説明

マッチングプログラム、マッチングサーバ及びゲームシステム

【課題】プレイの実力が拮抗したプレイヤ同士をより適切にマッチングさせることが可能なマッチングプログラム、マッチングサーバ及びゲームシステムを提供する。
【解決手段】マッチングプログラムは、コンピュータを、プレイヤIDと実力レーティングと暫定レーティングとプレイ回数とを対応付けて記憶するレーティング記憶部23と、プレイヤIDを受け付けるプレイヤ受付手段11と、プレイヤIDに対応するプレイ回数が所定回数未満の場合に暫定レーティングを用い、所定回数以上である場合に実力レーティングを用いてマッチングを行うマッチング手段14と、対戦プレイのプレイ結果に応じて新たな実力レーティングと実力レーティングよりも上下の振れ幅を大きくした新たな暫定レーティングとを算出し、プレイ回数を加算するプレイ結果処理手段15と、プレイヤIDに対応付けてレーティング記憶部23を更新する更新手段16と、して機能させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対戦プレイのマッチングプログラム、マッチングサーバ及びゲームシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
対戦プレイは、プレイの実力が拮抗したプレイヤ同士でプレイする方が、プレイの実力が離れたプレイヤ同士でプレイするよりも白熱した面白いプレイができる。このことから、対戦プレイにおいて、プレイの実力が拮抗したプレイヤ同士をマッチングさせることが行われている。例えば、ゲーム機に入力されたプレイ操作が所定レベルに達しているプレイヤが行うプレイ操作か否かを判定するために予め設定された条件を充足するか否かに基づいて、プレイレベルが所定レベルに達しているプレイヤを検出して上級者フラグを設定し、そのフラグによってマッチングを行うゲームシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−254979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のゲームシステムは、例えば、プレイ準備段階時に、上級者がメニュー画面等で選択する内容が上級者フラグを設定する条件に合致した場合に、上級者であると推定してマッチングをするものであった。よって、特許文献1に記載のゲームシステムでは、予め設定された条件をたまたま充足したために、上級者であると推定されて上級者フラグが設定された初心者は、上級者とばかりマッチングする事態が生じていた。
【0005】
本発明の課題は、プレイの実力が拮抗したプレイヤ同士をより適切にマッチングさせることが可能なマッチングプログラム、マッチングサーバ及びゲームシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。また、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【0007】
第1の発明は、対戦プレイをするプレイヤ同士のマッチングを、プレイに対するプレイヤの能力が高いほど大きな数値で表した実力レーティングを用いて決定するマッチングプログラム(22)であって、コンピュータ(1)を、前記プレイヤを識別するプレイヤ識別情報と、前記実力レーティングと、前記実力レーティングの暫定値である暫定レーティングと、プレイ回数とを対応付けて記憶するレーティング記憶手段(23)と、前記プレイヤ識別情報を受け付けるプレイヤ受付手段(11)と、プレイヤ受付手段によって受け付けた前記プレイヤ識別情報に対応する前記レーティング記憶手段の前記プレイ回数が所定回数未満の場合に、前記実力レーティングに代えて前記暫定レーティングを用いてマッチングを行い、所定回数以上である場合に、前記実力レーティングを用いてマッチングを行うマッチング手段(14)と、前記マッチング手段により決定されたプレイヤ同士による対戦プレイのプレイ結果に応じて、前記実力レーティングを上下させた新たな実力レーティングを算出し、前記暫定レーティングを前記実力レーティングよりも上下の振れ幅を大きくした新たな暫定レーティングを算出し、プレイ回数を加算するプレイ結果処理手段(15)と、前記プレイ結果処理手段により算出された前記新たな実力レーティング及び前記新たな暫定レーティングと、加算されたプレイ回数とを、前記プレイヤ識別情報に対応付けて前記レーティング記憶手段を更新する更新手段(16)と、して機能させること、を特徴とするマッチングプログラムである。
第2の発明は、第1の発明のマッチングプログラム(22)において、前記コンピュータ(1)を、前記プレイヤ受付手段(11)により受け付けた前記プレイヤ識別情報が前記レーティング記憶手段(23)に記憶されているか否かを判定する初回プレイ判定手段(12)と、前記初回プレイ判定手段により前記プレイヤ識別情報が記憶されていないと判定されたことに応じて、前記プレイヤ識別情報に対応する前記暫定レーティング及び前記プレイ回数を所定の値に設定して、前記レーティング記憶手段に記憶する初期設定手段(13)と、して機能させること、を特徴とするマッチングプログラムである。
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明のマッチングプログラム(22)において、前記プレイ結果処理手段(15)を、前記新たな暫定レーティングを、前記プレイ回数が増加することに応じて前記上下の振れ幅を小さくして算出するように機能させること、を特徴とするマッチングプログラムである。
第4の発明は、第1の発明から第3の発明までのいずれかのマッチングプログラム(22)において、前記更新手段(16)を、前記プレイ結果処理手段(15)により算出された前記新たな実力レーティングと前記新たな暫定レーティングとの差の絶対値が所定の値以下になった場合に、前記新たな暫定レーティングを前記新たな実力レーティングに一致させて前記レーティング記憶手段(23)を更新するように機能させること、を特徴とするマッチングプログラムである。
第5の発明は、第1の発明から第4の発明までのいずれかのマッチングプログラム(22)において、前記コンピュータ(1)を、前記プレイ結果処理手段(15)により算出された前記新たな実力レーティングを表示可能に出力する実力レーティング出力手段(17)として機能させること、を特徴とするマッチングプログラムである。
【0008】
第6の発明は、第1の発明から第5の発明までのいずれかのマッチングプログラム(22)を記憶する記憶部(20)と、前記記憶部に記憶された前記マッチングプログラムを実行する制御部(10)と、を備えるマッチングサーバ(1)である。
【0009】
第7の発明は、第6の発明のサーバ(1)と、前記サーバに対して通信ネットワーク(2)を介して接続され、前記プレイヤが操作をするゲーム機(3)と、を備えるゲームシステム(100)である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明は、プレイ回数が所定回数未満の場合に、実力レーティングに代えて暫定レーティングを用いてマッチング処理を行う。暫定レーティングは、実力レーティングよりも、プレイの勝敗に応じて上下の振れ幅を大きくしたレートである。よって、新規のプレイヤIDでプレイをするプレイヤが上級者である場合や初心者である場合等、平均的なプレイヤではない場合に、プレイ回数の少ない早い段階からそのプレイヤの実力にあったレーティングの相手と対戦プレイをさせることができる。
【0011】
(2)本発明は、初回プレイの場合には、マッチングで用いるレーティングを所定の値に設定する。よって、例えば、所定の値を、平均的なプレイヤの実力レーティングにすることで、初回プレイであっても、平均的な実力のプレイヤと対戦できる。
(3)本発明は、暫定レーティングを、プレイ回数が増加することで上下の振れ幅を小さく算出する。よって、暫定レーティングを、プレイヤに気づかれないように徐々に実力レーティングに近づけることができる。
【0012】
(4)本発明は、実力レーティングと暫定レーティングとのレート差の絶対値が所定の値以下になった場合に、暫定レーティングを、実力レーティングに一致させるので、暫定レーティングを実力レーティングに収束でき、以降は、実力レーティングでレーティングを管理できる。
(5)本発明は、実力レーティングを、例えば、ゲーム機に表示するために出力する。よって、プレイヤは、実力レーティングを見て認識してプレイができる。また、暫定レーティングによって対戦相手のプレイヤをマッチングしていることを、プレイヤに気づかれずに行うことができる。さらに、実際には、暫定レーティングを用いてマッチングした結果決定したプレイヤとプレイをしているので、拮抗した実力のプレイヤ同士で対戦プレイができ、プレイ自体を楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係るゲームシステムの全体構成並びにマッチングサーバ及びゲーム機の機能構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るメイン処理のフローチャートである。
【図3】本実施形態に係るレーティング記憶部の例を示す図である。
【図4】本実施形態に係るプレイヤが上級者の場合の実力レーティング及び暫定レーティングの遷移の例を示す図である。
【図5】本実施形態に係るプレイヤが初心者の場合の実力レーティング及び暫定レーティングの遷移の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
以下、本発明を実施するための形態について、図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
図1は、本実施形態に係るゲームシステム100の全体構成並びにマッチングサーバ1及びゲーム機3の機能構成を示す図である。
ゲームシステム100は、マッチングサーバ1と、通信ネットワーク2と、複数のゲーム機3(3A,3B,…)とから構成されている。マッチングサーバ1と、複数のゲーム機3とは、通信ネットワーク2を介して接続されている。
【0015】
マッチングサーバ1は、複数のゲーム機3で対戦プレイをするプレイヤ同士をマッチングさせるサーバである。マッチングサーバ1は、制御部10と、記憶部20とを備える。
制御部10は、プレイヤ受付手段11と、初回プレイ判定手段12と、初期設定手段13と、マッチング手段14と、プレイ結果処理手段15と、更新手段16と、実力レーティング出力手段17とを備える。
制御部10は、情報の演算、及び処理を行う中央処理装置(CPU)であり、当該マッチングサーバ1の全体を制御するものである。制御部10は、記憶部20に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、マッチングサーバ1のハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。
【0016】
プレイヤ受付手段11は、ゲーム機3から対戦プレイをするプレイヤのプレイヤID(ID:identifier、プレイヤ識別情報)を受け付ける制御部である。ここで、プレイヤIDは、プレイヤに個別に割り当てられた、プレイヤを特定する一意の記号である。
初回プレイ判定手段12は、プレイヤ受付手段11が受け付けたプレイヤIDが、初回プレイのプレイヤIDであるか否かを判定する制御部である。初回プレイのプレイヤIDであるか否かは、後述するレーティング記憶部23にプレイヤIDが記憶されているか否かで判断する。
初期設定手段13は、そのプレイヤIDでのプレイが初回である場合に、後述するレーティング記憶部23に、そのプレイヤIDのレコードを追加して、所定の初期値を設定する制御部である。
【0017】
マッチング手段14は、対戦プレイをしようとしているプレイヤ同士をマッチングする制御部である。
プレイ結果処理手段15は、対戦プレイのプレイ結果に基づいて、レーティングに関する各種の処理をする制御部である。
更新手段16は、プレイ結果処理手段15による処理結果を用いて、レーティング記憶部23を更新する制御部である。
実力レーティング出力手段17は、対戦プレイを行うゲーム機3に表示させる実力レーティングを出力する制御部である。
なお、これら各手段の詳細は、後述する。
【0018】
ここで、実力レーティングについて説明する。実力レーティングとは、プレイの強さであるプレイヤのプレイ能力を数値で表したものをいう。実力レーティングは、大きい数値で表されるほど、プレイ能力が高く上級であることを表す。実力レーティングは、例えば、イロレーティングの手法を用いて算出できる。
イロレーティングの手法を用いた実力レーティングは、以下の3つを基本にして算出する。
(1)プレイの結果は、一方の勝ちで他方の負けのみにする。引き分けの場合は、0.5勝0.5敗として取扱う。そして、勝ち数を、勝ちの場合は「1」、負けの場合は「0」、引き分けの場合は「0.5」にする。
(2)対戦相手のプレイヤとのレートの差が200の場合には、レートが高いプレイヤが75%の確率で勝利するものとする。
(3)平均的なプレイヤの実力レーティングを1500とする。
【0019】
2人のプレイヤA,Bによる対戦プレイを仮定する。プレイヤA,Bの対戦プレイ前の実力レーティングをそれぞれRA,RBとした場合に、各々のプレイヤが勝利する確率EA,EBは、以下の式で算出される。
【数1】

そして、実際に何回かプレイをした結果、プレイヤAの勝ち数の合計がSAであった場合、Aの新たな実力レーティングRANEWは、以下の式で算出できる。
【数2】

この実力レーティングは、レーティングの数値の高い対戦相手に勝つと、その数値が大きく上昇するが、レーティングの数値の低い対戦相手に勝利しても、その数値があまり上昇しないように調整されている。
【0020】
記憶部20は、ゲームプログラム21と、マッチングプログラム22と、レーティング記憶部23とを備える。
ゲームプログラム21及びマッチングプログラム22は、制御部10で実行される処理を行うためのコンピュータプログラムである。ゲームプログラム21及びマッチングプログラム22は、1つのプログラムであってもよい。また、ゲームプログラム21は、通信ネットワーク2を介してマッチングサーバ1と接続された他のサーバの記憶部に有してもよい。
レーティング記憶部23は、プレイヤIDごとに、実力レーティング等のマッチングに必要な値を対応付けて記憶する。記憶部20は、その他、一時記憶領域として、各種プログラムの実行時に、テーブル等を展開するためのローカルメモリ、及びキャッシュメモリを含んでよい。
【0021】
記憶部20を実現するものとして、電気的、磁気的、光学的、電磁的に実現するものを含んでよい。より具体的には、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリー・メモリ(ROM)等を含む半導体記憶装置、磁気ディスク等が含まれる。
なお、本発明でいうコンピュータとは、記憶装置、制御部等を備えた情報処理装置をいい、マッチングサーバ1は、記憶部20、制御部10等を備えた情報処理装置であり、本発明のコンピュータの概念に含まれる。
なお、マッチングサーバ1を構成するハードウェアの数に制限はない。必要に応じて、1又は複数で構成してもよい。また、マッチングサーバ1のハードウェアは、必要に応じてアプリケーションサーバ、データベースサーバ等の各種サーバを含んで構成してもよく、1台のサーバで構成しても、それぞれ別のサーバで構成してもよい。
【0022】
通信ネットワーク2は、マッチングサーバ1と、ゲーム機3との間の通信を行うための、例えば、インターネット等の通信網である。通信ネットワーク2は、有線の通信であっても無線通信であってもよい。
ゲーム機3は、プレイヤが対戦プレイをするためのゲーム装置である。ゲーム機3は、例えば、格闘ゲームを行う装置であり、ゲームセンタ等の遊戯施設に設置されている。ゲーム機3は、同一の施設に設置されていても、異なる施設等に設置されていてもよい。
ゲーム機3は、表示部31と、入力部32と、制御部33と、記憶部34と、リーダライタ部35とを備える。
【0023】
表示部31は、プレイ画面を表示するモニタである。
入力部32は、プレイヤからプレイに対する操作を受け付ける装置であり、例えば、ボタンやジョイスティック等のコントローラである。
制御部33は、情報の演算、及び処理を行う中央処理装置であり、ゲーム機3の全体を制御するものである。制御部33は、記憶部34に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、ゲーム機3のハードウェアと協働して各種機能を実現している。
記憶部34は、プレイ画像を生成するプログラム等を記憶する。
リーダライタ部35は、プレイヤが持参したプレイカードを読み取り、書き込むための装置である。プレイカードには、例えば、プレイヤを識別するプレイヤIDが記憶されており、プレイヤがプレイカードをリーダライタ部35に挿入等して読み取らせることで、制御部33は、プレイヤIDを取得できる。
【0024】
次に、マッチングサーバ1の処理について説明する。ここでは、ゲーム機3Aを操作するプレイヤP1(図1参照)に対するマッチング処理を行って、1人対1人の対戦プレイを行う場合の処理について説明する。
図2は、本実施形態に係るメイン処理のフローチャートである。
図3は、本実施形態に係るレーティング記憶部23の例を示す図である。
最初に、プレイヤP1は、プレイヤIDが記憶されたプレイカードを、ゲーム機3Aのリーダライタ部35に読み取らせることで、ゲーム機3Aは、プレイカードに記憶されたプレイヤIDを取得する。
【0025】
図2のステップS1において、マッチングサーバ1の制御部10(プレイヤ受付手段11)は、ゲーム機3Aから送信されたプレイヤIDを受け付ける。
ステップS2において、制御部10(初回プレイ判定手段12)は、受け付けたプレイヤIDがレーティング記憶部23のプレイヤID23a(図3参照)に存在するか否かを判断する。レーティング記憶部23に存在する場合(ステップS2:YES)には、制御部10は、処理をステップS4に移す。他方、レーティング記憶部23に存在しない場合(ステップS2:NO)には、制御部10は、処理をステップS3に移す。
【0026】
ここで、レーティング記憶部23について、図3に基づき説明する。
図3に示すレーティング記憶部23は、プレイヤIDごとに、最新状態の実力レーティング及び暫定レーティングと、プレイ回数とを対応付けて記憶しており、プレイヤID23aと、実力レーティング23bと、暫定レーティング23cと、プレイ回数23dとの各項目を有する。
プレイヤID23aには、対戦プレイをするプレイヤであるレーティング記憶部23への登録を希望したプレイヤのプレイヤIDを格納する。
【0027】
実力レーティング23bには、プレイヤのプレイの強さを数値で表す実力レーティングを格納する。
暫定レーティング23cには、実力レーティングよりも1回ごとのプレイ結果を反映した際の上下の振れ幅の大きい値である暫定レーティングを格納する。暫定レーティングとは、プレイ回数が少ないプレイヤによるマッチングの際に暫定的に使用されるレーティングをいう。
プレイ回数23dは、各プレイヤが対戦プレイを行った回数を格納する。
【0028】
図2に戻り、ステップS3において、制御部10(初期設定手段13)は、初期設定処理を行う。初期設定処理では、初期設定手段13が、レーティング記憶部23に、プレイヤID23aがプレイヤP1のプレイヤIDのレコードを追加して記憶する。初期設定手段13は、追加したレコードの実力レーティング23b及び暫定レーティング23cには平均値である初期値を格納し、プレイ回数23dには、未実施であるため「0」を格納する。例えば、図3のレーティング記憶部23に記憶されたプレイヤID23aが「P3」のレコードは、初期設定処理によって追加されたレコードである。
ステップS4において、制御部10(マッチング手段14)は、レーティング記憶部23からプレイヤP1のプレイヤIDに対応するプレイ回数を取得し、プレイ回数が所定数(例えば、20回)未満であるか否かを判断する。所定数未満である場合(ステップS4:YES)には、制御部10は、処理をステップS5に移す。他方、所定回数以上である場合(ステップS4:NO)には、制御部10は、処理をステップS6に移す。
【0029】
ステップS5において、制御部10(マッチング手段14)は、レーティング記憶部23からプレイヤP1のプレイヤIDに対応する暫定レーティングを取得する。その後、制御部10は、処理をステップS7に移す。
ステップS6において、制御部10(マッチング手段14)は、レーティング記憶部23からプレイヤP1のプレイヤIDに対応する実力レーティングを取得する。
ステップS7において、制御部10(マッチング手段14)は、プレイ回数に応じて取得した暫定レーティング又は実力レーティングを用いてマッチング処理を行って、対戦相手を決定する。マッチング処理は、例えば、マッチング処理で用いるために取得した暫定レーティング又は実力レーティングが拮抗した値であるプレイヤ同士を選択して、対戦プレイをする相手として決定する。
【0030】
このように、マッチングサーバ1は、プレイ回数が所定数未満の場合に、実力レーティングに代えて暫定レーティングを用いてマッチング処理を行う。暫定レーティングは、実力レーティングよりも、プレイの勝敗に応じて上下の振れ幅を大きくしたレートである。この上下の振れ幅を大きくすることによって、マッチングサーバ1は、プレイの勝敗に応じて、プレイの技量を極端に大きくした暫定レーティングに反映することができる。よって、新規のプレイヤIDでプレイをするプレイヤP1が上級者である場合や初心者である場合等、平均的なプレイヤではない場合に、プレイヤP1は、プレイ回数の少ない早い段階からそのプレイヤの実力にあったレーティングの相手と対戦プレイをすることができる。
また、レーティング記憶部23にプレイヤIDが記憶されていないプレイヤP1による初回プレイの場合には、制御部10は、マッチングで用いる暫定レーティングを、初期値に設定する。初期値は、平均的なプレイヤの実力レーティングであるので、初回プレイであっても、マッチングの結果、平均的な実力のプレイヤと対戦できる。
【0031】
ステップS8において、制御部10は、ステップS7で決定したプレイヤ同士での対戦プレイに関するプレイ処理を行う。その際、制御部10(実力レーティング出力手段17)は、プレイヤP1と対戦相手との両者の実力レーティングを、ゲーム機3Aに出力することで、ゲーム機3Aでは、実力レーティングを表示部31に表示する。その結果、ゲーム機3AのプレイヤP1は、自分の実力レーティングと、対戦相手の実力レーティングとを比較して見ることができる。また、マッチングサーバ1が暫定レーティングによって対戦相手のプレイヤをマッチングしている場合であっても、ゲーム機3Aの表示部31には実力レーティングが表示されるので、実力レーティングによってマッチングしているとプレイヤP1に思い込ませて、暫定レーティングによってマッチングしていることをプレイヤP1に気づかれることがない。さらに、プレイヤP1は、実際には、暫定レーティングを用いてマッチングした結果決定したプレイヤとプレイをしているので、拮抗した実力のプレイヤ同士で対戦プレイができ、プレイ自体を楽しむことができる。
【0032】
ステップS9において、制御部10(プレイ結果処理手段15)は、対戦プレイが終了したか否かを判断する。プレイが終了した場合(ステップS9:YES)には、制御部10は、処理をステップS10に移す。他方、プレイが終了していない場合(ステップS9:NO)には、制御部10は、処理をステップS8に移して引続きプレイ処理を行う。
ステップS10において、制御部10(プレイ結果処理手段15)は、プレイ開始時点でのプレイヤP1と対戦相手との実力レーティング及びプレイ結果とに基づいて、新たな実力レーティングを算出する。
【0033】
ステップS11において、制御部10(プレイ結果処理手段15)は、新たな暫定レーティングを算出する。暫定レーティングは、実力レーティングよりも変動する値の上下幅の最大値を大きくしたものである。例えば、実力レーティングの振れ幅をWfとし、プレイ回数をnとした場合に、暫定レーティングの振れ幅Wpは、以下の式で算出される。但し、暫定レーティングの振れ幅の最大値は199である。また、プレイ回数が20回で、実力レーティングに収束するものとする。
【数3】

そして、振れ幅Wpを用いて仮暫定レーティング(仮暫定R)を、振れ幅Wfを用いて実力レーティング(R)を、それぞれ計算した後、新たな暫定レーティング(暫定R)を、以下の式で算出する。
【数4】

このように、マッチングサーバ1は、暫定レーティングを、プレイ回数が増加することで、上下の振れ幅を小さく算出するので、暫定レーティングを、プレイヤP1に気づかれないように徐々に実力レーティングに近づけることができる。
【0034】
ステップS12において、制御部10(プレイ結果処理手段15)は、プレイ回数に1を加算する。
ステップS13において、制御部10(更新手段16)は、更新処理を行う。更新処理として、制御部10は、レーティング記憶部23のプレイヤP1のプレイヤIDに対応する暫定レーティング、実力レーティング、及びプレイ回数の値を、ステップS10からステップS12において算出した各々の値に更新する。なお、暫定レーティングと実力レーティングとの差の絶対値が所定の値(例えば、50)以下になった場合に、レーティング記憶部23の暫定レーティング23cに、実力レーティングを格納するようにしてもよい。そのようにすることで、マッチングサーバ1は、暫定レーティングを実力レーティングに収束でき、以降は、実力レーティングでレーティングを管理できる。その後、制御部10は、本処理を終了する。
【0035】
このように、マッチングサーバ1では、プレイ回数の少ないプレイヤIDを使用した場合には、暫定レーティングを用いる。よって、新たなプレイカードを用いて新規登録したプレイヤP1が、プレイ技量の高い上級者のプレイヤであっても、プレイ回数の少ない早い段階から、暫定レーティングをプレイヤP1の実力を示す適正値に近づけることができるので、プレイヤの実力が拮抗したプレイヤ同士でのマッチングを実現できる。結果として、上級者のプレイヤが初心者ばかりとプレイして、勝ち続けるといった好ましくない行為を、早い段階から阻止できる。
【0036】
次に、実際にプレイを行った際のレーティングの具体例を説明する。
図4及び図5は、本実施形態に係る実力レーティング及び暫定レーティングの遷移の例を示す図である。
図4は、プレイヤが上級者の場合の、図5は、プレイヤが初心者の場合の一例である。
プレイヤが上級者の場合、初心者の場合のいずれの場合も、暫定レーティングは「1500」である(図4(a)(1)及び図5(a)(6)参照)。最初の対戦相手は、暫定レーティングの「1500」に基づいてマッチングされるので(図3のステップS5、ステップS7)、「1500」に近い値の実力レーティングを有する中級者のプレイヤをマッチング処理で決定する。例えば、初回対戦時に、上級者のプレイヤは、対戦相手の実力レーティングが「1520」のプレイヤと対戦する(図4(a)(2))。このマッチング対象にする対戦相手は、プレイ回数が所定回数(例えば、20回)以上等の、実力レーティングが実際の実力に伴った値であるプレイヤにすることが望ましい。
【0037】
上級者のプレイヤは、実際の実力がマッチングで用いた暫定レーティングの「1500」よりも上であるので、マッチング処理で決定したプレイヤに対して勝利する確率が高い。上級者のプレイヤが勝利した場合には、実力レーティングが「16」上昇するのに対して、暫定レーティングが「169」上昇している(図4(a)(3),(4))。
次に対戦プレイをする場合(プレイ回数:2回目)には、制御部10は、暫定レーティングの「1669」に基づきマッチングを行う(図3のステップS5、ステップS7)。そして、実力レーティングが「1685」のプレイヤと対戦する(図4(a)(5))。その対戦プレイでゲーム機3の表示部31に表示されるレーティングは、暫定レーティングの「1669」ではなく、実力レーティングの「1516」である。
【0038】
上級者のプレイヤがさらに勝利した場合には、暫定レーティングがさらに上昇する。横軸がプレイ回数の暫定レーティングのグラフを図4(b)に、実力レーティングのグラフを図4(c)に示す。これらのグラフが示すように、暫定レーティングは、1回の勝敗によりその値が激しく上下に変動するが、実力レーティングは、変動幅が小さく、緩やかに上昇している。そして、プレイ回数が増えるのに応じて、暫定レーティングと実力レーティングとが近似する。制御部10は、所定のプレイ回数に達した場合に、暫定レーティングを実力レーティングにして、レーティングを1本化することができる。
【0039】
図5に示す初心者のプレイヤの場合にも、横軸がプレイ回数の暫定レーティングのグラフ(図5(b))と、実力レーティングのグラフ(図5(c))とが示すように、暫定レーティングは1回の勝敗により、その値が激しく上下に変動するが、実力レーティングは、変動幅が小さく、緩やかに下降している。そして、プレイ回数に応じて、暫定レーティングと実力レーティングとが近似する。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述した実施形態及び後述する変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0041】
(変形形態)
(1)本実施形態において、プレイカードに記憶されたプレイヤIDを用いるプレイの例を示したが、これに限定されない。例えば、プレイヤIDやパスワードをゲーム機から入力して認証するものでもよい。また、ゲーム機は、業務用ゲーム機を例に説明したが、家庭用ゲーム機やパーソナルコンピュータ等であってもよい。
(2)本実施形態において、複数のゲーム機の各々でプレイをするプレイヤのレーティングを用いたマッチングの例を示したが、これに限定されない。例えば、1つのゲーム機で複数人プレイができる場合に、その複数人から2人のプレイヤを決定する場合に用いてもよい。また、複数人対複数人での対戦プレイのマッチングに用いてもよい。
【0042】
(3)本実施形態において、実力レーティングにイロレーティングを用いて説明したが、これに限定されない。また、暫定レーティングの計算式も一例にすぎず、実力レーティングよりも大きく上下するものであれば、種々の計算式が考えられる。さらに、暫定レーティングを使用する場合を、所定の回数を20回として、所定数未満である場合として説明したが、これに限定されない。例えば、回数が前後しても構わない。
【0043】
(4)本実施形態において、プレイ処理をマッチングサーバで行うものとして説明したが、別サーバで行ってもよい。その場合、プレイ結果を、プレイ処理を行う別サーバから取得することで実現できる。また、プレイ開始と共に制御をゲーム機に移して、プレイ処理をゲーム機同士で行い、プレイ終了結果をマッチングサーバが取得するようにしてもよい。
(5)本実施形態において、格闘ゲームを例に説明したが、これに限定されず、他の種類のゲームの対戦プレイであっても使用できる。対戦プレイとして、運によりプレイ結果が左右するものではなく、プレイヤの技量がプレイ結果に関係するものであれば、どのような種類のゲームであってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…マッチングサーバ、 3,3A…ゲーム機、 10…制御部、 11…プレイヤ受付手段、 12…初回プレイ判定手段、 13…初期設定手段、 14…マッチング手段、 15…プレイ結果処理手段、 16…更新手段、 17…実力レーティング出力手段、 20…記憶部、 22…マッチングプログラム、 23…レーティング記憶部、 31…表示部、 35…リーダライタ部、 100…ゲームシステム、 P1…プレイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対戦プレイをするプレイヤ同士のマッチングを、プレイに対するプレイヤの能力が高いほど大きな数値で表した実力レーティングを用いて決定するマッチングプログラムであって、
コンピュータを、
前記プレイヤを識別するプレイヤ識別情報と、前記実力レーティングと、前記実力レーティングの暫定値である暫定レーティングと、プレイ回数とを対応付けて記憶するレーティング記憶手段と、
前記プレイヤ識別情報を受け付けるプレイヤ受付手段と、
プレイヤ受付手段によって受け付けた前記プレイヤ識別情報に対応する前記レーティング記憶手段の前記プレイ回数が所定回数未満の場合に、前記実力レーティングに代えて前記暫定レーティングを用いてマッチングを行い、所定回数以上である場合に、前記実力レーティングを用いてマッチングを行うマッチング手段と、
前記マッチング手段により決定されたプレイヤ同士による対戦プレイのプレイ結果に応じて、前記実力レーティングを上下させた新たな実力レーティングを算出し、前記暫定レーティングを前記実力レーティングよりも上下の振れ幅を大きくした新たな暫定レーティングを算出し、プレイ回数を加算するプレイ結果処理手段と、
前記プレイ結果処理手段により算出された前記新たな実力レーティング及び前記新たな暫定レーティングと、加算されたプレイ回数とを、前記プレイヤ識別情報に対応付けて前記レーティング記憶手段を更新する更新手段と、
して機能させること、
を特徴とするマッチングプログラム。
【請求項2】
請求項1に記載のマッチングプログラムにおいて、
前記コンピュータを、
前記プレイヤ受付手段により受け付けた前記プレイヤ識別情報が前記レーティング記憶手段に記憶されているか否かを判定する初回プレイ判定手段と、
前記初回プレイ判定手段により前記プレイヤ識別情報が記憶されていないと判定されたことに応じて、前記プレイヤ識別情報に対応する前記暫定レーティング及び前記プレイ回数を所定の値に設定して、前記レーティング記憶手段に記憶する初期設定手段と、
して機能させること、
を特徴とするマッチングプログラム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のマッチングプログラムにおいて、
前記プレイ結果処理手段を、前記新たな暫定レーティングを、前記プレイ回数が増加することに応じて前記上下の振れ幅を小さくして算出するように機能させること、
を特徴とするマッチングプログラム。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のマッチングプログラムにおいて、
前記更新手段を、前記プレイ結果処理手段により算出された前記新たな実力レーティングと前記新たな暫定レーティングとの差の絶対値が所定の値以下になった場合に、前記新たな暫定レーティングを前記新たな実力レーティングに一致させて前記レーティング記憶手段を更新するように機能させること、
を特徴とするマッチングプログラム。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のマッチングプログラムにおいて、
前記コンピュータを、前記プレイ結果処理手段により算出された前記新たな実力レーティングを表示可能に出力する実力レーティング出力手段として機能させること、
を特徴とするマッチングプログラム。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のマッチングプログラムを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記マッチングプログラムを実行する制御部と、
を備えるマッチングサーバ。
【請求項7】
請求項6に記載のサーバと、
前記サーバに対して通信ネットワークを介して接続され、前記プレイヤが操作をするゲーム機と、
を備えるゲームシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−217762(P2011−217762A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86279(P2010−86279)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(310009993)株式会社タイトー (207)
【Fターム(参考)】