説明

マット、保持シール材、マットの製造方法、及び、排ガス浄化装置

【課題】せん断強度が高いマットを提供する。
【解決手段】マットは、第一主面10aと、上記第一主面に対向して位置する第二主面10bと、第一側面と、上記第一側面に対向して位置する第二側面とを少なくとも有しており、上記第一主面上に形成されたニードル貫通点22aから上記第二主面上に形成されたニードル貫通点22bにかけて設けられた交絡部が複数形成されており、上記マットの厚さ方向に垂直な方向に沿って仮想直線L1を引き、第一交絡部に沿って仮想直線L2を引き、第二交絡部に沿って仮想直線L3を引いた際、上記第一側面側から上記第二側面側に向かって上記マットを透視すると、上記仮想直線L1と上記仮想直線L2とは、90°未満の角度αで交差しており、上記仮想直線L1と上記仮想直線L3とは、90°を超える角度βで交差しており、上記仮想直線L2と上記仮想直線L3とは、所定の角度γで交差していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マット、保持シール材、マットの製造方法、及び、排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリカ繊維又はアルミナ繊維等の無機繊維を圧縮してなる不織布状のマットが知られており、この不織布状のマットは耐熱性や弾性(反発力)等の特性に優れているため、種々の用途に使用されている。
【0003】
例えば、不織布状のマットは、排ガス浄化装置の構成部材として使用されている。
具体的に説明すると、一般的な排ガス浄化装置は、円柱状の排ガス処理体、該排ガス処理体を収容する円筒状のケーシング、及び、排ガス処理体とケーシングとの間に配設されるマット状の保持シール材から構成されており、上述した不織布状のマットは、この保持シール材を構成する部材として使用されている。なお、保持シール材は、不織布状のマットを所定形状に切断する切断工程等を経て作製される。
【0004】
不織布状で反発力を有するマットから構成された保持シール材は、所定の保持力を有している。そのため、上記排ガス浄化装置では、排ガス処理体が保持シール材によりケーシング内の所定の位置にしっかりと保持される。また、保持シール材が排ガス処理体とケーシングとの間に配設されているので、振動等が加えられても排ガス処理体がケーシングと接触しにくくなり、また、排ガス処理体とケーシングとの間からは排ガスが漏れにくくなる。
【0005】
ここで、保持シール材を使用した排ガス浄化装置を製造する方法としては、例えば、保持シール材を巻き付けた排ガス処理体をケーシングに圧入する方法が挙げられる。
具体的には、保持シール材を円柱状の排ガス処理体の外周部に巻き付けることにより巻付体を作製し、巻付体の外径よりも内径が小さい円筒状のケーシング内に、保持シール材を圧縮しつつ巻付体をスライドさせながら挿入する。
この製造方法では、巻付体を圧入しやすくするために、排ガス処理体に巻き付けられた保持シール材の嵩(体積)を適度に低くする必要がある。
また、ケーシングへの圧入時には保持シール材に大きなせん断力が発生するので、せん断力により引き裂かれることがないように、保持シール材にはある程度の強度(以下、単に、せん断強度ともいう)が要求される。
【0006】
特許文献1及び2には、無機繊維からなる従来の不織布状のマットが開示されている。
これらの従来の不織布状のマットは、焼成することにより無機繊維に転換されるアルミナ繊維前駆体を圧縮してシートを作製し、複数のバーブ(返し)が形成されたニードルをシートの厚さ方向に抜き差しすることにより複数の交絡部が形成されたニードリングシートを作製し、ニードリングシートを焼成することにより製造される。
製造された不織布状のマットは所定形状に切断され、保持シール材が作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−207393号公報
【特許文献2】特開2007−127112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2に記載の従来の不織布状のマットでは、せん断強度が充分に高いとはいえないと考えられる。
このことについて、以下に図面を用いて詳しく説明する。
【0009】
図10(a)は、従来のマットの一例を模式的に示す斜視図であり、図10(b)は、図10(a)に示す従来のマットのJ−J線断面図であり、図10(c)は、図10(a)に示す従来のマットのK−K線断面図である。
図11(a)は、図10(a)に示す従来のマットを、第一短側面側から第二短側面側に向かって透視することにより得られる側面透視図である。
図11(b)は、せん断力が負荷された場合における図11(a)に示した従来のマットのX’領域の部分拡大図である。
なお、図11(a)及び図11(b)に示す従来のマットでは、後述する交絡部310に沿って引いた仮想直線を破線lで示している。
【0010】
図10(a)、図10(b)及び図10(c)に示す従来のマット300は、無機繊維320が互いに絡み合って構成されており、比較的柔軟であると考えられる。
また、マット300の一の主面300a上のニードル貫通点311aから他の主面300b上のニードル貫通点311bにかけて交絡部310が複数形成されている。
図10(b)、図10(c)及び図11(a)に示すように、第一短側面側から第一短側面に対向して位置する第二短側面側に向かって透視した側面透視図では、交絡部310に沿って引いた仮想直線lは、マット300の厚さ方向に垂直な方向(マット300面の主面300a、300b)に対して一定の角度をなすように傾斜している。
【0011】
交絡部310では無機繊維320が緻密に絡み合っており、交絡部310が設けられていない場合に比べて、せん断強度がある程度は高いと考えられる。
そのため、比較的小さいせん断力がマット300に加えられた場合、マット300は大きく変形しにくいと考えられる。
【0012】
しかし、マット300に対して、比較的大きなせん断力が加えられた場合、図11(b)に示すように(図11(b)中、せん断力が加えられる方向を矢印C’で示す)、マット300は略矩形状から略平行四辺形状に変形してしまう傾向があると考えられる。
特に、上記平行四辺形の2つの鋭角を結ぶ対角線方向に沿って、内側から外側に向かってマット300を引っ張るように働く引張力(図11(b)中、引張力が加えられる方向を矢印D’で示す)が加えられることにより、マット300が大きく変形し、場合によっては破断することがあると考えられる。
その理由について、本発明者は、引張力が加わる方向と交絡部310(仮想直線l)が形成された方向とが揃っておらず、交絡部310が引張力を緩和しにくいためであると推測している。
【0013】
このように特許文献1及び2に記載の従来のマットでは、せん断強度が充分に高いとはいえないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者が上記課題を満たすべく鋭意検討した結果、マットの厚さ方向に垂直な方向に対して傾斜した第一交絡部と第二交絡部とを形成し、マットの側面透視図でみた場合に第一交絡部と第二交絡部とが所定の角度で交差する構成とすることにより、マットのせん断強度を大幅に向上させることができることを見出した。
本発明者が係る知見に基づいてさらに検討を続けた結果、上述した課題を解決することができる本発明のマットを完成させた。
【0015】
即ち、本発明のマットは、第一主面と、上記第一主面に対向して位置する第二主面と、第一側面と、上記第一側面に対向して位置する第二側面とを少なくとも有しており、無機繊維が互いに絡み合って構成されたマットであって、
上記マットには、上記第一主面上に形成されたニードル貫通点から上記第二主面上に形成されたニードル貫通点にかけて設けられた交絡部が複数形成されており、
上記交絡部は、他の部分に比べて互いに緻密に絡み合った無機繊維から構成されており、
上記マットの厚さ方向に垂直な方向に沿って仮想直線L1を引き、第一交絡部に沿って仮想直線L2を引き、第二交絡部に沿って仮想直線L3を引いた際、上記第一側面側から上記第二側面側に向かって上記マットを透視すると、
上記仮想直線L1と上記仮想直線L2とは、90°未満の角度αで交差しており、
上記仮想直線L1と上記仮想直線L3とは、90°を超える角度βで交差しており、
上記仮想直線L2と上記仮想直線L3とは、所定の角度γで交差していることを特徴とする。
本発明のマットの構成及び効果について、以下に図面を用いて詳しく説明する。
【0016】
図1(a)は、本発明のマットの一例を模式的に示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示す本発明のマットのA−A線断面図であり、図1(c)は、図1(a)に示す本発明のマットのB−B線断面図である。
【0017】
図1(a)に示す本発明のマット1の形状は、平面視略矩形状で所定の厚さを有する平板状である。
【0018】
図1(a)に示すように、本発明のマット1は、第一主面10aと第一主面10aに対向して位置する第二主面10bとを有している。
第一長側面11aと、第一長側面11aに対向して位置する第二長側面11bとを有している。
また、第一短側面12aと、第一短側面12aに対向して位置する第二短側面12bとを有している。
【0019】
本発明のマット1は、シリカ繊維、アルミナシリカ繊維、アルミナ繊維等の種々の組成の無機繊維13、14が互いに絡み合って構成されている。
【0020】
図1(b)に示すように、本発明のマット1の第一主面10a上には、複数の第一ニードル貫通点21aが形成されており、第二主面10b上には、複数の第二ニードル貫通点21bが形成されている。そして、第一ニードル貫通点21aから第二ニードル貫通点21bにかけて、マット1の厚さ方向Tに沿って連続して第一交絡部31が形成されている。
また、図1(c)に示すように、本発明のマット1の第一主面10a上には、複数の第三ニードル貫通点22aが形成されており、第二主面10b上には、複数の第四ニードル貫通点22bが形成されている。そして、第三ニードル貫通点22aから第四ニードル貫通点22bにかけて、マット1の厚さ方向Tに沿って連続して第二交絡部32が形成されている。
【0021】
第一交絡部31及び第二交絡部32以外の部分(以下、単に、非形成領域ともいう)33では、無機繊維13が比較的緩く絡み合っており、不織布状を呈している。
一方、第一交絡部31及び第二交絡部32では、非形成領域33を構成する無機繊維13に比べて無機繊維14が互いに緻密に絡み合っている。
互いに緻密に絡み合った無機繊維14により、マット1が厚み方向に沿って縫い付けられたような状態になっており、第一交絡部31及び第二交絡部32を中心として、マット1の嵩が適度に低くなっている。
【0022】
図1(b)及び図1(c)に示すように、本発明のマット1の第一交絡部31と第二交絡部32とは、第一主面10a及び第二主面10bに対して所定の角度をもって傾斜している。
また、第一交絡部31と第二交絡部32とは、互いに傾斜の方向が異なっている。
そのため、マット1のせん断強度が充分に高くなっている。
これについて、以下に図面を用いて詳しく説明する。
【0023】
図2(a)は、図1(a)に示す本発明のマットを、第一短側面側から第二短側面側に向かって透視することにより得られる側面透視図である。
図2(b)は、図2(a)に示した本発明のマットの側面透視図のX領域の部分拡大図である。
図2(c)は、本発明のマットにせん断力が負荷された場合におけるX領域を示す部分拡大図である。
【0024】
図2(a)に示す本発明のマットの側面透視図において、仮想直線L1は、マット1の厚さ方向Tに垂直な方向に沿って引いた仮想直線である。
仮想直線L2は、図1(b)に示す本発明のマットの第一交絡部31に沿って引いた仮想直線であり、仮想直線L3は、図1(c)に示す本発明のマットの第二交絡部32に沿って引いた仮想直線である。
図2(a)に示すように、本発明のマット1では、第一短側面側から第二短側面側に向かってマット1を透視すると、仮想直線L1と仮想直線L2とは90°未満の角度αで交差している。
また、仮想直線L1と仮想直線L3とは、90°を超える角度βで交差している。
そして、仮想直線L2と仮想直線L3とは、所定の角度γで交差している。
【0025】
本明細書において、「第一交絡部に沿って仮想直線L2を引く」とは、図2(a)に示す本発明のマットの側面透視図において、第一ニードル貫通点21aから第二ニードル貫通点21bまで仮想直線を引くことをいうものとする。即ち、仮想直線L2は、本発明のマットの第一ニードル貫通点21aと第二ニードル貫通点21bとを結ぶ仮想直線である。
また、「第二交絡部に沿って仮想直線L3を引く」とは、図2(a)に示す本発明のマットの側面透視図において、第三ニードル貫通点22aから第四ニードル貫通点22bまで仮想直線を引くことをいうものとする。即ち、仮想直線L3は、本発明のマットの第三ニードル貫通点22aと第四ニードル貫通点22bとを結ぶ仮想直線である。
なお、図2(a)、図2(b)及び図2(c)では、図1(a)のA−A線に沿って列状に形成された第一交絡部及びB−B線に沿って列状に形成された第二交絡部のみを示しており、列状に形成されたその他の第一交絡部及び第二交絡部は図示を省略している。
【0026】
また、本明細書において、仮想直線L1と仮想直線L2とが交差することにより形成される角度αを有する一の角と、仮想直線L1と仮想直線L3とが交差することにより形成される角度βを有する他の角とは、本発明のマットの側面透視図において同位角の関係にあるものとする(図2(a)、図2(b)参照)。
【0027】
図2(a)及び図2(b)に示すように、マット1に対してせん断力が加えられていない状態では、マット1は変形しておらず略矩形状を呈している。
【0028】
図2(c)に示すように、マット1に対して、第一主面10a及び第二主面10bに平行な方向に沿ってせん断力が加えられると(図2(c)中、せん断力が加えられる方向を矢印Cで示す)、無機繊維が互いに絡み合って構成された比較的柔軟なマット1は、略矩形状から略平行四辺形状に変形する傾向にある。
この過程では、上記平行四辺形の2つの鋭角を結ぶ対角線方向に沿って、内側から外側に向かってマット1を引っ張るように働く引張力(図2(c)中、引張力が加えられる方向を矢印Dで示す)がマット1に加えられる。それとは反対に、上記平行四辺形の2つの鈍角を結ぶ対角線方向に沿って、外側から内側に向かってマット1を圧縮するように働く圧縮力(図2(c)中、圧縮力が加えられる方向を矢印Eで示す)がマット1に加えられる。
【0029】
ところが、無機繊維が互いに緻密に絡み合ってなり、機械的強度の高い第一交絡部31に沿って引いた仮想直線L2が、仮想直線L1と所定の角度αで交差することにより傾斜している。同じく機械的強度の高い第二交絡部32に沿って引いた仮想直線L3が、仮想直線L1と所定の角度βで交差することにより傾斜している。そして、仮想直線L2と仮想直線L3とは、所定の角度γで交差している。
従って、第一交絡部31と第二交絡部32とは、互いに交差した筋交いのように機能することが可能であり、第一主面10a及び第二主面10bに平行な方向に沿ってせん断力が加えられた場合であっても、マット1の変形を最小限に抑制することができる。
そのため、マット1が破損しにくい。
このように、本発明のマット1は、せん断強度が充分に高いと考えられる。
【0030】
本発明のマットでは、上記角度γが、20°〜120°であることが望ましく、この場合、上記角度αが、30°〜80°であり、上記角度βが、100°〜150°であることがより望ましい。
上述したせん断強度が充分に高いという本発明の効果を好適に享受することができるからである。
【0031】
本発明のマットでは、上記角度γが、60°〜90°であることがさらに望ましく、この場合、上記角度αが、45°〜60°であり、上記角度βが、120°〜135°であることが特に望ましい。
上述したせん断強度が充分に高いという本発明の効果をより好適に享受することができるからである。
【0032】
本発明のマットでは、複数の第一交絡部が所定の間隔を置いて整列することにより第一列が形成されており、複数の第二交絡部が所定の間隔を置いて整列することにより第二列が形成されていることが望ましい。
この場合、本発明のマットの上記第一列と上記第二列とが、交互に形成されていることがより望ましい。
また、上記マットの長さ方向又は幅方向に平行な方向に沿って、上記第一列と上記第二列とが、所定の間隔を置いて交互に形成されていることがさらに望ましい。
これらのマットでは、第一交絡部のみ又は第二交絡部のみが集合しすぎている個所がなく、第一交絡部と第二交絡部とがマット全体にバランスよく配置されているので、せん断強度が充分に高いという本発明の効果をより好適に享受することができる。
特に、上記マットの長さ方向又は幅方向に平行な方向に沿って、上記第一列と上記第二列とが所定の間隔を置いて交互に形成されていると、マットのせん断強度をより向上させることができる。
【0033】
本発明のマットにおいては、上記無機繊維が、アルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、シリカ繊維、生体溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種の無機繊維であることが望ましい。
これらの無機繊維は耐熱性等の特性に優れているので、これらの無機繊維からなるマット及び該マットを使用した保持シール材は耐熱性や保持力等に優れる。
また、マットを構成する無機繊維が生体溶解性繊維である場合には、マットの取り扱い時に生体溶解性繊維が飛散して体内に取り込まれたとしても溶解し、体外に排出されることになるため、人体に対する安全性に優れる。
【0034】
本発明のマットは、有機バインダをさらに含むことが望ましい。
有機バインダが含まれたマットが高温に曝されると、有機バインダが分解して無機繊維の接着が解除されて膨張する。
従って、有機バインダが含まれたマットを使用した保持シール材を排ガス浄化装置に用いると、排ガス浄化装置の使用時には、高温の排ガスにより有機バインダが分解し、無機繊維の接着が解除され、保持シール材が膨張するので、高い保持力を発揮することができる。
【0035】
本発明のマットは、膨張材をさらに含むことが望ましい。
膨張材が含まれたマットが高温に曝されると膨張する。
従って、膨張材が含まれたマットを使用した保持シール材では、排ガス浄化装置の使用時に高温の排ガスにより膨張材が膨張するので、高い保持力を発揮することができる。
【0036】
本発明の保持シール材は、ケーシング内で排ガス処理体を保持するために用いられる保持シール材であって、
本発明のいずれかのマットを使用していることを特徴とする。
【0037】
本発明のマットの製造方法は、第一主面と、上記第一主面に対向して位置する第二主面と、第一側面と、上記第一側面に対向して位置する第二側面とを少なくとも有しており、焼成することにより無機繊維に転換される無機繊維前駆体が互いに絡み合って構成されたシートを準備し、上記シートにニードルを貫通させることによりニードリングシートを作製するニードリング工程と、
上記ニードリングシートを焼成する焼成工程とを含むマットの製造方法であって、
上記ニードリング工程では、
上記シートの厚さ方向に垂直な方向に沿って仮想直線L1を引き、上記第一側面側から上記第二側面側に向かって上記シートを透視した際に、上記仮想直線L1と90°未満の角度αで交差するように第一ニードルを上記シートに貫通させることにより第一交絡部前駆体を形成し、
上記仮想直線L1と90°を超える角度βで交差し、かつ、上記第一交絡部前駆体に沿って引いた仮想直線L2と所定の角度γで交差するように第二ニードルを上記シートに貫通させることにより第二交絡部前駆体を形成することを特徴とする。
本発明のマットの製造方法では、上述したせん断強度が充分に高いという本発明のマットを好適に製造することができる。
【0038】
本発明の排ガス浄化装置は、排ガス処理体と、
上記排ガス処理体を収容するケーシングと、
上記排ガス処理体と上記ケーシングとの間に配設され、上記排ガス処理体を保持する保持シール材とからなる排ガス浄化装置であって、
上記保持シール材は、本発明のいずれかのマット又は本発明のマットの製造方法で製造されたマットを使用していることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1(a)は、本発明のマットの一例を模式的に示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示す本発明のマットのA−A線断面図であり、図1(c)は、図1(a)に示す本発明のマットのB−B線断面図である。
【図2】図2(a)は、図1(a)に示す本発明のマットを、第一短側面側から第二短側面側に向かって透視することにより得られる側面透視図である。図2(b)は、図2(a)に示した本発明のマットの側面透視図のX領域の部分拡大図である。図2(c)は、本発明のマットにせん断力が負荷された場合におけるX領域を示す部分拡大図である。
【図3】本発明の第一実施形態のマットを使用した保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
【図4】図4(a)は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置を模式的に示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)に示す本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置のF−F線断面図である。
【図5】図5(a)は、図4(a)に示した本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体を模式的に示す斜視図であり、図5(b)は、図4(a)に示した本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置を構成するケーシングを模式的に示す斜視図である。
【図6】本発明のマットの製造方法で使用するニードリング装置とシートとを模式的に示す一部切り欠き斜視図である。
【図7】図7(a)は、本発明のマットの製造方法に係る第一回目のニードリング処理時のニードリング装置及びシートのH−H線断面図であり、図7(b)は、本発明のマットの製造方法に係る第二回目のニードリング処理時のニードリング装置及びシートのI−I線断面図である。
【図8】本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置を構成する保持シール材、排ガス処理体及びケーシングを用いて排ガス浄化装置を製造する様子を模式的に説明する斜視図である。
【図9】せん断強度試験機を模式的に示す側面図である。
【図10】図10(a)は、従来のマットの一例を模式的に示す斜視図であり、図10(b)は、図10(a)に示す従来のマットのJ−J線断面図であり、図10(c)は、図10(a)に示す従来のマットのK−K線断面図である。
【図11】図11(a)は、図10(a)に示す従来のマットを、第一短側面側から第二短側面側に向かって透視することにより得られる側面透視図である。図11(b)は、せん断力が負荷された場合における図11(a)に示した従来のマットのX’領域の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(第一実施形態)
以下、本発明のマット、保持シール材、マットの製造方法及び排ガス浄化装置の一実施形態である第一実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態のマットは、上述した本発明のマットと同様の構成を有しているため、以下の説明では、図1(a)及び図1(b)を参照しながら説明する。
また、本発明のマットに係る説明と重複する事項については、説明を省略する。
【0041】
図1(a)、図1(b)及び図1(c)に示す本実施形態のマット1の形状は、所定の長さ(図1(a)中、両矢印Lで示す)、幅(図1(a)中、両矢印Wで示す)及び厚さ(図1(a)中、両矢印Tで示す)を有する平面視略矩形状である。
【0042】
マット1の大きさは、特に限定されないが、長さ100〜100000mm×幅100〜1500mm×厚さ5〜30mmの範囲であることが望ましい。
【0043】
マット1は、無機繊維13、14が互いに絡み合って構成されている。
上記無機繊維は、アルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、シリカ繊維、生体溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種の無機繊維から構成されていることが望ましい。
【0044】
アルミナ繊維には、アルミナ以外に、例えば、CaO、MgO、ZrO等の添加剤が含まれていてもよい。
アルミナシリカ繊維の組成比としては、重量比で、Al:SiO=60:40〜80:20であることが望ましく、Al:SiO=70:30〜74:26であることがより望ましい。
上記組成比において、アルミナ組成比の好ましい上限値(Al:SiO=80:20)よりも多くアルミナが含まれていると、アルミナシリカの結晶化が進みやすく無機繊維の柔軟性が失われやすい。また、上記組成比において、シリカ組成比の好ましい下限値(Al:SiO=80:20)よりもシリカが少ないと、無機繊維の剛性が不足し、充分なせん断強度が得られにくい。
なお、シリカ繊維には、シリカ以外に、例えば、CaO、MgO、ZrO等の添加剤が含まれていてもよい。
【0045】
上記生体溶解性繊維は、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及び、ホウ素化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物からなる無機繊維である。
生体溶解性繊維は、人体に取り込まれても溶解しやすいので、生体溶解性繊維が互いに絡み合って構成されたマットは人体に対する安全性に優れている。
【0046】
具体的な生体溶解性繊維の組成は、シリカ60〜85重量%、並びに、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物15〜40重量%を含む組成が挙げられる。
上記シリカとは、SiO又はSiOである。
また、上記アルカリ金属化合物としては、例えば、Na、Kの酸化物等が挙げられ、上記アルカリ土類金属化合物としては、Mg、Ca、Baの酸化物等が挙げられる。上記ホウ素化合物としては、Bの酸化物等が挙げられる。
【0047】
上記シリカの含有量が、60重量%未満では、ガラス溶融法では作製しにくく、繊維化しにくい。また、構造的にもろく、生理食塩水に溶け易くなりすぎる傾向にある。
一方、85重量%を超えると、生理食塩水に溶けにくくなりすぎる傾向にある。
なお、シリカの含有量は、SiOに換算して算出したものである。
【0048】
また、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量が、15重量%未満では、生理食塩水に溶けにくくなりすぎる傾向にある。
一方、40重量%を超えると、ガラス溶融法では作製しにくく、繊維化しにくい。また、構造的にもろく、生理食塩水に溶け易くなりすぎる傾向にある。
【0049】
上記無機繊維の生理食塩水に対する溶解度は、30ppm以上であることが望ましい。上記溶解度が30ppm未満では、無機繊維が体内に取り込まれた場合に、体外へ排出されにくく、健康上好ましくないからである。
なお、溶解度は、下記方法で測定することができる。
【0050】
(I)まず、蒸留水中に2.5gの無機繊維を食品用ブレンダーを用いて懸濁させた後、静置して無機繊維を沈殿させる。さらに、デカンテーションにより上澄み液を除去した後、110℃で乾燥することにより、残りの液体を除去する。これにより、無機繊維試料を調製する。
【0051】
(II)塩化ナトリウム6.780g、塩化アンモニウム0.540g、炭酸水素ナトリウム2.270g、リン酸水素二ナトリウム0.170g、クエン酸ナトリウム二水和物0.060g、グリシン0.450g、及び、硫酸(比重1.84)0.050gを蒸留水で1リットル(l)に希釈し、生理食塩水溶液を調製する。
【0052】
(III)(I)で調製した無機繊維試料0.50gと(II)で調製した生理食塩水溶液25cmとを遠心チューブに入れ、良く振盪した後、37℃、20サイクル/分の振盪インキュベータで5時間処理する。
その後、遠心チューブを取り出し、4500rpmで、5分間遠心分離し、その上澄みを注射器で取り出す。
【0053】
(IV)次に、上記上澄み液をフィルタ(0.45μmセルロースニトレートメンブレンフィルタ)で濾過し、得られた試料について、原子吸光分析により、シリカ、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムの生理食塩水溶液に対する溶解度を測定する。
【0054】
無機繊維13、14の平均繊維長は、3.5mm以上、100mm以下であることが望ましい。マットのせん断強度を充分に高くすることができるからである。
無機繊維の平均繊維長が3.5mm未満であると、無機繊維の繊維長が短すぎて、マットのせん断強度が低くなる。また、無機繊維の平均繊維長が100mmを超えると、無機繊維の繊維長が長すぎて、マットの作製時における無機繊維の取り扱い性が低下する。
【0055】
無機繊維13、14の平均繊維径は、3〜10μmであることが望ましい。
無機繊維13、14の平均繊維径が3〜10μmであると、無機繊維13、14の強度及び柔軟性が充分に高く、マット1のせん断強度を向上させることができる。
【0056】
本実施形態のマット1の第一主面10a(第二主面10b)上には、4個の第一ニードル貫通点21a(第二ニードル貫通点21b)が所定の間隔を置いて幅方向Wに沿って整列することにより、第一列41が形成されている。
また、本実施形態のマット1の第一主面10a(第二主面10b)上では、4個の第三ニードル貫通点22a(第四ニードル貫通点22b)が所定の間隔を置いて幅方向Wに沿って整列することにより、第二列42が形成されている。
第一列41と第二列42とは、所定の間隔を置いて長さ方向Lに沿って交互に形成されている。
【0057】
第一交絡部31と第二交絡部32の詳細な構成は、図1(b)、図1(c)及び図2(a)に示した本発明のマットと略同様である。
第一交絡部31及び第二交絡部32は、非形成領域33に比べて、互いに緻密に絡み合った無機繊維14から構成されている。
【0058】
本実施形態のマット1は、図2(a)に示すように第一短側面12a側から第二短側面12b側に向かってマットを透視すると、仮想直線L1と仮想直線L2とが30°〜80°の角度αで交差しており、仮想直線L1と仮想直線L3とが100°〜150°の角度βで交差していることが望ましい。また、仮想直線L2と仮想直線L3とが、20°〜120°の角度γで交差していることが望ましい。
上記角度αは、45°〜60°であることがより望ましく、上記角度βは、120°〜135°であることがより望ましく、上記角度γは、60°〜90°であることがより望ましい。
【0059】
本実施形態のマット1の第一交絡部31及び第二交絡部32の合計の形成密度(以下の説明では、「交絡部」には、「第一交絡部」と「第二交絡部」とが含まれることとする)は、0.5〜30個/cmであることが望ましい。マット1のせん断強度がより高くなり、嵩が適度に低くなるからである。
これに対して、交絡部の形成密度が0.5個/cm未満であると、単位面積あたりに形成された交絡部の数が少なすぎて、せん断強度が低くなりやすく、嵩が低くなりにくい。
また、交絡部の形成密度が30個/cmを超えると、単位面積あたりに形成された交絡部の数が多すぎるため、マットの嵩が低くなりすぎて反発力が低下しやすくなる。また、ニードリング処理で細かく裁断されてしまった無機繊維が多く含まれることになり、マットのせん断強度が低くなりやすい。
なお、交絡部の形成密度とは、第一主面及び第二主面に略平行な平面に沿ってマットを厚み方向の中間地点で略二等分に切断し、得られた主断面を目視又は拡大鏡で観察した場合に確認される、主断面の1cmあたりに形成された交絡部の個数のことをいう。
【0060】
本実施形態のマット1において、一の第一ニードル貫通点21a、第二ニードル貫通点21b、第三ニードル貫通点22a又は第四ニードル貫通点22b(以下の説明では、「第一ニードル貫通点」、「第二ニードル貫通点」、「第三ニードル貫通点」、「第四ニードル貫通点」を区別せず、単に、「ニードル貫通点」ともいうこととする)と、それに最近接する他のニードル貫通点との最短距離(図1(a)中、両矢印Yで示す距離)は、1mm〜10mmであることが望ましい。交絡部が密に集まりすぎず、マット1のせん断強度が充分に高くなりやすく、嵩が適度に低くなりやすいからである。
これに対して、一のニードル貫通点とそれに最近接する他のニードル貫通点との最短距離が10mmを超えると、単位面積あたりに形成された交絡部の数が少なすぎて、せん断強度が低くなりやすく、嵩が低くなりにくい。
また、上記最短距離が1mm未満であると、単位面積あたりに形成された交絡部の数が多すぎるため、マットの嵩が低くなりすぎて反発力が低下しやすくなる。また、ニードリング処理で細かく裁断されてしまった無機繊維が多く含まれることになり、マットのせん断強度が低くなりやすい。
【0061】
本実施形態のマット1のニードル貫通点の直径は、0.1mm〜2mmであることが望ましい。
ニードル貫通点の直径が上記範囲にあると、ニードル貫通点の直径が大きすぎないため、マット1のせん断強度が充分に高くなりやすい。
これに対して、ニードル貫通点の直径が2mmを超えると、ニードル貫通点及び交絡部を構成する無機繊維が粗な状態となり、マットのせん断強度が低くなりやすい。
また、ニードル貫通点の直径が0.1mm未満であると、交絡部で無機繊維が充分に絡み合いにくくなり、マットのせん断強度が低くなりやすく、嵩が低くなりにくい。
【0062】
本実施形態のマット1の目付量(単位面積あたりの重量)は、500〜3000g/mであることが望ましい。マットの目付量が500〜3000g/mであると、第一交絡部及び第二交絡部によるマットの変形防止効果を好適に享受することができるし、マットの嵩が適度に低くなるからである。
これに対して、マットの目付量が500g/m未満であると、第一交絡部及び第二交絡部によるマットの変形防止効果が発揮されにくく、マットの目付量が3000g/mを超えると、マットの嵩が低くなりにくい。
マット1の目付量は、1000〜2800g/mであることがより望ましい。
【0063】
本実施形態のマット1の密度は、0.08〜0.20g/cmであることが望ましい。
マットの密度が0.08〜0.20g/cmであると、無機繊維同士がよく絡み合うので無機繊維の剥離が生じにくいし、マットが適度な柔軟性を有するからである。
これに対して、マットの密度が0.08g/cm未満であると、無機繊維の絡み合いが弱く、無機繊維が剥離しやすい。また、マットの密度が0.20g/cmを超えると、マットが硬くなり、取り扱い性が低くなる。
マット1の密度は、0.10〜0.15g/cmであることがより望ましい。
【0064】
本実施形態のマット1は、有機バインダを含んでいてもよい。
有機バインダが含まれたマット(以下、単に、バインダマットともいう)を使用した保持シール材を排ガス浄化装置に用いると、排ガス浄化装置の使用時には、高温の排ガスにより有機バインダが分解し、無機繊維の接着が解除され、保持シール材が膨張するので、高い保持力を発揮することができる。
【0065】
なお、有機バインダは、例えば、アクリル系樹脂、アクリルゴム等のゴム、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等であってもよい。これらの中では、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムが特に望ましい。
【0066】
バインダマット全体に含まれる有機バインダの合計量は、バインダマット全体の重量の0.5〜20重量%であることが望ましい。バインダマットを構成する無機繊維同士をより強固に接着することができるので、バインダマットの強度を向上させることができるからである。また、バインダマットの嵩を適度に低くしやすくなるからである。
一方、バインダマット全体に含まれる有機バインダの合計量が、バインダマット全体の重量の0.5重量%未満であると、有機バインダの量が少なすぎて、無機繊維が飛散しやすくなり、バインダマットの強度が低下しやすくなる。
また、バインダマット全体に含まれる有機バインダの合計量が、バインダマット全体の重量の20重量%を超えると、バインダマットを使用した保持シール材を排ガス浄化装置に用いた場合に、排出される排ガス中の有機成分の量が増加することになるので、環境に負荷がかかりやすくなる。
【0067】
次に、本実施形態のマットを使用した保持シール材及び排ガス浄化装置の構成について、図面を用いて説明する。
【0068】
図3は、本発明の第一実施形態のマットを使用した保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
【0069】
図3に示す本発明の保持シール材200は、上述した本実施形態のマット1を所定形状に切断することにより製造される。
【0070】
図3に示す本発明の保持シール材200の形状は、所定の長さ(図3中、矢印L’で示す)、幅(図3中、矢印W’で示す)及び厚さ(図3中、矢印T’で示す)を有する平面視略矩形状である。なお、図3に示す本発明の保持シール材200の長さ方向、幅方向及び厚さ方向は、図1に示す本実施形態のマット1の長さ方向、幅方向及び厚さ方向にそれぞれ対応している。
また、保持シール材200の幅方向に平行な端面233a、233bのうち、一方の端面233aには、凸部234aが形成されており、他方の端面233bには、保持シール材200を丸めて端面233aと端面233bとを当接させた際に凸部234aと嵌合する形状の凹部234bが形成されている。
【0071】
本実施形態の保持シール材200全体に含まれる有機バインダの合計量は、保持シール材200全体の重量の0.5〜20重量%であることが望ましい。
本実施形態の保持シール材200を構成する無機繊維同士をより強固に接着することができるので、本実施形態の保持シール材200の強度を向上させることができるからである。また、本実施形態の保持シール材200の嵩を適度に低くしやすくなるからである。
一方、保持シール材全体に含まれる有機バインダの合計量が、保持シール材全体の重量の0.5重量%未満であると、有機バインダの量が少なすぎて、無機繊維が飛散しやすくなり、保持シール材の強度が低下しやすくなる。
また、保持シール材全体に含まれる有機バインダの合計量が、保持シール材全体の重量の20重量%を超えると、保持シール材を排ガス浄化装置に用いた場合に、排出される排ガス中の有機成分の量が増加することになるので、環境に負荷がかかりやすくなる。
【0072】
本実施形態の保持シール材200の大きさは、長さ200〜1000mm×幅50〜500mm×厚さ5〜30mmであることが望ましい。
【0073】
本実施形態の保持シール材200において、第一主面210a(第二主面210b)上では、第一ニードル貫通点221a(第二ニードル貫通点221b)が所定の間隔を置いて幅方向W’に沿って整列することにより第一列241が形成されている。
また、本実施形態の保持シール材200では、第三ニードル貫通点222a(第四ニードル貫通点222b)が所定の間隔を置いて幅方向W’に沿って整列することにより第二列242が形成されている。
本実施形態の保持シール材200において、第一列241と第二列242とは、所定の間隔を置いて長さ方向L’に沿って交互に形成されている。
本実施形態の保持シール材200では、第一ニードル貫通点221aから第二ニードル貫通点221bにかけて、保持シール材200の厚さ方向T’に沿って連続して第一交絡部が形成されている。
また、本実施形態の保持シール材200では、第三ニードル貫通点222aから第四ニードル貫通点222bにかけて、保持シール材200の厚さ方向T’に沿って連続して第二交絡部が形成されている。
本実施形態の保持シール材200の第一交絡部と第二交絡部の詳細な構成については、本発明のマットの説明で既に述べたとおりであるので、説明を省略する。
【0074】
図3に示すように、第一列241と第二列242とは、所定の間隔を置いて長さ方向L’に沿って交互に形成されていることが望ましい。
後述する図8に示すように、圧入工程を経て排ガス浄化装置を製造する場合には、一方の短側面側から他方の短側面側に向かって保持シール材を透視した側面透視図で、第一主面及び第二主面に平行な方向に沿ってせん断力が加えられる(図2(c)参照)。即ち、保持シール材200の幅方向W’に平行な方向に沿ってせん断力が加えられる。
第一列241と第二列242とが所定の間隔を置いて長さ方向L’に沿って交互に形成されていると、一方の短側面側から他方の短側面側に向かって保持シール材を透視した場合、図2(a)に示したように、仮想直線L1と仮想直線L2とが所定の角度αで交差し、仮想直線L1と仮想直線L3とが所定の角度βで交差し、仮想直線L1と仮想直線L2とが所定の角度γで交差することになる。
そのため、第一交絡部と第二交絡部とが筋交いのように機能することが可能となり、保持シール材200の幅方向W’に沿ってせん断力が加えられた場合でも、保持シール材200の変形を最小限に抑制し、破損を防止することができる。
【0075】
本実施形態の保持シール材200は、例えば、排ガス浄化装置に好適に使用することができる。
本実施形態の保持シール材200を用いた排ガス浄化装置の構成について、図面を用いて説明する。
【0076】
図4(a)は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置を模式的に示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)に示す本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置のF−F線断面図である。
図5(a)は、図4(a)に示した本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体を模式的に示す斜視図であり、図5(b)は、図4(a)に示した本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置を構成するケーシングを模式的に示す斜視図である。
【0077】
図4(a)及び図4(b)に示すように、本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置60は、多数のセル41がセル壁42を隔てて長手方向に並設された柱状の排ガス処理体40と、排ガス処理体40を収容するケーシング50と、排ガス処理体40及びケーシング50の間に配設され、排ガス処理体40を保持する本実施形態の保持シール材200とから構成されている。
なお、本実施形態の保持シール材200の構成については、既に述べているので省略する。
また、ケーシング50の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と排ガス浄化装置を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続されていてもよい。
【0078】
図5(a)に示すように、排ガス処理体40は、主に多孔質セラミックからなり、その形状は略円柱状である。また、排ガス処理体40の外周には、排ガス処理体40の外周部を補強したり、形状を整えたり、排ガス処理体40の断熱性を向上させたりする目的で、コート層44が設けられている。
また、排ガス処理体40の各々のセルにおけるいずれか一方の端部は、封止材43によって目封じされている。
なお、排ガス処理体40としては、例えば、コージェライト又はチタン酸アルミニウム等からなり、図5(a)に示したように一体的に形成されたものであってもよい。また、炭化ケイ素又はケイ素含有炭化ケイ素等からなり、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体を主にセラミックを含む接着材層を介して複数個結束してなる排ガス処理体であってもよい。
【0079】
ケーシング50について説明する。図5(b)に示すケーシング50は、主にステンレス等の金属からなり、その形状は、略円筒状である。また、その内径は、排ガス処理体40に保持シール材200が巻き付けられた状態の巻付体の直径より若干短くなっており、その長さは、排ガス処理体40の長手方向における長さと略同一となっている。
【0080】
なお、ケーシングの材質は、耐熱性を有する金属であれば、上述したステンレスに限られず、アルミニウム、鉄等の金属類であってもよい。
また、上記ケーシングとしては、略円筒状のケーシングを長手方向に沿って複数のケーシング片に分割したケーシング(即ちクラムシェル)、長手方向に沿って延びるスリット(開口部)を1箇所にのみ有する断面C字状又はU字状の円筒状のケーシング、排ガス処理体に巻き付けられた保持シール材の外周に巻き締められることにより円筒状のケーシングとなる金属板等であってもよい。
【0081】
上述した構成を有する本実施形態の排ガス浄化装置60で排ガスが浄化される理由について、図4(b)を用いて以下に説明する。
図4(b)に示すに、内燃機関から排出され、排ガス浄化装置60に流入した排ガス(図4(b)中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体40の排ガス流入側端面40aに開口した一のセル41に流入し、セル41を隔てるセル壁42を通過する。この際、排ガス中のパティキュレートマター(以下、単にPMともいう)がセル壁42で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス流出側端面40bに開口した他のセル41から流出し、外部に排出される。
【0082】
次に、本実施形態のマットを製造する方法と、製造したマットを使用して保持シール材を作製する方法と、作製した保持シール材を使用して排ガス浄化装置を製造する方法について説明する。
【0083】
本実施形態のマットは、以下の工程(1)〜(4)を経て製造する。
ここでは、アルミナシリカ繊維を含んでなるマットを製造する場合について説明するが、本実施形態のマットを構成する無機繊維については、アルミナシリカ繊維に限られるものではなく、上述したアルミナ繊維等の種々の組成の無機繊維であってもよい。
【0084】
(1)紡糸工程
Al含有量、及び、AlとClとの原子比が所定の値となるように調製された塩基性塩化アルミニウム水溶液に、焼成後の無機繊維における組成比が、Al:SiO=60:40〜80:20(重量比)となるようにシリカゾルを添加する。さらに、成形性向上を目的として有機重合体を適量添加して混合液を調製する。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して所定の平均繊維径を有する無機繊維前駆体を作製する。
ブローイング法とは、エアーノズルから吹き出す高速のガス流(空気流)の中に、紡糸用混合物供給用ノズルから押し出される紡糸用混合物を供給することによって無機繊維前駆体の紡糸を行う方法のことをいう。
【0085】
(2)積層工程
次に、無機繊維前駆体をクロスレイヤー法により積層して所定の大きさのシートを作製する。
クロスレイヤー法では、一定方向に搬送駆動するベルトコンベアと、ベルトコンベアの搬送駆動方向に対して直交する方向にベルトコンベア上を往復移動可能であって、薄層シート状に集綿された無機繊維前駆体(前駆体ウェブ)を供給するアームとから構成された積層装置を使用する。
この積層装置を使用してクロスレイヤー法によりシートを作製する場合には、まず、ベルトコンベアを搬送駆動させる。この状態で、ベルトコンベアの搬送駆動方向に対して直交する方向にアームを往復移動させながら、前駆体ウェブをアームからベルトコンベア上に連続して供給する。そうすると、前駆体ウェブは、ベルトコンベア上で複数回折り畳まれて積層されながら、ベルトコンベアにより一定の方向に連続して搬送される。積層された前駆体ウェブの長さが取り扱いに適した適当な長さになったところで切断し、所定の大きさのシートを作製する。
クロスレイヤー法により作製されたシートでは、大部分の無機繊維前駆体が第一主面及び第二主面に略平行な方向に沿って配列し、互いに緩く絡み合うことになる。
【0086】
(3)ニードリング工程
ニードリング工程では、下記する図6に示すニードリング装置を使用してニードリング処理を行う。
【0087】
図6は、本発明のマットの製造方法で使用するニードリング装置とシートとを模式的に示す一部切り欠き斜視図である。
図7(a)は、本発明のマットの製造方法に係る第一回目のニードリング処理時のニードリング装置及びシートのH−H線断面図であり、図7(b)は、本発明のマットの製造方法に係る第二回目のニードリング処理時のニードリング装置及びシートのI−I線断面図である。
【0088】
図6に示すニードリング装置100は、シート1xを支持可能な載置面111を有する支持板110aと、載置面111に対向して設けられ、支持板110aとともにシート1xを挟み込むことができる抑え板110bと、抑え板110bの上方に設けられたニードル板120と、ニードル板120に取り付けられており、突き刺し方向(シート1xの厚さ方向、図6、図7(a)及び図7(b)中、両矢印T’’で示す方向)に往復移動可能なピストン112とから構成されている。
【0089】
ニードル板120の抑え板110bに対向する対向面122には、複数のニードル121が所定の間隔で略垂直方向に立設して取り付けられており、剣山様の形状を呈している。
ニードル121は、細く先の尖ったニードルであり、該ニードル表面にバーブ(返し)が形成されている。
【0090】
4個のニードル121は、所定の間隔を置いて幅方向W’’に沿って整列しており、第一のニードル列141が形成されている。
また、4個のニードル121が所定の間隔を置いて幅方向W’’に沿って整列してなる第二のニードル列142が、第一のニードル列141に隣接して形成されている。
図示は省略するが、各々のニードル列は、所定の間隔を置いて長さ方向L’’(図6中、奥行き方向)に沿って連続して形成されている。
【0091】
図6及び図7(a)に示すように、支持板110aには、ニードル121が貫通可能な複数の貫通孔113aが設けられており、抑え板110bには、ニードル121が貫通可能な複数の貫通孔113bが設けられている。
【0092】
また、図6及び図7(b)に示すように、抑え板110bには、一の貫通孔113bと他の貫通孔113bとの略中間地点に、ニードル121が貫通可能なさらに別の貫通孔113b’が形成されている。
同様に、支持板110aには、一の貫通孔113aと他の貫通孔113aとの略中間地点に、ニードル121が貫通可能なさらに別の貫通孔113a’が形成されている。
【0093】
支持板110a及び抑え板110bは、所定の角度傾斜させることができるように構成されている。
【0094】
シート1xは、第一主面10x、第一主面10xに対向して位置する第二主面10y、第一長側面11x、第一長側面11xに対向して位置する第二長側面11y、第一短側面12x、及び、第一短側面12xに対向して位置する第二短側面(図示せず)を有しており、焼成することにより無機繊維に転換される無機繊維前駆体114が互いに絡み合って構成されたシートである。
【0095】
係るニードリング装置100を使用してニードリング処理を行う場合には、まず、図6に示すように、支持板110aの載置面111にシート1xを設置する。
次に、抑え板110bをシート1xの上面に取り付ける。
そして、支持板110aと抑え板110bとで挟まれた状態のシート1xを、支持板110aと抑え板110bごと所定の角度をもって傾斜させる。
具体的には、図7(a)に示すように、ニードル121の長さ方向に沿って直線L1’を引いた場合に、直線L1’と抑え板110bの上面とのなす傾斜角度α’が、90°未満の角度となるように、支持板110a、抑え板110b及びシート1xを傾斜させる。
その後、ニードル121が抑え板110bの貫通孔113bに打ち込まれるように、ニードル板120を下降させる。
すると、ニードル121が、抑え板110bの貫通孔113b、シート1x及び支持板110aの貫通孔113aを貫通する。
貫通したニードル121をシート1xから引き抜くことにより、第一回目のニードリング処理が完了する。
第一回目のニードリング処理では、シート1xの厚さ方向に垂直な方向に沿って仮想直線L1を引き、第一短側面12x側から第二短側面側に向かってシート1xを透視すると、仮想直線L1と90°未満の角度αで交差するようにニードル121がシート1xを貫通することになる。
これにより、焼成後に上述した第一交絡部に転換される第一交絡部前駆体が形成される。
【0096】
次に、第二回目のニードリング処理を行う。
支持板110aと抑え板110bで挟まれた状態のシート1xを、第一回目のニードリング処理で傾斜させた方向とは反対の方向に、支持板110aと抑え板110bごと所定の角度をもって傾斜させる。
具体的には、図7(b)に示すように、ニードル121の長さ方向に沿って直線L2’を引いた場合に、直線L2’と抑え板110bの上面とのなす傾斜角度α’が、90°を超える角度となるように、支持板110aと抑え板110bとで挟まれた状態のシート1xを傾斜させる。
そして、ニードル121が抑え板110bの貫通孔113b’に打ち込まれるように、支持板110a、抑え板110b及びシート1xの位置を移動させる。
その後、ニードル板120を下降させる。
すると、ニードル121が、抑え板110bの貫通孔113b’、シート1x及び支持板110aの貫通孔113a’を貫通する。
貫通したニードル121をシート1xから引き抜くことにより、第二回目のニードリング処理が完了する。
係る第二回目のニードリング処理では、仮想直線L1と90°を超える角度βで交差し、かつ、第一交絡部前駆体に沿って引いた仮想直線L2と所定の角度γで交差するようにニードル121がシート1xを貫通することになる。これにより、焼成後には第二交絡部に転換される第二交絡部前駆体が形成される。
このような第一回目のニードリング処理と第二回目のニードリング処理とを行うことにより、ニードリングシートを作製することができる。
なお、第一回目のニードリング処理又は第二回目のニードリング処理での傾斜角度α’を適宜変更することにより、後の工程を経て製造されるマットにおける角度α、β及びγを所望の値に変更することができる。
【0097】
ニードリング工程では、後の焼成工程を経て作製されるマットに形成された交絡部の形成密度が0.5〜30個/cmとなり、一のニードル貫通点とそれに最近接する他のニードル貫通点との最短距離が1〜10mmとなり、ニードル貫通点の直径が0.1〜2mmとなるように、ニードル板の対向面の単位面積あたりに所定の数のニードル(所定の直径を有するニードル)が、所定の間隔で取り付けられたニードル板を使用する。
なお、交絡部の形成密度を変更するには、ニードリング処理を行う回数を適宜変えてもよい。
【0098】
(4)焼成工程
続いて、得られたニードリングシートを、最高温度約1000〜約1600℃で焼成することにより無機繊維前駆体を無機繊維に転換し、本実施形態のマットを製造する。
【0099】
工程(4)を経て製造したマットを使用して本実施形態の保持シール材を作製する場合には、製造したマットを下記工程(5)に供することにより行ってもよい。
【0100】
(5)成形切断工程
製造したマットを切断して所定の大きさを有する保持シール材を作製する。
この際、保持シール材の端面のうち、一方の端面の一部に凸部が形成され、他方の端面の一部に凸部と嵌合する形状の凹部が形成されるようにして切断する。
具体的には、ピストンの先端に取り付けられており、上下方向に往復運動可能な打ち抜き板と、打ち抜き板と対向し、マットを載置可能な載置板とを備える打ち抜き装置を使用することにより保持シール材を作製してもよい。
【0101】
打ち抜き板には、製造する保持シール材の外形に対応する形状の打ち抜き刃と、伸縮自在なゴム等からなる弾性部材とが固定されている。また、載置板には、打ち抜き板が載置板に接近した場合に、打ち抜き刃が載置板と接触しないよう、打ち抜き刃に対応する位置に貫通孔が設けられている。
【0102】
このような打ち抜き装置を用いてマットを打ち抜く場合には、マットの第一主面が打ち抜き板側に、第二主面が載置板側に位置するように、載置板上にマットを載置し、打ち抜き板を上下方向に運動させる。
すると、弾性部材がマットに押し付けられてマットの厚さ方向に収縮し、これと同時に、打ち抜き刃がマットの第一主面側からマットの内部に侵入し、打ち抜き刃がマットを貫通する。
これにより、図3に示したような所定形状にマットが打ち抜かれ、保持シール材が作製される。
【0103】
工程(5)を経て作製した保持シール材を使用して本実施形態の排ガス浄化装置を製造する場合には、作製した保持シール材を下記工程(6)に供することにより行ってもよい。
以下に排ガス浄化装置を製造する工程(6)について、図面を用いて説明する。
図8は、本発明の第一実施形態の排ガス浄化装置を構成する保持シール材、排ガス処理体及びケーシングを用いて排ガス浄化装置を製造する様子を模式的に説明する斜視図である。
【0104】
(6)圧入工程
円柱形状の排ガス処理体(ハニカムフィルタ)40の外周に上記工程(5)で作製した保持シール材200を凸部234aと凹部234bとが嵌合するようにして巻き付ける。そして、図8に示したように、保持シール材200を巻き付けた排ガス処理体40を所定の大きさを有する円筒状であって、主に金属等からなるケーシング50に圧入する。
なお、圧入に際しては、ケーシングの端部の内径よりも一方の端部の内径が若干小さく、保持シール材を含めた排ガス処理体の外径よりも他方の端部の内径が充分に大きいテーパー状の円筒体からなる圧入治具を使用してもよい。
以上の工程を経て、図4(a)及び図4(b)に示す本実施形態の排ガス浄化装置60を作製する。
【0105】
以下、本発明の第一実施形態のマット、保持シール材、マットの製造方法及び排ガス浄化装置の効果を列挙する。
【0106】
(1)本実施形態のマットは、第一ニードル貫通点から第二ニードル貫通点にかけてマットの厚さ方向に沿って連続して形成された複数の交絡部を有している。
交絡部では、無機繊維が互いに緻密に絡み合っているので、交絡部を中心としてマットの嵩が適度に減っている。
【0107】
(2)本実施形態のマットでは、図2(a)に示したように、仮想直線L1と仮想直線L2とが、90°未満の角度αで交差しており、仮想直線L1と仮想直線L3とが、90°を超える角度βで交差しており、仮想直線L2と仮想直線L3とが、所定の角度γで交差している。
従って、第一交絡部と第二交絡部とは、互いに交差した筋交いのように機能することが可能となり、第一主面及び第二主面に平行な方向に沿ってせん断力が加えられた場合であっても、マットの変形を最小限に抑制することができる。そのため、マットが破損しにくい。
このように、本実施形態のマットは、せん断強度が充分に高い。
また、上記角度γが20°〜120°であり、上記角度αが30°〜80°であり、上記角度βが100°〜150°である場合には、せん断強度をより高くすることができる。
上記角度γが60°〜90°であり、上記角度αが45°〜60°であり、上記角度βが120°〜135°である場合には、せん断強度をさらに高くすることができる。
【0108】
(3)本実施形態のマットでは、複数の第一交絡部が所定の間隔を置いて整列することにより第一列が形成されており、複数の第二交絡部が所定の間隔を置いて整列することにより第二列が形成されている。
より具体的にいうと、マットの長さ方向又は幅方向に平行な方向に沿って、第一列と第二列とが、所定の間隔を置いて交互に形成されている。
そのため、第一交絡部のみ又は第二交絡部のみが集合しすぎている個所がなく、第一交絡部と第二交絡部とがマット全体にバランスよく配置されているので、せん断強度がより高い。
【0109】
(4)本実施形態のマットを構成する無機繊維は、アルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、シリカ繊維、生体溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種の無機繊維である。
これらの無機繊維は耐熱性等の特性に優れているので、本実施形態のマットは耐熱性や保持力等に優れる。
また、マットを構成する無機繊維が生体溶解性繊維である場合には、マットの取り扱い時に生体溶解性繊維が飛散して体内に取り込まれたとしても溶解し、体外に排出されることになるため、人体に対する安全性に優れる。
【0110】
(5)本実施形態の保持シール材は、上述した本実施形態のマットを使用しているので、嵩が適度に減っている。よって、保持シール材を排ガス浄化装置の製造に使用した場合には、保持シール材を巻き付けた排ガス処理体をケーシングへ圧入しやすくなる。
【0111】
(6)本実施形態の保持シール材は、筋交いのように機能する第一交絡部と第二交絡部とが形成された本実施形態のマットを使用しているので、保持シール材のせん断強度が高い。
従って、保持シール材を巻き付けた排ガス処理体をケーシングへ圧入する際には、保持シール材が破損しにくい。
また、製造した排ガス浄化装置の保持シール材は、破損しにくく、耐久性が高い。
【0112】
(7)本実施形態のマットの製造方法では、上述した構成及び効果を有する本実施形態のマットを好適に製造することができる。
【0113】
(8)本実施形態の排ガス浄化装置は、上述した特定構造を有する排ガス処理体を備えているので、排ガス中のPMや有害ガス等を効率的に除去することができる。
また、排ガス浄化装置を構成する保持シール材として、せん断強度が高い本実施形態のマットから作製した保持シール材を使用しているので、使用時等に保持シール材が破損しにくい。
【実施例】
【0114】
(実施例1)
以下の工程(1)〜(5)を経ることにより、本実施形態に係るマットを製造した。
(1)紡糸工程
Al含有量が70g/lであり、Al:Cl=1:1.8(原子比)となるように調製した塩基性塩化アルミニウム水溶液に対して、焼成後の無機繊維における組成比が、Al:SiO=72:28(重量比)となるようにシリカゾルを配合し、さらに、有機重合体(ポリビニルアルコール)を適量添加して混合液を調製した。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して無機繊維前駆体を作製した。
無機繊維前駆体の平均繊維長は100mmであり、平均繊維径は8.0μmであった。
【0115】
(2)積層工程
上記工程(1)で得られた無機繊維前駆体をクロスレイヤー法により積層し、所定の大きさの連続した長尺シートを作製した。
【0116】
(3)切断工程
次に、長尺シートを所定の大きさに切断することにより、シートを作製した。
作製されたシートは、平面視略矩状であり、長さ150mm×幅150mm×厚さ12mmであり、単位面積あたりの重量が2420g/mであった。
【0117】
(4)ニードリング工程
図6に示したニードリング装置と略同様の構成を有するニードリング装置を準備した。
なお、ニードル板としては、ニードル板の対向面の単位面積あたりに形成されたニードルの数が9個/cmであり、直径が約2mmのニードルが所定の間隔で取り付けられたニードル板を使用した。
【0118】
支持板の載置面とシートの第二主面とが接するように、シートを載置面に設置した。
そして、支持板と抑え板とで厚さが15mmになるようにシートを挟んだ。
この状態を保持したまま、ニードルの長さ方向に沿って引いた直線と抑え板の上面とのなす傾斜角度α’が45°となるように、支持板、抑え板及びシートを傾斜させた。
次に、支持板、シート及び抑え板の上方に位置するニードル板を下降させることにより、複数のニードルをシートの第一主面側から第二主面側に向かって貫通させた。
その後、ニードルをシートから引き抜くことにより、第一回目のニードリング処理を行った。
【0119】
次に、第二回目のニードリング処理を行った。
具体的には、ニードルの長さ方向に沿って引いた直線と抑え板の上面とのなす傾斜角度α’が135°となるように、支持板と抑え板とで挟まれた状態のシートを傾斜させた。
そして、第一回目のニードリング処理でニードルが貫通した抑え板の貫通孔とは異なる貫通孔にニードルが打ち込まれるように、支持板、抑え板及びシートの位置を移動させた。
続いて、支持板、シート及び抑え板の上方に位置するニードル板を下降させることにより、複数のニードルをシートの第一主面側から第二主面側に向かって貫通させた。
その後、ニードルをシートから引き抜くことにより、第二回目のニードリング処理を行った。
以上の工程を経ることにより、ニードリングシートを作製した。
【0120】
(5)焼成工程
続いて、ニードリングシートを最高温度1250℃で焼成することにより、無機繊維前駆体を無機繊維に転換し、本実施例のマットを製造した。
製造したマットは、アルミナシリカ繊維が互いに絡み合って構成されており、長さ105mm×幅105mm×厚さ8.4mmであり、単位面積あたりの重量は2470g/mであった。
また、第一ニードル貫通点から第二ニードル貫通点にかけて設けられた第一交絡部と、第三ニードル貫通点から第四ニードル貫通点にかけて設けられた第二交絡部とを有していた。
仮想直線L1と仮想直線L2とがなす角度αは45°であり、仮想直線L1と仮想直線L3とがなす角度βは135°であり、仮想直線L2と仮想直線L3とがなす角度は90°であると推測された。
【0121】
作製したマットから長さ25mm×幅50mmのサイズの切断片を作製し、第一主面及び第二主面に略平行な平面に沿って切断片を厚み方向の中間地点で略二等分に切断し、得られた主断面を顕微鏡で観察することにより、第一交絡部と第二交絡部との合計の形成密度を求めた。
その結果、第一交絡部と第二交絡部との合計の形成密度は20個/cmであった。
一のニードル貫通点と、それに最近接する他のニードル貫通点との最短距離は、2.7mmであった。
ニードル貫通点の直径は、1mmであった。
【0122】
(せん断強度測定試験)
せん断強度測定試験は、図9に示すせん断強度試験機を用いて行った。
【0123】
図9は、せん断強度試験機を模式的に示す側面図である。
【0124】
図9に示すせん断強度試験機70は、一方の主面のみに77個の円錐状の突起(底面の直径1mm×高さ1.6mm)72が形成されたSUS製の2枚の板材(長さ50mm×幅50mm×厚さ3mm)71a、71bと、両主面にそれぞれ77個の円錐状の突起(底面の直径1mm×高さ1.6mm)72が形成されたSUS製の中間板材(長さ50mm×幅50mm×厚さ3mm)73とから構成されている。
せん断強度試験機70を用いたせん断強度の測定は、次のようにして行った。
【0125】
まず、製造したマットを平面視寸法で幅25×長さ50mmに打ち抜き、せん断強度測定用サンプルとした。なお、サンプルの幅方向とマットの幅方向は一致しており、サンプルの長さ方向とマットの長さ方向とは一致している。そのため、一方の短側面側から他方の短側面側に向かってサンプルを透視すると、図2(a)に示したように、仮想直線L2(第一交絡部)と仮想直線L3(第二交絡部)とが交差することになる。
一方の板材71aの突起72が形成された主面上に一の測定用サンプル80を載せ、その上に両面に突起72が形成された中間板材73を載せることにより、一の測定用サンプル80を所定の間隔gをもって挟み込んだ。
次いで、中間板材73上にもう一つの測定用サンプル80を載せ、さらにこの測定用サンプル80の上に、他方の板材71bを所定の間隔gをもって載せた。
このように、三枚の板材のそれぞれの間に一枚ずつ合計二枚の測定用サンプル80を挟み込み、圧縮した。
この際、圧縮された各々のサンプル80の密度が0.35g/cmとなるように、三枚の板材の間隔を調整した。
【0126】
次いで、上下2枚の板材71a、71bと中間板材73とを互いに逆の方向(図9中、矢印tの方向)に引っ張り、その際に生じる最大せん断応力(N)を測定した。
なお、サンプルの幅方向に平行な方向に沿ってせん断力が加えられるように、各板材を引っ張った。
その結果、作製したサンプルの最大せん断応力は、251.2Nであった。
【0127】
(実施例2〜6、参考例1、2)
実施例1の工程(4)での第一回目のニードリング処理、第二回目のニードリング処理における傾斜角度α’を、下記する表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてマットを製造した。
【0128】
(比較例1)
比較例1では、実施例1の工程(4)において支持板及び抑え板を傾斜させることなく、傾斜角度α’を90°に設定して第一回目及び第二回目のニードリング処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にしてマットを製造した。
【0129】
(比較例2、3)
比較例2では、傾斜角度α’を45°に設定して第一回目及び第二回目のニードリング処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にしてマットを製造した。
比較例3では、傾斜角度α’を60°に設定して第一回目及び第二回目のニードリング処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にしてマットを製造した。
【0130】
実施例2〜6、参考例1、2、及び、比較例1〜3における一のニードル貫通点と、それに最近接する他のニードル貫通点との最短距離は、2.7mmであった。
また、実施例2〜6、参考例1、2、及び、比較例1〜3では、第一主面上の第一ニードル貫通点及び第二主面上の第二ニードル貫通点の直径が、1mmであった。
【0131】
実施例2〜6、参考例1、2、及び、比較例1〜3で製造したマットについて、実施例1と同様にしてせん断強度測定試験を行った。
実施例2〜6、参考例1、2、及び、比較例1〜3の主要な構成及びせん断強度測定試験の結果を、実施例1の結果と合わせて表1に示す。
【0132】
【表1】

【0133】
表1に示したように、実施例1〜6、参考例1、2で製造したマットは、最大せん断応力(せん断強度)が高かった。
これは、第一回目のニードリング処理での傾斜角度α’(仮想直線L1と仮想直線L2のなす角度α)が90°未満であり、第二回目のニードリング処理での傾斜角度α’(仮想直線L1と仮想直線L3のなす角度β)が90°を超えていたためであると考えられる。
また、実施例1〜6の結果が示すように、第一回目のニードリング処理での傾斜角度α’(上記角度α)が30°〜80°の範囲にあるか、第二回目のニードリング処理での傾斜角度α’(上記角度β)が100°〜150°の範囲にあるか、仮想直線L2と仮想直線L3とのなす角度γが20°〜120°の範囲にあると、せん断強度がより高かった。
なかでも、実施例1〜3の結果が示すように、第一回目のニードリング処理での傾斜角度α’(上記角度α)が45°〜60°の範囲にあるか、第二回目のニードリング処理での傾斜角度α’(上記角度β)が120°〜135°の範囲にあるか、上記角度γが60°〜90°の範囲にあると、せん断強度がさらに高かった。
比較例1のマットは、マットの第一主面及び第二主面に対して直交するように第一交絡部及び第二交絡部が設けられており、第一交絡部及び第二交絡部が傾斜していなかったため、せん断強度が極めて低かったと考えられる。
比較例2、3のマットは、第一主面及び第二主面に対して第一交絡部及び第二交絡部が傾斜して設けられていた。しかし、第一交絡部と第二交絡部とが互いに略平行となるように同じ方向に傾斜しており、仮想直線L2と仮想直線L3とが交差する関係になかった。
そのため、せん断強度が低かったと考えられる。
【0134】
(その他の実施形態)
本発明のマットの形状は、第一主面と、上記第一主面に対向して位置する第二主面と、第一側面と、上記第一側面に対向して位置する第二側面とを少なくとも有していればよく、上述した平面視略矩形状で所定の厚さを有する平板状以外にも、例えば、平面視略正方形状で所定の厚さを有する平板状等の形状であってもよい。
【0135】
本発明のマットでは、第一側面側から上記第一側面に対向して位置する第二側面側に向かってマットを透視した際に、仮想直線L1と仮想直線L2とが90°未満の角度αで交差しており、仮想直線L1と仮想直線L3とが90°を超える角度βで交差しており、仮想直線L2と仮想直線L3とが所定の角度γで交差している。
ここで、第一側面はマットのいずれかの側面であればよく、第二側面は第一側面に対向して位置するマットのいずれかの側面であればよい。
具体的には、第一実施形態の図2(a)で説明したように、上記第一側面を第一短側面とし、上記第二側面を第二短側面とし、第一短側面側から第二短側面側に向かってマットを透視した側面透視図において、上記仮想直線等が上記特定の関係にあってもよい。
その他、上記第一側面を第一長側面とし、上記第二側面を第二長側面とし、第一長側面側から第二長側面側に向かってマットを透視した側面透視図において、上記仮想直線等が上記特定の関係にあってもよい。この場合、第一長側面側から第二長側面側に向かってマットを透視した側面透視図は、仮想直線L1、仮想直線L2、仮想直線L3、角度α、角度β及び角度γの個数等が異なること以外は、図2(a)に示した第一実施形態のマットの側面透視図と略同様の構成となる。
【0136】
本発明のマットでは、本発明の第一実施形態で説明したように(図1(a)参照)、複数の第一交絡部が所定の間隔を置いて整列することにより形成された第一列と、複数の第二交絡部が所定の間隔を置いて整列することにより形成された第二列とが交互に形成されていることが望ましい。
しかしながら、第一列同士が隣り合っていたり、第二列同士が隣り合っていたりしてもよい。例えば、第一短側面側から第二短側面側に向かって、第一列、第一列、第二列、第二列、第一列、第一列・・・というパターンで第一列と第二列とが形成されていてもよい。
本発明の保持シール材でも同様に、第一列同士が隣り合っていたり、第二列同士が隣り合っていたりしてもよい。
このような実施形態のマットでも、せん断強度が充分に高いという本発明の効果を好適に享受することができる。
【0137】
本発明のマットにおいて、上記第一列と上記第二列とは、マットの幅方向に平行な方向に沿って、所定の間隔を置いて交互に形成されていてもよい。
本発明の保持シール材でも同様に、第一列と第二列とは、保持シール材の幅方向に平行な方向に沿って、所定の間隔を置いて交互に形成されていてもよい。
このような実施形態でも、せん断強度が充分に高いという本発明の効果を好適に享受することができる。
【0138】
本発明のマットは、本発明の第一実施形態で説明したように、バインダマットであってもよく、バインダマットを作製する場合には、次の工程(A)〜(C)を行うことにより作製してもよい。
【0139】
(A)含浸工程
まず、本発明の第一実施形態で説明した有機バインダを含む有機バインダ溶液を準備する。
そして、有機バインダ溶液を、焼成工程を経て製造したマット全体にフローコート等により均一に含浸させることで、含浸マットを作製する。
なお、有機バインダ溶液は、水や有機溶媒等の溶媒に上記有機バインダを溶解させたり、水等の分散媒に上記有機バインダを分散させることにより作製することができる。
また、有機バインダ溶液の濃度については、後の工程を経て作製されるバインダマット全体に含まれる有機バインダの合計量が、バインダマット全体の重量の0.5〜20重量%となるように適宜調整することが望ましい。
【0140】
(B)吸引工程
次に、含浸マットから、吸引装置等を用いて過剰な有機バインダ溶液を吸引除去する。
なお、吸引工程については、必ずしも行う必要はなく、例えば、含浸マットに含まれる有機バインダ溶液の量が少ないのであれば、含浸工程の後、得られた含浸マットを下記乾燥工程に直接供してもよい。
【0141】
(C)乾燥工程
その後、含浸マットに残留した有機バインダ溶液に含まれる溶媒等を、熱風乾燥機等を用いて含浸マットを圧縮しながら揮発させる。
これにより、バインダマットを作製する。
【0142】
本発明のマットは、膨張材をさらに含んでいてもよい。
膨張材が含まれたマットを使用した保持シール材では、排ガス浄化装置の使用時における高温の排ガスにより膨張材が膨張するので、高い保持力を発揮することができる。
膨張材としては、例えば、膨張性バーミキュライト、ベントナイト、膨張性黒鉛等が挙げられる。
【0143】
本発明のマットの製造方法では、無機繊維前駆体を積層することにより作製したシートを使用している。
しかしながら、このシートに代えて、無機繊維からなるシート(以下、無機繊維シートともいう)を使用してもよい。例えば、本発明の第一実施形態のニードリング工程(3)で使用したシートの代わりに無機繊維シートを使用しても、本発明のマットを好適に製造することができる。
【0144】
上記無機繊維シートは、本発明の第一実施形態で説明した無機繊維前駆体を積層してなるシートを焼成することにより作製してもよい。
また、上記無機繊維シートは、遠心法等を利用して作製することもできる。
遠心法を利用する場合には、まず、周壁に多数の小孔が形成された回転可能な円筒体を加熱しつつ、高速で回転させ、円筒体内に溶融シリカや溶融アルミナ等の溶融原料を供給し、供給した溶融原料を遠心力により上記小孔を介して外部に吐出させ、吐出された溶融原料を円筒体の周辺部に設けられたバーナーで加熱することにより延伸させ、延伸した繊維状の溶融原料を冷却することにより無機繊維を作製する。
作製された無機繊維を圧縮することにより、無機繊維シートを作製することができる。
無機繊維シートを構成する無機繊維としては、上述した本発明のマットを構成する無機繊維と同様の構成(種類、組成、平均繊維長、平均繊維径等)を有する無機繊維を使用することができる。
【0145】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体には触媒を担持させてもよい。
触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、CeO等の金属酸化物等が挙げられる。これらの触媒は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0146】
本発明のマットは、仮想直線L1と仮想直線L2とが90°未満の角度αで交差しており、仮想直線L1と仮想直線L3とが90°を超える角度βで交差しており、仮想直線L2と仮想直線L3とが所定の角度γで交差していることが必須の構成要素であり、係る必須の構成要素に、第一実施形態及びその他の実施形態で詳述した種々の構成(例えば、無機繊維の組成、無機繊維の繊維長等)を適宜組み合わせることにより所望の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0147】
マット 1
第一主面 10a
第二主面 10b
第一長側面 11a
第二長側面 11b
第一短側面 12a
第二短側面 12b
無機繊維 13、14
ニードル貫通点 21a、21b、22a、22b
第一交絡部 31
第二交絡部 32

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一主面と、前記第一主面に対向して位置する第二主面と、第一側面と、前記第一側面に対向して位置する第二側面とを少なくとも有しており、無機繊維が互いに絡み合って構成されたマットであって、
前記マットには、前記第一主面上に形成されたニードル貫通点から前記第二主面上に形成されたニードル貫通点にかけて設けられた交絡部が複数形成されており、
前記交絡部は、他の部分に比べて互いに緻密に絡み合った無機繊維から構成されており、
前記マットの厚さ方向に垂直な方向に沿って仮想直線L1を引き、第一交絡部に沿って仮想直線L2を引き、第二交絡部に沿って仮想直線L3を引いた際、前記第一側面側から前記第二側面側に向かって前記マットを透視すると、
前記仮想直線L1と前記仮想直線L2とは、90°未満の角度αで交差しており、
前記仮想直線L1と前記仮想直線L3とは、90°を超える角度βで交差しており、
前記仮想直線L2と前記仮想直線L3とは、所定の角度γで交差していることを特徴とするマット。
【請求項2】
前記角度γは、20°〜120°である請求項1に記載のマット。
【請求項3】
前記角度αは、30°〜80°であり、前記角度βは、100°〜150°である請求項2に記載のマット。
【請求項4】
前記角度γは、60°〜90°である請求項1に記載のマット。
【請求項5】
前記角度αは、45°〜60°であり、前記角度βは、120°〜135°である請求項4に記載のマット。
【請求項6】
複数の第一交絡部が所定の間隔を置いて整列することにより第一列が形成されており、
複数の第二交絡部が所定の間隔を置いて整列することにより第二列が形成されている請求項1〜5のいずれかに記載のマット。
【請求項7】
前記第一列と前記第二列とが、交互に形成されている請求項6に記載のマット。
【請求項8】
前記マットの長さ方向又は幅方向に平行な方向に沿って、前記第一列と前記第二列とが、所定の間隔を置いて交互に形成されている請求項7に記載のマット。
【請求項9】
前記無機繊維は、アルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、シリカ繊維、生体溶解性繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種の無機繊維である請求項1〜8のいずれかに記載のマット。
【請求項10】
有機バインダをさらに含む請求項1〜9のいずれかに記載のマット。
【請求項11】
膨張材をさらに含む請求項1〜10のいずれかに記載のマット。
【請求項12】
ケーシング内で排ガス処理体を保持するために用いられる保持シール材であって、
請求項1〜11のいずれかに記載のマットを使用していることを特徴とする保持シール材。
【請求項13】
第一主面と、前記第一主面に対向して位置する第二主面と、第一側面と、前記第一側面に対向して位置する第二側面とを少なくとも有しており、焼成することにより無機繊維に転換される無機繊維前駆体が互いに絡み合って構成されたシートを準備し、前記シートにニードルを貫通させることによりニードリングシートを作製するニードリング工程と、
前記ニードリングシートを焼成する焼成工程とを含むマットの製造方法であって、
前記ニードリング工程では、
前記シートの厚さ方向に垂直な方向に沿って仮想直線L1を引き、前記第一側面側から前記第二側面側に向かって前記シートを透視した際に、前記仮想直線L1と90°未満の角度αで交差するように第一ニードルを前記シートに貫通させることにより第一交絡部前駆体を形成し、
前記仮想直線L1と90°を超える角度βで交差し、かつ、前記第一交絡部前駆体に沿って引いた仮想直線L2と所定の角度γで交差するように第二ニードルを前記シートに貫通させることにより第二交絡部前駆体を形成することを特徴とするマットの製造方法。
【請求項14】
排ガス処理体と、
前記排ガス処理体を収容するケーシングと、
前記排ガス処理体と前記ケーシングとの間に配設され、前記排ガス処理体を保持する保持シール材とからなる排ガス浄化装置であって、
前記保持シール材は、請求項1〜11のいずれかに記載のマット又は請求項13に記載のマットの製造方法で製造されたマットを使用していることを特徴とする排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−77399(P2012−77399A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222206(P2010−222206)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】