説明

マッサージ装置

【課題】座席の一部に配置される施療子を採用しながらも、使用者の体格に対応して、座席における施療子と着座した使用者の身体において体重を支える部位との位置を合わせることができるマッサージ装置を提供する。
【解決手段】自動二輪車2のシート3に一対のエアバッグ1が設けられる。シート3における使用者が着座する座板31の上面には、左右一対の矩形状に開口した凹部351,352が設けられる。凹部351,352における左右方向の中央部には、スライド孔361,362が前後方向に沿って設けられる。凹部351,352には、エアバッグ1がそれぞれ嵌る。エアバッグ1の前後方向の寸法は、凹部351,352の前後方向の幅よりも小さい。エアバッグ1の下面には、エアバッグ1の給排気に用いられる空気給排筒11が設けられる。空気給排筒11の引出部111がスライド孔361,362に挿通され、凹部351,352内のエアバッグ1は、前後方向へ移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車のシートなど使用者が着座する座席に設けられるマッサージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動二輪車のシートや自動車のシートのような座席に着座する使用者は、長時間同じ姿勢を継続することが多い。そのため、座席に着座した使用者は、臀部など体重を支える身体の部位に痛みやしびれが生じる場合がある。
【0003】
特許文献1には、長時間着座する使用者の体の痛みやしびれを抑制するためにエアバッグが設けられた車両用シートが記載されている。特許文献1の車両用シートには、座席の座面に沿って配置されるエアバッグと、エアバッグに接続される給気ポンプと、エアバッグと給気ポンプとの間に配置されエアバッグの給排気を切り換える切換弁とが設けられている。
【0004】
切換弁は、エアバッグを膨張させるため給気ポンプの噴出口からの空気を切換弁を通してエアバッグへ給気する経路と、エアバッグを収縮させるためエアバッグ内の空気を切換弁を通して給気ポンプの吸入口へ排気する経路とを切り換える。切換弁の切換に伴ってエアバッグの膨張と収縮とがなされることにより、着座した使用者の身体において座面に接する部位を押圧する力が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−107350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1におけるエアバッグは、座席の座面全体を覆うように配置されており、使用者が着座する位置によらず、着座した使用者の身体において体重を支える部位を押圧することができる。一方で、エアバッグは、座面全体を覆う大きさが必要となる。このような大型のエアバッグを膨張させるためには、流量の多い給気ポンプが必要となる。
【0007】
これに対して、座席の一部を覆う小型のエアバッグを用いることが考えられる。ただし、小型のエアバッグでは、使用者の体格に応じて使用者の着座する位置が変わると、座席におけるエアバッグと着座した使用者の身体において体重を支える部位との位置が合わない場合が生じる。上述の例では、マッサージ装置の施療子としてエアバッグを例示したが、エアバッグに限らず他の施療子でも同様のことが生じる。
【0008】
本発明は、上記の事由に鑑みて為されたものであって、座席の一部に配置される施療子を採用しながらも、使用者の体格に対応して、座席における施療子と着座した使用者の身体において体重を支える部位との位置を合わせることができるマッサージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のマッサージ装置は、座席と、座席の一部に配置され使用者の着座部位に施療する施療子と、座席の前後方向において施療子の位置を調節する移動機構とを備えることを特徴とする。
【0010】
このマッサージ装置において、施療子は一対設けられ、一対の施療子は、前後方向に沿う座席の中心線を挟んで左右両側にそれぞれ配置されており、移動機構は、施療子が前側に位置するほど左右方向における一対の施療子間の距離を小さくすることが望ましい。
【0011】
このマッサージ装置において、施療子は複数設けられ、複数の施療子が取り付けられた施療子台と、座席の前後方向において施療子台の位置を調節する台移動機構とを備えることがより望ましい。
【0012】
このマッサージ装置において、施療子は複数設けられ、少なくとも2個の施療子は、使用者の着座部位に異なるタイミングで施療することがより望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構成によれば、座席の一部に配置される施療子を採用し、しかも使用者の体格に対応して、座席における施療子と着座した使用者の身体において体重を支える部位との位置を合わせることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1のマッサージ装置を示し、(a)は一部破断した斜視図であり、(b)は平面図である。
【図2】同上を備える自動二輪車を示す側面図である。
【図3】同上を備える自動二輪車を後方から見た斜視図である。
【図4】同上の断面図である。
【図5】同上の要部断面図である。
【図6】実施形態2のマッサージ装置を示す平面図である。
【図7】実施形態3のマッサージ装置を示す斜視図である。
【図8】同上を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の各実施形態では、自動二輪車に設けられたマッサージ装置を一例として説明する。
【0016】
(実施形態1)
本実施形態においては、使用者にマッサージを施す施療子としてエアバッグ1が用いられる。図1に示すように、自動二輪車2(図2参照)のシート3に一対のエアバッグ1が設けられる。
【0017】
シート3は、図1に示すように、使用者が着座する座板31および座板31の外周縁に連続し下方へ延びる壁板32からなるシート器台30と、シート器台30の外表面を覆うシート表皮33とを備える。また、シート器台30とシート表皮33との間には、クッション材34が配置される。シート3は、前方へ向かうにつれて左右方向の幅を狭める。シート3は、左右方向に直交する面内において壁板32の前端部を中心として回動可能に自動二輪車2の本体21に接続されている。本体21におけるシート3の下方には、上面が開口した収納室22が設けられている。シート3は、収納室22の開口を塞ぐ閉位置(図2参照)と、座板31が前方を向き収納室22が開放された開位置(図3参照)との間で回動する。つまり、シート3は本体21に対して開閉可能である。
【0018】
座板31の上面には、図1(b)に示すように、左右一対の凹部351,352が設けられる。凹部351,352は、前後方向の寸法が左右方向の寸法よりも大きい矩形状に開口している。凹部351における左右方向の中央部には、上下方向に貫通したスライド孔361が前後方向に沿って設けられる。凹部352にも、同様にスライド孔362が設けられる。
【0019】
凹部351と凹部352とは、座板31の前後方向における中央と後端との間の領域内に、左右方向に離れて設けられる。凹部351と凹部352とは、座板31の前後方向に沿う中心線からの距離が等しい。また、凹部351の長手方向に沿った中心線と、凹部352の長手方向に沿った中心線とは平行になっている。
【0020】
凹部351,352には、エアバッグ1がそれぞれ嵌る。エアバッグ1は、図1(b)に示すように、左右方向の寸法が凹部351,352の左右方向の幅と略等しく、収縮状態における厚みが凹部351,352の深さに略等しい(図4参照)。一方、エアバッグ1の前後方向の寸法は、凹部351,352の前後方向の幅よりも小さい。
【0021】
エアバッグ1の下面には、図5に示すように、エアバッグ1の内部空間と連通し空気の給排気に用いられる空気給排筒11が設けられる。空気給排筒11は、エアバッグ1の下面に突設された引出部111と、エアバッグ1の下面に沿って引出部111から前方に突出する口筒部112とを備える。
【0022】
凹部351内のエアバッグ1において、引出部111はスライド孔361に挿通される。引出部111はスライド孔361の前端と後端との間を移動可能であり、エアバッグ1の前後方向の寸法は凹部351の前後方向の幅よりも小さいので、エアバッグ1は、凹部351の内部において前後方向へ移動可能である。凹部352内のエアバッグ1についても同様に、前後方向へ移動可能である。
【0023】
エアバッグ1には、図示しない空気給排装置により空気が給排気される。空気給排装置は、エアバッグ1に空気を給排気するポンプと、ポンプに接続され給気の経路と排気の経路とを切り換える切換弁と、マイコンなどからなりポンプおよび切換弁を制御するECU(Electric Control Unit)とを備える。空気給排装置は、例えば、ホース(図示せず)の一端を空気給排装置に接続し、ホースの他端部に口筒部112を挿入することによりエアバッグ1と接続される。エアバッグ1の排気は、切換弁によりエアバッグ1をポンプの吸気口に接続する経路に切り換えポンプにより強制的に行なう。なお、切換弁によりエアバッグ1から大気に排気する経路に切り換えて自然排気してもよい。
【0024】
エアバッグ1は、空気給排装置から空気が給気されると、シート器台30の凹部351,352から上方へ膨張し、クッション材34およびシート表皮33を上方へ押し上げる。エアバッグ1は、内部の空気が排気されると収縮し、クッション材34およびシート表皮33は元の位置へ戻る。このように、エアバッグ1の膨張と収縮とがなされることにより、着座した使用者の身体において座面(シート表皮33の上面)に接する部位を押圧する力が変化する。これにより、エアバッグ1で着座部位が施療されるとともに、着座した使用者の身体において体重を支える部位が変わり、使用者の身体において体重を支える部位に痛みやしびれが生じることが抑制される。また、座面に接する部位が空気に触れることにより、着座した使用者の身体において体重を支える部位などの蒸れが抑制される。一対のエアバッグ1は、同じタイミングで膨張させるか、もしくは異なるタイミングで膨張させる。両エアバッグ1を異なるタイミングで膨張させる際には、交互に膨張させることが好ましい。
【0025】
エアバッグ1を移動させるには、シート3が開位置にある状態において(図3参照)、引出部111を摘み、手動で前後方向にスライドさせる。すなわち、スライド孔361,362と引出部111とにより移動機構が構成される。この移動機構により、シート3における使用者が着座する位置に応じてエアバッグ1を前後方向に移動させることができ、シート3におけるエアバッグ1と着座した使用者の身体において体重を支える部位との位置を合わせることができる。
【0026】
また、エアバッグ1は、例えば、固定ねじを用いて凹部351,352に対して位置固定される。一例としては、エアバッグ1を枠体に嵌め込み、枠体を凹部351内に配置する。枠体にはスライド孔361に重なる箇所に貫通孔が設けられており、固定ねじを貫通孔およびスライド孔361に挿通させる。シート器台30内に突出した固定ねじにナットなどを取り付け、座板31を狭持することにより、エアバッグ1を位置固定する。同様に、凹部352内のエアバッグ1についても位置固定される。
【0027】
なお、使用者の着座部位に施療する施療子としては、エアバッグに代えて肩たたき用のマッサージ器に用いられるソレノイドや、振動を利用したマッサージ器に用いられるバイブレータなどを採用してもよい。また、マッサージチェアに用いられ指圧やもみなどの動作を行うモミ玉を施療子として採用してもよい。本実施形態においては、施療子(エアバッグ1)はシート器台30の凹部351,352に配置されているが、施療子はクッション材34の上に配置してもよい。本実施形態のマッサージ装置は、使用者が着座する座席であれば設けることができ、例えば、自動車のシートや椅子などにも設けることができる。
【0028】
(実施形態2)
本実施形態においては、図6に示すように、一対のエアバッグ1の移動方向が平行ではない点が実施形態1と相違する。
【0029】
凹部351の長手方向に沿った中心線は、前端部が後端部よりも左側に位置し、凹部352の長手方向に沿った中心線は、前端部が後端部よりも右側に位置する。これにより、凹部351の長手方向に沿った中心線と凹部352の長手方向に沿った中心線との距離は、前側のほうが小さくなる。つまり、凹部351および凹部352は、前方に向かうにつれて互いに距離を狭めるように設けられる。したがって、凹部351および凹部352にそれぞれ配置されたエアバッグ1は、前側に位置するほど互いの左右方向の間隔を狭め、後側に位置するほど互いの左右方向の間隔を広げる。
【0030】
一般に、自動二輪車2は、使用者の体格差によりシート3における使用者の着座する位置が変わり、身長の低い使用者ほどシート3の前側に着座する。また、使用者の身長と体の横幅との関係については、統計上、身長の低い人のほうが体の横幅が狭いという傾向がある。そのため、エアバッグ1が前側に位置するほど一対のエアバッグ1の左右方向の間隔を狭めることにより、左右方向についても、使用者の体格に応じてシート3におけるエアバッグ1と着座した使用者の身体において体重を支える部位との位置を合わせることができる。
【0031】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0032】
(実施形態3)
本実施形態は、図7に示すように、凹部351と凹部352とを一体に連結した凹部350を備える点で実施形態1と相違する。凹部350における左右方向の中央部には、上下方向に貫通したつまみ用孔38が前後方向に沿って設けられる。
【0033】
図8に示すように、左右方向の寸法が前後方向の寸法よりも大きい板状の施療子台12が設けられる。施療子台12の下面における中央部には、つまみ15が突設される。施療子台12の上面における左右両端部には、矩形状に開口しエアバッグ1が嵌る取付凹部131,132がそれぞれ設けられる。取付凹部131の中央部には、上下方向に貫通した給排筒用孔141が設けられる。同様に、取付凹部132には、給排筒用孔142が設けられる。
【0034】
取付凹部131には、エアバッグ1が、引出部111を給排筒用孔141に挿通させ取り付けられる。同様に、取付凹部132には、エアバッグ1が、引出部111を給排筒用孔142に挿通させ取り付けられる。
【0035】
エアバッグ1を取り付けた施療子台12の厚みは、凹部350の深さと略等しく、左右方向の寸法は凹部350の左右方向の幅と略等しい。一方、施療子台12の前後方向の寸法は凹部350の前後方向の幅よりも小さい。施療子台12は、凹部350に嵌る。このとき、つまみ15はつまみ用孔38に挿通され、給排筒用孔141,142から突出する各引出部111は、スライド孔361,362にそれぞれ挿通される。
【0036】
つまみ15は、つまみ用孔38の前端と後端との間を移動可能である。給排筒用孔141から突出する引出部111は、スライド孔361の前端と後端との間を移動可能である。同様に、給排筒用孔142から突出する引出部111は、スライド孔362の前端と後端との間を移動可能である。施療子台12の前後方向の寸法は凹部350の前後方向の幅よりも小さいので、施療子台12は、凹部350の内部において前後方向へ移動可能になる。
【0037】
施療子台12を前後に移動させると、施療子台12に取り付けられたエアバッグ1は前後に移動する。これにより、一対のエアバッグ1を一体にして前後に移動させることができ、シート3におけるエアバッグ1と着座した使用者の身体において体重を支える部位との位置を合わせることが容易になる。施療子台12を移動させるには、シート3が開位置にある状態において(図3参照)、つまみ15を摘み、手動で前後方向にスライドさせる。すなわち、つまみ用孔38とつまみ15とにより台移動機構が構成される。
【0038】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【符号の説明】
【0039】
1 エアバッグ(施療子)
3 シート(座席)
111 引出部(移動機構)
361,362 スライド部(移動機構)
12 施療子台
15 つまみ(台移動機構)
38 つまみ用孔(台移動機構)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席と、前記座席の一部に配置され使用者の着座部位に施療する施療子と、前記座席の前後方向において前記施療子の位置を調節する移動機構とを備えることを特徴とするマッサージ装置。
【請求項2】
前記施療子は一対設けられ、一対の前記施療子は、前後方向に沿う前記座席の中心線を挟んで左右両側にそれぞれ配置されており、前記移動機構は、前記施療子が前側に位置するほど左右方向における一対の前記施療子間の距離を小さくすることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ装置。
【請求項3】
前記施療子は複数設けられ、複数の前記施療子が取り付けられた施療子台と、前記座席の前後方向において前記施療子台の位置を調節する台移動機構とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ装置。
【請求項4】
前記施療子は複数設けられ、少くとも2個の前記施療子は、使用者の着座部位に異なるタイミングで施療することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のマッサージ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−22289(P2013−22289A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160674(P2011−160674)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】