説明

マッサージ装置

【課題】利用者の心拍または脈拍を表す生体信号に基づいて制御を行うマッサージ装置において、利用者を快適な眠りに導きつつ、生体信号を合理的かつ精度よく検出する。
【解決手段】マッサージ装置1は、利用者の背部にマッサージを施すための駆動機構5と、駆動機構5に近接した第1の検出器10〜12と、駆動機構5に離間した第2の検出器13,14とを備え、検出器10〜14から得られる生体信号に基づいて利用者の眠気度を判定し、眠気度に応じてマッサージ強度が小さくなるように駆動機構5を制御しつつ、眠気度が高い場合には第2の検出器13,14を、眠気度が低い場合には第1の検出器10〜12の検出結果を採用する。つまり、利用者の覚醒時には駆動機構5に離間した位置から、睡眠時には駆動機構5の振動が小さい位置から信号を検出するので、睡眠時に体の一部が第2の検出器13,14から離れても、振動ノイズを抑えた生体信号が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の背部にマッサージを施すための機構を具備するマッサージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マッサージ効果を高めるために、マッサージ装置本体の肘掛け部と背当て部とにそれぞれ電極を設け、利用者の手から脈拍を、利用者の背中と手から得られる電位差によって心拍をそれぞれ検出し、これら脈拍や心拍に応じてマッサージ用の駆動機構の動作を制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、マッサージの開始から脈拍や心拍が増大したときには、揉み動作から叩き動作へ、動作速度を高速から低速へ切り換えることでマッサージ強度を小さくし、脈拍や心拍が減少したときには、反対にマッサージ強度を大きくすることにより、利用者の人体に対する負担を軽減させつつ、凝りをほぐすことを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−269377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、マッサージの開始から時間の経過とともに、マッサージ効果が高まると、利用者がリラックスすることで眠気をもよおし、そのまま心地よく眠りにつきたくなる場合がある。
【0006】
この点を鑑みると、従来のマッサージ装置では、以下の問題点が指摘される。
(1)利用者がリラックスすることで脈拍や心拍が減少し、脈拍や心拍が減少するとマッサージ強度が大きくなるように駆動機構が制御されるので、これにより利用者を覚醒させてしまい、快適な眠りに導くことが困難である可能性があった。
【0007】
(2)上記(1)の問題点を解消するために制御を変更した場合、利用者が眠りにつき始めると、利用者の手が肘掛け部の電極から外れてしまい、脈拍や心拍を正常に検出することができなくなり、ひいてはマッサージに係る制御の継続性が損なわれる可能性があった。
【0008】
(3)マッサージ強度が大きい場合に、背当て部において駆動機構の動作による振動が大きくなるので、その振動等によるノイズの影響が大きくなり、心拍を正常に検出することが困難となる可能性があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するために、利用者の心拍または脈拍を表す生体信号に基づいて制御を行うマッサージ装置において、利用者を快適な眠りに導きつつ、生体信号を合理的かつ精度よく検出する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた発明であるマッサージ装置は、利用者の背部の少なくとも一部(以下「対象背部」という)にマッサージを施すための駆動機構を備える装置であって、対象背部から利用者の心拍また脈拍を表す生体信号を検出するための第1の検出器と、利用者の(人体の)うち対象背部を除く部位であって利用者の皮膚が露出している対象露出部を含む部位から生体信号を検出するための第2の検出器とを備える。
【0011】
そして、本発明では、眠気度判定手段が、上記第1及び第2の検出器のうち予め選択された検出器にて検出された生体信号に基づいて、利用者の眠気度を判定し、駆動制御手段が、眠気度判定手段にて判定した眠気度に応じてマッサージ強度が小さくなるように、上記の駆動機構を制御する。さらに、検出器選択手段が、眠気度判定手段による判定結果を用いて、眠気度が比較的高い場合には第1の検出器を選択し、眠気度が比較的低い場合には第2の検出器を選択するように構成した。
【0012】
この構成では、(1)利用者がリラックスすることで眠気度が高くなると、マッサージ強度が小さくなるように駆動機構が制御され、(2)第1の検出器によって利用者の対象背部から生体信号を検出するので、(1´)利用者を快適な眠りに導くとともに、(2´)利用者が眠りにつき始めても、利用者がマッサージを受けている状態において、生体信号を正常に検出することが可能となる。
【0013】
なお、上記(2´)の理由を補足すると、利用者の眠気度が高くなると、マッサージ強度が小さくなるので、第1の検出器にて検出される生体信号に対して、駆動機構の動作(振動等)によるノイズの影響が小さくなるためである。
【0014】
また、(3)利用者の眠気度が低くなる(換言すれば、覚醒度が高くなる)と、第2の検出器によって利用者の対象露出部(皮膚)から生体信号を検出するので、(3´)マッサージ強度が大きい場合であっても、対象背部から生体信号を検出する場合と比較して、駆動機構の動作(振動等)によるノイズの発生を抑制しつつ、皮膚から直接検出することで検出精度を向上することが可能となる。
【0015】
したがって、本発明によれば、利用者の心拍または脈拍を表す生体信号に基づいて制御を行うマッサージ装置において、利用者の眠気度に応じて、マッサージ強度を小さくすることで利用者を快適な眠りに導きつつ、生体信号の検出元を選択することで耐ノイズ性を向上することができ、ひいては、生体信号を合理的かつ精度よく検出することができる。
【0016】
なお、一般的に、利用者がリラックス状態になると、心拍や脈拍が下降することが知られており、本発明では、リラックス状態では覚醒度が低くなることから、眠気度が高くなるものとみなしている。
【0017】
ところで、本発明では、第1及び第2の検出器について、検出器選択手段による選択結果にかかわらず常時作動させておいてもよいが、省電力化を図ることを目的とすると、作動禁止手段が、第1又は第2の検出器のうち検出器選択手段にて非選択された検出器の作動を禁止するとよい。この場合、常時作動させる場合と比較して、いずれか一方の検出器を停止させる分、消費電力を抑制することができる。
【0018】
また、本発明では、例えばマッサージ装置本体の電源をオンすることで駆動機構の作動を開始(即ち、マッサージを開始)させてもよいが、利便性の向上を図ることを目的とすると、対象露出部の接触を検出するための接触検出器を第2の検出器に近接して設け、作動開始手段が、接触検出器に対象露出部が接触しているとみなすと、駆動機構の作動を開始させるように構成するとよい。
【0019】
この構成によれば、(1)利用者が接触検出器に触れるだけで自動的にマッサージが開始されるので、例えばマッサージ装置本体の電源の位置等を気にせずに済み、(2)そのまま対象露出部を第2の検出器に接触させることで、利用者に無駄な動作をさせずに、第2の検出器から生体信号をスムーズに得ることができる。
【0020】
さらには、本発明では、上記の接触検出器を別の制御用途に用いることもできる。具体的には、検出器選択手段は、利用者の眠気度が比較的低い場合には、対象露出部が接触検出器に接触しているとみなすときに限り、検出器の選択を行うように構成してもよい。
【0021】
この構成によれば、利用者が意図的に対象露出部を第2の検出器から外した場合には、検出器の選択を禁止することで、後段の眠気度判定手段および駆動制御手段の実行を停止させ、利用者に第2の検出器への接触を促すことができる。
【0022】
ところで、本発明のマッサージ装置は、例えばベッドに駆動機構を備えるものであってもよいし、椅子の(装置本体の)背当て部に駆動機構を備えるものであってもよい。また、対象背部は、人体の後側部であり、背中や首、腕、腰、腿、脹脛、足の裏等を含む概念であり、対象露出部は、衣服等を介さず人体の皮膚が露出している部位であり、手や首、足の裏等を含む概念である。
【0023】
ここで、本発明では、駆動機構が当該マッサージ装置本体の背当て部に組み込んで構成され、対象背部を利用者の背中とする場合、第1の検出器は、背中のうち利用者の心臓部を挟む二点間から得られる電位差に基づいて、利用者の心拍を検出するように構成されているとよい。
【0024】
また、駆動機構が当該マッサージ本体の背当て部に組み込んで構成され、対象露出部を利用者の手とする場合、第2の検出器は、利用者の臀部と手から得られる電位差に基づいて、利用者の心拍を検出するように構成されるとよい。
【0025】
両者の場合ともに、利用者の心臓部に微弱電流を通すことによって、好適に心拍を検出することが可能となり、後者の場合は特に、駆動機構の位置から離間した部位から生体信号が得られるので、利用者の覚醒度が高ければ、マッサージ強度にかかわらず、好適に心拍を検出する確実性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明が適用されたマッサージ装置の概要を示す説明図である。
【図2】本発明が適用されたマッサージ装置の回路構成を示す説明図である。
【図3】制御部が実行するマッサージ制御処理を示すフローチャートである。
【図4】利用者の覚醒時と睡眠時とにおける生体信号の検出方法の違いを示す説明図である。
【図5】他の実施形態におけるマッサージ装置の回路構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[マッサージ装置の概要]
図1は、本発明が適用されたマッサージ装置の概要を示す説明図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態のマッサージ装置1は、椅子本体90の背当て部92にマッサージ用の複数の揉み玉を有する駆動機構5が内蔵されており、駆動機構5の揉み玉の動きによって、揉み動作モード、叩き動作モード、叩き揉み動作モードによるマッサージが可能に構成されている。そして、各動作モードにおいて、揉み玉の動作速度を高速、中側、低速に、揉み玉の動作範囲を広域、中域、低域に調整することにより、マッサージ強度が変更可能となっている。なお、駆動機構5は、背当て部92の上下方向に沿って移動可能に構成されている。
【0029】
また、椅子本体90の背当て部92には、駆動機構5から離間し、且つ利用者の背中に対向するように三つの容量性結合センサ10,11,12が配置され、椅子本体90の座面部94には、利用者の臀部に対向するように一つの容量性結合センサ13が配置され、椅子本体90の左右の肘掛け部96には、利用者の手または指に接するように一つの抵抗性結合センサ14がそれぞれ配置されている。
【0030】
容量性結合センサ10〜13は、銅等の導電性の高い金属を含む導電布、又は薄く柔軟性のある金属板等を用いてシート状に形成された電極を有して構成されている。
このうち、背当て部92において駆動機構5を上下方向に挟むように設けられた一対の容量性結合センサ10,11の電極(以下「第1の測定電極」)10a,11aは、利用者の背中との間で静電容量結合することにより、キャパシタを形成するようになっている(図4(b)参照)。そして、利用者の背中のうち心臓部を挟む二点においてキャパシタを形成し、その電位差によって人体の心臓部を含む経路に微弱電流が流れる。つまり、このときの微弱電流が、第1の測定電極10a,11aの電位差に対応した値となり、その電位差によって利用者の心拍を検出することになる。
【0031】
なお、背当て部92において、最下に設けられた容量性結合センサ12の電極(以下「第1の基準電極」)12aは、第1の測定電極10a,11aの電位差を測定するときの基準電位を得るためのものであり、後述するスイッチ27(図2参照)を介してグランド線路に接続されている。また、座面部94に設けられた容量性結合センサ13の電極(以下「第2の測定電極」)13aは、は、利用者の臀部との間で静電容量結合することにより、キャパシタを形成するようになっている(図4(a)参照)。
【0032】
そして、肘掛け部96に設けられた抵抗性結合センサ14は、第2の測定電極13aとともに心拍を検出するための電極(以下「第2の基準電極」)14aを有し、利用者の手が第2の基準電極14aに接触した際に、第2の測定電極13aと第2の基準電極14aとの間に電位差が生じ、その電位差によって人体の心臓部を含む経路に微弱電流が流れるように構成されている。なお、第2の基準電極14aは、後述するスイッチ27(図2参照)を介してグランド線路に接続されている。
【0033】
また、肘掛け部96において、抵抗性結合センサ14の下側には、利用者の手が第2の基準電極14aに接触することによる圧力を検出するために、接触絶縁シートを介して圧力センサ15が設けられている。なお、圧力センサ15は、利用者の手以外の部位であっても接触を検出するので、その検出結果は利用者の手が第2の基準電極14aに接触している可能性があることを示すものとなる。
【0034】
[マッサージ装置の回路構成]
次に、マッサージ装置1の回路構成について説明する。なお、図2は、本発明が適用されたマッサージ装置の回路構成を示す説明図である。
【0035】
図2に示すように、本実施形態のマッサージ装置1は、上記電極10a〜14a、圧力センサ15および駆動機構5に加えて、3つのバッファアンプ20,21,23と、1つの差動増幅器25と、2つのスイッチ27,28と、上記電極10a〜15aからの入力信号に基づいて駆動機構5を制御する制御部30とを備えている。なお、上記センサ10〜14は、電極10a〜14a、該当するバッファアンプ20,21,23(後述する抵抗Rを含む)および差動増幅器25によって構成される。
【0036】
バッファアンプ20,21,23は、その入力端に測定電極10a,11a,13aが接続され、その両者を接続する線路上には、測定電極10a,11a,13aとグランドとを短絡させる高インピーダンスの抵抗Rがさらに接続されており、静電気による直流ノイズを接地部に逃がして容量性結合センサ10,11,13からの入力信号(電圧信号)を安定させている。
【0037】
このうち、第2の測定電極13aに接続されたバッファアンプ(以下「第2の増幅器」)23は、第2の測定電極13aと人体との間の静電容量結合による電位変化を、第2の基準電極14aの電位を(グランド線路の電位)基準として検出し、その増幅信号を制御部30に出力する。
【0038】
つまり、第2の増幅器は、第2の測定電極13aと第2の基準電極14aとの間に生じる電位差に基づいて、利用者の心拍を検出するように構成されている。なお、このとき、第2の測定電極13aは利用者の臀部に間接的に接触し、第2の基準電極14aは利用者の手に直に接触しているものとする。
【0039】
第1の測定電極10a,11aに接続された各バッファアンプ20,21は、第1の測定電極10a,11aと人体との間の静電容量結合による電位変化を、第1の基準電極12aの電位を(グランド線路の電位)基準として検出し、その増幅信号を差動増幅器25に出力する。
【0040】
そして、差動増幅器25は、非反転入力端子(+)に接続されたバッファアンプ20と、反転入力端子(−)に接続されたバッファアンプ21からの入力レベルの差分を演算し、その差分を増幅した信号を制御部30に出力する。
【0041】
つまり、バッファアンプ20,21および差動増幅器25(以下「第1の増幅器26」と総称する)は、第1の測定電極10a,11a間に生じる電位差に基づいて、利用者の心拍を検出するように構成されている。なお、このとき、第1の測定電極10a,11aは利用者の心臓部を挟むよう背中に間接的に接触しているものとする。
【0042】
スイッチ27は、グランド線路の接続先を、制御部30からの指令に従って、第1の基準電極12aまたは第2の基準電極14aのいずれか一方に切り換えるものであり、スイッチ28は、制御部30の接続先を、制御部30からの指令に従って、第1の増幅器26または第2の増幅器23のいずれか一方に切り替えるものである。
【0043】
制御部30は、CPU,RAM,ROM,I/O,バスライン等からなるマイクロコンピュータを中心に構成されており、以下のマッサージ制御処理を行う。
[マッサージ制御処理]
図3は、制御部30が実行するマッサージ制御処理を示すフローチャートである。
【0044】
図3に示すように、本処理は、圧力センサ15からの検出信号に基づいて、利用者の手が第2の基準電極14aに接触している可能性があると判断すると(S105;YES)、開始される。
【0045】
本処理が開始されると、利用者の手が第2の基準電極14aに接触しているとみなし、第1の増幅器26または第2の増幅器23から利用者の心拍を表す生体信号を取得する(S110)。なお、初期状態では、スイッチ27が第2の基準電極14aに接続され、スイッチ28が第2の増幅器23に接続されているため、第2の増幅器23から生体信号を入力するものとする。
【0046】
次に、本処理の開始から所定期間経過していなければ(S111;NO)、S110にて取得した生体信号に基づいて、従来のようなマッサージ制御を行う(S115)。具体的には、マッサージの開始から心拍が増大したときには、揉み玉の動作速度を下げ、動作範囲を縮小することでマッサージ強度を小さくし、心拍が減少したときには、反対にマッサージ強度を大きくすることにより、利用者の人体に対する負担を軽減させつつ、凝りをほぐすための制御を行う。
【0047】
そして、本処理の開始(即ち、マッサージの開始)から所定期間経過すると(S111;YES)、今度は、S110にて取得した生体信号に基づいて、利用者のリラックス状態を判断し、リラックス状態が高いほど利用者の眠気度が高く、リラックス状態が低いほど利用者の眠気度が低い(換言すれば、覚醒度が高い)というように、利用者の眠気度を判定する(S120)。なお、ここでは、マッサージの開始から心拍が減少するほど、リラックス状態が高いものとみなしている。
【0048】
そして、S120の判定結果に基づいて、利用者の眠気度が低い(覚醒度が高い)場合には、マッサージ強度を大きく(S130)、眠気度(または覚醒度)が中程度である場合には、マッサージ強度を標準レベル(中レベル)に(S140)、眠気度が高い(覚醒度が低い)場合には、マッサージ強度を小さくするための指令を出力し(S150)、それぞれ駆動機構5を制御する。
【0049】
さらに、利用者の眠気度が低・中程度である場合には、スイッチ27を第2の基準電極14aに接続させ、且つスイッチ28を第2の増幅器23に接続させるための指令を出力し(S160)、眠気度が高い場合には、スイッチ27を第1の基準電極12aに接続させ、且つスイッチ28を第1の増幅器26に接続させるための指令を出力し(S170)、それぞれスイッチ27,28を制御し、S110に戻る。
【0050】
なお、S160からS110に戻る前に、S165では、圧力センサ15からの検出信号に基づいて、利用者の手が第2の基準電極14aに接触している可能性があるか否か判断し(S165)、ここで肯定判断するまで待機してからS110に戻る。
【0051】
[動作]
このように構成されたマッサージ装置1では、利用者が椅子本体90の座面部94に座り、左右の肘掛け部96の一方に手をおくと、従来同様のマッサージ制御が開始され、利用者をリラックス状態に導く。そして、リラックス状態になるまで十分な時間(所定期間)が経過すると、従来同様のマッサージ制御とは逆に、心拍が減少するに従ってマッサージ強度が小さくなるように制御することにより、利用者を眠りに導く。
【0052】
ここで、心拍の減少度合から利用者の眠気度を推定し、眠気度が小さい場合には、マッサージ強度を大きくするとともに、利用者の手と臀部から得られる電位差に基づいて、心拍を算出するようにし、眠気度が高い場合には、マッサージ強度を小さくするとともに、利用者の背中において心臓部を挟む2点から得られる電位差に基づいて、心拍を算出するようにスイッチ27,28が選択される。
【0053】
また、スイッチ27,28が切り替わることにより、心拍の算出に不要なセンサの作動が停止することになる。
[効果]
以上説明したように、マッサージ装置1では、利用者の覚醒時には、マッサージ強度を大きくするので駆動機構5の振動が大きくなるものの、利用者の手と臀部から生体信号を得るので、振動に起因するノイズが生体信号に重畳されにくくすることができる(図4(a)参照)。また、利用者の睡眠時には、マッサージ強度を小さくするので駆動機構5の振動が小さくなり、利用者の背中から生体信号を得るようにしても、振動が小さいため、生体信号に重畳されるノイズを無視することができる(図4(b)参照)。
【0054】
したがって、マッサージ装置1によれば、利用者の眠気度に応じて、マッサージ強度を小さくすることで利用者を快適な眠りに導きつつ、生体信号の検出元を選択することで耐ノイズ性を向上することができ、ひいては、生体信号を合理的かつ精度よく検出することができる。
【0055】
また、マッサージ装置1によれば、心拍の算出に不要なセンサの作動が停止することから、不要な消費電力を抑え、省電力化を図ることができる。
さらに、マッサージ装置1によれば、利用者が肘掛け部96に手をおくだけで、マッサージ制御が開始されるので、利便性を向上させつつ、初期状態において確実に利用者の手と臀部から生体信号を得ることができる。
【0056】
[発明との対応]
なお、本実施形態において、容量性結合センサ10,11,12が第1の検出器、容量性結合センサ13および抵抗性結合センサ14が第2の検出器、マッサージ制御処理のS120が眠気度判定手段、S130〜S150が駆動制御手段、S160およびS170が検出器選択手段、圧力センサ15が接触検出器、スイッチ27,28が作動禁止手段、S105が作動開始手段に相当する。
【0057】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0058】
例えば、本実施形態のマッサージ装置1では、スイッチ27,28によって、心拍の算出に不要なセンサの作動を停止させるように構成されているが、これに限定されるものではなく、図5に示すように、スイッチ27,28を不要とし、第1の増幅器26および第2の増幅器23から常時信号が制御部30に入力され、制御部30が眠気度に応じて採用する検出信号を選択するように構成してもよい。
【0059】
また、上記実施形態のマッサージ装置1では、心拍を表す生体信号を検出するように構成されているが、心拍に限らず、脈拍であってもよい。なお、脈拍を測定する場合には、発光素子と受光素子とを有し、発光素子が放射した光のうち、例えば指の毛細動脈を流れる血液中に吸収されることなく反射した散乱光の一部を受光素子が受光することで、その受光量に基づく脈波信号を出力する周知の脈波センサを用いればよい。
【0060】
また、上記実施形態のマッサージ装置1では、利用者の手を対象露出部としているが、対象露出部は、手に限らず、利用者の皮膚が露出している部位であればよく、例えば利用者の首や腕、足の裏等であってもよいので、各部位に対応させて抵抗性結合センサ14を配置すればよい。
【0061】
また、上記実施形態のマッサージ装置1では、容量性結合センサ13が、利用者の臀部に対応した位置に設けられているが、これに限らず、駆動機構5からのノイズの影響を受けにくいように離間した位置であればよく、例えば脹脛に対応する位置であってもよい。
【0062】
また、上記実施形態のマッサージ装置1は、椅子本体90の背当て部92に駆動機構5が組み込まれた構成であるが、ベッドや車内座席に適用してもよい。
また、上記実施形態のマッサージ装置1では、椅子本体90の肘掛け部96に圧力センサ15を設けているが、必須の構成ではなく、また、肘掛け部96に限らず、背当て部92や座面部94に設けてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…マッサージ装置、5…駆動機構、10〜13…容量性結合センサ、10a,11a…第1の測定電極、12a…第1の基準電極、13a…第2の測定電極、14…抵抗性結合センサ、14a…第2の基準電極、15…圧力センサ、20,21,22…バッファアンプ、23…第2の増幅器、25…差動増幅器、26…第1の増幅器、27,28…スイッチ、30…制御部、90…椅子本体、92…背当て部、94…座面部、96…肘掛け部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の背部の少なくとも一部である対象背部にマッサージを施すための駆動機構を備えるマッサージ装置であって、
前記対象背部から前記利用者の心拍または脈拍を表す生体信号を検出するための第1の検出器と、
前記利用者のうち前記対象背部を除く部位であって該利用者の皮膚が露出している対象露出部を含む部位から前記生体信号を検出するための第2の検出器と、
前記第1及び第2の検出器のうち予め選択された検出器にて検出された前記生体信号に基づいて、前記利用者の眠気度を判定する眠気度判定手段と、
前記眠気度判定手段にて判定した眠気度に応じてマッサージ強度が小さくなるように、前記駆動機構を制御する駆動制御手段と、
前記眠気度判定手段による判定結果を用いて、前記眠気度が比較的高い場合には前記第1の検出器を選択し、前記眠気度が比較的低い場合には前記第2の検出器を選択する検出器選択手段と、
を備えることを特徴とするマッサージ装置。
【請求項2】
前記第1又は第2の検出器のうち前記検出器選択手段にて非選択された検出器の作動を禁止する作動禁止手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ装置。
【請求項3】
前記第2の検出器に近接して設けられ、前記対象露出部の接触を検出するための接触検出器と、
前記接触検出器にて前記対象露出部が接触しているとみなすと、前記駆動機構の作動を開始させる作動開始手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマッサージ装置。
【請求項4】
前記第2の検出器に近接して設けられ、前記対象露出部の接触を検出するための接触検出器を備え、
前記検出器選択手段は、前記眠気度が比較的低い場合には、前記対象露出部が前記接触検出器に接触しているとみなすときに限り、検出器の選択を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のマッサージ装置。
【請求項5】
前記駆動機構は、当該マッサージ装置本体の背当て部に組み込んで構成され、
前記対象背部は、前記利用者の背中であり、
前記第1の検出器は、前記背中のうち前記利用者の心臓部を挟む二点間から得られる電位差に基づいて、前記利用者の心拍を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のマッサージ装置。
【請求項6】
前記駆動機構は、当該マッサージ装置本体の背当て部に組み込んで構成され、
前記対象露出部は、前記利用者の手であり、
前記第2の検出器は、前記利用者の臀部と手から得られる電位差に基づいて、前記利用者の心拍を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のマッサージ装置。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−239629(P2012−239629A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112317(P2011−112317)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】