説明

マットレス用ポリウレタンフォーム

【課題】密度及び硬度が低く柔軟であり、通気性が高く、圧縮永久歪が小さいマットレス用ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】ポリオール、ポリイソシアネート及び発泡剤を含有するフォーム原料を反応させてなり、ポリオールは、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60質量%以上であるポリオール(a)を含有し、ポリオールを100質量%とした場合に、ポリオール(a)は3〜22質量%であり、発泡剤として水と液化二酸化炭素とが併用され、イソシアネートインデックスが85〜105である。また、ポリオールは、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が30質量%以下であるポリオール(b)を含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレス用ポリウレタンフォームに関する。更に詳しくは、本発明は、密度及び硬度が低く柔軟であり、通気性が高く、且つ圧縮永久歪が小さいマットレス用ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マットレス用ポリウレタンフォームとしては、風合いがよく、むれ難い等の理由で、低密度、低硬度(低反発性)であり、且つ通気性が高い製品が用いられている。また、長期の使用によっても、底付き感のない、ヘタリ難いマットレスとするため、圧縮残留歪が小さいポリウレタンフォームが多用されている。
【0003】
軽量なポリウレタンフォーム、例えば、密度20kg/m以下のフォームを製造する場合、泡化反応を促進するため、ポリオールに、より多量の水(発泡剤)とポリイソシアネートとが配合されることが多い。また、多量の水を配合すると発熱が激しいため、フォーム原料に二水石膏等の粉黛を混入させて減熱させる配合処方もある。更に、通常の処方では、硬度が低く、通気性が高いフォームを製造することは難しく、例えば、ASTM D 3574により測定した25%ILD硬度は50N程度が下限値である。一方、JIS K 6400(B法)により測定した通気量は150リットル/分程度が上限値であり、より高い通気性を確保するためには、除膜処理をする必要がある。
【0004】
また、軽量で弾力性があるのみならず、優れた通気性、保温性を有している等の特性を有するマットレス芯材が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このマットレス芯材には、軟質ポリウレタンフォームが用いられており、板面の表裏に、複数の突起体が、表裏対称となるように突設されていることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−61789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、多量の水とポリイソシアネートとを含有するフォーム原料を用いた場合、フォームの内部温度が170℃を超えるほどの反応熱が発生し、夏場等には火災が発生する危険性があるため、発熱が抑えられる配合処方にする必要がある。また、発熱を抑えるため、水を減量し、フロン、メチレンクロライド等の発泡助剤を添加する処方もあるが、いずれも環境負荷物質に指定されており問題である。例えば、ポリウレタン工業会の自主規制基準では、製造されたフォームに残留する有害物質であるジクロロメタンの残留量が3μg/g以下と規定されており、安全性の観点で、マットレス等の民生品の配合処方としては採用することができない。更に、減熱のため粉黛を用いた場合は、フォームの歪特性が著しく損なわれる等、物性低下の問題がある。この圧縮永久歪が大きい等の物性低下は、マットレスとしての底付き感及びヘタリに繋がるため、マットレス用ポリウレタンフォームの配合処方としては採用することができない。
【0007】
また、通気性を高めるため除膜処理した場合は、フォームから多量の揮発性有機化合物(VOC)が発生するという問題がある。
【0008】
更に、軽量であり、且つ優れた通気性等を有するマットレス芯材及びそれを用いたマットレスとするため、特許文献1に記載されているように、構造面の観点で種々の改良がなされている。しかし、構造面ばかりでなく、フォーム原料の配合処方の観点での検討による更なる改良、開発も必要とされている。
【0009】
本発明は、上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、密度及び硬度が低く柔軟であり、通気性が高く、且つ圧縮永久歪が小さいマットレス用ポリウレタンフォーム(軟質フォームであり、以下、「マットレス用軟質フォーム」ということもある。)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下のとおりである。
1.ポリオール、ポリイソシアネート及び発泡剤を含有するフォーム原料を反応させてなるマットレス用ポリウレタンフォームであって、上記ポリオールは、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60質量%以上であるポリオール(a)を含有し、上記ポリオールを100質量%とした場合に、上記ポリオール(a)は3〜22質量%であり、上記発泡剤として水と液化二酸化炭素とが併用され、イソシアネートインデックスが85〜105であることを特徴とするマットレス用ポリウレタンフォーム。
2.上記ポリオールは、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が30質量%以下であるポリオール(b)を含有し、該ポリオールを100質量%とした場合に、該ポリオール(b)は60質量%以上である上記1.に記載のマットレス用ポリウレタンフォーム。
3.上記ポリオールを100質量部とした場合に、上記水は2〜4質量部であり、上記液化二酸化炭素は3〜5質量部である上記1.又は2.に記載のマットレス用ポリウレタンフォーム。
4.JIS K 7222により測定した密度が15〜21kg/mであり、且つASTM D 3574により測定した硬度が15〜40Nである上記3.に記載のマットレス用ポリウレタンフォーム。
5.JIS K 6400(B法)により測定した通気量が150〜250リットル/分である上記4.に記載のマットレス用ポリウレタンフォーム。
6.JIS K 6400−4 4.5.2 A法により測定した圧縮永久歪が1.5〜7.0%である上記5.に記載のマットレス用ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0011】
本発明のマットレス用軟質フォームによれば、フォーム原料に、多量のエチレンオキサイド単位が含有される特定のポリオールが、所定量、含有されており、密度、硬度が低く柔軟であって、風合いがよく、通気性が高いためむれることがなく、且つ圧縮永久歪が小さいため、長期の使用によっても、底付き感のない、ヘタリ難いマットレスとすることができる。また、発泡剤として水と液化二酸化炭素とが併用されるため、反応時の発熱を抑えるため、発泡助剤としてフロン等の環境負荷物質を用いる必要がなく、環境面でも優れている。更に、減熱のため二水石膏等の粉黛を用いる必要もなく、優れた歪み特性が損なわれることもない。また、除膜処理することなく通気性を高くすることができるため、VOCが発生するという問題もなく、安全面でも優れている。
また、ポリオールが、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が30質量%以下であるポリオール(b)を含有し、ポリオールを100質量%とした場合に、ポリオール(b)が60質量%以上である場合は、ポリオール(a)との相溶性が低いポリオール(b)を併用することにより、反応時に破泡が適度に促進され、より容易に低密度、低硬度及び高通気のマットレス用軟質フォームとすることができる。
更に、ポリオールを100質量部とした場合に、水が2〜4質量部であり、液化二酸化炭素が3〜5質量部である場合は、反応時の発熱が十分に抑えられ、且つ容易に低密度、低硬度のマットレス用軟質フォームとすることができ、環境面でも全く問題がない。
また、JIS K 7222により測定したて密度が15〜21kg/mであり、且つASTM D 3574により測定した硬度が15〜40Nである場合は、このようなマットレス用軟質フォームを用いることで、より風合いのよいマットレスとすることができる。
更に、JIS K 6400(B法)により測定した通気量が150〜250リットル/分である場合は、このようなマットレス用軟質フォームを用いることで、よりむれ難いマットレスとすることができる。
また、JIS K 6400−4 4.5.2 A法により測定した圧縮永久歪が1.5〜7.0%である場合は、このようなマットレス用軟質フォームを用いることで、長期の使用によっても、より底付き感のない、ヘタリ難いマットレスとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のマットレス用軟質フォームは、ポリオール、ポリイソシアネート及び発泡剤を含有するフォーム原料を反応させてなり、ポリオールは、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60質量%以上であるポリオール(a)を含有し、ポリオールを100質量%とした場合に、ポリオール(a)は3〜22質量%である。また、発泡剤として水と液化二酸化炭素とが併用される。更に、イソシアネートインデックスは85〜105である。
【0013】
上記「ポリオール」としては、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60質量%以上であるポリオール(a)と、他の少なくとも1種のポリオールとが併用される。
上記「ポリオール(a)」は、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位(以下、「EO単位」と略記する。)の含有量が60質量%以上(100質量%であってもよい。)であることを除いて特に限定されない。このEO単位の含有量は70質量%以上、特に80質量%以上であることが好ましい。また、ポリオール(a)の含有量は、密度、硬度が低く柔軟であり、通気性が高く、且つ圧縮永久歪が小さいマットレス用軟質フォームとすることができればよく、ポリオールを100質量%とした場合に、3〜22質量%であり、5〜20質量%、特に5〜15質量%であることが好ましい。
【0014】
更に、ポリオール(a)の官能基数も特に限定されないが、2又は3、特に3であることが好ましい。ポリオール(a)の官能基数が3であれば、圧縮永久歪がより小さいマットレス用軟質フォームとすることができる。また、ポリオール(a)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した数平均分子量も特に限定されず、2000〜5000、特に3000〜4000であることが好ましい。ポリオール(a)の数平均分子量が上記の範囲、特に3000〜4000であれば、圧縮永久歪がより小さいマットレス用軟質フォームとすることができる。
【0015】
ポリオールとしては、ポリオール(a)を除く少なくとも1種の他のポリオールが併用される。この他のポリオールは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、特に2種以上を併用する必要はなく、1種のみで十分である。他のポリオールは特に限定されず、軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオール等の一般的なポリオールを使用することができる。また、他のポリオールとしては、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、EO単位の含有量が30質量%以下のポリオール(b)を用いることが好ましい。このポリオール(b)のEO単位の含有量は15質量%以下、更に10質量%以下(EO単位が含有されていなくてもよい。)であることが好ましい。
【0016】
EO単位の含有量が少ないポリオール(b)の製造に用いられるエチレンオキサイドを除く他のアルキレンオキサイドとしては、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられるが、プロピレンオキサイドが用いられることが多い。更に、EO単位の他は全量がプロピレンオキサイド単位であるポリオールが多く、ポリオール(b)としても、EO単位の他は全量がプロピレンオキサイド単位であるポリオールを用いることができる。このポリオール(b)は、ポリオール(a)との相溶性が低く、併用することにより、反応時に破泡が適度に促進され、より容易に、密度、硬度が低く柔軟であり、且つ通気性が高いマットレス用軟質フォームとすることができる。
【0017】
ポリオール(b)の官能基数も特に限定されず、2又は3、特に3であることが好ましい。ポリオール(b)の官能基数が3であれば、圧縮永久歪がより小さいマットレス用軟質フォームとすることができる。また、ポリオール(b)のGPCにより測定した数平均分子量も特に限定されず、2000〜5000、特に2000〜4000であることが好ましい。ポリオール(b)の数平均分子量が上記の範囲、特に2000〜4000であれば、圧縮永久歪がより小さいマットレス用軟質フォームとすることができる。更に、ポリオール(b)の含有量は、ポリオールを100質量%とした場合に、60質量%以上であることが好ましい。更に、ポリオール(b)は、ポリオールの全量からポリオール(a)を差し引いた含有量であってもよい。即ち、ポリオールは、ポリオール(a)及びポリオール(b)のみであってもよい。
【0018】
他のポリオールとしては、上記のポリオール(b)の他に、官能基数が3であり、GPCにより測定した数平均分子量が250〜1400であるポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオール(以下、「低分子量トリオール」という。)の少なくとも一方を併用することもできる。この低分子量トリオールの併用により、硬度をより低下させることができる。この他のポリオールの官能基数が3でない場合は、圧縮永久歪が大きくなる傾向がある。また、数平均分子量が250未満であると、硬度を十分に低下させることができないことがある。一方、1400を越えると、圧縮永久歪が大きくなる傾向がある。
【0019】
低分子量トリオールの数平均分子量は、250〜1000、特に250〜700であることが好ましい。このような低分子量のトリオールを併用することにより、より圧縮永久歪の小さいマットレス用軟質フォームとすることができる。更に、この低分子量トリオールとしては、ポリエーテルポリオールが特に好ましく、ポリエーテルポリオールであれば、硬度が十分に低く、且つ圧縮永久歪がより小さいマットレス用軟質フォームとすることができる。
【0020】
低分子量トリオールの含有量は特に限定されないが、ポリオール(a)とポリオール(b)との合計を100質量部とした場合に、10〜60質量部とすることができ、20〜40質量部であることが好ましい。低分子量トリオールの含有量が10質量部未満であると、硬度を十分に低下させることができないことがあり、一方、60質量部を越えると、圧縮永久歪が大きくなる傾向があり、好ましくない。また、低分子量トリオールの含有量は、ポリオールの全量からポリオール(a)及びポリオール(b)の合計を差し引いた含有量であってもよい。即ち、ポリオールは、ポリオール(a)、ポリオール(b)及び低分子量トリオールのみであってもよく、通常、これら以外に更に他のポリオールを併用する必要はない。
【0021】
他のポリオールとしては、ポリオール(b)のみの使用、又はポリオール(b)と低分子量トリオールとの併用、で十分であるが、マットレス用軟質フォームの低密度、低硬度、及び通気性が高い、圧縮永久歪が小さい等の特性が損なわれない範囲で、上記の特定のポリオールの他に、ポリカーボネート系ポリオール、ポリジエン系ポリオール等が含有されていてもよい。これらの特殊な他のポリオールは、1種のみであってもよく、2種以上が含有されていてもよい。
【0022】
上記「ポリイソシアネート」は特に限定されず、軟質ポリウレタンフォームの製造に一般に使用されるポリイソシアネートを用いることができる。このポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、粗TDI、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗MDIの他、1,5−ナフタレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートを用いることができる。更に、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添MDI、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートを用いることもできる。これらの他、プレポリマー型のポリイソシアネートを用いることもできる。
ポリイソシアネートは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、1種のみ用いられることが多い。
【0023】
また、ポリオールとポリイソシアネートとは、上記「イソシアネートインデックス」が85〜105となる質量割合で使用される。このイソシアネートインデックスは、90〜100、特に93〜97となる質量割合で用いることが好ましい。イソシアネートインデックスが85〜105であれば、十分に低硬度であり、且つ圧縮永久歪がより小さいマットレス用軟質フォームとすることができる。
【0024】
上記「発泡剤」としては、水と液化二酸化炭素とが併用される。これにより、フロン等の環境負荷物質を用いることなく、反応時の発熱を十分に抑えながら、密度の低いマットレス用軟質フォームとすることができる。更に、歪み特性を悪化させる二水石膏等の粉黛を用いることなく、反応時、十分に減熱させることができ、圧縮永久歪の小さいマットレス用軟質フォームとすることができる。
【0025】
液化二酸化炭素は、例えば、ポリオール及び水等が含有されるポリオール成分及びポリイソシアネートが供給され、攪拌、混合される原料混合用のミキシングヘッドに、液状のまま供給される。また、ミキシングヘッドに供給され、解放された時点で気化し、フォーム原料は泡状になる。その後、泡状の原料混合物がオークスミキサや多層構造の金属製のフィルター等に供給され、次いで、樹脂フィルム等の支持体上に吐出され、その後、加熱炉等により加熱され、水とポリイソシアネートとの反応により生成する二酸化炭素も発泡剤として作用し、ポリオールとポリイソシアネートとが反応し、硬化して、マットレス用軟質フォームが生成する。また、水は特に限定されず、例えば、イオン交換水、水道水、蒸留水等の各種の水を用いることができる。
【0026】
発泡剤として用いられる水及び液化二酸化炭素の配合量は、反応時の発熱が十分に抑えられ、且つ低密度、低硬度等の特性を有するマットレス用軟質フォームとすることができる限り、特に限定されない。水の配合量は、ポリオールを100質量部とした場合に、2〜4質量部、特に2.5〜3.7質量部、更に3.0〜3.5質量部であることが好ましい。更に、液化二酸化炭素の配合量は、ポリオールを100質量部とした場合に、3〜5質量部、特に3.2〜4.5質量部、更に3.5〜4.0質量部であることが好ましい。水の配合量が2〜4質量部であり、且つ液化二酸化炭素の配合量が3〜5質量部であれば、反応時の発熱が十分に抑えられ、且つより低密度、低硬度等の特性を有するマットレス用軟質フォームとすることができる。
【0027】
フォーム原料には、ポリオール、ポリイソシアネート及び発泡剤の他、触媒、整泡剤等が含有される。また、必要に応じてその他の助剤等を含有させることもできる。
触媒としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、ジメチルアミノメチルフェノール、イミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン等の3級アミン化合物などのアミン系触媒を用いることができる。また、スタナスオクトエート等の有機錫化合物、ニッケルアセチルアセトネート等の有機ニッケル化合物などの金属系触媒を用いることもできる。この触媒としてはアミン系触媒、特にトリエチレンジアミンが好ましい。触媒は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。触媒の使用量は、ポリオールを100質量部とした場合に、0.1〜1.5質量部とすることができる。
【0028】
整泡剤としては、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとのブロック共重合体を用いることができる。更に、ポリシロキサンに有機官能基を付加した特殊な整泡剤を用いることもできる。このように、整泡剤としてはシリコーン系整泡剤が用いられることが多い。整泡剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。整泡剤の使用量は、ポリオールを100質量部とした場合に、0.5〜2.0質量部とすることができる。
【0029】
また、必要に応じて用いられる助剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、及びフォーム原料の粘度を低下させ、攪拌、混合を容易にするための各種の希釈剤などが挙げられる。これらはマットレス用軟質フォームの密度、硬度、通気性及び圧縮永久歪等が損なわれない範囲で適量を配合することができる。
尚、発泡剤のうちの水、触媒及び整泡剤等は、通常、ポリオールに配合され、その後、このポリオール成分、ポリイソシアネート及び液化二酸化炭素が混合され、反応して、マットレス用軟質フォームが生成する。
【0030】
本発明のマットレス用軟質フォームの製造方法は特に限定されず、軟質ポリウレタンフォームの製造における一般的な方法をそのまま採用することができる。例えば、上記のフォーム原料を使用し、ワンショット法により反応、硬化させることにより、軟質ポリウレタンスラブフォームを製造し、このスラブフォームから所定寸法のフォームを切り出し、マットレスの用途に用いることができる。
【0031】
本発明では、EO単位の高いポリオールを使用し、且つイソシアネートインデックスを低めに設定することで、フロン等の環境負荷物質を用いることなく、ASTM D 3574により測定した硬度が40N以下、特に30N以下と極めて低いマットレス用軟質フォームとすることができる。従来、一般の軟質ポリウレタンフォームの硬度は50〜60N程度が下限であり、上記のように硬度が40N以下、特に30N以下であれば、特に風合いがよく、使用感に優れたマットレス用軟質フォームとすることができる。
【0032】
更に、フロン等の環境負荷物質の他、安全性の低下が懸念される添加剤等も配合されていないため、本発明の低密度、低硬度のマットレス用軟質フォームは、ポリウレタンの世界的な安全基準であるEURO−PUR(CertiPUR)基準を満たしており、例えば、VOC総量の目標値が500ppm以下であるのに対して、200ppm以下である。更に、ポリウレタンから検出される可能性の高い2,4−TDAの検出量も、目標値が5μg/g以下であるのに対して、0.3μg/g以下(検出限界値以下)である。また、減熱のための二水石膏等の粉黛も用いていないため、粉黛が残存せず、歪特性も極めて良好であり、JIS K 6400−4 4.5.2 A法により測定した圧縮永久歪が5.0%以下である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1〜4及び比較例1〜5
[1]使用原料
(1)ポリオール
(A)ポリオール(a)と併用されるポリオール(b)[表1、2ではポリオール(1)と表記する。]:ポリエーテルポリオール[三洋化成社製、商品名「GP−3050NS」(数平均分子量;3000、官能基数;3、EO単位含有量;8質量%)]
(B)ポリオール(a)[表1、2ではポリオール(2)と表記する。]:ポリエーテルポリオール[三洋化成社製、商品名「FA−103」(数平均分子量;3400、官能基数;3、EO単位含有量;80質量%)]
(2)発泡剤:水(イオン交換水)及び液化二酸化炭素
(3)触媒:アミン系触媒(花王社製、商品名「カオーライザーNo.25」)
(4)整泡剤:シリコーン系整泡剤(東レダウコーニング社製、商品名「BF−2370」)
(5)ポリイソシアネート:TDI[住友バイエルウレタン社製、商品名「テスモジュール T−80」(2,4−異性体比;80%)]
【0034】
[2]マットレス用軟質フォームの製造
表1(実施例1〜4)及び表2(比較例1〜5)に記載の配合により、ポリオール(a)、ポリオール(b)、水、触媒及び整泡剤を含有するポリオール成分、ポリイソシアネート及び専用の配管内を移送される液化二酸化炭素を、それぞれの成分が所定の質量割合となるように定量ポンプによって原料混合用のミキシングヘッドに供給し、攪拌した。その後、泡状の原料混合物を多層構造の金属製のフィルターに供給し、吐出させて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に流下させ、次いで、加熱炉内を通過させ、反応、硬化させて、マットレス用軟質スラブフォームを製造した。
【0035】
[3]物性評価
上記[2]で製造したマットレス用軟質スラブフォームから試片を切り出し、密度、硬度、通気量及び圧縮永久歪を下記の方法により測定した。結果を表1、2に併記する。
(a)密度;JIS K 7222により測定した。
(b)硬度;ASTM D 3574により測定した。
(c)通気量;JIS K 6400(B法)により測定した。数値が大きいほど、通気性が高く、むれ難いマットレスとすることができる。
(d)圧縮永久歪;JIS K 6400−4 4.5.2 A法により測定した。数値が小さいほど、長期に亘って用いたときの底付き感及びヘタリが抑えられ、優れた使用感が維持される。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
表1によれば、EO単位の含有量が多いポリオールを使用し、且つEO単位の含有量が少ないポリオールを併用した実施例1〜4のマットレス用軟質フォームでは、密度、硬度が低く、通気量も175リットル/分以上であり、圧縮永久歪が小さく、マットレスとして用いたときに、風合いがよく、むれ難く、長期に亘って用いたときも、底付き感及びヘタリが抑えられることが推察される。また、EO単位の含有量が多いポリオールが多量に配合されている実施例2では、より高通気であり、特に優れた風合い等を有するものと考えられる。更に、イソシアネートインデックスが高い実施例4では、より圧縮永久歪が小さいため、マットレスとして用いたときに、底付き感及びヘタリがより抑えられるものと推察される。
【0039】
一方、表2によれば、EO単位の含有量が多いポリオールが含有されていない比較例1では、密度は低いものの、硬度が高く、EO単位の含有量が多いポリオールが過多である比較例2では、圧縮永久歪が大きく問題である。また、所定のポリオール及び発泡剤が含有されるものの、イソシアネートインデックスが下限値未満である比較例3では、通気性が低下するとともに、圧縮永久歪が大きくなり、インデックスが上限値を超える比較例4では、密度は極めて低いものの、硬度が高く問題である。更に、発泡剤として、液化二酸化炭素ではなく、メチレンクロライドを併用した比較例5では、物性には何ら問題ないものの、環境対応の観点で問題である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、寝具等に用いられるマットレス、特に新生児用マットレス等の技術分野において利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、ポリイソシアネート及び発泡剤を含有するフォーム原料を反応させてなるマットレス用ポリウレタンフォームであって、
上記ポリオールは、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が60質量%以上であるポリオール(a)を含有し、
上記ポリオールを100質量%とした場合に、上記ポリオール(a)は3〜22質量%であり、
上記発泡剤として水と液化二酸化炭素とが併用され、
イソシアネートインデックスが85〜105であることを特徴とするマットレス用ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
上記ポリオールは、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が30質量%以下であるポリオール(b)を含有し、該ポリオールを100質量%とした場合に、該ポリオール(b)は60質量%以上である請求項1に記載のマットレス用ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
上記ポリオールを100質量部とした場合に、上記水は2〜4質量部であり、上記液化二酸化炭素は3〜5質量部である請求項1又は2に記載のマットレス用ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
JIS K 7222により測定した密度が15〜21kg/mであり、且つASTM D 3574により測定した硬度が15〜40Nである請求項3に記載のマットレス用ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
JIS K 6400(B法)により測定した通気量が150〜250リットル/分である請求項4に記載のマットレス用ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
JIS K 6400−4 4.5.2 A法により測定した圧縮永久歪が1.5〜7.0%である請求項5に記載のマットレス用ポリウレタンフォーム。

【公開番号】特開2011−184487(P2011−184487A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48387(P2010−48387)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】