説明

マッサージ装置

【課題】 様々の形状を有する各施療者の身体部位に対し、適切に擦りマッサージを行うことができるマッサージ装置を提供する。
【解決手段】 マッサージ装置1は、被施療者の身体部位を挟むように該身体部位の両側方に配置された一対の施療板10,10と、施療板10を身体部位の側面に沿う方向へ往復動させる動力伝達機構13と、施療板10の外側方に配置されて一対の施療板10の離隔距離を変更させるべく給排気によって膨縮する空気袋11とを有する第1施療ユニット3を備え、空気袋11が膨張している状態で、施療板10が身体部位の側面に沿って往復動可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば被施療者の脚部や腕部などの身体部位に対し、両側方から擦りマッサージを施すことが可能なマッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被施療者の下腿などの身体部位に対し、擦るようにしてマッサージするマッサージ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このマッサージ装置は、所定の間隔をおいて設けられた一対のマッサージ部材を備え、間に身体部位を挟持させた状態で前記一対のマッサージ部材を往復動作させることにより、挟持された身体部位を擦るようにマッサージしようとするものである。
【特許文献1】特開2005−349123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記特許文献1に開示されたマッサージ機は、様々の形状を有する各被施療者の身体部位に対し、必ずしも適切に擦りマッサージが行える構成にはなってない。これについて詳述すると、例えば脹脛の形状は各被施療者で互いに異なっており、左右方向の幅寸法は下腿の長手方向に沿って拡縮している。そして、前記一対のマッサージ部材は、擦りマッサージ時に下腿の長手方向に沿って往復動することにより、対向する脹脛の位置が随時変化することとなる。
【0004】
しかしながら、特許文献1には、一対のマッサージ部材を接近及び離反するように往復動させることによって揉みマッサージを行うための手段と、一対のマッサージ部材を下腿の長手方向に沿って往復動させることにより擦りマッサージを行うための手段が開示されているが、これらの手段は互いに選択的にしか実行できない。従って、擦りマッサージの間に一対のマッサージ部材を身体部位の形状変化(特に、左右方向の寸法の変化)に応じて近接及び離反させることはできないため、脹脛のような身体部位を略等しい押圧力によって適切に擦りマッサージすることはできない。
【0005】
そこで本発明は、様々の形状を有する各施療者の身体部位に対し、適切に擦りマッサージを行うことができるマッサージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述したような事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係るマッサージ装置は、被施療者の身体部位を挟むように該身体部位の両側方に配置された一対の施療板と、該施療板を前記身体部位の側面に沿う方向へ往復動させる擦り駆動部と、前記施療板の外側方に配置されて前記一対の施療板の離隔距離を変更させるべく給排気によって膨縮する空気袋とを有する擦りユニットを備え、前記空気袋が膨張している状態で、前記施療板が前記身体部位の側面に沿って往復動可能に構成されている。
【0007】
このような構成とすることにより、擦りマッサージ時に施療板が対向する身体部位の形状が変化すると、膨張状態の空気袋は施療板を介して身体部位から押圧力を受けて変形することとなる。従って、身体部位と空気袋とに挟まれた施療板は、空気袋の変形に応じて
即ち、身体部位の形状変化に応じて)その位置が変更され、適切な擦りマッサージを行うことができる。
【0008】
また、前記施療板と前記擦り駆動部とは可撓性を有するヒンジ部材により接続されていてもよい。このような構成とすることにより、一対の施療板は、互いの離隔距離が変更可能であるだけでなく相対的な向きも変更可能となるため、身体部位の形状変化に応じてより適切に擦りマッサージを行うことが可能となる。
【0009】
また、前記空気袋は、前記施療板の往復動の間に膨縮可能であってもよい。このような構成とすることにより、被施療者の好みに応じて擦りマッサージの途中であっても施療板による身体部位への押圧力を変更することができる。
【0010】
また、前記一対の施療板における対向面は起毛されていてもよい。このような構成とすることにより、施療板と身体部位との間の摩擦抵抗を低減することができる。
【0011】
また、前記空気袋は、前記施療板の往復距離に対応する長さ寸法に構成されていてもよい。このような構成とすることにより、擦りマッサージ中に施療板が何れの位置にあっても、空気袋によってこの施療板の位置を変更することができる。
【0012】
また、前記空気袋は、前記施療板の往復方向に沿って複数設けられていてもよい。このような構成とすることにより、擦りマッサージの対象とする身体部位の形状に応じ、各部に対応する空気袋の膨張度合いを調整することができる。例えば、下腿を擦りマッサージする場合には、左右方向の寸法が比較的小さい足首側の部位に対応する空気袋は大きく膨張させる一方、左右方向寸法が比較的大きい膝側の部位に対応する空気袋は小さく膨張させることができる。これにより、身体部位の形状変化に応じたより適切な擦りマッサージを実現することができる。
【0013】
また、前記身体部位の背部を施療する背面施療ユニットを更に備え、該背面施療ユニットは、前記擦りユニットと連動して動作するよう構成されていてもよい。このような構成とすることにより、身体部位に対して上述したような適切な擦りマッサージを実行しつつ、同時に該身体部位の背部をも施療することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、様々の形状を有する各施療者の身体部位に対し、適切に擦りマッサージを行うことができるマッサージ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係るマッサージ装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0016】
図1は、マッサージ装置1の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1に示すマッサージ装置1の平面図である。また、図8は、マッサージ装置1の機能ブロック図である。図1及び図2に示すマッサージ装置1は、主として被施療者の脚部又は腕部等の身体部位をマッサージするためのものであり、使用時には一部にカバーが被せられるが、このカバーは省略して図示している。また、このマッサージ装置1は筐体に収容された状態で使用されることを想定しているが、図示される構成の視認性の観点から、この筐体も図示を省略している。
【0017】
図1及び図2に示すように、マッサージ装置1は横長の長方形状のベースプレート2を備え、その上部に、例えば右脚部を施療対象とする右側マッサージ装置1aと、左脚部を施療対象とする左側マッサージ装置1bとが設けられている。これらのマッサージ装置1a,1bは、被施療者の身体部位の側部に擦りマッサージをする擦りマッサージユニット(以下、「第1施療ユニット」と称する)3と、身体部位の背部を押圧マッサージする背面マッサージユニット(以下、「第2施療ユニット」と称する)4とを備えている。そして、これらの施療ユニット3,4は、マッサージ装置1に搭載された制御部60(図8参照)に接続された操作装置63を被施療者が操作することにより、制御部60から出力される制御信号によってその動作が制御される。
【0018】
また、両マッサージ装置1a,1bは、共通の駆動源として、制御部60により動作制御される1つのモータ5を備えており、このモータ5はベースプレート2の長手方向(即ち、左右方向)の中央部に配設されている。後に詳述するが、このモータ5によって第1施療ユニット3及び第2施療ユニット4が共に駆動される。
【0019】
なお、右側マッサージ装置1aと左側マッサージ装置1bとは、互いに略左右対称な構成を備えている。従って、図面において右側マッサージ装置1aと左側マッサージ装置1bとで対応する構成については同じ符号を付し、以下の記載においては、主として右側マッサージ装置1aについての構成を説明する。そして、左側マッサージ装置1bについては必要に応じて言及することとする。
【0020】
図1及び図2に示すように、右側マッサージ装置1aが備える擦りマッサージ用の第1施療ユニット3は、左右に対向配置された側面施療板10,10と、該側面施療板10の外側方に配設された複数の空気袋11とを備えており、身体部位の背部をマッサージするための第2施療ユニット4は、前記背部に当接される背面施療板12を備えている。そして、図1に示すように、モータ5の回転動力を伝達してこれらの側面施療板10及び背面施療板12を動作させるための動力伝達機構(擦り駆動部)13が、ベースプレート2上に配設されている。
【0021】
[動力伝達機構]
図3は、右側マッサージ装置1aが備える動力伝達機構13の構成を示す斜視図である。なお、既に述べたように左側マッサージ装置1bも同様の構成の動力伝達機構13を備えているが、図3においては図示を省略している。
【0022】
図3に示すように動力伝達機構13は、モータ5の出力軸(図示せず)の回転方向を変更するギヤケース20と、モータ5の回転が伝達される第1伝達シャフト21及び第2伝達シャフト22とを備えている。第1伝達シャフト21及び第2伝達シャフト22は、何れもベースプレート2(図1参照)と略同長であり、左右方向に軸芯を一致させてベースプレート2の上方に配設されている。
【0023】
ギヤケース20は、ベースプレート2(図1参照)における左右方向の略中央位置にて、第1伝達シャフト21及び第2伝達シャフト22に貫通された状態で固定されている。このギヤケース20の上部にはモータ5が支持されており、該モータ5は、下方へ向けた出力軸(図示せず)をギヤケース20内へ挿通させた状態でギヤケース20に固定されている。
【0024】
ギヤケース20の下部には2つのウォームギヤ(図示せず)が収容されており、これらのウォームギヤは、第1伝達シャフト21と第2伝達シャフト22に接続されている。そして、こられのウォームギヤがモータ5の出力軸に取り付けられたウォームホイール(図示せず)と噛合している。従って、モータ5の出力軸が回転することにより、ウォームホイール及びウォームギヤを介してその回転が伝達され、第1伝達シャフト21及び第2伝達シャフト22が夫々の軸芯回りに回転する。
【0025】
また、第1伝達シャフト21を挟んで第2伝達シャフト22の反対側には、これらのシャフト21,22と平行に左右方向へ延びる第3支持シャフト23が配設されている。この第3支持シャフト23もベースプレート2(図1参照)と略同長であり、左右方向の中央部分でギヤケース20を貫通し、該ギヤケース20により支持されている。従って、シャフト21〜23は、前後方向の中央に第1伝達シャフト21が位置し、その後方に第2伝達シャフト22、前方に第3支持シャフト23が位置している。
【0026】
ギヤケース20の右側方には、シャフト21〜23を支持する第1ホルダ26が、ベースプレート2の上面に固定された状態で設けられている。この第1ホルダ26は、3つのシャフト支持部26a〜26cと、平面視で前後方向に長寸を成す略矩形状の接続基部26dとを有している。接続基部26dは、ベースプレート2の上面にボルト等の締結手段によって固定され、この接続基部26dの上部から上記シャフト支持部26a〜26cが上方に突設されている。
【0027】
これらのうちシャフト支持部26aは第1伝達シャフト21を支持するものであり、左右方向に開口する貫通孔に挿通された第1伝達シャフト21を、ベアリング27aを介して回転自在に支持している。シャフト支持部26bは第2伝達シャフト22を支持するものであり、前記シャフト支持部26aの後方に配置され、左右方向へ開口する貫通孔に挿通された第2伝達シャフト22を、ベアリング27bを介して回転自在に支持している。また、シャフト支持部26cは第3支持シャフト23を支持するものであり、シャフト支持部26aの前方に配設され、左右方向へ開口する貫通孔に挿通された第3支持シャフト23を支持している。
【0028】
上記第1ホルダ26より更に右側方には、該第1ホルダ26から所定間隔を空けて第2ホルダ28が、ベースプレート2の上面に固定された状態で設けられている。この第2ホルダ28は第1ホルダ26と同様の構成を成しているため詳細な説明は省略するが、第1ホルダ26と同様に、シャフト21〜23を支持するシャフト支持部28a〜28cと、ベースプレート2の上部に固定されてこれらシャフト支持部28a〜28cが突設される接続基部28dとを有している。そして、シャフト支持部28aはベアリング29aを介して第1伝達シャフト21を回転自在に支持し、シャフト支持部28bはベアリング29bを介して第2伝達シャフト22を回転自在に支持し、シャフト支持部28cは貫通孔に挿通された第3支持シャフト23を支持している。
【0029】
更に、第2ホルダ26の右側方には、該第2ホルダ26から所定間隔を空けて第3ホルダ30が、ベースプレート2の上面に固定された状態で設けられている。この第3ホルダ30は、第1伝達シャフト21及び第3支持シャフト23のみを支持するものであり、これらのシャフト21,23を支持するシャフト支持部30a,30cと、ベースプレート2の上部に固定されてこれらシャフト支持部30a,30cが突設される接続基部30dとを有している。シャフト支持部30aは、左右方向に開口する貫通孔に挿通された第1伝達シャフト21の右端部を、ベアリング31aを介して回転自在に支持している。また、シャフト支持部30cは、左右方向に開口する貫通孔に挿通された第3支持シャフト23の右端部を支持している。
【0030】
なお、上述したもののうち第3支持シャフト23を支持するシャフト支持部26c,28c,30cは、第3支持シャフト23を回転自在に支持する必要はなく、これを固定的に支持するものであってもよい。
【0031】
一方、第2伝達シャフト22には、第2施療ユニット4が有する背面施療板12(図1参照)を動作させる2つの偏心カム35が設けられており、該偏心カム35は、上述した第1ホルダ26と第2ホルダ28との間にて所定間隔を空けて配設されている。この偏心カム35は厚みのある円盤形状を成しており、その外形の幾何学的な円の中心から離れた位置に回転軸心が設けられている。そして、この回転軸心と第2伝達シャフト22の回転軸心とが一致するようにして、第2伝達シャフト22と一体回転可能なように取り付けられており、更に、2つの偏心カム35,35は回転軸心に対する位相が互いに一致している。また、これら2つの偏心カム35の外周部には円環状のベアリング35aが外嵌されており、詳しくは図6及び図7を用いて後述するが、偏心カム35はベアリング35aを介して背面施療板12に接触するようになっている。
【0032】
また、第1伝達シャフト21には、第1施療ユニット3が有する側面施療板10(図1参照)を動作させる偏心カム36が設けられている。この偏心カム36は、第1施療ユニット3が有する2つの側面施療板10,10に対応して2つ設けられており、第1ホルダ26及び第2ホルダ28を挟む両側方、より詳しくは、第1ホルダ26とギヤケース20との間、及び第2ホルダ28と第3ホルダ30との間にそれぞれ配設されている。
【0033】
この偏心カム36は上記偏心カム35と同様の構成を有しており、厚みのある円盤形状を成し、その外形の幾何学的な円の中心から離れた位置に回転軸心が設けられている。そして、この回転軸心と第1伝達シャフト21の回転軸心とが一致するようにして、第1伝達シャフト21と一体回転可能なように取り付けられており、更に、2つの偏心カム36,36は回転軸心に対する位相が互いに180度だけ異なっている。また、これら2つの偏心カム36の外周部には円環状のベアリング36aが外嵌されている。
【0034】
このような構成を有する動力伝達機構13は、モータ5が駆動して出力軸が回転すると、これに連動して第1伝達シャフト21及び第2伝達シャフト22が回転し、偏心カム35,36が回転する。そして、偏心カム35の回転により第1施療ユニット3が動作され、偏心カム36の回転により第2施療ユニット4が動作される。なお、図8に示すように、モータ5は駆動回路61を介して制御部60に接続されており、制御部60からの制御信号に基づいて駆動回路61から出力される電気信号により、モータ5はその動作が制御されるようになっている。
【0035】
[第1施療ユニット]
図4は、第1施療ユニット3の一部の構成を示す側面図であり、右側マッサージ装置1aが有する左側の側面施療板10とこれに対応する構成とを示している。図4に示すように、第1施療ユニット3は、第1伝達シャフト21及び第3支持シャフト23が挿通されるコネクティングプレート40を備えている。該コネクティングプレート40は、側面視で前後方向に長寸の略長方形状を成しており、円形の開口を有するカム受孔40aと、該カム受孔40aの前側に位置して長円形状の開口を有するシャフト受孔40bとが形成されている。そして、カム受孔40aには、上述した第1伝達シャフト21に設けられた偏心カム36がベアリング36aを介して内嵌している。また、シャフト受孔40bには第3支持シャフト23が挿通されており、第3支持シャフト23とシャフト受孔40bとは、該シャフト受孔40bの長手方向に沿って相対的に移動可能になっている。
【0036】
コネクティングプレート40の上方には、図1にも示した側面施療板10が所定間隔を空けて配設されており、両者は適度な可撓性を有する合成樹脂製のヒンジプレート41を介して接続されている。より詳しくは、図4に示すように側面施療板10は、側面視で前後方向に若干長く角が丸められた略長方形状を成しており、一対を成す他方の側面施療板10との対向面10aが起毛されている。また、側面施療板10の下部には、前後方向に長寸の矩形状を成すジョイントプレート42が、側面施療板10の下部端辺に沿って配設されている。このジョイントプレート42はコネクティングプレート40よりも前後方向の寸法が長くなっている。
【0037】
ヒンジプレート41は、その下部の前後方向寸法がコネクティングプレート40と略同長である一方、その上部の前後方向寸法はジョイントプレート42と略同長になっている。そして、ヒンジプレート41は、その下部がコネクティングプレート40にボルト等の締結手段により接続され、その上部が側面施療板10の下部とジョイントプレート42とによって挟持された状態で、ボルト等の締結手段により接続されている。従って、側面施療板10は、コネクティングプレート40に対して左右方向へ可動であると共に、上下方向の軸回りにねじるようにも可動となっている。
【0038】
次に、このような第1施療ユニット3の動作について説明する。モータ5が駆動して第1伝達シャフト21が回転すると、偏心カム36が第1伝達シャフト21の回転軸心を中心として公転する。これに伴い、コネクティングプレート40のカム受孔40aは、偏心カム36の公転軌道に沿うように円運動することとなる。一方、コネクティングプレート40のシャフト受孔40bには第3支持シャフト23が挿通されているため、カム受孔40aの円運動にも拘らずコネクティングプレート40自体の円運動は規制される。その結果、第1伝達シャフト21が一回転する間にコネクティングプレート40は、前後方向に所定距離だけ一往復すると共に前後に傾動するという周回動作を行う。
【0039】
コネクティングプレート40のこのような動作に伴い、側面施療板10も前後方向に所定距離だけ一往復する間に前後に傾動するという周回動作を行う。このとき、図4に示すように側面施療板10の略中央に位置する定点3aは、前後方向に長寸の略楕円形状の軌道3bに沿って周回し、側面施療板10の上端後部に位置する定点3cは、前記軌道3bより長寸の軌道3dに沿って周回することとなる。
【0040】
ところで、既に述べたように第1施療ユニット3が備える左右の偏心カム36は、互いに180度だけ位相が異なっている。従って、周回中の左右の側面施療板10,10も180度だけ位相が異なるために互いに反対方向へ移動し、一方の側面施療板10が前方へ移動しているときに他方の側面施療板10は後方へ移動することとなる。
【0041】
このような第1施療ユニット3は、図1に示すように対向する一対の側面施療板10,10間に被施療者の身体部位が位置する状態で動作される。すると、上述したように左右の側面施療板10は前後方向に一定の軌道に沿って周回移動し、側面施療板10は身体部位の側面に摺接し、この身体部位は両側部が擦りマッサージされることとなる。また、一対の側面施療板10の対向面10a(即ち、身体部位に接触する面)は起毛されているため、身体部位と側面施療板10の対向面10aとが摺接した際の摩擦抵抗が低減され、良好な擦りマッサージを行うことができる。
【0042】
なお、側面施療板10の周回軌道は、偏心カム36の径、シャフト受孔40bの長手方向の傾斜角度などによって決定されるものである。本実施の形態ではシャフト受孔40bが水平方向に延びる長円ではなく、水平方向に対して所定の傾斜角度を有しているため、側面施療板10は、単純な周回軌道ではなく特有の軌道に沿って移動する。また、本実施の形態では、このようにシャフト受孔40bを傾斜させているが、その長手方向を水平に設定してもよいし、更に大きく傾斜させてもよい。偏心カム36の径についても、要望される側面施療板10の往復距離に応じて適宜設定すればよい。
【0043】
図5は、第1施療ユニット3が備える空気袋11の構成を示す斜視図である。図5に示すように、空気袋11は、左右方向に扁平であって側面視で略矩形状を成している。また、空気袋11の下部には、給排気装置(図8参照)62との間でエアが給排気される管状の給排気口11aが、下方へ向けて開口するようにして設けられ、給排気装置62との間でエアホースを介して給排気されることにより、空気袋11は膨張及び収縮される。また、該給排気口11aの前後両隣にはフランジ11bが設けられており、空気袋11は、マッサージ装置1を収容する図示しない筐体又はベースプレート2(図1参照)に対し、フランジ11bを介して支持されている。なお、図8に示すように、給排気装置62は制御部60に接続されており、該制御部60からの制御信号に基づいてその動作が制御されるようになっている。
【0044】
このような空気袋11は、図1及び図2に示すように側面施療板10の外側方(被施療者の身体部位が載置される側の反対側)に複数配置されている。具体的には、右側の側面施療板10の右側方には、所定距離を空けて筐体の壁面1c(図1及び図2にて二点鎖線で示す)が位置している。そして、右側の施療板10と筐体の壁面1cとの間に、左右方向に重ねられた3つの空気袋11から成る空気袋ユニット45が、相対的に前側と後側とにそれぞれ配設されており、それぞれ側面施療板10を右側方から支持している。
【0045】
また、左側の側面施療板10の左側方にも、左右方向に重ねられた2つの空気袋11から成る空気袋ユニット46が、相対的に前側と後側とにそれぞれ配設されている。図2に示すように、右側マッサージ装置1aが有する左前の空気袋ユニット46は、左側マッサージ装置1bが有する右前の空気袋ユニット46と、背中合わせに接触するように近接配置されている。一方、右側マッサージ装置1aが有する左後の空気袋ユニット46は、左側マッサージ装置1bが有する右後の空気袋ユニット46と互いに離隔して配設されており、両者間のスペースにモータ5が配設されている。そしてこれらの空気袋ユニット46は、左側の側面施療板10を左側方から支持している。
【0046】
このような構成により、右側マッサージ装置1aの空気袋11へ給気されると、右側の空気袋ユニット45と左側の空気袋ユニット46とが膨張する。右側の空気袋ユニット45は外側面が筐体の壁面1cに支持されるため、側面施療板10側に膨張することとなって該側面施療板10を左側へ押し出す。一方、左側の空気袋ユニット46は、左側マッサージ装置1bの空気袋ユニット46によって外壁面が支持されるため、やはり側面施療板10側に膨張することとなり、該施療板10を右側へ押し出す。その結果、左右の側面施療板10,10が互いに接近するように動作する。逆に、空気袋ユニット45,46が排気されると、それぞれ収縮して側面施療板10は互いに離反する方向へ動作する。また、モータ5の駆動により側面施療板10が周回動作を行っている場合であっても、空気袋11へ給気することにより、左右の側面施療板10の離隔距離が変更される。
【0047】
これにより、被施療者において擦りマッサージの対象となる身体部位の寸法に応じ、左右の側面施療板10の離隔距離を調整することができ、適切な押圧力で擦りマッサージを行うことができる。空気袋11の膨縮による側面施療板10のこのような位置調整は、側面施療板10による擦りマッサージ動作中においても実行することができる。従って、擦りマッサージ中にこれを停止させることなく、被施療者はその時々の好みに応じて空気袋11の膨縮によって側面施療板10による身体部位への押圧力(擦りマッサージ時の摩擦力)を調整することが可能である。
【0048】
また、空気袋11は、被施療者の身体部位から側面施療板10を介して受ける圧力により適度に変形される。従って、身体部位の形状に応じて空気袋11は適宜変形し、側面施療板10は適切な押圧力をもって身体部位に接触した状態で、該身体部位の側面に沿って摺接して擦りマッサージを行うことができる。
【0049】
また、前後に配された空気袋ユニット45,45又は空気袋ユニット46,46に対し、独立して給排気を行い、異なる膨張状態とすることも可能である。例えば、下腿を擦りマッサージする場合には、左右方向の寸法が比較的小さい足首側の部位に対応する前側左右の空気袋ユニット45,46は大きく膨張させる一方、左右方向寸法が比較的大きい膝側の部位に対応する後側左右の空気袋ユニット45,46は小さく膨張させてもよい。これにより、身体部位の形状変化に応じたより適切な擦りマッサージを実現することができる。
【0050】
また、本実施の形態では空気袋11を前後に配設することにより、側面施療板10の往復距離に対応する長さ寸法だけ空気袋11は設けられている。従って、側面施療板10が往復動して最前位置や最後位置にあるときであっても、空気袋11により支持された状態を維持することができる。
【0051】
なお、本実施の形態では空気袋ユニット45を3つの空気袋11で構成し、空気袋ユニット46を2つの空気袋11で構成しているが、空気袋11の数はこれに限定されるものではない。また、空気袋ユニット45,46は共に前後に2つ配設されているものとして説明したが、前後方向に長寸の空気袋を用いることによって1つの空気袋ユニットのみを配設してもよいし、3つ以上の空気袋ユニットを前後方向に配設してもよい。
【0052】
[第2施療ユニット]
図6は、身体部位の背部をマッサージする第2施療ユニット4が有する背面施療板12の構成を示す斜視図であり、(a)は斜め上方から見たときの構成、(b)は斜め下方から見たときの構成をそれぞれ示している。また、図7は、この背面施療板12と第2伝達シャフト22及び第3支持シャフト23との接続態様を示す斜視図である。この背面施療板12は平面視して略矩形状を成し、図6(a)に示すように、縦横に延びる複数のリブ50aが突設された押圧板50を有している。
【0053】
図6(b)に示すように、押圧板50の下面からは左右に配設された2つのカム受部51と、同様に左右に配設された2つのシャフト受部52とが、下方へ向けて突設されている。カム受部51の下部には、偏心カム35(図3参照)の外形状に整合するよう上方へ円弧状に窪んだカム受面51aが形成されている。シャフト受部52は左右方向へ貫通する長円形状の開口を有するシャフト受孔52aが形成されており、該シャフト受孔52aは、後部から前部へ向かうに従って下方へ向かうように、その長手方向が傾斜している。
【0054】
図7に示すように、上述した背面施療板12は、第1伝達シャフト21と第3支持シャフト23とに跨って配設されている。即ち、背面施療板12が有するカム受面51aは、第1伝達シャフト21に設けられた偏心カム35に、ベアリング35aを介して上方から被さるようにして当接している。また、シャフト受部52が有するシャフト受孔52aには、第3支持シャフト23が挿通されており、第3支持シャフト23とシャフト受孔52aとは、該シャフト受孔52aの長手方向に沿って相対的に移動可能になっている。
【0055】
このような第2施療ユニット4は、モータ5が駆動して出力軸が回転すると、その回転は動力伝達機構13を介して偏心カム35へ伝達される。背面施療板12はベアリング35aを介して偏心カム35に当接しているため、偏心カム35は背面施療板12のカム受面51aに対して摺動回転し、これに伴って背面施療板12は略上下方向及び前後方向に往復動することとなる。また、背面施療板12は、シャフト受孔52aにて第3支持シャフト23に支持されているため、背面施療板12は上述したように往復動すると共に、前後方向への傾動もすることとなる。
【0056】
従って、背面施療板12の上面に被施療者の身体部位が載置された状態で第2施療ユニット4が動作すると、背面施療板12によって身体部位の背部は、その長手方向に沿って若干擦りマッサージされると共に、押圧マッサージも施されることになる。また、モータ5は第1施療ユニット3と第2施療ユニット4との駆動源を兼用しているため、これまでに説明した第1施療ユニット3の動作と第2施療ユニット4の動作とは同時に実行され、共に被施療者の身体部位に対してマッサージを施すこととなる。
【0057】
[第2施療ユニットの他の構成]
図9は、第2施療ユニット4の他の構成として、特に上記背面施療板12に換わる背面施療部70の構成を示す斜視図であり、図10は、この背面施療部70の分解斜視図である。図10に示すように、この背面施療部70は、第3支持シャフト23が挿通されると共に偏心カム35により上下動される施療部本体71と、該施療部本体71の上部を覆って被施療者を押圧刺激する施療カバー72と、施療部本体71に下方から接続されて第1伝達シャフト21に設けられた偏心カム35を支持するベアリングホルダ73とから構成されている。
【0058】
施療部本体71は前後方向に長寸を成しており、その前側上部と後側上部とには夫々前後方向へ延びる板状のリブ71aが形成されており、更に前側上部には施療部本体71の内部途中まで下方へ穿設されたネジ孔71bが形成されている。また、施療部本体71の前側下部であってネジ孔71bより後ろ寄りの位置には、図6に示したものと同様のシャフト受孔52aを有するシャフト受部52が形成されており、施療部本体71の後側下部であって後側のリブ71aより前寄りの位置には、図6に示したものと同様のカム受面51aを有するカム受部51が形成されている。更に、施療部本体71の前側下部にもリブ71cが形成されており、該リブ71cによってシャフト受部52が補強されている。
【0059】
施療カバー72は、施療部本体71と同様に前後方向に長寸を成しており、上壁75と左右の側壁76とによって下部が上方へ窪むように凹状に形成されている。上壁75の前部には、上記施療部本体71のネジ孔71bに対応するネジ孔75bが上下方向に貫通して設けられている。更に、上壁75の上面には、半球状を成す複数の施療子75aが上方へ突出するようにして前後方向に沿って設けられており、本実施の形態では、ネジ孔75bより前側に1つ、そしてネジ孔75bより後側に3つ、の合計4つが設けられている。このような施療カバー72は、施療部本体71に上方から覆い被せられ、両者のネジ孔71b,75bへネジ(図示せず)が螺挿されることによって接続されるようになっている。また、施療カバー72が有する左右の側壁76には、その前後方向の中央部分に切欠部76aが形成されており、施療カバー72が施療部本体71に接続された状態では、この切欠部76a内にカム受部35及びシャフト受部52が位置するようになっている。
【0060】
更に、ベアリングホルダ73は側面視で略逆三角形状を成しており、その上部には、偏心カム35の外形状に整合するよう下方へ円弧状に窪んだカム受面73aが形成されている。このカム受面73aは、施療部本体71のカム受部51が有するカム受面51aと同一径となっている。このようなベアリングホルダ73は、施療部本体71の後部に下方から接続される。より詳しくは、両者のカム受面51a,73aによって真円が形成されるように両者は接続され、ベアリングホルダ73の前部及び後部に穿設されたネジ孔73bを通じて下方からネジ(図示せず)が螺挿されることにより、両者は締結されるようになっている。
【0061】
このような構成を成す背面施療部70は、図7に示した背面施療板12と同様に、モータ5が駆動して出力軸が回転すると、その回転は動力伝達機構13を介して偏心カム35へ伝達される。背面施療部70は、ベアリング35aを介してこの偏心カム35に当接しているため、偏心カム35は、背面施療部70のカム受面51a,73aに対して摺動回転し、これに伴って背面施療部70は略上下方向及び前後方向に往復動することとなる。
【0062】
従って、背面施療部70の上面(施療子75aの表面)に被施療者の身体部位が載置された状態で第2施療ユニット4が動作すると、背面施療部70の施療子75aによって身体部位の背部は、その長手方向に沿って若干擦りマッサージされると共に、押圧マッサージも施されることになる。また、図9,10に示す背面施療部70は半球状の施療子75aが被施療者の身体部位に当接するため、図6,7に示した背面施療板12に比べ、身体部位表面のより狭小な箇所に、強い押圧力で刺激を付与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、様々の形状を有する各施療者の身体部位に対し、適切に擦りマッサージを行うことができるマッサージ装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態に係るマッサージ装置の外観構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すマッサージ装置の平面図である。
【図3】右側マッサージ装置が備える動力伝達機構の構成を示す斜視図である。
【図4】第1施療ユニットの一部の構成を示す側面図であり、右側マッサージ装置が有する左側の側面施療板とこれに対応する構成とを示している。
【図5】第1施療ユニットが備える空気袋の構成を示す斜視図である。
【図6】身体部位の背部をマッサージする第2施療ユニットが有する背面施療板の構成を示す斜視図であり、(a)は斜め上方から見たときの構成、(b)は斜め下方から見たときの構成をそれぞれ示している。
【図7】図6に示した背面施療板と第2伝達シャフト及び第3支持シャフトとの接続態様を示す斜視図である。
【図8】マッサージ装置の機能ブロック図である。
【図9】第2施療ユニットの他の構成として、特に図6に示した背面施療板に換わる背面施療部の構成を示す斜視図である。
【図10】図9に示す背面施療部の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
1 マッサージ装置
1a 右側マッサージ装置
1b 左側マッサージ装置
1c 壁面
3 第1施療ユニット
4 第2施療ユニット
5 モータ
10 側面施療板
10a 対向面
11 空気袋
12 背面施療板
13 動力伝達機構(擦り駆動部)
41 ヒンジプレート
45,46 空気袋ユニット
60 制御部
63 操作装置
70 背面施療部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者の身体部位を挟むように該身体部位の両側方に配置された一対の施療板と、
該施療板を前記身体部位の側面に沿う方向へ往復動させる擦り駆動部と、
前記施療板の外側方に配置されて前記一対の施療板の離隔距離を変更させるべく給排気によって膨縮する空気袋と
を有する擦りユニットを備え、
前記空気袋が膨張している状態で、前記施療板が前記身体部位の側面に沿って往復動可能に構成されていることを特徴とするマッサージ装置。
【請求項2】
前記施療板と前記擦り駆動部とは可撓性を有するヒンジ部材により接続されていることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ装置。
【請求項3】
前記空気袋は、前記施療板の往復動の間に膨縮可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマッサージ装置。
【請求項4】
前記一対の施療板における対向面は起毛されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のマッサージ装置。
【請求項5】
前記空気袋は、前記施療板の往復距離に対応する長さ寸法に構成されていることを特徴とする請求項4に記載のマッサージ装置。
【請求項6】
前記空気袋は、前記施療板の往復方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のマッサージ装置。
【請求項7】
前記身体部位の背部を施療する背面施療ユニットを更に備え、該背面施療ユニットは、前記擦りユニットと連動して動作するよう構成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のマッサージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−245968(P2008−245968A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91613(P2007−91613)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000112406)ファミリー株式会社 (175)
【Fターム(参考)】