマッサージ子1,1を交互に前後揺動させることができないので、効果的な叩きマッサージを行うことができないという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上述した問題を解消するためになされたものであり、被施療部の施療面と交差する方向を軸方向として配置された揉み軸の回転に追従して揉み動作を行うマッサージ機構において、効果的な叩き動作も行うことができるマッサージ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のマッサージ機構は、モータと、被施療部の施療面と交差する方向を軸方向として配置され、前記モータの回転に基づいて偏心回転する偏心軸部を有する対の揉み軸と、前記モータの回転に基づいて回転する叩き軸と、前記揉み軸と前記叩き軸を連結するリンク部材と、被施療部をマッサージするマッサージ部材と、を有し、前記マッサージ部材は、前記偏心軸部の偏心回転に追従して揉み動作を行うとともに、前記叩き軸の回転に追従して前記リンク部材が動作することにより、対の前記揉み軸が該揉み軸の軸方向に沿って交互に進退して叩き動作を行うことを特徴とする。
このような構成とすることにより、揉み軸がリンク部材を介して叩き軸に連結されており、かつモータの回転中、叩き軸の回転が揉み軸に常時伝達されるため、効果的な叩きマッサージを行うことができる。
【0008】
また、前記リンク部材は前記叩き軸の回転に基づいて前後に揺動可能であり、前記揉み軸は、前記リンク部材の揺動を許容する自在継手を介して該リンク部材に連結されていることが好ましい。
このような構成とすることにより、叩き軸の回転に基づくリンク部材の揺動を、揉み軸の軸方向への運動に変換することができる。
【0009】
また、前記モータに連動連結された回転部材を有し、前記揉み軸は、前記回転部材に設けられ前記マッサージ部材の一部を支持する揉み駆動軸と、前記マッサージ部材の他部を支持するとともに、前記揉み駆動軸の動作に従動して、該揉み駆動軸による前記マッサージ部材の回転運動を揺動運動に変換する揉み従動軸と、を有し、前記叩き軸は、前記リンク部材を介して前記揉み従動軸に連結されていることが好ましい。
このような構成とすることにより、モータ及び回転部材を含む駆動手段に直接連結されていない揉み従動軸側を進退させるため、簡単な構造で叩きマッサージを実現できる。
【0010】
また、前記マッサージ部材の前記揉み軸に対する傾きを許容する弾性部材を有し、前記マッサージ部材は、前記弾性部材を介して前記揉み軸に取り付けられていることが好ましい。
このような構成とすることにより、揉み従動軸の進退に伴うマッサージ部材の揉み軸に対する傾きを許容することができる。
【0011】
また、前記モータは前記揉み軸及び前記叩き軸を回転させる共通のモータであり、前記モータの正転時は、前記揉み軸及び前記叩き軸のいずれか一方を回転させ、前記モータの反転時は、前記揉み軸及び前記叩き軸を回転させるワンウェイクラッチを有することが好ましい。
このような構成とすることにより、1基のモータで異なるマッサージ動作を行うことができる。
【0012】
また、本発明のマッサージ機構は、モータと、被施療部の施療面と交差する方向を軸方向として配置され、前記モータの回転に基づいて偏心回転する偏心軸部を有する対の揉み軸と、前記揉み軸に連結され、該揉み軸をその軸方向に進退させるソレノイドと、被施療部をマッサージするマッサージ部材と、を有し、前記マッサージ部材は、前記偏心軸部の偏心回転に追従して揉み動作を行うとともに、対の前記揉み軸が該揉み軸の軸方向に沿って進退して叩き動作を行うものとすることもできる。
このような構成とすることにより、速度の早い叩きマッサージを行うことができる。
【0013】
また、前記マッサージ機構を被施療者の身体を支持する身体支持部に設けたマッサージ機とすることもできる。
このような構成とすることにより、被施療者の身体を身体支持部に安定して支持した状態で、被施療部にマッサージを行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被施療部の施療面と交差する方向を軸方向として配置された揉み軸の回転に追従して揉み動作を行うマッサージ機構において、効果的な叩き動作も行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るマッサージ機の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るマッサージ機構の斜視図である。
【図3】ベース部材を省略したマッサージ機構の斜視図である。
【図4】前ベースを省略したマッサージ機構の正面図である。
【図5】後ベースを省略したマッサージ機構の底面図である。
【図6】後ベースを省略したマッサージ機構の側面図である。
【図7】ベース部材及びマッサージ部材を省略したマッサージ機構の斜視図である。
【図8】ベース部材及びマッサージ部材を省略したマッサージ機構の正面図である。
【図9】マッサージ部材の図2におけるA−A断面模式図である。
【図10】マッサージ部材の動作説明図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係るマッサージ機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のマッサージ機構8について、このマッサージ機構8を椅子型のマッサージ機1に適用した場合を例示して説明する。
図1は、本発明に係るマッサージ機1の斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態に係るマッサージ機構8の斜視図である。図3は、ベース部材10を省略したマッサージ機構8の斜視図である。図4は、前ベース10aを省略したマッサージ機構8の正面図である。図5は、後ベース10bを省略したマッサージ機構8の底面図である。図6は、後ベース10bを省略したマッサージ機構8の側面図である。図7は、ベース部材10及びマッサージ部材11を省略したマッサージ機構8の斜視図である。図8は、ベース部材10及びマッサージ部材11を省略したマッサージ機構8の正面図である。図9は、マッサージ部材11の図2におけるA−A断面模式図である。図10は、マッサージ部材11の動作説明図である。図11は、本発明の第2実施形態に係るマッサージ機構50の説明図である。
なお、以下の説明で用いる方向の概念は、マッサージ機構8が被施療者の背部(背中)位置にある状態で、図1に示す椅子型マッサージ機1に着座した被施療者から見たときの方向の概念と一致するものとし、左手側が「左」であり、右手側が「右」であり、頭部側が「上」であり、腰部側が「下」であり、その他の場合は適宜説明するものとする。
【0017】
[マッサージ機の構成]
図1に示すとおり、本発明のマッサージ機1は、主として、被施療者が着座する座部3と、座部3の後部に一体的に設けられた被施療者が凭れる背凭れ部4と、座部3の前部に上下回動可能に設けられた被施療者の脚部を支持するフットレスト5と、により構成される椅子本体2と、この椅子本体2を前後に揺動可能に支持するとともに床面に設置されるベースフレーム6と、椅子本体2をベースフレーム6に対して前後に揺り動かすロッキング機構部7と、座部3から背凭れ部4の間を移動自在に椅子本体2に設けられたマッサージ機構8と、を有している。すなわち、椅子本体2を構成する座部3、背凭れ部4、及びフットレスト5は、被施療者の身体を支持する身体支持部として機能する。また、座部3は、その左右両端部において臀部乃至大腿部に対向する側壁3aを有し、背凭れ部4は、その左右両端部において肩部乃至上腕部に対向する側壁4aを有しており、各側壁部3a,4a及びフットレスト5には空気式のマッサージ具9が設けられている。
【0018】
椅子本体2内部には、座部3から背凭れ部4にかけてマッサージ機構8を身長方向に沿って移動可能に支持する左右対のガイドレール71,71が設けられている。このガイドレール71は、可撓性を有する板状のスチールベルトにより構成され、上下方向及び左右方向に複数の係合孔71aを有している。そして、マッサージ機構8が有する後述するスプロケットホイール74の係合突起74aが、この係合孔71aに係合して、スプロケットホイール74が回転することにより、マッサージ機構8は椅子本体2内部を身長方向に沿って移動するよう構成されている。
【0019】
[第1実施形態に係るマッサージ機構の構成]
以下、図1〜図9に基づいて、第1実施形態に係るマッサージ機構8について、椅子本体2に配設されたマッサージ機構8を代表して説明する。
図2に示すとおり、本発明のマッサージ機構8は、主として、ベース部材10と、被施療部をマッサージするマッサージ部材11と、マッサージ部材11を駆動する駆動機構12と、駆動機構12の動作を制御する制御部(図示せず)と、により構成されている。
【0020】
ベース部材10は、前後方向に板面を有する平板状の前ベースと10aと、後方から前ベース10aに連結される後ベース10bとにより構成され、両ベース10a,10b間に形成された空間に駆動機構12が収容されている。図3及び図4に示すとおり、この駆動機構12は、モータ14と、モータ14に連動連結されてこのモータ駆動により回転する回転部材15と、回転部材15に設けられマッサージ部材11の一部11aを支持する揉み駆動軸16と、ベース部材10に設けられマッサージ部材11の他部11bを支持するとともに、揉み駆動軸16の動作に従動して、揉み駆動軸16によるマッサージ部材11の回転運動を揺動運動に変換する揉み従動軸17と、揉み従動軸17を前後方向に進退させる叩き軸19と、叩き軸19の回転を揉み従動軸17に伝達するリンク部材20と、により主として構成されている。そして、この揉み駆動軸16及び揉み従動軸17は、被施療部の被施療面と交差する方向(前後方向)を軸方向とする揉み軸を構成している。
【0021】
図7に示すとおり、マッサージ機構8は、ガイドレール71(図1参照)に沿って移動すべく、移動用モータ72と、移動用モータ72の駆動により回転する左右方向に延設された昇降軸73と、昇降軸73の左右両端部に設けられ昇降軸73と一体回転する左右対のスプロケットホイール74と、後述する叩き軸19に設けられ叩き軸19に対して相対回転する左右対のガイドローラ75と、を有し、ガイドレール71、移動用モータ72、昇降軸73、スプロケットホイール74、及びガイドローラ75により、昇降機構70が構成されている。図3に示すとおり、この昇降軸73と叩き軸19は、後ベース10bに設けられたブラケット10cに回転可能に支持されている。
【0022】
図1及び図7に示すとおり、スプロケットホイール74は、その左右方向及び周方向に沿って複数の係合突起74aを有しており、この係合突起74aがガイドレール71の係合孔71aに係合して、スプロケットホイール74が昇降軸73とともに回転することにより、マッサージ機構8がガイドレール71に沿って移動する。スプロケットホイール74とガイドローラ75は、前後方向に対向し、かつ近接して設けられており、スプロケットホイール74とガイドローラ75に挟まれるようにガイドレール71が両部材間74,75に位置している。このスプロケットホイール74とガイドローラ75は、上下方向にも複数対をなして設けられている。
【0023】
図5及び図6に示すとおり、前ベース10aは、その幅方向中央部分において、モータ14を取り付けるためのブラケット10dと、その下端部において、モータ14の第1出力軸14aに設けられた第1回転シャフト21の軸受け部10eと、を有している。図4及び図5に示すとおり、モータ14は、ブラケット10dを介してベース部材10に取り付けられており、モータ14の上下両端部に設けられた上下方向を軸方向とする第1出力軸14a及び第2出力軸14bを有している。そして、この第1出力軸14aの先端には、ウォームギヤ22を備えた上下方向を軸方向とする第1回転シャフト21が設けられており、第1回転シャフト21の先端(下端部)が、ベアリング23を介して回転可能に前ベース10aが有する軸受け部10eに支持されている。また、図3及び図4に示すとおり、第2出力軸14bの先端(上端部)には、ウォームギヤ24を備えた上下方向を軸方向とする第2回転シャフト25が設けられており、このウォームギヤ24は叩き軸19に設けられたウォームホイール26と噛合している。このモータ14は、ベース部材10に設けられた制御部(図示せず)により、回転速度及び回転方向が制御される。
【0024】
図4及び図8に示すとおり、第1回転シャフト21の左右両側方には回転部材15が設けられており、この回転部材15は、ウォームギヤ22に噛合するウォームホイール62と、ウォームホイール62に噛合する歯車63と、により構成されている。そして、このウォームホイール62は、ウォーム22に噛合する第1ウォームホイール62aと、第1ウォームホイール62aの後面に配置され第1ウォームホイール62aと一体回転可能であり第1ウォーム62aより歯数の少ない第2ウォームホイール62bと、により構成され、第2ウォームホイール62bに回転中心C2周りに回転可能な歯車63が噛合している。第1ウォームホイール62aと第2ウォームホイール62bは、前後方向に重なって一体的に構成されており、同一の回転中心C1周りに回転するよう構成されている。
【0025】
左右対をなすウォームホイール62,62は、前後方向を軸方向とする軸心C1周りに互いに逆方向に回転可能である。歯車63の軸心C2(回転中心)には、揉み駆動軸16の一端側である回転軸部27(図3及び図7参照)が挿通されており、この揉み駆動軸16の一端側(回転軸部27)は、歯車63と一体的に回転可能に、前ベース部材10aが有する軸受け部28にベアリング29(図8参照)を介して支持されている。揉み駆動軸16の他端側であり回転軸部21に対して偏心した偏心軸部30は、マッサージ部材11の一部11aに対してベアリング(図示せず)を介して相対的に回転可能に取り付けられている。図7に示すとおり、揉み駆動軸16は、回転軸部27と、回転軸部27に取り付けられたクランクブラケット41と、クランクブラケット41に取り付けられ回転軸部27に対して偏心した偏心軸部30と、により全体としてクランク状に構成されている。
【0026】
図3及び図4に示すとおり、マッサージ部材11は、前後方向に板面を有する平板状に構成された施療アーム31と、施療アーム31の前面に設けられて被施療部に当接する複数の施療子32と、により構成され、左右で対をなして構成されている。そして、施療アーム31(マッサージ部材11)は、その一部11aである下端部において、揉み駆動軸16の偏心軸部30によってベース部材10に支持されている。偏心軸部30は、施療アーム31の一部11aに設けられた軸受け部33(図9参照)にベアリング(図示せず)を介して取り付けられている。
【0027】
図4に示すとおり、施療アーム31(マッサージ部材11)は、その他部11bである上端部において、揉み駆動軸16によるマッサージ部材11の回転運動を揺動運動に変換する揉み従動軸17によってベース部材10に支持されている。図7に示すとおり、この揉み従動軸17は、ベース部材10(前ベース10a)が有する軸受け部34にベアリング(図示せず)を介して支持された回転軸部35と、回転軸部35に取り付けられたクランクブラケット42と、ベアリング(図示せず)を介して施療アーム31を回転可能に支持するとともに、クランクブラケット42に取り付けられ、回転軸部35に対して偏心した偏心軸部36と、により全体としてクランク状に構成されている。また、この回転軸部35は、詳細は後述するリンク部材20を介して叩き軸19に連結されている。すなわち、揉み従動軸17は、その前側がマッサージ部材11に取り付けられ、その後側が前ベース10a(ベース部材10)に支持されるとともにリンク部材20に取り付けられている。図8に示すとおり、揉み従動軸17の回転軸部35は、揉み駆動軸16の回転軸部27(歯車の回転中心C2)よりも左右外側方に位置している。
【0028】
図7及び図9に示すとおり、揉み駆動軸16が有する偏心軸部30、及び揉み従動軸17が有する偏心軸部36は、その軸周りに設けられたゴムブッシュ等よりなる環状の弾性部材37を介してマッサージ部材11を支持している。より具体的には、偏心軸部30,36の軸周りには、前端部につば部43aを有する筒状のつば付きカラー43がそれぞれ設けられ、このつば付きカラー43の軸回りに弾性部材37が設けられている。そして、つば部43a及び軸受け部33,34の前面33a,34aにより、弾性部材37は前後方向への位置ずれが規制されている。従って、マッサージ部材11の偏心軸部30,36に対する傾きが、弾性部材37の作用により許容されるようになっている。なお、マッサージ部材11を傾き可能に構成していることから、マッサージ部材11の強度を保つべく、施療アーム31は揉み駆動軸16と揉み従動軸17の間において複数のリブ31aを有している。
【0029】
図3及び図4に示すとおり、叩き軸19は、左右方向を軸方向とし、後ベース10bに設けられたブラケット10cに回転可能に支持されている。この叩き軸19の左右中途部には、第2出力軸14bに設けられたウォームギヤ24に噛合するウォームホイール26が設けられており、その左右両端部には偏心カム38,38が叩き軸19と一体回転可能に設けられている。そして、図6に示すとおり、叩き軸19には、偏心カム38を介してリンク部材20の上部が連結されており、リンク部材20の下部が揉み従動軸17の回転軸部35にボールジョイント等よりなる自在継手39を介して連結されている。すなわち、叩き軸19と揉み従動軸17(揉み軸)は、リンク部材20により連結されている。
【0030】
従って、モータ14が回転(正転)すると、叩き軸19及び偏心カム38が回転し、この偏心カム38の作用によりリンク部材20の下部が前後に揺動する。そうすると、リンク部材20の下部に連結された揉み従動軸17は、自在継手39の作用により、その軸方向に進退(前後スライド)することとなる。すなわち、叩き軸19の回転に基づくリンク部材20の揺動が、揉み従動軸17の軸方向への運動に変換される。
【0031】
また、図6に示すとおり、この偏心カム38は側面視で円形をなし、その外形の幾何学的な円の中心から離れた位置に回転軸心である叩き軸19が挿通されている。そして、左右の偏心カム38,38は、その回転軸心である叩き軸19に対する位相が互いに異なっており、具体的には互いに180度だけ異なっている。従って、一方のリンク部材20が前方へ揺動する際には、他方のリンク部材20は後方へ揺動する。
【0032】
また、叩き軸19には、ウォームホイール26と一体回転可能であるワンウェイクラッチ40が設けられており、モータ14の正転時には、叩き軸19はワンウェイクラッチ40と一体回転し、モータ14の反転時は、ワンウェイクラッチ40が叩き軸19に対して空転して、叩き軸19は回転しないようになっている。つまり、モータ14の正転時は、揉み駆動軸16(揉み軸)及び叩き軸19の両方が回転し、モータ14の反転時は、揉み駆動軸16(揉み軸)のみが回転する。モータ14の正転時は叩き軸19が回転駆動され、左右の偏心カム38,38の位相が互いに180度異なっているために、対のマッサージ部材11は揉み従動軸17とともに交互に進退することとなり、被施療部に対して叩きマッサージが行われる。
【0033】
[マッサージ部材の動作]
以下、図10に基づいて、マッサージ部材11の揉み動作について説明する。
図8に示すとおり、制御部(図示せず)からの信号によりモータ14が正転又は反転駆動されると、モータ14の第1出力軸14aの先端に設けられた第1回転シャフト21が回転し、ウォームギヤ22に噛合したウォームホイール62が回転中心C1周りに回転する。そして、揉み駆動軸16が歯車63と一体回転するため、偏心軸部30が回転軸部27(歯車63の回転中心C2)を中心として公転することとなる。従って、図10に示すとおり、揉み駆動軸16の偏心軸部30に支持されたマッサージ部材11の下端部11aである定点11Aは、回転中心C2周りを軌道11Cに沿って円運動する。一方、マッサージ部材11の上端部11bである定点11Bは、揉み従動軸17の偏心軸部36に相対回転可能に支持されているため、揉み従動軸17の偏心軸部36が回転軸部35周りを軌道11Dに沿って左右方向へ揺動する。すなわち、クランク状の揉み駆動軸16が「クランク」、マッサージ部材11が「リンク」、クランク状の揉み従動軸17が「てこ」として機能するてこクランク機構の原理を利用して、マッサージ部材11を回転運動から揺動運動に変換することができる。
【0034】
図10に示すとおり、このように構成されたマッサージ機構8は、モータ14を正転駆動させた場合には、マッサージ部材11の上端部11bが軌跡11Dに沿って左右内側から左右外側に向かって、被施療部である背部に対して、破線で示す筋繊維(広背筋)の方向に沿って略斜め上方に揉み上げることができる。しかも、揉み従動軸17の回転軸部35は、揉み駆動軸16の回転軸部27よりも左右外側方に位置していることから、マッサージ部材11は全体として左右外側方へ大きく揺動するため、左右対のマッサージ部材11,11が相互に大きく離反して、対のマッサージ部材11,11間に位置する被施療部(背部)を左右方向へ引き伸ばすような感覚を与えることができる。一方、モータ14を反転駆動させた場合には、マッサージ部材11の上端部11bが軌跡11Dに沿って左右外側から左右内側に向かって、被施療部である背部に対して、筋繊維(広背筋)の方向に沿って斜め下方に揉み下げることができる。
【0035】
以下、図6〜図9に基づいて、マッサージ部材11の叩き動作について説明する。
制御部(図示せず)からの信号によりモータ14が正転駆動されると、モータ14の第2出力軸14bの先端に設けられた第2回転シャフト25が回転し、ウォームギヤ24に噛合したウォームホイール26がワンウェイクラッチ40とともに回転する。そして、叩き軸19がワンウェイクラッチ40とともに一体回転するため、左右のリンク部材20,20が交互に前後揺動することとなる。従って、図6に示すとおり、リンク部材20の前後揺動に応じて揉み従動軸17が進退することとなるが、揉み駆動軸16の前後方向の位置は固定されているため、マッサージ部材11の他部11b(上方)側がその一部11a(下方)側に対して前後揺動する。なお、図9に示すとおり、マッサージ部材11と偏心軸部30,36の間には弾性部材37が介在しているため、マッサージ部材11を偏心軸部30,36に対して傾かせることができる。
【0036】
[第2実施形態に係るマッサージ機構の構成]
以下、図11に基づいて、第2実施形態に係るマッサージ機構50について、背凭れ部4に配設されたマッサージ機構50を代表して説明する。図11は、本発明の第2実施形態に係るマッサージ機構50の説明図である。なお、この説明図は、マッサージ機構50を側面から見た図であり、上述した第1実施形態に係るマッサージ機構8と同一の構成については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0037】
第2実施形態に係るマッサージ機構50において、第1実施形態と異なる点は、マッサージ部材11に叩きマッサージを行わせるための構成である。すなわち、マッサージ機50は、叩き軸19及びリンク部材20に代えて、左右の揉み従動軸17(揉み軸)にそれぞれ連結された左右対のソレノイド51を有している。より具体的には、マッサージ機構50は、ベース部材10に固定されたソレノイド51と、ソレノイド51の励磁及び消磁により前後方向に動作するプランジャ52と、を有し、プランジャ52の前端部に自在継手39を介して揉み従動軸17が連結されている。従って、前述した制御部(図示せず)により、ソレノイド51が励磁駆動されると、プランジャ52が前方へ突出して揉み従動軸17が前方へ移動する。一方、ソレノイド51が消磁されると、プランジャ52が図示しないバネの付勢力により後方へ引き込まれて揉み従動軸17が後方へ移動する。このようにソレノイド51の励磁及び消磁を繰り返すことにより、速度の速い叩きマッサージを行うことができる。
【0038】
また、本発明のマッサージ機1は、図示する形態に限らずこの発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。
例えば、椅子型のマッサージ機1においては、このマッサージ機構7,50を座部3、背凭れ部4、及びフットレスト5の内、少なくともいずれかに配設されていればよく、背凭れ部4及び/又はフットレスト5は省略することもできる。また、持ち運び可能な床面等に載置する載置型のマッサージ機とすることもできる。載置型の場合は、被施療者が所望する被施療部に対して自由に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、被施療部の施療面と交差する方向を軸方向として配置された揉み軸の回転に追従して揉み動作を行うマッサージ機構において、効果的な叩き動作も行うことができるマッサージ機構、及びマッサージ機に適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 マッサージ機
2 椅子本体(身体支持部)
3 座部(身体支持部)
4 背凭れ部(身体支持部)
5 フットレスト(身体支持部)
8 マッサージ機構
11 マッサージ部材
15 回転部材
16 揉み駆動軸(揉み軸)
17 揉み従動軸(揉み軸)
19 叩き軸
20 リンク部材
30 偏心軸部
36 偏心軸部
37 弾性部材
39 自在継手
40 ワンウェイクラッチ
50 マッサージ機構
51 ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
被施療部の施療面と交差する方向を軸方向として配置され、前記モータの回転に基づいて偏心回転する偏心軸部を有する対の揉み軸と、
前記モータの回転に基づいて回転する叩き軸と、
前記揉み軸と前記叩き軸を連結するリンク部材と、
被施療部をマッサージするマッサージ部材と、を有し、
前記マッサージ部材は、
前記偏心軸部の偏心回転に追従して揉み動作を行うとともに、
前記叩き軸の回転に追従して前記リンク部材が動作することにより、対の前記揉み軸が該揉み軸の軸方向に沿って交互に進退して叩き動作を行う
ことを特徴とするマッサージ機構。
【請求項2】
前記リンク部材は前記叩き軸の回転に基づいて前後に揺動可能であり、
前記揉み軸は、前記リンク部材の揺動を許容する自在継手を介して該リンク部材に連結されている
ことを特徴とする請求項1に記載のマッサージ機構。
【請求項3】
前記モータに連動連結された回転部材を有し、
前記揉み軸は、
前記回転部材に設けられ前記マッサージ部材の一部を支持する揉み駆動軸と、
前記マッサージ部材の他部を支持するとともに、前記揉み駆動軸の動作に従動して、該揉み駆動軸による前記マッサージ部材の回転運動を揺動運動に変換する揉み従動軸と、を有し、
前記叩き軸は、前記リンク部材を介して前記揉み従動軸に連結されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマッサージ機構。
【請求項4】
前記マッサージ部材の前記揉み軸に対する傾きを許容する弾性部材を有し、
前記マッサージ部材は、前記弾性部材を介して前記揉み軸に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマッサージ機構。
【請求項5】
前記モータは前記揉み軸及び前記叩き軸を回転させる共通のモータであり、
前記モータの正転時は、前記揉み軸及び前記叩き軸のいずれか一方を回転させ、前記モータの反転時は、前記揉み軸及び前記叩き軸を回転させるワンウェイクラッチを有する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマッサージ機。
【請求項6】
モータと、
被施療部の施療面と交差する方向を軸方向として配置され、前記モータの回転に基づいて偏心回転する偏心軸部を有する対の揉み軸と、
前記揉み軸に連結され、該揉み軸をその軸方向に進退させるソレノイドと、
被施療部をマッサージするマッサージ部材と、を有し、
前記マッサージ部材は、
前記偏心軸部の偏心回転に追従して揉み動作を行うとともに、
対の前記揉み軸が該揉み軸の軸方向に沿って進退して叩き動作を行う
ことを特徴とするマッサージ機構。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のマッサージ機構を被施療者の身体を支持する身体支持部に設けたことを特徴とするマッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−81496(P2013−81496A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221457(P2011−221457)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000112406)ファミリー株式会社 (175)
【Fターム(参考)】