説明

マッサージ機

【課題】 簡単な構成で、早期にカバーの破損を検知して運転を停止することのできるマッサージ機を提供することを目的とする。
【解決手段】 椅子の背当たり部13に、背当たり部の長手方向に沿って移動自在に配備されたマッサージユニット30を具え、マッサージユニットには、左右及び/又は上下に揺動自在で、先端にもみ玉41を有する施療アーム42を具え、もみ玉の動きを背当たり部の表面に張設された柔軟性を有するカバー70を介して被施療者に伝えるマッサージ機で、カバー70が破損したときに、該破損部よりもみ玉と共にカバーの外に飛び出すもみ玉近傍に、光検出センサ72やマイクロスイッチ76等からなる破損検出装置71を設け、破損検出装置がカバーの破損を検出した際は、マッサージの運転を停止するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被施療者の背中が当る椅子やベッドの背当たり部に、背当たり部の長手方向に沿って移動自在に配備されたマッサージユニットを具えたマッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1や特許文献2に記載のマッサージ機では、背当たり部の長手方向に沿って移動自在に配備されたマッサージユニットには、左右及び/又は上下(背当たり部の長手方向)に揺動自在で、先端にもみ玉を有する施療アームを具え、もみ玉の動きを背当たり部の表面に張設された柔軟性を有する布製等のカバーを介して被施療者に伝えてマッサージを施す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−239400号公報
【特許文献2】特開2005−270457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マッサージ機を長期間使用していると、布製等のカバーともみ玉との摩擦により、カバーが擦り切れて破れる等の破損が生じ、このカバーの破れた箇所からもみ玉が飛び出だす。にもかかわらず、マッサージを続行していると、施療アームの動きによってカバーが大きく引き裂かれ、この引き裂かれた部分から人体とマッサージユニットが接触し、髪や衣服を巻き込む等の恐れがあった。
【0005】
そこで、特許文献2では、カバーの破損を検知して、カバーが破損すると危険を察知し、運転を停止するようにしている。詳述すると、カバーに導電体または抵抗体を格子状に配列させて、カバーの破損箇所を特定できるようにしたり、破損した箇所からカバー内へ侵入する光を検知して、破損を検知するようにしている。
このような構成では、カバーの破損箇所は特定できても、装置が大掛かりとなり、また、破損した際にカバー内へ侵入する光を検知するようにしているが、被施療者の背中に邪魔されたりして充分に光センサに光が届かないことがあり、大きく破損するまで、気づかれない恐れがあった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、簡単な構成で、早期にカバーの破損を検知して運転を停止することのできるマッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るマッサージ機は、
被施療者の背中が当る椅子やベッドの背当たり部に、背当たり部の長手方向に沿って移動自在に配備されたマッサージユニットを具え、マッサージユニットには、左右及び/又は上下に揺動自在で、先端にもみ玉を有する施療アームを具え、もみ玉の動きを背当たり部の表面に張設された柔軟性を有するカバーを介して被施療者に伝えてマッサージを施すマッサージ機において、
前記カバーが破損したときに、該破損部よりもみ玉と共にカバーの外に飛び出すもみ玉近傍に、破損検出装置を設け、破損検出装置がカバーの破損を検出した際は、マッサージの運転を停止するようにしたものである。
【0008】
具体的は、破損検出装置は光検出センサよりなり、前記カバーの破損によりカバー外に飛び出して受光量の変化を検知することで、カバーの破損を検出するものを例示できる。
【0009】
また破損検出装置はマイクロスイッチよりなり、マイクロスイッチのアクチェーターが、破損した箇所より飛び出して、施療アームが動いた際にカバーにより力を加えられて操作されるようにしたものを例示できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、カバーが破損すると、破損検出装置はもみ玉と共にカバーより飛び出すので、破損検出装置が光検出センサの場合も、マイクロスイッチの場合も、早期に確実にカバーの破損を検知でき、運転を停止することができるので、安全性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るマッサージ機の縦断面図である。
【図2】同マッサージ機のマッサージユニット正面図である(ただし、シャーシの向こう側に見える線も実線で表している)
【図3】同マッサージ機のマッサージユニットの要部断面平面図である。
【図4】同マッサージ機の要部拡大側面で、カバーが破損した状態を一点鎖線で示す。
【図5】同マッサージ機のカバーの破損検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施例を示す要部拡大側面で、カバーが破損した状態を一点鎖線で示す。
【図7】同マッサージ機のカバーの破損検出装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を椅子型のマッサージ機(10)に適用した例について説明する。なお、本発明は、椅子型に限定されることなく、例えば、ベッド型のマッサージ機などにも適用することができる。特許請求の範囲でいう上下とは、人体の背筋に沿った即ち、背当たり部の長手方向を意味する。
【0013】
マッサージ機(10)の椅子(11)は、図1に示すように、被施療者の腰掛ける座部(12)と、該座部(12)の後端から上向きに形成された背当り部(13)、座部(12)の左右両側に上向きに形成された肘掛け部(14)とから構成される。座部(12)、背当り部(13)、肘掛け部(14)は、夫々内部に金属製のパイプ、フレーム又はプレート等を連結して形成され、外周は、柔軟性を有する布製カバーやクッションにて包囲される。背当り部(13)の表面に張設される布製カバーについては、符号を(70)とする。
【0014】
背当り部(13)の内部には、図1に示すように、上部及び下部に夫々上フレーム(16)と下フレーム(17)を具えており、上下のフレーム(16)(17)の左右両端部は、上下方向に平行に伸びる左右一対のガイドレール(18)(18)にて連結されている。ガイドレール(18)(18)の上端は、上フレーム(16)を越えて上方へ伸びており、ガイドレール(18)(18)の先端には、被施療者の頭部が当る頭当て部(15)が取り付けられている。ガイドレール(18)(18)の下部は、座部(12)を形成するフレームに枢支される。また、下フレーム(17)には、公知のリクライニング機構(19)に連結され、背当り部(13)は、座部(12)に対して前後に傾動可能となっている。
【0015】
ガイドレール(18)(18)は、断面形状がコ字状であって、溝が対向するように配置され、該ガイドレール(18)(18)に沿ってマッサージユニット(30)が昇降可能に取り付けられている。
【0016】
背当り部(13)の内部には、ガイドレール(18)(18)と平行に枢支されたネジ軸(22)と、該ネジ軸(22)を回転させる昇降モータ(21)からなる昇降手段(20)が配備されている。ネジ軸(22)の下端にはプーリ(23)を具え、昇降モータ(21)の回転軸とベルトを介して連繋されており、昇降モータ(21)を駆動すると、ネジ軸(22)が正回転又は逆回転を行なう。
【0017】
ネジ軸(22)には、図示しない制御手段に電気的に接続されたエンコーダ(24)が配備されており、ネジ軸(22)の回転は、パルス信号として制御手段に送信される。一方のガイドレール(18)の上下には、夫々リミットスイッチ(33)(34)が配備されており、マッサージユニット(30)が上または下方向の移動限界に到達すると、信号を制御手段に送信する。
【0018】
マッサージユニット(30)は、図1乃至図3に示すように、ガイドレール(18)(18)の溝に嵌まるローラ(31)(31)(31)(31)が上下に夫々左右一対ずつ枢支されたシャーシ(32)に、施療指(40)(40)と、該施療指(40)(40)を作動させる揉み手段(50)及び叩き手段(60)を具える。シャーシ(32)は、ネジ軸(22)に螺合するネジ筒(35)を有しており、前述のとおり、ネジ軸(22)を回転させると、マッサージユニット(30)がネジ推力によって昇降する。
【0019】
施療指(40)(40)は、略中央がくの字型に屈曲した板状の施療アーム(42)の上下両端に各一対のもみ玉(41)(41)を具え、アーム(42)の屈曲部分は板状のレバー(43)に枢支される。レバー(43)は、揉み手段(50)に回転自由に枢支されており、レバー(43)の後端は、球関節(44)を介して連結杆(45)が取り付けられ、該連結杆(45)は、叩き手段(60)に連繋される。
【0020】
施療アーム(42)は、図4の如くレバー(43)との間に架設されたばね(80)により、上部のもみ玉(41)が常時前方(布製カバー(70)側)へ迫り出す方向に付勢されている。またレバー(43)に対して一定の範囲だけ回動するように、レバー(43)に形成した二つの凸部(47)(47)に当接する凸部(48)が設けられている。図4で実線は、施療アーム(42)(上部のもみ玉(41))が最も前方へ迫り出した状態を示し、破線が最も後方へ退避した状態を示す。
【0021】
揉み手段(50)は、施療指(40)(40)の各レバー(43)(43)を傾斜した状態で枢支するもみ用回転軸(52)と、該もみ用回転軸(52)を回転させる揉みモータ(51)を具える。詳しくは、もみ用回転軸(52)に、偏心且つ互いに対称的に傾斜して固定されたカム体(52')に各レバー(43)は枢支されている。揉みモータ(51)からの動力は、減速機構(53)を介してもみ用回転軸(52)に伝達される。
【0022】
もみ軸(52)には、施療指(40)(40)が夫々傾斜した状態で枢支されており、レバー(43)(43)は連結杆(45)(45)に夫々接続されて回転が阻止されているから、もみ軸(52)を回転すると、左右のもみ玉(41)(41)が楕円状の軌道を描きつつ、接近、離間を繰り返しながら往復移動して、揉み動作を行なう。
【0023】
もみ用回転軸(52)には、図2に示すように、マグネット(55)が取り付けられており、該マグネット(55)と、各マグネット(55)の回転移行路に対向してシャーシに配備されたリードスイッチ(56)によって、もみ用回転軸(52)の回転が検出される。また、揉みモータ(51)の回転は、エンコーダ(54)によって検出される。
【0024】
叩き手段(60)は、施療指(40)(40)の各連結杆(45)(45)を軸心から互いに180度ずれた状態で支持する叩き軸(62)と、該叩き軸を回転させる叩きモータ(61)を具える。叩きモータ(61)からの動力は、減速機構(63)を介して叩き軸(62)に伝達される。叩きモータ(61)を回転すると、叩き軸(62)に偏心して連繋された連結杆(45)(45)を介して、レバー(43)(43)が上下方向(前後方向も含む)に往復移動して、叩き動作を行なう。叩きモータ(61)にも同様に、エンコーダ(64)が配備されており、叩きモータ(61)の回転は、エンコーダ(64)からのパルス信号として制御手段に送信される。
【0025】
ところで、揉み動作と叩き動作を行うマッサージユニット(30)は、背当たり部(13)に張設された柔軟性を有する布製カバー(70)により覆い隠されており、もみ玉(41)の動きは、布製カバー(70)を介して被施療者に伝わる。長期間マッサージ機を使用していると、布製カバー(70)は、もみ玉(41)との摩擦により擦り減ってやがて破れてしまう場合がある。
【0026】
そこで本発明では、布製カバー(70)の破損検出装置(71)をもみ玉(41)の近傍に配備している。
【0027】
破損検出装置(71)として、図4の如く光検出センサ(72)を例示できる。光検出センサ(72)は、施療アーム(42)の先端に取り付けられた取付板(73)に取り付けられている。取付板(73)は、もみ玉(41)を回転自在に取り付けている枢軸(74)にナット(75)により取り付けられている。光検出センサ(72)は受光する光量により反応するものである。
【0028】
図5のフローチャートに基づき、破損検出装置(71)の動作を説明する。運転開始スイッチをONにすれば(ステップS1)、マッサージ動作を開始するのであるが、光検出スイッチ(72)で布製カバー(70)が破れているかどうかを検出する。カバー(70)が破れていなければ、図4の実線の如く光検出センサ(72)はカバー(70)に覆われているので、受光する光量レベルは少なく、閾値を超えていないので、マッサージ動作を行う(ステップS2のNO、ステップS3)。所定のマッサージ動作時間が経過すれば(ステップS4のYes)運転を停止する。ステップS3において、マッサージモータとは、昇降モータ(21)、揉みモータ(51)、叩きモータ(61)を総称して表したものである。
【0029】
長期間使用して布製カバー(70)がもみ玉(41)との摩擦等により破れると、図4の一点鎖線の如く、もみ玉(41)が破れた箇所よりカバー(70)より外部へ飛び出す。同時に光検出センサ(72)もカバー(70)より外部へ飛び出す。従って光検出センサが受光する光量レベルは高くなり、閾値を超える。閾値を超えると(ステップS2のYes)カバー(70)が破損していると判断して、ブザーやランプにより報知して使用者に異常を知らせると共に(ステップS5)、運転を停止する。
【0030】
光検出センサ(72)は、カバー(70)が破れた際、もみ玉(41)と共に外へ飛び出す位置に設置されているので、確実に受光量のアップを検出でき、早期にカバーの破損を検出して、運転を停止することができる。
【0031】
図6は、破損検出装置(71)の他の実施例を示す。施療アーム(42)には、2つのマイクロスイッチ(76)(76)内蔵した検出ハウジング(77)が取り付けられており、各マイクロスイッチ(76)のアクチェーター(78)がハウジング(77)より前方へ向けて飛び出している。
【0032】
図7のフローチャートに基づき、破損検出装置(71)の動作を説明する。運転開始スイッチをONにすれば(ステップS1)、マッサージ動作を開始するのであるが、マイクロスイッチ(76)で布製カバー(70)が破れているかどうかを検出する。カバー(70)が破れていなければ、図6の実線の如くマイクロスイッチ(76)はNOせずマッサージ動作を行う(ステップS2のNO、ステップS3)。所定のマッサージ動作時間が経過すれば(ステップS4のYes)運転を停止する。
【0033】
布製カバー(70)が破れると、図6の一点鎖線の如く、もみ玉(41)が破れた箇所よりカバー(70)より外部へ飛び出す。同時にマイクロスイッチ(76)のアクチェータ(78)もカバー(70)より外部へ飛び出す。この状態で施療アーム(42)が上下左右に動くと、施療アーム(42)がカバー(70)をさらに引き裂こうとするが、この時、カバー(70)がマイクロスイッチ(76)のアクチェータ(78)に力を加えてアクチェータ(78)を操作し、NO状態となる。ONになると(ステップS2のYes)カバー(70)が破損していると判断して、ブザーやランプにより報知して使用者に異常を知らせると共に(ステップS5)運転を停止する。
【0034】
マイクロスイッチ(76)を2個用いているのは、施療アーム(42)のいずれの方向の動きに対しても素早くマイクロスイッチ(76)が反応して、早期にカバー(70)の破損を検出できるようにするためである。
【0035】
また、ハウジング(77)は、前方のマイクロスイッチのアクチェーター(78)が飛び出している小部屋(77A)と、もみ玉(41)の直径Aより大きな寸法Bの大部屋(77B)とから構成されており、カバー(70)が破れてもみ玉(41)がカバーより外へ飛び出す際、小部屋(77A)はカバー外へ飛び出しても、大部屋(77B)はカバー外へ飛び出さないようにしている。これは、アクチェータ(78)が確実に破れたカバー(70)により、操作されるようにするためである。
【0036】
従ってマイクロスイッチ(76)によって、カバー(70)の破損を早期に確実に検出することができる。
【0037】
なお、図4の光検出センサ(72)も図6のマイクロスイッチ(76)も、左右の施療アーム(42)に設けてもよいし、片方の施療アーム(42)にのみ設けてもよい。左右の施療アーム(42)に設けた方が、より早期に確実にカバー(70)の破損を検出できる。
【0038】
また、図6においては、マイクロスイッチ(76)上下方向に2個設けているが、左右方向に2個設けても良い。この場合は、施療アーム(42)の左右の動きによってマイクロスイッチ(76)を操作する。
【0039】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は椅子やベッド式のマッサージ機に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
(13) 背当たり部
(30) マッサージユニット
(41) もみ玉
(42) 施療アーム
(70) カバー
(71) 破損検出装置
(72) 光検出センサ
(76) マイクロスイッチ
(78) アクチェーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者の背中が当る椅子やベッドの背当たり部に、背当たり部の長手方向に沿って移動自在に配備されたマッサージユニットを具え、マッサージユニットには、左右及び/又は上下に揺動自在で、先端にもみ玉を有する施療アームを具え、もみ玉の動きを背当たり部の表面に張設された柔軟性を有するカバーを介して被施療者に伝えてマッサージを施すマッサージ機において、
前記カバーが破損したときに、該破損部よりもみ玉と共にカバーの外に飛び出すもみ玉近傍に、破損検出装置を設け、破損検出装置がカバーの破損を検出した際は、マッサージの運転を停止するようにしたことを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
前記破損検出装置は、光検出センサよりなり、前記カバーの破損によりカバー外に飛び出して受光量の変化を検知することで、カバーの破損を検出するものである請求項1に記載のマッサージ機。
【請求項3】
前記破損検出装置は、マイクロスイッチよりなり、マイクロスイッチのアクチェーターが、破損した箇所より飛び出して、施療アームが動いた際にカバーにより力を加えられて操作されるようにした請求項1に記載のマッサージ機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−61029(P2012−61029A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205343(P2010−205343)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】