説明

マッサージ用エアバッグ及びマッサージ機

【課題】被施療部位に対する圧迫力を高めるエアバッグが容易に得られるようにするとともに、良好なマッサージも行えるようにする。
【解決手段】エアが出入りするエア室12を内部に有するマッサージ用エアバッグ11であって、前記エア室12が被固定部15を隔てて長手方向に一対設けられるとともに、前記エア室12を有する部分の長手方向の中間部に折り返し部13が形成され、該折り返し部13で区分されるとともに厚み方向で重なり相互間でエアが流通する2個のエア分室12a,12bが設けられたマッサージ用エアバッグ11。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マッサージ機に用いられるマッサージ用エアバッグに関し、より詳しくは、被施療部位に対する圧迫力を高めるエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
マッサージ時の圧迫力を高めるエアバッグは、複数のエアバッグ担体を重ねて構成されていた。しかし、各エアバッグ担体にそれぞれ給排気口が必要であるなど、製造コストがかさむ難点があった。
【0003】
このため、下記特許文献1に開示されたようなエアバッグが提案された。これは、重ね合わされた別個独立の複数のエアバッグ担体同士の相対向する面に、別体の連結部材を固定して、各エアバッグ担体内が連通するように接続した構成である。
【0004】
しかし、このように連結部材で連結されたエアバッグは、連結部材が別途に必要であり、製造の手間もかかり、製造コストの低減にも限界があった。
【0005】
また、連結部材は、前記のようにエアバッグ担体同士の相対向する面に設けられ、その形状は筒状であるので、エアバッグ内のエアが排気されて偏平になったときに、連結部材が被施療部位を局所的に圧迫するなど、使用者に違和感を与えるという問題もあった。特に、エアバッグ担体を三段重ねにしたときには、連結部材は2個必要となり、これら連結部材同士がエアの排気時に干渉し、局所的な圧迫などを助長するおそれがある。
【0006】
このため、下記特許文献2に開示されたようなエアバックが提案されている。このエアバッグは、空気袋本体を中間部で2つ折りして重なり合う第1袋部と第2袋部に分けたもので、一方の袋部(第1袋部)における遊端側に給排気口が設けられるとともに、折り曲げられた前記中間部に、取り付け部材が取り付けられてエアバッグの中間部が拘束されている。この構成によれば、一方の袋部(第1袋部)にエアが供給されて遊端側が膨張し、続いて中間部を通って他方の袋部(第2袋部)にエアが充填されてエアバッグ全体が膨張するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−177358号公報
【特許文献2】特開2004−201942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような構成のエアバックでは、特許文献1のエアバッグと同様、基端部は拘束されているものの、遊端側は袋の端部で構成され、これらが単に重なり合っているだけであるので、遊端側での膨張時と非膨張時の高さの差が基端側のそれよりも格段に大きい。つまり、エアバッグの膨張は基端部を中心に円弧を描くようになされ、エア分室の中央部分が最も膨張した箇所となる。この結果、断面視円弧状に膨張したエア分室は互いの押圧力や、身体の荷重による圧迫によって、重合位置にズレが生じ、使用者に違和感を生じさせることがある。
【0009】
エアバッグを被施療部位の左右に設けた場合には、エアバッグの膨張が基端部を中心に円弧を描くようになされることから、被施療部位をつまむようなマッサージとなるが、このようなマッサージは、手首や足首などの身体の細い部分には好適であるものの、特に肩甲骨や尾骨近傍(臀部)のように比較的平坦で幅の広い被施療部位に対してはあまり適切ではない。また、被施療部位の圧迫が使用者の意に反して速く起こるため、例えば臀部だけが持ち上げられた不自然な姿勢となって、被施療部位やその近傍に負担をかけてしまうことも考えられる。
【0010】
そこで、この発明は、簡素な構成でありながらも、圧迫力を高めた良好なマッサージを行えるようにすることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのための手段は、エアが出入りするエア室を内部に有するマッサージ用エアバッグであって、前記エア室が左右一対に設けられ、これらエア室間に、前記エア室を左右に分割するとともに、当該マッサージ用エアバッグをマッサージ機の固定箇所に固定する被固定部が設けられ、前記エア室の少なくとも一部には、前記エア室を複数のエア分室に区分するとともに、前記複数のエア分室間で相互にエアが流通する折り返し部が形成され、該折り返し部での折り返しによって前記複数のエア分室を厚み方向で重合させたことを特徴とするマッサージ用エアバッグである。
【0012】
このようなマッサージ用エアバッグでは、左右に設けられたエア室における厚み方向で重なる複数のエア分室は、折り返し部で相互に連通され、実体上は一体である。このため、一つのエア分室にエアが供給されると折り返し部を介して他のエア分室にエアが順次供給され、膨張時の高さはエア分室の数や形状に応じて高くなる。
【0013】
そして、各エア分室の膨張に際しては、前記折り返し部がエア分室を繋いでおり、しかも左右一対のエア室間の被固定部は固定箇所に固定されているので、折り返し部側での膨張が一定の範囲で規制されることになる。この結果、マッサージ用エアバッグの左右のエア室における膨張は、被固定部を中心に円弧を描くように行われるのではなく、エア室の厚み方向に略直線的に行われる。
【0014】
なお、前記折り返し部よりも遊端側に位置するエア分室の遊端部に、前記被固定部に重ねられる重合部が設けられたマッサージ用エアバッグであってもよい。この場合には、重合部を被固定部に重ねるだけで容易にエア分室の重なり状態を保持でき、また、被固定部に対して最も遊端部側の重合部が前記被固定部へ固定されることから、エア分室にエアが順次供給された際に折り返し部側での膨張がより強力に一定の範囲に規制され、この結果、マッサージ用エアバッグの左右のエア室における膨張は、被固定部を中心に円弧を描くように行われるのではなく、エア室の厚み方向へ略直線的に行われる。
【0015】
また、前記折り返し部の長手方向の両端部に、折り返されたときに角の突出を抑制する凹所が形成されたマッサージ用エアバッグでもよい。この場合には、凹所により膨張時における折り返し部の尖りが抑制され、エアバッグの膨張によって身体を支持した際に、折り返し部の尖りによる使用者の違和感を抑制することができる。
【0016】
前記課題は、前記マッサージ用エアバッグを備えたマッサージ機によっても解決できる。このマッサージ機としては、ベッド型、マット型、椅子型、局所型など、様々なタイプのマッサージ機が考えられる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、厚み方向で重なる複数のエア分室は一体であるので、別途に部材を設けずとも、膨張収縮が可能である。また、複数のエア分室の形成は、折り返し部での折り返しで行える。
【0018】
このように、部品点数の低減を図ることができる上に、製造のための作業も容易であり、構成が簡素であるので、全体として製造コストを抑えることができる。
【0019】
また、エアバッグ間の通気のための別途の部材が不要であるため、収縮時の違和感などをなくすことができ、快適なマッサージを実現できる。
【0020】
さらに、折り返し部によってエア分室が設けられており、折り返し部がエア分室間のエアの流通路であり、そのうえ左右一対のエア室間には被固定部が設けられているので、折り返し部の膨張が一定の範囲に規制され、結果、左右一対のエア室の膨張方向がエア室の厚み方向へ略直線的に行われる。このため、例えば肩甲骨や尾骨近傍(臀部)のような被施療部位の形状にもフィットし、左右のエア室によって挟持される場合とは異なる適切なマッサージができる。また、エア室の一部だけが使用者の意に反して急激に膨張することを抑制し、被施療部位に対して、圧迫力を高めた良好なマッサージが行える。
【0021】
前記折り返し部より遊端側の遊端部に、前記被固定部に重ねられる重合部が設けられた場合には、重合部を被固定部に重ねるだけで容易にエア分室の重なり状態を保持でき、部品点数の低減や製造工程の削減によって、より一層製造の簡単化を図り、製造コストの低減を図ることができる。
【0022】
しかも、最も遊端部側の重合部がエア室間の被固定部に固定されるので、エア分室にエアが順次供給された際に折り返し部側での膨張がより強力に一定の範囲に規制される。このため、前述した左右一対のエア室の膨張方向をエア室の厚み方向へ略直線的に行われるようにすることの効果を、より確実に得ることができる。つまり、左右のエア室によって挟持される場合とは異なるより適切なマッサージが可能で、さらに、エア室の一部だけが使用者の意に反して急激に膨張することを抑制し、被施療部位に対して、圧迫力を高めたより良好なマッサージが行える。
【0023】
また、前記折り返し部の長手方向の両端部に、折り返されたときに角の突出を抑制する凹所が形成された場合には、膨張時における折り返し部の尖りが抑制され、被施療部位等に対する当たりが緩和される。このため、より快適なマッサージに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】マッサージ用エアバッグの断面図。
【図2】マッサージ用エアバッグの平面図。
【図3】マッサージ用エアバッグの膨張状態の一部斜視図。
【図4】マッサージ機の斜視図。
【図5】マッサージ用エアバッグの展開状態の正面図と平面図。
【図6】マッサージ用エアバッグを用いた首肩マッサージ装置の平面図。
【図7】マッサージ用エアバッグを用いた首肩マッサージ装置の断面図。
【図8】比較例のエアバッグを示す断面図。
【図9】比較例のエアバッグの膨張状態の一部斜視図。
【図10】他の例に係るマッサージ用エアバッグの断面図。
【図11】他の例に係るマッサージ用エアバッグにおける左右方向の一方側を展開した状態の平面図。
【図12】他の例に係るマッサージ用エアバッグにおける左右方向の一方側を展開した状態の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1はマッサージ用エアバッグ11(以下、「エアバッグ」という。)の断面図、図2はその平面図、図3はエアバッグ11の膨張状態を示す一部の斜視図である。
【0026】
このようなエアバッグ11は、例えば図4に示したようなマット型のマッサージ機21(以下、「マッサージ機」という。)において、首や肩、腰、腕、脚、足などのマッサージに適宜使用される。マッサージ機21は、マット型のほか、ベッド型や椅子型、首や脚、足などの局所型のものであってもよい。
【0027】
まず、エアバッグ11の構造について説明する。
エアバッグ11は、エアが出入りするエア室12を内部に有し、エア室12を有する部分の少なくとも一部に折り返し部13が形成され、この折り返し部13で区分されるとともに厚み方向で重なり相互間でエアが流通する複数のエア分室12a,12bが設けられた構造である。
【0028】
このエアバッグ11は、エアが入っていない状態では偏平になるように形成されている。すなわち、図5(a)に示したように互いに重ね合わされた平らなシート31,32の外周部分がシールされて、このシール部33で囲まれた内側に前記エア室12が形成される(図5(b)参照)。
【0029】
このエア室12は、1個のエアバッグ11で被施療部位を左右別々に独立してマッサージできるように、左右に一対設けられている。つまり、前記シート31,32は、1枚の第1シート31と、この第1シート31より小さくこれの上に重合される2枚の第2シート32である。
【0030】
前記第1シート31は、左右方向に長い帯状をなし、前記第2シート32は第1シート31よりも短い長方形状をなす。そして、2枚のシート31,32の重合により、エアバッグ11は全体として長い横長長方形状に形成される。2枚のシート31,32の外周部分がシールされることにより、左右2個のエア室12が平面視横長長方形に形成される。
【0031】
2個のエア室12間(エアバッグ11の横長長方形状の略中央部分)には、エア室12を左右一対に分割するとともに、エアバッグ11を適宜の固定箇所に固定する部分である被固定部15を有している。前記左右2個のエア室12はそれぞれに設けられた折り返し部13で折り返され、厚み方向で重なるとともに折り返し部13によって相互間でエアが流通する複数のエア分室12a,12bが形成される。折り返し部13より遊端側となるエア分室12bの他端部、すなわち、エアバッグ11の横長長方形状の両端部側となる部分であって、エア分室12bの外側となる部分には、前記被固定部15に重ねられる重合部16が形成される。
【0032】
前記第1シート31の長手方向の中間部に設けられた前記被固定部15は、エアバッグ11をマット型のマッサージ機21に固定する部分であるとともに、重合部16の固定部を兼ねている。これら被固定部15と重合部16は、エアバッグ11の長手方向に配設され、それぞれ、厚み方向に貫通する貫通孔15a,16aが幅方向に2個並べて形成されている。これらの貫通孔15a,16aは、被固定部15にエアバッグ11の両端部にある2個の重合部16を重ねて三重にしたときに、図1に仮想線で示したように、ボルト41を通すためのものである。図1中、42は被固定部15と重合部16を押さえる押さえ板である。
【0033】
そして、左右2個のエア室12における左右方向の中間位置には、図5(b)に谷折りを示す一点鎖線で示したように、前記折り返し部13が形成される。この折り返し部13の長手方向の両端部、すなわち前記折り返し部13はエアバッグ11の幅方向(長手方向と直交する方向)に延びており、折り返し部13の長手方向の両端部には、折り返されたときに角の突出を抑制する凹所18が形成される。この凹所18は、平面視略半円形状に形成されている。凹所18の形成により、エア室12における折り返し部13部分はその他の部分に比して幅狭になるものの、凹所18で挟まれるとともにシール部33の形成されていない部分によってエアの十分な流通は可能である。
【0034】
また、左右2個のエア室12における前記折り返し部13で折り返した時に厚み方向下に位置するエア分室12a、すなわち、各エア室12a,12bにおける折り返し部13よりも被固定部15側のエア分室12aには、エア室12にエアを給排気する給排気口19が設けられている。この給排気口19には、側面視L字型をなす接続口部材35が設けられ、エアホース36(図6参照)が接続できるようにされている。
【0035】
このような構造のエアバッグ11は、図5に示したような展開状態から、長手方向の両側部分を折り返し部13で被固定部15方向に折り返して、エア分室12bの遊端部側にある2個の重合部16を中間の被固定部15に重ね合わせることで、図1、図2に示したように2個のエア分室12a,12bが厚み方向に重なった状態となる。
【0036】
つぎに、このようなエアバッグ11の使用例を、図4に示した前記マッサージ機21における首肩マッサージ装置22を用いて説明する。
【0037】
首肩マッサージでは、仰向けに寝た使用者Xに対して左右から圧迫や弛緩を繰り返す。このため、首肩マッサージ装置22は、図6、図7に示したように、最も下の起こしエアバッグ51と、この起こしエアバッグ51の上の傾動板52と、この傾動板52の上に固定される前記エアバッグ11を有する。
【0038】
前記起こしエアバッグ51は、平面視長方形状をなし、内部に一つのエア室51aを有する。そして、エア室51aの下面には、2個の給排気口51bが設けられ、これらの給排気口51bに、側面視L字型をなす接続口部材53が設けられている。図6中、54はエアホースである。
【0039】
前記傾動板52は、前後方向の長さが前記起こしエアバッグ51の幅方向(長手方向と直交する方向)の長さよりも短い長方形状に形成された、剛性を有する板材であり、前記起こしエアバッグ51の幅方向(長手方向と直交する方向)における一方の辺に対応する部分52aが枢着されている。そしてこの枢着は、ばね55によって倒れる方向に付勢するようになされる。
【0040】
この構成により、起こしエアバッグ51が膨張すると、傾動板52は枢着した部分とは反対側を起こすように付勢力に抗して回動する。
【0041】
前記エアバッグ11は、前記傾動板52の左右方向の中間位置に設けられた貫通孔56を用いて、被固定部15と重合部16部分で傾動板52に固定される。このとき、エアバッグ11の接続口部材35は、傾動板52に形成された窓部52aを通して下に突出し、エアホース36は傾動板52の下に位置することになる。
【0042】
また、エアバッグ11の被固定部15及び重合部16を中心とする部分には、柔軟なスポンジ状のクッション部材37を巻きつけて、固定に用いた前記ボルト41の使用者Xに対する当たりを緩和するようにしている。
【0043】
このように構成された首肩マッサージ装置22では、首肩マッサージをしない時には、図7に実線で示したように起こしエアバッグ51とエアバッグ11が偏平になるとともに、傾動板52も付勢力によって倒れ、接続口部材36,53も使用者X側に圧力を掛けることなく、安眠を確保できる。
【0044】
首肩マッサージをする時には、起こしエアバッグ51を膨張させると、傾動板52が付勢力に抗して傾いてエアバッグ11を持ち上げ、使用者Xの肩から上の部分を押さえる。そして、図7に仮想線で示したようにこのエアバッグ11のエア分室12a,12bが膨張すると、首筋が左または右、あるいは双方から圧迫され、エア室12が収縮すると首筋に対する圧迫が緩む。
【0045】
エア室12は、2個のエア分室12a,12bを有し、しかもこれらが厚み方向に重なり合っているので、膨張時の十分な高さが得られ、所望の圧迫や弛緩が行えるとともに、首肩マッサージ装置22の両端部に折り返し部13がそれぞれ位置することから、エア分室12a,12bの膨張方向が一定の範囲で規制される。図8に示すような比較例のエアバッグの場合、エア分室102,102はそれぞれ連結部材103によって連結されているものの、エア分室102,102の遊端部側は規制されていない(折り返し部13で連結されていない状態)であることから、エア分室102,102が膨張した際には、それぞれの押圧力(エア分室12a,12b内の気圧)によって互いに反発した状態で膨張する。この際、断面視円弧状に膨張したエア分室102,102は互いの押圧力や、身体の荷重によって圧迫されるため、重合位置にズレが生じることがある。しかし、本願発明にかかるエアバッグ11では、エア分室12a,12bは折り返し部13によって互いに連結されており、それぞれの押圧力(エア分室12a,12b内の気圧)によって互いに反発した状態で膨張し、身体の荷重によって圧迫された際であっても、重合位置のズレを抑制することができ、被施療部位に対するエアバッグ11の圧迫力を高めることができる。
【0046】
また、エアバッグ11のエア室12は、左右交互に膨張させることも、同時に膨張させることもできるので、所望のマッサージができる。この際にも、エア分室12a,12bの膨張方向が一定の範囲で規制されることから、使用者の意に反して急激に膨張することを抑制できるので、マッサージ動作中に必要以上に身体が傾くことのない、好適なマッサージを行うことができる。
【0047】
このエアバッグ11を用いたマッサージの例について付言すれば、たとえば、図4に示したマッサージ機21においては、首肩マッサージ装置22で使用者Xの首から上の部分を押さえて首筋を適宜圧迫した状態で、背中に対応する部分に配設されたエアバッグからなる背中マッサージ装置23を駆動してそのエアバッグを膨張させると、胸をそらせるマッサージができる。
【0048】
また、首肩マッサージ装置22で使用者Xの首から上の部分を押さえて首筋を適宜圧迫した状態で、あるいは首肩マッサージ装置22の動作と同時にではなく、エアバッグ11からなる腰マッサージ装置24を駆動してそのエアバッグ11の左右のエア室12を別々に膨張させると、使用者Xの身体を左右にねじるマッサージを実現できる。
【0049】
エアバッグ11からなる脚マッサージ装置25や腕マッサージ装置26においても同様である。
【0050】
なお、前記エアバッグ11の上に更に別のエアバッグなどの施療子(図示せず)を備えて、所望のマッサージが行えるようにしてもよい。
【0051】
このように使用されるエアバッグによる効果について述べると、まず、厚み方向で重なる複数のエア分室12a,12bが折り返し部13の形成によって得られるので、圧迫力を高めるエアバッグ11の製造が容易である。エア分室12a,12bの形成に別の部材が不要で、加工も容易であるので、製造コストを抑えることができる。また、被固定部15や重合部16の形状を変更する際についても、シール部33の形状や、第1シート31、第2シート32の寸法、形状を変更することで容易に対応でき、身体の被施療部位それぞれに対応させたエアバッグ11を容易に製造することができる。
【0052】
加工性の良さは、左右2個のエア室12間に被固定部15を有し、左右方向の両端部に重合部16を有する構成によっても実現される。すなわち、折り返し部13で折り返された形状の保持が、重ね合わせた部分の被固定部15と重合部16の保持だけで行えるので、別途に手段を講じる必要はなく、この点でも製造コストを抑えることができる。
【0053】
また、複数のエア分室12a,12bは折り返し部13において連通しており、折り返し部13がエア分室12a,12bの折り返し部13側の部分の相互間の位置関係を規制する。その上、エア分室12a,12bで構成される左右一対のエア室12間には被固定部15が形成され、エアバッグ11の被固定部15側の位置が固定される。このため、エア分室12a,12bが膨張する時には、折り返し部側での膨張が一定度規制されることになり、エアバッグ11の左右のエア室における膨張は、被固定部15を中心に円弧を描くように起こるのではなく、エア室12の厚み方向に比較的直線に近い膨張の仕方をする。
【0054】
このように前記折り返し部13と被固定部15とによってエア室12の膨張方向が規制される結果、エアバッグ11が肩甲骨や尾骨近傍の部分にもフィットして、つまむのとは異なった適切なマッサージができる。
【0055】
しかも、比較的直線的な膨張の仕方をするので、一部だけが使用者の意に反して急激に膨張するようなことを回避できる。このため、例えば被施療部位の急激な圧迫や持ち上がりなどによって、良好なマッサージが阻害されてしまうことを防止できる。
【0056】
しかも、比較例としてあげた図8のエアバッグ101のように、厚み方向に重なる複数のエア室102間を通気可能にする連結部材103を設ける必要はない。このため、連結部材103が、不測に被施療部位を局所的に圧迫して違和感を与えるなどの不都合を回避できる。
【0057】
このような効果は、前記のようにエアバッグ11の接続口部材35が、厚み方向下のエア分室12aに設けられることや、エアバッグ11を固定するボルト41部分が前記クッション部材37によって覆われていることで、より確実なものとなる。このため、マッサージをしない時においては、使用者Xを圧迫したり、使用者Xに違和感を与えたりするようなこともなく、快適な使用を確保できる。
【0058】
また、折り返し部13の長手方向の両端部には凹所18を有するので、エア室12が膨脹した時でも、エアバッグ11の折り返し部13の両端部が尖らず、被施療部位に対する当たりをやわらかくすることができる。すなわち、エアバッグ11を2つ折りして膨張させると、比較例として図9に示したように折り返し部分105の両端の角106が外側に張り出し、尖ることになる。そして、その尖った部分は、エアが充填されおり、エアバッグの材質が柔軟なものであっても、比較的硬い。このため、エアバッグの配置や形状等によっては被施療部位に当たって、良好なマッサージの妨げとなることが考えられるが、前記のように凹所18が設けられると、エアバッグ11が膨張しても図3に示したように突出が少なく、しかも凹所18は平面視略半円形状に形成されているので、当たりがやわらかくなる。この結果、エアバッグ11の配置や形状等にかかわらず良好なマッサージを期待できる。
【0059】
以下、その他の例について説明する。この説明において前記の構成と同一または同等の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0060】
前記の説明では、エアバッグ11として2個のエア分室12a,12bを有する例を示したが、例えば図10に示したように、3個のエア分室12a,12b,12cを備えるものであってもよい。
【0061】
この場合には、エア室12を有する部分に、前記被固定部15側から順に山折り線からなる第1折り返し部13aと、谷折り線からなる第2折り返し部13bを有する。エア室12にエアを給排気する給排気口19は、厚み方向の最も下のエア分室12cに設けられる。
【0062】
このような3個のエア分室12a,12b,12cを有するエアバッグ11では、長手方向の両端部が前記被固定部15から離れることになるが、前記第2折り返し部13bに、板状の拘束板38を備えて、前記被固定部15を固定するボルト41によって固定することで、折り返した状態を保持できる。前記拘束板38は、長手方向の両側部に、エアバッグ11の第2折り返し部13bを差し込み可能なスリット38aを有する。
【0063】
また、前記の説明では、折り返し部13の両端部の凹所18を平面視略半円形状に形成した例を示したが、凹所18は、膨張時に外側に突出すると考えられる角部分が面取りされるような形状であればよく、例えば図11に示したように、複数のエア分室12a,12bにおける幅方向の長さが異なる場合には、その幅の違いに応じて段違いに形成することで前記凹所18が自動的に得られる。
【0064】
図11(a)は、左右に延びる長手方向外側のエア分室12bの方が、長手方向内側のエア分室12aよりも幅方向に長いエアバッグ11を示している。このような構成のエアバッグ11では、厚み方向下のエア分室12aの方が上のエア分室12bよりも幅狭であるので、被施療部位を圧迫するときには、上のエア分室12bが幅方向において傾くことを許容する。このため、被施療部位の角度や傾きに柔軟な対応したマッサージができるという効果も得られる。
【0065】
図11(b)は、長手方向内側のエア分室12aの方が長手方向外側のエア分室12bよりも幅方向に長いエアバッグ11を示している。このような構成のエアバッグ11では、厚み方向下のエア分室12aの方が上のエア分室12bよりも幅広であるので、被施療部位のなかでも上のエア分室12bの上に位置する部位に対して集中してより強い圧迫力を加えることができるという効果も得られる。
【0066】
なお、これらのエアバッグ11は、各エア分室12a,12bの幅方向の中心を一致させた場合の例であって、幅方向の中心をずらす場合には、図11に仮想線で示したように、折り返し部13の長手方向の一端部の凹所18が前記のように平面視略半円弧状に形成され、内側に入り込むように切り欠かれた形状のものであってもよい。
【0067】
さらに、前記の説明では、被固定部15に重合部16を重ね合わせて折り返し状態を保持する構成を示したが、重合部16を省略して膨張時のエアバッグ11の形態を特異なものとすることもできる。
【0068】
例えば図12(a)に示したように、左右に延びる長手外側のエア分室12bの長手方向の長さを、長手方向内側のエア分室12aの長手方向の長さよりも短く設定して、長手方向外側のエア分室12bを長手方向内側のエア分室12aの一部に重合させることができる。この場合、折り返し部13での折り返し状態の保持は、外周縁部でのシール(シール部39)によって行える。
【0069】
このエアバッグ11では、膨張時に長手方向の両側部分の膨らみを大きくすることができる。つまり膨張時の形態を長手方向の中間部が一番盛り上がる形ではなく、長手方向の端部の膨らみを大きくすることができる。このため、例えば被施療部位を深く掴むようなマッサージに好適である。
【0070】
図12(b)に示したように、長手方向外側のエア分室12bの形状を平面視略三角形状に設定して、この長手方向外側のエア分室12bが長手方向内側のエア分室12aの隅部分に重合するようにすることができる。この場合も折り返し部13での折り返し状態の保持は、外周縁部でのシール(シール部39)で行える。
【0071】
このエアバッグ11では、膨張時に長手方向の両側の角部分の膨らみを大きくすることができる。つまり、膨張時の形態を長手方向の中間部が一番盛り上がる形ではなく、長手方向の端部の角の膨らみを大きくすることができる。このため、例えば頭部を支える首部などのように比較的不安定な被施療部位のマッサージ時における被施療部位とその近傍の載置状態の安定化を図ることができる。
【0072】
これら図11、図12に示したようにエア室12(各エア分室12a,12b)の大きさや形状に工夫をすれば、特異な膨張形態を得ることが簡素な構成によってでき、その特異な膨張形態に基づく所望のマッサージ作用や支持作用等を被施療部位に応じて適宜享受できるという効果も得られる。なお、エア分室が三段以上に重合してもよいことは前記と同様である。
【0073】
この発明の構成と前記一形態の構成との対応において、
この発明の折り返し部は、前記折り返し部13、前記第1折り返し部13a、第2折り返し部13bに対応するも、
この発明は前記構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することもできる。
【0074】
たとえば、折り返し部は、長手方向に対して斜めであってもよい。また、先の例では左右一対のエア室を有するエアバッグを示したが、左右に一対の膨張・収縮部分を必要とする場合であっても左右それぞれ別のエアバッグで構成すること可能である。
【符号の説明】
【0075】
11…マッサージ用エアバッグ
12…エア室
12a,12b,12c…エア分室
13…折り返し部
13a…第1折り返し部
13b…第2折り返し部
15…被固定部
16…重合部
18…凹所
19…給排気口
21…マッサージ機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアが出入りするエア室を内部に有するマッサージ用エアバッグであって、
前記エア室が左右一対に設けられ、
これらエア室間に、前記エア室を左右に分割するとともに、当該マッサージ用エアバッグをマッサージ機の固定箇所に固定する被固定部が設けられ、
前記エア室の少なくとも一部には、前記エア室を複数のエア分室に区分するとともに、前記複数のエア分室間で相互にエアが流通する折り返し部が形成され、
該折り返し部での折り返しによって前記複数のエア分室を厚み方向で重合させたことを特徴とする
マッサージ用エアバッグ。
【請求項2】
前記折り返し部よりも遊端側に位置するエア分室の遊端部に、前記被固定部に重ねられる重合部が設けられた
請求項1に記載のマッサージ用エアバッグ。
【請求項3】
前記折り返し部の長手方向の両端部に、折り返されたときに角の突出を抑制する凹所が形成された
請求項1または請求項2に記載のマッサージ用エアバッグ。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載のマッサージ用エアバッグを備えた
マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−45131(P2012−45131A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189072(P2010−189072)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000136491)株式会社フジ医療器 (137)
【Fターム(参考)】