説明

マットレス用ポリウレタンフォームおよび該ポリウレタンフォームを用いてなるマットレス

【課題】良好な寝心地を発揮しながらも、製造が簡便で、環境に優しいポリウレタンフォームおよびマットレスを提供すること。
【解決手段】ポリオール成分、ポリイソシアネート成分および発泡剤を含む原料組成物を発泡および反応させて得られるポリウレタンフォームであって、ポリオール成分が(a1)ひまし油;(a2)平均官能基数2.5〜4.5および水酸基価40〜60mgKOH/gのポリエーテルポリオールおよび/または平均官能基数2.5〜4.0および水酸基価25〜50mgKOH/gのポリマーポリオール;を含み、ひまし油(a1)をポリオール成分全体に対して25〜75重量%およびポリオール(a2)をポリオール成分全体に対して25〜75重量%含むことを特徴とするマットレス用ポリウレタンフォーム、および該ポリウレタンフォームからなるマットレス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリウレタンフォーム、特にマットレス用ポリウレタンフォーム、および該ポリウレタンフォームを用いてなるマットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、寝具用マットレスとしてポリウレタンフォームを用いて製造されたものが知られている。寝具用マットレスには、寝心地として、人が寝て沈み込んだ部位を適度な力で包み込むフィット感が求められている。ポリウレタンフォームを用いた寝具用マットレスとしては、そのような寝心地の観点から、硬度または/および弾性の異なる2層以上のポリウレタンフォーム層からなる積層型マットレスが提案されている(特許文献1,2)。
【0003】
しかしながら上記のような積層型マットレスは、多層構造を有し、層間を接着剤で結合するため、製造が煩雑であった。しかも、各ポリウレタンフォーム層は原料として合成物質を用い、また接着剤が使用されるため、環境負荷が比較的大きかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−34730号公報
【特許文献2】特開2002−238708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、良好な寝心地が得られ、しかも製造が簡便で、環境に優しいポリウレタンフォームおよび単層型マットレスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分および発泡剤を含む原料組成物を発泡および反応させて得られるポリウレタンフォームであって、ポリオール成分が、
(a1)ひまし油;および
(a2)平均官能基数2.5〜4.5および水酸基価40〜60mgKOH/gのポリエーテルポリオールおよび/または平均官能基数2.5〜4.0および水酸基価25〜50mgKOH/gのポリマーポリオール;
を含み、ひまし油(a1)をポリオール成分全体に対して25〜75重量%およびポリオール(a2)をポリオール成分全体に対して25〜75重量%含むことを特徴とするマットレス用ポリウレタンフォーム、および該ポリウレタンフォームからなるマットレスに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリウレタンフォームは、製造が簡便で、環境に優しく、しかも良好な寝心地を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のポリウレタンフォームは、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分および発泡剤、ならびに所望により、触媒、整泡剤を含む原料組成物を発泡および反応させて得られるものである。
【0009】
<ポリオール成分>
ポリオール成分は少なくともひまし油(a1)およびポリオール(a2)を含む。
【0010】
ひまし油(a1)は脂肪酸とグリセリンとのエステルであって、脂肪酸の約90%がリシノレイン酸である植物油である。リシノレイン酸は水酸基を有する不飽和脂肪酸であるため、ひまし油は未変性の状態で150〜170mgKOH/g、特に160mgKOH/g前後の水酸基価を有しうるポリエステルポリオールである。
【0011】
ひまし油(a1)は、精製ひまし油、半精製ひまし油、または未精製ひまし油等が使用されてよいが、精製ひまし油を使用することが好ましい。また、脱臭工程を経たものがより好ましい。ひまし油を変性し、水酸基価を100mgKOH/未満、例えば30〜70mgKOH/g程度にしたようなポリオールも見られるが、突き上げ感による寝心地の悪化が生じてしまい、特に単層型マットレスに用いるには好ましくない。なお、上記ひまし油を用いると、エネルギーを使用する変性工程を要さないので、環境面で好ましく、フォームの製造がより一層簡便になる。
【0012】
ひまし油(a1)は市販品を使用することができる。具体的には、ひまし油ポリオールであるH−30(伊藤製油社製、水酸基価:約160mgKOH/g、脱臭品)、ひまし油ポリオールであるLAV(豊国製油社製、水酸基価:約160mgKOH/g)等が挙げられる。
【0013】
ひまし油(a1)のポリオール成分全体に対する含有量は25〜75重量%であり、好ましくは40〜65重量%である。当該含有量が多すぎると、ポリウレタンフォームの反発弾性が低下し、反発が過度に小さくなるので、底着き感が生じ、その結果、フィット感が得られないため、寝心地が悪くなる。当該含有量が少なすぎると、ポリウレタンフォームの反発弾性が高くなり、反発が過度に大きくなるので、突き上げ感が生じ、その結果、フィット感が得られないため、寝心地が悪くなる。環境負荷軽減の目的のためにはひまし油をより多く入れる方がよいため、特に好ましい含有量は、45〜60重量%である。ひまし油(a1)は2種類以上で含有されてよく、その場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0014】
ポリオール(a2)は、平均官能基数2.5〜4.5、好ましくは2.5〜3.5および水酸基価40〜60mgKOH/g、好ましくは50〜60mgKOH/gのポリエーテルポリオール(a2−1)および/または平均官能基数2.5〜4.0、好ましくは2.7〜3.7および水酸基価25〜50mgKOH/g、好ましくは30〜45mgKOH/gのポリマーポリオール(a2−2)である。これにより、良好な寝心地のポリウレタンフォームが得られる。ポリエーテルポリオール(a2−1)の平均官能基数が2.5未満の場合、硬さ不足となり、しかも圧縮残留ひずみが悪化し、いわゆるヘタリが大きくなってしまう。4.5を越える場合、ウレタンフォームを発泡させることが難しくなり、生産性が低下すると共に、伸びや引張り強度の物性が低下してしまう。ポリエーテルポリオール(a2−1)の水酸基価が40未満の場合、十分な硬さが得難い上、ポリオールの汎用性も低く、高価となり、60を越える場合、発泡安定性が悪く、良好なフォームを得にくくなる。ポリマーポリオール(a2−2)の平均官能基数が2.5未満の場合、硬さ不足となり、しかも圧縮残留ひずみが悪化し、いわゆるヘタリが大きくなってしまう。4.0を越える場合、ウレタンフォームを発泡させることが難しくなり、生産性が低下すると共に、伸びや引張り強度の物性が低下してしまう。ポリマーポリオール(a2−2)の水酸基価が25未満の場合、高粘度となり生産性が低くなり、50を越える場合、ポリマー含量が低くなり目的とする硬さのフォームを得ることは困難になる。
【0015】
本明細書中、平均官能基数とは1分子当たりの水酸基の数の平均値である。なお、原料の平均官能基数から計算される理論値を、官能基数であると見なしたものである。
水酸基価はJIS K 1557に準拠して測定された値を用いているが、上記規格に準拠して測定されなければならないというわけではなく、原理・原則が当該規格に従う限り、いかなる方法によって測定されてもよい。
【0016】
ポリエーテルポリオール(a2−1)としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、蔗糖、プロピレングリコール等の多価アルコールまたは平均官能基数が上記ポリエーテルポリオール(a2−1)の平均官能基数の範囲内になるよう混合された多価アルコール混合物に、プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加してなる化合物が使用される。
【0017】
ポリエーテルポリオール(a2−1)は、特に、グリセリンにプロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加してなる平均官能基数3、数平均分子量3000、水酸基価56のポリオールである、いわゆる3000番タイプのポリオールが好ましい。
【0018】
数平均分子量は、JIS K 1557に準拠して測定された水酸基価換算分子量を用いている。
【0019】
ポリエーテルポリオール(a2−1)は市販品として入手することができる。市販品としては、例えば、いわゆる3000番タイプ(平均官能基数3、水酸基価56、分子量3000)のポリオールが使用できる。
【0020】
ポリマーポリオール(a2−2)は、ポリエーテルポリオールにポリマーを微分散させたものである。分散させるポリマーとしては、例えば、アクリロニトリル、スチレン、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート等のビニルモノマーをモノマー成分とするホモポリマー又はコポリマー等の付加重合系ポリマーが挙げられ、中でも、スチレンのホモポリマー及びアクリロニトリルとスチレンのコポリマーから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。上記ポリマーが分散されるポリエーテルポリオールは、多価アルコールにアルキレンオキシドを付加重合させて得られるものであり、多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が用いられ、アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が用いられる。そのようなポリエーテルポリオールは、中でも、グリセリンにプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドを付加した数平均分子量2000〜4000、水酸基価40〜60程度のポリエーテルポリオールが好適に使用することができる。なお、ポリマーポリオール(a2−2)におけるポリマーの含有量は通常20〜50重量%程度である。
【0021】
ポリマーポリオール(a2−2)は、例えば、「POP−45」(三井化学社製)、「POP−3943」(ダウケミカル社製)等の市販品として入手することができる。
【0022】
ポリオール(a2)のポリオール成分全体に対する含有量は25〜75重量%である。特にポリエーテルポリオール(a2−1)を単独で用いる場合、その含有量は40〜60重量%が好ましい。ポリマーポリオール(a2−2)を単独で用いる場合、硬度が上昇しすぎる場合があるため、その含有量は30〜40重量%程度が好ましい。ポリオール(a2)の含有量が多すぎると、ポリウレタンフォームの反発弾性が高くなり、反発が過度に大きくなるので、突き上げ感が生じ、その結果、フィット感が得られないため、寝心地が悪くなる。当該含有量が少なすぎると、ポリウレタンフォームの反発弾性が低下し、反発が過度に小さくなるので、底着き感が生じ、その結果、フィット感が得られないため、寝心地が悪くなる。ポリオール(a2)は2種類以上のポリオールが含有されてよく、その場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0023】
ポリオール(a2)としてはポリエーテルポリオール(a2−1)を単独で用いることが好ましい。
【0024】
ポリオール成分には、上記したひまし油(a1)およびポリオール(a2)以外に、他のポリオールが含有されてもよい。他のポリオールとして、例えば、低分子量ポリオール、ダイマー酸系ポリオール、フタル酸系ポリオール等が挙げられる。これらのうち、低分子量ポリオールは、いわゆる架橋剤として、少量でフォームの硬さを調整でき、好ましく使用される。
【0025】
低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコールが挙げられる。好ましい低分子量ポリオールは、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールである。
【0026】
当該他のポリオールのポリオール成分全体に対する含有量は10重量%以下、特に0.5〜5重量%であり、好ましくは1〜3重量%である。当該他のポリオールは2種類以上の化合物が含有されてよく、その場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0027】
<ポリイソシアネート成分>
ポリイソシアネート成分は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。ポリイソシアネート成分としては、通常、芳香族系ポリイソシアネートが使用され、具体的には2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、およびその混合物、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート等が挙げられる。好ましくは、2,4−トリレンジイソシアネートおよび/または2,6−トリレンジイソシアネートであり、市販の、TDI−80及びTDI−65として入手可能である。
【0028】
ポリイソシアネート成分は、原料組成物中における全イソシアネート基と全水酸基とのNCO/OH当量比が1.00〜1.20、好ましくは1.05〜1.15となるような量で含まれる。なお、全水酸基の数には、ポリオール成分における水酸基の数だけでなく、後述する発泡剤として水が使用される場合における水の水酸基の数も含まれる。
【0029】
<発泡剤>
発泡剤としては、ポリウレタンフォームの分野で従来から発泡剤として使用されているものが使用可能である。発泡剤の具体例として、例えば、水等の化学発泡剤、メチレンクロライド、炭化水素類(シクロペンタン等)、炭酸ガス、液化炭酸ガス等の物理発泡剤が挙げられる。環境的には水のみを用いるのが好ましい。水はポリイソシアネートと反応して炭酸ガスを発生することにより化学発泡剤として機能する。発泡剤の量は、ポリオール成分100重量部に対して1〜7重量部が好ましく、フォームに好ましい密度を現出させる観点からは、2〜5重量部が好ましい。
【0030】
<触媒>
触媒としては、ポリウレタンフォームの分野で従来から知られているアミン系、錫系等の触媒を用いることができる。アミン系触媒としては、例えばトリメチルアミンエチルピペラジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル等の3級アミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、ジメチルエタノールアミンなどのアルカノールアミン等を挙げることができる。錫系触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、スタナスオクテート等を挙げることができる。触媒の使用量は、ポリオール成分100重量部に対して、通常0.01〜8重量部程度である。2種類以上の触媒が使用される場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0031】
<整泡剤>
整泡剤としては、ポリウレタンフォーム製造の分野で一般に軟質スラブ、軟質モールド用として用いられる、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサン・ポリアルキレン共重合体、ポリアルキレン側鎖を有するポリアルケニルシロキサン等のシリコーン系界面活性剤を使用するのが好ましい。整泡剤の使用量は、ポリオール成分100重量部に対して、通常0.2〜6重量部程度である。整泡剤は2種類以上の化合物が含有されてよく、その場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0032】
<その他>
原料組成物には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤等の添加剤がさらに含有されてもよい。
【0033】
<ポリウレタンフォームの製造方法>
本発明のポリウレタンフォームは、前記原料組成物を、ワンショット法、モールド法などの公知の製造方法によって順次、反応および発泡させて得ることができる。特に本発明のポリウレタンフォームをマットレスの製造に使用する場合、該マットレスはワンショット法で製造されることが好ましい。ワンショット法においては、各成分をミキシングチャンバーに同時に加え、該各成分の添加と同時に強力な撹拌により混合することによって、ポリウレタンフォームが製造される。得られたポリウレタンフォームスラブは、所望の厚みにスライスされることによってシート形状に加工され、マットレス用に供される。
【0034】
本発明のポリウレタンフォームにおいて、環境面の観点から、原料組成物全体に占める植物由来物質の割合(植物度)は大きいほど好ましく、30〜50重量%程度が好ましい。前記した原料のうち、植物由来物質に包含される原料は、ひまし油である。
【0035】
本明細書中、植物度(%)は以下の式により算出した値を用いている。
{(植物由来原料の合計重量)/(全原料の合計重量)}×100
【0036】
<ポリウレタンフォーム・マットレス>
本発明のポリウレタンフォームは、前記ひまし油を用いることにより、中程度の反発特性を有するものとして簡便に製造でき、その結果として良好な寝心地が得られ、かつ製造が簡便で、環境に易しいマットレス、特に単層型マットレスを提供できる。中程度の反発特性を有するとは、反発特性が適度である、という意味であり、詳しくは後述する反発弾性および25%硬度を有することを意味する。その結果として、鉄球を静置したとき、所定の沈み込み変位を示し、良好な寝心地が得られる。
【0037】
本発明のポリウレタンフォームの反発弾性は15〜30%であり、好ましくは17〜27%である。反発弾性が小さすぎると、反発が過度に小さくなるので、底着き感が生じ、その結果、フィット感が得られないため、寝心地が悪くなる。反発弾性が高すぎると、反発が過度に大きくなるので、突き上げ感が生じ、その結果、フィット感が得られないため、寝心地が悪くなる。
本発明のポリウレタンフォームの25%硬度は80〜140Nであり、好ましくは80〜130Nである。硬度が小さすぎると、身体が過度に沈むので、底着き感が生じ、その結果、フィット感が得られないため、寝心地が悪くなる。硬度が高すぎると、身体が十分に沈まず、フィット感が得られないため、寝心地が悪くなる。
本発明のポリウレタンフォームに鉄球(直径9cm、重量2.9kg)を静置したときの沈み込み変位は20〜40mmであり、特に好ましくは25〜39mmである。沈み込み変位が小さすぎると、マットレスとしての突き上げ感が強くなり、体圧分散性が低下する。沈み込み変位が大きすぎると、体圧分散性には優れるものの、底付き感が生じ、かえって寝心地が悪くなる。
【0038】
なお、上記物性のポリウレタンフォームは、従来使用されている石油系のポリオールを用いたのでは製造することが困難であるが、ひまし油、特に水酸基価160前後の未変成タイプの精製ひまし油と特定のポリオールとを併用することにより、極めて容易に上記物性のポリウレタンフォームが得られる。また、未変性ひまし油を用いることで、環境面でもさらに貢献できることを見出したことが特に重要である。
【0039】
本発明のポリウレタンフォームはマットレスの製造に使用できる。本発明のポリウレタンフォームは、通常の積層型のマットレスの一部として使用することも可能であるが、特にポリウレタンフォームが2層以上積層されることなく、単層型(ウレタンフォーム単層)マットレスとして好ましく使用できる。本発明の単層型マットレスは前述したように、積層型のような接着工程を必要とすることなく、マットレスとしての製造が簡便であり、さらに積層型と同様な沈み込み量を発現できる。マットレス、特にマットレス用ポリウレタンフォームは、通常、厚みが30〜150mmであり、単層用として好ましくは40〜120mm、より好ましくは50〜100mmのシート形状を有するものである。フォーム表面にはプロファイル加工のような凹凸加工を施しても良い。
【0040】
マットレスは、通常、綿やポリエステル等の生地素材からなる袋体、いわゆるカバー材にマットレス用ポリウレタンフォームを収容させることにより得られるものである。なお、内カバーと外カバーの二重カバーとするような態様もあり得る。例えば、本発明のポリウレタンフォームを伸縮性および通気性を有する内袋材に挿入し、それを外袋材の中に詰め込むことにより、本発明のポリウレタンフォームを用いたマットレスが得られるのである。
【実施例】
【0041】
[実施例1〜7/比較例1〜2]
表1または表2に示す成分(ポリイソシアネート成分を除く)を混合したポリオール系成分とポリイソシアネート成分とをワンショット法により反応及び発泡させ、長尺のポリウレタンフォームスラブを製造した。当該スラブを、所定のシート形状に切削加工した。
【0042】
[評価]
ポリウレタンフォームを以下の項目について評価した。
<密度>
JIS K 7222の見掛け密度を測定する方法に準拠して求めた。
【0043】
<25%硬度>
JIS K6400−2 D法に準拠して測定した。
<反発弾性>
JIS K6400−3に準拠して測定した。
【0044】
<沈み込み変位>
ポリウレタンフォームを300×300×50mm寸法に切り出し、マットを得た。24℃、50%RH環境下、実験台の上にマットを置き、当該マットの上に、直径9cmの鉄球(2.9kg)を静置した。その後、1分間放置した時の鉄球の沈み込み変位を測定した。沈み込み変位は、鉄球におけるマット内に沈み込んだ部分の鉛直方向長さである。なお、参考例1,2においては、後述の方法により製造したマットを評価した。
【0045】
反発弾性、25%硬度および沈み込み変位がそれぞれ、前記した範囲内であると、良好な寝心地(フィット感)が得られることがわかる。
反発弾性、25%硬度および沈み込み変位がそれぞれ、前記した好ましい範囲内であると、寝心地(フィット感)がより一層向上することがわかる。
【0046】
[参考例1]
市販の高反発タイプポリウレタンフォーム(倉敷紡績社製「クララフォーム451」)を高反発性ポリウレタンフォームとして用いた。市販の低反発ポリウレタンフォーム(倉敷紡績社製「クララフォーム501EA」)を低反発性ポリウレタンフォームとして用いた。なお、それぞれの物性は表1に示す。
下層としての高反発性ポリウレタンフォーム(厚み40mm)に、上層としての低反発性ポリウレタンフォーム(厚み10mm)を、ゴム系接着剤を用いて貼り付け、300×300×50mm寸法のマットを得た。
参考例1で用いた高反発性ポリウレタンフォームおよび低反発性ポリウレタンフォームの上記物性値を表3に示す。
【0047】
[参考例2]
下層としての高反発性ポリウレタンフォーム(厚み30mm)に、上層としての低反発性ポリウレタンフォーム(厚み20mm)を貼り付けたこと以外、参考例1と同様の方法によりマットを得た。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
(1)URIC H−30:伊藤製油社製のひまし油系ポリオールであって、未変性ひまし油精製品である。
(2)ポリエーテルポリオール:グリセリンにプロピレンオキシドを付加した、いわゆる3000番タイプのポリエーテルポリオール(水酸基価:56、平均官能基数:3、数平均分子量:3000)。
(3)ポリマーポリオール:三井化学社製 POP−45
(4)DPG:ジプロピレングリコール(水酸基価836:低分子量ポリオール)。
(5)TDI−80:トリレンジイソシアネート(2,4体:80%、2,6体:20%)。
(6)MR:東ソー社製のアミン触媒 TOYOCAT−MR (N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン)。
(7)U−28:日東化成社製スズ系触媒。
(8)L−638:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製シリコン整泡剤。
(9)SRX280A:東レ・ダウコーニング社製シリコン整泡剤。
(10)原料組成物全体におけるNCO/OH比率。
(11)原料組成物全体に占める植物由来原料の割合。
【0052】
上記実施例1〜7のポリウレタンフォームについて、製造したポリウレタンフォームスラブから1000×2000×100mmのシート状に加工し、ポリエステル製カバー材の中に挿入し、単層型マットレスを得た。それぞれの寝心地感は、いわゆる積層型マットレスの寝心地感と同程度のものであり、優れたものであった。特に沈み込み量が25〜39mmのものについては、非常に優れた寝心地を有するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分、ポリイソシアネート成分および発泡剤を含む原料組成物を発泡および反応させて得られるポリウレタンフォームであって、ポリオール成分が、
(a1)ひまし油;および
(a2)平均官能基数2.5〜4.5および水酸基価40〜60mgKOH/gのポリエーテルポリオールおよび/または平均官能基数2.5〜4.0および水酸基価25〜50mgKOH/gのポリマーポリオール;
を含み、ひまし油(a1)をポリオール成分全体に対して25〜75重量%およびポリオール(a2)をポリオール成分全体に対して25〜75重量%含むことを特徴とするマットレス用ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
ポリウレタンフォームが15〜30%の反発弾性および80〜140Nの25%硬度を有する請求項1に記載のマットレス用ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
原料組成物全体に占める植物由来物質の割合(植物度)が30〜50重量%である請求項1または2に記載のマットレス用ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
ポリイソシアネート成分が、原料組成物中における全イソシアネート基と全水酸基とのNCO/OH当量比が1.05〜1.15となるような量で含まれる請求項1〜3のいずれかに記載のマットレス用ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のマットレス用ポリウレタンフォームを用いてなるマットレス。
【請求項6】
マットレスが単層型マットレスである請求項5に記載のマットレス。
【請求項7】
ポリウレタンフォームが30〜150mmの厚みを有する請求項5または6に記載のマットレス。

【公開番号】特開2012−46668(P2012−46668A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191085(P2010−191085)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】