説明

マット、マットの製造方法、及び、排ガス浄化装置

【課題】 含浸工程及び含浸工程に続く乾燥工程に供した場合に、乾燥時間を短縮することができるマットを提供すること。
【解決手段】 本発明のマットは、無機繊維が互いに絡み合って構成された交絡点からなるマットであって、上記マットには、一方の主面から他方の主面にかけて設けられ、繊維が互いに絡み合わず、繊維同士が互いに平行に配列された非交絡部を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マット、マットの製造方法、及び、排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリカ繊維やアルミナ繊維等の無機繊維を積層してなる不織布状のマットが知られており、このマットは耐熱性や弾性(反発力)等の特性に優れているため、種々の用途に使用されている。
【0003】
例えば、マットは、排ガス浄化装置の構成部材として使用されている。
具体的に説明すると、一般的な排ガス浄化装置は、排ガス処理体、排ガス処理体を収容するケーシング、及び、排ガス処理体とケーシングとの間に配設される保持シール材から構成されており、上述したマットは、この保持シール材を構成する部材として使用されている。なお、保持シール材は、マットを所定形状に切断する切断工程等を経て作製される。
【0004】
不織布状で反発力を有するマットから構成された保持シール材は、所定の保持力を有している。そのため、上記排ガス浄化装置では、排ガス処理体が保持シール材によりケーシング内の所定の位置にしっかりと保持される。また、保持シール材が排ガス処理体とケーシングとの間に配設されているので、振動等が加えられても排ガス処理体がケーシングと接触しにくく、また、排ガス処理体とケーシングとの間からは排ガスが漏れにくい。
【0005】
ここで、保持シール材を使用した排ガス浄化装置を製造する方法としては、例えば、保持シール材を巻き付けた排ガス処理体をケーシングへ圧入する方法が挙げられる。
この製造方法では、圧入しやすくするために、排ガス処理体に巻き付けられた保持シール材の嵩を適度に減らす必要がある。
【0006】
係る保持シール材に用いるマットとして、特許文献1には、アルミナ繊維からなるマットに有機バインダ溶液を含浸させた後、これを乾燥工程に供して圧縮状態で熱風乾燥させることにより製造されるバインダマットが開示されている。
製造されたバインダマットは所定形状に切断され、保持シール材が作製される。
【0007】
また、特許文献2には、アルミナ繊維からなるマットが開示されている。
このアルミナ繊維からなるマットは、焼成前のアルミナ繊維前駆体を圧縮してなる前駆体シートに、複数のバーブ(返し)が形成されたバーブニードルを前駆体シートの厚み方向に抜き差しするバーブニードリング処理を施すことにより、交絡部が形成されたニードリング前駆体シートを作製し、作製されたニードリング前駆体シートを焼成することにより製造される。
製造されたマットは所定形状に切断され、保持シール材が作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−946号公報
【特許文献2】特開昭62−56348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の従来のバインダマットでは、バインダマットを構成する無機繊維が有機バインダにより接着されているため、その嵩が減るとされている。
従って、この従来のバインダマットを所定形状に切断することにより作製された保持シール材でも、その嵩が減り、保持シール材を巻き付けた排ガス処理体をケーシングへ圧入しやすくなると考えられる。
また、排ガス浄化装置の使用時には、高温の排ガスにより有機バインダが熱分解されて保持シール材の形状が復元し、排ガス処理体を良好に保持することができると考えられる。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の従来のバインダマットを製造する場合には、不織布状のマットの吸水性がよく通気性が低いためか、乾燥工程で有機バインダ溶液の分散媒や溶媒を乾燥風を使用して揮発させるのに多大な時間を要し、バインダマットの製造効率が低く、製造コストが高くなるという問題がある。
【0011】
一方、特許文献2に記載の従来のマットでは、その厚さ方向に沿ってバーブニードルが抜き差しされた箇所(交絡部)で無機繊維が複雑に絡み合っており、交絡部を中心としてマットの嵩が減るとされている。
従って、この従来のマットを所定形状に切断することにより製造された保持シール材でも、その嵩が減り、保持シール材を巻き付けた排ガス処理体をケーシングへ圧入しやすくなると考えられる。
【0012】
しかしながら、特許文献2の従来のマットでは、嵩高さが充分に抑えられているとはいえない。
そこで、本発明者が特許文献1に記載の技術を応用し、特許文献2に記載のマットに有機バインダ溶液を含浸させた後、乾燥風により乾燥させてバインダマットを製造してみたところ、やはり不織布状のマットの吸水性がよく通気性が低いためか、特許文献1に記載の従来のバインダマットを製造する場合と同様に、マットを乾燥させるのに多大な時間を要し、マットの製造効率が低く、製造コストが高くなるという問題があることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者が上記課題を解決するために鋭意検討した結果、マットに易通気性の箇所を設ければ、係るマットを乾燥工程に供した場合には、マット内部まで容易に乾燥風が行き渡って乾燥時間を短縮することができるのではないかとの考えに至った。
そして、本発明者が係る考えに基づいてさらに検討を続けた結果、上述した課題を解決することができる本発明のマットを完成させた。
【0014】
即ち、第一の本発明のマットは、無機繊維が互いに絡み合って構成された交絡点からなるマットであって、上記マットには、一方の主面から他方の主面にかけて設けられ、繊維が互いに絡み合わず、繊維同士が互いに平行に配列された非交絡部を有することを特徴とする。
【0015】
第一の本発明のマットに有機バインダ溶液を含浸させて含浸マットを作製し、含浸マットを乾燥風等で乾燥させることによりバインダマットを作製する場合には、乾燥時間を大幅に短縮することができる。そのため、バインダマットの製造効率を高め、製造コストを低く抑えることができる。それゆえ、バインダマットを所定形状に切断するなどして保持シール材を作製する場合には、そのコストを低く抑えることができる。
これについて、図面を用いて以下に説明する。
【0016】
図1(a)は、第一の本発明のマットを模式的に示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示すマットのA−A線断面図である。
【0017】
図1(a)に示す第一の本発明のマット1の形状は、平面視略矩形で所定の厚さを有する平板状である。マット1のその他の構成に関しては、後述する本発明の第一実施形態の記載で説明することとして、以下、主に第一の本発明のマット1の内部の構成について詳しく説明する。
【0018】
図1(a)及び図1(b)に示す第一の本発明のマット1は、無機繊維が互いに絡み合って構成された交絡点からなる(以下、無機繊維が互いに絡み合って構成された交絡点からなるマットのことを、単に無機繊維を含んでなるマットともいう)。
【0019】
第一の本発明のマット1は、一方の主面(以下、第一主面ともいう)10aと、第一主面10aの反対側に位置する他方の主面(以下、第二主面ともいう)10bとを有している。
後述するバーブレスニードリング処理でバーブレスニードルが貫通した第一主面10a上の箇所には、バーブレスニードル貫通点(以下、第一バーブレスニードル貫通点ともいう)11aが形成されており、第二主面10b上には、別のバーブレスニードル貫通点(以下、第二バーブレスニードル貫通点ともいう)11bが形成されている。
そして、第一バーブレスニードル貫通点11aから第二バーブレスニードル貫通点11bにかけてマット1の厚さ方向に沿って非交絡部12が設けられている。
【0020】
図1(b)に示すように、非交絡部12以外の交絡点(非形成領域)14は、無機繊維13bが互いに緩く絡み合うことにより形成されており、不織布状を呈している。
【0021】
一方、第一バーブレスニードル貫通点11aから第二バーブレスニードル貫通点11bにかけて設けられた非交絡部12には、互いに絡み合わず、互いに平行に配列された無機繊維13aが存在している。そのため、非交絡部12は、第一バーブレスニードル貫通点11aから第二バーブレスニードル貫通点11bまで貫通した通気孔様の機能を有する。
従って、マット1の通気性は、第一バーブレスニードル貫通点11a、第二バーブレスニードル貫通点11b及び非交絡部12が形成されていないマットの通気性に比べて高い。
また、非交絡部12には、互いに絡み合っていない無機繊維13aが存在しているので、非交絡部12が複数設けられていたとしても、マット1の反発力(保持シール材の保持力)が低下しすぎることがない。
なお、本明細書において、繊維同士が互いに平行に配列されているとは、非交絡部を構成する大部分の無機繊維同士が互いに実質的に平行に配列されていることをいい、具体的には、非交絡部が切断面に現れるように厚み方向に沿って略垂直にマットを切断し、得られた切断面を顕微鏡又は肉眼で観察した場合に、非交絡部を構成する複数の無機繊維のうち、任意に選択した一の無機繊維と該無機繊維に隣接する他の無機繊維とが互いに交差することがないか、または、任意に選択した一の無機繊維と該無機繊維に隣接する他の無機繊維とが45°以下の角度をもって互いに交差していることをいう。
また、第一バーブレスニードル貫通点11a及び第二バーブレスニードル貫通点11bも非交絡部12に含まれるので、第一バーブレスニードル貫通点11a及び第二バーブレスニードル貫通点11bにも、互いに絡み合わず、互いに平行に配列された無機繊維が存在している。
【0022】
マット1に有機バインダ溶液を含浸させることにより含浸マットを作製し、含浸マットを乾燥風で乾燥させることにより有機バインダが含まれたマット(以下、単に、バインダマットともいう)を作製する場合について説明する。なお、含浸マットは、有機バインダ溶液が含まれていること以外はマット1と変わるところがないので、以下の説明では、図1(b)を参照しながら説明する。
マット1は不織布状であり吸水性がよいので、有機バインダ溶液を含浸させた直後の状態では、含浸マット1’に多量の有機バインダ溶液が含まれている。
しかしながら、含浸マット1’には、通気孔のように機能する非交絡部12’、第一バーブレスニードル貫通点11a’及び第二バーブレスニードル貫通点11b’が形成されているので、含浸マット1’に含まれる過剰な有機バインダ溶液は、非交絡部12’、第一バーブレスニードル貫通点11a’及び第二バーブレスニードル貫通点11b’を介して外部にすみやかに排出される。また、有機バインダ溶液に含まれる溶媒や分散媒が揮発すると、非交絡部12’、第一バーブレスニードル貫通点11a’及び第二バーブレスニードル貫通点11b’を通過して含浸マット1’の外部に放出されやすい。
そのうえ、含浸マット1’に乾燥風を吹きつけた場合には、第一バーブレスニードル貫通点11a’や第二バーブレスニードル貫通点11b’から流入した乾燥風が非交絡部12’を通過することにより、交絡点(非形成領域)14’を含む含浸マット1’の内部にも充分に乾燥風が行き渡る。
従って、乾燥工程に供された含浸マット1’は、短時間で乾燥することになる。そのため、バインダマットの製造効率を高め、製造コストを低く抑えることができる。
なお、製造されたバインダマットは、必要に応じて所定形状に切断することにより、排ガス浄化装置に使用される保持シール材に加工することができるが、素材であるバインダマットの製造コストが低いので、保持シール材の製造コストも充分低く抑えることができる。
また、バインダマットでは無機繊維が有機バインダで接着されており、バインダマットの嵩が適度に低い。そのため、係るバインダマットを使用した保持シール材も嵩が適度に低く、ケーシングへの圧入性に優れる。
【0023】
第二の本発明のマットは無機繊維が互いに絡み合って構成された交絡点からなるマットであって、無機繊維が互いに絡み合って構成された交絡点からなるシートの少なくとも一方の主面側から他方の主面側に向かってバーブレスニードルが貫通するバーブレスニードリング処理が施されることにより形成された非交絡部を有することを特徴とする。
【0024】
第二の本発明におけるバーブレスニードリング処理の一例について、図面を用いて以下に説明する。
【0025】
図2(a)は、第二の本発明に係るバーブレスニードリング処理に使用されるバーブレスニードリング装置とシートとを模式的に示す斜視図であり、図2(b)は、第二の本発明に係るバーブレスニードルがシートを貫通した場合のバーブレスニードリング装置及びシートを模式的に示す断面図である。
【0026】
図2(a)に示すバーブレスニードリング装置100は、シート1xを支持可能な載置面111を有する支持板110と、支持板110の載置面111に対向して設けられており、突き刺し方向(シート1xの厚さ方向、図2(a)及び図2(b)中、両矢印Tで示す方向)に往復移動可能なピストン112の先端に取り付けられたバーブレスニードル板120とから構成されている。なお、ここで使用しているシート1xは、平面視略矩形で所定の厚さを有する平板状であり、無機繊維が互いに絡み合って構成された交絡点からなるシート(以下、単に無機繊維を含んでなるシートともいう)である。
バーブレスニードル板120には、支持板110に対向する対向面122から垂直方向に立設した複数のバーブレスニードル121が所定の間隔で取り付けられており、剣山様の形状を呈している。バーブレスニードル121は、細く先の尖ったニードルであり、該ニードル表面にバーブ(返し)が形成されていないものである。
また、支持板110には、バーブレスニードル板120のバーブレスニードル121が取り付けられた位置に対応する箇所に貫通孔113が設けられている。
そのため、バーブレスニードル板120が支持板110に接近した場合には、バーブレスニードル121が貫通孔113を貫通するので、載置面111と対向面122とが接触する程度にまでバーブレスニードル板120を支持板110に近づけることができる。
【0027】
係るバーブレスニードリング装置100を使用してバーブレスニードリング処理を行う場合には、まず、図2(a)に示すように、支持板110の載置面111にシート1xを設置する。
次に、バーブレスニードル板120をシート1xの厚さ方向に沿って上下させる。
すると、図2(b)に示すように、シート1xの第一主面10yから第二主面10zまでバーブレスニードル121が貫通し、貫通したバーブレスニードル121がシート1xから引き抜かれることによりバーブレスニードリング処理が完了する。
【0028】
バーブレスニードル121がシート1xを貫通する際には、バーブレスニードル121にバーブが形成されていないので、バーブレスニードル121に無機繊維がほとんど巻き込まれず、バーブレスニードル121の貫通箇所に位置する無機繊維の多くが破断されると考えられる。
バーブレスニードル121がシート1xから引き抜かれる際には、シート1xの反発力により互いに絡み合っていない無機繊維が貫通箇所を塞ぐようにして元に戻ろうとするものの、全ての無機繊維が完全には戻りきらないと考えられる。
従って、バーブレスニードル121がシート1xを貫通した箇所(非交絡部)には、互いに絡み合わず、互いに平行に配列された無機繊維が存在することになると推測される。
本発明者が見出したところによれば、バーブレスニードリング処理により形成された非交絡部を有するマットでは、非交絡部を有していないマットに比べて通気性が高い。
なお、第一主面10y上のバーブレスニードル121が貫通した箇所には、第一バーブレスニードル貫通点が形成される。また、第二主面の10z上のバーブレスニードル121が貫通した箇所には、第一主面10y上の第一バーブレスニードル貫通点に対応する第二バーブレスニードル貫通点が形成される。
【0029】
第二の本発明に係る非交絡部は、無機繊維を含んでなるシートにバーブレスニードルを貫通させることにより形成されたものであればよく、その具体的な形状は特に限定されるものではないが、具体的な形状としては、例えば、第一の本発明のマット1に形成された非交絡部12と同様の形状が挙げられる。
即ち、第二の本発明のマットに係る非交絡部は、マットの一方の主面から他方の主面にかけて設けられ、互いに絡み合わず、互いに平行に配列された無機繊維から構成されていてもよい。言い換えると、第二の本発明のマットは、無機繊維を含んでなるマットであって、マットの一方の主面から他方の主面にかけて設けられた非交絡部を有し、非交絡部には、破断し、互いに絡み合っていない無機繊維が存在していることを特徴とするマットであってもよい。
このような非交絡部の詳細な構成については、図1(a)及び図1(b)を用いて既に説明したとおりであるので、説明を省略する。
【0030】
第二の本発明のマットは通気性が高いので、係るマットに有機バインダ溶液を含浸させて含浸マットを作製し、含浸マットを乾燥風等で乾燥させることによりバインダマットを作製する場合には、乾燥時間を大幅に短縮することができる。そのため、バインダマットの製造効率を高め、製造コストを低く抑えることができる。それゆえ、バインダマットを所定形状に切断する等して保持シール材を製造すると、その製造コストを低く抑えることができる。
【0031】
第一及び第二の本発明のマット(以下、第一及び第二の本発明のマットをまとめて、本発明のマットともいう)では、上記非交絡部の形成密度が、1〜20個/cmであることが望ましい。なお、本明細書において、非交絡部の形成密度とは、第一主面及び第二主面に略平行な平面に沿ってマットを厚み方向の中間地点で略二等分に切断し、得られた主断面を目視又は顕微鏡で観察した場合に確認される、主断面の1cmあたりに形成された非交絡部の個数のことをいう。
非交絡部の形成密度が1〜20個/cmであると、単位面積あたりに形成された非交絡部の数が充分に多く、マットの通気性をより高くすることができる。そのため、係るマットを乾燥工程に供すると、乾燥時間をより短縮することができる。また、単位面積あたりに形成された非交絡部の数が多すぎることもなく、マットの反発力及び強度を適切な値に保つこともできる。
これに対し、非交絡部の形成密度が1個/cm未満であると、単位面積あたりに形成された非交絡部の数が少なすぎて、係るマットを乾燥工程に供した場合には乾燥時間が短縮しにくい。一方、非交絡部の形成密度が、20個/cmを超えると、単位面積あたりに形成された非交絡部の数が多すぎ、無機繊維が互いに絡み合っていない箇所が多くなりすぎてマットの反発力及び強度が低下しやすくなる。
【0032】
本発明のマットは、上記一方の主面から上記他方の主面にかけて設けられた交絡部をさらに有しており、上記交絡部を構成する無機繊維は、上記交絡部以外の部分を構成する無機繊維に比べて互いに緻密に絡み合っていることが望ましい。
交絡部では、交絡部及び非交絡部が形成されていない部分、即ち、交絡点(非形成領域)に比べて無機繊維が互いに緻密に絡み合っている。それゆえ、交絡部を中心として、マットの嵩が適度に低く抑えられている。そのため、製造したマットを所定形状に切断すること等により作製した保持シール材でも、保持シール材の嵩を適度に減らすことができる。
よって、製造した保持シール材を排ガス浄化装置の製造に使用した場合には、保持シール材を巻き付けた排ガス処理体をケーシングへ圧入しやすくなる。
【0033】
本発明のマットでは、上記交絡部が、上記一方の主面側から上記他方の主面側に向かって配向しつつ、互いに緻密に絡み合った無機繊維からなる第一交絡部と、上記他方の主面側から上記一方の主面側に向かって配向しつつ、互いに緻密に絡み合った無機繊維からなる第二交絡部とから構成されていることが望ましい。
係る構成を有するマットでは、第一交絡部を形成する無機繊維の配向方向と、第二交絡部を形成する無機繊維の配向方向とが対向した関係にあるため、無機繊維がより複雑に絡み合っており、マットの強度がより高い。
【0034】
本発明のマットでは、上記交絡部の形成密度が0.5〜30個/cmであることが望ましい。なお、本明細書において、交絡部の形成密度とは、第一主面及び第二主面に略平行な平面に沿ってマットを厚み方向の中間地点で略二等分に切断し、得られた主断面を目視又は顕微鏡で観察した場合に確認される、主断面の1cmあたりに形成された交絡部の個数のことをいう。
交絡部の形成密度が0.5〜30個/cmであると、嵩が適度に低くなり、マットの強度がより高くなる。
これに対して、交絡部の形成密度が、0.5個/cm未満であると、単位面積あたりに形成された交絡部の数が少なすぎて嵩が減りにくい。また、交絡部の形成密度が30個/cmを超えると、マットの嵩が減りすぎて反発力が低下やすくなり、保持シール材の保持力が低下しやすくなる。また、バーブニードリング処理で細かく裁断されてしまった無機繊維が多く含まれることになり、マットの強度が低くなりやすい。
【0035】
本発明のマットでは、少なくとも一部で上記非交絡部と上記交絡部とが交互に異なる位置に形成されていることが望ましい。
非交絡部のみが偏って形成された箇所があると、無機繊維が互いに絡み合っていない箇所が一定の領域に渡って存在することになるので、その箇所を中心としてマットの強度が低下しやすくなる。一方、交絡部のみが偏って形成された箇所があると、無機繊維が緻密に絡み合っていて嵩が低すぎる箇所が一定の領域に渡って存在することになるので、マット全体で均一な厚さになりにくくなる。マット全体の厚さが均一でないと、このマットから作製された保持シール材では、排ガス処理体を保持しにくくなる。一方、上記非交絡部と上記交絡部とが交互に異なる位置に形成されている本発明のマットでは、上述した不具合が発生しない。また、非交絡部がバランスよく配置されているので、係るマットを乾燥工程に供すると、乾燥時間をより短縮することができる。
【0036】
本発明のマットでは、上記無機繊維が、アルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、シリカ繊維、溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種の無機繊維であることが望ましい。
これらの無機繊維は耐熱性等の特性に優れているので、これらの無機繊維からなるマット及び該マットを使用した保持シール材は耐熱性や保持力等に優れる。
また、マットを構成する無機繊維に溶解性繊維が含まれる場合、マットの取り扱い時に溶解性繊維が飛散して体内に取り込まれたとしても溶解し、体外に排出されることになるため、人体に対する安全性に優れる。
【0037】
本発明のマットは、有機バインダをさらに含むことが望ましい。
有機バインダが含まれたマットを使用した保持シール材では、排ガス浄化装置の使用時における高温の排ガスにより有機バインダが分解し、無機繊維の接着が解除され、保持シール材が膨張するので、高い保持力を発揮することができる。
【0038】
本発明のマットは、膨張材をさらに含むことが望ましい。
膨張材が含まれたマットを使用した保持シール材では、排ガス浄化装置の使用時における高温の排ガスにより膨張材が膨張するので、高い保持力を発揮することができる。
【0039】
本発明のマットの製造方法は、無機繊維が互いに絡み合って構成された交絡点からなるマットの製造方法であって、無機繊維が互いに絡み合って構成された交絡点からなるシートの少なくとも一方の主面側から他方の主面側に向かってバーブレスニードルを貫通させるバーブレスニードリング工程を含むことを特徴とする。
本発明のマットの製造方法では、上述した本発明のマットを好適に製造することができる。
バーブレスニードリング工程の詳細は、第二の本発明のマットの構成及び効果の説明で既に述べているので、説明を省略する。
【0040】
本発明のマットの製造方法では、無機繊維前駆体が互いに絡み合って構成された交絡点からなる前駆体シートの少なくとも一方の主面側から他方の主面側に向かってバーブニードルを貫通させることによりニードリング前駆体シートを作製するバーブニードリング工程と、
上記ニードリング前駆体シートを焼成することにより上記シートを作製する焼成工程とをさらに含むことが望ましい。
【0041】
バーブニードリング処理について、以下に詳しく説明する。
まず、バーブニードリング処理で使用するバーブニードリング装置を説明する。
バーブニードリング装置は、上述した図2(a)及び図2(b)に示すバーブレスニードリング装置と略同様の構成を有しているが、バーブレスニードルが取り付けられたバーブレスニードル板の代わりに、バーブニードルが取り付けられたバーブニードル板を使用する点が異なる。
バーブニードルは、細く先の尖ったニードルであり、該ニードル表面にニードルの先端方向に向かって突出した複数の刺状のバーブ(返し)が形成されたニードルである。
【0042】
バーブニードリング処理を行う場合には、無機繊維前駆体が互いに絡み合って構成された交絡点からなる前駆体シートを支持板の載置面に設置した後、バーブニードル板を前駆体シートの厚み方向に沿って上下させる。
すると、前駆体シートの第一主面から第二主面までバーブニードルが貫通し、貫通したバーブニードルが前駆体シートから引き抜かれてバーブニードリング処理が完了する。
【0043】
係るバーブニードリング処理では、バーブに無機繊維前駆体が巻き付いた状態でバーブニードルが前駆体シート内部を移動していくので、バーブに巻き付いた無機繊維前駆体が前駆体シート内部に引き込まれていく。
そのため、バーブニードルの貫通箇所に位置する無機繊維前駆体は、互いに緻密に絡み合い、バーブニードルが貫通していく方向に向かって(即ち、第二主面側に)配向する。
【0044】
バーブニードルが前駆体シートから引き抜かれる際には、逆に無機繊維前駆体がバーブに引っ掛かりにくいので、多くの無機繊維前駆体は、その配向状態及び交絡状態が維持される。
そのため、バーブニードルが前駆体シートから完全に引き抜かれると、バーブニードルが貫通した第一主面上のバーブニードル貫通点から第二主面上のバーブニードル貫通点にかけて厚み方向に交絡部が形成されたニードリング前駆体シートを作製することができる。
作製したニードリング前駆体シートは、焼成工程を経ることにより無機繊維前駆体を無機繊維に転換した後、上述したバーブレスニードリング工程にシートとして供することにより、交絡部及び非交絡部を有するマットを製造することができる。
【0045】
本発明のマットの製造方法では、上記バーブニードリング工程で、上記前駆体シートの両主面に対してバーブニードリング処理を施すことが望ましい。
係るバーブニードリング工程を行った場合には、無機繊維前駆体の交絡方向が互いに対向する第一交絡部と第二交絡部とが形成されたニードリング前駆体シートを作製することができる。
そのため、このニードリング前駆体シートを焼成工程及び続くバーブレスニードリング工程に供することにより、非交絡部の他に、無機繊維の交絡方向が互いに対向する第一交絡部と第二交絡部とが形成されたマットを製造することができる。
【0046】
本発明のマットの製造方法では、上記バーブレスニードリング工程を経てバーブレスニードリングシートを作製し、上記バーブレスニードリングシートの少なくとも一方の主面側から他方の主面側に向かってバーブニードルを貫通させるバーブニードリング工程をさらに含むことが望ましい。
係るマットの製造方法では、上述したバーブレスニードリング工程及びバーブニードリング工程を行う場合と同様に、非交絡部の他に、第一主面上のバーブニードル貫通点から第二主面上のバーブニードル貫通点にかけて厚み方向に交絡部が設けられたマットを好適に製造することができる。
【0047】
本発明のマットの製造方法では、上記バーブニードリング工程で、上記バーブレスニードリングシートの両主面に対してバーブニードリング処理を施すことが望ましい。
係るバーブニードリング工程を行った場合には、非交絡部の他に、無機繊維の交絡方向が互いに対向する第一交絡部と第二交絡部とが形成されたマットを製造することができる。
【0048】
本発明のマットの製造方法では、上記バーブレスニードルが貫通する位置と、上記バーブニードルが貫通する位置とが少なくとも一部で交互に異なっていることが望ましい。
係るマットの製造方法では、少なくとも一部で非交絡部と交絡部とが交互に異なる位置に形成されたマットを好適に製造することができる。
【0049】
本発明のマットの製造方法では、有機バインダ溶液を含浸させることにより含浸マットを作製する含浸工程と、上記含浸マットを乾燥させる乾燥工程とをさらに含むことが望ましい。
係るマットの製造方法では、有機バインダが含まれたマットを好適に製造することができる。
【0050】
本発明のマットの製造方法では、無機繊維が含まれたスラリーを抄造することにより抄造シートを作製する抄造工程をさらに含み、上記抄造シートを上記シートとして使用することが望ましい。
【0051】
本発明の排ガス浄化装置は、排ガス処理体と、
上記排ガス処理体を収容するケーシングと、
上記排ガス処理体と上記ケーシングとの間に配設され、上記排ガス処理体を保持する保持シール材とからなる排ガス浄化装置であって、
上記保持シール材は、本発明のいずれかのマットを使用していることを特徴とする。
【0052】
本発明の排ガス浄化装置は、排ガス処理体と、
上記排ガス処理体を収容するケーシングと、
上記排ガス処理体と上記ケーシングとの間に配設され、上記排ガス処理体を保持する保持シール材とからなる排ガス浄化装置であって、
上記保持シール材は、本発明のマットの製造方法で製造されたいずれかのマットを使用していることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1(a)は、第一の本発明のマットを模式的に示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示すマットのA−A線断面図である。
【図2】図2(a)は、第二の本発明に係るバーブレスニードリング処理に使用されるバーブレスニードリング装置とシートとを模式的に示す斜視図であり、図2(b)は、第二の本発明に係るバーブレスニードルがシートを貫通した場合のバーブレスニードリング装置及びシートを模式的に示す断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の第一実施形態のマットを模式的に示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示すマットのB−B線断面図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係るマットの一例として作製した断面観察用サンプルを、非交絡部及び交絡部が切断面に現れるように厚み方向に沿って略垂直に切断した場合の切断面を25倍に拡大した顕微鏡写真である。
【図5】本発明の第一実施形態のマットを使用した保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
【図6】図6(a)は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置を模式的に示す斜視図であり、図6(b)は、図6(a)に示す排ガス浄化装置のC−C線断面図である。
【図7】図7(a)は、図6(a)に示した排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体を模式的に示す斜視図であり、図7(b)は、図6(a)に示した排ガス浄化装置を構成するケーシングを模式的に示す斜視図である。
【図8】本発明に係る乾燥工程で使用する熱風乾燥機と含浸マットとを模式的に示す斜視図である。
【図9】本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置を構成する保持シール材、排ガス処理体及びケーシングを用いて排ガス浄化装置を製造する様子を模式的に説明する斜視図である。
【図10】実施例1〜7及び比較例1における非交絡部の形成密度と乾燥時間との関係、並びに、実施例1〜7及び比較例2における非交絡部の形成密度と面圧との関係を示すグラフである。
【図11】図11(a)は、本発明の第二実施形態のマットを模式的に示す斜視図であり、図11(b)は、図11(a)に示すマットのD−D線断面図である。
【図12】実施例8〜14及び比較例3について、非交絡部の形成密度と乾燥時間との関係、及び、非交絡部の形成密度と面圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
(第一実施形態)
以下、本発明のマット、マットの製造方法及び排ガス浄化装置の一実施形態である第一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0055】
図3(a)は、本発明の第一実施形態のマットを模式的に示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示すマットのB−B線断面図である。
図4は、本発明の第一実施形態に係るマットの一例として作製した断面観察用サンプルを、非交絡部及び交絡部が切断面に現れるように厚み方向に沿って略垂直に切断した場合の切断面を25倍に拡大した顕微鏡写真である。
【0056】
図3(a)及び図3(b)に示すように、本実施形態のマット2は、所定の長さ(図3(a)中、両矢印Lで示す)、幅(図3(a)中、両矢印Wで示す)及び厚さ(図3(a)中、両矢印Tで示す)を有する平面視矩形状である。
そして、マット2の表面のうち、最も面積の大きい主面である第一主面20aと、第一主面20aの反対側に位置する第二主面20bとを有している。
【0057】
マット2の大きさについては、特に限定されないが、例えば、長さ100〜10000mm×幅100〜1500mm×厚さ5〜30mmである。
【0058】
マット2の目付量(単位面積あたりの重量)は、900〜3000g/mであることが望ましい。マット2の目付量は、1500〜2800g/mであることがより望ましい。
また、マット2の密度は、0.08〜0.20g/cmであることが望ましい。マット2の密度は、0.10〜0.15g/cmであることがより望ましい。
【0059】
マット2は、無機繊維が互いに絡み合って構成されている。
図3(b)及び図4に示すように、マット2を厚み方向に沿って略垂直に切断した切断面を観察すると、後述する非交絡部22、第一交絡部26a及び第二交絡部26bを除いた交絡点(非形成領域)24では、大部分の無機繊維がマット2の第一主面20a及び第二主面20bに略平行な方向に沿って配列しており、互いに緩く絡み合っている。
【0060】
無機繊維は、アルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、シリカ繊維、溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種の無機繊維から構成されている。
なお、マット2は、紡糸法(ブローイング法)により作製された無機繊維前駆体をクロスレイヤー法により積層することにより前駆体シートを作製し、作製した前駆体シートを焼成等することにより作製されている。紡糸法及びクロスレイヤー法については、マット2の製造方法の説明にて後述することとする。
【0061】
アルミナ繊維には、アルミナ以外に、例えば、CaO、MgO、ZrO等の添加剤が含まれていてもよい。
アルミナシリカ繊維の組成比としては、重量比で、Al:SiO=60:40〜80:20であることが望ましく、Al:SiO=70:30〜74:26であることがより望ましい。
シリカ繊維には、シリカ以外に、例えば、CaO、MgO、ZrO等の添加剤が含まれていてもよい。
溶解性繊維は、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及び、ホウ素化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物からなる無機繊維である。
これらの化合物からなる溶解性繊維は、いわゆる生体溶解性の無機繊維であり、人体に取り込まれても溶解しやすいので、これらの無機繊維を含んでなるマットは人体に対する安全性に優れている。上記アルカリ金属化合物としては、例えば、Na、Kの酸化物等が挙げられ、上記アルカリ土類金属化合物としては、Mg、Ca、Baの酸化物等が挙げられる。上記ホウ素化合物としては、Bの酸化物等が挙げられる。
【0062】
図3(a)、図3(b)及び図4に示すように、第一主面20a上の略全面には、複数の第一バーブレスニードル貫通点21aが所定の間隔で形成されており、第二主面20b上の略全面には、複数の第二バーブレスニードル貫通点21bが所定の間隔で形成されている。
そして、第一バーブレスニードル貫通点21aから第二バーブレスニードル貫通点21bにかけて非交絡部22が設けられている。即ち、非交絡部22がマット2の略全体に渡って所定の間隔で形成されている。
非交絡部22には、互いに絡み合わず、互いに平行に配列された無機繊維23aが存在している。
非交絡部22の形成密度は、0.5〜25個/cmであることが望ましく、1〜20個/cmであることがより望ましい。
【0063】
一の第一バーブレスニードル貫通点21a(一の第二バーブレスニードル貫通点21b)と、それに最近接する他の第一バーブレスニードル貫通点21a(他の第二バーブレスニードル貫通点21b)との最短距離(図3(a)中、両矢印Oで示す距離)は、1〜20mmである。
そのため、互いに絡み合っていない無機繊維を含む非交絡部22が密に集まりすぎておらず、マット2の強度が充分に高い。また、通気孔として機能するバーブレスニードル貫通点間(非交絡部間)の距離が長すぎることがなく、係るマット2を含浸工程及び続く乾燥工程に供した場合、交絡点(非形成領域)24を含めたマット2全体をまんべんなく乾燥させることが可能となり、乾燥時間をより短縮することができる。
【0064】
第一バーブレスニードル貫通点21a及び第二バーブレスニードル貫通点21bの直径は、0.1〜3mmである。
そのため、第一バーブレスニードル貫通点21a及び第二バーブレスニードル貫通点21bの直径(非交絡部22の直径)が大きすぎず、マット2の強度が充分に高い。また、第一バーブレスニードル貫通点21a及び第二バーブレスニードル貫通点21bの直径(非交絡部22の直径)が小さすぎることもなく、非交絡部22が通気孔としての機能を充分に発揮することができるので、係るマット2を含浸工程及び続く乾燥工程に供した場合には、交絡点(非形成領域)24を含めたマット2全体をまんべんなく乾燥させることが可能となり、乾燥時間をより短縮することができる。
【0065】
第一主面20a上の略全面には、複数の第一バーブニードル貫通点25aが所定の間隔で形成されており、第二主面20b上の略全面には、複数の第二バーブニードル貫通点25bが所定の間隔で形成されている。そして、第一バーブニードル貫通点25aから第二バーブニードル貫通点25bにかけて第一交絡部26aが設けられている。即ち、第一交絡部26aがマット2の略全体に所定の間隔で形成されている。
第一交絡部26aを構成する無機繊維27aは、第二主面20b側に配向しており、互いに緻密に絡み合っている。
【0066】
また、第一主面20a上の略全面には、複数の第三バーブニードル貫通点25cが所定の間隔で形成されており、第二主面20b上の略全面には、複数の第四バーブニードル貫通点25dが所定の間隔で形成されている。そして、第三バーブニードル貫通点25cから第四バーブニードル貫通点25dにかけて第二交絡部26bが形成されている。即ち、第二交絡部26bがマット2の略全体に渡って所定の間隔で形成されている。
第二交絡部26bを構成する無機繊維27bは、第一主面20a側に配向しており、互いに緻密に絡み合っている。
【0067】
第一交絡部26aと第二交絡部26bの合計の形成密度(以下の説明では、単に、交絡部の形成密度ともいう)は、0.5〜30個/cmであることが望ましい。
【0068】
また、第一バーブニードル貫通点25a(第二バーブニードル貫通点25b)と、それに最近接する第三バーブニードル貫通点25c(第四バーブニードル貫通点25d)との最短距離(図3(a)中、両矢印Pで示す距離)は、1〜10mmである。
そのため、第一交絡部26a及び第二交絡部26bが適度に離れており、密に集まりすぎておらず、マット2の強度が充分に高い。
【0069】
第一バーブニードル貫通点25a、第二バーブニードル貫通点25b、第三バーブニードル貫通点25c及び第四バーブニードル貫通点25dの直径は、0.1〜2mmである。
そのため、第一バーブニードル貫通点25a、第二バーブニードル貫通点25b、第三バーブニードル貫通点25c及び第四バーブニードル貫通点25dの直径が大きすぎず、マット2の強度を充分に確保することができる。
【0070】
第一バーブレスニードル貫通点21a(第二バーブレスニードル貫通点21b)と、それに最近接する第一バーブニードル貫通点25a又は第三バーブニードル貫通点25c(第二バーブニードル貫通点25b又は第四バーブニードル貫通点25d)との最短距離(図3(a)中、両矢印Qで示す距離)は、1〜10mmである。
そのため、非交絡部22、第一交絡部26a及び第二交絡部26bが適度に離れており、密に集まりすぎておらず、マット2の強度が充分に高い。
【0071】
図3(a)及び図3(b)に示すように、マット2の幅方向に沿って非交絡部22(第一バーブレスニードル貫通点21a及び第二バーブレスニードル貫通点21b)、第一交絡部26a(第一バーブニードル貫通点25a及び第二バーブニードル貫通点25b)、及び、第二交絡部26b(第三バーブニードル貫通点25c及び第四バーブニードル貫通点25d)が一列に形成された箇所では、非交絡部22、第一交絡部26a及び第二交絡部26bが略等間隔で交互に異なる位置に形成されている。マット2の幅方向に沿って第一交絡部26a及び第二交絡部26bが一列に形成された箇所では、第一交絡部26aと第二交絡部26bとが略等間隔で交互に整列している。
また、マット2の長さ方向に沿って非交絡部22のみが一列に形成された箇所では、各々の非交絡部22が、略等間隔で整列している。
マット2の長さ方向に沿って第一交絡部26a及び第二交絡部26bが一列に形成された箇所では、第一交絡部26aと第二交絡部26bとが、略等間隔で交互に整列している。
ここで説明したように、マット2の少なくとも一部において、非交絡部22、第一交絡部26a及び第二交絡部26bが交互に異なる位置に形成されていることが好ましい。
なお、マットの長さ方向に沿って非交絡部、第一交絡部及び第二交絡部が略等間隔で交互に整列しているとともに、マットの幅方向に沿って非交絡部、第一交絡部及び第二交絡部が略等間隔で交互に整列していることにより、マット全体で非交絡部、第一交絡部及び第二交絡部が交互に異なる位置に形成されていてもよい。
【0072】
非交絡部22、第一交絡部26a及び第二交絡部26bの合計の形成密度は、5〜35個/cmであることが望ましい。乾燥工程での乾燥時間がより短縮するし、マット2の反発力が低下しすぎることがないからである。
【0073】
次に、本実施形態のマットを使用した保持シール材及び排ガス浄化装置の構成について、図面を用いて説明する。
【0074】
図5は、本発明の第一実施形態のマットを使用した保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
【0075】
図5に示す保持シール材200は、上述した本実施形態のマット2に有機バインダ溶液を含浸させることにより含浸マットを作製し、含浸マットを乾燥風で乾燥させることによりバインダマットを作製し、作製されたバインダマットを所定形状に切断することにより製造される。
【0076】
図5に示す保持シール材200の形状は、所定の長さ(図5中、矢印L’で示す)、幅(図5中、矢印W’で示す)及び厚さ(図5中、矢印T’で示す)を有する平面視矩形状である。
また、保持シール材200の幅方向に平行な端面233a、233bのうち、一方の端面233aには、凸部234aが形成されており、他方の端面233bには、保持シール材200を丸めて端面233aと端面233bとを当接させた際に凸部234aと嵌合する形状の凹部234bが形成されている。
なお、製造された保持シール材200全体に含まれる有機バインダの合計量は、保持シール材200全体の重量の0.5〜20重量%以下であることが望ましい。
【0077】
保持シール材200の大きさについては、特に限定されないが、例えば、長さ200〜1000mm×幅50〜500mm×厚さ5〜30mmである。
【0078】
この保持シール材200は、例えば、排ガス浄化装置に好適に使用することができる。
保持シール材200を用いた排ガス浄化装置の構成について、図面を用いて説明する。
【0079】
図6(a)は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置を模式的に示す斜視図であり、図6(b)は、図6(a)に示す排ガス浄化装置のC−C線断面図である。
図7(a)は、図6(a)に示した排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体を模式的に示す斜視図であり、図7(b)は、図6(a)に示した排ガス浄化装置を構成するケーシングを模式的に示す斜視図である。
【0080】
図6(a)及び図6(b)に示すように、排ガス浄化装置60は、多数のセル41がセル壁42を隔てて長手方向に並設された柱状の排ガス処理体40と、排ガス処理体40を収容するケーシング50と、排ガス処理体40とケーシング50との間に配設され、排ガス処理体40を保持する本実施形態に係るマットを使用した保持シール材200とから構成されている。
なお、保持シール材200の構成については、既に述べているので省略する。
また、ケーシング50の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と排ガス浄化装置を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続されていてもよい。
【0081】
図7(a)に示すように、排ガス処理体40は、主に多孔質セラミックからなり、その形状は円柱状である。また、排ガス処理体40の外周には、排ガス処理体40の外周部を補強したり、形状を整えたり、排ガス処理体40の断熱性を向上させたりする目的で、シール材層44が設けられている。
また、排ガス処理体40の各々のセルにおけるいずれか一方の端部は、封止材43によって目封じされている。
なお、排ガス処理体40としては、コージェライト又はチタン酸アルミニウム等からなり、図7(a)に示したように一体的に形成されたものであってもよい。また、炭化ケイ素又はケイ素含有炭化ケイ素等からなり、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体を主にセラミックを含む接着材層を介して複数個結束してなるものであってもよい。
【0082】
ケーシング50について説明する。図7(b)に示すケーシング50は、主にステンレス等の金属からなり、その形状は、円筒状である。また、その内径は、排ガス処理体40に保持シール材200が巻き付けられた状態の直径より若干短くなっており、その長さは、排ガス処理体40の長手方向における長さと略同一となっている。
【0083】
なお、ケーシングの材質は、耐熱性を有する金属であれば、上述したステンレスに限られず、アルミニウム、鉄等の金属類であってもよい。
また、上記ケーシングとしては、円筒状のケーシングを長手方向に沿って複数のケーシング片に分割したケーシング(即ちクラムシェル)、長手方向に沿って延びるスリット(開口部)を1箇所にのみ有する断面C字状又はU字状の円筒状のケーシング、排ガス処理体に巻き付けられた保持シール材の外周に巻き締められることにより円筒状のケーシングとなる金属板等であってもよい。
【0084】
上述した構成を有する排ガス浄化装置60で排ガスが浄化される理由について、図6(b)を用いて以下に説明する。
図6(b)に示したように、内燃機関から排出され、排ガス浄化装置60に流入した排ガス(図6(b)中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体40の排ガス流入側端面40aに開口した一のセル41に流入し、セル41を隔てるセル壁42を通過する。この際、排ガス中のパティキュレートマター(以下、単にPMともいう)がセル壁42で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス流出側端面40bに開口した他のセル41から流出し、外部に排出される。
【0085】
次に、本実施形態のマットを製造する方法と、製造したマットを使用してバインダマットを作製する方法と、バインダマットを使用して保持シール材を作製する方法と、作製した保持シール材を使用して排ガス浄化装置を製造する方法について説明する。
【0086】
本実施形態のマットは、以下の工程(1)〜(5)を経て製造する。
ここでは、アルミナシリカ繊維を含んでなるマットを製造する場合について説明するが、本実施形態のマットを構成する無機繊維については、アルミナシリカ繊維に限られるものではなく、上述したアルミナ繊維等の種々の組成の無機繊維を使用してもよい。
【0087】
(1)紡糸工程
Al含有量、及び、AlとClとの原子比が所定の値となるように調製された塩基性塩化アルミニウム水溶液に、焼成後の無機繊維における組成比が、Al:SiO=60:40〜80:20(重量比)となるようにシリカゾルを添加する。さらに、成形性向上を目的として有機重合体を適量添加して混合液を調製する。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して所定の平均繊維径を有する無機繊維前駆体を作製する。
ブローイング法とは、エアーノズルから吹き出す高速のガス流(空気流)の中に、紡糸用混合物供給用ノズルから押し出される紡糸用混合物を供給することによって無機繊維前駆体の紡糸を行う方法のことをいう。
【0088】
(2)圧縮工程
次に、無機繊維前駆体をクロスレイヤー法により積層して所定の大きさの前駆体シートを作製する。
クロスレイヤー法では、一定方向に搬送駆動するベルトコンベアと、ベルトコンベアの搬送駆動方向に対して直交する方向にベルトコンベア上を往復移動可能であって、薄層シート状に圧縮された無機繊維前駆体(前駆体ウェブ)を供給するアームとから構成された積層装置を使用する。
この積層装置を使用してクロスレイヤー法により前駆体シートを作製する場合には、まず、ベルトコンベアを搬送駆動させる。この状態で、ベルトコンベアの搬送駆動方向に対して直交する方向にアームを往復移動させながら、前駆体ウェブをアームからベルトコンベア上に連続して供給する。そうすると、前駆体ウェブは、ベルトコンベア上で複数回折り畳まれて積層されながら、ベルトコンベアにより一定の方向に連続して搬送される。積層された前駆体ウェブの長さが取り扱いに適した適当な長さになったところで切断し、所定の大きさの前駆体シートを作製する。
クロスレイヤー法により作製された前駆体シートでは、大部分の無機繊維前駆体が第一主面及び第二主面に略平行な方向に沿って配列し、互いに緩く絡み合うことになる。
【0089】
(3)バーブニードリング工程
バーブニードリング工程では、バーブニードリング装置を使用してバーブニードリング処理を行う。
バーブニードリング装置としては、図2(a)に示したバーブレスニードリング装置と略同様の構成を有しており、バーブレスニードル板の代わりに、バーブニードル板を備えるバーブニードリング装置を使用してもよい。
この場合、後の工程を経て作製されるマットに形成された交絡部の形成密度が0.5〜30個/cmとなり、一の第一バーブニードル貫通点(一の第二バーブニードル貫通点)とそれに最近接する他の第一バーブニードル貫通点(他の第二バーブニードル貫通点)との最短距離が1〜10mmとなり、第一バーブニードル貫通点及び第二バーブニードル貫通点の直径が0.1〜2mmとなるように、バーブニードル板の対向面の単位面積あたりに所定の数のバーブニードル(所定の直径を有するバーブニードル)が、所定の間隔で取り付けられたニードル板を使用する。なお、交絡部の形成密度を変更するには、バーブニードリング処理を行う回数を適宜変えてもよい。
【0090】
バーブニードリング処理を行う場合には、まず、支持板の載置面と前駆体シートの第二主面(下側の主面)とが接するように、上記工程(2)で作製した前駆体シートを載置面に設置し、支持板及び前駆体シートの上方に位置するバーブニードル板を前駆体シートの厚さ方向に沿って下降させることにより、複数のバーブニードルを第一主面(上側の主面)側から第二主面側に向かって貫通させる。その後、バーブニードルを前駆体シートから引き抜くことにより、一回目のバーブニードリング処理を行う。
【0091】
次に、上記バーブニードリング処理後の前駆体シートの第一主面と第二主面とを上下反対にする。
即ち、支持板の載置面と上記前駆体シートの第一主面とが接するように、一回目のバーブニードリング処理を施した前駆体シートを載置面に設置する。
そして、支持板及び前駆体シートの上方に位置するバーブニードル板を前駆体シートの厚さ方向に沿って下降させることにより、複数のバーブニードルを第二主面側から第一主面側に向かって貫通させる。これにより、二回目のバーブニードリング処理を行う。このとき、一回目にバーブニードルが貫通した箇所と、二回目にバーブニードルが貫通する位置とが交互に異なるようにバーブニードルを前駆体シートに貫通させる。
その後、バーブニードルを前駆体シートから引き抜くことにより、未焼成の無機繊維前駆体を含んでなるニードリング前駆体シートを作製する。
なお、支持板及び前駆体シートを挟んで対向する2つのバーブニードル板を備えるバーブニードリング装置を使用し、前駆体シートの両主面側からバーブニードルを略同時に貫通させることにより、前駆体シートの両主面にバーブニードリング処理を施してもよい。
【0092】
(4)焼成工程
続いて、ニードリング前駆体シートを、最高温度約1000〜約1600℃で焼成することにより無機繊維前駆体を無機繊維に転換し、シート(ニードリングシート)を作製する。
【0093】
(5)バーブレスニードリング工程
次に、工程(4)で作製したシートをバーブレスニードリング工程に供する。
バーブレスニードリング工程では、例えば、図2(a)に示すバーブレスニードリング装置を使用してバーブレスニードリング処理を行う。
この際、後の工程を経て作製されるマットに形成された非交絡部の形成密度が0.5〜25個/cmとなり、一の第一バーブレスニードル貫通点(一の第二バーブレスニードル貫通点)とそれに最近接する他の第一バーブレスニードル貫通点(他の第二バーブレスニードル貫通点)との最短距離が1〜20mmとなり、第一バーブレスニードル貫通点及び第二バーブレスニードル貫通点の直径が0.1〜3mmとなり、一の第一バーブレスニードル貫通点(一の第二バーブレスニードル貫通点)と、それに最近接する一の第一バーブニードル貫通点(他の第二バーブニードル貫通点)との最短距離が1〜10mmとなり、マットの少なくとも一部で非交絡部と交絡部とが交互に異なる位置に形成されるように、バーブレスニードル板の対向面の単位面積あたりに所定の数のバーブレスニードル(所定の直径を有するバーブレスニードル)が、所定の間隔で取り付けられたバーブレスニードル板を使用する。
【0094】
まず、支持板の載置面とシートの第二主面(下側の主面)とが接するように載置面にシートを設置し、支持板及びシートの上方に位置するバーブレスニードル板をシートの厚さ方向に沿って下降させることにより、複数のバーブレスニードルを第一主面(上側の主面)側から第二主面側に向かって貫通させる。このとき、一回目にバーブニードルが貫通した箇所と、二回目にバーブニードルが貫通した箇所と、バーブレスニードルが貫通する位置とが、少なくとも一部で交互に異なるようにバーブレスニードルをシートに貫通させる。
その後、バーブレスニードルをシートから引き抜く。
係るバーブレスニードリング処理を経ることにより、本実施形態のマットを製造する。
なお、支持板の下方にバーブレスニードル板を備えるバーブレスニードリング装置を使用し、上記シートの第二主面側から第一主面側に向かってバーブレスニードルを貫通させてもよいし、支持板及びシートを挟んで対向する2つのバーブレスニードル板を備えるバーブレスニードリング装置を使用し、シートの両主面側からバーブレスニードルを貫通させることにより、シートの両主面にバーブレスニードリング処理を施してもよい。
また、バーブレスニードリング処理後には、後述する含浸工程での取り扱い性を向上させるため、マットを所定形状に切断してもよい。
【0095】
工程(1)〜(5)を経て製造した本実施形態のマットを使用してバインダマットを作製する場合には、製造したマットを下記工程(6)に供することにより行ってもよい。
(6)バインダ付与工程
作製されたマットに有機バインダを付与するバインダ付与工程を行うことにより、バインダマットを作製する。
具体的には、バインダ付与工程(6)は含浸工程(6−1)、吸引工程(6−2)及び乾燥工程(6−3)からなる。
【0096】
(6−1)含浸工程
有機バインダを含む有機バインダ溶液を、フローコート等によりマット全体に均一に含浸させる。
これにより、含浸マットを作製する。
なお、有機バインダとしては、特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、アクリルゴム等のゴム、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等であってもよい。これらの中では、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムが特に望ましい。
また、有機バインダ溶液は、水や有機溶媒等の溶媒に上記有機バインダを溶解させたり、水等の分散媒に上記有機バインダを分散させることにより作製することができる。
有機バインダ溶液の濃度については、特に限定されないが、後の工程を経て作製されるバインダマット全体に含まれる有機バインダの合計量が、バインダマット全体の重量の0.5〜20重量%以下となるように適宜調整する。
【0097】
(6−2)吸引工程
次に、含浸マットから、吸引装置等を用いて過剰な有機バインダ溶液を吸引除去する。
吸引装置としては、例えば、含浸マットを載置可能な多孔質部材を有する吸引台と、吸引筒部と、吸引ポンプとを備えており、吸引筒部の一方の端部が吸引台に接続され、吸引筒部の他方の端部が吸引ポンプに接続された構成を有する吸引装置を好適に使用することができる。
係る構成の吸引装置を用いて吸引工程を行う場合には、吸引台の多孔質部材の上に含浸マットを載置して吸引ポンプを作動させる。吸引ポンプを作動させることで、吸引台内の空気が吸引され、含浸マットに含まれる有機バインダ溶液が多孔質部材を通過し、吸引筒部を通じて外部に排出される。
その結果、含浸マットから過剰な有機バインダ溶液が吸引除去されることになる。
なお、吸引工程については、必ずしも行う必要はなく、例えば、含浸マットに含まれる有機バインダ溶液の量が少ないのであれば、含浸工程の後、得られた含浸マットを下記乾燥工程に直接供してもよい。
【0098】
(6−3)乾燥工程
次に、含浸マットに残留した有機バインダ溶液に含まれる溶媒等を揮発させることにより、有機バインダを含むマットであるバインダマットを作製する。
【0099】
含浸マットを乾燥させる場合には、金属からなる2枚のプレス板を備えた熱風乾燥機等を用いて含浸マットを圧縮しながら行うことが望ましい。
熱風乾燥機を使用する場合には、次のようにして行ってもよい。
【0100】
図8は、本発明に係る乾燥工程で使用する熱風乾燥機と含浸マットとを模式的に示す斜視図である。
【0101】
図8に示した熱風乾燥機500は、ピストン501の先端に取り付けられており、図8で示したR方向に往復運動可能な上側プレス板502と、上側プレス板502と対向し、含浸マット2’を載置可能な下側プレス板503と、熱風吹き出し口600とを備えている。
上側プレス板502及び下側プレス板503は、パンチングメタル等からなり、熱風が通過可能な所定の大きさの貫通孔504が複数個形成されている。
【0102】
この熱風乾燥機500を使用して含浸マット2’を圧縮しながら乾燥させる場合には、次のようにして行う。
【0103】
まず、第一主面20a’側と第二主面20b’側とから上側プレス板502及び下側プレス板503で含浸マット2’を挟み込み、所定の厚さまで圧縮する。
【0104】
次に、図8に示したように、図示しない熱風発生機に接続された熱風吹き出し口600からの熱風を含浸マット2’に吹きつけることにより、含浸マット2’を乾燥させる(図8中、熱風の吹きつける方向を矢印Sで示す)。
所定時間乾燥させた後、乾燥した含浸マット2’を熱風乾燥機から取り出すことにより、バインダマットの作製が完了する。
【0105】
含浸マット2’を乾燥させる場合は、含浸マット2’に、100〜220℃の熱風を、1〜20分間吹きつけることにより含浸マット2’の乾燥を行うことが望ましい。
上記熱風の温度が100〜220℃であり、かつ、熱風の吹きつけ時間が1〜20分間であると、有機バインダが分解せず、しかも含浸マット2’を速く乾燥させることができる。
一方、上記熱風の温度が100℃未満では、乾燥時間が長くなりやすく、製造効率が低下しやすくなる。また、上記温度が220℃を超えると、有機バインダが分解しやすくなり、バインダマットを構成する無機繊維同士を接着しにくくなる。
また、上記熱風の吹きつけ時間が1分間未満であると、含浸マット2’を充分に乾燥しにくくなる。上記熱風の吹きつけ時間が20分間を超えると、乾燥時間が長くなりやすく、製造効率が低下しやすくなる。
なお、上記乾燥工程に使用する装置としては、上述した熱風乾燥機に限定されず、例えば、マイクロ波乾燥機、電熱線ヒーターや、セラミックヒーター等の発熱体等を使用してもよい。上記発熱体を使用する場合には、含浸マットから所定の距離をおいて発熱体を設置すればよい。こうすることで、発熱体で熱せられた空気が対流し、熱風乾燥機を使用した場合と同様の乾燥効果を得ることができる。
【0106】
含浸マットを圧縮しながら乾燥させた場合には、含浸マットが圧縮された状態で無機繊維同士が有機バインダにより接着されるので、作製されたバインダマットの厚さが圧縮せずに作製したバインダマットの厚さよりも薄くなる。
【0107】
また、含浸マットを圧縮する場合には、例えば、圧縮前の厚さの50〜80%に相当する厚さとなるように含浸マットを圧縮することが望ましい。
含浸マットの厚さが、圧縮前の厚さの50〜80%に相当する厚さとなるように圧縮して乾燥させると、無機繊維同士が有機バインダで強固に接着しすぎることがなく、排ガス浄化装置の製造に使用する場合に取り扱い性が劣ることがない。また、嵩を適度に減らすことができるので、排ガス浄化装置を製造する場合、バインダマットから作製した保持シール材を巻き付けた排ガス処理体をケーシング内に圧入しやすくなる。
一方、含浸マットの厚さが、圧縮前の厚さの50%に相当する厚さよりも薄くなるように圧縮して乾燥させると、作製されたバインダマットの厚さが薄くなりすぎて、保持シール材で排ガス処理体を保持しにくくなる。
また、含浸マットの厚さが、圧縮前の厚さの80%に相当する厚さよりも厚くなるように圧縮して乾燥させると、作製されたバインダマットの嵩があまり減らないので、排ガス浄化装置を製造する場合に、保持シール材を巻き付けた排ガス処理体をケーシング内に圧入しにくくなる。
なお、バインダマット全体に含まれる有機バインダの合計量は、バインダマット全体の重量の0.5〜20重量%以下であることが望ましい。
【0108】
工程(6)を経て作製したバインダマットを使用して保持シール材を作製する場合には、製造したマットを下記工程(7)に供することにより行ってもよい。
【0109】
(7)成形切断工程
バインダマットを切断して所定の大きさを有する保持シール材を作製する。この際、保持シール材の端面のうち、一方の端面の一部に凸部が形成され、他方の端面の一部に凸部と嵌合する形状の凹部が形成されるようにして切断する。
具体的には、ピストンの先端に取り付けられており、上下方向に往復運動可能な打ち抜き板と、打ち抜き板と対向し、バインダマットを載置可能な載置板とを備える打ち抜き装置を使用することにより保持シール材を作製してもよい。
【0110】
打ち抜き板には、製造する保持シール材の外形に対応する形状の打ち抜き刃と、伸縮自在なゴム等からなる弾性部材とが固定されている。また、載置板には、打ち抜き板が載置板に接近した場合に、打ち抜き刃が載置板と接触しないよう、打ち抜き刃に対応する位置に貫通孔が設けられている。
【0111】
このような打ち抜き装置を用いてバインダマットを打ち抜く場合には、バインダマットの第一主面が打ち抜き板側に、第二主面が載置板側に位置するように、載置板上にバインダマットを載置し、打ち抜き板を上下方向に運動させる。
すると、弾性部材がバインダマットに押し付けられてバインダマットの厚さ方向に収縮し、これと同時に、打ち抜き刃がバインダマットの第一主面側からバインダマットの内部に侵入し、バインダマットを打ち抜き刃が貫通することにより、バインダマットが図5に示したような所定形状に打ち抜かれ、保持シール材が作製される。
【0112】
工程(7)を経て作製した保持シール材を使用して排ガス浄化装置を製造する場合には、作製した保持シール材を下記工程(8)に供することにより行ってもよい。
以下に排ガス浄化装置を製造する工程(8)について、図面を用いて説明する。
図9は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置を構成する保持シール材、排ガス処理体及びケーシングを用いて排ガス浄化装置を製造する様子を模式的に説明する斜視図である。
【0113】
(8)圧入工程
円柱形状の排ガス処理体(ハニカムフィルタ)40の外周に上記工程(7)で作製した保持シール材200を凸部234aと凹部234bとが嵌合するようにして巻き付ける。そして、図9に示したように、保持シール材200を巻き付けた排ガス処理体40を所定の大きさを有する円筒状であって、主に金属等からなるケーシング50に圧入する。
なお、圧入に際しては、ケーシングの端部の内径よりも一方の端部の内径が若干小さく、保持シール材を含めた排ガス処理体の外径よりも他方の端部の内径が充分に大きいテーパー状の円筒体からなる圧入治具を使用してもよい。
以上の工程を経て、本実施形態の排ガス浄化装置60を作製する。
【0114】
以下、本発明の第一実施形態のマット、マットの製造方法及び排ガス浄化装置の作用効果を列挙する。
【0115】
(1)本実施形態のマットは、第一バーブレスニードル貫通点から第二バーブレスニードル貫通点にかけて設けられた非交絡部を有している。非交絡部には、互いに絡み合わず、互いに平行に配列された無機繊維が存在しているので、非交絡部が通気孔のように機能する。そのため、マットの通気性が高い。
従って、含浸マットを乾燥風等で乾燥させることによりバインダマットを作製する場合、乾燥時間を大幅に短縮し、バインダマットの製造コストを低く抑えることができる。
また、非交絡部には、互いに絡み合っていない無機繊維が存在しているので、非交絡部が複数設けられているにも関わらず、マットの反発力(保持シール材の保持力)が高い。
【0116】
(2)本実施形態のマットでは、非交絡部の形成密度が0.5〜25個/cmであるので、単位面積あたりに形成された非交絡部の数が多く、マットの通気性が高い。
また、単位面積あたりに形成された非交絡部の数が多すぎず、マットの反発力及び強度が適切な値に保たれている。なお、非交絡部の密度が1〜20個/cmである場合、上記作用効果をより好適に享受することができる。
【0117】
(3)本実施形態のマットに形成された交絡部では、交絡部及び非交絡部が形成されていない交絡点(非形成領域)に比べて無機繊維が互いに緻密に絡み合っており、交絡部を中心として、マットの嵩が適度に低く抑えられている。
【0118】
(4)本実施形態のマットでは、交絡部が第一交絡部と第二交絡部とからなり、第一交絡部を形成する無機繊維の配向方向と、第二交絡部を形成する無機繊維の配向方向とが対向した関係にあるため、無機繊維がより複雑に絡み合っており、マットの強度がより高い。
【0119】
(5)本実施形態のマットでは、交絡部の形成密度(第一交絡部と第二交絡部との合計の形成密度)が0.5〜30個/cmであるので、嵩が適度に低く、マットの強度がより高い。
【0120】
(6)本実施形態のマットの少なくとも一部では、非交絡部と交絡部とが交互に異なる位置に形成されている。
非交絡部のみが偏って形成された箇所があると、無機繊維が互いに絡み合っていない箇所が一定の領域に渡って存在することになるので、その箇所を中心としてマットの強度が低下しやすくなる。一方、交絡部のみが偏って形成された箇所があると、無機繊維が緻密に絡み合っていて嵩が低すぎる箇所が一定の領域に渡って存在することになるので、マット全体で均一な厚さになりにくくなる。
これに対し、非交絡部と交絡部とが交互に異なる位置に形成されている本実施形態のマットでは、上述した不具合が発生しない。また、非交絡部がバランスよく配置されているので、係るマットを乾燥工程に供すると、乾燥時間をより短縮することができる。
【0121】
(7)本実施形態のマットを構成する無機繊維は、耐熱性等の諸特性に優れたアルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、シリカ繊維、溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種の無機繊維からなる。
そのため、マット及び該マットを使用した保持シール材は、耐熱性や保持力等に優れる。
また、マットを構成する無機繊維が溶解性繊維である場合には、マットの取り扱い時に溶解性繊維が飛散して体内に取り込まれたとしても溶解し、体外に排出されることになるため、人体に対する安全性が優れる。
【0122】
(8)本実施形態のマットに有機バインダが含まれている場合、次の作用効果も奏することができる。
有機バインダが含まれたマットを使用した保持シール材を排ガス浄化装置に用いると、排ガス浄化装置の使用時には、高温の排ガスにより有機バインダが分解し、無機繊維の接着が解除され、保持シール材が膨張するので、高い保持力を発揮することができる。
【0123】
(9)本実施形態のマットの製造方法では、上述した構成及び作用効果を有する本実施形態のマットを好適に製造することができる。
【0124】
(10)本実施形態の排ガス浄化装置は、所定の排ガス処理体を備えているので、排ガス中のPMや有害ガス等を除去することができる。
また、排ガス浄化装置を構成する保持シール材に製造コストの低い本実施形態のマットを使用しているので、排ガス浄化装置の製造コストが低い。
【実施例】
【0125】
(実施例1)
以下の工程(1)〜(3)を経ることにより、本実施形態に係るマットを製造した。
【0126】
(1)バーブニードリング工程
アルミナシリカ繊維前駆体(平均繊維長100mm、平均繊維径7μm、焼成後の無機繊維における組成比が、Al:SiO=72:28(重量比))を含む、クロスレイヤー法により作製した前駆体シートを準備した。
前駆体シートは、長さ150mm×幅150mm×厚さ12mmであり、単位面積あたりの重量は1160g/mであった。
別途、図2(a)に示したバーブレスニードリング装置と略同様の構成を有しており、バーブレスニードル板の代わりに、バーブニードル板を備えるバーブニードリング装置を準備した。なお、バーブニードル板としては、バーブニードル板の対向面の単位面積あたりに形成されたバーブニードルの数が3.5個/cmであり、直径が約2mmのバーブニードルが所定の間隔で取り付けられたバーブニードル板を使用した。
【0127】
次に、支持板の載置面と前駆体シートの第二主面とが接するように、前駆体シートを載置面に設置し、支持板及び前駆体シートの上方に位置するバーブニードル板を前駆体シートの厚さ方向に沿って下降させることにより、複数のバーブニードルを第一主面側から第二主面側に向かって貫通させた。その後、バーブニードルを前駆体シートから引き抜くことにより、一回目のバーブニードリング処理を行った。
【0128】
続いて、二回目のバーブニードリング処理を行った。
支持板の載置面と一回目のバーブニードリング処理を行った前駆体シートの第一主面とが接するように、前駆体シートを載置面に設置した。
そして、支持板及び前駆体シートの上方に位置するバーブニードル板を前駆体シートの厚さ方向に沿って下降させることにより、複数のバーブニードルを第二主面側から第一主面側に向かって貫通させた。このとき、一回目にバーブニードルが貫通した箇所と、二回目にバーブニードルが貫通する位置とが交互に異なるようにバーブニードルを前駆体シートに貫通させた。
その後、バーブニードルを前駆体シートから引き抜くことにより、ニードリング前駆体シートを作製した。
【0129】
(2)焼成工程
続いて、ニードリング前駆体シートを最高温度1250℃で焼成することにより、無機繊維前駆体を無機繊維に転換し、シートを作製した。
作製したシートは、アルミナシリカ繊維が互いに絡み合って構成されており、長さ150mm×幅150mm×厚さ12mmであり、単位面積あたりの重量は1160g/mであった。
【0130】
(3)バーブレスニードリング工程
図2(a)に模式的に示した構成を有するバーブレスニードリング装置を準備した。
なお、バーブレスニードル板としては、バーブレスニードル板の対向面の単位面積あたりに形成されたバーブレスニードルの数が0.5個/cmであり、直径が約2mmのバーブレスニードルが所定の間隔で取り付けられたバーブレスニードル板を使用した。
【0131】
バーブレスニードリング装置の支持板の載置面とシートの第二主面とが接するように載置面に工程(2)で作製したシートを設置し、支持板及びシートの上方に位置するバーブレスニードル板をシートの厚さ方向に沿って下降させることにより、複数のバーブレスニードルを第一主面側から第二主面側に向かって貫通させた。このとき、一回目にバーブニードルが貫通した箇所と、二回目にバーブニードルが貫通した箇所と、バーブレスニードルが貫通する位置とが、シートの一部で交互に異なるようにバーブレスニードルをシートに貫通させた。その後、バーブレスニードルをシートから引き抜いた。
係るバーブレスニードリング処理を行うことにより、本実施形態のマットを製造した。
製造したマットは、アルミナシリカ繊維が互いに絡み合って構成されており、長さ150mm×幅150mm×厚さ12mmであって、単位面積あたりの重量は1160g/mであった。
また、製造したマットは、第一バーブレスニードル貫通点から第二バーブレスニードル貫通点にかけて設けられた非交絡部を有していた。
また、第一バーブニードル貫通点から第二バーブニードル貫通点にかけて設けられた第一交絡部と、第三バーブニードル貫通点から第四バーブニードル貫通点にかけて設けられた第二交絡部とを有していた。
作製したマットから長さ50mm×幅50mmのサイズの切断片を作製し、第一主面及び第二主面に略平行な平面に沿って切断片を厚み方向の中間地点で略二等分に切断し、得られた主断面を顕微鏡で観察することにより、非交絡部の形成密度、及び、第一交絡部と第二交絡部との合計の形成密度を求めた。
その結果、非交絡部の形成密度は0.5個/cmであり、第一交絡部と第二交絡部との合計の形成密度は7個/cmであった。
一の第一(第二)バーブレスニードル貫通点と、それに最近接する他の第一(第二)バーブレスニードル貫通点との最短距離は約12mmであり、第一(第二)バーブニードル貫通点と、それに最近接する第三(第四)バーブニードル貫通点との最短距離は、約3mmであり、第一(第二)バーブレスニードル貫通点と、それに最近接する第一又は第三(第二又は第四)バーブニードル貫通点との最短距離は、約1.5mmであった。
また、非交絡部と第一交絡部と第二交絡部とは、図3(a)及び図3(b)に示すパターンのように、マットの一部で交互に異なる位置に形成されていた。
第一及び第二バーブレスニードル貫通点の直径は、約1mmであり、第一〜第四バーブニードル貫通点の直径は、約1mmであった。
【0132】
(断面観察試験)
非交絡部及び交絡部の様子を確認するため、実施例1と同様の方法により断面観察試験用のサンプルマットを製造した。但し、非交絡部及び交絡部の様子を観察しやすくするため、非交絡部の形成密度を10個/cmに変更し、交絡部の形成密度を7個/cmに変更し、一回目のバーブニードリング処理のみ行い、二回目のバーブニードリング処理を行わなかった。
作製したサンプルマットを、非交絡部及び交絡部が切断面に現れるように厚み方向に沿って略垂直に切断し、得られた切断面を顕微鏡で25倍に拡大して観察した。観察した際に撮影した顕微鏡写真を図4に示す。
その結果、非交絡部では、第一主面及び第二主面に略平行な方向に沿って大部分の無機繊維が配列しており、無機繊維が互いに絡み合わず、互いに平行に配列していた。
交絡点(非形成領域)では、第一主面及び第二主面に略平行な方向に沿って無機繊維が配列しており、無機繊維が互いに緩く絡み合っていた。
交絡部では、無機繊維が第二主面側に向かって配向しつつ、互いに緻密に絡み合っていた。
【0133】
(乾燥試験)
乾燥試験は、以下の手順で行った。
実施例1で製造したマットを乾燥試験用サンプルとして使用した。
別途、ピストンの先端に取り付けられており、パンチングメタルからなる上側プレス板と、上側プレス板と対向しており、パンチングメタルからなる下側プレス板と、熱風吹き出し口とを備える図8に模式的に示す熱風乾燥機を準備した。
なお、この熱風乾燥機は、内部の温度を所定の温度範囲内に制御可能な乾燥炉の内部に設置されている。
【0134】
次に、作製した乾燥試験用サンプルに、有機バインダ溶液を模した水を含浸させることにより含浸サンプルを作製した。含浸させる水の量は、乾燥試験用サンプルの乾燥重量(含浸サンプルの乾燥重量)の2倍の重量とした。
【0135】
作製した含浸サンプルを熱風乾燥機の上側プレス板と下側プレス板との間に設置した。
この際、含浸サンプルの両主面が上側プレス板及び下側プレス板にそれぞれ当接するよう設置した。
次に、上側プレス板を下方向に移動させることにより、含浸サンプルの厚さが6mmになるまで圧縮した。
そして、乾燥炉を140℃まで昇温させた後、熱風吹き出し口から140℃の熱風を含浸サンプルに向けて吹きつけることにより、含浸サンプルを乾燥させた。含浸サンプルの重量を随時測定することにより、含浸サンプルに含まれる水分量が5重量%になるまでに要した時間を測定し、その時間を乾燥時間とした。
その結果、実施例1で製造したサンプルの乾燥時間は、245秒であった。
【0136】
(面圧試験)
面圧試験に用いた面圧測定装置について説明する。
面圧測定装置は、上下方向から面圧試験用サンプルを挟み込むことができる金属製の下板部材及び上板部材と、上板部材の上面と接続され、上下方向に移動可能なピストンと、上板部材に加えられる圧力(以下、面圧ともいう)を測定可能なセンサーとから構成されている。
このような構成を有する面圧測定装置を用いて面圧が測定される原理について説明する。
まず、面圧試験用サンプルを上板部材と下板部材とで挟み込む。次に、ピストンを下方向に移動させると、上板部材が下方向に移動し、面圧試験用サンプルが所定の圧縮密度になるまで圧縮される。この際、反発力により面圧試験用サンプルが圧縮された状態から元の状態に戻ろうとするため、上板部材に面圧試験用サンプルの反発力による圧力が加えられる。この圧力をセンサーで測定し、圧縮時の面圧を測定することができる。
【0137】
面圧試験は、以下の手順で行った。
まず、実施例1で製造したマットを幅25mm×長さ25mmのサイズに裁断することにより面圧試験用サンプルとした。
この面圧試験用サンプルを面圧測定装置の下板部材と上板部材との間に設置した。
この際、面圧試験用サンプルの両主面が下板部材及び上板部材に当接するよう設置した。
次に、上板部材を下方向に移動させ、面圧試験用サンプルを圧縮密度が0.35g/cmになるまで圧縮した。
この状態で面圧試験用サンプルを保持し、圧縮密度0.35g/cm時の面圧を測定した。
その結果、実施例1で製造した面圧試験用サンプルの面圧は、174kPaであった。
【0138】
(実施例2〜7)
実施例1の工程(3)で、バーブレスニードル板に取り付けられたバーブレスニードルの形成密度を適宜変更することにより、非交絡部の形成密度を下記する表1に示すように、1〜25個/cmに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてマットを製造した。
実施例2〜7において、一の第一(第二)バーブレスニードル貫通点と、それに最近接する他の第一(第二)バーブレスニードル貫通点との最短距離は、それぞれ、約8.5mm(実施例2)、約3.3mm(実施例3)、約3mm(実施例4)、約2.2mm(実施例5)、約1.7mm(実施例6)、約1.3mm(実施例7)であった。
また、第一(第二)バーブニードル貫通点と、それに最近接する第三(第四)バーブニードル貫通点との最短距離は、約3mm(実施例2〜7)であった。第一(第二)バーブレスニードル貫通点と、それに最近接する第一又は第三(第二又は第四)バーブニードル貫通点との最短距離は、約1.5mm(実施例2〜7)であった。第一及び第二バーブレスニードル貫通点の直径は、約1mmであり、第一〜第四バーブニードル貫通点の直径は、約1mmであった(実施例2〜7)。
実施例1と同様にして、実施例2〜7で製造した各マットを使用して乾燥試験用サンプル(含浸サンプル)及び面圧試験用サンプルを作製した。
【0139】
(比較例1)
実施例1の工程(3)のバーブレスニードリング工程を行わずに、シートをそのまま比較例1のマットとして使用した。
即ち、比較例1のマットは、実施例1〜7のマットに比較して非交絡部、第一及び第二バーブレスニードル貫通点が形成されていないこと以外は変わるところがなく、長さ150mm×幅150mm×厚さ12mmであり、単位面積あたりの重量は1160g/mであった。また、第一バーブニードル貫通点から第二バーブニードル貫通点にかけて第一交絡部が形成されており、第三バーブニードル貫通点から第四バーブニードル貫通点にかけて第二交絡部が形成されており、第一交絡部と第二交絡部の合計の形成密度は7個/cmであった。
比較例1において、第一(第二)バーブニードル貫通点と、それに最近接する第三(第四)バーブニードル貫通点との最短距離は、約3mmであり、第一〜第四バーブニードル貫通点の直径は、約1mmであった。
実施例1と同様にして、比較例1で製造したマットを使用して乾燥試験用サンプル(含浸サンプル)及び面圧試験用サンプルを作製した。
【0140】
(比較例2)
比較例2のマットとして、交絡部の形成密度が20個/cmであること以外は比較例1のマットと略同様の構成を有するマットを使用した。
即ち、比較例2のマットは、実施例1〜7のマットに比較して、非交絡部、第一及び第二バーブレスニードル貫通点が形成されていないことと、交絡部の形成密度がより高く、第一(第二)バーブニードル貫通点と、それに最近接する第三(第四)バーブニードル貫通点との最短距離が、約1.7mmであることと、長さ150mm×幅150mm×厚さ8mmであること以外は変わるところがなく、単位面積あたりの重量は1160g/mであった。
実施例1と同様にして、比較例2で製造したマットを使用して乾燥試験用サンプル(含浸サンプル)及び面圧試験用サンプルを作製した。
【0141】
実施例2〜7、並びに、比較例1及び2で製造したマットについて、実施例1と同様にして、乾燥試験用サンプル(含浸サンプル)及び面圧試験用サンプルを用いて乾燥試験及び面圧試験を行うことにより、乾燥時間及び面圧について評価した。
実施例2〜7、並びに、比較例1及び2における評価結果については、実施例1の評価結果と合わせて表1及び図10に示す。
【0142】
図10は、実施例1〜7及び比較例1における非交絡部の形成密度と乾燥時間との関係、並びに、実施例1〜7及び比較例2における非交絡部の形成密度と面圧との関係を示すグラフである。
【0143】
【表1】

【0144】
表1及び図10のグラフに示したように、実施例1〜7で製造したマットでは、いずれも乾燥時間が比較例1で製造したマットよりも短縮された。
例えば、第一交絡部と第二交絡部との合計の形成密度が7個/cmであり、非交絡部の形成密度が0.5個/cmである実施例1のマットは、第一交絡部と第二交絡部との合計の形成密度が7個/cmであり、非交絡部が形成されていない比較例1のマットと比べて乾燥時間が25秒も短かった。
また、実施例1〜7で製造したマットでは、圧入性向上に必要な程度にまで嵩が適度に抑えられていたが、比較例2で製造したマットよりも面圧が高く、排ガス処理体を確実に保持することができる反発力(保持力)を有していた。
例えば、第一交絡部と第二交絡部との合計の形成密度が7個/cmであり、非交絡部の形成密度が15個/cmであって、第一交絡部と第二交絡部と非交絡部との合計の形成密度が22個/cmである実施例5のマットでは、第一交絡部と第二交絡部との合計の形成密度が20個/cmである比較例2のマットと比べて、第一交絡部と第二交絡部と非交絡部との合計の形成密度が大きいにも関わらず、面圧が30kPaも高かった。そのため、第一交絡部及び第二交絡部を形成した場合とは異なり、非交絡部をマットに形成しても面圧がそれほど低下しないことが判る。
【0145】
(第二実施形態)
次に、本発明の一実施形態である第二実施形態について図面を用いて説明する。
本発明の第二実施形態のマットは、本発明の第一実施形態で説明した第一交絡部及び第二交絡部のうちで第二交絡部が形成されていないこと以外は、上述した本発明の第一実施形態のマットと同様の構成を有している。
そのため、本発明の第一実施形態のマットの説明と重複する事項については、説明を省略する。
【0146】
図11(a)は、本発明の第二実施形態のマットを模式的に示す斜視図であり、図11(b)は、図11(a)に示すマットのD−D線断面図である。
なお、図11(a)では、マット3の長さを両矢印Lで示し、幅を両矢印Wで示し、厚さを両矢印Tで示している。
【0147】
図11(a)及び図11(b)に示す本実施形態のマット3は、第一主面30aと、第一主面30aの反対側に位置する第二主面30bとを有する平面視矩形状であって、無機繊維が互いに絡み合って構成された交絡点からなるマットである。
【0148】
図11(a)、図11(b)に示すように、第一主面30a上の略全面には、複数の第一バーブレスニードル貫通点31aが所定の間隔で形成されており、第二主面30b上の略全面には、複数の第二バーブレスニードル貫通点31bが所定の間隔で形成されている。
そして、第一バーブレスニードル貫通点31aから第二バーブレスニードル貫通点31bにかけて非交絡部32が形成されている。即ち、非交絡部32がマット3の略全体に渡って所定の間隔で形成されている。
また、非交絡部32には、互いに絡み合わず、互いに平行に配列された無機繊維33aが存在している。
【0149】
また、第一主面30a上には、第一バーブニードル貫通点35aが形成されており、第二主面30b上には、第二バーブニードル貫通点35bが形成されている。そして、第一バーブニードル貫通点35aから第二バーブニードル貫通点35bにかけて、交絡部36が形成されている。
交絡部36を構成する無機繊維37は、第二主面30b側に配向しつつ、互いに緻密に絡み合っている。
交絡部36の形成密度は、0.5〜30個/cmである。
【0150】
一の第一バーブニードル貫通点35a(一の第二バーブニードル貫通点35b)と、それに最近接する他の第一バーブニードル貫通点35a(他の第二バーブニードル貫通点35b)との最短距離(図11(a)中、両矢印Yで示す距離)は、1〜10mmである。
そのため、交絡部36が密に集まりすぎておらず、マット3の強度が充分に高い。
【0151】
第一バーブニードル貫通点35a及び第二バーブニードル貫通点35bの直径は、0.1〜2mmである。
第一バーブニードル貫通点35a及び第二バーブニードル貫通点35bの直径が上記範囲にあるので、第一バーブニードル貫通点35a及び第二バーブニードル貫通点35bの直径が大きすぎず、マット3の強度を充分に確保することができる。
【0152】
一の第一バーブレスニードル貫通点31a(一の第二バーブレスニードル貫通点31b)と、それに最近接する一の第一バーブニードル貫通点35a(他の第二バーブニードル貫通点35b)との最短距離(図11(a)中、両矢印Zで示す距離)は、1〜10mmである。
そのため、非交絡部32及び交絡部36が密に集まりすぎておらず、マット3の強度が充分に高い。
【0153】
図11(a)及び図11(b)に示すように、マット3の幅方向Wに沿って非交絡部32(第一バーブレスニードル貫通点31a及び第二バーブレスニードル貫通点31b)と交絡部36(第一バーブニードル貫通点35a及び第二バーブニードル貫通点35b)とが一列に形成された箇所では、非交絡部32と交絡部36とが略等間隔で交互に整列しており、非交絡部32と交絡部36とが交互に異なる位置に形成されている。マット3の幅方向Wに沿って交絡部36のみが一列に形成された箇所では、各々の交絡部36が略等間隔で整列している。
また、マット3の長さ方向Lに沿って非交絡部32のみが一列に形成された箇所では、各々の非交絡部32が略等間隔で整列している。
マット3の長さ方向Lに沿って交絡部36のみが一列に形成された箇所では、各々の交絡部36が略等間隔で整列している。
ここで説明したように、マット3の少なくとも一部において、非交絡部32と交絡部36とが交互に異なる位置に形成されていることが好ましい。
なお、マットの長さ方向に沿って非交絡部と交絡部とが略等間隔で交互に整列しているとともに、マットの幅方向に沿って非交絡部と交絡部とが略等間隔で交互に整列していることにより、マット全体で非交絡部と交絡部とが交互に異なる位置に形成されていてもよい。
【0154】
非交絡部32と交絡部36の合計の形成密度は、5〜35個/cmであることが好ましい。乾燥工程での乾燥時間がより短縮するし、マット3の反発力が低下しすぎることがないからである。
【0155】
以下、本実施形態のマットの製造方法について説明する。
本実施形態のマットの製造方法については、バーブニードリング工程において前駆体シートの一方の主面に対してのみバーブニードリング処理を施すこと以外は、上述した本発明の第一実施形態のマットの製造方法と同様である。
即ち、本実施形態のマットの製造方法では、本発明の第一実施形態のマットの製造方法における工程(3)で、一回目のバーブニードリング処理のみ行うことによりニードリング前駆体シートを作製すればよく、二回目のバーブニードリング処理を行わなければよい。
【0156】
本実施形態のマットを使用してバインダマットを作製する方法、該バインダマットを使用して保持シール材を作製する方法、及び、該保持シール材を使用して排ガス浄化装置を作製する方法については、本実施形態のマットを使用すること以外は、本発明の第一実施形態の説明で述べた各作製方法と同様であるので説明を省略する。
【0157】
本発明の第二実施形態のマット、マットの製造方法及び排ガス浄化装置でも、本発明の第一実施形態で説明した作用効果(1)〜(3)、(5)〜(10)を発揮することができる。
【0158】
(第三実施形態)
次に、本発明の一実施形態である第三実施形態について説明する。
本発明の第三実施形態のマットは、抄造法により作製されたシートを用いて製造されており、第一及び第二交絡部、第一〜第四バーブニードル貫通点が形成されていないこと以外は、上述した本発明の第一実施形態のマットと同様の構成を有している。そのため、本発明の第一実施形態と重複する事項については、説明を省略する。
即ち、本実施形態のマットは、第一主面と、第一主面の反対側に位置する第二主面とを有する平面視矩形状のマットであり、無機繊維が互いに絡み合って構成された交絡点からなるマットである。
本実施形態のマットには、第一主面上の複数の第一バーブレスニードル貫通点から第二主面上の複数の第二バーブレスニードル貫通点にかけて設けられた非交絡部が形成されており、非交絡部には、互いに絡み合わず、互いに平行に配列された無機繊維が存在している。
【0159】
以下、本実施形態のマットの製造方法について説明する。
ここでは、アルミナシリカ繊維を含んでなるマットを製造する場合について説明するが、本実施形態のマットを構成する無機繊維については、アルミナシリカ繊維に限られるものではなく、上述したアルミナ繊維等の種々の組成の無機繊維を使用してもよい。
【0160】
(1)混合液調製工程
バルク状のアルミナシリカ繊維と、有機バインダと、無機バインダと、水とを原料液中のアルミナシリカ繊維の含有量が所定の値となるように混合し、攪拌機で攪拌することで混合液を調製する。
【0161】
(2)抄造工程
次に、底面にろ過用のメッシュが形成された成形槽に混合液を流し込んだ後に、メッシュを介して混合液中の水を脱水することにより抄造シートを作製する。
なお、この抄造工程では、細長い無機繊維が脱水時の混合液の流れによる抵抗を受けて所定の方向に整列しやすいので、大部分の無機繊維がマットの第一主面及び第二主面に略平行な方向に沿って配列し、互いに緩く絡み合うことになる。
【0162】
(3)バーブレスニードリング工程
次に、工程(2)で作製した抄造シートをバーブレスニードリング工程に供することにより、非交絡部が形成された湿式マットを作製する。
バーブレスニードリング工程では、例えば、図2(a)に示すバーブレスニードリング装置を使用し、本発明の第一実施形態のバーブレスニードリング処理の方法に準じてバーブレスニードリング処理を行えばよい。
即ち、本発明の第一実施形態のバーブレスニードリング処理で使用するシートの代わりに、上記抄造法で作製した抄造シートを用いてバーブレスニードリング処理を行えばよい。
なお、抄造シートは、抄造工程を経た後、乾燥させる前の状態でバーブレスニードリング工程に供されるので、抄造シートを乾燥させた後の乾燥重量に対して、混合液中の分散媒(水等)が、1〜5倍含まれている。
【0163】
(4)加熱圧縮工程
上記工程(3)を経て作製した湿式マットを、加熱圧縮乾燥機を使用して所定の条件で加熱圧縮することによりマットを製造する。
この工程を経ることにより、有機バインダ及び無機バインダを介してアルミナシリカ繊維が互いに接着され、マットの形状が保持されることになる。
【0164】
工程(1)〜(4)を経て製造した本実施形態のマットを使用してバインダマットを作製する場合には、本発明の第一実施形態で説明したバインダ付与工程(6)に供することにより行ってもよい。
【0165】
バインダ付与工程を経て作製したバインダマットを使用して保持シール材を作製する場合には、製造したマットを本発明の第一実施形態で説明した成形切断工程(7)に供することにより行ってもよい。
【0166】
成形切断工程を経て作製した保持シール材を使用して排ガス浄化装置を作製する場合には、作製した保持シール材を本発明の第一実施形態で説明した圧入工程(8)に供することにより行ってもよい。
【0167】
上述した本発明の第三実施形態で製造したマット、マットの製造方法及び排ガス浄化装置でも、本発明の第一実施形態で説明した作用効果(1)、(2)及び(7)〜(10)を発揮することができる。
【0168】
以下、本発明の一実施形態をより具体的に開示した実施例を示すが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0169】
(実施例8)
保持シール材の製造
以下の手順により保持シール材を製造した。
(1)混合液調製工程
アルミナ:シリカ=72:28(重量比)の組成を有するバルク状のアルミナシリカ繊維(平均繊維長10mm、平均繊維径5μm)を27.9gと、アクリル系ラテックスを3.5gと、アルミナゾルを1gと、水とを原料液中のアルミナシリカ繊維の含有量が0.5重量%となるように混合し、攪拌機で300秒間攪拌することで混合液を調製した。
【0170】
(2)抄造工程
次に、底面にろ過用のメッシュが形成された成形槽(長さ150mm×幅150mm×深さ400mm)に混合液を流し込んだ後に、メッシュを介して混合液中の水を脱水することにより抄造シートを作製した。
抄造シートには、抄造シートを乾燥させた後の乾燥重量に対して4倍の重量の分散媒(水)が含まれていた。
【0171】
(3)バーブレスニードリング工程
図2(a)に模式的に示す構成を有するバーブレスニードリング装置を準備した。なお、バーブレスニードル板としては、実施例1で使用したバーブレスニードル板と同様の構成を有するバーブレスニードル板を使用した。
【0172】
次に、バーブレスニードリング装置の支持板の載置面と抄造シートの第二主面(下側の主面)とが接するように載置面に抄造シートを設置し、支持板及び抄造シートの上方に位置するバーブレスニードル板を抄造シートの厚さ方向に沿って下降させることにより、複数のバーブレスニードルを第一主面(上側の主面)側から第二主面側に向かって貫通させた。
その後、バーブレスニードルを抄造シートから引き抜くことにより、湿式マットを作製した。
【0173】
(4)加熱圧縮工程
作製した湿式マットをバーブレスニードリング装置から取り出し、加熱圧縮乾燥機で120℃、30分間加熱圧縮することによりマットを製造した。
製造したマットは、長さ150mm×幅150mm×厚さ8mmであって、単位面積あたりの重量は、1240g/mであった。
第一主面上には第一バーブレスニードル貫通点が形成されており、第二主面上には第二バーブレスニードル貫通点が形成されており、第一バーブレスニードル貫通点から第二バーブレスニードル貫通点にかけて非交絡部が形成されていた。
また、非交絡部の形成密度は、0.5個/cmであった。
一の第一バーブレスニードル貫通点(一の第二バーブレスニードル貫通点)と、それに最近接する他の第一バーブレスニードル貫通点(他の第二バーブレスニードル貫通点)との最短距離は、約12mmであった。
第一バーブレスニードル貫通点及び第二バーブレスニードル貫通点の直径は、約1mmであった。
【0174】
(実施例9〜14)
実施例8の工程(3)で、バーブレスニードル板に取り付けられたバーブレスニードルの形成密度を適宜変更することにより、非交絡部の形成密度を下記する表2に示すように、1〜25個/cmに変更したこと以外は、実施例8と同様にしてマットを製造した。
実施例9〜14において、第一(第二)バーブレスニードル貫通点と、それに最近接する他の第一(第二)バーブレスニードル貫通点との最短距離は、それぞれ、約8.5mm(実施例9)、約3.3mm(実施例10)、約3mm(実施例11)、約2.2mm(実施例12)、約1.7mm(実施例13)、約1.3mm(実施例14)であった。第一及び第二バーブレスニードル貫通点の直径は、約1mmであった(実施例9〜14)。
実施例1と同様にして、実施例8〜14で製造した各マットを使用して乾燥試験用サンプル(含浸サンプル)及び面圧試験用サンプルを作製した。
【0175】
(比較例3)
実施例8の工程(3)のバーブレスニードリング工程を行わなかったこと以外は、実施例8と同様にしてマットを製造した。
即ち、比較例3のマットは、実施例8〜14のマットに比較して非交絡部、第一及び第二バーブレスニードル貫通点が形成されていないこと以外は変わるところがなく、長さ150mm×幅150mm×厚さ8mmであり、マットの単位面積あたりの重量は1240g/mであった。
実施例1と同様にして、比較例3で製造したマットを使用して乾燥試験用サンプル(含浸サンプル)及び面圧試験用サンプルを作製した。
【0176】
実施例8〜14及び比較例3の各乾燥試験用サンプル(含浸サンプル)を用いて、実施例1と同様にして乾燥試験を行うことにより乾燥時間について評価した。但し、作製した各乾燥試験用サンプル(含浸サンプル)には、各乾燥試験用サンプル(含浸サンプル)の乾燥重量の4倍の重量の水を含浸させて乾燥試験を行った。
また、実施例8〜14及び比較例3の各面圧試験用サンプルを用いて、実施例1と同様にして面圧試験を行うことにより面圧を評価した。
実施例8〜14及び比較例3における評価結果を表2及び図12に示す。
【0177】
図12は、実施例8〜14及び比較例3について、非交絡部の形成密度と乾燥時間との関係、及び、非交絡部の形成密度と面圧との関係を示すグラフである。
【0178】
【表2】

【0179】
表2及び図12のグラフに示したように、実施例8〜14で製造したマットでは、いずれも乾燥時間が比較例3で製造したマットよりも短縮された。
実施例8〜14で製造したマットでは、圧入性向上に必要な程度にまで嵩が抑えられていたものの、面圧が比較的高く、保持シール材に加工された場合に排ガス処理体を確実に保持するのに必要とされる反発力を有していた。
【0180】
(その他の実施形態)
本発明のマットは、膨張材をさらに含んでいてもよい。
膨張材が含まれたマットを使用した保持シール材では、排ガス浄化装置の使用時における高温の排ガスにより膨張材が膨張するので、高い保持力を発揮することができる。
膨張材としては、例えば、膨張性バーミキュライト、ベントナイト、膨張性黒鉛等が挙げられる。
【0181】
本発明のマットに形成された非交絡部の形成密度は、0.5〜25個/cmであることが望ましく、1〜20個/cmであることがより望ましく、5〜20個/cmであることがさらに望ましく、10〜20個/cmであることが特に望ましい。
マットの反発力を所定の範囲内に維持しつつも、乾燥時間をより短縮することができるからである(図10及び図12参照)。
【0182】
本発明のマットでは、一の第一バーブレスニードル貫通点(一の第二バーブレスニードル貫通点)と、それに最近接する他の第一バーブレスニードル貫通点(他の第二バーブレスニードル貫通点)との最短距離が、1〜20mmであることが望ましい。
互いに絡み合っていない無機繊維を含んでいる非交絡部が密に集まりすぎることがなく、マットの強度を充分に確保することができるからである。また、通気孔として機能するバーブレスニードル貫通点間(非交絡部間)の距離が長すぎることがなく、係るマットを含浸工程及び続く乾燥工程に供した場合、交絡点(非形成領域)を含めたマット全体をまんべんなく乾燥させることが可能となり、乾燥時間をより短縮することができるからである。
一方、上記最短距離が1mm未満であると、互いに絡み合っていない無機繊維を含んでいるバーブレスニードル貫通点(非交絡部)同士の距離が近すぎて、マットの強度が低下しやすくなる。
また、上記最短距離が20mmを超えると、通気孔として機能するバーブレスニードル貫通点間(非交絡部間)の距離が長すぎて、係るマットを含浸工程及び続く乾燥工程に供した場合には、乾燥時間が短縮しにくくなる。
【0183】
本発明のマットでは、第一バーブレスニードル貫通点及び第二バーブレスニードル貫通点の直径は、0.1〜3mmであることが望ましい。
第一バーブレスニードル貫通点及び第二バーブレスニードル貫通点の直径(非交絡部の直径)が大きすぎず、マットの強度を充分に確保することができるからである。また、第一バーブレスニードル貫通点及び第二バーブレスニードル貫通点の直径(非交絡部の直径)が小さすぎることもなく、通気孔としての機能を充分に発揮することができるので、係るマットを含浸工程及び続く乾燥工程に供した場合には、交絡点(非形成領域)を含めたマット全体をまんべんなく乾燥させることが可能となり、乾燥時間をより短縮することができるからである。
一方、上記直径が0.1mm未満であると、第一バーブレスニードル貫通点及び第二バーブレスニードル貫通点の直径(非交絡部の直径)が小さすぎて、交絡点(非形成領域)が通気孔としての機能を果たしにくくなる。
また、上記直径が3mmを超えると、第一バーブレスニードル貫通点及び第二バーブレスニードル貫通点の直径(非交絡部の直径)が大きすぎて、マットの強度が低下しやすくなる。
【0184】
本発明のマットに交絡部(第一交絡部及び第二交絡部)が形成されている場合、交絡部(第一交絡部及び第二交絡部)の形成密度は、0.5〜30個/cmであることが望ましく、3〜20個/cmであることがより望ましく、5〜10個/cmであることがさらに望ましい。マットの強度がより高くなるからである。
【0185】
本発明のマットに非交絡部と交絡部とが形成されている場合、交絡部と非交絡部の合計の形成密度は、5〜35個/cmであることが望ましく、5〜30個/cmであることがより望ましく、10〜30個/cmであることがさらに望ましく、15〜30個/cmであることが特に望ましい。
上記乾燥工程での乾燥時間がより短くなるし、マットの反発力が低下しにくくなるからである。また、非交絡部と交絡部とは、交互に異なる位置に形成されていることが望ましい。
【0186】
本発明のマットでは、第一〜第三実施形態で説明したように、マットの略全体に渡って所定の間隔で非交絡部が形成されていてもよいが、非交絡部の形成密度が他の領域に比べて局所的に高くなった高密度領域がマットの一部に設けられていてもよい。高密度領域では、他の領域に比べて、互いに絡み合っていない無機繊維がより多く存在しているので、高密度領域が一部に設けられたマットは、あたかもミシン目を設けたかのように、高密度領域を中心として曲がりやすい。
本発明のマットから図5に示す保持シール材200を作製する場合、好ましくは、作製された保持シール材200の幅方向W’に沿って、長さ方向L’に平行な一方の端面から長さ方向L’に平行な他方の端面まで帯状又は線状に高密度領域が延在するように、マットの特定の方向(例えば、マットの幅方向)に沿って、高密度領域が帯状又は線状に延在していることが望ましい。
このようなマットを使用した保持シール材は、幅方向に平行な端面(図5中、幅方向に平行な端面を233a、233bで示す)同士が当接するように曲げやすく、排ガス処理体に巻き付けやすくなるからである。円柱状の排ガス処理体のように、排ガス処理体の長手方向に垂直な断面の形状(断面形状)が円形である場合はもちろんのこと、断面形状が楕円形、長円形、レーストラック形、楕円形又は長円形等の単純閉曲線の一部が凹部を有する形状(concave形状)等である排ガス処理体に用いた場合には、係る効果をより好適に享受することができる。この場合、高密度領域は、上記排ガス処理体の断面形状における曲率半径が小さい部分が接触する箇所に設けられていることがより望ましい。
【0187】
本発明のマットの製造方法において、非交絡部と交絡部とが形成されたマットを製造する場合には、本発明の第一及び第二実施形態で説明した方法の他、以下の工程を経てマットを製造してもよい。
【0188】
まず、本発明の第一実施形態の紡糸工程(1)から圧縮工程(2)までと同様の工程を経て、無機繊維前駆体が互いに絡み合って構成された前駆体シートを作製する。
【0189】
(3)焼成工程
作製した前駆体シートを、最高温度約1000〜約1600℃で焼成することにより無機繊維前駆体を無機繊維に転換し、シートを作製する。
【0190】
(4)バーブレスニードリング工程
次に、工程(3)で作製したシートを使用し、本発明の第一実施形態で説明した方法に準じてバーブレスニードリング処理を行う。即ち、本発明の第一実施形態で使用したシート(ニードリングシート)の代わりに上記工程(3)で作製したシートを使用してバーブレスニードリング処理を行えばよい。
これにより、非交絡部が形成されたバーブレスニードリングシートを作製する。
【0191】
(5)バーブニードリング工程
次に、工程(4)で作製したバーブレスニードリングシートを使用し、本発明の第一実施形態で説明した方法に準じてバーブニードリング処理を行う。即ち、本発明の第一実施形態で使用した前駆体シートの代わりに上記工程(4)で作製したバーブレスニードリングシートを使用してバーブニードリング処理を行えばよい。
この方法によっても、本発明のマットを好適に製造することができる。
バーブニードリング処理については、バーブレスニードリングシートの両主面に対してバーブニードリング処理を施すことにより、非交絡部と第一交絡部と第二交絡部とが形成されたマットを製造してもよいし、バーブレスニードリングシートの一方の主面のみにバーブニードリング処理を施すことにより、非交絡部と第一交絡部とが形成されたマットを製造してもよい。
【0192】
本発明のマットの製造方法において、非交絡部と交絡部とが形成されたマットを製造する場合には、バーブニードリング処理とバーブレスニードリング処理とを一度のニードリング処理で行うことも望ましい。
この場合には、例えば、図2(a)に示すバーブレスニードリング装置を準備し、バーブレスニードル板の代わりに、バーブニードルとバーブレスニードルとが所定の間隔で取り付けられた混合ニードル板を備えるニードリング装置を使用する。
このニードリング装置を使用し、本発明の第一実施形態又は本発明の第二実施形態で説明したバーブニードリング処理と同様の処理を前駆体シートに対して行うことにより、一度のニードリング処理でバーブニードリング処理とバーブレスニードリング処理とを同時に行うことができる。
得られた処理済シートは、本発明の第一実施形態で説明した焼成工程(4)と同様の焼成工程に供することにより無機繊維前駆体を無機繊維に転換し、本発明のマットを製造することができる。
このマットの製造方法は、バーブニードリング処理とバーブレスニードリング処理とを別々に行う場合に比べて、非交絡部と交絡部とのピッチを設計値どおりの均一な値に制御しやすくなる。また、一度のニードリング処理で本発明のマットを製造することができるので、マットの製造効率をより高めることができる。
【0193】
本発明のマットの製造方法において、バーブニードルに形成されたバーブの形状については、無機繊維の交絡を形成することができるものであれば、上述したようにニードルの先端方向に向かって突出した形状に限られず、例えば、ニードルの根元方向に向かって突出した形状等であってもよい。
【0194】
本発明のマットの製造方法において、焼成後にアルミナ繊維となる無機繊維前駆体を作製するための紡糸用混合物に含まれる無機化合物としては、上述した塩基性塩化アルミニウムに限られず、焼成後にアルミナとなる無機化合物であればよい。焼成後にアルミナとなる無機化合物としては、例えば、塩基性酢酸アルミニウム、オキシ塩化アルミニウム等が挙げられる。
【0195】
上記紡糸用混合物に添加される有機重合体としては、特に限定されないが、上述したポリビニルアルコールの他に、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性有機重合体が挙げられる。
【符号の説明】
【0196】
1、2、3 マット
13a、13b、23a、27a、27b、33a、37 無機繊維
12、22、32 非交絡部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維が互いに絡み合って構成された交絡点からなるマットであって、
前記マットには、一方の主面から他方の主面にかけて設けられ、繊維が互いに絡み合わず、繊維同士が互いに平行に配列された非交絡部を有するマット。
【請求項2】
無機繊維が互いに絡み合って構成された交絡点からなるマットであって、
無機繊維が互いに絡み合って構成された交絡点からなるシートの少なくとも一方の主面側から他方の主面側に向かってバーブレスニードルが貫通するバーブレスニードリング処理が施されることにより形成された非交絡部を有することを特徴とするマット。
【請求項3】
前記非交絡部の形成密度は、1〜20個/cmである請求項1又は2に記載のマット。
【請求項4】
前記一方の主面から前記他方の主面にかけて設けられた交絡部をさらに有しており、前記交絡部を構成する無機繊維は、前記交絡部以外の部分を構成する無機繊維に比べて互いに緻密に絡み合っている請求項1〜3のいずれかに記載のマット。
【請求項5】
前記交絡部は、前記一方の主面側から前記他方の主面側に向かって配向しつつ、互いに緻密に絡み合った無機繊維からなる第一交絡部と、前記他方の主面側から前記一方の主面側に向かって配向しつつ、互いに緻密に絡み合った無機繊維からなる第二交絡部とから構成されている請求項4に記載のマット。
【請求項6】
前記交絡部の形成密度は、0.5〜30個/cmである請求項4又は5に記載のマット。
【請求項7】
少なくとも一部で前記非交絡部と前記交絡部とが交互に異なる位置に形成されている請求項4〜6のいずれかに記載のマット。
【請求項8】
前記無機繊維は、アルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、シリカ繊維、溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種の無機繊維である請求項1〜7のいずれかに記載のマット。
【請求項9】
有機バインダをさらに含む請求項1〜8のいずれかに記載のマット。
【請求項10】
膨張材をさらに含む請求項1〜9のいずれかに記載のマット。
【請求項11】
無機繊維が互いに絡み合って構成された交絡点からなるマットの製造方法であって、
無機繊維が互いに絡み合って構成された交絡点からなるシートの少なくとも一方の主面側から他方の主面側に向かってバーブレスニードルを貫通させるバーブレスニードリング工程を含むことを特徴とするマットの製造方法。
【請求項12】
無機繊維前駆体が互いに絡み合って構成された交絡点からなる前駆体シートの少なくとも一方の主面側から他方の主面側に向かってバーブニードルを貫通させることによりニードリング前駆体シートを作製するバーブニードリング工程と、
前記ニードリング前駆体シートを焼成することにより前記シートを作製する焼成工程とをさらに含む請求項11に記載のマットの製造方法。
【請求項13】
前記バーブニードリング工程では、前記前駆体シートの両主面に対してバーブニードリング処理を施す請求項12に記載のマットの製造方法。
【請求項14】
前記バーブレスニードリング工程を経てバーブレスニードリングシートを作製し、
前記バーブレスニードリングシートの少なくとも一方の主面側から他方の主面側に向かってバーブニードルを貫通させるバーブニードリング工程をさらに行う請求項11に記載のマットの製造方法。
【請求項15】
前記バーブニードリング工程では、前記バーブレスニードリングシートの両主面に対してバーブニードリング処理を施す請求項14に記載のマットの製造方法。
【請求項16】
前記バーブレスニードルが貫通する位置と前記バーブニードルが貫通する位置とが、少なくとも一部で交互に異なっている請求項12〜15のいずれかに記載のマットの製造方法。
【請求項17】
有機バインダ溶液を含浸させることにより含浸マットを作製する含浸工程と、
前記含浸マットを乾燥させる乾燥工程とをさらに含む請求項11〜16のいずれかに記載のマットの製造方法。
【請求項18】
無機繊維が含まれたスラリーを抄造することにより抄造シートを作製する抄造工程をさらに含み、
前記抄造シートを前記シートとして使用する請求項11に記載のマットの製造方法。
【請求項19】
排ガス処理体と、
前記排ガス処理体を収容するケーシングと、
前記排ガス処理体と前記ケーシングとの間に配設され、前記排ガス処理体を保持する保持シール材とからなる排ガス浄化装置であって、
前記保持シール材は、請求項1〜10のいずれかに記載のマットを使用していることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項20】
排ガス処理体と、
前記排ガス処理体を収容するケーシングと、
前記排ガス処理体と前記ケーシングとの間に配設され、前記排ガス処理体を保持する保持シール材とからなる排ガス浄化装置であって、
前記保持シール材は、請求項11〜18のいずれかに記載のマットの製造方法で製造されたマットを使用していることを特徴とする排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−214195(P2011−214195A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83770(P2010−83770)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】