説明

マットレスの処理装置及び処理方法

【課題】簡単な構成によりマットレスに対する通気を促進させ、これによってマットレスを短時間で均一に乾燥することができ、又、マットレスの殺菌、消毒等の薬剤処理を短時間に少ない薬剤の利用量で行えるようにする。
【解決手段】鉛直な軸線Rを中心に回転する回転テーブル3と、回転テーブル3の回転駆動手段と、回転テーブル3上に備えたマットレス支持手段13により縦長にしたマットレスMの面を軸線Rに対して接線的に複数保持することにより遠心ファンを形成するようにした回転体14と、回転体14の外部を包囲するケーシング2と、送風機の一側に接続されてケーシング2内の回転体の上端中心部に開口32する第1ダクト31と、送風機の他側に接続されてケーシング2内の回転体14の下端外周部に開口35a,35bする第2ダクト34を備えてケーシング2内において回転体14の上端中心部と回転体14の下端外周部との間で流体を循環させる流体循環手段を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や老人ホーム等で用いられる介護用ベッドのマットレスの処理装置及び処理方法に関し、特に洗浄を行って脱水した後のマットレスを短時間で均一に乾燥することができ、又、マットレスの殺菌、消毒等の薬剤処理を短時間に少ない薬剤の利用量で行えるようにしたマットレスの処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院や老人ホーム等では、介護用ベッドのかけ布団やシーツだけでなくマットレスの丸洗い洗浄の要望が高まってきている。ところが介護用ベッド等のマットレスを丸洗い洗浄した場合には、通気性が低いために乾燥に長時間を要し、そのためにマットレスの使用効率が低下すると共に乾燥用の広いスペースが必要になる等の問題がある。
【0003】
このため、マットレスの乾燥を効果的に高めるための装置として特許文献1、2等が提案された。特許文献1では、乾燥室内に、ガイドによってマットレスの面を立てた状態で複数保持し、乾燥室内に温風を供給すると共に排気することでマットレスの乾燥を行うようにしている。又、特許文献2では、乾燥室内に、多数の通気孔を有してマットレス等の寝具を載置するようにした複数の棚段を配置し、上方から温風を供給して下方へ排気することでマットレスの乾燥を行うようにしている。
【0004】
しかし、特許文献1、2に示すように、乾燥室内に固定設置したマットレスに対して温風を供給することによりマットレスを乾燥する方法では、通常マットレスは通気性が低いために外表面は乾燥されてた状態となっても内部はまだ乾燥されておらず全体が所要の含水率以下に乾燥するまでに長時間を要するという問題がある。更に、乾燥室内に設置したマットレスが含有する水分は重力によって徐々に下端或いは下面に移動し、下端或いは下面は乾燥され難いために均一な乾燥ができないという問題を有していた。
【0005】
又、上記したように、マットレスは通気性が低いためにマットレスに温風を通気させるためには温風を高い圧力で供給する必要があり、このために温風の供給装置が大型になるという問題を有する。
【0006】
上記従来の問題点を解決するために、本特許出願人は、回転することにより内部から外部に向かう風を生成する複数の羽根を周囲に持つ回転フレームと、回転フレームの内部又は外周部であって、回転フレームが回転することにより生じる風が通る位置にマットレス等を置くための設置手段とを備えた構成の乾燥装置を提案した(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2000−225295号公報
【特許文献2】特開2003−38897号公報
【特許文献3】特開2004−218977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3によれば、回転フレームの周囲に設けた複数の羽根により、回転フレームの回転により回転フレーム内部から外部に向かう風を生成させて、回転フレームの内部又は外周部に設置したマットレスに対して風を通気させることによりマットレスの乾燥を促進させるようにしている。
【0008】
しかし、上記したように、回転フレームの周囲に設けた複数の羽根によって回転フレーム内部から外部に向かう風を生成させる方式では、生成した風がマットレスに与える風圧は比較的小さく、よってマットレスに良好に空気を通気させることが困難なため乾燥に長時間を要する問題がある。又、前記風圧を高めるために羽根の半径方向の幅を大きくすることが考えられるが、この場合には装置全体が大型になってしまうという問題があるた。更に、前記したように、回転フレームの周囲に複数の羽根を設ける構成は構造が複雑で装置が高価になると共に、掃除等のメンテナンスも大変になるという問題がある。
【0009】
一方、マットレスは定期的に薬液等による殺菌、消毒等を行うようにしており、マットレスを薬剤処理する場合にはマットレスを薬液に浸漬し、その後脱水して乾燥することが行われ、この場合にも乾燥に長時間を要する問題があり、更に、マットレスを薬液に浸漬しているため、大量の薬液が必要になるという問題を有していた。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、簡単な構成によりマットレスに対する通気を促進させ、これによってマットレスを短時間で均一に乾燥することができ、又、マットレスの殺菌、消毒等の薬剤処理を短時間に少ない薬剤の使用量で実施できるようにしたマットレスの処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、鉛直な軸線を中心に回転する回転テーブルと、
回転テーブルの回転駆動手段と、
回転テーブル上に備えたマットレス支持手段によりマットレスの立てた面を鉛直な軸線に対して接線的に複数保持することにより遠心ファンを形成するようにした回転体と、
回転体の外部を包囲するケーシングと、
送風機の一側に接続されてケーシング内の回転体の一端中心部に開口する第1ダクトと、送風機の他側に接続されてケーシング内の回転体の他端外周部に開口する第2ダクトを備えて前記ケーシング内において回転体の一端中心部と回転体の他端外周部との間で流体を循環させるようにした流体循環手段と、
を有することを特徴とするマットレスの処理装置、に係るものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記回転体は、縦長にしたマットレスの立てた面を鉛直な軸線に対して接線的に保持している。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記流体循環手段に流体の加熱装置を備えてマットレスの乾燥を行えるようにしている。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記流体循環手段に薬剤供給装置を備えてマットレスの薬剤処理を行えるようにしている。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記回転駆動手段が、回転テーブルの回転方向を正・逆切替可能としている。
【0016】
請求項6に係る発明は、前記マットレス支持手段が、マットレスを羽根状に湾曲させて支持する湾曲フレームである。
【0017】
請求項7に係る発明は、前記流体循環手段が、第1ダクトと第2ダクトを連通する接続ダクトを有しており、第1ダクトにより流体を供給して第2ダクトにより流体を吸気する状態と、第2ダクトにより流体を供給して第1ダクトにより流体を吸気する状態とに切り換えるダクト切換器を有している。
【0018】
請求項8に係る発明は、前記第1ダクトと第2ダクトの少なくとも一方に開閉可能な外気吸引口を有すると共に、前記ケーシング内上部を外部と開閉可能に連通する排気ダクトを有している。
【0019】
請求項9に係る発明は、請求項1〜8に記載した処理装置の遠心ファンが一方向に回転して流体を中心側から外周側に向かわせる状態では回転体の一端中心部に加熱装置で加熱した空気を送風機により供給すると共に他端外周部の空気を送風機で吸気する第1の循環を行い、遠心ファンが他方向に回転して流体を外周側から中心側に向かわせる状態では回転体の他端外周部に加熱装置で加熱した空気を送風機により供給すると共に一端中心部の空気を送風機で吸気する第2の循環を行い、上記第1の循環と第2の循環を交互に繰り返すことにより、回転体のマットレスの面に対して一側と他側から交互に加熱した空気を通気させてマットレスを乾燥させることを特徴とするマットレスの処理方法、に係るものである。
【0020】
請求項10に係る発明は、前記第1の循環と第2の循環を継続することによりケーシング内の温度と湿度が設定値以上になると、循環する空気に外気を吸引すると共に、ケーシング内上部の空気を外部に排気し、マットレスの含水率が設定値以下でない場合は前記第1の循環と第2の循環を行って乾燥させるようにしている。
【0021】
請求項11に係る発明は、請求項1〜8に記載した処理装置の遠心ファンが一方向に回転して流体を中心側から外周側に向かわせる状態では薬剤供給装置により所定量供給した薬剤を含む流体を送風機により回転体の一端中心部に供給すると共に他端外周部の流体を送風機で吸引する第1の循環を行い、遠心ファンが他方向に回転して流体を外周側から中心側に向かわせる状態では薬剤供給装置により所定量供給した薬剤を含む流体を送風機により回転体の他端外周部に供給すると共に一端中心部の流体を送風機で吸引する第2の循環を行い、上記第1と第2の循環を交互に繰り返して行うことにより、回転体のマットレスの面に対して一側と他側から交互に薬剤を含む流体を通気させてマットレスを薬剤処理することを特徴とするマットレスの処理方法、に係るものである。
【0022】
請求項12に係る発明は、前記第1の循環と第2の循環を設定時間継続した後、循環する流体に外気を吸引すると共に、ケーシング内上部の流体を外部に排気してケーシング内の薬剤濃度が設定値以下になるようにしている。
【発明の効果】
【0023】
本発明のマットレスの処理装置及び処理方法によれば、回転テーブル上に備えたマットレス支持手段によりマットレスの立てた面を鉛直な軸線に対して接線的に複数保持することにより遠心ファンを形成する回転体を有しているので、回転体の回転によりマットレスの面が遠心ファンの羽根を形成してマットレスに強い風圧を生じさせることができ、よってマットレスに対する空気の通気を高めて循環させることができる。更に、回転駆動手段により回転テーブルの回転方向を正・逆切替可能とし、回転体が一方向に回転して空気を中心側から外周側に向かわせる状態では回転体の一端中心部に送風機による空気を供給し、又、回転体が他方向に回転して流体を外周側から中心側に向かわせる状態では回転体の他端外周部に送風機による空気を供給することにより、マットレスの一側面と他側面から交互に強い圧力で空気を通気させることができる。
【0024】
従って、循環する空気を加熱装置で加熱しておくと、マットレスの面に対して一側と他側から交互に加熱した空気が通気されるので、マットレスを短時間にしかも均一に乾燥することができる効果がある。
【0025】
又、循環する空気に薬剤供給装置により薬剤を混合すると、マットレスの面に対して一側と他側から交互に薬剤を含む流体が通気されるので、マットレスを短時間にしかも少ない薬剤の使用量で均一に薬剤処理することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0027】
図1〜図4は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図1はマットレスの処理装置の正面図、図2は図1のII−II方向から見た側面図、図3は図1をIII−III方向から見た平面図、図4は図1をIV−IV方向から見た回転体の平面図である。
【0028】
箱形を有する装置本体1内の一側には、図4の如く四角形状を有して気密に構成されたケーシング2が設けてあり、このケーシング2は図6のようにマットレスMを縦長にした状態で収容できる高さを有している。尚、図6ではケーシング2の内部が見えるように開放した状態を示しているが、このケーシング2の外周はプレートによって気密に覆われている。ケーシング2の底部には、鉛直な軸線Rを中心に回転できる回転テーブル3が設けあり、この回転テーブルは縦長にしたマットレスMの幅寸法の2倍より小さい程度の直径を有している。回転テーブル3は、図1、図4、図5に示すように、回転テーブル3の下面に備えたピニオンピン4に噛合するホイール5を駆動モータ6で駆動する回転駆動手段7によって回転駆動されるようになっている。この時、回転テーブル3は駆動モータ6により回転の駆動・停止が行われると共に、クラッチの切替えによって回転方向の正・逆が切替可能になっている。
【0029】
前記回転テーブル3の上面には、マットレスMの面を立てて載置した際に、マットレスMの下辺が回転テーブル3上に密着しないようにしてマットレスMの下部に空気が流通できるようにするための間隔保持手段8を備えている。この間隔保持手段8は、図5に示すように回転テーブル3上に棒状部材を固定配置するようにしてもよく、又、回転テーブル3の上面に凹凸を形成するようにしてもよく、更には回転テーブル3上にパンチングメタル等のような部材を間隔を隔てて設置するようにしてもよい。又、回転テーブル3の外周には、ケーシング2の固定床9に設けた水、グリス、半固体ゼル等を収容する環状凹部10と、該環状凹部10に挿入されるように回転テーブル3に固定した環状の水封板11とからなるシール構造12を備えており、回転テーブル3とケーシング2の固定床9との間のシールを行うようになっている。
【0030】
前記回転テーブル3上には、図4、図6、図7に示す如く、縦長にしたマットレスMの立てた面を鉛直な軸線Rに対して接線的に複数等間隔に保持するようにしたマットレス支持手段13を設けることによって回転体14を構成している。
【0031】
マットレス支持手段13は、図4、図7に示すように、回転テーブル3の軸線Rを中心とする小さい円上に等間隔を有して複数鉛直に固定した内側支柱15と、回転テーブル3の周縁近傍において前記内側支柱15と同数で等間隔に鉛直に固定した外側支柱16を有しており、前記各内側支柱15の上端は四角環状の内側固定具17で固定され、又、各外側支柱16の上端は円形環状の外側固定具18で固定されており、内側固定具17と外側固定具18は連結材19によって相互に連結されており、これによりマットレス支持手段13は回転テーブル3上に自立している。
【0032】
前記軸線Rから所定の内側支柱15’を通る放射方向線Xに対し、回転方向にずれた位置の外側支柱16’と前記内側支柱15’との間には、マットレスMを羽根状に湾曲させて支持するための湾曲フレーム20を上下に所要の間隔で複数固定しており、前記各内側支柱15とそれに対して順次ずれた位置の外側支柱16との間も夫々湾曲フレーム20によって固定している。更に、前記各湾曲フレーム20には入れ子式の延長部21が収納されており、各延長部21の外側端部を上下に延びた連結材22で連結することによりスライドドア23を構成している。そして、前記スライドドア23を湾曲フレーム20から引き出して、隣接する湾曲フレーム20の外側支柱16から径方向外側に延びた固定アーム24に接続具25を介して固定できるようになっている。又、各外側支柱16には径方向の内側に延びて湾曲フレーム20間に配置したマットレスMの中間部を押圧する押圧具26を設けている。
【0033】
従って、縦長にした状態のマットレスMを湾曲フレーム20間に装入し、スライドドア23を湾曲フレーム20から引き出して隣接した外側支柱16の固定アーム24に接続具25で固定することにより、回転体14に対しマットレスMが鉛直な軸線Rに対して接線的に、しかも羽根状に湾曲して複数(図では8枚)配置された遠心ファンが形成されるようになっている。
【0034】
前記ケーシング2には、図7に示すようにドア27によって開閉が可能な作業口28が設けてあり、前記ドア27を開けて作業口28から回転体14に対するマットレスMの装着・取出しが行えるようになっており、更に、ドア27はリミットスイッチによって開閉が確認できるようになっていると共に、ドア27はドアロックによって開作動を禁止できるようになっている。
【0035】
尚、上記形態では、マットレス支持手段13の湾曲フレーム20によってマットレスMを羽根状に曲げて保持する場合について例示したが、前記湾曲フレーム20とすることなく直線フレームで構成することによりマットレスMを羽根状に曲げずに、図8に示すようにマットレスMの面を鉛直な軸線に対し接線的に且つ直線状に保持して遠心ファンを形成するようにしてもよい。マットレスMが保持された遠心ファンの中心部には円筒状の空間が形成されている。
【0036】
図1〜図4に示すように、前記装置本体1内における前記ケーシング2の他側部には送風機29が設けてあり、該送風機29の一側には電気ヒータ等の加熱器30を介して第1ダクト31が接続され、該第1ダクト31の上端はケーシング2内の回転体14の上端中心部(前記円筒状の空間の上部)に開口32している。又、送風機29の他側にはフィルター33を介して第2ダクト34が接続されている。第2ダクト34の上端は、ケーシング2の上部を延びて両端がケーシング2内の回転体14の下端外周部に対峙して開口35a,35bした連通ダクト36に接続されている。図3、図4では連通ダクト36が2つの開口35a,35bを有した場合を示しているが、3つ以上の開口を等間隔に備えるようにしてもよい。前記送風機29と第1ダクト31と第2ダクト34とにより、前記ケーシング2内において回転体14の上端中心部と回転体14の下端外周部との間で空気を循環させる流体循環手段を構成している。
【0037】
ここで、前記第1ダクト31は途中に第1接続ダクト37が設けられて前記連通ダクト36に接続されており、又、前記第1ダクト31の開口32に近い位置には前記第2ダクト34に接続する第2接続ダクト38が設けられている。そして、前記第1接続ダクト37及び第2接続ダクト38には夫々ダクト切替器39,40が設けられ、又、前記第1ダクトにおける前記第1接続ダクト37の分岐点と第2接続ダクト38の分岐点との間にはダクト切替器41が設けられ、更に、前記第2ダクト34における前記連通ダクト36に対する接続部近傍にはダクト切替器42が設けられている。従って、前記各ダクト切替器39,40,41,42を操作することによって、送風機29からの空気を第1ダクト31の開口32から回転体14の上端中心部に供給すると共に第2ダクト34により回転体14の下端外周部の開口35a,35bから空気を吸気する第1の循環と、送風機29からの空気を第2ダクト34により回転体14の下端外周部に開口35a,35bから供給すると共に第1ダクト31により回転体14の上端中心部の開口32から空気を吸気する第2の循環とを切り替えて行えるようになっている。
【0038】
前記第1ダクト31と第2ダクト34の少なくとも一方(図2では第2ダクト34)には外気切替器43により開閉が可能な外気吸引口44を設けている。又、前記ケーシング2の上部には、ケーシング2内上部に開口45し、排気切替器46の開閉によってケーシング2内上部の空気を外部に排気するようにした排気ダクト47を設けている。
【0039】
更に、前記ケーシング2内には、図3、図4に示す如く、前記回転体14に支持されたマットレスMの含水率を計測する含水率測定器48を設けている。含水率測定器48としては、マットレスM表面の放射温度を計測する放射温度測定器を用いることができる。又、前記ケーシング2内には温度計49及び湿度計50が設けられている。
【0040】
一方、前記第1ダクト31には、図2に示すように、次亜鉛素酸ナトリウム、過酸化水素、オゾンガス、MRガス等からなる消毒薬剤、殺菌薬剤等の薬剤を第1ダクト31内を流動する流体中に噴霧して混合するようにした薬剤供給装置51を設けている。更に、ケーシング2内にはケーシング2内の薬剤の濃度を検出する薬剤濃度検出器52を設けている。
【0041】
次に、上記図示例の作動を説明する。
【0042】
先ず、上記形態において、洗浄を行って脱水した後のマットレスMを乾燥する場合について説明する。
【0043】
図7に示すように、ケーシング2に設けられたドア27を開けて、乾燥を行うマットレスMを縦長にした状態で作業口28から回転テーブル3上に備えたマットレス支持手段13の湾曲フレーム20間に装入し、スライドドア23を引き出して隣接した外側支柱16の固定アーム24に接続具25により固定する。これにより、マットレスMは前記湾曲フレーム20及び押圧具26により所要の羽根状に曲げられて保持される。次に、回転テーブル3上のマットレス支持手段13を手で押して回転体14を所要角度回転させた後、隣の湾曲フレーム20間に同様にしてマットレスMを装入し保持し、この作業を繰り返すことによりすべての湾曲フレーム20間にマットレスMを保持させる。
【0044】
次に、図11の制御フローチャートに示すように、自動による乾燥作業を開始する。乾燥作業がスタートされると、ドア27が閉じられたことがリミットスイッチによって確認され、ドア27がロックされると、駆動モータ6のクラッチがONされて回転テーブル3が回転されると共に、送風機29が作動され、更に加熱器30が作動され、図12に示されるサブルーチンの操作が行われる。
【0045】
サブルーチンでは、ダクト切替器41,42を開、ダクト切替器39,40を閉に切り替え、これにより、送風機29からの空気を第1ダクト31による開口32から回転体14の上端中心部に供給すると共に第2ダクト34が接続された連通ダクト36の開口35a,35bから回転体14の下端外周部の空気を吸気するように切り替えられ、第1の循環Iが行われる。この時、マットレスMが保持された回転体14による遠心ファンは回転によって空気が中心側から外周側に向かうように図9に示す正転Sを行っており、遠心ファンの回転により各マットレスMの湾曲した凸側前面に圧力が発生するため、マットレスMには点線矢印で示すように凸側前面から凹側背面に向かう通気が行われ、これによってマットレスの乾燥が促進される。第1の循環は設定時間Aだけ継続される。
【0046】
第1の循環Iが設定時間Aに達すると、ダクト切替器41,42を閉、ダクト切替器39,40を開に切り替え、送風機29からの空気を第2ダクト34及び連通ダクト36の開口35a,35bにより回転体14の下端外周部に供給すると共に第1ダクト31の開口32により回転体14の上端中心部の空気を吸気する第2の循環IIが行われる。この時、遠心ファンは回転によって空気が外周部から中心側に向かうように図10に示す逆転S’に切り替えられており、遠心ファンの回転により各マットレスMの湾曲した凹側前面に圧力が発生するため、マットレスMには点線矢印で示すように凹側前面から凸側背面に向かう通気が行われ、これによってマットレスの乾燥が促進される。そして、上記第2の循環IIも設定時間Aだけ継続される。
【0047】
第2の循環IIが設定時間Aに達すると、再び第1の循環Iに戻り、設定時間Bだけ上記第1の循環Iと第2の循環IIが繰り替えされ、これにより、マットレスMの面に対して一側と他側から交互に加熱した空気を通気させてマットレスMの乾燥を行う。この時、加熱器30で加熱した空気をマットレスMに通記させるように循環するため、ケーシング2内は例えば約80℃の高い温度に維持され、且つ100%に近いような高い湿度に保持されるようになる。この時、回転テーブル3とケーシング2の固定床9との間にはシール構造12を備えているので、ケーシング2内の空気が外部に漏出することは防止される。
【0048】
前記サブルーチンが設定時間Bだけ繰り返されると、ケーシング2内の温度計49による温度と、湿度計50による湿度は予め設定した設定値以上となる。この時、温度と湿度が設定値に達しない場合には前記サブルーチンを繰返すようにする。
【0049】
前記温度及び湿度が前記設定値以上になると、外気切替器43及び排気切替器46を開作動して、外気吸引口44から第2ダクト34に外気を吸気すると共に、排気ダクト47によりケーシング2内上部の空気を外部に排気する。これによって、ケーシング2内の水分は一気に外部に排出されることになる。
【0050】
ケーシング2内の水分を外部へ排出した後、マットレスM表面の放射温度を計測する放射温度測定器等からなる含水率測定器48によってマットレスMの含水率を計測し、含水率が設定値に達していない場合には、前記サブルーチンを繰返すようにして乾燥の促進を図り、含水率が前記設定値以下になると、前記加熱器30を停止し、ケーシング2内の温度が設定値になるまでクールダウンを行った後、送風機29を停止し、駆動モータ6を停止し、ドア27のロックを解除する。
【0051】
上記の乾燥が終了すると、図7のドア27を開け、マットレス支持手段13に支持された乾燥したマットレスMを外部に取り出す。
【0052】
次に、上記形態において、マットレスMを薬剤処理する場合について説明する。
【0053】
薬剤処理するマットレスMは前記乾燥の場合と同様にしてマットレス支持手段13により回転テーブル3上に支持した後、図13の制御フローチャートに示すように、自動による薬剤処理作業を開始する。薬剤処理作業がスタートすると、ドア27が閉じたことがリミットスイッチによって確認され、ドア27がロックされて駆動モータ6のクラッチがONされて回転テーブル3が回転される。更に、送風機29が作動されると共に、薬剤供給装置51が作動されて消毒薬剤、殺菌薬剤等の薬剤が所定量だけ第1ダクト31内に噴霧された後、前記図12に示したサブルーチンの操作が行われる。
【0054】
サブルーチンによって前記第1の循環Iと第2の循環IIが繰り返されることにより、マットレスMの面に対して一側と他側から交互に薬剤を含んだ流体が通気されることによりマットレスMはその内部まで効果的に薬剤処理される。この時、薬剤を含んだ流体をマットレスMに通過させて薬剤処理するために、従来のようにマットレスを薬剤に浸漬する方式に比して、薬剤の使用量を著しく少なくすることができると共に、処理時間も大幅に短縮することができる。
【0055】
薬剤処理が終了すると、図7のドア27を開けて、マットレス支持手段13に支持されている薬剤処理されたマットレスMを外部に取り出す。
【0056】
上記形態で示したように、回転テーブル3上に備えたマットレス支持手段13により縦長にしたマットレスMの面を鉛直な軸線Rに対して接線的に複数保持することにより遠心ファンを形成するようにしたので、回転体14の回転によりマットレスMの面が遠心ファンの羽根を形成してマットレスMに強い風圧を生じさせることができ、よってマットレスMに対する空気の通気を高めることができる。更に、回転駆動手段7により回転テーブル3の回転方向を正・逆切替可能とし、回転体14が一方向に回転(正転S)して遠心ファンが流体を中心側から外周側に向かわせる状態では回転体14の上端中心部に送風機29による空気を供給し、又、回転体14が他方向に回転(正転S’)して遠心ファンが流体を外周側から中心側に向かわせる状態では回転体14の下端外周部に送風機29による空気を供給するようにしたことにより、マットレスMの一側面と他側面から交互に強い圧力で空気を通気させることができる。
【0057】
従って、加熱器30で加熱した空気を前記送風機29により供給すると、マットレスMの面に対して一側と他側から交互に加熱した空気が通気されるので、マットレスMを短時間にしかも均一に乾燥することができる。
【0058】
又、薬剤供給装置51により薬剤が混合された流体を送風機29により供給すると、マットレスMの面に対して一側と他側から交互に薬剤を含む流体が通気されるので、マットレスMを短時間にしかも少ない薬剤の使用量で均一に薬剤処理することができる。
【0059】
前記形態においては、マットレスMを縦長にして立てた状態で回転体14に保持させるようにしたので、回転テーブル3の径を小さくした小型の装置で多数のマットレスMを同時に処理することができる。しかし、装置の径が大型化してもよい場合には、マットレスMを横長にして立てた状態で回転体14に保持させるようにしてもよい。
【0060】
なお、本発明のマットレスの処理装置及び処理方法は、上記形態にのみ限定されるものではなく、回転体の下端中心部に流体を供給して回転体の上端外周部から吸気するよう構成してもよいこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明を実施する形態の一例としてのマットレスの乾燥装置の正面図である。
【図2】図1のII−II方向から見た側面図である。
【図3】図1をIII−III方向から見た平面図である。
【図4】図1をIV−IV方向から見た回転体の平面図である。
【図5】回転テーブルのシール構造の一例を示す断面図である。
【図6】回転体に湾曲させたマットレスの面が鉛直な軸線に対して接線的になるように保持した遠心ファンを斜め上方から見た斜視図である。
【図7】回転テーブル上に備えたマットレス支持手段の平面図である。
【図8】回転体にマットレスの面が鉛直な軸線に対して接線的且つ直線状になるように保持した遠心ファンの斜視図である。
【図9】遠心ファンを正転した時のマットレスに対する通気の状態を示す平面図である。
【図10】遠心ファンを逆転した時のマットレスに対する通気の状態を示す平面図である。
【図11】マットレスを乾燥する際の制御フローチャートである。
【図12】図11の制御フローチャートにおけるサブルーチンのフローチャートである。
【図13】マットレスを薬剤処理する際の制御フローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
2 ケーシング
3 回転テーブル
7 回転駆動手段
13 マットレス支持手段
14 回転体
20 湾曲フレーム
29 送風機
30 加熱器
31 第1ダクト
32 開口
34 第2ダクト
35a,35b 開口
37 第1接続ダクト
38 第2接続ダクト
39,40 ダクト切替器
41,42 ダクト切替器
43 外気切替器
44 外気吸引口
45 開口
46 排気切替器
47 排気ダクト
51 薬剤供給装置
M マットレス
R 鉛直な軸線
I 第1の循環
II 第2の循環
S 正転
S’ 逆転

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直な軸線を中心に回転する回転テーブルと、
回転テーブルの回転駆動手段と、
回転テーブル上に備えたマットレス支持手段によりマットレスの立てた面を鉛直な軸線に対して接線的に複数保持することにより遠心ファンを形成するようにした回転体と、
回転体の外部を包囲するケーシングと、
送風機の一側に接続されてケーシング内の回転体の一端中心部に開口する第1ダクトと、送風機の他側に接続されてケーシング内の回転体の他端外周部に開口する第2ダクトを備えて前記ケーシング内において回転体の一端中心部と回転体の他端外周部との間で流体を循環させるようにした流体循環手段と、
を有することを特徴とするマットレスの処理装置。
【請求項2】
前記回転体は、縦長にしたマットレスの立てた面を鉛直な軸線に対して接線的に保持している請求項1に記載のマットレスの処理装置。
【請求項3】
前記流体循環手段は、流体の加熱装置を備えてマットレスの乾燥を行うようにした請求項1又は2に記載のマットレスの処理装置。
【請求項4】
前記流体循環手段は、薬剤供給装置を備えてマットレスの薬剤処理を行うようにした請求項1又は2に記載のマットレスの処理装置。
【請求項5】
前記回転駆動手段は、回転テーブルの回転方向を正・逆切替可能である請求項1〜4のいずれか1つに記載のマットレスの処理装置。
【請求項6】
前記マットレス支持手段は、マットレスを羽根状に湾曲させて支持する湾曲フレームである請求項1〜5のいずれか1つに記載のマットレスの処理装置。
【請求項7】
前記流体循環手段は、第1ダクトと第2ダクトを連通する接続ダクトを有しており、第1ダクトにより流体を供給して第2ダクトにより流体を吸気する状態と、第2ダクトにより流体を供給して第1ダクトにより流体を吸気する状態とに切り換えるダクト切換器を有している請求項1〜6のいずれか1つに記載のマットレスの処理装置。
【請求項8】
前記第1ダクトと第2ダクトの少なくとも一方に開閉可能な外気吸引口を有すると共に、前記ケーシング内上部を外部と開閉可能に連通する排気ダクトを有する請求項1〜7のいずれか1つに記載のマットレスの処理装置。
【請求項9】
請求項1〜8に記載した処理装置の遠心ファンが一方向に回転して流体を中心側から外周側に向かわせる状態では回転体の一端中心部に加熱装置で加熱した空気を送風機により供給すると共に他端外周部の空気を送風機で吸気する第1の循環を行い、遠心ファンが他方向に回転して流体を外周側から中心側に向かわせる状態では回転体の他端外周部に加熱装置で加熱した空気を送風機により供給すると共に一端中心部の空気を送風機で吸気する第2の循環を行い、上記第1の循環と第2の循環を交互に繰り返すことにより、回転体のマットレスの面に対して一側と他側から交互に加熱した空気を通気させてマットレスを乾燥させることを特徴とするマットレスの処理方法。
【請求項10】
前記第1の循環と第2の循環を継続することによりケーシング内の温度と湿度が設定値以上になると、循環する空気に外気を吸引すると共に、ケーシング内上部の空気を外部に排気し、マットレスの含水率が設定値以下でない場合は前記第1の循環と第2の循環を行って乾燥させる請求項9に記載のマットレスの処理方法。
【請求項11】
請求項1〜8に記載した処理装置の遠心ファンが一方向に回転して流体を中心側から外周側に向かわせる状態では薬剤供給装置により所定量供給した薬剤を含む流体を送風機により回転体の一端中心部に供給すると共に他端外周部の流体を送風機で吸引する第1の循環を行い、遠心ファンが他方向に回転して流体を外周側から中心側に向かわせる状態では薬剤供給装置により所定量供給した薬剤を含む流体を送風機により回転体の他端外周部に供給すると共に一端中心部の流体を送風機で吸引する第2の循環を行い、上記第1と第2の循環を交互に繰り返して行うことにより、回転体のマットレスの面に対して一側と他側から交互に薬剤を含む流体を通気させてマットレスを薬剤処理することを特徴とするマットレスの処理方法。
【請求項12】
前記第1の循環と第2の循環を設定時間継続した後、循環する流体に外気を吸引すると共に、ケーシング内上部の流体を外部に排気してケーシング内の薬剤濃度が設定値以下になるようにする請求項11に記載のマットレスの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−77851(P2009−77851A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248454(P2007−248454)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(390008338)広和株式会社 (21)
【Fターム(参考)】