説明

マットレス用シーツ及びその製造方法

【課題】 マットレス上面におけるシーツのしわの発生及び型崩れ防止、装着・洗濯処理に対する耐久性を確保すると共にマットレスへの装着作業負担を軽減可能なマットレス用シーツを提供する。
【解決手段】 マットレスに装着されるマットレス用シーツであって、上面地部と下面地部とコーナ地部が形成された周側面地部とマットレスを挿入・取出し可能に開口された開口部とを備え、伸縮性ある1枚の布地によって製造されたシーツにおいて、縫合縁部は四隅コーナ部に直線状の縫合角部を連続形成し、コーナ地部は四隅コーナ部において2本の縫合部を形成し、各縫合部は縫合縁部の交点から下面地部を経て上面地部端部に向けて、マットレス下面部端部の縦・横辺及びマットレス周側面部の上面側端部の縦・横辺に対してそれぞれ直角に交差して直線状に形成され、これら2本の縫合部によってコーナ地部はマットレス周側面の両角部面及びマットレス下面の隅部面に対して面接触するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や介護施設等において使用されるマットレスに着脱可能に装着されるマットレス用シーツ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マットレスにシーツを装着するにあたっては、1枚のシーツ(布地)をマットレス上面に被せた後シーツの前後、左右の端部をマットレスの下面側に挿し込む方法が従来から広く採用されているが、就寝者の寝返り、起き上がり等によって当該シーツはずれ易いという問題があった。そして、シーツずれ防止のために、マットレス全体を覆い被せる袋状のシーツのマットレス下面側を覆う下面地部にマットレスを挿入・取出しを可能にする開口部を設け、その開口部の縁部分を筒状に形成して当該筒内にゴム紐を挿通することにより、ゴム紐の弾性によってマットレスの挿入・取出しの際に開口部が拡張されると共にゴム紐の弾性によってシーツ全体を緊張できるようにしたシーツが知られている。
【0003】
病院や介護施設等において使用されるマットレス用シーツ(以下、単に「シーツ」ともいう。)は、清潔さを保持するためにマットレスから取り外して頻繁にクリーニング処理(洗濯)する必要があり、またクリーニングされたシーツは病院等の従事者等の手によってアイロン掛けしてマットレスに装着されることになる。従って、マットレス用シーツには頻繁に繰り返されるクリーニング処理に対する耐久性、マットレスへの装着作業の負担軽減が求められている。この点前記した下面地部に開口部を設けその開口縁部分にゴム紐を挿通したシーツは、マットレスへの装着作業負担は軽減できるが、頻繁に繰り返されるクリーニング処理やアイロン掛けによってゴム紐の伸縮性が損なわれてシーツが緊張性をなくしてマットレスにフィットしなくなり、シーツの型くずれ、しわが発生するという問題がある。
【0004】
また、特許文献1は、下地部4c、4dが下敷きマットレス2の下面に凹凸なく面接触の状態となるように、シーツ4の下地部同士を縫合してシーツ下面側が四角状に開口する構成にするにあたり該四角状のコーナ部が約80度の角度となるようにして縫合するベッドのシーツ構造を開示している。この文献1に開示された発明は、下敷きマットレスと上敷きマットレスに被せるシーツを袋状に形成して、シーツの裏面部に設けられた開口部のコーナ部の角度を約80度にしてしわ発生の防止を企図したものであるが、シーツが新しい間はその効果が期待できるとしても、繰り返しクリーニング処理されることにより型崩れしてコーナ部の角度が80度以上に拡張されシーツがマットレスにフィットしなくなるという問題がある。
【0005】
特許文献2は図5に示すように、表地部S1aと周側部S1cと裏地部S1bとを備えた伸縮性を有する1枚の布地によって形成され、裏地部に四隅に角部9aを有する縫合縁部2が形成された開口部3が設けられ、周側部は、マットレスMの上面部M1aの四隅部付近における前記表地部の内面に対して裏地部の内面が離間するように該裏地部側に起立したコーナ部10と、コーナ部から縫合縁部の角部9aに向う裏地部にマットレスの裏面部M1bにおける対角線に沿って形成され、裏地部が表地部の内面から離間して空間部が形成されるように側面視で略円弧状に膨出しコーナ部に連続して形成されている膨出部SUを備えた、上面部が四角形状のマットレスに覆うように装着されるマットレス用シーツSが開示されている。膨出部SUは、マットレス下面隅部を覆うシーツ裏地部のコーナ部において、裏地部におけるコーナ部を縫合縁部の角部に向って斜めに裁断し左右に隣り合う縫い代を縫合した1本の縫合部により形成されている(段落番号0014)。
【0006】
病院や介護施設等において現在使用されているマットレスは、サイズが横83cm〜95cm、縦190cm〜195cm、高さ5cm〜20cmで、約10種類程度存在する。本発明の出願人が、特許文献2に開示されたシーツを入手して当該シーツを各種サイズのマットレスへの装着を試みたところ、開口部が設けられた縫合縁部によってマットレスの挿入・取出しは可能であるものの、サイズが横85cm、縦190cmのマットレスにはフィットした。しかしながら、それより大きいサイズのマットレスに使用した場合はコーナ部の縫合部がマットレス上面斜め方向に引かれて突出してしまい上面表面にしわが生じた。その理由は、膨出部は1本の縫合部により形成され、シーツ裏地部の四隅コーナ部にのみ形成されていること、並びにシーツの布地が縦編みされたニット素材により製作されているため一方向のみにしか伸縮しないことによるものと考えられる。従って、各種サイズのマットレスに対する汎用性がなく、各種サイズのマットレスへの使用を確保するために、各サイズに適合するシーツを各別に製作する必要があり、サイズの種類だけシーツを用意して保管する必要がある。
【0007】
また、出願人が特許文献2に開示されたシーツを横85cm、縦190cmのマットレスに装着して繰り返し使用した結果、コーナ部に形成される縫合部にほつれが生じた。その理由は、縫合部が左右から引っ張られることによるものと考えられる。特に洗濯(クリーニング処理)を繰り返し行った後は当該ほつれの発生が顕著であった。
【0008】
特許文献2に開示のシーツは、マットレスに対する着脱が容易であって繰り返しクリーニングされても型崩れし難くマットレスに対して優れたフィット性を有することを企図するものであるが、マットレスに対する着脱が容易であっても、上述したようにマットレス上面におけるしわの発生、型崩れの防止策が不完全であり、また繰り返される使用、洗濯(クリーニング処理)に対する耐久性が不足する等の問題点がある。そこで、マットレス用シーツにはしわの発生、型崩れの防止対策、頻繁に繰り返される使用・クリーニング処理に対する耐久性、マットレスへの装着作業の負担軽減が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−33555号公報
【0010】
【特許文献2】特開2006−326173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上述した事情に鑑みなされたものであり、マットレス上面におけるシーツのしわの発生及びシーツの型崩れの防止、頻繁に繰り返される装着・クリーニング処理に対する耐久性を確保すると共にマットレスへの装着作業負担を軽減可能なマットレス用シーツを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、図1に示すように、一定の高さを有し上面が四角形状のマットレスMに覆うように装着されるマットレス用シーツSであって、マットレス上面部M1aを覆う上面地部S1aと、マットレス下面部M1bの周端面を覆う布地部であって周端部に同一布地を縫合した縫合縁部2が形成された下面地部S1bと、マットレス周側面部M1cを覆う布地部であって四隅のコーナ部10において同一布地を縫合した縫合部を形成したコーナ地部S10が連続形成された周側面地部S1cと、そして前記下面地部に形成され前記マットレスを挿入・取出し可能に開口された開口部3と、を備え、伸縮性を有する1枚の布地によって製造されたマットレス用シーツにおいて、前記縫合縁部2は、四隅のコーナ部における該縫合縁部と2本の縫合部5、6との2つの交点2C1、2C2同士を結ぶ直線状の縫合角部2Cを連続形成して略八角形状を形成し、前記コーナ地部S10は、四隅のコーナ部において、マットレスのコーナ部角の辺M10を挟んで2本の縫合部5、6を形成し、それぞれの縫合部は、前記縫合縁部の2つの交点から下面地部を経て上面地部端部に向けて、マットレス下面部端部の縦辺15L・横辺15B及びマットレス周側面部の上面側端部の縦辺14L・横辺14Bに対してそれぞれ直角に交差して直線状に形成され、これら2本の縫合部によって該コーナ地部はマットレス周側面の両角部面M11及びマットレス下面の隅部面M12に対して面接触するように構成される、マットレス用シーツであることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、図3に示すように、請求項1に記載のマットレス用シーツにおいて、前記コーナ地部S10に形成される2本の縫合部7、8が、前記縫合縁部2の2つの交点2C1、2C2から下面地部S1bを経て上面地部S1a端部に向けて曲線状に形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2のいずれかに記載のマットレス用シーツにおいて、マットレス用シーツの布地が、ポリエステル製で丸編みにより製作され、布地の適宜部位に導電性炭素繊維が編み込まれていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、図2に示すように、一枚の紙に、マットレス上・下面部の縦・横サイズMLs・MBsに相当する四角形状の第1の仮想縦線21L・横線21Bと、マットレス高さサイズMHsに相当する四角形状の第2の仮想縦線22L・横線22Bと、前記マットレス上・下面部サイズに、マットレス高さサイズ並びにマットレスを挿入・取出し可能にする開口部を形成してマットレス下面周端面を覆う下面地部サイズMWsを加算した寸法の四角形状の第3の仮想縦線23L・横線23Bを付し、次いで、四隅のコーナ部20において、前記第1の仮想縦・横線上の2つの交点X3、X4から前記第3の仮想縦・横線上の2つの交点X1、X2に向けて伸延した直線を2本の長辺25L1、25L2とし、交点X1とX2を結ぶ直線を短辺25Sとする略長方形状の切取り線25を付し、前記2つの交点X3、X4のそれぞれから、前記第3の仮想縦・横線上の2つの交点X5、X6に向けて伸延した前記2本の長辺の切取り線と隣り合う直線状の2本の切取り線26、27を付し、前記第3の仮想縦・横線の縦・横辺に対し、四隅のコーナ部を除く部分にそれぞれ切取り線28、29、30、31を付し、これらの切取り線に沿って切り取った所定形状の型紙を作成し、作成した型紙を基準にして伸縮性のある1枚の布地を裁断し、その後、前記略長方形状の切取り線25の一方の長辺25L1に沿って裁断された布地の縫い代部分と前記隣り合う切取り線26に沿って裁断された布地の縫い代部分とを縫合し、そして他方の長辺25L2に沿って裁断された布地の縫い代部分と前記隣り合う切取り線27に沿って裁断された布地の縫い代部分とを縫合することによって、四隅のコーナ地部S10に形成される2本の縫合部5、6を作成し、そして、2本の縫合部が作成された一連の布地の周端部に同一布地を縫合することにより下面地部の縫合縁部2を作成する、ことにより製造するマットレス用シーツの製造方法であることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、図4に示すように、請求項4に記載のマットレス用シーツの製造方法において、四隅のコーナ部20における切取り線35を、前記第1の仮想縦線21L・横線21B上の2つの交点X3、X4から前記第3の仮想縦線23L・横線23B上の2つの交点X1、X2に向けて伸延した曲線を2本の長辺35L1、35L2とし、交点X1とX2を結ぶ直線を短辺35Sとする略卵形状に形成し、そして前記2つの交点X3、X4のそれぞれから前記第3の仮想縦線23L・横線23B上の2つの交点X5、X6に向けて伸延した2本の切取り線36、37を曲線状に形成して製造するマットレス用シーツの製造方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、伸縮性を有する1枚の布地によって製造され、マットレス下面部の周端面を覆う下面地部には中央部にマットレスを挿入・取出し可能に開口された開口部を備え、その周端部に縫合縁部を形成しており、また四隅のコーナ地部には2本の縫合部を形成している。従って、ゴム紐を使用することなく開口部が広がってマットレスへのシーツの着脱を容易にでき、マットレスの四隅コーナ部に当該コーナ地部を合わせながら開口部からマットレス全体に覆い被せるという簡単な作業によって短時間に装着可能となり、マットレスからシーツを取り外す際は逆にコーナ地部を取り剥がしながら開口部からマットレス全体を取り剥がせばよく、労働時間の短縮、労働力の軽減や作業者の労力の省力化を図ることができる。
【0018】
そして、本発明は四隅のコーナ部に2本の縫合部と縫合縁部角部に直線状の縫合角部を形成するために、マットレスにシーツを被せた場合、マットレス周側面の両角部面ではそれぞれの縫合部に向けた張力によってシーツが当該面に面接触することになり、マットレス下面の隅部面では縫合部に向けた張力によってシーツが当該面に面接触することになる。従って、シーツのマットレスへのフィット性を高めてシーツのしわの発生防止、型崩れの防止が可能となり、特に長期療養者の床ずれの予防に繋がる。
【0019】
2本の縫合部は縫合縁部から下面地部を経て上面地部端部に亘って形成されており、またシーツの布地が丸編みにより縫製されているために縦及び横方向に伸縮してシーツの伸縮度が大きく、コーナ部における緊張が緩和されて、基本サイズより大きいサイズのマットレスに装着してもシーツがフィットしてしわの発生を防止することが可能であり、各種サイズのマットレスに対応できる。
【0020】
本発明においては、シーツの布地の適宜部位に導電性炭素繊維が編み込まれているため、静電気の発生を抑えてシーツの装着処理、ベッドメーキング等において不快感がなく快適に作業することが可能となる。さらに、本発明に係るシーツ布地はポリエステル100パーセント素材であるために耐久性に優れ、長期に亘って蒸散作用により常に乾いた状態を維持することができサラッとした使い心地のよいシーツを提供することが可能となる。またアイロン仕上げ作業を必要としないために作業者の労力軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るマットレス用シーツをマットレスに装着した状態を示す図でマットレス下面部側を下方から視た斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るマットレス用シーツの製造方法を説明するための図で図(A)は型紙作成用の展開図であり、図(B)は製造されたシーツをマットレスに装着した状態を示す側面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るマットレス用シーツをマットレスに装着した状態を示す図でマットレス下面部側を下方から視た斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るマットレス用シーツの製造方法を説明するための図で型紙作成用の展開図である。
【図5】従来技術に係るマットレス用シーツをマットレスに装着した状態を示す図でマットレス下面部側を上方から視た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るマットレス用シーツ(以下、単に「シーツ」ともいう。)の実施の形態について添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本発明に係るシーツは、例えば病院や介護施設等において使用されるベッド(架台)に敷設される一定の高さを有し上面が四角形状のマットレス或いはマットレス自体に着脱可能に覆うように装着されるマットレス用シーツであって、伸縮性を有する1枚の布地によって製造されるものである。
【0023】
図1は本発明の第1の実施の形態に係るシーツをマットレスに装着した状態を示す図でマットレス下面部側を下方から視た斜視図である。図1及び後述する図3において、破線はマットレスを、破線で表した斜線部分はマットレス下面部を、実線は本発明に係るシーツを、実線で表した太線部分は縫合縁部及び2本の縫合部をそれぞれ示しており、また同一のコーナ部は四隅に存在するが図右上のコーナ部にそれぞれの部位の符号を付して他のコーナ部の同一部位については符号を省略している。
【0024】
本発明の第1の実施の形態に係るシーツSは、図1、図2に示すように、マットレスMの上面部M1aを覆う上面地部S1aと、マットレス下面部M1bの周端面を覆う下面地部S1bと、マットレス周側面部M1cを覆う周側面地部S1cとにより形成されており、下面地部にはマットレスを挿入・取出し可能にするための開口部3が開口されている。従ってマットレス下面部の中央部分は露出するようになっている。
【0025】
下面地部S1bには周端部に同一布地を縫合した縫合縁部2が形成され、縫合縁部は四隅のコーナ部における縫合縁部と2本の縫合部5、6との2つの交点2C1、2C2同士を結ぶ直線状の縫合角部2Cを連続して形成し略八角形状を形成している。第1及び第2の実施の形態では、縫合縁部は同一布地を縫合した(テープ巻き止め縫い)構成としているが、縫合縁部を布地部の周端部をまつり縫い又は折り返し縫いした構成とすることもできる。また、周側面地部S1cは四隅のコーナ部10において隣り合う同一布地の縫い代を縫合した2本の縫合部5、6を備えたコーナ地部S10を連続して形成している。
【0026】
前記2本の縫合部は、マットレス四隅のコーナ部角の辺M10を挟んで両側に、縫合縁部の2つの交点2C1、2C2から下面地部を経て上面地部端部に向けてそれぞれ形成され、縫合部5は交点2C1からマットレス下面部端部の縦辺15L及びマットレス周側面部の上面側端部の縦辺14Lに対し、縫合部6は交点2C2からマットレス下面部端部の横辺15B及びマットレス周側面部の上面側端部の横辺14Bに対してそれぞれ直角に交差して直線状に形成されている。縫合部5、6及び縫合縁部2はシーツと同一の丸編みにより縫製された布地で少なくとも重畳して作成されるためシーツ本体と同様に縦及び横方向に伸縮するものであり伸びる力への耐久力が大きく縮む力は強力となる。特に、2本の縫合部は縫合縁部から上面地部端部に亘って形成されているためにコーナ部における緊張が緩和されて基本サイズより大きい各種サイズのマットレスに装着できる。
【0027】
このような構成の2本の縫合部によって縫合部付近の布地(コーナ地部)はそれぞれの縫合部方向(矢印方向)に引っ張られてマットレス周側面の両角部面M11に対してシーツが密着して面接触することになり、そして前記縫合縁部の四隅コーナ部に形成される直線状の縫合角部2Cによって付近の布地は縫合角部方向(矢印方向)に引っ張られてマットレス下面の隅部面M12に対してシーツが密着して面接触することになる。このようにマットレス四隅のコーナ部の3面において面接触する構成の本発明に係るシーツは、1本の縫合部により形成される膨出部がマットレス下面を覆うシーツ裏地部のコーナ部にのみに形成される特許文献2に開示されたシーツに比較して、マットレスへのフィット性がさらに向上し、しわの発生、シーツの型崩れを防止することが可能となる。
【0028】
また、本発明に係るシーツは布地の素材としてポリエステル100パーセントを採用しているので、耐久性に優れ、蒸散作用により長期に亘ってシーツが常に乾いた状態を維持してサラッとした使い心地のよいものであり、さらにアイロン仕上げ作業を必要としない。さらに、本発明に係るシーツ布地全体には約2cm間隔で導電性炭素繊維が編み込まれているために、静電気の発生が抑制されシーツの装着・取り外し処理、ベッドメーキング等において不快感を伴うことなく快適に作業することができる。なお、素材、編み方等はこれらに限定されるものではなく、本発明においてはその他の素材や編み方によるシーツを採用することができることはもちろんである。
【0029】
次に、本発明に係る第1の実施の形態に係るシーツの製造方法について図2を参照しながら説明する。図2は本発明の第1の実施形態に係るシーツの製造方法を説明するための図で図(A)は型紙作成用の展開図であり、図(B)は製造されたシーツをマットレスに装着した状態を示す側面図である。図(A)の展開図は説明の便宜上コーナ部を拡大して表しており、破線は仮想線を示している。第1の実施の形態に係るシーツは以下のようにして製造される。
【0030】
先ず一枚の紙(ブランク)を用意して、当該紙の中央部側からマットレス上・下面部の縦サイズMLs・横サイズMBsに相当する四角形状の第1の仮想縦線21L・横線21Bと、マットレス高さサイズMHsに相当する四角形状の第2の仮想縦線22L・横線22Bと、前記マットレス上・下面部サイズにマットレス高さサイズ並びにマットレスを挿入・取出し可能にする開口部を形成してマットレス下面周端面を覆う下面地部サイズMWsを加算した寸法の四角形状の第3の仮想縦線23L・横線23Bとを一枚の紙に付す。
【0031】
次いで、四隅のコーナ部20において、前記第1の仮想線上の2つの交点X3、X4から前記第3の仮想線上の2つの交点X1、X2に向けて直線を伸延して2本の長辺25L1、25L2とし交点X1とX2を結ぶ直線を短辺25Sとする略長方形状の切取り線25を付し、前記2つの交点X3、X4のそれぞれから前記第3の仮想線上の2つの交点X5、X6に向けて伸延した前記2本の長辺と同一長さの2本の直線状の切取り線26、27を付す。そして第3の仮想線の縦・横辺に対して四隅のコーナ部を除く部分にそれぞれ切取り線28、29、30、31を付す。
【0032】
そして、これらの切取り線に沿って切り取った所定形状の型紙を作成し、作成した型紙を基準にして伸縮性のある1枚の布地を裁断する。型紙の素材としては厚紙、薄いプラスチック又は不織布等を利用することができる。また、複数のシーツを製造する場合は1枚の布地を所望枚数重ねて型紙を基準にして裁断することにより製造する。なお、本発明に係る第1及び後述する第2の実施の形態に係るシーツの製造方法を実施するに際しては、横85cm、縦195cmサイズの一般的なマットレスサイズを基本にして、マットレス高さサイズMHsを約24cm、短辺25Sの長さを約8.5cmとして型紙を作成した。このような寸法で作成された型紙を基準にして裁断して製造されたシーツは、横83cm〜95cm、縦190cm〜195cm、高さ5cm〜20cmサイズのマットレスの装着に対応することができた。
【0033】
その後、切取り線25の一方の長辺25L1に沿って裁断された布地の縫い代部分と切取り線26に沿って裁断された布地の縫い代部分とを縫合し、そして他方の長辺25L2に沿って裁断された布地の縫い代部分と切取り線27に沿って裁断された布地の縫い代部分とを縫合することによって、シーツ四隅のコーナ地部S10に形成される2本の縫合部5、6を作成する。
【0034】
そして、2本の縫合部が作成された一連の布地の周端部(四隅の短辺25S、切取り線28、29、30、31に沿って裁断された辺の周端縁部)に同一布地を縫合することにより下面地部の縫合縁部2を作成することにより製造される。なお、縫合縁部2は同一布地を縫合して(テープ巻き止め)作成しているが、縫合縁部の周端部をまつり縫い或いは折り返し縫いして作成することもできる。
【0035】
図2(B)は本発明の第1の実施形態に係るマットレス用シーツの製造方法により製造されたシーツをマットレスに装着した状態を示す側面図である。上方がマットレス下面側で下方が上面側を示し、破線で表した斜線はマットレスMを示している。なお、図2(B)は図1に示す本発明の第1の実施形態に係るシーツの側面図に相当し、また図3に示す本発明の第2の実施形態に係るシーツの側面図も略同様である。
【0036】
図2(A)で説明した製造方法により製造されたシーツをマットレスMに被せた場合、図2(B)に示すように、図上方のマットレス下面側にはマットレス下面部の周端面を覆う下面地部S1bが縫合角部2Cを連続形成する縫合縁部2として表れ、図下方のマットレス上面側にはマットレスの上面部を覆う上面地部S1aが両端部側に一方の縫合部5の縫合縁部2に向けて伸延する起点となる交点X3が表れ、図左右端側にはマットレス周側面部を覆う周側面地部S1cが表れ、その内側に前記交点X3と縫合縁部の交点2C1とを結ぶ直線状の縫合部5が表れている。
【0037】
本発明の第2の実施形態に係るシーツについて図3を参照しながら説明するが、ここでは第1の実施の形態に係るシーツと異なる構成について説明し同一の構成部分については説明を省略する。図3は本発明の第2の実施形態に係るシーツをマットレスに装着した状態を示す図でマットレス下面部側を下方から視た斜視図である。図1と同一部位の符号は省略しており、破線、実線、図右上のコーナ部の表示については図1と同様である。
【0038】
本発明の第2の実施の形態に係るシーツは、図3、図4に示すように、第1の実施の形態に係るシーツにおけるコーナ地部S10に形成される2本の縫合部7、8が、縫合縁部2の2つの交点2C1、2C2から下面地部S1bを経て上面地部S1a端部に向けて曲線状に形成されている。
【0039】
縫合部7、8は、コーナ部においてマットレス面から離間して空間部を形成するように外側に略円弧状に膨出して形成されるが、本実施の形態に係るシーツをマットレスに被せた場合、縫合部はコーナ部角の辺M10を挟んで両側に2本形成され、縫合縁部から上面地部S1a端部に至るまで形成されているので、縫合部付近の布地(コーナ地部)はそれぞれの縫合部方向(矢印方向)に引っ張られてマットレス周側面の両角部面M11に対してシーツが面接触することになり、そして縫合角部2Cによって付近の布地は縫合角部方向(矢印方向)に引っ張られてマットレス下面の隅部面M12に対してシーツが面接触することになる。従って、第1の実施の形態に係るシーツと同様にマットレス四隅のコーナ部の3面において面接触するためにマットレスへのフィット性が高く、しわの発生、シーツの型崩れを防止することが可能となる。
【0040】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るシーツの製造方法について図4を参照しながら説明する。図4は本発明の第2の実施形態に係るマットレス用シーツの製造方法を説明するための図で型紙作成用の展開図である。展開図は図2と同様に説明の便宜上コーナ部を拡大して表しており破線は仮想線を示している。また図2と同一部位の符号は省略している。また、ここでは第1の実施の形態に係るシーツの製造方法と異なる構成について説明し同一の構成部分については説明を省略する。
【0041】
本発明の第2の実施の形態に係るシーツの製造方法は、図3、図4に示すように、第1の実施の形態に係るシーツの製造方法における四隅のコーナ部20における切取り線35を、第1の仮想縦・横線上の2つの交点X3、X4から第3の仮想縦・横線上の2つの交点X1、X2に向けて伸延した曲線を2本の長辺35L1、35L2とし、交点X1とX2を結ぶ直線を短辺35Sとする略卵形状に形成し、そして前記2つの交点X3、X4のそれぞれから第3の仮想縦・横線上の2つの交点X5、X6に向けて伸延する2本の切取り線36、37を曲線状に形成することにより2本の縫合部7、8を作成して、マットレス用シーツを製造する方法である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係るマットレス用シーツは、マットレスに対するフィット性が高くシーツのしわの発生及びシーツの型崩れの防止、繰り返される挿入・取出し処理やクリーニング処理に対する耐久性を確保できると共にマットレスへの装着作業が簡単であるので、病院や介護施設等において使用されるマットレスのみでなく、一般家庭において家族の介護や訪問介護を受ける被介護者用マットレス、さらには一般の就寝用マットレスに装着するシーツとして広く利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
M マットレス
M1a マットレス上面部
M1b マットレス下面部
M1c マットレス周側面部
S マットレス用シーツ(シーツ)
S1a 上面地部
S1b 下面地部
S1c 周側面地部
S10 コーナ地部
2 縫合縁部
2C 縫合角部
2C1、2C2 縫合部との交点
3 開口部
5、6、7、8 縫合部
10、20 コーナ部
M10 マットレスコーナ部角の辺
M11 マットレス周側面の角部面
M12 マットレス下面の隅部面
14L マットレス周側面部の上面側端部の縦辺
14B マットレス周側面部の上面側端部の横辺
15L マットレス下面部端部の縦辺
15B マットレス下面部端部の横辺
21L 第1の仮想縦線
21B 第1の仮想横線
22L 第2の仮想縦線
22B 第2の仮想横線
23L 第3の仮想縦線
23B 第3の仮想横線
MLs マットレス上面部の縦サイズ
MBs マットレス下面部の横サイズ
MHs マットレス高さサイズ
MWs 下面地部サイズ
X1、X5 第3の仮想縦線上の交点
X2、X6 第3の仮想横線上の交点
X3 第1の仮想縦線上の交点
X4 第1の仮想横線上の
25L1、35L1、25L2、35L2 長辺
25S、35S 短辺
25、26、27、28、29、30、31、35、36、37 切取り線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の高さを有し上面が四角形状のマットレスに覆うように装着されるマットレス用シーツであって、マットレス上面部を覆う上面地部と、マットレス下面部の周端面を覆う布地部であって周端部に同一布地を縫合した縫合縁部が形成された下面地部と、マットレス周側面部を覆う布地部であって四隅のコーナ部において同一布地を縫合した縫合部を形成したコーナ地部が連続形成された周側面地部と、そして前記下面地部に形成され前記マットレスを挿入・取出し可能に開口された開口部と、を備え、伸縮性を有する1枚の布地によって製造されたマットレス用シーツにおいて、
前記縫合縁部は、四隅のコーナ部における該縫合縁部と2本の縫合部との2つの交点同士を結ぶ直線状の縫合角部を連続形成して略八角形状を形成し、
前記コーナ地部は、四隅のコーナ部において、マットレスのコーナ部角の辺を挟んで2本の縫合部を形成し、それぞれの縫合部は、前記縫合縁部の2つの交点から下面地部を経て上面地部端部に向けて、マットレス下面部端部の縦・横辺及びマットレス周側面部の上面側端部の縦・横辺に対してそれぞれ直角に交差して直線状に形成され、これら2本の縫合部によって該コーナ地部はマットレス周側面の両角部面およびマットレス下面の隅部面に対して面接触するように構成される、ことを特徴とするマットレス用シーツ。
【請求項2】
前記コーナ地部に形成される2本の縫合部が、前記縫合縁部の2つの交点から下面地部を経て上面地部端部に向けて曲線状に形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のマットレス用シーツ。
【請求項3】
前記マットレス用シーツの布地が、ポリエステル製で丸編みにより製作され、布地の適宜部位に導電性炭素繊維が編み込まれている、ことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のマットレス用シーツ。
【請求項4】
一枚の紙に、マットレス上・下面部の縦・横サイズに相当する四角形状の第1の仮想縦・横線と、マットレス高さサイズに相当する四角形状の第2の仮想縦・横線と、前記マットレス上・下面部サイズに、マットレス高さサイズ並びにマットレスを挿入・取出し可能にする開口部を形成してマットレス下面周端面を覆う下面地部サイズを加算した寸法の四角形状の第3の仮想縦・横線を付し、
次いで、四隅のコーナ部において、前記第1の仮想縦・横線上の2つの交点X3、X4から前記第3の仮想縦・横線上の2つの交点X1、X2に向けて伸延した直線を2本の長辺とし、交点X1とX2を結ぶ直線を短辺とする略長方形状の切取り線を付し、
前記2つの交点X3、X4のそれぞれから、前記第3の仮想縦・横線上の2つの交点X5、X6に向けて伸延した前記2本の長辺の切取り線と隣り合う直線状の2本の切取り線を付し、
前記第3の仮想縦・横線の縦・横辺に対し、四隅のコーナ部を除く部分にそれぞれ切取り線を付し、
これらの切取り線に沿って切り取った所定形状の型紙を作成し、
作成した型紙を基準にして伸縮性のある1枚の布地を裁断し、
その後、前記略長方形状の切取り線の一方の長辺に沿って裁断された布地の縫い代部分と前記隣り合う切取り線に沿って裁断された布地の縫い代部分とを縫合し、そして他方の長辺に沿って裁断された布地の縫い代部分と前記隣り合う切取り線に沿って裁断された布地の縫い代部分とを縫合することによって、四隅のコーナ地部に形成される2本の縫合部を作成し、
そして、2本の縫合部が作成された一連の布地の周端部に同一布地を縫合することにより下面地部の縫合縁部を作成する、
ことにより製造することを特徴とするマットレス用シーツの製造方法。
【請求項5】
四隅のコーナ部における切取り線を、前記第1の仮想縦・横線上の2つの交点X3、X4から前記第3の仮想縦・横線上の2つの交点X1、X2に向けて伸延した曲線を2本の長辺とし、交点X1とX2を結ぶ直線を短辺とする略卵形状に形成し、そして前記2つの交点X3、X4のそれぞれから前記第3の仮想縦・横線上の2つの交点X5、X6に向けて伸延した2本の切取り線を曲線状に形成して製造する、ことを特徴とする請求項4に記載のマットレス用シーツの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−94368(P2013−94368A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239001(P2011−239001)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【特許番号】特許第5026615号(P5026615)
【特許公報発行日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(509110471)株式会社信公 (1)
【Fターム(参考)】